(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169541
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】スクリューコンベアの軸封構造、スクリューコンベア、及び、スクリューコンベアを備える銅製錬設備
(51)【国際特許分類】
F16J 15/24 20060101AFI20231122BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F16J15/24 Z
F16J15/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080706
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】真壁 祐太
【テーマコード(参考)】
3J043
【Fターム(参考)】
3J043AA16
3J043BA02
3J043CA14
3J043CB01
3J043CB24
3J043DA01
(57)【要約】
【課題】金属粉による摩耗から、基幹部材であるスクリュー軸を保護するための保護部材であるスリーブの交換に伴う操業停止の頻度を少なくしてスクリューコンベアを備える工業設備の生産性向上に寄与すること。
【解決手段】スクリュー軸3と、スクリュー軸3がその内部において回転可能に支持されているグランドボックス11と、スクリュー軸3の外周面に捲着されている耐摩耗スリーブ12と、耐摩耗スリーブ12の外周面とグランドボックス11の内周面との間に充填されているグランドパッキン13と、耐摩耗スリーブ12の外周面に嵌着されているランタンリング14と、を備え、ランタンリング14は外周面から内周面に通ずる貫通孔143を有し、グランドボックス11及びランタンリング14には、耐摩耗スリーブ12の外周面にグリスを供給するグリス通路16が形成されている、スクリューコンベアの軸封構造1とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを貫通して設けられているスクリュー軸を備える、スクリューコンベアの軸封構造であって、
前記スクリュー軸と、
前記ハウジングの軸方向の端部に接合され、前記スクリュー軸がその内部において回転可能に支持されているグランドボックスと、
前記スクリュー軸の外周面のうち前記グランドボックスの内部にある部分に捲着されている耐摩耗スリーブと、
前記耐摩耗スリーブの外周面と前記グランドボックスの内周面との間に充填されているグランドパッキンと、
前記耐摩耗スリーブの外周面に嵌着されているランタンリングと、を備え、
前記ランタンリングはその外周面からその内周面に通ずる貫通孔を有し、
前記グランドボックス及び前記ランタンリングには、前記貫通孔を経由して、前記グランドボックスの外部から、前記耐摩耗スリーブの外周面にグリスを供給するグリス通路が形成されている、
スクリューコンベアの軸封構造。
【請求項2】
前記ランタンリングの内周面と前記耐摩耗スリーブの外周面との間の隙間の大きさが1mm以上3mm以下である、
請求項1に記載のスクリューコンベアの軸封構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクリューコンベアの軸封構造を備える、
スクリューコンベア。
【請求項4】
請求項3に記載のスクリューコンベアによって、乾鉱庫から熔融炉に銅精鉱を供給する、銅精錬設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューコンベアの軸封構造、スクリューコンベア、及び、スクリューコンベアを備える銅製錬設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥状態の粉体をホッパー等から定量切り出しした粉体を次工程に搬送するための装置として、スクリューコンベアが広く用いられている(特許文献1参照)。そして、多くの銅製錬設備において、乾燥粉末状態の銅精鉱を乾鉱庫から自熔炉に供給する装置として、このスクリューコンベアが用いられている(特許文献2参照)。
【0003】
ここで、
図3は、そのようなスクリューコンベアの一般的な構造の概略を模式的に示す断面図である。同図に示されいる通り、スクリューコンベア10においては、ハウジング2の両方の端部の軸封構造1が、ハウジング2の内部の空間を外部環境から遮断するシーリング構造としての機能を発揮している。つまり、一般的なスクリューコンベアにおいては、軸封構造がシーリング構造として機能することによって、金属粉等の搬送物が外部環境へ漏出することが防止されているのである。そして、このシーリング構造は、より具体的には、軸封構造1のグランドボックスと、その内部においてグランドボックスの内周面とスクリュー軸の外周面との間の隙間を埋めるグランドパッキンによって形成されている(特許文献1の
