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特開2023-169785重合性化合物、重合性組成物、光学フィルムおよび表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169785
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】重合性化合物、重合性組成物、光学フィルムおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/92 20060101AFI20231122BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20231122BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231122BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231122BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231122BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
C07C69/92 CSP
C08F220/30
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/02
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081111
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 真之介
(72)【発明者】
【氏名】飛田 憲之
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA14
2H149BA15
2H149FA24W
2H149FA26W
2H149FA28W
2H149FA52W
2H149FA58W
2H149FD21
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC45
3K107EE26
4H006AA01
4H006AB64
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BP30
4H006KC12
4H006KC14
4H006KE10
4J100AL66P
4J100BA02P
4J100BA04P
4J100BA15P
4J100BC04P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100DA65
4J100DA66
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶剤に対する溶解性に優れ、かつ、相転移温度の低い重合性化合物を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される重合性化合物。具体的には、例えば式(1-a)で示される。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される重合性化合物。
【化1】
[式(1)中、
X1およびX2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表し(ただし、X1およびX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である)、シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-または-NR-に置き換わっていてもよく、Rは、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
Y1は、-CHCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-または-CR=N-を表し、RおよびRは、互いに独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、
U1およびU2は、互いに独立に、水素原子または重合性基を表し(ただし、U1およびU2のうちの少なくとも1つは重合性基である)、
W1は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-OCOO-を表し、
V1およびV2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置き換わっていてもよい。]
【請求項2】
スメクチック液晶相を示す、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項3】
式(1)中のY1が-COO-または-OCO-で表される2価の基であり、W1が-O-、-COO-または-OCO-で表される2価の基である、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項4】
式(1)中のU1およびU2がアクリロイルオキシ基である、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の重合性化合物と二色性色素とを含む、重合性組成物。
【請求項6】
さらに溶媒を含む、請求項5に記載の重合性組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の重合性化合物の重合体、または、請求項5に記載の重合性組成物の硬化物を含む、光学フィルム。
【請求項8】
二色比が20以上である、請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の光学フィルムを含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物、前記重合性化合物を含む重合性組成物、および、前記重合性化合物の重合体または重合性組成物の硬化物を含んで構成される光学フィルム、および前記光学フィルムを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光板は、フラットパネル表示装置(FPD)において、液晶セルや有機EL表示素子等の画像表示素子に貼合されて用いられている。近年、フラットパネル表示装置に対する薄型化の要求に伴い、その構成要素の1つである偏光板や偏光膜の薄型化を実現するために、例えば、特許文献1に記載するような重合性液晶化合物と二色性色素とを含む組成物から形成される二色性のゲスト-ホスト偏光子が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-510946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲスト-ホスト偏光子から形成される光吸収異方性膜を含む光学フィルムは、一般に、重合性液晶化合物と二色性色素を溶剤とともに含む組成物を、基材フィルム等のフィルム上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を加熱乾燥することにより重合性液晶化合物を液晶状態に相転移させる工程を経て作製される。従来の重合性液晶化合物においては、その分子構造に由来して溶剤への溶解性が乏しいものや、液晶相への相転移温度が高いものも多い。重合性液晶化合物の溶解性が低い場合、塗工液中に沈殿したり、結晶化して析出したりすることがある。また、重合性液晶化合物の相転移温度が高い場合には、光吸収異方性膜の形成時に重合性液晶化合物の相転移温度より高い温度まで加熱して相転移させる必要がある。このような重合性液晶化合物の沈殿や析出、光吸収異方性膜形成時における高温下での加熱は、製膜性の低下のみならず、得られる光吸収異方性膜の二色比の低下を生じる原因となり得る。
【0005】
本発明は、溶剤に対する溶解性に優れ、かつ、相転移温度の低い重合性化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]下記式(1)で表される重合性化合物。
【化1】
[式(1)中、
X1およびX2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表し(ただし、X1およびX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である)、シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-または-NR-に置き換わっていてもよく、Rは、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基を表し、
Y1は、-CHCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-または-CR=N-を表し、RおよびRは、互いに独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、
U1およびU2は、互いに独立に、水素原子または重合性基を表し(ただし、U1およびU2のうちの少なくとも1つは重合性基である)、
W1は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-OCOO-を表し、
V1およびV2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置き換わっていてもよい。]
[2]スメクチック液晶相を示す、前記[1]に記載の重合性化合物。
