(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169946
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】給電装置および給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/50 20160101AFI20231124BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20231124BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20231124BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231124BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20231124BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20231124BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20231124BHJP
【FI】
H02J50/50
H02J50/40
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081305
(22)【出願日】2022-05-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、「第三世代ワイヤレスインホイールモータを開発と実証」委託研究、および令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、「シャトルサービスモビリティを用いた走行中給電の実証実験」委託研究、および令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、「走行中給電向け送受電コイル及び埋設コイルの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 勇人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GB08
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE12
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
5H125DD02
5H125FF15
5H125FF16
(57)【要約】
【課題】送電コイルから受電コイルへの給電効率を高める。
【解決手段】この給電装置250は、移動体200の移動に伴って、移動体が移動する面に沿って配置された送電コイル40と受電コイル240との間の電力の供給を順次中継する複数の中継コイル70a-70fと、受電コイルに接続され、移動体で用いられる電力を受け取る受電回路230とを備え、移動体に電力を供給する。電力を中継する複数の中継コイルの各々は、移動体の移動位置に応じて、送電コイルと磁界結合する第1コイル71と、第1コイルが送電コイルと磁界結合するときに受電コイルと磁界結合する第2コイル72と、第1コイルと第2コイルとを接続する接続回路90とを有する。この接続回路において、第1コイルおよび第2コイルの少なくとも一方の共振周波数の設定に関与する共振コンデンサCt1,Cw1が並列特性を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(200)に搭載された受電コイル(240)と、
前記移動体の移動に伴って、前記移動体が移動する面に沿って配置された送電コイル(40)と前記受電コイルとの間の電力の供給を順次中継する複数の中継コイル(70)と、
前記受電コイルに接続され、前記移動体で用いられる電力を受け取る受電回路(230)と、を備え、
前記複数の中継コイルの各々は、前記移動体の移動位置に応じて、前記送電コイルと磁界結合する第1コイル(71)と、前記第1コイルが前記送電コイルと磁界結合するときに前記受電コイルと磁界結合する第2コイル(72)と、前記第1コイルと前記第2コイルとを接続する接続回路(90)とを備え、
前記接続回路は、前記第1コイルおよび前記第2コイルの少なくとも一方の共振周波数の設定に関与する共振コンデンサ(Ct1,Cw1)を備え、前記共振コンデンサが並列特性を有する、
給電装置(250)。
【請求項2】
前記共振コンデンサは、
前記第1コイルに並列接続された並列共振コンデンサと、
前記第2コイルに直列接続された直列共振コンデンサと、
から構成された、請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記共振コンデンサの容量は、
前記送電コイルと共振用の第1コンデンサとを通る回路に印加される送電電圧、前記送電コイルのインダクタンス、前記第1コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第1電圧方程式、
前記第1コイルと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第1コイルのインダクタンス、前記並列共振コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第2電圧方程式、
前記第2コイルと前記並列共振コンデンサと前記直列共振コンデンサとを含む回路における前記第2コイルのインダクタンス、前記並列共振コンデンサの容量、前記直列共振コンデンサの容量、前記第2コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第3電圧方程式、
前記受電コイルと共振用の第2コンデンサとを通る回路における前記受電コイルのインダクタンス、前記第2コンデンサの容量、前記受電コイルと前記第2コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第4電圧方程式、
からなる連立方程式の解により定めた、請求項2に記載の給電装置。
【請求項4】
前記共振コンデンサは、前記第1コイルおよび前記第2コイルに共通に並列接続された、請求項1に記載の給電装置。
【請求項5】
前記共振コンデンサは、
前記第1コイルに直列接続された直列共振コンデンサと、
前記第2コイルに並列接続された並列共振コンデンサと、
から構成された、請求項1に記載の給電装置。
【請求項6】
前記共振コンデンサの容量は、
前記送電コイルと共振用の第1コンデンサとを通る回路に印加される送電電圧、前記送電コイルのインダクタンス、前記第1コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第1電圧方程式、
前記第1コイルと前記直列共振コンデンサと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第1コイルのインダクタンス、前記直列共振コンデンサの容量、前記並列共振コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第2電圧方程式、
前記第2コイルと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第2コイルのインダクタンス、前記並列共振コンデンサの容量、前記第2コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第3電圧方程式、
前記受電コイルと共振用の第2コンデンサとを通る回路における前記受電コイルのインダクタンス、前記第2コンデンサの容量、前記受電コイルと前記第2コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第4電圧方程式、
からなる連立方程式の解により定めた、請求項5に記載の給電装置。
【請求項7】
前記共振コンデンサは、
前記第1コイルおよび前記第2コイルのそれぞれに直列接続された第1直列共振コンデンサおよび第2直列共振コンデンサと、
前記第1コイルおよび前記第1直列共振コンデンサと前記第2コイルおよび前記第2直列共振コンデンサとに対して、並列接続された並列共振コンデンサと、
から構成された、請求項1に記載の給電装置。
【請求項8】
前記共振コンデンサの容量は、
前記送電コイルと共振用の第1コンデンサとを通る回路に印加される送電電圧、前記送電コイルのインダクタンス、前記第1コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第1電圧方程式、