図7参照)。
【0004】
ここで、上記のグランドパッキンは、編んだ繊維に潤滑剤を染み込ませたものであり使用に伴う経時劣化は避けられない。例えば、銅製錬設備において、
図3に示すスクリューコンベア10を用いる場合も、軸封構造1の内部でのグランドパッキンの経時劣化は回避し得ない。そして、実際にグランドパッキンが劣化してしまうと、当該劣化部分とスクリュー軸3との間に銅粉が入り込み、スクリューコンベア10の基幹部材であるスクリュー軸3の摩耗を進行させて、致命的な損傷を引き起こす恐れがある。このような基幹部材の致命的な損傷を回避するためには、軸封構造1の内部において、スクリュー軸3の端部3aの外周面に、耐摩耗性を備えるスリーブを装着することが考えられる。
【0005】
しかしながら、スクリュー軸を摩耗させる金属粉をスクリューコンベアによって搬送する工程が行われる銅製錬設備においては、上記のスリーブ自体の摩耗の進行を回避することも難しく、スクリュー軸に、上記のようなスリーブを装着した場合には、定期的に当該スリーブの交換作業が必要となる。そして、スクリュー軸の周囲に撒き付ける態様で設置されるスリーブの交換作業の際には、当然にスクリューコンベアの動作を完全に停止する必要が生じる。従って、銅製錬設備においては、外周面に耐摩耗性を備えるスリーブを装着することによってスクリュー軸の致命的な損傷を回避することができたとしても、このスリーブの交換作業が頻繁に生じると、スクリューコンベアの稼働効率を良好に維持することが難しくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2016-190742号公報
【特許文献2】2017-160526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スクリューコンベアにおいて、金属粉による摩耗から、基幹部材であるスクリュー軸を保護するための保護部材であるスリーブの交換に伴う操業停止の頻度を少なくしてスクリューコンベアの稼働率を向上させて、スクリューコンベアを備える工業設備、特には銅製錬設備等の生産性向上に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、スクリューコンベアの軸封構造のグランドボックスの内部に、ランタンリングを配置して、これにグリスを供給するための通路を設けることにより、上記課題を解決できることに想到し、本発明を完成させるに至った。本発明は、具体的には以下のものを提供する。
【0009】
(1) ハウジングを貫通して設けられているスクリュー軸を備える、スクリューコンベアの軸封構造であって、前記スクリュー軸と、前記ハウジングの軸方向の端部に接合されていて、前記スクリュー軸がその内部において回転可能に支持されているグランドボックスと、前記スクリュー軸の外周面のうち前記グランドボックスの内部にある部分に捲着されている耐摩耗スリーブと、前記耐摩耗スリーブの外周面と前記グランドボックスの内周面との間に充填されているグランドパッキンと、前記耐摩耗スリーブの外周面に嵌着されているランタンリングと、を備え、前記ランタンリングはその外周面からその内周面に通ずる貫通孔を有し、前記グランドボックス及び前記ランタンリングには、前記貫通孔を経由して、前記グランドボックスの外部から、前記耐摩耗スリーブの外周面にグリスを供給するグリス通路が形成されている、スクリューコンベアの軸封構造。
【0010】
(1)のスクリューコンベアの軸封構造によれば、スクリューコンベアにおいて、金属粉による摩耗から、基幹部材であるスクリュー軸を保護するための保護部材であるスリーブの交換に伴う操業停止の頻度を少なくしてスクリューコンベアの稼働率を向上させて、スクリューコンベアを備える工業設備、特には銅製錬設備等の生産性向上に寄与することができる。
(2) 前記ランタンリングの内周面と前記耐摩耗スリーブの外周面との間の隙間の大きさが1mm以上3mm以下である、(1)に記載のスクリューコンベアの軸封構造。
【0011】
(2)のスクリューコンベアの軸封構造によれば、(1)に記載のスクリューコンベアにおいて、グリス通路を通じて供給されたグリスが耐摩耗スリーブの外周面の全域にまでより浸透しやすくなる。これにより、軸封構造の有する、耐摩耗スリーブの耐久性を更に向上させることができる。
【0012】
(3) (1)又は(2)に記載のスクリューコンベアの軸封構造を備える、スクリューコンベア。
