(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169773
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ボイラーのガスシール機構及びこれを具備する煙灰除去装置
(51)【国際特許分類】
F22B 37/36 20060101AFI20231122BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20231122BHJP
F22B 37/48 20060101ALI20231122BHJP
C22B 15/00 20060101ALN20231122BHJP
C22B 15/06 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
F22B37/36 C
F27D17/00 104K
F27D17/00 105K
F22B37/48 C
C22B15/00 102
C22B15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081092
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 和暉
【テーマコード(参考)】
4K001
4K056
【Fターム(参考)】
4K001AA09
4K001BA03
4K001CA03
4K001DA03
4K001GA04
4K001GA06
4K001GB09
4K001JA01
4K056AA02
4K056AA05
4K056CA04
4K056DA04
4K056DA13
4K056DB22
(57)【要約】
【課題】水管群に接続された連結軸の被打撃部が貫通する廃熱ボイラーの外殻壁の貫通孔を封止可能なガスシール機構及びこれを具備する煙灰除去装置を提供する。
【解決手段】 ボイラー内の水管群に接続された連結軸13A、13Bの先端部が貫通する該ボイラーの外殻壁の貫通孔2aを封止するガスシール機構であって、連結軸13A、13Bの先端部を取り囲むように貫通孔2aの周縁部に設けられた筒状のケーシング部21と、ケーシング部21の内壁面に沿って全周に亘って設けられた可撓性のシール部材22と、ケーシング部21の内側に位置してシール部材22に全周に亘って摺接する筒状の摺接部23と、摺接部23の内壁面に全周に亘って接続され且つ連結軸13A、13Bの該先端部に周設された板状部材24とを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラー内の水管群に接続された連結軸の先端部が貫通する該ボイラーの外殻壁の貫通孔を封止するガスシール機構であって、該連結軸の先端部を取り囲むように該貫通孔の周縁部に設けられた筒状のケーシング部と、該ケーシング部の内壁面に沿って全周に亘って設けられた可撓性のシール部材と、該ケーシング部の内側に位置して該シール部材に全周に亘って摺接する筒状の摺接部と、該摺接部の内壁面に全周に亘って接続され且つ該連結軸の該先端部に周設された板状部材とを有するガスシール機構。
【請求項2】
前記ケーシング部とその内側に位置する前記摺接部との間の隙間に差し込まれることで、該ケーシング部の内壁面に全周に亘って設けられている突起部との間で前記シール部材を挟み込んで押圧する押圧部を更に有する、請求項1に記載のガスシール機構。
【請求項3】
前記シール部材がカーボン繊維からなるグランドパッキンである、請求項1又は2に記載のガスシール機構。
【請求項4】
ボイラー内に配列された水管群に接続して振動を伝える連結軸と、該連結軸の先端部に取り付けられた被打撃部と、該ボイラーの外側において該被打撃部を打撃する打撃手段と、該連結軸のうち該被打撃部が取り付けられている端部が貫通する該ボイラーの外殻壁の貫通孔を封止する請求項1に記載のガスシール機構とを具備する煙灰除去装置。
【請求項5】