前記第1コイルと前記第1直列共振コンデンサと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第1コイルのインダクタンス、前記第1直列共振コンデンサの容量、前記並列共振コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第2電圧方程式、
前記第2コイルと前記第2直列共振コンデンサと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第2コイルのインダクタンス、前記第2直列共振コンデンサの容量、前記並列共振コンデンサの容量、前記第2コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第3電圧方程式、
前記受電コイルと共振用の第2コンデンサとを通る回路における前記受電コイルのインダクタンス、前記第2コンデンサの容量、前記受電コイルと前記第2コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第4電圧方程式、
からなる連立方程式の解により定めた、請求項7に記載の給電装置。
【請求項9】
前記移動体は車輪(60)を備え、
前記複数の中継コイルは、前記車輪の周方向に沿って設けられ、前記移動体の移動に伴う前記車輪の回転位置に応じて、前記送電コイルから前記受電コイルへの前記電力の中継を順次行なう、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の給電装置。
【請求項10】
前記複数の中継コイルの前記第1コイルのそれぞれは、前記車輪のタイヤ(62)内に設けられ、
前記複数の中継コイルの前記第2コイルのそれぞれは、前記車輪のホイール(64)内に設けられた、
請求項9に記載の給電装置。
【請求項11】
前記第2コイルの共振周波数を設定する前記共振コンデンサは前記ホイール内に設けられた、請求項10に記載の給電装置。
【請求項12】
前記第1コイルの共振周波数を設定する前記共振コンデンサは前記タイヤ内に設けられた、請求項10に記載の給電装置。
【請求項13】
前記複数の中継コイルは、前記車輪の回転軸に対して、前記車輪の円周を等角度に分割する位置に設けられた、請求項9に記載の給電装置。
【請求項14】
前記送電コイルおよび前記受電コイルの少なくとも一方が、前記中継コイルのインダクタンスを変化させる磁性体を備え、
前記共振コンデンサは、前記中継コイルのインダクタンスの極大値を用いて設定された容量を備える、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の給電装置。
【請求項15】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の給電装置と、
前記移動体が走行する走行面に設けられた複数の送電コイルと、
前記複数の送電コイルのうちの少なくとも一つの送電コイルであって、前記移動体が位置する送電コイルに、前記共振周波数に対応した周波数の交流電流を流す送電装置(100)と、
を備えた電力伝送システム(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体に、路面や床面から電力を給電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車輪を用いて移動する移動に、路面や床面から非接触で給電する技術が種々提案されている。例えば、体特許文献1には、車輪に中継コイルを設け、走行中の車両に中継コイルを介して給電する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成は、送電コイルから、タイヤに設けた中継コイルを介して、車両側の受電コイルに電力を供給するものであり、送電コイルと中継コイルの間隔を狭くして、伝送効率を高めることができる優れたものであるが、車輪が回転すると送電コイルや受電コイルに対する中継コイルの位置が変わるため、システム全体での伝送効率を一層高める構成が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、給電装置が提供される。この給電装置は、移動体(200)に搭載された受電コイル(240)と、前記移動体の移動に伴って、前記移動体が移動する面に沿って配置された送電コイル(40)と前記受電コイルとの間の電力の供給を順次中継する複数の中継コイル(70)と、前記受電コイルに接続され、前記移動体で用いられる電力を受け取る受電回路(230)と、前記複数の中継コイルの各々は、前記移動体の移動位置に応じて、前記送電コイルと磁界結合する第1コイル(71)と、前記第1コイルが前記送電コイルと磁界結合するときに前記受電コイルと磁界結合する第2コイル(72)と、前記第1コイルと前記第2コイルとを接続する接続回路(90)とを有し、前記接続回路において、前記第1コイルおよび前記第2コイルの少なくとも一方の共振周波数の設定に関与する共振コンデンサ(C)が並列特性を有する。この形態によれば、送電コイルと第1コイルとの間隔、第2コイルと受電コイルの間隔をいずれも狭くできるので、電力の伝送効率を高めることができる。更に、複数の中継コイルのうち、送電コイルに正対しない他の中継コイルに流れる電流を抑制して、給電装置の給電効率を高めることができる。
【0006】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、給電装置の他、給電システムやその設計方法など種々の態様で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態の給電装置を備えた電力伝送システムを示す説明図である。
【
図1B】送電回路から受電回路までを示す説明図である。
【
図2】車輪の中心軸に沿った方向から車輪を見たときの構成を示す説明図である。
【
図3】
図2のIII-III断面により車輪の内部構成を示す説明図である。
【
図4】第1コイルを車輪の中心軸から見た状態を模式的に示す説明図である。
【
図5】第2コイルを車輪の中心軸から見た状態を模式的に示す説明図である。
【
図6】給電装置の電気的な構成の概略を示す回路図である。
【
図7】車輪の位相と、自己インダクタンスの関係を示す説明図である。
【
図8A】第1実施形態のPS共振方式の中継コイルの構成と共振条件とを示す説明図である。
【
図8B】参考例としてのSS共振方式の中継コイルの構成と共振条件とを示す説明図である。
【
図9】第1コイルと第2コイルとの電流減少率を示すグラフである。
【
図10】参考例と第1実施例において給電される電力をバッテリ電圧の違いにより示す説明図である。
【
図11】給電される平均電力を、参考例のSS共振方式と第1実施形態のPS共振方式との比較において示す説明図である。
【
図12】第1実施形態のPS共振方式による給電装置の等価回路を示す説明図である。
【
図13】PS共振方式の電圧方程式を示す説明図である。
【
図14】第2から第4実施形態の中継コイルの構成と共振条件を示す説明図である。
【
図15】第1から第4実施形態までの構成おける第1コイルと第2コイルとの電流減少率を示すグラフである。
【
図16】第1から第4実施形態において給電される電力をバッテリ電圧の違いにより示す説明図である。
【
図17】第2から第4実施形態において給電される平均電力を比較して示す説明図である。
【
図18】第3実施形態のSP共振方式による給電装置の等価回路を示す説明図である。
【
図19】第3実施形態のSP共振方式の電圧方程式を示す説明図である。
【
図20】第4実施形態のSPS共振方式による給電装置の等価回路を示す説明図である。
【
図21】第4実施形態のSPS共振方式の電圧方程式を示す説明図である。
【
図22】第5から第7実施形態の中継コイルの構成と共振条件を示す説明図である。
【
図23】第8実施形態の給電装置における中継コイルの配列の一例を示す説明図である。
【
図24】第8実施形態の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
(A1)電力伝送システムの全体構成:
第1実施形態の給電装置250を含む電力伝送システム500の概略構成を、