[3]式(1)中のY1が-COO-または-OCO-で表される2価の基であり、W1が-O-、-COO-または-OCO-で表される2価の基である、前記[1]または[2]に記載の重合性化合物。
[4]式(1)中のU1およびU2がアクリロイルオキシ基である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の重合性化合物。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の重合性化合物と二色性色素とを含む、重合性組成物。
[6]さらに溶媒を含む、前記[5]に記載の重合性組成物。
[7]前記[1]~[4]のいずれか記載の重合性化合物の重合体、または、前記[5]または[6]に記載の重合性組成物の硬化物を含む、光学フィルム。
[8]二色比が20以上である、前記[7]に記載の光学フィルム。
[9]前記[8]に記載の光学フィルムを含む、表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶剤に対する溶解性に優れ、かつ、相転移温度の低い重合性化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
<重合性化合物>
本発明の重合性化合物は、式(1):
【化2】
で表される化合物である(以下、「重合性化合物(1)」ともいう)。
【0010】
式(1)中、X1およびX2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。ただし、X1およびX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である。シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-または-NR-に置き換わっていてもよく、Rは、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基を表す。
【0011】
置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基が挙げられ、1,4-フェニレン基またはシクロへキサン-1,4-ジイル基に含まれる水素原子が前記いずれかの基によって置換されていてもよい。式(1)中のX1およびX2は、好ましくは無置換の1,4-フェニレン基または無置換のシクロへキサン-1,4-ジイル基である。シクロへキサン-1,4-ジイル基はシス体であっても、トランス体であってもよい。
【0012】
式(1)中のY1は、-CHCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-または-CR=N-を表し、RおよびRは、互いに独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。Yは、-CHCH-、-COO-、-OCO-、-CHO-または単結合であることがより好ましく、-COO-または-OCO-で表される2価の基であることがさらに好ましい。
【0013】
式(1)中、W1は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-OCOO-を表し、-O-、-COO-または-OCO-で表される2価の基であることが好ましく、-O-がより好ましい。
【0014】
本発明の一態様において、式(1)中、Y1が-COO-または-OCO-で表される2価の基であり、かつ、W1が-O-、-COO-または-OCO-で表される2価の基であることが好ましい。
【0015】
式(1)中、V1およびV2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置き換わっていてもよい。V1およびV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基およびイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1およびV2で表されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2~18、より好ましくは4~16、さらに好ましくは6~16である。相転移温度の観点からは、V1またはV2の少なくとも1つの-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置き換わっているのが好ましい。二色比の観点からは、V1およびV2が置換基を有していないアルカンジイル基が好ましい。
【0016】
前記アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子等が挙げられ、アルカンジイル基に含まれる水素原子が前記基に置換されていてもよい。本発明の一態様において、前記アルカンジイル基は無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0017】
式(1)中、U1およびU2は、互いに独立に、水素原子または重合性基を表す。ただし、U1およびU2のうちの少なくとも1つは重合性基であり、U1およびU2がともに重合性基であることが好ましい。重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基がさらに好ましい。
【0018】
U1で示される重合性基とU2で示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましく、U1およびU2の少なくとも一方が(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましく、両方が(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましく、両方がアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0019】
重合性化合物(1)においては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が、それぞれ*-COO-(*でシクロヘキサン-1,4-ジイル基と結合)を介してV1で表される基およびX1で表される基に結合している。シクロへキサン-1,4-ジイル基は、シス体であっても、トランス体であってもよい。かかる構造を有する重合性化合物(1)は、式(1)中、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が-OCO-または-O-を介してV1で表される基および/またはX1で表される基に結合している場合と比較して、溶剤に対する溶解性が向上し、かつ、相転移温度を大幅に低下させ得る。この効果は、特にシクロヘキサン-1,4-ジイル基が-OCO-または-O-を介してV1で表される基に結合している場合と比較して顕著になり得る。重合性化合物(1)が溶剤への溶解性や相転移温度の低下効果に優れる理由は必ずしも定かではないが、シクロヘキサン環が*-COO-により隣接する基と結合(*で結合)している重合性化合物(1)では、シクロヘキサン環がエーテル構造(-O-)によって隣接する基に結合している場合と比べて分子同士のスタックが弱くなり、分子の柔軟性が高くなることに起因すると考えられる。一方、一般的に、化合物を構成する分子の直線性が低くなると高い液晶性や二色比を確保し難くなる傾向にある。シクロヘキサン環とV1およびX1で表される基との結合部分がエステル構造である場合、該結合部分がエーテル構造である場合と比較して分子の直線性が低下しやすくなるが、重合性化合物(1)は、前記分子構造の違いによる利点を生かすことによって優れた溶剤溶解性とより一層低い相転移温度を実現するとともに、高い二色比を実現し得る。
【0020】
重合性化合物(1)は、好ましくは液晶性の化合物である。液晶性はサーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよいが、後述する二色性色素と混合する場合には、サーモトロピック液晶が好ましい。重合性化合物(1)がサーモトロピック液晶化合物である場合、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよいし、スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよい。偏光性能を発現する光吸収異方性膜を形成するために用いる場合、重合性化合物(1)が示す液晶状態は、スメクチック液晶相であることが好ましく、高次スメクチック相であることが高性能化の観点からより好ましい。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相またはスメクチックL相を形成し得る高次スメクチック液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相またはスメクチックI相を形成する高次スメクチック液晶化合物がさらに好ましい。重合性化合物(1)が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、偏光性能のより高い光吸収異方性膜を製造することができる。
【0021】
重合性化合物(1)は、式(1)中、式(1A):
【化3】
〔式(1A)中、X1、Y1およびX2はそれぞれ上記と同じ意味を表し、*は、それぞれ、式(1)中のV1またはW1との結合部を表す〕
で示される部分が非対称構造であると、スメクチック液晶性を発現しやすくなる点で好ましい。
【0022】
