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特開2023-170185類似領域検出装置及び類似領域検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170185
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】類似領域検出装置及び類似領域検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20231124BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081737
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森 翔平
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096GA19
5L096HA08
5L096JA03
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】一定の計算量で目標画像に類似する入力画像内の類似領域を検出する類似領域検出装置を提供すること。
【解決手段】類似領域検出装置1は、目標画像及び入力画像を受け付け、目標画像から特徴量を抽出し、入力画像を予め設定されたサイズで分割した各分割領域から特徴量を抽出する特徴量抽出部12と、目標画像から抽出された特徴量と入力画像の各分割領域から抽出された特徴量とに基づいて、分割領域からいずれを選択するかを変数として数理モデルを生成する数理モデル化部13と、生成された数理モデルの値が予め定めた閾値の条件を満たすように数理モデルを最小化する変数の解を取得するモデル変数計算部14と、モデル変数計算部14で取得された変数の解で特定される類似領域を決定する領域検出部15と、を備え、領域検出部15により決定された類似領域を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標画像及び入力画像を受け付ける入力部と、
前記目標画像から特徴量を抽出するとともに、前記入力画像を予め設定されたサイズで分割した分割領域のそれぞれから、特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量抽出部により、前記目標画像から抽出された特徴量と、前記入力画像の各分割領域から抽出された特徴量と、に基づいて、前記分割領域からいずれを選択するかを変数として数理モデルを生成する数理モデル化部と、
前記数理モデル化部により生成された数理モデルの値が、予め定めた閾値の条件を満たすように前記数理モデルを最小化する前記変数の解を取得するモデル変数計算部と、
前記モデル変数計算部で取得された変数の解で特定される類似領域を決定する領域検出部と、を備え、
前記領域検出部により決定された類似領域を出力する、類似領域検出装置。
【請求項2】
前記数理モデル化部は、
前記領域検出部により決定される類似領域の検出目標とするサイズを予め設定する、請求項1に記載の類似領域検出装置。
【請求項3】
前記数理モデルは、ヒストグラム類似度モデルと、領域サイズモデルと、領域塊状度モデルと、を備え、
前記ヒストグラム類似度モデルは最小化されることで、前記分割領域の特徴量のヒストグラムが前記目標画像から抽出された特徴量のヒストグラムに近づくように作用し、
前記領域サイズモデルは最小化されることで、前記分割領域から選択される分割領域の個数を予め定めた条件を満たすように作用し、
前記領域塊状度モデルは最小化されることで、前記分割領域のうち、隣接する分割領域を選択する度合いが高くなるように作用する、請求項1又は請求項2に記載の類似領域検出装置。
【請求項4】
前記モデル変数計算部は、
前記ヒストグラム類似度モデルと、前記領域サイズモデルと、前記領域塊状度モデルと、をそれぞれ異なるバランス係数によりそれぞれ重みづけをしたうえで加算して算出される全体関数を予め定めた閾値の条件を満たすように最小化する前記変数の解を取得する、請求項3に記載の類似領域検出装置。
【請求項5】
前記モデル変数計算部は、
前記全体関数を予め定めた閾値の条件を満たすように最小化することで取得した前記変数の解を用いて、前記ヒストグラム類似度モデルと、前記領域サイズモデルと、前記領域塊状度モデルの値を計算し、それぞれのモデルの値が、それぞれ予め定めた閾値以下になるように、前記バランス係数を調整する、請求項4に記載の類似領域検出装置。
【請求項6】
前記モデル変数計算部は、
前記全体関数を予め定めた閾値の条件を満たすように最小化することで取得した前記変数の解を用いて、前記ヒストグラム類似度モデルと、前記領域サイズモデルと、前記領域塊状度モデルの値を計算し、いずれかのモデルの値が前記閾値以下でない場合、前記モデルに対応するバランス係数を増加させる、請求項5に記載の類似領域検出装置。
【請求項7】
前記領域検出部は、
前記モデル変数計算部で取得された変数の解で特定される分割領域を用いて後処理をすることで、前記類似領域を決定する、請求項1又は請求項2に記載の類似領域検出装置。
【請求項8】
前記後処理は、
前記分割領域から生成される4連結成分のうち最大の4連結成分を類似領域とする処理、前記分割領域から生成される8連結成分のうち最大の8連結成分を類似領域とする処理、二値画像に対して数回の膨張処理を行った後に、前記膨張処理と同じ回数の収縮処理を行うクロージング処理、又は二値画像に対して数回の収縮処理を行った後に、前記収縮処理と同じ回数の膨張処理を行うオープニング処理、の何れかの処理である、請求項7に記載の類似領域検出装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の類似領域検出装置としてコンピュータを機能させるための類似領域検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の類似領域を検出する類似領域検出装置及び類似領域検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像の類似領域を検出する方法として、色特徴量や局所特徴量等の特徴量に基づく方法が広く知られている。色特徴量に基づく方法の一例として、非特許文献1の方法がある。この方法は、入力画像と色ヒストグラムの類似度が高い領域を検出するものである。物体の形状の微小な違いの検出には向かないが、物体の形状変化に頑健な検出が可能である。
