(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169574
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】撥液剤、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物および表示装置
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20231122BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20231122BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C09K3/18 104
C08F220/26
C08G18/62 016
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080766
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】植野 純平
(72)【発明者】
【氏名】小池 展行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀也
【テーマコード(参考)】
4H020
4J034
4J100
【Fターム(参考)】
4H020BA32
4J034DA01
4J034DB07
4J034DP18
4J034GA47
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4J100AJ02Q
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4J100JA35
4J100JA36
4J100JA44
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】撥液性および濡れ性のバランスに優れる含シリコーン重合性樹脂を含む撥液剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(a)で表される基を有する重合性単量体(A)および官能基(b)を有する重合性単量体(B)とを少なくとも重合成分とする共重合体であるシリコーン含有重合体(P)と、前記官能基(b)と反応性を有する官能基(c)と重合性不飽和基とを有する化合物(C)との反応物である含シリコーン重合性樹脂を含む撥液剤であって、前記重合性単量体(B)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(b)を有する重合性単量体であり、前記化合物(C)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(c)および重合性不飽和基を有する化合物である撥液剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a)で表される基を有する重合性単量体(A)および官能基(b)を有する重合性単量体(B)とを少なくとも重合成分とする共重合体であるシリコーン含有重合体(P)と、前記官能基(b)と反応性を有する官能基(c)と重合性不飽和基とを有する化合物(C)との反応物である含シリコーン重合性樹脂を含む撥液剤であって、
前記重合性単量体(B)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(b)を有する重合性単量体であり、
前記化合物(C)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(c)および重合性不飽和基を有する化合物である撥液剤。
【化1】
(前記一般式(a)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記重合体単量体(A)が下記一般式(a-1)で表される化合物である請求項1に記載の撥液剤。
【化2】
(前記一般式(a-1)中、
R
11、R
12、R
13およびxは、それぞれ前記一般式(a)のR
11、R
12、R
13およびxと同じであり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基である。)
【請求項3】
前記重合性単量体(B)が、下記一般式(b-1)で表される重合性単量体である請求項1又は2に記載の撥液剤。
【化3】
(前記一般式(b-1)中、
R
b1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
b2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基、又は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基およびエーテル結合(-O-)から選択される2種以上の組み合わせからなる2価の連結基であり、
R
b3は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基又はカルボン酸ハライド基である。)
【請求項4】
前記化合物(C)が、下記一般式(c-1)で表される化合物である請求項1又は2に記載の撥液剤。
【化4】
(前記一般式(c-1)中、
R
c1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
c2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基、又は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基およびエーテル結合(-O-)から選択される2種以上の組み合わせからなる2価の連結基であり、
R
c3は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基又はカルボン酸ハライド基である。)
【請求項5】
ウレタン結合を有する請求項1又は2に記載の撥液剤。
【請求項6】
前記一般式(a)で表される基を10~80質量%の範囲で有する請求項1又は2に記載の撥液剤。
【請求項7】
重量平均分子量が3,000~100,000の範囲にある請求項1又は2に記載の撥液剤。
【請求項8】
フッ素原子を含まない請求項1又は2に記載の撥液剤。
【請求項9】
インクジェット隔壁用である請求項1又は2に記載の撥液剤。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の撥液剤を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項11】
さらに活性エネルギー線硬化性樹脂(D)および/又は活性エネルギー線硬化性単量体(E)を含有する請求項10に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化物からなる隔壁を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液剤、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子、量子ドットディスプレイ、TFTアレイ、薄膜太陽電池等の光学素子の製造においては、発光層等の有機層のドットをインクジェット法によるパターン印刷が提案されている。
【0003】
インクジェット法においては、形成しようとするドットの輪郭に沿って隔壁を設け、当該インクジェット隔壁で囲まれた区画(以下、「開口部」ともいう。)内に、有機層の材料を含むインクを注入し、これを乾燥および/または加熱等することにより所望のパターンのドットを形成する。
【0004】
インクジェット法にてパターン印刷をする際には、隣接するドット間におけるインクの混合防止およびインクの均一塗布のため、撥インク剤を含有する感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のフッ素系撥インク剤を隔壁形成に用いた場合、隔壁上面の撥インク性は得られるものの、隔壁形成時に現像液に対する濡れ性が十分とならないほか、硬化後の開口部では撥インク剤由来の成分が隔壁側面から移行して、ドットの濡れ性が損なわれてしまう問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、撥液性および濡れ性のバランスに優れる撥液剤を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、硬化後の撥液性および硬化前の濡れ性のバランスに優れる活性エネルギー線硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の撥液剤等に関する。
1.下記一般式(a)で表される基を有する重合性単量体(A)および官能基(b)を有する重合性単量体(B)とを少なくとも重合成分とする共重合体であるシリコーン含有重合体(P)と、前記官能基(b)と反応性を有する官能基(c)と重合性不飽和基とを有する化合物(C)との反応物である含シリコーン重合性樹脂を含む撥液剤であって、
前記重合性単量体(B)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(b)を有する重合性単量体であり、