前記被打撃部は、打撃手段によって打撃されるヘッド部と、該ヘッド部をその打撃方向に往復動自在に支持する支持部と、これらヘッド部と支持部との間に挟持され、該ヘッド部の打撃時に弾性変形する弾性体と、該ヘッド部の被打撃側の面に着脱可能に設けられた板状体とを有する、請求項4に記載の煙灰除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラーのガスシール機構及びこれを具備する煙灰除去装置に関し、特にボイラー内に設けた水管群に付着した煙灰を該水管群に接続した連結軸を介してボイラー外の打撃手段で振動させて除去するため、該連結軸が貫通するボイラー外殻壁の貫通孔を封止するガスシール機構及びこれを具備する煙灰除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式の銅精錬では、主として硫化鉱からなる原料鉱石を浮遊選鉱することで得た銅精鉱を自熔炉、転炉、及び精製炉で順に熔錬処理することで、電解精製に供する精製粗銅が生成される。具体的には、自熔炉では主原料の銅品位20~30%程度の銅精鉱と副原料の煙灰、かん調整剤、補助燃料等とを酸素富化空気により酸化・熔融することで、銅品位60%程度のマットが生成されると共に比重差により該マットがスラグから分離される。このマットは自熔炉から抜き出されて転炉に移送され、ここで酸素富化空気により更に酸化された後、精製炉に移送されて酸素が除去されることで銅品位99%程度の精製粗銅が生成される。このようにして生成される精製粗銅を鋳造して得たアノードを電解精製することで、銅品位99.99%以上の純銅からなる電気銅が製造される。
【0003】
上記のように、乾式の銅精錬では硫黄分を含んだ銅精鉱が高温の溶融状態で酸化処理されるため、自熔炉や転炉からは亜硫酸ガスを含んだ高温の排ガスが排出される。そこで、この排ガスは先ず廃熱ボイラーに導入され、該廃熱ボイラー内に設けた水管群の内部を流れるボイラー水との熱交換により熱エネルギーの回収が行なわれた後、硫酸の原料として硫酸製造設備に送られる。
【0004】
ところで、上記の自熔炉や転炉に代表される製錬炉においては、炉内に装入した原料や副原料の一部が製錬炉内で処理されることなく煙灰として排ガスと共に排出されることがあった。この排ガスに含まれる煙灰(ダストとも称する)は、廃熱ボイラーの後段の集塵機でそのほとんどが回収され、前述した副原料として再利用されるが、一部は廃熱ボイラーの上記水管群表面に付着して伝熱効率を低下させることがあった。また、付着した煙灰には硫化鉱由来のハロゲンなどの腐食性元素が含まれるため、上記のように水管群の表面に煙灰を付着させたままの状態にしておくと該水管群が表面から腐食することがあった。
【0005】
そこで、廃熱ボイラーには、水管群を打撃により振動させることでそれらの表面に付着した煙灰を除去する煙灰除去装置が一般的に設けられている。例えば特許文献1には、廃熱ボイラー内に配設されている複数の水管群に結合している連結軸の端部をエアーノッカーで打撃してこれら水管群を定期的に振動させることで、該水管群に付着した煙灰を除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のエアーノッカーなどの打撃手段は廃熱ボイラーの外側に設けられているため、水管群に接続する上記連結軸のうち、該打撃手段によって打撃される端部の被打撃部は、廃熱ボイラーの外殻壁に設けた貫通孔を挿通させて廃熱ボイラーの外側に突出させる必要があった。この貫通孔は、該打撃手段による打撃時の該連結軸の振動を阻害しないように該連結軸よりも大きく開口しており、よって該貫通孔と連結軸との間には隙間が存在している。この隙間から排ガスが外部に漏れるのを防止するため、伸縮継手で貫通孔の周縁部と連結軸とを接続して該隙間を封止することが行なわれている。
【0008】
しかしながら、伸縮継手は長期に亘って繰り返される振動によりその伸縮部が金属疲労等により劣化して亀裂が生じ、そこから排ガスが外部に漏れ出すことがあった。この場合は亀裂部分を補修するか、或いは伸縮継手自体を新しいものと交換することで対処することができるが、この作業の間は廃熱ボイラーの運転を停止する必要があるため、銅製錬の生産性に悪影響を及ぼすおそれがあった。