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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169336
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】端子付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20231121BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H01R4/18 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155579
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2020119682の分割
【原出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 剛司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕寿
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
(57)【要約】      (修正有)
【課題】導体と端子との間の電気抵抗を低く維持して、電気的接続を十分確保できる端子付電線の製造方法を提供する。
【解決手段】筒状部6が圧縮されることにより、導体3に接続される端子5を備え、導体3に用いられる材料の引張強度は端子5に用いられる材料の引張強度よりも大きく、端子5は、導体3の長手方向に3つ以上の圧縮部10を有し、第1の圧縮部101および第2の圧縮部102の間に第3の圧縮部103を形成する工程において、導体3の断面積をS(mm)とし、圧縮部10の長手方向に沿った長さである圧縮幅をW(mm)とし、非圧縮部11の長手方向に沿った長さである圧縮間隔をL(mm)とした場合に、圧縮幅Wの値、圧縮間隔Lの値がそれぞれ下式(1),(2)
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5・・・(1)-1.0≦L≦0.145×S+3.75・・・(2)の関係式を満足するように第3の圧縮部103を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体、及び前記導体を被覆する絶縁層を含む電線と、
前記電線の端部で露出する前記導体が挿入される筒状部を有し、前記筒状部内に前記導体が挿入された状態で前記筒状部が圧縮されることにより、前記導体に接続される端子と、
を備えた端子付電線の製造方法であって、
前記導体に用いられる材料の引張強度が、前記端子に用いられる材料の引張強度よりも大きい前記電線及び前記端子を準備する準備工程と、
前記筒状部内に前記電線の端部で露出する前記導体を挿入させた状態で前記端子を3回以上圧縮して前記端子に3つ以上の圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する接続工程と、を備え、
前記接続工程は、第1の圧縮部および第2の圧縮部を形成したあとに、当該第1および第2の圧縮部の間に第3の圧縮部を形成する工程を含み、該工程において、前記導体の断面積をS(mm)とし、前記第1乃至第3の圧縮部の前記長手方向に沿った長さである圧縮幅をW(mm)とし、前記第1乃至第3の圧縮部間に位置する非圧縮部の前記長手方向に沿った長さである圧縮間隔をL(mm)とした場合に、前記圧縮幅Wの値、前記圧縮間隔Lの値が、それぞれ下式(1),(2)
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5 ・・・(1)
-1.0≦L≦0.145×S+3.75 ・・・(2)
の関係式を満足するように、前記第3の圧縮部を形成する、
端子付電線の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮幅Wの値、前記圧縮間隔Lの値が、それぞれ下式(3),(4)
0.01×S+2.5≦W≦0.035×S+4.25 ・・・(3)
-1.0≦L≦0.09×S+4.5 ・・・(4)
の関係式を満足する、
請求項1に記載の端子付電線の製造方法。
【請求項3】
前記端子は、アルミニウム材料からなり、
前記導体は、前記端子に用いられるアルミニウム材料よりも引張強度が大きいアルミニウム材料からなる、
請求項1または2に記載の端子付電線の製造方法。
【請求項4】
前記端子の前記筒状部の断面積をT(mm)とした場合に、当該筒状部の断面積Tと前記導体の断面積Sとから求められるT/Sは1.0以上3.0以下である、
請求項1から3いずれか1項に記載の端子付電線の製造方法。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の導体と端子とが接続されてなる端子付電線は、導電性等の観点から、銅又は銅合金で形成された導体と端子が用いられてきたが、近年、軽量化等の観点から、導体と端子とをアルミニウム材料(アルミニウムまたはアルミニウム合金)で形成することが検討されている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第98/54790号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