前記化合物(C)が、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(c)および重合性不飽和基を有する化合物である撥液剤。
【化1】
(前記一般式(a)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは1以上の整数である。)
2.前記重合体単量体(A)が下記一般式(a-1)で表される化合物である1に記載の撥液剤。
【化2】
(前記一般式(a-1)中、
R
11、R
12、R
13およびxは、それぞれ前記一般式(a)のR
11、R
12、R
13およびxと同じであり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基である。)
3.前記重合性単量体(B)が、下記一般式(b-1)で表される重合性単量体である1又は2に記載の撥液剤。
【化3】
(前記一般式(b-1)中、
R
b1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
b2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基、又は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基およびエーテル結合(-O-)から選択される2種以上の組み合わせからなる2価の連結基であり、
R
b3は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基又はカルボン酸ハライド基である。)
4.前記化合物(C)が、下記一般式(c-1)で表される化合物である1~3のいずれかに記載の撥液剤。
【化4】
(前記一般式(c-1)中、
R
c1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
c2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基、又は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基およびエーテル結合(-O-)から選択される2種以上の組み合わせからなる2価の連結基であり、
R
c3は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基又はカルボン酸ハライド基である。)
5.ウレタン結合を有する1~4のいずれかに記載の撥液剤。
6.前記一般式(a)で表される基を10~80質量%の範囲で有する1~5のいずれかに記載の撥液剤。
7.重量平均分子量が3,000~100,000の範囲にある請求項1~6のいずれかに記載の撥液剤。
8.フッ素原子を含まない1~7のいずれかに記載の撥液剤。
9.インクジェット隔壁用である1~8のいずれかに記載の撥液剤。
10.1~9のいずれかに記載の撥液剤を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
11.さらに活性エネルギー線硬化性樹脂(D)および/又は活性エネルギー線硬化性単量体(E)を含有する10に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
12.10又は11に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
13.12に記載の硬化物からなる隔壁を備える表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、撥液性および濡れ性に優れる含シリコーン重合性樹脂撥液剤が提供できる。
本発明により、硬化物が撥液性および濡れ性を示すことができる活性エネルギー線硬化性組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
本願明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方を意味する。
【0011】
[含シリコーン重合性樹脂撥液剤]
本発明の撥液剤に含まれる含シリコーン重合性樹脂(以下、「本発明の含シリコーン重合性樹脂」という場合がある)は、特定のシリコーン含有基を有する重合性単量体(A)および官能基(b)を有する重合性単量体(B)とを少なくとも重合成分とする共重合体であるシリコーン含有重合体(P)と、前記官能基(b)と反応性を有する官能基(c)と重合性不飽和基とを有する化合物(C)との反応物である
【0012】
本発明において「含シリコーン重合性樹脂」とはシリコーン鎖を有する重合性樹脂という意味であり、好ましくはシリコーン鎖を側鎖に有する重合性樹脂である。ここで「側鎖」とは重合性樹脂の最も長い分子鎖を「主鎖」とした場合の当該主鎖以外の分子鎖である。
以下、本発明の含シリコーン重合性樹脂の各構成単位について説明する。
【0013】
重合体(P)は、下記一般式(a)で表される基を有する重合性単量体(A)および官能基(b)を有する重合性単量体(B)とを少なくとも重合成分とする共重合体である。
【0014】
【化5】
(前記一般式(a)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは1以上の整数である。)
【0015】
本発明において「重合性単量体」とは、重合性不飽和基を有する化合物という意味であり、重合性単量体(A)および重合性単量体(B)が有する重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、アリル基、スチリル基、マレイミド基等のC=C含有基が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性や重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
また、重合性単量体が有する重合性不飽和基の数は1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0016】
本発明において「重合成分」とは、重合体を構成する成分という意味であり、重合体を構成しない溶媒や重合開始剤等は含まれない。
【0017】
前記一般式(a)において、R11は、好ましくはメチル基又はトリメチルシロキシ基であり、R12およびR13は、好ましくはメチル基である。
【0018】
前記一般式(a)において、xは1以上であればよく、xの数平均は、好ましくは1~200の範囲であり、より好ましくは1~150の範囲であり、さらに好ましくは1~75の範囲であり、特に好ましくは1~20の範囲である。
【0019】
重合性単量体(A)は、好ましくは下記一般式(a-1)で表される化合物である。
【0020】
【化6】
(前記一般式(a-1)中、
R
11、R
12、R
13およびxは、それぞれ前記一般式(a)のR
11、R
12、R
13およびxと同じであり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基である。)
【0021】
L1の2価の有機基は、好ましくは単結合、炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基である。
【0022】
L1の炭素原子数1~50のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ドデシレン基、イソプロピレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルへキシレン基、テトラメチルエチレン基等が挙げられる。
【0023】
L1の炭素原子数1~50のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基又はイソプロピレン基である。
【0024】
L1の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、例えば前記アルキレン基の中の1つの-CH2-が-O-に置換された基である。
L1の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレンオキシ基であり、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキレンオキシ基であり、さらに好ましくはメチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、オキシトリメチレン基、ブチレンオキシ基、オキシテトラメチレン基、ペンチレンオキシ基、ヘプチレンオキシ基又はオクチレンオキシ基である。
【0025】
L1の2価の有機基が、炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基である場合、これら2価の有機基は、-CH2-の一部がカルボニル基(-C(=O)-)、フェニレン基、アミド結合又はウレタン結合に置き変わっていてもよく、さらに炭素原子に水酸基等が置換していてもよい。
【0026】
重合性単量体(A)が有するシリコーン鎖は好ましくは短鎖であり、重合性単量体(A)はより好ましくは下記一般式(a-1-1)で表される化合物である。
【0027】
【化7】
(前記一般式(a-1-1)中、