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水管群に接続された連結軸の被打撃部が貫通する廃熱ボイラーの外殻壁の貫通孔を、伸縮継手を用いることなく封止することの可能なガスシール機構及びこれを具備する煙灰除去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るガスシール機構は、ボイラー内の水管群に接続された連結軸の先端部が貫通する該ボイラーの外殻壁の貫通孔を封止するガスシール機構であって、該連結軸の先端部を取り囲むように該貫通孔の周縁部に設けられた筒状のケーシング部と、該ケーシング部の内壁面に沿って全周に亘って設けられた可撓性のシール部材と、該ケーシング部の内側に位置して該シール部材に全周に亘って摺接する筒状の摺接部と、該摺接部の内壁面に全周に亘って接続され且つ該連結軸の該先端部に周設された板状部材とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボイラー内に設けた水管群に振動を伝える役割を担う連結軸が貫通するボイラー外殻壁の貫通孔を伸縮継手を用いることなく封止することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の煙灰除去装置が好適に適用される廃熱ボイラーの模式的な側面図である。
【
図2】
図1の廃熱ボイラーの対流部の斜視図である。
【
図3】
図2の廃熱ボイラーの対流部をその排ガスの流れ方向に垂直な面で切断した縦断面図である。
【
図4】
図3の廃熱ボイラーの対流部をIV-IV線で切断した水平断面図である。
【
図5】
図3の廃熱ボイラーの対流部をV-V線で切断した縦断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の煙灰除去装置が有するガスシール機構及びその周りの部分断面図である。
【
図8】本発明の実施形態の煙灰除去装置が有する被打撃体の代替例を示す側面図である。
【
図9】従来の煙灰除去装置が有する伸縮継手及びその周りの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.銅製錬プラントの廃熱ボイラー
先ず、本発明の実施形態のガスシール機構を具備する煙灰除去装置が好適に用いられる銅製錬プラントの廃熱ボイラーについて図面を参照しながら説明する。乾式の銅製錬プラントにおいては、主として硫化鉱からなる原料鉱石を浮遊選鉱することで得た銅精鉱を自熔炉、転炉、及び精製炉で順に熔錬処理することで、電解精製に供する精製粗銅が生成される。
【0013】
具体的には、先ず自熔炉において、その反応塔の貯部から酸素富化空気と共に導入した銅精鉱を酸化させると共にその反応熱で熔融させて銅品位60~65%程度のマットを生成し、該反応塔の下部に位置するセトラーにおいて酸化鉄や珪酸などからなるスラグから比重差により該マットを分離させる。この自熔炉における酸化・熔融に伴い、該セトラー上部の該反応塔側とは反対側に位置するアップテイクからはSO2を高濃度で含む高温の排ガスが排出される。この排ガスは、廃熱ボイラーにおいてボイラー水との熱交換により廃熱回収された後、硫酸の原料ガスとして硫酸製造設備に送られる。
【0014】
上記の自熔炉で生成されたマットは、熔融状態のままセトラーから抜き出されて転炉に移送される。転炉は略円筒状の本体を横向きにして回動可能に据付けられた構造を有しており、該本体の中心軸方向の中央部に設けられた炉口にレードルを介してマットが装入される。この転炉内に装入されたマットに酸素富化空気を吹き込むことで、マットに含まれる鉄分や硫黄分が除去されると共に酸化処理されることで銅品位98%程度の粗銅が生成される。この酸化処理に伴ってSO2を含む高温の排ガスが発生するので、転炉から排出された排ガスは上記の自熔炉の場合と同様に廃熱ボイラーで廃熱回収された後に硫酸製造設備に送られる。
【0015】
上記の排ガスが導入される廃熱ボイラーは、高温の排ガスの輻射熱を回収する輻射部と、該輻射部で熱回収された低温の排ガスの対流熱を回収する対流部とで一般的に構成されており、各々、ボイラー水が内部を流れる水管群が設置されている。
図1には転炉Cを出た排ガスの熱回収を行う廃熱ボイラーが模式的に示されている。白矢印で示すように、転炉Cを出た排ガスは廃熱ボイラーの排ガス入口部から導入され、輻射部1及び対流部2をこの順に通過する間にそれらの内側に設けられている水管群においてボイラー水との熱交換が行なわれて排ガスの熱エネルギーが回収された後、対流部2の排ガス出口部から排出される。