部分構造(1A)が非対称構造である重合性化合物(1)としては、例えば、式(1)中のX1とX2がともに1,4-フェニレン基である下記構造(1A-1)、(1A-2)を有する重合性化合物(1)、X1がシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X2が1,4-フェニレン基である下記構造(1A-3)、(1A-4)を有する重合性化合物(1)、および、X1が1,4-フェニレン基であり、X2がシクロヘキサン-1,4-ジイル基である下記構造(1A-5)、(1A-6)を有する重合性化合物(1)等が挙げられる。なお、下記構造(1A-1)~(1A-6)中の*は、それぞれ、式(1)中のV1またはW1との結合部を意味する。
【化4】
【0023】
重合性化合物(1)としては、具体的には例えば、式(1-1)~式(1-24)で表される化合物が挙げられる。重合性化合物(1)に含まれるシクロヘキサン-1,4-ジイル基はトランス体であることが好ましい。
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
重合性化合物(1)の液体相-液晶相転移温度は、好ましくは25℃以上150℃以下である。液晶相への相転移温度が前記範囲内であると、工業的に製造しやすく生産性を向上し得る等の観点から好ましい。本発明において、重合性化合物(1)の液体相-液晶相転移温度は、通常40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、また、生産性の観点からより好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、特に好ましくは100℃以下である。重合性化合物(1)の高次スメクチック相-スメチクック相転移温度は、生産性の観点からより好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。重合性化合物(1)の相転移温度が低いと、高温条件下に曝されることなく製膜することが可能となり、得られる光学フィルムへのより一層高い光学特性の付与が期待できる。
なお、液晶相転移温度は、例えば、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡や、示差走査熱量計(DSC)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)等を用いて測定することができる。
【0027】
重合性化合物(1)は、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、OrganicSyntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木-宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト-ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応等)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0028】
例えば、U1がアクリロイルオキシ基である式(2)で表される化合物は、以下の方法によって製造することができる。なお、下記式(2)~式(4)、式(6)および式(7)中のV1、V2、X1、X2、Y1、W1およびU2はそれぞれ、式(1)におけるものと同一の意味を表し、目的とする重合性化合物(1)のV1、V2、X1、X2、Y1、W1およびU2に対応する構造である。
【化8】
【0029】
まず、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と、式(3):
【化9】
[式(3)中、
V1は、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-、-NH-、-COO-、-OCO-または-OCOO-に置き換わっていてもよく、
X3は、ハロゲン原子を表す]
で表される化合物(以下、「化合物(3)」ともいう)とを、塩基性条件下で反応させる(以下、「工程(i-1)」ともいう)ことにより、式(4):
【化10】
で表される化合物(以下、「化合物(4)」ともいう)を得る。
【0030】
工程(i-1)は、通常、塩基性化合物の存在下で行われる。塩基性化合物としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等の金属炭酸水素塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物などが挙げられる。
【0031】
工程(i-1)における塩基性化合物の量は、化合物(3)1モルに対して、好ましくは1.4モル以上、より好ましくは1.8モル以上であり、好ましくは3モル以下、より好ましくは2.5モル以下である。
【0032】
工程(i-1)の反応に用いる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の量は、化合物(3)1モルに対して、好ましくは1.0モル以上、より好ましくは1.1モル以上、さらに好ましくは1.2モル以上であり、好ましくは2.0モル以下、より好ましくは1.7モル以下、さらに好ましくは1.5モル以下である。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の量が前記下限以上および前記上限以下であると、副生成物が生成しにくい。
【0033】
工程(i-1)において1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(3)との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼンまたはクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;乳酸エチルなどのエステル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒;ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒;などが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(3)との合計1質量部に対して、好ましくは0.5~50質量部であり、より好ましくは1~30質量部であり、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0035】
工程(i-1)における反応条件は適宜決定すればよい。反応収率や生産性の観点から、反応温度は、好ましくは60~150℃、より好ましくは80~120℃である。また、反応時間は、好ましくは1分~72時間であり、より好ましくは1~48時間であり、さらに好ましくは1~24時間である。上記の温度範囲および時間範囲で1,4-シクロヘキサンジカルボン酸とアルコール化合物(3)との反応を行うことにより、反応収率が向上しやすい。反応の進行度合いは、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の分析手段により確認できる。
【0036】
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(3)との反応終了後、濾過、中和、抽出、水洗等の後処理、蒸留や結晶化等の単離処理等の処理、操作を施すことにより、化合物(4)を得ることができる。
【0037】
また、化合物(4)は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と、式(5):
【化11】
で表される化合物(以下、「化合物(5)」ともいう)とをエステル化反応させる(以下、「工程(i-2)」ともいう)ことにより得ることもできる。
【0038】
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(5)とのエステル化反応は、好ましくは縮合剤の存在下において行われる。縮合剤の存在下でエステル化反応を行うことにより、エステル化反応を効率良く迅速に行うことができる。
【0039】
縮合剤としては、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドメト-パラ-トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド:WSCとして市販)、ビス(2、6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドおよび、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド等のカルボジイミド化合物、2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物、2,2’-カルボニルビス-1H-イミダゾール、1,1’-オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1(4-ニトロベンゼンスルフォニル)-1H-1、2、4-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N-(1,2,2,2-テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N-カルボベンゾキシスクシンイミド、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2-クロロ-1-メチルピリジニウムアイオダイド、2-クロロ-1-メチルピリジニウム パラ-トルエンスルホネート、2-フルオロ-1-メチルピリジニウム パラ-トルエンスルホネート並びに、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル等が挙げられる。
【0040】