図1Aに示す。電力伝送システム500は、移動体の一種である車両200に、車両200が移動する面に対応する道路105から、電力を供給するシステムである。電力伝送システム500は、図示するように、道路105に設けられた送電システム100と、車両200に搭載される給電装置250とを備える。電力伝送システム500は、車両200の停車中あるいは走行中において、送電システム100から車両200の給電装置250に、車輪60に設けられた中継コイル70を用いて電力を伝送する。車輪60は、道路105に接触しているが、電気的には、送電システム100とは非接触である。送電システム100からの電力は、車輪60に複数個設けられた中継コイル70のうちの一つを中継して、給電装置250に伝送される。電力伝送の詳しいメカニズムは後で詳しく説明する。
【0009】
非接触での電力伝送をうける車両200は、例えば、電気をエネルギ源としてモータを駆動して動力を得る電気自動車やモータの他に内燃機関などの動力源を搭載したハイブリッド車として構成される。なお、車両200は、4輪車に限るものではなく、3輪車でもよく、オートバイなどの2輪車やトラックなどの車輪数の多い車両、あるいは工場内などで用いられる搬送車や自走式のロボットなどであってもよい。こうした車両などの移動体が移動する面は、屋外の道路105であってもよく、屋内の床面などであってもよい。
【0010】
道路105側の送電システム100は、道路105に埋設された複数の送電コイル40と、複数の送電コイル40のそれぞれに交流電圧を印加して電力を供給する複数の送電回路30と、複数の送電回路30に電力を供給する外部電源10(以下「電源10」と略す)と、コイル位置検出部20と、制御装置50と、を備えている。
【0011】
複数の送電コイル40は、本実施形態では、道路105の進行方向に沿って設置されている。送電コイル40は、一方向のみならず、2次元的に配列してもよい。送電回路30は、電源10から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して送電コイル40に印加する回路である。送電回路30については、後述する。電源10は、直流電圧を送電回路30に供給する回路である。例えば、電源10は、系統電源から力率改善回路(PFC)を介して送電回路30へ供給される。PFCについては、図示を省略している。電源10が出力する直流電圧は、完全な直流電圧でなくてもよく、ある程度の変動(リップル)を含んでいても良い。なお、送電回路30と送電コイル40の間には、通常フィルタが設けられるが、
図1Aでは、図示を省略している。フィルタについては、送電に関わる電気回路を説明する際に併せて説明する。
【0012】
コイル位置検出部20は、車両200の車輪60に搭載されている中継コイル70の、送電コイル40に対する相対的な位置を検出する。コイル位置検出部20は、例えば、複数の送電回路30における送電電力や送電電流の大きさから中継コイル70の位置を検出しても良く、あるいは、車両200との無線通信や車両200の位置を検出する位置センサを利用して中継コイル70の位置を検出してもよい。中継コイル70は、車輪60に設けられているので、車輪60の位置を、車輪60から受ける荷重などを利用して検出するようにしてもよい。制御装置50は、コイル位置検出部20で検出された中継コイル70の位置に応じて、中継コイル70に近い1つ以上の送電回路30と送電コイル40に送電を実行させる。
【0013】
(A2)給電装置の構成:
車両200は、給電装置250を構成する中継コイル70,受電回路230,および受電コイル240の他、メインバッテリ210と、補機バッテリ215と、制御装置220と、DC/DCコンバータ回路260と、インバータ回路270と、モータジェネレータ280と、補機290等を備えている。車輪60は、タイヤ62とホイール64とを有しており、受電コイル240は、車輪60のホイール64の内側(中心軸61側)に設けられている。受電コイル240には、受電回路230が接続されている。受電回路230の出力には、メインバッテリ210と、DC/DCコンバータ回路260の高圧側と、インバータ回路270と、が接続されている。DC/DCコンバータ回路260の低圧側には、補機バッテリ215と、補機290とが接続されている。インバータ回路270には、モータジェネレータ280が接続されている。
【0014】
図1Aの受電回路230は、受電コイル240から出力される交流電流を直流電流に変換する整流回路を含む。なお、受電回路230は、整流回路にて生成した直流の電圧を、メインバッテリ210の充電に適した電圧に変換するDC/DCコンバータ回路を含んでいても良い。受電回路230から出力される直流の電力は、メインバッテリ210の充電や、インバータ回路270を介したモータジェネレータ280の駆動に利用することができ、また、DC/DCコンバータ回路260を用いて直流の電圧を降圧することで、補機バッテリ215の充電や、補機290の駆動にも利用可能である。
【0015】
メインバッテリ210は、モータジェネレータ280を駆動するための比較的高い直流電圧を出力する2次電池である。モータジェネレータ280は、3相交流モータとして動作し、車両200の走行のための駆動力を発生する。モータジェネレータ280は、車両200の減速時にはジェネレータとして動作し、3相交流電圧を発生する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がモータとして動作するとき、メインバッテリ210の直流電圧を3相交流電圧に変換してモータジェネレータ280に供給する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がジェネレータとして動作するとき、モータジェネレータ280が出力する3相交流電圧を直流電圧に変換してメインバッテリ210に供給する。
【0016】
DC/DCコンバータ回路260は、メインバッテリ210の直流電圧を、補機290の駆動に適した直流電圧に変換して補機バッテリ215及び補機290に供給する。補機バッテリ215は、補機290を駆動するための直流電圧を出力する2次電池である。補機290は、車両200の空調装置や電動パワーステアリング装置、ヘッドライト、ウインカ、ワイパー等の周辺装置や車両200の様々なアクセサリーを含む。DC/DCコンバータ回路260は、電圧変換の必要がなければ無くてもよい。
【0017】
制御装置220は、車両200内の上述した各部を制御する。制御装置220は、走行中非接触給電を受ける際には、受電回路230を制御して、受電に必要な処理を実行する。
【0018】
(A3)中継コイルの構成:
中継コイル70は、車輪60に設けられている。中継コイル70は、
図1Bに示すように、第1コイル71と第2コイル72と両者を接続する共振接続回路90とを有する。中継コイル70は、車輪60の回転軸を中心として、等角度に、つまり中心角で60度ずつ離間して、6個設けられている。6個の中継コイル70を区別する場合には、中継コイル70a,70b,70c,70d,70e,70fと呼ぶが、特に区別を要しない場合には、中継コイル70と呼ぶ。
図1Bでは、中継コイル70aとこれに隣接する中継コイル70bおよび中継コイル70fを示している。各組の中継コイル70において、第1コイル71と第2コイル72と共振接続回路90とは、有線接続されている。
【0019】
中継コイル70の第1コイル71は、ホイール64の外側、すなわちタイヤ62側に設けられており、第2コイル72は、ホイール64の内側に設けられている。従って、車輪60の中心軸61から第1コイル71までの間隔と、中心軸61から第2コイル72までの間隔は異なっており、中心軸61から第1コイル71までの間隔の方が大きい。そのため、第1コイル71は、第2コイル72よりも道路105に埋設された送電コイル40に近づくことができる。車輪60が回転し、第1コイル71が道路105に埋設された送電コイル40と対向すると、第1コイル71と送電コイル40とは磁界結合し、交流電圧が印加された送電コイル40との間の電磁誘導によって第1コイル71に交流の誘導電流が生じる。第1コイル71と第2コイル72とは、共振接続回路90を介して接続されており、この誘導電流は、導線を通って第1コイル71から第2コイル72に流れる。このとき、受電コイル240は、第2コイル72と対向する位置に位置しており、第2コイル72と受電コイル240とは磁界結合する。その結果、受電コイル240には、交流の誘導電流が流れている第2コイル72との間の電磁誘導によって交流の誘導電流を生じる。中継コイル70は、このように、第1コイル71と第2コイル72を用いて、送電コイル40から受電コイル240への電力の伝送を中継する。すなわち、電力は、
図1Bに示すように、送電回路30から送電コイル40、中継コイル70(第1コイル71、第2コイル72)、受電コイル240を経て、受電回路230に伝送される。