複数のRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基であり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基である。)
【0028】
重合性単量体(A)は、公知の方法により製造することができ、市販品を用いてもよい。
重合性単量体(A)の具体例としては、α-(3-メタクリロイルオキシ)プロピルポリジメチルシロキサン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0029】
重合体(P)を構成する重合性単量体(A)は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0030】
重合性単量体(B)は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(b)を有する重合性単量体である。
【0031】
重合性単量体(B)は、好ましくは下記一般式(b-1)で表される重合性単量体である。
【0032】
【化8】
(前記一般式(b-1)中、
R
b1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
b2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基、又は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基およびエーテル結合(-O-)から選択される2種以上の組み合わせからなる2価の連結基であり、
R
b3は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基又はカルボン酸ハライド基である。)
【0033】
Rb1は、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0034】
Rb2の炭素原子数1~10のアルキレン基は直鎖でもよく、分岐でもよく、環状でもよい。
Rb2の炭素原子数6~18のアリーレン基は、単環でもよく、縮合環でもよい。Rb2の炭素原子数6~18のアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
Rb2のアルキレン基およびアリーレン基は、さらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0035】
Rb3は、重合性単量体(B)の官能基(b)に対応する。
【0036】
重合性単量体(B)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する重合性単量体;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する重合性単量体;(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を有する重合性単量体;(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド等のカルボン酸ハライド基を有する重合性単量体などが挙げられる。
【0037】
重合体(P)を構成する重合性単量体(B)は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0038】
重合性単量体(A)および重合性単量体(B)とを少なくとも重合成分とする共重合体である重合体(P)の重合形式は特に限定されず、重合性単量体(A)と重合性単量体(B)のランダム共重合体でもよく、重合性単量体(A)と重合性単量体(B)のブロック共重合体であってもよい。
【0039】
重合体(P)における重合性単量体(A)と重合性単量体(B)の質量比は、例えば重合性単量体(A):重合性単量体(B)=10:90~90:10であり、好ましくは重合性単量体(A):重合性単量体(B)=30:70~90:10であり、より好ましくは重合性単量体(A):重合性単量体(B)=40:60~90:10であり、さらに好ましくは50:50~90:10である。
【0040】
重合体(P)は、重合性単量体(A)と、重合性単量体(B)との共重合体であればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、重合性単量体(A)および重合性単量体(B)以外の重合性単量体の構成単位を含んでもよい。
重合体(P)は、例えば重合成分の80質量%以上が重合性単量体(A)および重合性単量体(B)であればよく、好ましくは重合成分の90質量%以上が重合性単量体(A)および重合性単量体(B)であればよく、より好ましくは重合成分が重合性単量体(A)および重合性単量体(B)のみからなる。
【0041】
重合体(P)を製造する方法は、重合単量体(A)および重合単量体(B)、さらに必要に応じてその他の重合性単量体を有機溶剤中にてラジカル重合開始剤の存在下で共重合させる方法が挙げられる。ここで用いる有機溶媒としては、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これら有機溶媒の選択は、沸点、原料又は重合体との相溶性、重合性を考慮して適宜選択される。重合単量体(A)は、特に有機溶媒との相溶性に優れるので、上記した有機溶媒にほぼ溶解できる。
【0042】
重合体(P)の製造に用いる前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化t-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2-クロロベンゾイル、過酸化3-クロロベンゾイル、過酸化4-クロロベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、過酸化4-ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸t-ブチル、t-ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸t-ブチル、過酢酸t-ブチル、過安息香酸t-ブチル、過2-エチルヘキサン酸t-ブチル、過フェニル酢酸t-ブチル、過4-メトキシ酢酸t-ブチル等の過酸化物;2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスプロパン、1,1’-アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’-アゾビスイソブタン、2,2’-アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオン酸メチル、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスブタン、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2-(4-メチルフェニルアゾ)-2-メチルマロノジニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸、3,5-ジヒドロキシメチルフェニルアゾ-2-メチルマロノジニトリル、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’-アゾビス-1-フェニルエタン、1,1’-アゾビスクメン、4-ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フエニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4-ニトロトリフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’-アゾビス-1,2-ジフェニルエタン等のアゾ化合物が挙げられる。さらに必要に応じてラウリルメルカプタン、2-メルカプトエタノ-ル、チオグリセロール、エチルチオグリコ-ル酸、オクチルチオグリコ-ル酸等の連鎖移動剤を使用することもできる。
【0043】
化合物(C)は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(c)および重合性不飽和基を有する化合物である。
官能基(c)は重合性単量体(B)の官能基(b)と反応性を有するものであり、重合体(P)中の官能基(b)と化合物(C)の官能基(c)とが反応することで、本発明の含シリコーン重合性樹脂となる。即ち、本発明の含シリコーン重合性樹脂は、重合性単量体(A)由来のシリコーンと、化合物(C)由来の重合性不飽和基を有する含シリコーン重合性樹脂である。
【0044】
化合物(C)が有する重合性不飽和基は、例えばビニル基を含む基であればよく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基、マレイミド基等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0045】