縮合剤は、好ましくは、カルボジイミド化合物、2,2’-カルボニルビス-1H-イミダゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリドおよび、2-クロロ-1-メチルピリジニウムアイオダイドであり、経済性の観点からはカルボジイミド化合物がより好ましい。
【0041】
カルボジイミド化合物の中でも、反応性、コスト、使用できる溶剤の選択肢が多いという点で、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド)および、ビス(2、6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドが好ましい。
【0042】
縮合剤の使用量は、化合物(5)1モルに対して、通常1.0~1.5モルである。
【0043】
エステル化反応では、さらに、N-ヒドロキシスクシンイミド、ベンゾトリアゾール、パラニトロフェノール、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン等の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤の使用量は、化合物(5)1モルに対して、好ましくは0.01~0.1モルである。
【0044】
また、エステル化反応は触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、N,N-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、ジメチルアンモニウムペンタフルオロベンゼンスルホナート等が挙げられる。中でも、N,N-ジメチルアミノピリジンおよび、N,N-ジメチルアニリンが好ましく、N,N-ジメチルアミノピリジンがより好ましい。触媒を使用する場合、その使用量は、化合物(5)1モルに対して、好ましくは0.01~0.1モルである。
【0045】
工程(i-2)において反応に用いる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の量は、化合物(3)1モルに対して、好ましくは1.0モル以上、より好ましくは1.1モル以上、さらに好ましくは1.2モル以上であり、好ましくは2.0モル以下、より好ましくは1.7モル以下、さらに好ましくは1.5モル以下である。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の量が前記下限以上および前記上限以下であると、化合物(4)の収率が良好になり、また、副生成物が生成しにくく、生産性よく製造し得る。
【0046】
エステル化反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、工程(i-1)において1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(3)との反応に用い得る溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0047】
溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(5)との合計1質量部に対して、好ましくは0.5~50質量部であり、より好ましくは1~30質量部であり、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0048】
エステル化反応の条件は適宜決定すればよい。反応収率や生産性の観点から、エステル化反応の温度は、好ましくは-20~100℃であり、より好ましくは-10~60℃であり、さらに好ましくは-5~50℃である。また、エステル化反応の時間は、好ましくは1分~72時間であり、より好ましくは1~48時間であり、さらに好ましくは1~24時間である。上記の温度範囲および時間範囲でエステル化反応を行うことにより、反応収率が向上しやすい。反応の進行度合いは、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の分析手段により確認できる。
【0049】
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(5)との反応終了後、濾過、中和、抽出、水洗等の後処理、蒸留や結晶化等の単離処理等の処理、操作を施すことにより、化合物(4)を得ることができる。
【0050】
工程(i-1)および(i-2)の反応に用いる化合物(3)および(5)は、その構造に応じて、先に記載した公知の種々の有機合成反応を適宜組み合わせることにより製造することができる。また、市販品を使用してもよい。
【0051】
次いで、上記化合物(4)と、式(6):
【化12】
[式(6)中、Yは水素原子またはメチル基を表す]
で表される酸クロリドとを反応させることにより、式(7):
【化13】
で表される化合物(以下、「化合物(7)」ともいう)を得た(以下、「工程(ii)」ともいう)後、得られた化合物(7)と、式(8):
【化14】
で表される化合物(以下、「化合物(8)」ともいう)とをエステル化反応させる(以下、「工程(iii)」ともいう)ことにより、上記式(2)で表される重合性化合物(1)が得られる。
【0052】
工程(ii)は、化合物(4)をアクリロイル化する工程である。酸クロリドは、従来公知の有機合成方法を用いて製造し得るが、市販されている(メタ)アクリル酸クロリドを用いてもよい。
【0053】
工程(ii)において、酸クロリドは、化合物(4)1モルに対して、好ましくは1.0モル以上15.0モル以下の量で存在する。酸クロリドが前記範囲内の量で存在すると、化合物(4)との反応が進みやすく、高い収率で化合物(6)を得ることができる。酸ハライドは、化合物(4)1モルに対して、より好ましくは1.05モル以上、さらに好ましくは1.1モル以上の量で存在し、また、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは3.0モル当量の量で存在する。
【0054】
工程(ii)は、通常、塩基性物質の存在下で行われる。塩基性物質としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアミン類が挙げられる。特に、収率が向上しやすい観点から、化合物(4)と酸クロリドとの反応を芳香族アミンの存在下で行うことが好ましい。
【0055】
化合物(4)と酸クロリドとの反応において塩基性物質は、化合物(4)1モルに対して、好ましくは1.0モル以上15.0モル以下の量で存在する。塩基性物質が前記範囲内の量で存在すると、化合物(4)と酸クロリドとの反応が促進されやすく、十分に高い収率で化合物(7)を得ることができる。塩基性物質は、化合物(4)1モルに対して、より好ましくは1.1モル以上、さらに好ましくは1.2モル以上の量で存在し、また、より好ましくは10.0モル以下、さらに好ましくは5.0モル以下の量で存在する。
【0056】
工程(ii)において、前記化合物(4)と酸クロリドとの反応は、好ましくは溶媒の存在下で行う。溶媒としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸とアルコール化合物(3)との反応に用い得る溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0057】
前記溶媒の使用量は特に限定されないが、各化合物が十分に溶解して反応が効率よく進行し得るよう、通常、化合物(4)1質量部に対して2質量部以上、好ましくは3質量部以上であり、過剰な溶媒の使用を避けるため、通常100質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
【0058】
化合物(4)と酸クロリドとの反応には、必要に応じて添加剤を用いてもよく、例えば重合を防止するために重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、フェノチアジン等が挙げられる。重合禁止剤を用いる場合、その添加量は、化合物(4)1モルに対して、好ましくは0.005モル以上、さらに好ましくは0.01モル以上であり、また、好ましくは0.5モル以下である。
【0059】
工程(ii)において、前記化合物(4)と酸クロリドとの反応は、例えば、化合物(4)および塩基性物質、必要に応じて溶媒や添加剤を含む混合物に対して、酸クロリドを滴下することにより行うことができる。
【0060】
前記反応における条件は、用いる各化合物の種類や反応規模等に応じて適宜決定し得る。例えば、化合物(4)と酸クロリドとの反応温度は、好ましくは-10℃~25℃、より好ましくは-5℃~25℃である。反応温度が前記範囲内であると、化合物(4)と酸クロリドとの反応が進みやすく、穏やかな条件であるためより安全に目的の化合物を得やすい。
【0061】
反応時間は、使用する化合物の種類、比率および温度等に応じて決定すればよく、反応規模等にもよるが、好ましくは10分~24時間であり、より好ましくは10分~12時間である。
【0062】
反応終了後、濾過、中和、抽出、水洗等の後処理、蒸留や結晶化等の単離処理等の処理、操作を施すことにより、化合物(7)を得ることができる。
【0063】
工程(iii)の反応に用いる化合物(8)は、その構造に応じて、先に記載した公知の種々の有機合成反応を適宜組み合わせることにより製造することができる。
【0064】
化合物(7)と化合物(8)とのエステル化反応は、好ましくは縮合剤の存在下において行われる。縮合剤の存在下でエステル化反応を行うことにより、エステル化反応を効率良く迅速に行うことができる。縮合剤としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(5)とのエステル化反応において用い得る縮合剤として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0065】