【0020】
図2は、車輪60の中心軸61に沿った方向から車輪60を見たときの構成を示す説明図である。
図2では、理解の便を図って、右半分を透視図として示している。第1コイル71は、ホイール64の外周64oの外側、かつ、タイヤ62の内部に設けられている。第2コイル72は、ホイール64の外周64oの内側に設けられている。受電コイル240は、ホイール64の外周64oよりも内側において、車両200に設置されている。受電コイル240は、例えば、ディスクブレーキのブレーキキャリパと同様の仕組みで車両200に取り付けられている。そのため、車両200の走行状態によらず、受電コイル240と車輪60との相対的な位置は、変わらない。
【0021】
図2では、一部の中継コイル70a,70b,70c,70dのみを図示している。隣接する中継コイル70において、互いの第1コイル71は重なっておらず、互いの第2コイル72も重なっていない。従って、第1コイル71、第2コイル72の車輪60の周に沿った方向の大きさは、それぞれ、配置される位置における円周の1/6弱となっている。なお、隣接する2つの第1コイル71が重なっていてもよく、隣接する2つの第2コイル72が重なっていてもよい。なお、6個の中継コイル70を、3個ずつ用いて、3相を構成していてもよい。
【0022】
図3は、中心軸61と垂直な方向から車輪60を見たときの構成を示す説明図である。
図3では、一部を透視した図としている。第1コイル71は、ホイール64よりも外側のタイヤ62の内部において、熱伝導板80に保持されて配置されている。熱伝導板80は、熱伝導性の高いアルミニウム製であり、同じくアルミダイキャストであるホイール64の外周面に、別体または一体に設けられている。この熱伝導板80には、第1実施形態では、表面を絶縁処理した上で、後述する並列共振コンデンサ(Ct1)が取り付けられている。なお、熱伝導板80に共振接続回路90全体を取り付けてもよい。第1コイル71と第2コイル72とが、タイヤ62とホイール64とにそれぞれ配置されているため、両者を有線接続する導線はホイール64を貫通している。貫通箇所はシールが施され、タイヤ62の気密は保持される。
【0023】
第1コイル71と第2コイルとは、中心軸61から見たときに、第1実施形態では、重なりの位置に配置されている。前記第1コイルと前記第2コイルとを通過する軸から第2コイル72と受電コイル240との間の間隔G2は、第1コイル71と送電コイル40との間の間隔G1よりも狭くなっている。
図3に示すように、タイヤ62は、道路105と接触しており、道路105の凹凸により変形する。この変形する領域に第1コイル71が存在すると、第1コイル71が変形するなどの影響を受ける。そのため、第1コイル71とタイヤ62の外縁との間には、ある程度の間隔G1が必要である。これに対し、受電コイル240と車輪60との相対的な位置は、道路105の凹凸の影響を受けずに変わらない。そのため、第2コイル72と受電コイル240との間の間隔G2を狭くできる。実際、第2コイル72と受電コイル240との間の間隔G2は、第1コイル71と送電コイル40との間の間隔G1よりも狭い。第2コイル72と受電コイル240との間の間隔G2を狭くすると、第2コイル72から受電コイル240への伝送効率を高めることができる。
【0024】
図4は、第1コイル71を車輪60の中心軸61から見た図であり、
図5は、第2コイル72を車輪60の中心軸61から見た図である。
図4、
図5では、コイル71、72の一部の図示を省略している。第1コイル71、第2コイル72は、それぞれ渦巻き状に巻かれている。第1コイル71と第2コイル72のターン数は、第1コイル71と第2コイル72に所望されるインダクタンス値に基づいて決定され、第1実施形態では、およそ5から10ターンである。
図4に示すように、中心軸61から見て第1コイル71に時計回りの誘導電流が流れるときには、第2コイル72には、
図5に示すように、中心軸61から見て反時計回りの誘導電流が流れる。逆に、中心軸61から見て第1コイル71に反時計回りの誘導電流が流れるときには、第2コイル72には、中心軸61から見て時計回りの誘導電流が流れる。第1コイル71と第2コイルとは、中心軸61から見たときに、重なりの位置に配置されているので、第1コイル71と第2コイル72に流れる電流により発生する磁界は互いに打ち消し、漏洩電磁界を抑制できる。
【0025】
図6は、電力伝送システム500の電気的な概略構成を示す回路図である。送電回路30は、電源10からの電力供給を受けて動作する。各送電回路30は、インバータ35とフィルタ36とを備える。フィルタ36は、本実施形態では、パンドパスフィルタとして機能するイミタンス変換器である。各送電回路30は、電力入力側に平滑コンデンサ37を備え、出力側に共振コンデンサ38と送電コイル40とを備える。第1実施形態では、送電コイル40と共振コンデンサ38を直列に接続するSS方式を採用している。SS方式の代わりに、送電コイル40と共振コンデンサを並列に接続するPP方式、あるいは、共振コンデンサを直列及び並列に有するSPS方式を採用してもよい。
【0026】
車輪60に設けられた中継コイル70を介して電力を受け取る受電回路230は、受電コイル240に直列に接続された共振コンデンサ232と、フィルタ241と、全波整流を行なう整流器243と、平滑コンデンサ245と、を備える。このフィルタ241も、本実施形態では、イミタンス変換器として構成した。受電回路230が受電した電力は、整流器243により直流に変換され、メインバッテリ210を充電する。メインバッテリ210の電圧は任意であるが、例えば100ボルトや400ボルトなどのものを用いることができる。このため、必要に応じて、整流器243とメインバッテリ210との間に、両者の電圧に対応したDC/DCコンバータを設ける。
【0027】
図6に示すように、本実施形態では、中継コイル70は、車輪60の周方向に沿って、中心角として60度おきに、6つ配置されている。各中継コイル70aから70fは、第1コイル71および第2コイル72と、両者を接続する共振接続回路90とを備える。なお、中継コイル70の数は1つでも良いし、複数個でもよく、その数は任意である。車輪60が回転すると、中継コイル70も回転し、道路105に対向する第1コイル71が順次切り替わり、第1コイル71に対向する送電コイル40も順次切り替わる。また、受電コイル240に対抗する第2コイル72も順次切り替わる。共振接続回路90は、送電コイル40に対向する位置に至った中継コイル70の第1コイル71を含む回路の共振周波数が、送電コイル40に印加される交流電源の周波数に近いものとなり、かつ受電コイル240に対向する位置に至った中継コイル70の第2コイル72を含む回路の共振周波数が、共振コンデンサ232と受電回路230とが形成する回路の共振周波数に近いものとなるようにしている。共振周波数は、その時点での各コイル71,72を貫く磁束によるコイルの自己インダクタンス、共振接続回路90に含まれる共振コンデンサの容量などにより決定される。本実施形態では、共振周波数は、おおよそ85KHzとした。共振接続回路90の構成については、後で詳しく説明する。
【0028】
図7は、車輪60の位相と、中継コイル70の第1コイル71と第2コイル72の自己インダクタンスとの関係を示す説明図である。図の下段に示したように、各中継コイル70の第1コイル71が送電コイル40と対向したときに、各中継コイル70の自己インダクタンスが最も大きくなる。位相0°では中継コイル70aの第1コイル71aが送電コイル40と対向しており、第1コイル71aの合成インダクタンスLt1が極大になっている。同様に、位相60°では中継コイル70bの第1コイル71bが送電コイル40と対向し、中継コイル70bの自己インダクタンスLt2が極大になっている。位相120°では中継コイル70c第1コイル71cが送電コイル40と対向し、位相180°では中継コイル70dの第1コイル71dが送電コイル40と対向し、それぞれ、中継コイル70cの自己インダクタンスLt3、中継コイル70dの自己インダクタンスLt4が極大になっている。すなわち、中継コイル70a、70b、70c、70dは、位相が0°、60°、120°、180°で自己インダクタンスLtが極大となり、第1コイル71と送電コイル40とが最も結合する。中継コイル70e,70fについても同様である。
【0029】
他方、各中継コイル70aから70fの第2コイル72aから72fは、