端子付電線では、導体と端子との接続部分に作用する応力が時間の経過とともに小さくなり、これに伴い導体と端子との間の接触力が下がり、これらの間の電気抵抗が増加するおそれがある。特に、アルミニウムは銅と比較して応力緩和が生じやすく、アルミニウム材料からなる端子をアルミニウム材料からなる導体に接続した場合には、上述の課題が生じやすい。導体と端子との間の電気抵抗が大きい状態で、導体に電流を流すと端子付電線に発熱が生じ、この発熱は電線断線や接触不良の要因になり得る。
【0006】
そこで、本発明は、導体と端子との間の電気抵抗を低く維持して、電気的接続を十分確保できる端子付電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体、及び前記導体を被覆する絶縁層を含む電線と、前記電線の端部で露出する前記導体が挿入される筒状部を有し、前記筒状部内に前記導体が挿入された状態で前記筒状部が圧縮されることにより、前記導体に接続される端子と、を備えた端子付電線の製造方法であって、前記導体に用いられる材料の引張強度が、前記端子に用いられる材料の引張強度よりも大きい前記電線及び前記端子を準備する準備工程と、前記筒状部内に前記電線の端部で露出する前記導体を挿入させた状態で前記端子を3回以上圧縮して前記端子に3つ以上の圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する接続工程と、を備え、前記接続工程は、第1の圧縮部および第2の圧縮部を形成したあとに、当該第1および第2の圧縮部の間に第3の圧縮部を形成する工程を含み、該工程において、前記導体の断面積をS(mm)とし、前記第1乃至第3の圧縮部の前記長手方向に沿った長さである圧縮幅をW(mm)とし、前記第1乃至第3の圧縮部間に位置する非圧縮部の前記長手方向に沿った長さである圧縮間隔をL(mm)とした場合に、前記圧縮幅Wの値、前記圧縮間隔Lの値が、それぞれ下式(1),(2)
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5 ・・・(1)
-1.0≦L≦0.145×S+3.75 ・・・(2)
の関係式を満足するように、前記第3の圧縮部を形成する、端子付電線の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導体と端子との間の電気抵抗を低く維持して、電気的接続を十分確保できる端子付電線の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本発明の一実施の形態に係る端子付電線の断面図であり、(b)はそのA部拡大図である。
図2】(a)~(c)は、端子付電線の製造方法を説明する図である。
図3】(a),(b)は、第3の圧縮部を形成する際の端子と導体の挙動を説明する図である。
図4】高温環境暴露試験の概要を示す説明図である。
図5】抵抗比の測定方法を示す説明図である。
図6(a)】圧縮幅Wを変化させた際の高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2の測定結果である。
図6(b)】圧縮間隔Lを変化させた際の高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2の測定結果を示すグラフ図である。
図6(c)】オーバーラップ状態を示した図である。
図7】(a)は、圧縮幅Wを変化させた際の高温環境暴露試験後の抵抗比増加率の測定結果、(b)は、圧縮間隔Lを変化させた際の高温環境暴露試験後の抵抗比増加率の測定結果を示すグラフ図である。
図8】(a)は、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下の領域を示す導体断面積Sと圧縮幅Wとの関係を示すグラフ図であり、(b)は、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下の領域を示す導体断面積Sと圧縮間隔Lとの関係を示すグラフ図である。
図9】(a)は、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下、且つ抵抗比増加率が20%以下となる領域を示す導体断面積Sと圧縮幅Wとの関係を示すグラフ図であり、(b)は、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下、且つ抵抗比増加率が20%以下となる領域を示す導体断面積Sと圧縮間隔Lとの関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
(端子付電線の概略構成)
図1(a)は、本実施の形態に係る端子付電線の断面図であり、図1(b)はそのA部拡大図である。図1(a),(b)に示すように、端子付電線1は、電線2と端子5とを備えている。端子付電線1は、例えば、ビル、風力発電機、鉄道車両や自動車などに用いられる配線材として用いることができる。