【0016】
これら輻射部1及び対流部2は、いずれも略直方体形状の排ガス流通部と、その下側に位置し、対向する壁面同士の間隔が下方に向かうに従って徐々に狭くなるテーパー部とから本体が構成されており、この廃熱ボイラーの空間内を排ガスが一方向に通過する間に、該排ガスに含まれている煙灰は重力により落下し、上記のテーパー部に集められる。このテーパー部に集められた煙灰は、チェーンコンベア等の煙灰排出装置3を介して廃熱ボイラーから排出される。このようにして回収された煙灰は、必要に応じて篩別された後、自熔炉や転炉に装入される。
【0017】
上記の輻射部1及び対流部2の内側に設けられている水管群は、排ガスの熱エネルギーを効率よく回収できるように配設されている。具体的には、高温の排ガスが通過する輻射部1では、本体壁部を水管及びフィンで形成したいわゆる水管壁や、平行に配列された複数の直管を隣接するもの同士U字管で接合して1本に繋げた形態のパネル状の水管群が設けられている。一方、輻射部1に比べて低温の排ガスが通過する対流部2では、上記の水管壁やパネル状の水管群に加えて蛇管型の水管群が排ガスの通路内に吊設されている。
【0018】
前述したように、自熔炉や転炉から排出される排ガスは煙灰を含んでいるため、上記の水管群の表面には煙灰が付着する。この水管群の表面に付着した煙灰を振動により払い落として除去するため、廃熱ボイラーには煙灰除去装置が設けられている。以下の説明においては、上記した廃熱ボイラーの対流部2内に吊設されている蛇管型の複数の水管からなる水管群に対して、本発明の実施形態の煙灰除去装置を適用する場合を例に挙げて具体的に説明する。
【0019】
2.蛇管型の水管群及びそれらに接続された煙灰除去装置
図2に示すように、廃熱ボイラーの対流部2のうち、排ガスの流路となる略直方体形状の排ガス通過部の空間内に複数本の水管10からなる水管群が設けられている。各水管10は、白矢印で示す排ガスの流れ方向に平行な鉛直面上で平行に並べられた複数の上下方向に延在する直管部と、それらの隣接するもの同士の端部を上下交互に接続する複数のU字管部とで構成される1本の蛇管からなり、その両端部は対流部2の外側に設けられている入口ヘッダー(入口管寄せとも称する)11及び出口ヘッダー(出口管寄せとも称する)12に接続している。なお、
図2に示す水管10は上下方向に5往復する蛇管形状が例示されているが、上下方向に往復する数はこれに限定されるものではない。
【0020】
対流部2の内側に設けられているこれら複数本の水管10からなる水管群は、対流部2の上流側空間及び下流側空間にそれぞれ半分ずつ設けられている。そして、これら上流側空間と下流側空間の各々において、排ガスの流れ方向に垂直な断面で切断した
図3の縦断面図に示すように、複数本の水管10からなる水管群は、対流部2の幅方向に均等な間隔をあけて配列されている。なお、
図3には8本の水管10が等ピッチに配列された例が示されているが、水管群を構成する水管10の本数はこれに限定されるものではない。
【0021】
図3に示す上流側空間及び下流側空間の各々に位置する8本の水管10のうち、
図4及び5に示すように、対流部2の入口側から見た右半分の4本の水管10は、各々水平方向に離間する上部2ヶ所において対流部2の幅方向に延在する2本の右側の連結軸13Aに矩形板状片14を介して溶接により接続されている。同様に、対流部2の入口側から見た左半分の4本の水管10は、各々水平方向に離間する上部2ヶ所において、対流部2の幅方向に延在する2本の左側の連結軸13Bに矩形板状片14を介して溶接により接続されている。
【0022】
これら連結軸13A、13Bの各々は、互いに隣接する上記直管部の間に配置されるので、断面略長方形状の角パイプを用いるのが好ましい。上記の連結軸13A、13Bの各々は、上部に1対の略矩形板状の突出片15が設けられており、これら1対の突出片15に、対流部2内に固定されている吊りビーム16から垂下する1対のヒンジ手段17がそれぞれ係合している。
【0023】
上記のヒンジ手段17の構造には特に限定はないが、