【0013】
(3)のスクリューコンベアにおいては、(1)又は(2)に記載のスクリューコンベアの軸封構造の奏する上記効果を享受して、スクリューコンベアの稼働率を高めて、これを備える工業設備の生産性を向上させることができる。
【0014】
(4) (3)に記載のスクリューコンベアによって、乾鉱庫から熔融炉に銅精鉱を供給する、銅精錬設備。
【0015】
(4)の銅精錬設備においては、(3)に記載のスクリューコンベアの奏する上記効果を享受して、基幹部材であるスクリュー軸を銅粉による摩耗から保護するための保護部材であるスリーブの耐久性を向上させて交換頻度を少なくして、銅製錬設備を構成するスクリューコンベアの稼働率を高めることにより、これを備える工業設備の生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スクリューコンベアにおいて、金属粉による摩耗から、基幹部材であるスクリュー軸を保護するための保護部材であるスリーブの交換に伴う操業停止の頻度を少なくしてスクリューコンベアの稼働率を向上させて、スクリューコンベアを備える工業設備、特には銅製錬設備等の生産性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のスクリューコンベアの軸封構造の構造を示す断面図である。
【
図2】
図1のスクリューコンベアの軸封構造を構成するランタンリングの斜視図である。
【
図3】本発明のスクリューコンベアの軸封構造を適用することができるスクリューコンベアの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<スクリューコンベアの軸封構造>
本発明における「スクリューコンベアの軸封構造」とは、一例として、
図3に示すスクリューコンベア10における軸封構造(1a、1a)のように、ハウジング2を貫通して設けられているスクリュー軸3を備えるスクリューコンベアにおいて、ハウジング2の外側で、スクリュー軸3の端部3aを回転可能に支持し、尚且つ、ハウジング2の内部の空間を外部環境から遮断するシーリング構造としての機能を発揮する構造部分のことを言う。又、その内部構造として、
図1に示す構造を備える軸封構造1が、本発明の「スクリューコンベアの軸封構造」の好ましい実施形態の一例である。
【0019】
軸封構造1は、スクリューコンベア10の一部を構成する部分構造であって、スクリュー軸3、グランドボックス11、耐摩耗スリーブ12、グランドパッキン13、及び、ランタンリング14を少なくとも含んで構成される。そして、上記構成を備える軸封構造1においては、グランドボックス11の外部からランタンリング14を経由して耐摩耗スリーブ12の外周面にグリスを供給する後述のグリス通路16が形成されている。
【0020】
[グランドボックス]
グランドボックス11は、ハウジング2の軸方向の端部2aに接合されており、その内部において、スクリュー軸3の端部3aが回転可能に支持されている部材である。そして、グランドボックス11は、スクリュー軸3の端部3aを支持し、その周囲を取り囲みながらハウジング2の軸方向の端部2aに接合されていることによって、ハウジング2の端部2aをシールして、ハウジング2の内部の空間を外部環境から遮断している。グランドボックス11の一方の端部には、スクリューコンベア10のハウジング2の端部2aに、グランドボックス11を接合するための固定用フランジ112が形成されていることが好ましい。
【0021】
ここで、軸封構造1は、
図1に示す通り、スクリューコンベアのハウジングの端部に、ハウジングとスクリュー軸3との間の軸方向の隙間を塞ぐ蓋として機能する固定板23が取り付けられている構造とすることが好ましい。この固定板23が取り付けられている場合、グランドボックス11を、この固定板23を介して、ハウジング2の軸方向の端部2aに安定的に接合することができる。尚、固定板23は軸封構造1において必須の構造ではなく、グランドボックス11の端部の形状・大きさ(例えば、上記の固定用フランジ112の形状・大きさ)を、上記隙間を塞ぐことができる形状・大きさに形成することによって、グランドボックス11を、固定板23を介さずに、ハウジング2の端部2aに直接的に接合し、上記隙間を塞ぐ蓋として機能させることもできる。
【0022】
そして、本発明の軸封構造1を構成するグランドボックス11には、ランタンリング14にグリスを供給するための通路となる貫通路111が形成されていて、この貫通路111が、ランタンリング14の外側環状溝142(