官能基(b)が水酸基である場合には、官能基(c)としてはイソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸ハライド基が挙げられ、官能基(b)がイソシアネート基である場合には、官能基(c)としては水酸基が挙げられ、官能基(b)がエポキシ基である場合には、官能基(c)としては水酸基、カルボキシル基、酸無水物基が挙げられ、官能基(b)がカルボキシル基である場合には、官能基(c)としては水酸基、エポキシ基が挙げられ、官能基(b)がカルボン酸ハライド基である場合には、官能基(c)として水酸基が挙げられる。
【0046】
重合性単量体(B)が有する官能基(b)と化合物(C)が有する官能基(c)は、本発明の含シリコーン重合性樹脂がウレタン結合を含むように選択すると好ましく、官能基(b)が水酸基であって官能基(c)がイソシアネート基、又は官能基(b)がイソシアネート基であって官能基(c)が水酸基であるとより好ましい。
【0047】
化合物(C)は、好ましくは下記一般式(c-1)で表される化合物である。
【0048】
【化9】
(前記一般式(c-1)中、
R
c1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
c2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基、又は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基およびエーテル結合(-O-)から選択される2種以上の組み合わせからなる2価の連結基であり、
R
c3は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基又はカルボン酸ハライド基である。)
【0049】
Rc1は、好ましくは水酸基又はメチル基である。
【0050】
Rc2の炭素原子数1~10のアルキレン基は直鎖でもよく、分岐でもよく、環状でもよい。
Rc2の炭素原子数6~18のアリーレン基は、単環でもよく、縮合環でもよい。Rc2の炭素原子数6~18のアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
Rc2のアルキレン基およびアリーレン基は、さらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0051】
Rc3は、化合物(C)の官能基(c)に対応する。
【0052】
化合物(C)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド等のカルボン酸ハライド基を有する不飽和単量体などが挙げられる。また、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基および複数の重合性不飽和基を有する不飽和単量体も用いることもできる。
【0053】
これらの中でも特に紫外線照射での重合硬化性が好ましい点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸が好ましい。
【0054】
重合性単量体(B)が、前記一般式(b-1)で表される重合性単量体であり、化合物(C)が、前記一般式(c-1)で表される化合物である場合、Rb3が水酸基であり、Rc3がイソシアネート基であると好ましい。
【0055】
重合体(P)が2種以上の官能基(b)を有する場合、化合物(C)は前記2種以上の官能基(b)の少なくとも1つと反応性を有する官能基を有すればよい。また、重合体(P)が有する官能基(b)と反応性を有するのであれば、2種以上の化合物(C)を用いてもよい。
【0056】
本発明の含シリコーン重合性樹脂における化合物(C)に由来する構造の割合は、例えば重合体(P)が有する官能基(b)の物質量の0.3~1.0当量であり、好ましくは重合体(P)が有する官能基(b)の物質量の0.5~1.0当量であり、より好ましくは重合体(P)が有する官能基(b)の物質量の0.8~1.0当量である。
【0057】
重合体(P)に化合物(C)を反応させる方法は、化合物(C)中の重合性不飽和基が重合しない条件で行えばよく、例えば、温度条件を30~120℃の範囲に調節して反応させることが好ましい。この反応は触媒や重合禁止剤の存在下、必要により有機溶剤の存在下に行うことが好ましい。
【0058】
例えば、官能基(b)が水酸基であって官能基(c)がイソシアネート基である場合、又は、官能基(b)がイソシアネート基であって官能基(c)が水酸基である場合、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等を使用し、ウレタン化反応触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛等を使用し、反応温度は、20~150℃の範囲(好ましくは40~120℃の範囲)で反応させる方法が好ましい。
また、官能基(b)がエポキシ基であって官能基(c)がカルボキシル基である場合、又は、官能基(b)がカルボキシル基であって官能基(c)がエポキシ基である場合は、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等を使用し、エステル化反応触媒としてトリエチルアミン等の第3級アミン類、塩化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィン類、塩化テトラブチルホスホニウム等の第4級ホスホニウム類等を使用し、反応温度80~130℃の範囲(好ましくは100~120℃の範囲)で反応させることが好ましい。
【0059】
上記反応で用いられる有機溶媒は、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性を考慮して適宜選択すればよい。
【0060】
本発明の含シリコーン重合性樹脂は、フッ素原子を含まないと好ましい。本発明の含シリコーン重合性樹脂がフッ素原子を含まないことで耐溶剤性を高めることができる。また、本発明の含シリコーン重合性樹脂がフッ素原子フリーな樹脂であることで、環境に対する蓄積性が低くなり、環境負荷を低減することができる。
【0061】
本発明の含シリコーン重合性樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000~20,000の範囲であり、より好ましくは1,500~10,000の範囲である。
本発明の含シリコーン重合性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3,000~80,000の範囲であり、より好ましくは4,000~50,000の範囲である。
本発明の含シリコーン重合性樹脂の数平均分子量および重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定する。
【0062】
本発明の含シリコーン重合性樹脂における重合性単量体(A)に由来する構造の割合は、例えば10~80質量%の範囲であり、好ましくは20~80質量%の範囲であり、さらに好ましくは30~80質量%の範囲である。
本発明の含シリコーン重合性樹脂における重合性単量体(A)に由来する構造の割合は、用いた原料の合計量に対する重合性単量体(A)の質量比率から算出した値である。
【0063】
本発明の含シリコーン重合性樹脂のおける前記一般式(a)で表されるシリコーン鎖の含有率は、好ましくは5~60質量%の範囲であり、より好ましくは15~60質量%の範囲であり、さらに好ましくは20~60質量%の範囲である。
本発明の含シリコーン重合性樹脂のシリコーン鎖含有率は、用いた原料の合計量に対するシリコーン鎖の質量比率から算出した値である。
【0064】
[活性エネルギー線硬化性組成物]
本発明の含シリコーン重合性樹脂は、それ自体を活性エネルギー線硬化性組成物の主剤として用いることができる。また、本発明の含シリコーン重合性樹脂は、優れた撥液性能を有しているため、活性エネルギー線硬化性組成物に添加する表面改質剤(撥液剤)として機能し、得られる硬化物に優れた撥液性を付与できる。
【0065】
本発明の含シリコーン重合性樹脂は、含フッ素樹脂ほど撥水性が高くないため、本発明の含シリコーン重合性樹脂を含む硬化前塗膜が現像液と接触した場合には、表面に偏在している本発明の含シリコーン重合性樹脂は現像液に浸透することができ、現像液との十分な濡れ性を確保することができる。その一方で、本発明の含シリコーン重合性樹脂を含む塗膜を活性エネルギー線によって硬化した場合には、当該硬化膜は必要十分な撥液性を示すことができる。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、本発明の含シリコーン重合性樹脂を含有すればよく、さらに活性エネルギー線硬化性樹脂(D)および/又は活性エネルギー線硬化性単量体(E)を含有してもよい。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、活性エネルギー線硬化性樹脂(D)と活性エネルギー線硬化性単量体(E)とは、それぞれ単独で用いてもよいが、併用しても構わない。
【0067】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂(D)としては、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド基を有する樹脂等が挙げられるが、透明性や低収縮性等の点からウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