図7上段に示したように、受電コイル240に対向する位置に至ると、受電コイル240に対向する位置の中継コイル70aから70fのインダクタンスLw1からLw6が、それぞれが極大となる。なお、送電コイル40や受電コイル240は、磁性体を備えており、各中継コイル70の第1コイル71や第2コイル72が近づくと、磁性体により各コイルのインダクタンスは大きく変化する。後述する共振コンデンサの容量は、変化するインダクタンスの極大値を用いて求めることが好ましい。なお、磁性体は、送電コイル40および受電コイル240の片方にのみ設けてもよいし、いずれにも設けない構成としてもよい。
【0030】
一つの中継コイル70に着目すれば、その第1コイル71が送電コイル40と対向するときに、自己インダクタンスが最大となる。共振接続回路90内に設けられた共振コンデンサ(後述)の容量は、この自己インダクタンスの最大値を用いて、第1コイル71の共振周波数が、送電コイル40に印加される交流電圧の周波数と一致または近傍となるように設定されている。なお、このとき、第1コイルを含む回路のインピーダンスは十分に小さいものとして、共振周波数を計算してもよいし、実測によって共振周波数を求めて、共振コンデンサの容量を設定してもよい。同様に、第2コイルにおける共振周波数は、第2コイルを含む回路のインピーダンスが十分に小さければ、第2コイルが受電コイルに対向する際における第2コイルのインダクタンス値と共振コンデンサの容量とにより定まる。そこで、第2コイルにおける共振周波数が、受電コイル240が受電する際の設計周波数と一致または近傍となるとように、共振コンデンサの容量を設定する。本実施形態では、第1コイル71が送電コイル40と対向するときに、受電コイル240が第2コイル72と対向する位置に至るので、送電コイル40と第1コイル71との間の結合係数ka、第2コイル72と受電コイル240との間の結合係数kbをいずれも最大にでき、送電コイル40から中継コイル70を介した受電コイル240への送電効率を高めることができる。
【0031】
(A3)中継共振回路90の構成と働き:
第1実施形態における中継共振回路90の構成と働きについて以下説明する。
図8Aは、第1実施形態における中継共振回路90の構成を示す。第1実施形態の中継共振回路90は、第1コイル71と第2コイル72とを接続する回路に、直列に接続された直列共振コンデンサCw1と並列に接続された並列共振コンデンサCt1とを備える。この回路構成をPS共振方式と呼ぶ。これに対して、
図8Bに参考例として示す中継共振回路90Sの回路構成は、共振コンデンサCt1、Cw1を、第1コイル71,第2コイル72に直列に接続しているので、SS共振方式(直列方式)と呼ぶ。
【0032】
コンデンサについては、符号とその容量とを、共にCt1、Cw1のように記載する。第1コイル71のインダクタンスはLt1、電流はIt1として記載する。同様に、第2コイル72のインダクタンスはLw1、電流はIw1として記載する。コンデンサの容量C、コイルのインダクタンスL、コイルに流れる電流Iなどに添えられた添え字tは、タイヤ側、つまり第1コイル71側を、添え字wは、ホイール側、つまり第2コイル72側を、それぞれ表わしている。符号Iarcは、共振電流を示している。
【0033】
図示するように、第1コイル71と並列共振コンデンサCt1とは、ホイール64の外周64oより外側、つまりタイヤ62内に設けられ、第2コイル72とこれに接続された直列共振コンデンサCw1とは、ホイール64内に設けられている。また、既に説明した様に、並列共振コンデンサCt1は、第1実施形態では、熱伝導板80に搭載されている。
【0034】
図8A下段に、PS共振方式の中継共振回路90における共振条件を示す式を掲載した。図示するように、
ω・Lt1-1/(ω・Ct1)=0
ω・Lw1-1/(ω・Cw1)+1/(ω・Ct1)=0
を満たす周波数F(ω=2πF)が共振周波数となる。
他方、参考例として、SS共振方式の中継共振回路における共振条件を示す式を、
図8Bの下段に示した。SS共振方式では、共振の条件は、
ω・Lt1-1/(ω・Ct1)=0
ω・Lw1-1/(ω・Cw1)=0
である。
【0035】
第1実施形態では、中継共振回路90はPS共振方式を採用しており、中継コイル70は並列特性を有している。この場合の中継コイル70を用いた電力給電に関係する各種特性を、参考例であるSS共振方式と比較して、
図9、
図10、
図11に示した。
図9の上段は、位相60度毎に設けられた6個の中継コイル70aから70fのうち、一つの中継コイル70aが送電コイル40に正対している場合に、他の中継コイル70bから70fの第1コイル71bから71fに流れる電流を正規化して示している。図では、縦軸は電流減少率であり、SS共振方式とPS共振方式とでタイヤ側の第1コイル71aに流れる電流を同じ大きさ1.0に正規化した上で、第1コイル71bから71fのそれぞれに流れる電流It2からIt6を、第1コイル71aに流れる電流It1との比It2/It1からIt6/It1として示す。縦軸を電流減少率としているのは、各第1コイルに流れる電流を、送電コイル40に正対している第1コイル71に流れる電流に対する割合として示しているからである。従って、電流減少率は、値が小さいほど、無駄な電流が流れていないことを示す。
【0036】
同様に、
図9の下段には、位相60度毎に設けられた6個の中継コイル70aから70fのうち、一つの中継コイル70aが送電コイル40に正対している場合に、他の中継コイル70bから70fの第2コイル72bから72fに流れる電流を示している。図では、縦軸は電流減少率であり、SS共振方式とPS共振方式とでタイヤ側の第2コイル72aに流れる電流を同じ大きさ1.0に正規化した上で、第2コイル72bから72fのそれぞれに流れる電流Iw2からIw6を、第2コイル71aに流れる電流Iw1との比Iw2/Iw1からIw6/Iw1として示す。この場合も、電流減少率は、値が小さいほど、無駄な電流が流れていないことを示す。
【0037】
送電コイル40から受電コイル240に電力の供給を行なうので、送電コイル40に正対している中継コイル70、
図6に示した状態では、中継コイル70aのみに電流が流れ、他の中継コイル70bから70fには電流が流れないのが理想的であるとしても、現実は、他の中継コイル70bから70fにも電流が生じる。これらの電流は、給電に寄与しない無駄な電力として消費され、実際には熱に変換される。
【0038】
本実施形態では、中継共振回路90にPS共振方式を採用し、並列特性を持たせているので、
図9に示したように、SS共振方式と比べて、他の中継コイル70bから70fにおける電流減少率が第1コイルと第2コイルにおいて、共に小さく、無駄な電力消費が小さくなっていることが分かる。このため、タイヤ62内およびホイール64内での発熱が小さくなり、これらの部位の温度上昇を低減することができる。タイヤ62やホイール64は、一般に閉鎖された空間であり、冷却手段を持たないので、発熱を低減できる効果は大きい。
【0039】
図10は、参考例としてのSS共振方式と本実施形態のPS共振方式での給電時の電力の位相変化を示すグラフである。図において実線は、給電電圧、つまりメインバッテリ210の充電電圧が100ボルトの場合を、破線は給電電圧が400ボルトの場合を示す。図は、一つの中継コイル70が送電コイル40に正対している状態を角度θ=0として、位相±60度、つまり車輪60の1/3回転(±60度)分の給電電力の変化を示す。図示するように、給電に用いる電圧が変化した場合、SS共振方式では、ピーク時の供給電力が頭打ちになるのに対して、PS共振方式の場合は、
図7に示した理論的な電流量に対応する電力が供給されていることが分かる。
【0040】
更に、
図11は、SS共振方式とPS共振方式において給電される平均電力を比較して示すグラフである。図において、一次側フィルタとは、
図6に示したフィルタ36であり、2次側フィルタとは、同図におけるフィルタ241である。この例では、両フィルタ36,241として、イミタンス変換器をフィルタとして用いた。イミタンス変換器とは,2端子対回路であって1つの端子対から見たインピーダンスが,他の端子対に接続された回路又は素子のアドミタンスに比例するものを言う。こうしたイミタンス変換器を用いると、若干の損失は発生するものの、ノイズフィルタとして機能し、コイル間の変換特性が改善される。
【0041】
図11に示すように、本実施形態PS共振方式によって道路側から車両200へに給電される平均電力は、メインバッテリ210が100ボルトの場合でも400ボルトの場合でも、参考例のSS共振方式の場合より、小さかった。他方、