縮合剤の使用量は、化合物(7)1モルに対して、通常0.8~1.2モルである。
【0066】
化合物(7)と化合物(8)とのエステル化反応においては、さらに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(5)とのエステル化反応に関して例示した添加剤および触媒をそれぞれ使用し得る。添加剤や触媒を用いる場合、その量はそれぞれ、化合物(7)1モルに対して、好ましくは0.01~0.1モルである。
【0067】
また、化合物(7)と化合物(8)とのエステル化反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、工程(i-1)において1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と化合物(3)との反応に用い得る溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0068】
溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、化合物(7)と化合物(8)との合計1質量部に対して、好ましくは1~50質量部であり、より好ましくは1~40質量部であり、さらに好ましくは1~30質量部である。
【0069】
エステル化反応の条件は適宜決定すればよい。反応収率や生産性の観点から、エステル化反応の温度は、好ましくは-20~60℃であり、より好ましくは-20~40℃である。また、エステル化反応の時間は、好ましくは1分~72時間であり、より好ましくは1~48時間であり、さらに好ましくは1~24時間である。上記の温度範囲および時間範囲でエステル化反応を行うことにより、反応収率が向上しやすい。反応の進行度合いは、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の分析手段により確認できる。
【0070】
反応終了後、必要に応じて、例えば、濾過、中和、抽出、水洗等の後処理、蒸留や結晶化等の単離処理等の有機合成化学において採用し得る処理、操作を施すことにより、所望の重合性化合物(1)を単離することができる。
【0071】
得られた化合物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0072】
式(1)中、シクロヘキサン環が*-COO-により隣接する基V1およびX1とそれぞれ結合している本発明の重合性化合物(1)は、比較的安価な1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を出発原料として調製でき、また、製造工程も簡素化できるため、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が-OCO-または-O-を介してV1で表される基および/またはX1で表される基に結合する構造を有する従来の重合性化合物と比較して、製造コスト面や製造効率の面等においても有利である。
【0073】
<重合性組成物>
本発明は、本発明の重合性化合物(1)と二色性色素とを含む重合性組成物も対象とする。先に記載の通り、本発明の重合性化合物(1)は、相転移温度が低く、溶剤溶解性に優れており、特に、高い二色比を有する光吸収異方性膜(偏光膜)の形成材料として好適である。
【0074】
本発明の重合性組成物における重合性化合物(1)の含有量は、重合性組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性化合物(1)の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、重合性組成物の固形分とは、該組成物から溶剤等の揮発性物質を除いた成分の合計量を意味する。以下、他の組成物等における固形分についても同様に、対象とする組成物等から溶剤等の揮発性物質を除いた成分の合計量をいう。
【0075】
本発明において、重合性組成物は、本発明の重合性化合物(1)以外の他の重合性化合物を含んでいてもよい。本発明の一実施態様において、配向秩序度の高い光吸収異方性膜を得る観点から、重合性組成物に含まれる全重合性化合物の総質量に対する重合性化合物(1)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0076】
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。本発明の重合性組成物に含まれる二色性色素としては、可視光を吸収する特性を有する特性を有することが好ましく、380~680nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものがより好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素などが挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素およびトリスアゾ色素である。これらの二色性色素は、当該分野で公知のものから適宜選択して用いることができる。二色性色素は単独でも、組み合わせてもよいが、可視光全域で吸収を得るためには、2種類以上の二色性色素を組み合わせるのが好ましく、3種類以上の二色性色素を組み合わせるのがより好ましい。特に吸収波長の異なる2種以上の二色性色素を混合することで、様々な色相の光吸収異方性膜を作製することができ、可視光全域に吸収を有する光吸収異方性膜とすることができる。このような吸収特性を有する光吸収異方性膜とすることで、様々な用途に展開し得る。
【0077】
アゾ色素としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられる。
-A(-N=N-A-N=N-A -T
[式中、AおよびAおよびAは、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、置換基を有していてもよい安息香酸フェニルエステル基、置換基を有していてもよい4,4‘-スチルベニレン基、または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、TおよびTは電子吸引基あるいは電子放出基であり、アゾ結合面内に対して実質的に180°の位置に有する。pは0~4の整数を表す。pが2以上である場合、各々のAは互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0078】
二色性色素の含有量(複数種含む場合にはその合計量)は、良好な光吸収特性を得る観点から、重合性組成物中に含まれる全重合性化合物100質量部に対して、通常1~60質量部であり、好ましくは1~40質量部であり、より好ましくは1~20質量部である。二色性色素の含有量がこの範囲より少ないと光吸収が不十分となりやすく、十分な偏光性能が得られない可能性がある。また、この範囲よりも多いと液晶分子の配向が阻害されやすくなる傾向にある。
【0079】
一般にスメクチック液晶性を示す重合性化合物は粘度が高いため、重合性組成物の塗布性を向上させて重合性組成物の硬化膜の形成を容易にする観点から、重合性組成物は溶媒をさらに含むことが好ましい。
【0080】
重合性組成物に用いる溶媒は、用いる重合性化合物(1)および二色性色素の溶解性等に応じて適宜選択することができる。具体的には、重合性化合物(1)の製造において使用し得る溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。溶媒の含有量は、重合性組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0081】
重合性組成物は重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で重合反応を開始できる点において光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独または二種以上組合せて使用できる。
【0082】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型の光重合開始剤、水素引き抜き型の光重合開始剤がある。
自己開裂型の光重合開始剤として、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用できる。また、水素引き抜き型光重合開始剤として、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。
【0083】
酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等を使用できる。
【0084】
この中でも、色素の溶解を防ぐ観点から低温での反応が好ましく、低温での反応効率の観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0085】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、以下のものが挙げられる。
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等のヒドロキシアセトフェノン系化合物;
2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノアセトフェノン系化合物;
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;
ジエトキシアセトフェノンなどのジアルコキシアセトフェノン系化合物;