図2参照)と連通することによってグリス通路16を構成している。貫通路111の位置は、ランタンリング14の貫通孔143と連通可能な位置に形成されていればよいが、耐摩耗スリーブ12の外周面全体にグリスが浸透しやすくなるように、グランドボックス11の軸線方向における略中央部付近とすることが好ましい。
【0023】
[耐摩耗スリーブ]
耐摩耗スリーブ12は、グランドボックス11の内部において、スクリュー軸3の外周面に捲着されている略円筒状の部材である。耐摩耗スリーブ12は、所望の耐摩耗性を有する各種材料によって形成することが可能である。一例として、SUS304(ステンレス鋼)や、或いはSS(機械構造用炭素鋼)等からなる円筒形部材に、高速フレーム溶射法(HVOF)で、タングステンカーバイド系のサーメット材料(硬度HRc68)を溶射したものを、軸封構造1を構成する耐摩耗スリーブ12として好ましく用いることができる。
【0024】
[グランドパッキン]
グランドパッキン13は、耐摩耗スリーブ12の外周面とグランドボックス11の内周面との間に充填されることにより、これらの両面間の隙間を封止するシーリング材である。グランドパッキン13は、潤滑剤を染み込ませた繊維からなり断面が方形状をした紐状のシーリング材であり、耐摩耗スリーブ12の外周寸法に合わせて適宜切断して耐摩耗スリーブ12の外周に何層か巻きつけて嵌め込むことによって、耐摩耗スリーブ12の外周面とグランドボックス11の内周面との間の隙間を埋める態様で充填することができる。
【0025】
[ランタンリング]
ランタンリング14は、
図2に示すように、その内周部に内側環状溝141、外周部に外側環状溝142が形成されているリング状の部材である。ランタンリング14には、内側環状溝141と外側環状溝142との間を貫通する貫通孔143が穿設されている。貫通孔143は、内側環状溝141及び外側環状溝142の円周面上において等間隔で複数形成されていることが好ましく、3か所から5か所程度に形成されていることがより好ましい。
【0026】
そして、軸封構造1においては、上記のランタンリング14を、グランドボックス11に形成されている貫通路111のランタンリング14側の開口の直下に外側環状溝142が配置されることとなるようにグランドパッキン13の間の適切な位置において耐摩耗スリーブ12の外周面に嵌着する態様で配置する。これにより、軸封構造1において、グランドボックス11の外部から、耐摩耗スリーブ12の外周面にグリスを供給するグリス通路16を形成することができる。
【0027】
ランタンリング14のサイズは、その内径が耐摩耗スリーブ12の外径以上で、且つ、当該外径に略等しく、その外径がグランドボックス11の内径以下で、且つ、当該内径に略等しければよい。又、ランタンリング14の内径は、耐摩耗スリーブ12の外周面とグランドボックス11の内周面との間の隙間の大きさが1mm以上3mm以下となるように設定することがより好ましい。この程度の大きさの隙間が存在することにより、スクリュー軸3の支持の安定を維持した状態において、尚且つ、グリス通路16を通じて供給されたグリスが耐摩耗スリーブ12の外周面の全域にまで浸透しやすくすることができる。
【0028】
[パッキン押え]
尚、グランドボックス11の他方の端部、即ち、固定用フランジ112とは反対側の端部には、グランドパッキン13及びランタンリング14を、固定する手段として、これらを固定用フランジ112に向けて押圧して固定するパッキン押え15を設けることにより、グランドパッキン13及びランタンリング14をグランドボックス11の内部に安定的に固定することができる。又、耐摩耗スリーブ12の摩耗に対して、一定程度までの軽微な摩耗であれば、パッキン押え15の増し締めによって隙間を埋める対応も行うことができる。
【0029】
[グリス通路]
上記のようにしてグランドボックス11及びランタンリング14に形成されているグリス通路16においては、グランドボックス11に形成されている貫通路111から排出されるグリスを、ランタンリング14の外側環状溝142で受けることができ、外側環状溝142に沿って2つのグリス流に分配することができる。その後、分配された2つのグリス流はグリス排出口の位置とはほぼ反対側の位置で合流するが、外側環状溝142には貫通孔143が穿設されているので、貫通孔143を通じて内側環状溝141にグリスを供給することができる。
【0030】
[耐摩耗スリーブ等各部品の交換方法]
尚、グランドボックス11、耐摩耗スリーブ12、ランタンリング14、及びパッキン押え15は、何れもスクリュー軸3の軸線方向に平行な面で分割可能な構造を有するものとすることがより好ましい。これにより、耐摩耗スリーブ12やグランドパッキン13といった個別の部品毎に交換の必要が生じた場合でも、速やかに必要な部品のみの交換を行うことができる。例えば、グランドボックス11やパッキン押え15の上下の分割面には、分割した夫々の分割片を接合するための接合フランジを設けることが好ましい。これにより、接合フランジを介してボルトやナットで接合することができるので、グランドボックス11やパッキン押え15の着脱を容易に行えるようになる。