図9に示したように、送電コイル40に正対していない中継コイル70(以下、非対向コイルという)の第1コイル71に流れる電流は、参考例のSS共振方式の場合に流れる電流より小さい。このため、
図11に示したように、中継コイル70を介した給電の平均電力量が、SS方式と同等か下回るとしても、送電コイル40から受電コイル240への電力の授受に直接関与しない非対向コイルに流れる電流による損失を小さく抑えることができ、電力伝送システム500全体としての効率を適切なものにし得る。特に、非対向コイルに流れる電流量を低減することで、非対向コイルでの損失によって生じる発熱を低減できるので、密閉空間であり冷却が容易ではない車輪60内の空間の温度上昇を低減できる効果は大きい。
【0042】
こうしたPS共振方式の場合の回路構成とその等価回路を
図12に示す。等価回路では、送電コイル40と第1コイル71との結合は、両コイルの相互インダクタンスMp2t1と、両コイルのそれぞれの自己インダクタンスとに分けている。同様に、中継コイル70の第2コイル72と受電コイル240との結合も、両コイルの相互インダクタンスMw1sと、両コイルのそれぞれの自己インダクタンスとに分けている。また、等価回路から電圧方程式(1)から(4)を立て、これを解いて、各電流Ip,It,Iw,Isを求め、ここから共振条件を求めたものを
図13に示した。なお、等価回路では、送電コイル40と受電コイル240に対向している中継コイル70以外のコイル(非対向コイルという)の影響は考慮していない。
【0043】
(A4)第1実施形態の効果:
以上説明した第1実施形態によれば、中継コイル70を用いた給電において、中継共振回路90の構成を、共振コンデンサに並列特性を持たせたPS共振方式としているので、車輪60に配置された複数の中継コイル70のうち、送電コイル40と受電コイル240に対向して給電に関わっている中継コイル70(例えば中継コイル70a)以外の中継コイル70bから70fに流れる電流を抑制できるので、中継コイル70を介した給電の平均電力量を大きくでき、電力伝送システム500の効率を高めることができる。
【0044】
また、この第1実施形態では、送電コイル40と受電コイル240との間の中継コイル70が配置され、第1コイル71は、ホイール64の外側であってタイヤ62の内部に配置されているので、第1コイル71と、道路105に埋設された送電コイル40との間隔G1を狭くできる。また、第2コイル72と受電コイル240とは、いずれもホイール64の内側に配置されているので、第2コイル72と受電コイル240との間隔G2を狭くできる。従って、第1実施形態によれば、中継コイル70を第1コイル71と第2コイル72に分離したことにより、送電コイル40と第1コイル71との間隔、第2コイル72と受電コイル240の間隔をいずれも狭くでき、しかも第1コイル71と第2コイル72とは、中継共振回路90を介して直接接続しているので、この間の損失は極めて小さく、結果的に送電コイル40から受電コイル240へのトータルの電力の伝送効率を高めることができる。
【0045】
更に、第1実施形態によれば、車輪60の中心軸61から見たとき、第1コイル71を流れる誘導電流の向きと、第2コイル72を流れる誘導電流の向きが逆であるので、漏洩電磁界を抑制できる。なお、車輪60の中心軸61から見たとき、第1コイル71を流れる誘導電流の向きと、第2コイル72を流れる誘導電流の向きを逆向きにしなくてもよい。なお、第1コイル71と第2コイル72との配置によっては、両コイルにより生じる磁界の方向は、同一であってもよいいし、反対であってもよい。
【0046】
B.第2から第4実施形態:
次に、第2から第4実施形態について説明する。第2から第4実施形態との電力伝送システム500およびこれに用いられる給電装置250は、第1実施形態と、中継共振回路90の構成を除いて、他は同一である。第2から第4実施形態の中継コイル70の中継共振回路90Aから90Cの構成を、
図14に示す。図示するように、第2実施形態の中継共振回路90Aは、第1コイル71および第2コイル72に対して、並列接続された共振コンデンサCtw1を備える。第2実施形態では、直列共振コンデンサは備えていない。この中継共振回路90Aは、並列特性を備える。これをP共振方式と呼ぶ。共振条件は、
図14の第2実施形態の欄の下段に示した。
【0047】
同様に、第3実施形態の中継共振回路90Bは、図示するように、第1コイル71に対して直列共振コンデンサCt1を直列に接続し、第2コイル72に対して並列共振コンデンサCw1を並列に接続した構成を備える。従って、この中継共振回路90Bは、並列特性を備える。これをSP共振方式と呼ぶ。共振条件は、
図14の第3実施形態の欄の下段に示した。
【0048】
第4実施形態の中継共振回路90Cは、図示するように、第1コイル71に対して第1直列共振コンデンサCt1を直列に接続し、第2コイル72に対して第2直列共振コンデンサCw1を直列に接続し、更にこれらに並列に接続された並列共振コンデンサCtw1を備える。従って、この中継共振回路90Cは、並列特性を備える。これをS+P+S(以下、略してSPS)共振方式と呼ぶ。共振条件は、
図14の第4実施形態の欄の下段に示した。
【0049】
これら第2から第4実施形態における第1コイル71と第2コイル72との電流低減率を
図15に、また各実施形態における給電電力の位相変化を
図16に、更に各実施形態において給電される平均電力を
図17に、それぞれ示した。
図15に示したように、第2から第4実施形態のいずれでも、非対向コイルに流れる電流は、参考例のSS共振方式の場合に流れる電流より小さい。このため、
図17に示したように、第2から第4実施形態において、中継コイル70を介した給電の平均電力量が、SS方式と同等か下回るとしても、送電コイル40から受電コイル240への電力の授受に直接関与しない非対向コイルに流れる電流による損失を小さく抑えることができ、電力伝送システム500全体としての効率を適切なものにし得る。また、非対向コイルに流れる電流量を低減することで、非対向コイルでの損失によって生じる発熱を低減できるので、密閉空間であり冷却が容易ではない車輪60内の空間の温度上昇を低減できる効果は、第1実施形態同様に大きい。
【0050】
第3実施形態のSP共振方式の場合の回路構成とその等価回路を
図18に、第4実施形態のSPS共振方式の場合の回路構成とその等価回路を
図20に、それぞれ示す。等価回路の考え方は、第1実施形態(
図12)と同様である。また、等価回路から電圧方程式を立て、これを解いて、各電流Ip,It,Iw,Isを求め、ここから共振条件を求める計算式を
図19、
図21に示した。なお、これらの等価回路でも、非対向コイルの影響は考慮していない。
【0051】
C.第5から第7実施形態:
次に、第5から第7実施形態について説明する。第5から第7実施形態との電力伝送システム500およびこれに用いられる給電装置250は、第1,第3,第4実施形態と、中継共振回路90,90B,90Cの構成を除いて、他は同一である。第5から第7実施形態の中継コイル70の中継共振回路90Dから90Fの構成を、
図22に示す。図示するように、第5から7実施形態の中継共振回路90Dから90Fは、第1,第3,第4実施形態における直列共振コンデンサCw1、Ct1を2分割して第1コイル71および第2コイル72から見て両側に配置している点を除いて、他は第1,第3,第4実施形態と同様である。従って、これらの中継共振回路90Dから90Fは、第1,第3,第4実施形態と同様に、並列特性を備える。各実施形態の共振条件は、
図22の下段に示した。なお、直列共振コンデンサの容量の分割は、共振条件を満たす容量を等分または略等分に分割すればよい。例えば、Ct1=2・Ct1′とすればよい。
【0052】
これら第5から第7実施形態の中継共振回路90Dから90Fは、いずれも第1,第3,第4実施形態のそれぞれと同様の作用効果を奏する上、耐ノイズ性を高めることができるという効果を奏する。これらの中継共振回路90Dから90Fを用いた電力伝送システム500の作用効果も、第1,第3,第4実施形態のそれぞれと同様である。
【0053】
D.第8実施形態:
上記各実施形態では、中継コイル70を、車両200の車輪60に、中心軸61の同心円円周上に複数設け、地上側の送電回路30から電力供給を受ける構成としたが、複数の中継コイル70を直線状に配置した場合も、非対向コイルに流れる電流を抑制でき、他の実施形態と同様の作用効果を奏する。
図23は、移動体側に設けられた受電回路230の受電コイル240と地上側の送電コイル40との間に、中継コイル70Xから70Zが配置された例を示す。中継コイル70は3つ限らないことは第1実施形態等と同様である。