図5の点線の枠内に示すように、吊りビーム16に設けた上下方向に貫通する貫通孔に下方から挿通してその先端部をナット17aで固定した吊りロッド17bと、この吊りロッド17bの下端部及び突出片15にそれぞれ両端部がピン17dで回動可能に接続された1対の互いに対向する短冊状部材17cとから構成するのが好ましい。かかる構成により、連結軸13A、13Bの各々をその長手方向に揺動可能に支持することができ、後述する打撃手段の打撃により連結軸13A、13Bの各々に接続する複数本の水管10を振動させることができる。
【0024】
上記の連結軸13A、13Bの各々は、その一端部が対流部2の外殻壁に設けた貫通孔から外部に突出しており、この突出部分の先端部に被打撃体18が設けられている。被打撃体18は、
図6に示すように、後述する打撃手段によって打撃される円柱状のヘッド部18aと、ヘッド部18aをその打撃方向に往復動自在に支持する円柱状の支持部18bと、これらヘッド部18aと支持部18bとの間に挟持され、ヘッド部18aの打撃時に弾性変形することで衝撃力を軽減すると共に打撃エネルギーを貯えて振動時間を持続させる役割を担う例えば皿バネ等の弾性体18cとから構成するのが好ましい。なお、ヘッド部18aは、支持部18b内に挿入される側の端部が縮径しており、この縮径部分に弾性体18cが外嵌されている。
【0025】
上記の被打撃体18のヘッド部18aに対向する位置に打撃手段19が設けられている。打撃手段19は、圧縮エアーの圧力によりシリンダーからピストンを勢いよく突出させて被打撃体18のヘッド部18aを打撃するエアーノッカーが好適に用いられる。なお、打撃手段19はエアーノッカーに限定されるものではなく、ハンマーの柄の部分が回動可能に取り付けられたシャフトを回転させることで、該ハンマーを重力により振り下ろして被打撃体18のヘッド部18aを打撃する構造のハンマリング装置を用いてもよい。前述したように、上記の連結軸13A、13Bの各々の一端部が貫通する対流部2の外殻壁に設けた貫通孔と連結軸13A、13Bとの間には隙間が存在しているので、この隙間を封止するガスシール機構20が設けられている。
【0026】
上記したように、本発明の実施形態の煙灰除去装置は、複数本の水管10からなる水管群に連結する連結軸13A、13Bと、これら連結軸13A、13Bの各々を揺動可能に支持するヒンジ手段17と、これら連結軸13A、13Bの先端部に設けられた被打撃体18と、この被打撃体18を打撃する打撃手段19と、これら連結軸13A、13Bの一端部が貫通する外殻壁の貫通孔の隙間を封止するガスシール機構20とによって構成される。次に、この本発明の実施形態の煙灰除去装置を構成するガスシール機構20ついて詳細に説明する。
【0027】
3.ガスシール機構
本発明の実施形態の煙灰除去装置を構成するガスシール機構20は、前述した連結軸13A、13Bの先端部を取り囲むように、該先端部が貫通する廃熱ボイラーの対流部2の外殻壁の貫通孔の周縁部に設けられた円筒形状のケーシング部と、該ケーシング部の内壁面に沿って周方向に全周に亘って設けられた可撓性のシール部材と、該ケーシング部の内側に位置して該シール部材に全周に亘って摺接する筒状の摺接部と、該摺接部の内側に該連結軸の該先端部を結合させると共に該摺接部の内側を閉鎖する板状部材と、これらケーシング部と摺接部との間の隙間に該ケーシング部の先端部側から差し込まれることで、該ケーシング部の内壁面に全周に亘って設けられている突起部との間で該シール部材を挟み込んで押圧する押圧部とで構成される。
【0028】
図6を参照しながら具体的に説明すると、前述した複数本の水管10に振動を伝える役割を担う連結軸13A、13Bの各々の端部は、廃熱ボイラーの対流部2の外殻壁に設けた貫通孔2aを貫いて外側に突出しており、この連結軸13A、13Bの突出部分を取り囲むように該外殻壁の貫通孔2aの周縁部に円筒形状のケーシング部21が取り付けられている。ケーシング部21は両端部にフランジが設けられており、貫通孔2a側に位置するフランジは全周に亘って対流部2の外殻壁に隅肉溶接されている。他方、貫通孔2aとは反対側のフランジには、後述する押圧部のフランジとの締結用のボルトを挿通させる複数のボルト孔が周方向に均等な間隔をあけて設けられている。
【0029】