【0012】
電線2は、導体3と、導体3を被覆する絶縁層4と、を備えている。導体3としては、金属線、複数の金属素線を撚り合わせた撚り線、もしくは複数の撚り線を更に撚り合わせた複合撚り線を用いることができる。導体3を構成する金属材料として、例えば、純アルミニウムあるいはアルミニウム合金(以下、これらを「アルミニウム材料」という)を用いている。純アルミニウムはAl及び不可避不純物から成る材料である。
【0013】
純アルミニウムとしては、例えば、電気用純アルミニウム(ECAl)が挙げられる。アルミニウム合金として、例えば、以下のAl-Zr、Al-Fe-Zr等が挙げられる。Al-Zrは、0.03~1.5質量%のZrと、0.1~1.0質量%のFe及びSiと、を含み、残部がAlと不可避不純物からなる化学組成を有するアルミニウム合金である。また、Al-Fe-Zrは、0.01~0.10質量%のZrと、0.1質量%以下のSiと、0.2~1.0質量%のFeと、0.01質量%以下のCuと、0.01質量%以下のMnと、0.01質量%以下のMgと、0.01質量%以下のZnと、0.01質量%以下のTiと、0.01質量%以下のVと、を含み、残部がAlと不可避不純物とを有するアルミニウム合金である。Al-Zrにおいて、「0.1~1.0質量%のFe及びSi」とは、以下の意味を有する。Fe及びSiの両方を含有する場合は、Fe及びSiの合計濃度が0.1~1.0質量%である。Feを含有し、Siを含有しない場合は、Feの濃度が0.1~1.0質量%である。Siを含有し、Feを含有しない場合は、Siの濃度が0.1~1.0質量%である。なお、ここでの「含有しない」とは、例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析で、検出限界以下であることを意味する。
【0014】
絶縁層4は、例えば、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、又はシリコーン系樹脂などからなる。絶縁層4は、電線2の長さ方向の全長にわたって設けられるが、本実施の形態では、電線2の端末から所定の長さだけ絶縁層4が除去され、導体3の端末の一部が露出している。
【0015】
端子5は、中空部7を有する筒状の筒状部6と、延在部8とを備え、これらが一体的に形成されてなる。端子5は、例えば、パイプの一端側をプレス加工して板状の延在部8を形成したものである。あるいは、端子5は、例えば、円柱の母材の一端側を穴あけ加工して筒状部6を形成すると共に、他端側をプレス加工して延在部8を形成したものである。中空部7は一方において開口した円筒形状を有する。
【0016】
端子5は、例えば、アルミニウム材料によって構成されている。より具体的には、例えば、純アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。純アルミニウムはAl及び不可避不純物から成る材料である。例えば、電気用純アルミニウム(ECAl)が挙げられる。アルミニウム合金として、例えば、以下のAl-Fe-Zr挙げられる。Al-Fe-Zrは、0.01~0.10質量%のZrと、0.1質量%以下のSiと、0.2~1.0質量%のFeと、0.01質量%以下のCuと、0.01質量%以下のMnと、0.01質量%以下のMgと、0.01質量%以下のZnと、0.01質量%以下のTiと、0.01質量%以下のVと、を含み、残部がAlと不可避不純物とを有するアルミニウム
合金である。
【0017】
筒状部6は、断面円形の筒状に形成されており、その内部には、電線2の端部で露出する導体3を挿入可能な中空部7が形成されている。筒状部6の内径N(mm)は、導体3の外径と同等の大きさから導体3の外径の90%~95%程度の大きさで開口しており、この中空部7の開口から、電線2の端部で露出する導体3が挿入される。導体3を中空部7の開口から挿入する際、結束バンド等で導体3の外径を筒状部6と同等程度の内径になるまで圧縮すると、導体3に与えるダメージを少なく、また、スムーズに中空部7に導体3を挿入できる。また、筒状部6の厚さA(mm)は、中空部7内に導体3が挿入された端子5が圧縮されたときの、導体3の長手方向に垂直な断面における、端子5の非圧縮部11に対応する筒状部6の断面積と端子5の非圧縮部11に対応する導体3の断面積の比から決定される。すなわち、端子5の非圧縮部11の筒状部6の断面積をT(mm)及び端子5の非圧縮部11の導体3の断面積をS(mm)、とした場合に、(T/S)の式から決定される。その比率の範囲は1.0以上3.0以下が好ましい。1.0より小さいと、筒状部6の厚さAが小さいため、圧縮によって筒状部6が伸びて破断するおそれがある。3.0より大きいと、筒状部6が主に圧縮され、導体5が十分に圧縮されず、十分な機械的接合が得られないおそれがある。端子5の非圧縮部11に対応する筒状部6の断面積T(mm)はT=(((2A+N)/2)2-(N/2)2)×πで算出される。
端子5の非圧縮部11の筒状部6の断面積Tと端子5の非圧縮部11の導体3の断面積Sの比から求められる筒状部6の断面積T及び筒状部6の内径Nが決定されれば、筒状部6の厚さAが導出される。
【0018】