これら活性エネルギー線硬化性樹脂(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
活性エネルギー線硬化性樹脂(D)であるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂が挙げられる。
【0069】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε-カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノおよびジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε-カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン-ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0072】
上記した脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有するアクリレート化合物との反応は、ウレタン化触媒の存在下、常法により行うことができる。ここで使用し得るウレタン化触媒は、具体的には、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのホフィン類、ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛などの金属原子含有化合物が挙げられる。
【0073】
これらのウレタンアクリレート樹脂の中でも、脂肪族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるウレタンアクリレート樹脂が硬化塗膜の透明性に優れ、かつ、活性エネルギー線に対する感度が良好で硬化性に優れる点から好ましい。
【0074】
活性エネルギー線硬化性樹脂(D)である不飽和ポリエステル樹脂は、α,β-不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、および、グリコール類の重縮合によって得られる硬化性樹脂であり、α,β-不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸、およびこれらのエステル等が挙げられる。芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸およびこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびこれらのエステル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2-ジ-(4-ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に使用できる。
【0075】
活性エネルギー線硬化性樹脂(D)であるエポキシビニルエステル樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0076】
活性エネルギー線硬化性樹脂(D)であるマレイミド基を有する樹脂としては、N-ヒドロキシエチルマレイミドとイソホロンジイソシアネートとをウレタン化して得られる2官能マレイミドウレタン化合物、マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られる2官能マレイミドエステル化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とをエステル化して得られる4官能マレイミドエステル化合物、マレイミド酢酸と多価アルコール化合物とをエステル化して得られる多官能マレイミドエステル化合物等が挙げられる。
【0077】
活性エネルギー線硬化性樹脂(D)はアルカリ可溶性であってもよく、活性エネルギー線硬化性樹脂のうちカルボキシル基を有するものはアルカリ可溶性樹脂として用いることができる。
【0078】
前記活性エネルギー線硬化性単量体(E)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150~1,000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150~1,000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-ステアリルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、2-マレイミドエチル-エチルカーボネート、2-マレイミドエチル-プロピルカーボネート、N-エチル-(2-マレイミドエチル)カーバメート、N,N-ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール-ビス(3-マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2-マレイミドエチル)カーボネート、1,4-ジマレイミドシクロヘキサン等のマレイミド類などが挙げられる。
【0079】
これらのなかでも硬化塗膜の硬度に優れる点から、活性エネルギー線硬化性単量体(E)は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0080】
これらの活性エネルギー線硬化性単量体(E)は、1種単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0081】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、本発明の含シリコーン重合性樹脂を表面改質剤として使用する場合、その使用量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(D)および活性エネルギー線硬化性単量体(E)の合計100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲であることが好ましく、0.1~5質量部の範囲であることがより好ましい。
本発明の含シリコーン重合性樹脂の使用量がこの範囲であれば、撥液性等を十分なものにすることができ、該組成物の硬化後の硬度や透明性も十分なものとすることができる。
【0082】
本発明の含シリコーン重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、該含シリコーン重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤(F)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(F)や光増感剤を添加する必要はない。
【0083】
前記光重合開始剤(F)としては、分子内開裂型光重合開始剤および水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0084】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ-ケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。
【0085】
上記の光重合開始剤(F)の中でも、活性エネルギー線硬化性組成物中の前記活性エネルギー線硬化性樹脂(D)および活性エネルギー線硬化性単量体(E)との相溶性に優れる点から、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、およびベンゾフェノンが好ましく、特に、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。これらの光重合開始剤(F)は、1種単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0086】
また、前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o-トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0087】
これらの光重合開始剤および光増感剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、各々0.01~20質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましく、0.3~7質量部がさらに好ましい。
【0088】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、粘度や屈折率の調整、あるいは、塗膜の色調の調整やその他の塗料性状や塗膜物性の調整を目的に各種の配合材料、例えば、各種有機溶剤、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、カーボン、酸化チタン、アルミナ、銅、シリカ微粒子等の各種の有機又は無機粒子、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、防錆剤、スリップ剤、ワックス、艶調整剤、離型剤、相溶化剤、導電調整剤、顔料、染料、分散剤、分散安定剤、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤等を併用することができる。