ケーシング部21の内壁面には断面矩形の突起部21aが全周に亘って設けられており、この突起部21aの貫通孔2a側とは反対側の段差面にシール部材22が当接している。シール部材22のタイプ及び材質は、ケーシング部21の内側の隙間から廃熱ボイラー内の排ガスが漏れるのを適切に封止することができるものであれば特に限定はないが、断面が略正方形のグランドパッキンが好ましく、カーボン繊維を編み組んで紐状にしたグランドパッキンがより好ましい。カーボン繊維で編み組んだグランドパッキンであれば、耐熱性や耐久性において優れているだけでなく、後述する摺接部23の摺接面に対する摺動性にも優れているため、使用しているうちに打撃時の振動が早期に減衰する問題を抑制することができるからである。
【0030】
ケーシング部21の内側に位置する摺接部23は、ケーシング部21と平面視相似形状の円筒形状を有しており、ケーシング部21に同芯軸状に設けられている。これにより、摺接部23の摺接面23aを全周に亘ってシール部材22に摺接させることができる。この摺接部23の中心軸方向の長さL1は、前述したヒンジ手段17によって揺動可能な連結軸13A、13Bの軸方向の可動範囲よりも長くなっており、これにより連結軸13A、13Bが揺動しても封止状態が維持される。
【0031】
上記の摺接部23の内壁面には、連結軸13A、13Bの先端部に周設された板状部材24が全周に亘って溶接により接続されている。すなわち、板状部材24を介して連結軸13A、13Bの先端部が摺接部23の内壁面に接続しており且つ板状部材24は摺接部23の内側を閉鎖する役割も担っている。板状部材24が連結軸13A、13Bの先端部に接続する具体的な位置については特に限定はないが、連結軸13A、13Bの端面と、板状部材24の貫通孔2a側とは反対側の表面とがほぼ同一レベル(ツライチ)であるのが好ましい。これにより、連結軸13A、13Bの該端面に取り付けた被打撃体18の支持部18bの周囲にラジアル方向に突出するように設けた複数のリブを板状部材24の該表面上に容易に固定することができる。なお、連結軸13A、13Bの部材に角パイプに代えて丸パイプや丸棒を用いる場合は、板状部材24に環状部材が用いられる。
【0032】
上記のケーシング部21と摺接部23との間の隙間に位置する押圧部25は、ケーシング部21と平面視相似形の円筒形状を有しており、ケーシング部21に同芯軸状に差し込むことで、押圧部25の先端部と上記したケーシング部21の内壁面に設けた突起部21aの環状の段差面とによってシール部材22が押圧される。この押圧部25において上記のケーシング部21内に差し込まれる先端部とは反対側の端部に、上記のケーシング部21の貫通孔2a側とは反対側のフランジに結合するフランジが設けられている。
【0033】
すなわち、この押圧部25のフランジには、上記のケーシング部21のフランジに設けられているボルト孔に対応する位置にボルト孔が設けられており、これら対応するボルト孔同士対向させて締結用ボルトを挿通し、ナットで締め付けることによって、押圧部25をケーシング部21に固定することができる。このようにして押圧部25をケーシング部21に固定したとき、シール部材22を押圧部25の中心軸方向に適度に押圧できるように、押圧部25の中心軸方向の長さL2が定められている。
【0034】
上記構造のガスシール機構を取り付ける場合は、
図7に示すように、先ず廃熱ボイラーの対流部2の外殻壁の貫通孔2aから突出している連結軸13A、13Bの端部を取り囲むように、貫通孔2aの周縁部に溶接等によりケーシング部21を固定し、このケーシング部21の内側にグランドパッキンなどの可撓性のシール部材22を装入し、ケーシング部21の突起部21aにおいて貫通孔2a側とは反対側の段差面に当接させる。
【0035】
次に、ケーシング部21の貫通孔2a側とは反対側から押圧部25を差し込んでそのフランジとケーシング部21のフランジとをボルト・ナットで締め付ける。これにより、押圧部25の先端部の環状端面とケーシング部21の突起部21aとによって、シール部材22はケーシング部21の中心軸方向に押し潰される。その結果、シール部材22はその内径が縮径する方向に変形するので、連結軸13A、13Bの先端部に予め周設しておいた板状部材24の周縁部に位置する摺接部23の摺接面23aに面接触し、ケーシング部21と摺接部23との間の隙間を封止することができる。
【0036】