なお、端子5の表面や筒状部6の内面は、SnめっきやAgめっきが施されていてもよい。また、露出する導体3に導電粒子入りのコンパウンドを塗布してから、中空部7に挿入してもよい。また、筒状部6の中空部7にコンパウンドを塗布または充填してから、露出する導体3を挿入してもよい。この導電粒子入りコンパウンドとしては、例えば、Ni-PまたはNi-B、Ni、Znからなる導電粒子やこれらを混合した導電粒子を含有するフッ素系油またはシリコーン系油を用いることができる。端子5は、中空部7内に導体3が挿入された状態で中空部7(筒状部6)が圧縮されることにより、導体3に接続されている。
【0019】
延在部8は、外部の接続相手側の端子やボルト等に接続される部分として構成されている。本実施の形態では、延在部8は、板状に形成され、外部の端子との接続に用いられるボルト等が挿入されるボルト孔9が設けられている。
【0020】
本実施の形態に係る端子付電線1では、端子5の筒状部6には、導体3の長手方向に3つ以上の圧縮部10が形成されている。ここでは、圧縮部10を3つ形成する場合について説明するが、圧縮部10の数は4つ以上であってもよい。隣り合う圧縮部10間に位置する部分の筒状部6を非圧縮部11と呼称する。圧縮部10は、後述する圧縮ダイス20によって圧縮される部分であり、長手方向に略平坦な面となっている。非圧縮部11は圧縮ダイス20に押圧されない部分であり、圧縮部10よりも外径が大きい。圧縮部10と非圧縮部11との間には、圧縮ダイス20の押圧による変形によってテーパ状の部分が形成されるが、このテーパ状の部分は非圧縮部11に含まれる。圧縮部10及び非圧縮部11の詳細については後述する。
【0021】
圧縮工程では、半割構造を有する一対の圧縮ダイス20を用いる。一対の圧縮ダイス20は端子5の筒状部6に所定の圧力を加えて筒状部6の被加圧部を圧縮変形(塑性変形)させるためのものである。各々の圧縮ダイス20の形状は、例えば、横断面視で、半円形状、突形状、六角形状が挙げられる。本実施の形態では特に限定されないが、導体3の圧縮比は50%以上95%以下であることが好ましい。ここで、圧縮比とは、中空部7内に導体3が挿入された端子5が圧縮されたときの、導体3の長手方向に垂直な断面における、端子5の非圧縮部11に対応する導体3の断面積と圧縮部10に対応する導体3の断面積の比である。すなわち、端子5の非圧縮部11に対応する導体3の断面積をS(mm)及び圧縮部10に対応する導体3の断面積をD(mm)、とした場合に、(D/S)×100の式で算出される。上記の圧縮比であれば、導体3と端子5の応力緩和に起因する導体3と端子5の間の接触力低下を抑制することができるので、端子付電線1の電気抵抗比の増加を抑えることができる。なお、導体3として複数の金属素線を用いる場合は、導体3の断面積Sは、金属素線単体の断面積と金属素線の本数との積で算出することができる。
【0022】
(端子付電線の製造方法)
端子付電線1を製造する際には、まず、電線2及び端子5を準備する準備工程を行う。この際、導体3に用いられる材料の引張強度が、端子5に用いられる材料の引張強度よりも大きくなる(例えば、20MPa以上大きくなる)ように、導体3及び端子5の材料を選定する。例えば、端子5の材料としてECAlを用いる場合には、これよりも引張強度が大きい材料としてAl-Fe-Zr(引張強度差:24MPa程度以上)、Al-Zr(引張強度差:46MPa程度以上)を導体3の材料として用いることができる。また、導体3及び端子5の材料として、同じ材料を用いる場合であっても、製造工程中の熱処理条件や加工度等によっても材料の引張強度を調整することができる。
【0023】
準備工程では、電線2が有する絶縁層4を電線2の長さ方向の端末から所定の長さだけ取り除き、導体3の一部を露出させる。その後、端子5の筒状部6に形成された中空部7内に電線2の導体3の露出した一部を挿入する。
【0024】
その後、中空部7内に導体3を挿入させた状態で端子5の筒状部6を3回以上圧縮して端子に3つ以上の圧縮部10を形成することにより、端子5を導体3に接続する接続工程を行う。ここでは、端子5の筒状部6を3回圧縮して端子に3つの圧縮部10を形成する場合について説明する。
【0025】
接続工程では、まず、図2(a)に示すように、筒状部6における延在部8側の端部近傍(導体3の端部近傍)を圧縮ダイス20により押圧し、筒状部6を圧縮して第1の圧縮部101を形成する。その後、図2(b)に示すように、筒状部6における中空部7の開口側(絶縁層4側)の端部近傍を圧縮ダイス20により押圧し、筒状部6を圧縮して第2の圧縮部102を形成する。
【0026】
その後、図2(c)に示すように、第1の圧縮部101と第2の圧縮部102との中間の位置を圧縮ダイス20により押圧し、筒状部6を圧縮して第3の圧縮部103を形成する。このように、接続工程は、既に形成した隣り合う第1及び第2の圧縮部101,102の間に新たな第3の圧縮部103を形成する工程を含む。第1の圧縮部101と第3の圧縮部103との間、及び、第3の圧縮部103と第2の圧縮部102との間には、それぞれ非圧縮部11が形成されることになる。なお、ここでは、第1の圧縮部101を形成した後に第2の圧縮部102を形成する場合について説明したが、第2の圧縮部102を形成した後に第1の圧縮部101を形成してもよいし、第1の圧縮部101と第2の圧縮部102とを同時に形成してもよい。