【0089】
上記の各配合成分中、有機溶媒は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0090】
ここで有機溶媒の使用量は、用途や目的とする膜厚や粘度によって異なるが、硬化成分の全質量に対して、質量基準で、0.5~4倍量の範囲であることが好ましい。
【0091】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0092】
活性エネルギー線は紫外線であることが好ましく、酸素等による硬化阻害を避けるため、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、紫外線を照射すると好ましい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、紫外線にて硬化した後、熱処理を行ってもよい。
【0093】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の塗工方法は用途により異なるが、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法、あるいは各種金型を用いた成形方法等が挙げられる。
【0094】
[隔壁]
本発明の含シリコーン重合性樹脂を含有する組成物の硬化物からなる隔壁(以下、単に「本発明の隔壁」という場合がある)は、表示装置用の隔壁として好適であり、インクジェット隔壁としてより好適である。インクジェット隔壁とは、インク(例えばRGBインク)をインクジェット方式で打ち込んでカラーフィルターを形成する際に必要となる隔壁である。
【0095】
本発明の隔壁は、例えば本発明の含シリコーン重合性樹脂を含有する組成物を基材上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜にマスクを介して活性エネルギー線を照射して硬化膜とし、活性エネルギー線未露光の部分を現像液で洗い流すことで形成できる。
【0096】
本発明の隔壁は、基材上に直接形成されてもよいし、必要に応じて基材に塗布されたブラックマトリックスおよび/またはクリアコート上に形成されてもよい。
【0097】
表示装置用の基材としては、一般的にカラーフィルターに用いられているものを用いることができる。例えば、無アルカリガラス等のいわゆる透明ガラス基板、および、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の樹脂基板等を挙げることができる。
【0098】
本発明の隔壁を形成し得る本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、キャリアフィルム(支持体)上に塗布、乾燥させて得られるドライフィルムの形態とすることができる。ドライフィルム化に際しては、硬化性組成物を上記有機溶剤により希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して、乾燥塗膜とすることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で0.1~100μm、好適には0.5~50μmの範囲で適宜選択される。
【0099】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、0.1~150μmの範囲で適宜選択される。
【0100】
この場合、キャリアフィルム上に塗膜を成膜した後、塗膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、塗膜の表面にさらに、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離する際に、塗膜とカバーフィルムとの接着力が、塗膜とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0101】
本発明の隔壁を形成し得る硬化性組成物について、有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整した後、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法、ダイコーター法等の方法により塗布して、約50℃~90℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの乾燥塗膜を形成することができる。
また、硬化性組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、これを、ラミネーター等により硬化性組成物の塗膜が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に塗膜の層を形成することができる。
【0102】
上記基材としては、400~800nmの全光透過率が20%以上、好ましくは50%以上の透明又は半透明基材を用いる。具体的には、ガラス基材、PEN基材、PET基材が挙げられる。
【0103】
硬化性組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど、蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、および、ノズルより支持体に吹き付ける方法を用いて行うことができる。
【0104】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接活性エネルギー線を照射し画像を描くダイレクトイメージング装置)も用いることができる。
直描機の光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にある光を用いているものであればよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~1,000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0105】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0106】
[その他用途]
本発明の含シリコーン重合性樹脂は、硬化物に撥液性のみならず、レベリング性、防汚性、耐擦傷性を付与することができる。
【0107】
本発明の含シリコーン重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物を用いて防汚性(撥液性、耐指紋性等)を付与できる物品としては、TACフィルム等の液晶ディスプレイ(LCD)の偏光板用フィルム;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ画面;タッチパネル;携帯電話等の電子端末の筐体又は画面;液晶ディスプレイ用カラーフィルター(以下、「CF」という。)用透明保護膜;液晶TFTアレイ用有機絶縁膜;電子回路形成用インクジェットインク;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス面;カメラ、ビデオカメラ、メガネ等の光学レンズ;腕時計等の時計の風防、ガラス面;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ;太陽電池用カバーガラス又はフィルム;化粧板等の各種建材;住宅の窓ガラス;家具等の木工材料、人工・合成皮革、家電の筐体等の各種プラスチック成形品、FRP浴槽などが挙げられる。これらの物品表面に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化塗膜を形成することで、物品表面に防汚性を付与することができる。また、本発明の含シリコーン重合性樹脂を各物品に適した各種塗料に添加し、塗布・乾燥することで、物品表面に防汚性を付与することも可能である。
【0108】
また、本発明の含シリコーン重合性樹脂を添加し、レベリング性を向上するとともに、塗膜に防汚性(撥インク性、耐指紋性等)や耐薬品性を付与できる塗材としては、TACフィルム等のLCDの偏光板用フィルムのハードコート材、アンチグレア(AG:防眩)コート材又は反射防止(LR)コート材;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ画面用ハードコート材;タッチパネル用ハードコート材;CFに使用されるRGBの各画素を形成するためのカラーレジスト、印刷インク、インクジェットインク又は塗料;CFのブラックマトリックス用のブラックレジスト、印刷インク、インクジェットインク又は塗料;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の画素隔壁用樹脂組成物;携帯電話等の電子端末筐体用塗料又はハードコート材;携帯電話の画面用ハードコート材;CF表面を保護する透明保護膜用塗料;液晶TFTアレイの有機絶縁膜用塗料;電子回路形成用インクジェットインク;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体用ハードコート材;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム用ハードコート材;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー用コート材;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス用コート材;カメラ、ビデオカメラ、メガネ等の光学レンズ用コート材;腕時計等の時計の風防、ガラス用コート材;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ用コート材;太陽電池用カバーガラス又はフィルムの反射防止膜用塗料;化粧板等の各種建材用印刷インキ又は塗料;住宅の窓ガラス用コート材;家具等の木工用塗料;人工・合成皮革用コート材;家電の筐体等の各種プラスチック成形品用塗料又はコート材;FRP浴槽用塗料又はコート材などが挙げられる。