【0054】
この第8実施形態では、中継コイル70Xから70Zに合わせて、地上側の送電回路30や送電コイル40を用意したが、
図24の変形例に示すように、複数の中継コイル70X等に対して、一つの送電回路30および送電コイル40を用意する構成としてもよい。こうした直線状に中継コイル70X等を用意して給電する構成としては、例えば、鋼板を帯状につなぎ、前後の車輪を取り巻いた無限軌道車の直線部分に適用したり、ロボットのリニアモータに適用するといった場合がある。
【0055】
E.他の構成例:
その他の実施形態について以下説明する。
(1)その他の実施形態の一つは、給電装置として形態である。この給電装置は、移動体に搭載された受電コイルと、前記移動体の移動に伴って、前記移動体が移動する面に沿って配置された送電コイルと前記受電コイルとの間の電力の供給を順次中継する複数の中継コイルと、前記受電コイルに接続され、前記移動体で用いられる電力を受け取る受電回路と、を備え、前記複数の中継コイルの各々は、前記移動体の移動位置に応じて、前記送電コイルと磁界結合する第1コイルと、前記第1コイルが前記送電コイルと磁界結合するときに前記受電コイルと磁界結合する第2コイルと、前記第1コイルと前記第2コイルとを接続する接続回路とを備え、前記接続回路は、前記第1コイルおよび前記第2コイルの少なくとも一方の共振周波数の設定に関与する共振コンデンサ(Ct1,Cw1)を備え、前記共振コンデンサが並列特性を有する。こうすれば、送電コイルと第1コイルとの間隔、第2コイルと受電コイルの間隔をいずれも狭くできるので、電力の伝送効率を高めることができる。更に、共振周波数の設定に関与する共振コンデンサが並列特性を有することから、複数の中継コイルのうち、送電コイルに正対しない他の中継コイルに流れる電流を抑制して、給電装置の給電効率を高めることができる。
【0056】
第1コイルにおける共振周波数は、第1コイルを含む回路のインピーダンスが十分に小さければ、第1コイルが送電コイルに対向する際における第1コイルのインダクタンス値と共振コンデンサの容量とにより定まる。そこで、第1コイルにおける共振周波数が、送電コイルから送電される電力の周波数と一致または近傍となるとように、共振コンデンサの容量を設定してよい。同様に、第2コイルにおける共振周波数は、第2コイルを含む回路のインピーダンスが十分に小さければ、第2コイルが受電コイルに対向する際における第2コイルのインダクタンス値と共振コンデンサの容量とにより定まる。そこで、第2コイルにおける共振周波数が、受電コイルが受電する際の設計周波数と一致または近傍となるとように、共振コンデンサの容量を設定してよい。
【0057】
この給電装置は、移動体であれば、車輪を有する車両や平行移動するロボットなど、種々のものに適用可能である。車輪は単輪から多輪まで幾つでもよい。無限軌道車などにも適用可能である。また、移動体が移動する面は、路面はもとより、床面など、屋内外を問わない。平面であることが望ましいが、曲面や僅かな段差のある面であっても差し支えない。移動体が走行する面は、別途、磁力や静電気力などで移動体を面に吸着して、面に接した状態に維持できれば、水平面である必要はなく、壁面や天井面などであってもよい。また、中継コイルは、車輪などの周方向に配置するもの以外に、複数の中継コイルを直線状に配列した構成も可能である。例えば、ホバークラフトのように、移動体を浮上させ、移動体底面に複数の中継コイルを配置し、移動体が走行する面に設けた送電コイルに正対する中継コイルを介して電力の供給をうけるような構成とすることも可能である。中継コイルの数は、複数個であれば幾つでもよく、上記実施形態で示した6個以外に2から5個、あるいは7個以上であってもよい。
【0058】
複数の中継コイルは、各々が、送電コイルと磁界結合する第1コイルと受電コイルと磁界結合する第2コイルとを接続した構成を備えればよく、更に他のコイルを備えてもよい。第1コイル、第2コイルの磁界結合には、磁性体を介在させてもよく、させなくてもよい。
【0059】
(2)こうした構成において、前記共振コンデンサは、前記第1コイルおよび前記第2コイルに共通に並列接続されたものとしてよい。つまり、第1コイルと第2コイルとで閉回路を形成し、両者に並列に共振コンデンサを接続した構成としてよい。こうすれば、簡単な構成で、共振コンデンサに並列特性を持たせることができ、複数の中継コイルのうち、送電コイルに正対しない他の中継コイルに流れる電流の抑制と共振条件の設定のバランスを図ることができる。共振コンデンサは一つでもよいが、ノイズ対策の観点から、第1コイル側と第2コイル側とにそれぞれ設けてもよい。
【0060】
(3)こうした構成において、前記共振コンデンサは、前記第1コイルに並列接続された並列共振コンデンサと、前記第2コイルに直列接続された直列共振コンデンサと、から構成されたものとしてよい。こうすれば、第1コイルと送電コイルとの共振に並列特性を持たせ、第2コイルと受電コイルとの共振は直列特性を持たせることができ、複数の中継コイルのうち、送電コイルに正対しない他の中継コイルに流れる電流の抑制と共振条件の設定のバランスを図ることができる。直列共振コンデンサは一つでもよいが、ノイズ対策の観点から、第2コイルの両端にそれぞれ設けてもよい。
【0061】
(4)こうした(3)の構成において、前記共振コンデンサの容量は、前記送電コイルと共振用の第1コンデンサとを通る回路に印加される送電電圧、前記送電コイルのインダクタンス、前記第1コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第1電圧方程式、前記第1コイルと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第1コイルのインダクタンス、前記並列共振コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第2電圧方程式、前記第2コイルと前記並列共振コンデンサと前記直列共振コンデンサとを含む回路における前記第2コイルのインダクタンス、前記並列共振コンデンサの容量、前記直列共振コンデンサの容量、前記第2コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第3電圧方程式、前記受電コイルと共振用の第2コンデンサとを通る回路における前記受電コイルのインダクタンス、前記第2コンデンサの容量、前記受電コイルと前記第2コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第4電圧方程式、からなる連立方程式の解により定めたものとしてよい。こうすれば、理論的な解析により共振コンデンサの容量を適切な値に設定することができる。
【0062】
(5)こうした構成において、前記共振コンデンサは、前記第1コイルに直列接続された直列共振コンデンサと、前記第2コイルに並列接続された並列共振コンデンサと、から構成されたものとしてよい。こうすれば、第1コイルと送電コイルとの共振に直列特性を持たせ、第2コイルと受電コイルとの共振は並列特性を持たせることができ、複数の中継コイルのうち、送電コイルに正対しない他の中継コイルに流れる電流の抑制と共振条件の設定のバランスを図ることができる。直列共振コンデンサは一つでもよいが、ノイズ対策の観点から、第1コイルの両端にそれぞれ設けてもよい。
【0063】
(6)こうした(5)の構成において、前記共振コンデンサの容量は、前記送電コイルと共振用の第1コンデンサとを通る回路に印加される送電電圧、前記送電コイルのインダクタンス、前記第1コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第1電圧方程式、前記第1コイルと前記直列共振コンデンサと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第1コイルのインダクタンス、前記直列共振コンデンサの容量、前記並列共振コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第2電圧方程式、前記第2コイルと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第2コイルのインダクタンス、前記並列共振コンデンサの容量、前記第2コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第3電圧方程式、前記受電コイルと共振用の第2コンデンサとを通る回路における前記受電コイルのインダクタンス、前記第2コンデンサの容量、前記受電コイルと前記第2コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第4電圧方程式、からなる連立方程式の解により定めたものとしてよい。こうすれば、理論的な解析により共振コンデンサの容量を適切な値に設定することができる。