【0027】
第1乃至第3の圧縮部101~103は、圧縮ダイス20を用いて筒状部6の周方向の全周にわたって所定の圧力を加えることにより、筒状部6を圧縮変形(塑性変形)させることにより形成される。本実施の形態では、各圧縮部101~103は、導体3の長手方向(軸方向)に垂直な断面形状が六角形状となっている。各圧縮部101~103を形成することにより、端子5を導体3に圧縮接続して、端子付電線1を得ることができる。
【0028】
(圧縮部10及び非圧縮部11の詳細)
ここで、圧縮部10を形成する際の端子5と導体3の挙動について検討する。図3(a)に示すように、端子5と導体3を圧縮ダイス20により押圧すると、当該押圧の影響により、端子5(筒状部6)と導体3の両者が長手方向に伸びる。本実施の形態では、端子5に用いられる材料の引張強度が、導体3に用いられる材料の引張強度よりも小さいため、端子5の方が大きく変形し、端子5と導体3の伸び量の差はΔLとなる。
【0029】
図3(b)に示すように、第1及び第2の圧縮部101,102を形成した状態を初期状態とする。この状態で、第1及び第2の圧縮部101,102の中間の位置を圧縮ダイス20により押圧すると、当該押圧の影響により、端子5が導体3よりΔL分長く伸びようとするため、第1および第2の圧縮部101,102で端子5と導体3との接触力(軸方向接触力)が発生し、両者の接触抵抗を低減できる。
【0030】
この端子5と導体3の伸び量の差ΔLの影響により、端子5と導体3との接触力(軸方向接触力)を大きくし、両者の接触抵抗を低減できる。経時変化により端子5と導体3との接触力は低減するが、本実施の形態では、径方向だけでなく長手方向(軸方向)にも端子5と導体3とがお互いに引っ張り合うような力、すなわち軸方向接触力を与えてやることで、径方向の接触力の緩みを軸方向接触力でサポートして、経時変化による端子5と導体3間の抵抗値の上昇を抑制している。
【0031】
端子5と導体3との接触力(軸方向接触力)をより大きくし、接触抵抗をより低減するためには、伸びひずみをより大きくすればよい。伸びひずみεは、圧縮による伸びをΔLとし、圧縮間隔(図3(b)における長手方向に隣り合う圧縮部10間の間隔、すなわち、非圧縮部11の長手方向に沿った長さ)をLとすると、下式
ε=ΔL/L
で表すことができる。よって、圧縮による伸びΔLを大きくし、圧縮間隔Lを小さくすることで、圧縮による伸びひずみを大きくして、端子5と導体3との接触力(軸方向接触力)をより大きくし、両者の接触抵抗をより低減することが可能になる。
【0032】
圧縮による端子5と導体3の伸び量の差ΔLを大きくするためには、圧縮部10の長手方向に沿った長さである圧縮幅Wを導体断面積に応じた適切な幅にすればよい。圧縮幅Wは、使用する圧縮ダイス20の大きさを調整することにより制御可能であり、圧縮間隔Lは、各圧縮部101~103の位置(導体3の長手方向に沿った位置)を調整することにより制御可能である。
【0033】
本発明者らは、圧縮幅W及び圧縮間隔Lの影響を検討するため、実験を行った。まず、圧縮ダイス20による圧縮荷重を12tで一定とし、圧縮間隔L(mm)を7mmで一定とし、圧縮幅W(mm)を変化させて実験を行った。実験では、導体断面積が50mm及び250mmの導体3を有する電線2を用い、導体断面積が50mmの試料については圧縮比を60%から95%とし、導体断面積が250mmの試料については圧縮比を70%から95%とした。導体断面積が50mm(直径約10mm)の電線2を用いる場合には、端子5の筒状部6の内径N10.2mm、厚さA3.0mmであり、導体断面積が250mm(直径約23.6mm)の電線2を用いる場合には、端子5の筒状部6の内径N21.8mm、厚さA5.2mmである(以下の実験において、端子5は同じ大きさのものを用いる。)。圧縮幅W(mm)が大きくなると、導体3の圧縮比も大きくなる。
【0034】
(抵抗比増加率の測定)
次に、端子5を圧縮して導体3に接続された端子付電線1の延在部8が外部の接続相手側の端子にボルト等で接続されたことを想定し、延在部8にアルミニウム板13をボルト(不図示)で固定することにより、高温環境暴露試験用試料を作製した。この高温環境暴露試験用試料を図4に示すように、200℃に設定した恒温槽14内に配置し、大気中で100時間保持し、かつ10時間毎に恒温槽から取り出してボルトの着脱を行う高温環境暴露試験を行った。高温環境暴露試験は通電試験環境を模擬した。なお、アルミニウム板を延在部8の下側に固定した場合を示したが、延在部8の上側に固定した場合でも、延在部8の下側に固定した場合と同様な結果が得られる。
【0035】
高温環境暴露試験の前後での電気抵抗比を測定し、それら試験前後の電気抵抗比から抵抗比増加率を算出した。なお、抵抗比増加率(%)は、高温環境暴露試験の実施前と実施後(100時間保持後)の導体3と端子5との間の電気抵抗比をそれぞれR1、R2とした場合に、((R2-R1)/R1)×100の式より算出することができる。
【0036】
(電気抵抗比の測定)