【0109】
さらに、本発明の含シリコーン重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物を用いて耐擦傷性(耐スクラッチ性)および防汚性を付与できる物品としては、LCDのバックライト部材であるプリズムシート又は拡散シート等が挙げられる。また、プリズムシート又は拡散シート用コート材に本発明の含シリコーン重合性樹脂を添加することで、該コート材のレベリング性を向上するとともに、コート材の塗膜に耐擦傷性(耐スクラッチ性)および防汚性を付与することができる。
【0110】
また、本発明の含シリコーン重合性樹脂の硬化塗膜は低屈折率であるため、LCD等の各種ディスプレイ表面への蛍光灯等の映り込みを防止する反射防止層中の低屈折率層用塗材としても用いることができる。また、反射防止層用の塗材、特に反射防止層中の低屈折率層用塗材に本発明の含シリコーン重合性樹脂を添加することで、塗膜の低屈折率を維持しつつ、塗膜表面に防汚性を付与することもできる。
【0111】
本発明の含シリコーン重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物を用いることができるその他の用途として、光ファイバクラッド材、導波路、液晶パネルの封止材、各種光学用シール材、光学用接着剤等が挙げられる。
【0112】
特に、LCD用偏光板の保護フィルム用コート材用途のうち、アンチグレアコート材として本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いる場合、上記した各組成のうち、シリカ微粒子、アクリル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子等の無機又は有機微粒子を、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の硬化成分の全質量の0.1~0.5倍量となる割合で配合することで防眩性に優れたものとなるため好ましい。
【0113】
また、本発明の含シリコーン重合性樹脂又は活性エネルギー線硬化性組成物を、LCD用偏光板の保護フィルム用アンチグレアコート材に用いる場合、コート材を硬化させる前に凹凸の表面形状の金型に接触させた後、金型と反対側から活性エネルギー線を照射して硬化し、コート層の表面をエンボス加工して防眩性を付与する転写法にも適用できる。
【実施例0114】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0115】
下記実施例と比較例で得られた含フッ素樹脂のIRスペクトル、13C-NMRスペクトルおよびGPCの測定条件は下記の通りである。
[IRスペクトル測定条件]
実施例で得られた樹脂溶液を下記装置を用いてKBr法にて測定した。
装置:日本分光株式会社製「FT/IR-6100」
【0116】
[13C-NMRスペクトル測定条件]
装置:日本電子株式会社製「JNM-ECA500」
溶媒:アセトン-d6
【0117】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR-H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:蒸発型光散乱検出器(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0118】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
東ソー株式会社製「F-550」
【0119】
(実施例1:含シリコーン重合性樹脂(1)の合成)
窒素置換したフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)41.9質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら95℃に昇温した。3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン33.5質量部と、ヒドロキシプロピルメタクリレート8.4質量部とをPGMEA27.1質量部に溶解したモノマー溶液と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート2.1質量部をPGMEA20質量部に溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を95℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後95℃で5時間撹拌し、次いで110℃で1時間攪拌した後、減圧下で溶媒61.1gを留去した。
【0120】
次いで、上記で得られた溶液に、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.02質量部およびウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.02質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、75℃を保ちながら、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)8.2質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、75℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して4時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認した。この反応溶液にPGMEA172gをさらに加えて含シリコーン重合性樹脂(1)を20質量%含有するPGMEA溶液を得た。
【0121】
得られた含シリコーン重合性樹脂(1)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)12,000で、数平均分子量(Mn)は2,700であった。また、原料仕込み比から、含シリコーン重合性樹脂(1)中の-Si[OSi(CH3)3]3で表される官能基の含有量は50質量%であった。
【0122】
(活性エネルギー線硬化性組成物の調製)
アルカリ可溶性樹脂40質量%樹脂溶液(アクリディック ZL-295、DIC株式会社製)を3.0質量部、アロニックスM-402(東亞合成化学株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)を1.2質量部、含シリコーン重合性樹脂(1)を固形分換算で1.0質量%となるように添加し、PGMEAで希釈してNV19.5%にした活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0123】
(活性エネルギー線硬化性組成物塗膜の成膜と評価)
得られた活性エネルギー線硬化性組成物1mLを7cm×7cmのガラス基板の中央部分に滴下し、回転数1,000rpm、回転時間10秒でスピンコ-ティングした後、80℃で3分間加熱乾燥させ溶剤を揮発させた。次に、乾燥した塗膜に紫外線硬化装置(空気雰囲気下、高圧水銀灯、紫外線照射量0.5kJ/m2)で紫外線(UV)を照射して硬化させた。その後、0.5%KOH系現像液を用いて現像をし、更に230℃で20分間熱処理し塗膜を得た。
【0124】
得られた塗膜について、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製「MODEL CA-W701」)を用いて、PGMEAの接触角を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:PGMEA接触角が40度超
△:PGMEA接触角が30度以上40以下
×:PGMEA接触角が30度未満
【0125】
(現像液の経時接触角の測定)
得られた活性エネルギー線硬化性組成物1mLを7cm×7cmのガラス基板の中央部分に滴下し、回転数1,000rpm、回転時間10秒でスピンコ-ティングした後、80℃で3分間加熱乾燥させ溶剤を揮発させて、UV照射前の乾燥塗膜を得た。
【0126】