【0064】
(7)こうした構成において、前記共振コンデンサは、前記第1コイルおよび前記第2コイルのそれぞれに直列接続された第1,第2直列共振コンデンサと、前記第1コイルおよび前記第1直列共振コンデンサと前記第2コイルおよび前記第2直列共振コンデンサとに対して、並列接続された並列共振コンデンサと、から構成されたものとしてよい。こうすれば、第1コイルと送電コイルとの共振や第2コイルと受電コイルとの共振に、直列特性と並列特性とを持たせることができ、複数の中継コイルのうち、送電コイルに正対しない他の中継コイルに流れる電流の抑制と共振条件の設定のバランスを図ることができる。第1,第2直列共振コンデンサは一つずつでもよいが、ノイズ対策の観点から、第1コイルと第2コイルとの少なくとも一方の両端に、それぞれ設けてもよい。
【0065】
(8)こうした(7)構成において、前記共振コンデンサの容量は、前記送電コイルと共振用の第1コンデンサとを通る回路に印加される送電電圧、前記送電コイルのインダクタンス、前記第1コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第1電圧方程式、前記第1コイルと前記第1直列共振コンデンサと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第1コイルのインダクタンス、前記第1直列共振コンデンサの容量、前記並列共振コンデンサの容量、前記送電コイルと前記第1コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第2電圧方程式、前記第2コイルと前記第2直列共振コンデンサと前記並列共振コンデンサとを含む回路における前記第2コイルのインダクタンス、前記第2直列共振コンデンサの容量、前記並列共振コンデンサの容量、前記第2コイルと前記受電コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第3電圧方程式、前記受電コイルと共振用の第2コンデンサとを通る回路における前記受電コイルのインダクタンス、前記第2コンデンサの容量、前記受電コイルと前記第2コイルとの相互インダクタンスおよび回路インピーダンスを考量した第4電圧方程式、からなる連立方程式の解により定めたものとしてよい。こうすれば、理論的な解析により共振コンデンサの容量を適切な値に設定することができる。
【0066】
(9)こうした(1)から(8)のいずれかの構成において、前記移動体は車輪を備え、前記複数の中継コイルは、前記車輪の周方向に沿って設けられ、前記移動体の移動に伴う前記車輪の回転位置に応じて、前記送電コイルから前記受電コイルへの前記電力の中継を順次行なうものとしてよい。こうすれば、車輪を介して、送電コイルから移動体の受電コイに効率よく、かつ連続的に電力を供給できる。車輪は、移動体に一つ以上、いくつ設けてもよいが、そのうちの全てに複数の中継コイルを設けてよく、一部の車輪に設けてもよい。複数の中継コイルをいずれかの車輪に設ける場合、車輪の周方向に沿って、各中継コイルを所定距離、あるいは所定の中心角だけ離間して配置してもよく、一部を重なったり、接するように配置してもよい。また、第1コイルと前記第2コイルとが重なりの位置に配置されており、第1コイルと第2コイルとを、車輪の回転軸から見て重なる位置に配置し、第1コイルを流れる電流の向きと、第2コイルを流れる電流の向きとが、逆向きになるようにしてもよい。第1コイルは、タイヤに用いられる金属ベルト利用し、金属ベルトに形成されたコイルパターンとして構成してもよい。
【0067】
(10)こうした(9)の構成において、前記複数の中継コイルの前記第1コイルのそれぞれは、前記車輪のタイヤ内に設けられ、前記複数の中継コイルの前記第2コイルのそれぞれは、前記車輪のホイール内に設けられるものとしてよい。こうすれば、第1コイルと送電コイルとの間隔を狭くでき、給電効率を高めることが容易となる。また、第2コイルは車軸に近づくことになるので、受電コイルと磁界結合する位置が移動体の走行する面から離すことができる。つまり、第2コイルをより移動体側にできることから、受電コイルの配置が容易となる。ここで、第1コイルと第2コイルとを接続する導線は、ホイールに設けた貫通孔などを通して配線すればよい。貫通孔と導線との間は、絶縁された状態で気密に封止すればよい。こうした封止は、絶縁性の接着剤やシーリング剤で、貫通孔と導線との隙間を埋めれば容易に実現できる。なお、第2コイルを車輪の外が設け、受電コイルと磁界結合させてもよく、この場合には、第1コイルと接続する導線は、タイヤを貫通する配置としてよい。タイヤを貫通する導線は、ホイールの場合と同様に、タイヤの気密を保持するようにすればよい。こうした導線、リッツ線またはバスバーで形成してもよい。
【0068】
(11)こうした(10)の構成において、前記第2コイルの共振周波数を設定する前記共振コンデンサは前記ホイール内に設けてよい。こうすれば、接続回路の発熱を低減できることから、排熱しにくいホイール内の温度上昇を抑制できる。第2コイルを含めて、発熱部位は、熱伝導率の高い材料、例えば銅やアルミニウムなどで作られた熱伝導板に搭載したり、ヒートパイプ等に接続したりして、ホイールに伝熱して、排熱するようにしてもよい。
【0069】
(12)こうした(10)の構成において、前記第1コイルの共振周波数を設定する前記共振コンデンサは前記タイヤ内に設けてよい。こうすれば、接続回路の発熱を低減できることから、排熱しにくいタイヤ内の温度上昇を抑制できる。
【0070】
(13)こうした(9)の構成において、前記複数の中継コイルは、前記車輪の回転軸に対して、前記車輪の円周を等角度に分割する位置に設けられたものとしてよい。こうすれば、移動体が定速走行していれば、受電コイルに生じる起電力のピークの間隔が一定になり、給電される電力の周波数が安定するので、受電回路を効率よく動作させることができる。なお、複数の中継コイルは、中心角を等角でない配置としてもよい。
【0071】
(14)こうした(1)から(8)の構成において、前記送電コイルおよび前記受電コイルの少なくとも一方が、前記中継コイルとの相互インダクタンスを変化させる磁性体を備え、前記共振コンデンサは、前記中継コイルのインダクタンスの極大値を用いて設定された容量を備えるものとしてよい。こうすれば、送電コイルおよび受電コイルの少なくとも一方が、中継コイルとの相互インダクタンスを変化させる磁性体を備えていても、給電装置を適切に動作させることができる。
【0072】
(15)本開示の他の態様として、給電システムが提供される。この給電システムは、上述したいずれかの給電装置と、前記移動体が走行する走行面に設けられた複数の送電コイルと、前記複数の送電コイルのうちの少なくとも一つの送電コイルであって、前記移動体が位置する送電コイルに、前記共振周波数に対応した周波数の交流電流を流す送電装置とを備える。こうすれば、給電システム全体の給電効率を高め、少ない電力で、移動体に必要な電力をまかなうことができる。移動体が、電気自動車など、電力で走行するものであれば、所定距離を走行するのに必要な送電電力低減できる。
【0073】
(16)本開示の他の態様として、給電システムの設計方法が提供される。この給電システムの設計方法は、給電装置を備える給電システムの設計方法であって、前記給電装置として、上述した(2)記載の給電装置、上述した(3)記載の給電装置、上述した(5)記載の給電装置、上述した(7)記載の給電装置、のいずれを用いるかを、前記移動体への給電中に、前記給電装置における前記複数の中継コイルのそれぞれに流れる電流によって定まる前記給電システム全体の電力効率に従って決定する。こうすれば、給電システムに適した接続回路の構成を選択して、給電システムを設計できる。
【0074】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
10…電源(外部電源)、30…送電回路、40…送電コイル、50…制御装置、60 車輪、61…中心軸、62…タイヤ、64…ホイール、70、70a~70f…中継コイル、71、71a~71f…第1コイル、72、72aから72f…第2コイル、100…送電システム、105…道路、200…車両、220…制御装置、230…受電回路、240…受電コイル、250…給電装置、280…モータジェネレータ、500…電力伝送システム