2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系化合物。光重合開始剤は、例えば上記の光重合開始剤から重合性化合物(1)との関係において適宜選択すればよい。
【0086】
また、市販の光重合開始剤を用いてもよい。市販の重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、184、651、819、250、および369、379、127、754、OXE01、OXE02、OXE03(BASF社製);Omnirad BCIM、Esacure 1001M、Esacure KIP160(IDM Resins B.V.社製);セイクオール(登録商標)BZ、Z、およびBEE(精工化学株式会社製);カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100、およびUVI-6992(ダウ・ケミカル株式会社製);アデカオプトマーSP-152、N-1717、N-1919、SP-170、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(株式会社ADEKA製);TAZ-A、およびTAZ-PP(日本シイベルヘグナー株式会社製);並びに、TAZ-104(株式会社三和ケミカル製);等が挙げられる。
【0087】
重合性組成物における重合開始剤の含有量は、重合性組成物中に含まれる全重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは1~8質量部、特に好ましくは1~6質量部である。重合開始剤の含有量が上記の範囲内であると、重合性化合物(1)の配向を大きく乱すことなく、重合反応を行うことができる。
【0088】
重合性組成物はレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、重合性組成物の流動性を調整し、該組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。中でも、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が好ましい。レベリング剤は単独または2種以上組合せて使用できる。
【0089】
ポリアクリレート系のレベリング剤としては、例えば、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)が挙げられる。
【0090】
パーフルオロアルキル系のレベリング剤としては、例えば、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))が挙げられる。
【0091】
重合性組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性組成物中に含まれる全重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性化合物(1)を水平配向させることが容易になり、かつ得られる光吸収異方性膜がより平滑となる傾向がある。
【0092】
重合性組成物は、レベリング剤以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、光増感剤、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。他の添加剤を含有する場合、その添加剤の含有量は、重合性組成物の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0093】
重合性組成物は、従来公知の調製方法により製造することができ、通常、重合性化合物(1)および二色性色素、並びに、必要に応じて溶媒、重合開始剤および上記添加剤等を混合、撹拌することにより調製することができる。
【0094】
本発明の一態様において、重合性化合物(1)を含む本発明の重合性組成物における液体相-液晶相転移温度は、好ましくは25℃以上150℃以下である。液晶相への相転移温度が前記範囲内であると、工業的に製造しやすく生産性を向上し得る等の観点から好ましい。本発明において、前記液体相-液晶相転移温度は、通常40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、また、生産性の観点からより好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、特に好ましくは100℃以下である。前記ネマチック相-スメチクック相転移温度は、生産性の観点からより好ましくは100℃以下、さらに好ましくは95℃以下である。重合性化合物(1)を含む本発明の重合性組成物においては、二色性色素と混合した状態での液晶相転移温度も低下しやすい。重合性組成物の相転移温度が低くなると、高温条件下に曝されることなく製膜することが可能となり、得られる光学フィルムへのより一層高い光学特性の付与が期待できる。
なお、液晶相転移温度は、例えば、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡や、示差走査熱量計(DSC)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)等を用いて測定することができる。重合性化合物(1)と二色性色素、場合により他の液晶化合物を含む場合、上記相転移温度は重合性組成物を構成する重合性化合物(1)と二色性色素と他の液晶化合物とを重合性組成物における組成と同じ比率で混合した混合物を用いて測定される温度を意味する。
【0095】
<光学フィルム>
例えば、基材や配向膜上に本発明の重合性組成物の塗膜を形成すること、該塗膜から溶媒を除去すること、重合性化合物(1)が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後降温して、重合性化合物(1)を液晶相(例えばスメクチック相)に相転移させること、および、前記液晶相を保持したまま重合性化合物(1)を重合(硬化)させることを含む方法により、偏光性能を有する光学フィルムを得ることができる。本発明は、重合性化合物(1)の重合体、または、本発明の重合性組成物の硬化物を含む、光学フィルムも対象とする。
【0096】
重合性組成物の塗膜は、基材上または配向膜上などに重合性組成物を塗布することにより形成できる。
基材としては、例えば、ガラス基材、および、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等から構成されるフィルム基材が挙げられる。
【0097】
配向膜は、重合性化合物(1)を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜は、重合性化合物(1)の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜および重合性化合物(1)の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。例えば、配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性化合物(1)は水平配向またはハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性化合物(1)は垂直配向または傾斜配向を形成することができる。水平、垂直等の表現は、光吸収異方性膜平面を基準とした場合の、配向した重合性化合物(1)の長軸の方向を表す。例えば、水平配向とは光吸収異方性膜平面に対して水平な方向に、配向した重合性化合物(1)の長軸を有することであり、垂直配向とは光吸収異方性膜平面に対して垂直な方向に、配向した重合性化合物(1)の長軸を有することである。なお、ここでいう垂直とは、光吸収異方性膜平面に対して90°±20°のことを意味する。
【0098】
X-Y平面での偏光性能を得る場合には、重合性化合物(1)と二色性色素とが光吸収異方性膜平面に対して水平配向すればよいし、Z方向(光吸収異方性膜の膜厚方向)での偏光性を得る場合には、重合性化合物(1)と二色性色素とが光吸収異方性膜平面に対して垂直配向すればよい。
【0099】
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性化合物(1)の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0100】
基材と光吸収異方性膜との間に形成される配向膜としては、配向膜上に光吸収異方性膜を形成する際に使用される溶媒に不溶であり、また、溶媒の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜およびグルブ(groove)配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられる。
【0101】
基材や配向膜は、光学フィルムの用途や光吸収異方性膜に所望する性能等に応じて、従来光学フィルムの製造に用い得るものとして公知のものから適宜選択して用いることができる。
【0102】
重合性組成物を基材等に塗布する方法としては、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、スリットコーティング法、マイクログラビア法、ダイコーティング法、インクジェット法等が挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等も挙げられる。中でも、Roll to Roll形式で連続的に塗布する場合には、マイクログラビア法、インクジェット法、スリットコーティング法、ダイコーティング法による塗布方法が好ましく、ガラス等の枚葉基材に塗布する場合には、均一性の高いスピンコーティング法が好ましい。