ここで、端子付電線1の高温環境暴露試験実施前の電気抵抗比(初期抵抗比)R1の測定は、いわゆる4端子法により行った。4端子法について、図5を用いて説明する。
【0037】
最初に、端子付電線1の全体に、定電流1Aを供給し、点Pと点Qとの間の電気抵抗値R0を測定する。ここで、点Pは、端子5の筒状部6の一端であって、挿入された導体3の先端部に対応する部位である。点Qは、導体3のうち、端子5と接触していない部位である。点Sは、端子5の筒状部6の他端であって、導体3が挿入される入り口部分の部位である。初期抵抗比R1(%)は、点Pと点Sとの距離をL1とし、点Qと点Sとの距離をL2とし、導体3の単位長さ当たりの電気抵抗値をαとした場合に、{(R0-L2×α)/(L1×α)}×100の式で算出される。導体3の単位長さ当たりの電気抵抗値は事前に測定するか、もしくはL2間の電気抵抗値を測定し、L2間の長さで除算し、単位長さ当たりの電気抵抗値として使用してもよい。
【0038】
また、高温環境暴露試験実施後の電気抵抗比R2の測定は、端子付電線1を室温まで冷却した後に、試験実施前の電気抵抗比(初期抵抗比)の値を測定するときと同様の上記4端子法で行った。具体的には、高温環境暴露試験実施後の端子付電線1の全体に、定電流1Aを供給し、点Pと点Qとの間の電気抵抗値Rを測定する。導体3の単位長さ当たりの電気抵抗値αは、高温環境暴露試験実施前後で変化せず同じ値を用いる。電気抵抗比R2(%)は、{(R-L2×α)/(L1×α)}×100の式で算出される。なお、抵抗値の測定は、日置電気株式会社製の抵抗計を使用した。高温環境暴露試験実施後(100時間保持後)の電気抵抗比R2の実験結果を図6(a)に示す。
【0039】
図6(a)に示すように、導体3の断面積50mmとした試料では、圧縮幅Wが大きくなるほど電気抵抗比R2が低下するが、圧縮幅Wを大きくしすぎると電気抵抗比R2は増加に転じ、電気抵抗比R2が極小値となる圧縮幅Wが存在することがわかった。導体3の断面積250mmとした試料では、圧縮幅Wが大きくなるほど電気抵抗比R2が低下することがわかった。
【0040】
同様に、導体3の断面積50mmの圧縮幅Wを3mm、導体3の断面積を250mm、圧縮幅Wを7mmかつ圧縮ダイス20による圧縮荷重を12tで一定とし、圧縮間隔Lを変化させて高温環境暴露試験実施後の電気抵抗比R2を求めた。実験結果を図6(b)に示す。導体3の断面積50mmとした試料では、圧縮間隔Lが大きくなるほど電気抵抗比R2が低下するが、圧縮間隔Lを大きくしすぎると電気抵抗比R2は増加に転じ、電気抵抗比R2が極小値となる圧縮間隔Lが存在することがわかった。導体3の断面積250mmとした試料では、圧縮間隔Lが大きくなるほど電気抵抗比R2が低下することがわかった。また、図6(b)では圧縮間隔Lがマイナスとなる領域も含まれているが、これは圧縮部10がオーバーラップした状態を表している。図6(c)にオーバーラップした状態を示す。圧縮ダイス20により押圧した第1圧縮部101、第2圧縮部102、第3圧縮部103の圧縮幅Wが圧縮間隔Lだけ重なる。圧縮間隔Lは、第1圧縮部101の右端から第2圧縮部102の左端までの距離をWLとした場合に、L=(WL-3W)/2で算出することができる。ここで、圧縮部10がオーバーラップした状態の場合は、圧縮間隔Lの値はマイナスとなる。
【0041】
図7(a)は、横軸に圧縮幅W、縦軸に抵抗比増加率を示すグラフ図である。圧縮ダイス20による圧縮荷重を12tで一定とした上で、導体断面積50mmとした試料、及び導体断面積を250mmとした試料の両者とも、圧縮間隔Lを7mmと一定とし、圧縮幅Wを変化させて高温環境暴露試験の実施前と実施後の抵抗比増加率を求めた。図7(a)に示すように、両試料とも、基本的に圧縮幅Wが大きくなるほど抵抗比増加率が低下するが、圧縮幅Wを大きくしすぎると抵抗比増加率は増加に転じ、抵抗比増加率が極小値となる圧縮幅Wが存在することがわかった。
【0042】
図7(b)は、横軸に圧縮間隔L、縦軸に抵抗比増加率を示すグラフ図である。同様に、圧縮ダイス20による圧縮荷重を(12t)で一定とした上で、導体3の断面積50mmの圧縮幅Wを3mm、導体3の断面積250mmの圧縮幅Wを7mmで一定とし、圧縮間隔Lを変化させて高温環境暴露試験の実施前と実施後の抵抗比増加率を求めた。
【0043】
図7(b)に示すように、導体3の断面積を50mmとした試料、及び導体3の断面積を250mmとした試料の両者とも、基本的に圧縮間隔Lが小さくなるほど抵抗比増加率が低下するが、圧縮間隔Lを小さくしすぎると抵抗比増加率は増加に転じ、抵抗比増加率が極小値となる圧縮間隔Lが存在することがわかった。また、図7(b)では圧縮間隔Lがマイナスとなる領域も含まれているが、これは圧縮部10がオーバーラップした状態を表している。図7(b)のオーバーラップした状態に関しても、図6(c)に図示したオーバーラップした状態と同様な状態である。圧縮ダイス20により押圧した第1圧縮部101、第2圧縮部102、第3圧縮部103の圧縮幅Wが圧縮間隔Lだけ重なる。
【0044】