【0031】
上記の部材の着脱について、より具体的に説明すると、例えば、軸封構造1の各構成部品を取り付けるときには、先ず、耐摩耗スリーブ12をスクリュー軸3の上下方向から嵌め入れる。そして、接合部を溶接し、その接合部には凹凸がないように平坦に仕上げる。次に、グランドボックス11の下方片をハウジング2の末端の固定板23に取り付け、続いてその上方片を固定板23に取り付けるとともに、上下のグランドボックス11を接合フランジにてボルトで締結する。次に、耐摩耗スリーブ12の外周寸法に合わせて切断したグランドパッキン13を、耐摩耗スリーブ12に巻き付けるようにして、スクリュー軸3に捲着した耐摩耗スリーブ12の外周面と、グランドボックス11の内周面との間に挿入し、続いて2つに分割したランタンリング14をリング状にして挿入し、更に2本のグランドパッキン13を挿入する。そして、パッキン押え15の上下片をスクリュー軸3の上下方向から嵌め入れて接合用フランジにてボルトで締結し、その先端部を耐摩耗スリーブ12の外周面とグランドボックス11の内周面とに挟まれる領域に押し込むようにしてグランドボックス11に固定する。これらの一連の作業により、パッキン押え15、及びランタンリング14を所定位置に固定することができる。軸封構造1の各部品を取り外すときは、取り付けるときと逆の手順で行えばよい。
【0032】
<スクリューコンベア>
本発明のスクリューコンベア10は、従来公知のスクリューコンベア同様、一端側に装入口21、他端側に排出口22を備えた略円筒形状のハウジング2の内部に、螺旋状のスクリュー羽根4を外周面に配したスクリュー軸3をハウジング2と同軸に収容した構造からなる。尚、スクリュー軸3の重量の大部分はスクリュー軸3の両方の端部の近傍において軸受け5によって支持されている。そして、ハウジング2の軸方向の両方の端部2a、2aからはスクリュー軸3の端部3a、3aが突出していて、このうち一方の端部3aに取り付けられている駆動機構6によってスクリュー軸3が回転駆動する。スクリューコンベア10においては、このようにして、スクリュー軸3がハウジング2に対して回転することにより、装入口21から投入された金属粉等が排出口22に向けて搬送される。
【0033】
本発明のスクリューコンベア10は、従来公知のスクリューコンベアと上述の基本構成の部分については共通するが、ハウジング2の両方の端部2a、2aに接合されている軸封構造について、大幅な改良を施したものであり、この軸封構造が、耐摩耗スリーブ12及びグリス通路16を備える本発明独自の軸封構造1とされていることを、主たる特徴とするものである。
【0034】
<銅精錬設備>
本発明のスクリューコンベアの軸封構造、及び、それを備えるスクリューコンベアの工業上の特に好ましい実施形態の一例として、銅精錬を行うための設備に用いられる各スクリューコンベアへの適用による実施を挙げることができる。例えば、銅製錬においては、上述の通り、乾鉱庫から自熔炉等の熔融炉への銅精鉱の搬送はスクリューコンベアで行われるが、本発明のスクリューコンベアの軸封構造は、銅製錬設備における銅精鉱の上記の搬送手段として使用されるスクリューコンベアのように、金属粉によるスクリュー軸の摩耗進行のリスクが高く、且つ、一度稼働させると次の定期修繕を行うまで原則として稼働を止めることが困難であるスクリューコンベアに対して、極めて好ましく適用することができる。
【0035】
銅製錬設備においては、一例として、一旦、スクリューコンベアを稼働させてから次に止めるまでの期間が約2年間に及ぶことがある。本発明の軸封構造を適用することにより、例えば上記のような長期にわたるスクリューコンベアの連続使用においても、耐摩耗スリーブの交換を行わず、即ち、設備を停止させることなく、搬送物の漏出も防止しながら、銅製錬設備の操業を長期に亘って連続して継続することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 軸封構造
11 グランドボックス
111 貫通路
112 固定用フランジ
12 耐摩耗スリーブ
13 グランドパッキン
14 ランタンリング
141 内側環状溝
142 外側環状溝
143 貫通孔
15 パッキン押え
16 グリス通路
2 ハウジング
21 装入口
22 排出口
23 固定板
3 スクリュー軸
4 スクリュー羽根
5 軸受け
6 駆動機構
10 スクリューコンベア