なお、上記のシール部材22の変形の程度は、ケーシング部21のフランジと押圧部25のフランジとの互いの締め付け量によって調節することができるので、例えばこれら両フランジの互いに対向するフランジ面間の距離をすき間ゲージなどで測定しながらボルト・ナットの締め付けの度合いを適宜調節することによって、シール部材22を適度に摺接部23の摺接面23aに密着させることができる。これにより、連結軸13A、13Bの振動の継続を過度に阻害することなくケーシング部21の内側の上記した隙間を良好に封止することが可能となる。
【0037】
上記の被打撃体18は、そのヘッド部18aの先端に被打撃プレートを着脱可能に取り付けてもよい。例えば、
図8に示すように被打撃体18のヘッド部18aの先端に円板状の基板26を溶接し、この基板26に平面視同形状の円板状の被打撃プレート27を基板26に重ね合わせて、それらの周縁部に予め設けておいたボルト孔にボルトを挿通してナットで固定するのが好ましい。エアーノッカーなどの打撃手段19によって直接打撃される被打撃体18の先端部は、早期に変形や破損が生じやすく、打撃によるダスト除去の効果が不安定になる問題が生ずることがあったが、上記のように被打撃体18の先端部に被打撃プレート27を設けることで、この被打撃プレート27に変形や破損が生じた場合は容易に交換できるので、打撃によるダスト除去の効果を安定化させることができる。
【0038】
以上説明したように、本発明の実施形態のガスシール機構及びこれを具備する煙灰除去装置は、廃熱ボイラーの外殻壁に設けた貫通孔を伸縮継手を用いることなく封止することができるので、長期間に亘って安定的に廃熱ボイラーを運転することが可能になる。すなわち、廃熱ボイラーに採用されている従来の煙灰除去装置は、
図9に示すように、上記の貫通孔2aの封止のために伸縮継手30が用いられていたが、長期的に振動による繰り返しの負荷がかかると伸縮継手30の弾性変形部分であるベローズ部31が金属疲労によって徐々に固くなり、その結果、打撃手段19による連結軸13A、13Bの軸方向の振動に該ベローズ部31の弾性変形を追随させることが困難になり、最終的にベローズ部31に亀裂が生じることがあった。更に、ベローズ部31が金属疲労により固くなると、該振動をベローズ部31自体によって強制的に減衰させてしまうことがあった。
【0039】
これに対して、本発明の煙灰除去装置は、グランドパッキンに代表されるシール部材を用いて廃熱ボイラーの外殻壁に設けた貫通孔を封止するため、金属疲労による亀裂が生じる部位を有していない。また、長期間使用しても振動を強制的に減衰させる金属疲労などの現象が生じにくいので、エアーノッカーなどの打撃手段によって付与される連結軸の軸方向の振動をできるだけ減衰させることなく継続することができるので、水管に付着したダストを効果的に除去することができる。このように、本発明の実施形態の煙灰除去装置を用いることで、廃熱ボイラー内に配設した複数の水管に対して長期に亘って安定的かつ効率的に振動を伝達することができる。
【0040】
以上、実施形態に基づいて本発明のガスシール機構及びこれを具備する煙灰除去装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形例や代替例を含むことができる。例えば、ケーシング部、その内側に位置する摺接部、及びこれらケーシング部と摺接部との間の隙間に差し込まれる押圧部は、円筒形状に限定されるものではなく角筒形状であってもよい。すなわち、本発明の権利範囲は特許請求の範囲及びその均等の範囲に及ぶものである。
【符号の説明】
【0041】
1 輻射部
2 対流部
2a 貫通孔
3 煙灰排出装置
10 水管
11 入口ヘッダー
12 出口ヘッダー
13A 右側の連結軸
13B 左側の連結軸
14 矩形板状片
15 突出片
16 吊りビーム
17 ヒンジ手段
17a ナット
17b 吊りロッド
17c 短冊状部材
17d ピン
18 被打撃体
18a ヘッド部
18b 支持部
18c 弾性体
19 打撃手段
20 ガスシール機構
21 ケーシング部
21a 突起部
22 シール部材
23 摺接部
23a 摺接面
24 板状部材
25 押圧部
26 基板
27 被打撃プレート
30 伸縮継手
31 ベローズ部
C 転炉