【0103】
次いで、重合性組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性化合物(1)が硬化(重合)しない条件で、溶媒を乾燥等によって除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0104】
さらに、重合性化合物(1)を液体相に相転移させるため、重合性化合物(1)が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後降温し、重合性化合物(1)を液晶相(スメクチック相)に相転移させる。かかる相転移は、前記塗膜中の溶媒除去後に行ってもよいし、溶媒の除去と同時に行ってもよい。
【0105】
重合性化合物(1)の液晶状態を保持したまま、重合性化合物(1)を硬化(重合)させることにより、重合性組成物の硬化物として光吸収異方性膜が形成される。硬化方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる重合性化合物(1)の種類(特に、該重合性化合物が有する重合性基の種類)、重合開始剤の種類およびそれらの量等に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性組成物に含有される重合性化合物(1)や重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することで、重合温度を制御することもできる。
【0106】
前記活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0107】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、通常10~3,000mJ/cm、好ましくは50~2,000mJ/cm、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。積算光量が前記範囲内であると、重合性化合物を十分に硬化させることができ、また、得られる光吸収異方性膜における着色抑制効果に優れる。
【0108】
光重合を行うことにより、重合性化合物(1)は、液晶相、特にスメクチック相、好ましくは高次スメクチック相の液晶状態を保持したまま硬化(重合)し、光吸収異方性膜が形成される。重合性化合物(1)がスメクチック相の液晶状態を保持したまま硬化(重合)して得られる光吸収異方性膜(偏光膜)は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる光吸収異方性膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0109】
光吸収異方性膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.2~3μmである。
【0110】
本発明の一実施態様において、本発明の光学フィルムは20以上の二色比を有することが好ましい。ここで、二色比とは、光吸収異方性膜に入射した光の、互いに垂直に振動する2つの直線偏光の吸収強度比をいい、波長λnmの光に対する配向方向の吸光度A1(λ)と配向面内垂直方向の吸光度A2(λ)との比(A2/A1)を意味する。本発明においては、重合性化合物(1)と二色性色素とを光吸収異方性膜平面に対して水平方向に配向させることにより、二色比が20以上である光学フィルムを得られ得る。二色比が高ければ高い程、吸収選択性の優れる偏光膜となる。本発明の光学フィルムにおいて、二色比はより好ましくは30以上である。なお、二色性色素の種類にもよるが、ネマチック液晶相の状態で硬化した液晶硬化膜の場合には、二色比は5~10程度である。
二色比は、例えば、後述する実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0111】
本発明の光学フィルムは偏光性能に優れるため、種々の表示装置に好適に用いることができる。表示装置とは、表示機構を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(電場放出表示装置(FED等)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置等)および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられ、特に有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。例えば、本発明の重合性化合物(1)を含む重合性組成物から形成される光吸収異方性膜を含む光学フィルムを粘着剤または接着剤を介して表示装置の表面に貼合することで、本発明の光学フィルムを含む表示装置を得ることができる。
【実施例0112】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部である。
【0113】
各化合物の分析に用いるHPLC測定は、各重合性化合物に由来するピークを分離できる限りいずれの条件で行ってもよい。HPLC測定条件の一例を以下に示す。
(測定条件)
測定装置:HPLC LC-10AT(島津製作所製)
カラム:L-Column ODS(内径3.0mm、長さ150mm、粒径3μm)
温度:40℃
移動相A:0.1%(v/v)-TFA/水
移動相B:0.1%(v/v)-TFA/アセトニトリル
グラジエント:0min 70%-B
30min 100%-B
60min 100%-B
60.01min 70%-B
75min 70%-B
流速:0.5mL/min
注入量:5μL
検出波長:254nm
【0114】
1.化合物(A-1)および化合物(C-1)~(C-5)の合成
以下の方法に従い、化合物(A-1)および化合物(C-1)~(C-5)を調製した。
【0115】
(1)化合物(A-1)の合成
下記構造を有する化合物(A-1)を、Liquid Crystals,1995,Vol.18,No.2,319-326記載の方法で合成した。
【化15】
【0116】
(2)化合物(C-1)の合成
下記構造を有する化合物(C-1)を、以下のスキームに従い合成した。
【化16】
【0117】
(i)化合物(B-1)の合成
ジムロート冷却管および温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸10.3g、化合物(D-1)(東京化成工業(株)製)15.0g、KCO(富士フィルム和光純薬(株)製)16.5g、およびN-メチルー2-ピロリドン(関東化学(株)製)150gを添加して混合した後、100℃まで昇温し、3時間反応させた。冷却後、反応マスを水750gに加え、濃塩酸をpH<4まで加えた後、酢酸エチル800gを加え、有機層を回収した。有機層をさらに水500gで2回洗浄し、濃縮にて溶媒を留去させた。得られた粗生成物をトルエンに溶解させて、不溶成分を濾過にて除去したのちに濃縮にてトルエンを留去して化合物(B-1)を12.7g得た。化合物(B-1)の収率は、化合物(D-1)基準で62.1%であった。
【0118】
(ii)化合物(C-1)の合成
ジムロート冷却管および温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、化合物(B-1)を10.0g、N,N-ジメチルアセトアミド(関東化学(株)製)40.0g、N,N-ジメチルアニリン(関東化学(株)製)5.4g、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン、富士フィルム和光純薬(株)製)0.3gを添加して混合した後、0℃まで冷却し、アクリル酸クロリド(東京化成工業(株)製)3.2gを1時間かけて滴下し、5時間反応させた。反応終了後、濃塩酸を加え、pHが4未満になるように調整し、酢酸エチル80gを加えた後に、水120gを加えて有機層を回収した。さらに120gの水で分液を行い、有機層から酢酸エチルを濃縮にて留去させた。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、化合物(C-1)を5.5g得た。化合物(C-1)の収率は、化合物(B-1)基準で47.4%であった。
【0119】
(3)化合物(C-4)の合成
化合物(D-1)に代えて、化合物(D-4)を用いた以外は、化合物(C-1)の合成と同様の手順により、下記構造を有する化合物(C-4)を合成した。
【化17】
【0120】
(4)化合物(C-5)の合成
化合物(D-1)に代えて、化合物(D-5)を用いた以外は、化合物(C-1)の合成と同様の手順により、下記構造を有する化合物(C-5)を合成した。
【化18】
【0121】
(5)化合物(C-2)の合成
下記構造を有する化合物(C-2)を、以下のスキームに従い合成した。
【化19】
【0122】
ジムロート冷却管および温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸47.8g、化合物(D-2)(東京化成工業(株)製)20.0g、DMAP(N,N-ジメチルアミノピリジン、富士フィルム和光純薬(株)製)0.18g、BHT(富士フィルム和光純薬(株)製)0.44g、およびN-メチルー2-ピロリドン(関東化学(株)製)95gを添加して混合した後、滴下漏斗を用いてIPC(ジイソプロピルカルボジイミド、富士フィルム和光純薬(株)製)22.8gをさらに添加し、これらを40℃で一晩反応させた。反応終了後、シリカゲル濾過により不溶成分を除去し、濾液に酢酸エチル200gを加え、水500gにて洗浄を行った。得られた酢酸エチル溶液を、濃縮にて溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、化合物(C-2)を23.4g得た。化合物(C-2)の収率は、化合物(D-2)基準で53.2%であった。