図8(a)は、横軸を導体3の断面積S(mm)、縦軸を圧縮幅W(mm)としたグラフ図である。また、図8(b)は、横軸を導体3の断面積S(mm)、縦軸を圧縮間隔L(mm)としたグラフ図である。ここでは、導体3の断面積が38mm以上500mm以下の条件下において、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下であることを満たす圧縮幅W(mm)と圧縮間隔L(mm)を見出した。その結果、圧縮幅W(mm)は下記に示す式(1)を、圧縮間隔L(mm)は下記に示す式(2)を満たす場合に、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下であることがわかった。
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5 ・・・(1)
-1.0≦L≦0.145×S+3.75 ・・・(2)
式(1)で示す領域は図8(a)の斜線部である。同様に、式(2)で示す領域は図8(b)の斜線部である。例えば、導体3の断面積Sが50mmの場合、圧縮幅Wは3mm以上7mm以下、圧縮間隔Lは-1mm以上11mm以下を選択することが可能であり、上記領域内の圧縮幅Wおよび圧縮間隔Lを使用することにより、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2は100%以下となる。
【0045】
さらに良好な圧縮幅W(mm)と圧縮間隔L(mm)を見出した。下記、(1)、(2)の条件をいずれも満たす場合である。上述した高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下となる目標仕様を満たす圧縮幅Wおよび圧縮間隔Lの場合より選択できる範囲は小さくなる。
(1)高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下であること。
(2)抵抗比増加率20%以下であること。
【0046】
図9(a)は、横軸を導体3の断面積S(mm)、縦軸を圧縮幅W(mm)としたグラフ図である。また、図9(b)は、横軸を導体3の断面積S(mm)、縦軸を圧縮間隔L(mm)としたグラフ図である。ここでは、導体3の断面積が38mm以上500mm以下の条件下において、(1)高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下であること、(2)高温環境試験後の抵抗比増加率が20%以下であることの両方の目標仕様を満たす圧縮幅W(mm)と圧縮間隔L(mm)を見出した。その結果、圧縮幅W(mm)は下記に示す式(3)を、圧縮間隔L(mm)は下記に示す式(4)を満たす場合に、(1)高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が100%以下であること、(2)高温環境暴露試験前後の抵抗比増加率が20%以下であることの両方の目標仕様を満たすことがわかった。
0.01×S+2.5≦W≦0.035×S+4.25 ・・・(3)
-1.0≦L≦0.09×S+4.5 ・・・(4)
式(3)で示す領域は図9(a)の斜線部である。同様に、式(4)で示す領域は図9(b)の斜線部である。例えば、導体3の断面積Sが50mmの場合、圧縮幅Wは3mm以上6mm以下、圧縮間隔Lは-1mm以上9mm以下を選択することが可能であり、上記領域内の圧縮幅Wおよび圧縮間隔Lを使用することにより、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2は100%以下、且つ抵抗比増加率は20%以下となる。
【0047】
以上の結果より、式(1)、式(2)を満たすように圧縮幅W及び圧縮間隔Lを調整して圧縮部10を形成することで、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2が小さく、上述の目標仕様を満たす端子付電線1が得られる。さらに好ましくは、式(3)、式(4)を満たすように圧縮幅W及び圧縮間隔Lを調整して圧縮部10を形成することで、高温環境暴露試験後の電気抵抗比R2及び抵抗比増加率が小さく、上述の目標仕様を満たす端子付電線1が得られる。
【0048】
すなわち、本実施の形態に係る端子付電線1は、圧縮幅W(mm)と圧縮間隔L(mm)が、下式(1),(2)の導体3の断面積S(mm)との関係式で表される。
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5 ・・・(1)
-1.0≦L≦0.145×S+3.75 ・・・(2)
この範囲内においても、圧縮幅Wと圧縮間隔Lによっては抵抗比増加率が20%を超えることがあり、上述の目標仕様における(1)、(2)の両方満たすために、より好ましくは、圧縮幅W(mm)と圧縮間隔L(mm)が、下式(3),(4)の導体断面積S(mm)との関係式であるとよい。
0.01×S+2.5≦W≦0.035×S+4.25 ・・・(3)
-1.0≦L≦0.09×S+4.5 ・・・(4)
【0049】
なお、例えば、導体3の外径が小さい場合に、圧縮幅Wを小さくし過ぎると、目標仕様を満たすことができないおそれが生じる。導体3の導体断面積Sは、例えば、38mm以上500mm以下であるとよい。