得られた乾燥塗膜について、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製「MODEL CA-W701」)を用いて、無機アルカリ系レジスト現像液(セミクリーンDL-A10、横浜油脂工業株式会社製)の5%水溶液の経時での接触角を測定した。具体的には現像液滴下直後の接触角を初期接触角とし、現像液滴下10分後の接触角との差を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
尚、接触角の経時変化が大きいことで塗膜が現像性に優れると評価できる。
○:初期接触角との差が30度超
△:初期接触角との差が20度以上30度以下
×:初期接触角との差が20度未満
【0127】
(実施例2:含シリコーン重合性樹脂(2)の合成)
窒素置換したフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)66.8質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら95℃に昇温した。3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン33.0質量部と、ヒドロキシプロピルメタクリレート33.8質量部とをPGMEA50.0質量部に溶解したモノマー溶液と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート3.3質量部をPGMEA25質量部に溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を95℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後95℃で5時間撹拌し、次いで110℃で1時間攪拌した後、減圧下で溶媒97.34gを留去した。
【0128】
次いで、上記で得られた溶液に、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.03質量部およびウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.03質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、75℃を保ちながら、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)33.2質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、75℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して4時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認した。この反応溶液にPGMEA172gをさらに加えて含シリコーン重合性樹脂(2)を20質量%含有するPGMEA溶液を得た。
【0129】
得られた含シリコーン重合性樹脂(2)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)14,000で、数平均分子量(Mn)は2,900であった。また、原料仕込み比から、含シリコーン重合性樹脂(2)中の-Si[OSi(CH3)3]3で表される官能基の含有量は25質量%であった。
【0130】
含シリコーン重合性樹脂(1)の代わりに含フッ素重合性樹脂(2)を用いた他は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、当該組成物から得られた塗膜の接触角を評価した。結果を表1に示す。
【0131】
(比較例1:含フッ素重合性樹脂(1’)の合成)
乾燥空気置換したフラスコに、下記一般式(a’)で表される両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物20質量部、溶媒としてジイソプロピルエーテル10質量部、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.006質量部および中和剤としてトリエチルアミン3.3質量部を仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を10℃に保ちながらメタクリル酸クロライド3.1質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で1時間攪拌し、昇温して30℃で1時間攪拌した後、50℃に昇温して10時間攪拌することにより反応を行い、ガスクロマトグラフィー測定にてメタクリル酸クロライドの消失が確認された。
【0132】
【化10】
(前記一般式(a’)中、
複数のX
1は、それぞれ独立に、パーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものであり、フッ素原子の数が平均46である。
GPCによる重量平均分子量は1,500であった。)
【0133】
次いで、溶媒としてジイソプロピルエーテル70質量部を追加した後、イオン交換水80質量部を混合して攪拌してから静置し水層を分離させて取り除く方法による洗浄を3回繰り返した。次いで、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.02質量部を添加し、脱水剤として硫酸マグネシウム8質量部を添加して1日間静置することで完全に脱水した後、脱水剤を濾別した。減圧下で溶媒を留去することによって、下記一般式(a’-1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有する化合物(A’)を得た。
【0134】
【化11】
(前記一般式(a’-1)中、
複数のX
1は、それぞれ独立に、パーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものであり、フッ素原子の数が平均46である。)
【0135】
窒素置換したフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン100質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら95℃に昇温した。次いで、化合物(A’)20質量部と、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート50.1質量部をメチルイソブチルケトン120質量部に溶解したモノマー溶液と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10.5質量部をメチルイソブチルケトン80質量部に溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を95℃に保ちながら同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後95℃で5時間撹拌し、次いで105℃で2時間攪拌した後、減圧下で溶媒262.1質量部を留去した。
次いで、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.1質量部、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.03質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、75℃を保ちながら、AOI29.9質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、75℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して4時間攪拌することにより、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、メチルイソブチルケトン362質量部を加えて含フッ素重合性樹脂(1’)を20質量%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。
【0136】
得られた含フッ素重合性樹脂(1’)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)は10,000であり、数平均分子量(Mn)は2,000であった。
【0137】
含シリコーン重合性樹脂(1)の代わりに含フッ素重合性樹脂(1’)を用いた他は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、当該組成物から得られた塗膜の接触角を評価した。結果を表1に示す。
【0138】
(比較例2:含シリコーン重合性樹脂を使用しない場合の評価)
含シリコーン重合性樹脂(1)を用いなかった他は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、当該組成物から得られた塗膜の接触角を評価した。結果を表1に示す。
【0139】
【0140】
表1の結果から、実施例1および2の含シリコーン重合性樹脂を用いた場合は、硬化前の濡れ性と硬化後の撥液性の両方が得られているのに対し、比較例1の含フッ素樹脂では硬化前の濡れ性が得られておらず、何も添加していない比較例2では硬化後の撥液性が得られていない。