【0123】
(6)化合物(C-3)の合成
trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に代えて、11-ブロモウンデカン酸を用いた以外は、化合物(C-2)の合成と同様の手順により、下記構造を有する化合物(D-3)を合成した。
【化20】
【0124】
化合物(D-4)に代えて、化合物(D-3)を用いた以外は、化合物(B-1)の合成と同様の手順により、化合物(C-3)を合成した。
【化21】
【0125】
2.重合性化合物の合成
(1)合成例1(実施例)
下記構造を有する化合物(1-a)を、以下のスキームに従い合成した。
【化22】
【0126】
ジムロート冷却管および温度計を設置した100mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、化合物(A-1)3.1g、化合物(C-1)3.0g、DMAP(富士フィルム和光純薬(株)製)0.02g、BHT(富士フィルム和光純薬(株)製)0.1g、およびクロロホルム(関東化学(株)製)23.0gを添加して混合した後、滴下漏斗を用いてIPC(富士フィルム和光純薬(株)製)1.0gをさらに添加し、これらを0℃で一晩反応させた。反応終了後、シリカゲル濾過により不溶成分を除去した。得られたクロロホルム溶液を、濃縮にて溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、重合性化合物(1-a)を5.2g得た。重合性化合物(1-a)の収率は、化合物(A-1)基準で90.8%であった。
【0127】
(2)合成例2(実施例)
化合物(C-1)に代えて、化合物(C-2)を用いた以外は、合成例1と同様にして、重合性化合物(1-b)を合成した。
【0128】
(3)合成例3(実施例)
化合物(C-1)に代えて、化合物(C-3)を用いた以外は、合成例1と同様にして、重合性化合物(1-c)を合成した。
【0129】
(4)合成例4(実施例)
化合物(C-1)に代えて、化合物(C-4)を用いた以外は、合成例1と同様にして、重合性化合物(1-d)を合成した。
【0130】
(5)合成例5(実施例)
化合物(C-1)に代えて、化合物(C-5)を用いた以外は、合成例1と同様にして、重合性化合物(1-e)を合成した。
【0131】
(6)合成例6(比較例)
下記構造を有する重合性化合物(1-f)を、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)記載の方法で合成した。
【化23】
【0132】
3.重合性化合物の評価
(1)相転移温度の測定
(i)積層体の製造
〔配向膜の作成〕
ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。かかるラビング処理により、ガラス基板上に配向膜が形成された積層体1を得た。
【0133】
(ii)相転移温度の測定
合成例1~6で調製した重合性化合物(1-a)~(1-f)を、それぞれ、バイアル管に1.00g量り取り、さらに2.00gのクロロホルムを加え溶解させた。得られた溶液を積層体1上に塗布し、乾燥させた。得られた積層体を冷却加熱装置(ジャパンハイテック社製「LNP94-2」)にのせて室温から120℃まで昇温させた後、室温まで冷却した。冷却時の変化の様子を偏光顕微鏡(LEXT、オリンパス社製)で観察し、相転移する温度を測定した。結果を表1に示す。
なお、表1中、「I」は液体相、「N」はネマチック液晶相、「SmA」はスメクチックA液晶相、「SmB」はスメクチックB液晶相を意味する。例えば、合成例1では、93℃で液体相からネマチック液晶相に、92℃でネマチック液晶相からスメクチックA液晶相に、70℃でスメクチックA液晶相からスメクチックB液晶相に相転移したことを示す。
【0134】
(2)溶解性評価
25℃にてバイアル管にo-キシレン1.00gと撹拌子を入れ、マグネチックスターラー(HS-30DN、アズワン)で撹拌を行いながら、合成例1~6で調製した重合性化合物(1-a)~(1-f)を、それぞれ、目視で溶け残りが確認されるまで投入した。溶け残りが確認されたところで、各化合物のo-キシレンへの溶解性を、(各化合物の重量)/(各化合物の重量+o-キシレンの重量)から重量パーセント濃度として算出した。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
4.重合性組成物の調製
(1)実施例1
(i)重合性組成物の調製
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、重合性組成物1を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を用いた。
・重合性化合物(1-a) 100部
【化24】
・下記に示す二色性色素(1) 2.8部
【化25】
・下記に示す二色性色素(2) 2.8部
【化26】
・下記に示す二色性色素(3) 2.8部
【化27】
・重合開始剤:
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤:
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2部
・溶剤:o-キシレン 250部
【0137】
(ii)相転移温度の測定
重合性化合物(1-a)~(1-f)の相転移温度を測定するために用いた積層体1と同様にして得たラビング処理を施したPVA配向膜付きのガラス基板に、重合性組成物1を塗布し、室温から150℃まで昇温させた後、室温まで冷却した。冷却時の変化の様子を偏光顕微鏡で観察し、相転移する温度を測定した。結果を表2に示す。
なお、表2中の相転移を示す各符号は表1と同様の意味である。
【0138】
(2)実施例2
重合性化合物(1-a)に代えて、重合性化合物(1-b)を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物2を調製した。得られた重合性組成物の相転移温度を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0139】
(3)実施例3
重合性化合物(1-a)に代えて、重合性化合物(1-c)を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物3を調製した。得られた重合性組成物の相転移温度を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0140】
(4)実施例4
重合性化合物(1-a)に代えて、重合性化合物(1-d)を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物4を調製した。得られた重合性組成物の相転移温度を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0141】
(5)実施例5
重合性化合物(1-a)に代えて、重合性化合物(1-e)を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物5を調製した。得られた重合性組成物の相転移温度を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0142】
(6)比較例1
重合性化合物(1-a)に代えて、重合性化合物(1-f)を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合性組成物6を調製した。得られた重合性組成物の相転移温度を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0143】
5.二色比の測定
(1)偏光膜の形成
積層体1の配向膜上に、重合性組成物1をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で1分間加熱乾燥した後、速やかに室温まで冷却して、前記配向膜上に配向した重合性化合物(1-a)を含む乾燥被膜を形成した。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を、露光量2000mJ/cm(365nm基準)で乾燥被膜に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性化合物(1-a)を、配向状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜(1)を形成した。
【0144】
(2)二色比の測定
分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に、上記で作製した偏光膜(1)を備えたフォルダーをセットした装置を用いて、550nmにおける透過軸方向の吸光度(A1)および吸収軸方向の吸光度(A2)をダブルビーム法で測定した。該フォルダーのリファレンス側には光量を50%カットするメッシュを設置した。測定された透過軸方向の吸光度(A1)および吸収軸方向の吸光度(A2)の値から、比(A2/A1)を算出し、二色比とした。
なお、透過軸とは、偏光膜への入射光のうち、偏光膜を透過する成分の偏光方向のことをいい、吸収軸とは、偏光膜への入射光のうち、偏光膜で吸収される成分の偏光方向のことをいう。
【0145】
二色比を以下の評価基準に従い評価した。結果を表2に示す。
A:30以上
B:20以上~30未満
C:10以上~20未満
D:0以上~10未満
【0146】
【表2】
【0147】
本発明の重合性化合物によれば、相転移温度を低下させて、より低温での成膜が可能になる。