【0050】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る端子付電線1では、導体3に用いられる材料の引張強度が、端子5に用いられる材料の引張強度よりも大きく、端子5は、導体3の長手方向に3つ以上の圧縮部10を有し、導体3の断面積をS(mm)とし、圧縮部10の長手方向に沿った長さである圧縮幅をW(mm)とし、隣り合う圧縮部10間に位置する非圧縮部11の長手方向に沿った長さである圧縮間隔をL(mm)とした場合に、圧縮幅W(mm)の値、圧縮間隔L(mm)の値が、それぞれ下式(1),(2)
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5 ・・・(1)
-1.0≦L≦0.145×S+3.75 ・・・(2)
の関係式を満足する。さらに好ましくは、圧縮幅W(mm)の値、圧縮間隔L(mm)の
値が、それぞれ下式(3),(4)
0.01×S+2.5≦W≦0.035×S+4.25 ・・・(3)
-1.0≦L≦0.09×S+4.5 ・・・(4)
の関係式を満足する。
【0051】
このように構成することで、導体3のサイズ(外径や導体断面積)によらず、導体3と端子5との間の接触力(軸方向接触力)を高めることが可能になり、導体3と端子5との間の電気抵抗を低く維持して、電気的接続を十分確保できる端子付電線1を実現できる。
【0052】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0053】
[1]導体(3)、及び前記導体(3)を被覆する絶縁層(4)を含む電線(2)と、前記電線(2)の端部で露出する前記導体(3)が挿入される中空部(7)を有し、前記中空部(7)内に前記導体(3)が挿入された状態で前記中空部(7)が圧縮されることにより、前記導体(3)に接続される端子(5)と、を備えた端子付電線(1)であって、前記導体(3)に用いられる材料の引張強度は、前記端子(5)に用いられる材料の引張強度よりも大きく、前記端子(5)は、前記導体(3)の長手方向に3つ以上の圧縮部(10)を有し、前記導体(3)の断面積をS(mm)とし、前記圧縮部(10)の前記長手方向に沿った長さである圧縮幅をW(mm)とし、隣り合う前記圧縮部(10)間に位置する非圧縮部(11)の前記長手方向に沿った長さである圧縮間隔をL(mm)とした場合に、前記圧縮幅Wの値、前記圧縮間隔Lの値が、それぞれ下式(1),(2)
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5 ・・・(1)
-1.0≦L≦0.145×S+3.75 ・・・(2)
の関係式を満足する、端子付電線(1)。
【0054】
[2]前記圧縮幅Wの値、前記圧縮間隔Lの値が、それぞれ下式(3),(4)
0.01×S+2.5≦W≦0.035×S+4.25 ・・・(3)
-1.0≦L≦0.09×S+4.5 ・・・(4)
の関係式を満足する、[1]に記載の端子付電線(1)。
【0055】
[3]前記端子(5)は、アルミニウム材料からなり、前記導体(3)は、前記端子(5)に用いられるアルミニウム材料よりも引張強度が大きいアルミニウム材料からなる、[1]または[2]に記載の端子付電線(1)。
【0056】
[4]導体(3)、及び前記導体(3)を被覆する絶縁層(4)を含む電線(2)と、前記電線(2)の端部で露出する前記導体(3)が挿入される中空部(7)を有し、前記中空部(7)内に前記導体(3)が挿入された状態で前記中空部(7)が圧縮されることにより、前記導体(3)に接続される端子(5)と、を備えた端子付電線(1)の製造方法であって、前記導体(3)に用いられる材料の引張強度が、前記端子(5)に用いられる材料の引張強度よりも大きい前記電線(2)及び前記端子(5)を準備する準備工程と、前記中空部(7)内に前記電線(2)の端部で露出する前記導体(3)を挿入させた状態で前記端子(5)を3回以上圧縮して前記端子(5)に3つ以上の圧縮部(10)を形成することにより、前記端子(5)を前記導体(3)に接続する接続工程と、を備え、前記接続工程は、既に形成した隣り合う圧縮部(10)の間に新たな圧縮部(10)を形成する工程を含むと共に、前記導体(3)の断面積をS(mm)とし、前記圧縮部(10)の前記長手方向に沿った長さである圧縮幅をW(mm)とし、隣り合う前記圧縮部(10)間に位置する非圧縮部(11)の前記長手方向に沿った長さである圧縮間隔をL(mm)とした場合に、前記圧縮幅Wの値、前記圧縮間隔Lの値が、それぞれ下式(1),(2)
0.01×S+2.5≦W≦0.07×S+3.5 ・・・(1)
-1.0≦L≦0.145×S+3.75 ・・・(2)
の関係式を満足するように前記圧縮部(10)を形成する、端子付電線の製造方法。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…端子付電線
2…電線
3…導体
4…絶縁層
5…端子
6…筒状部
7…中空部
8…延在部
9…ボルト孔
10…圧縮部
101…第1の圧縮部
102…第2の圧縮部
103…第3の圧縮部
11…非圧縮部































図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7
図8
図9