また、局所特徴量に基づく方法の一例として、非特許文献2の方法がある。この方法は、局所特徴量からVisual Word(辞書)を作成し、Visual Wordの出現頻度のヒストグラムの類似度が高い領域を検出するものである。物体の回転、スケール等の形状変化や明度変動等に対して頑健な検出が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M. J. Swain、D. H. Ballard、 “Color indexing” 、 International Journal of Computer Vision、 Vol.7、No.1、1991、pp.11-32
【非特許文献2】G. Csurka、C. Dance、L. Fan、J. Willamowski、C. Bray、 “Visual categorization with bags of keypoints” 、ECCV Workshop on Statistical Learning in Computer Vision、2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、目標画像となるテンプレートと、入力画像中のテンプレートに類似度が最大となる入力画像内の位置を検出する場合、従来技術における探索は、探索領域(探索窓)を順次ずらして、探索領域(探索窓)の特徴量が目標画像(テンプレート)の特徴量に類似するかどうかを逐次的に比較する方法が知られている。
この探索方法に基づいて類似画像を検出する場合、入力画像において検出目標とする画像が目標画像(テンプレート)と同じ大きさで、同じ向きであれば、探索窓の位置を順番にずらしていくことで、目標画像(テンプレート)に類似度が最大となる入力画像内の位置を検出することができる。
しかしながら、入力画像において検出目標とする画像の大きさや向きが目標画像(テンプレート)に比較して未知の場合(例えば、2倍の大きさで斜めに傾いている等)、探索領域(探索窓)を様々な大きさ(例えば、目標画像(テンプレート)の1/2倍、等倍、3/2倍、2倍...)と、様々な方向(例えば、目標画像(テンプレート)を0度、30度、60度...に傾ける方向)を考慮して、目標画像(テンプレート)に類似する画像を探索する必要があった。このため、従来技術における探索は、探索領域(探索窓)の位置に係るパラメータに加え、探索領域(探索窓)の大きさや方向等形状に係るパラメータを変化させて膨大な照合処理を行う必要があるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、探索領域の位置や形状に依らず一定の計算量で、画像の特徴量のヒストグラムが類似する領域を検出することで、目標画像に類似する、入力画像内の類似領域を検出することを可能とする類似領域検出装置及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る類似領域検出装置は、目標画像及び入力画像を受け付ける入力部と、前記目標画像から特徴量を抽出するとともに、前記入力画像を予め設定されたサイズで分割した分割領域のそれぞれから、特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部により、前記目標画像から抽出された特徴量と、前記入力画像の各分割領域から抽出された特徴量と、に基づいて、前記分割領域からいずれを選択するかを変数として数理モデルを生成する数理モデル化部と、前記数理モデル化部により生成された数理モデルの値が、予め定めた閾値の条件を満たすように前記数理モデルを最小化する前記変数の解を取得するモデル変数計算部と、前記モデル変数計算部で取得された変数の解で特定される類似領域を決定する領域検出部と、を備え、前記領域検出部により決定された類似領域を出力する。
【0007】
前記数理モデル化部は、前記領域検出部により決定される類似領域の検出目標とするサイズを予め設定するようにしてもよい。
【0008】
前記数理モデルは、ヒストグラム類似度モデルと、領域サイズモデルと、領域塊状度モデルと、を備え、前記ヒストグラム類似度モデルは最小化されることで、前記分割領域の特徴量のヒストグラムが前記目標画像から抽出された特徴量のヒストグラムに近づくように作用し、前記領域サイズモデルは最小化されることで、前記分割領域から選択される分割領域の個数を予め定めた条件を満たすように作用し、前記領域塊状度モデルは最小化されることで、前記分割領域のうち、隣接する分割領域を選択する度合いが高くなるように作用するようにしてもよい。
【0009】
前記モデル変数計算部は、前記ヒストグラム類似度モデルと、前記領域サイズモデルと、前記領域塊状度モデルと、をそれぞれ異なるバランス係数によりそれぞれ重みづけをしたうえで加算して算出される全体関数を予め定めた閾値の条件を満たすように最小化する前記変数の解を取得するようにしてもよい。
【0010】
前記モデル変数計算部は、前記全体関数を予め定めた閾値の条件を満たすように最小化することで取得した前記変数の解を用いて、前記ヒストグラム類似度モデルと、前記領域サイズモデルと、前記領域塊状度モデルの値を計算し、それぞれのモデルの値が、それぞれ予め定めた閾値以下になるように、前記バランス係数を調整するようにしてもよい。
【0011】
前記領域検出部は、前記モデル変数計算部で取得された変数の解で特定される分割領域を用いて後処理をすることで、前記類似領域を決定するようにしてもよい。
【0012】
前記後処理は、前記分割領域から生成される4連結成分のうち最大の4連結成分を類似領域とする処理、前記分割領域から生成される8連結成分のうち最大の8連結成分を類似領域とする処理、二値画像に対して数回の膨張処理を行った後に、前記膨張処理と同じ回数の収縮処理を行うクロージング処理、又は二値画像に対して数回の収縮処理を行った後に、前記収縮処理と同じ回数の膨張処理を行うオープニング処理、の何れかの処理であるようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る類似領域検出プログラムは、前記類似領域検出装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、探索領域の位置や形状によらず一定の計算量で、画像の特徴量のヒストグラムが類似する領域を検出することで、目標画像に類似する、入力画像内の類似領域を検出することを可能とする類似領域検出装置及びそのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における類似領域検出システムの構成を示す図である。
図2】実施形態における類似領域検出装置の備える数理モデル化部の構成例を示す機能ブロック図である。
図3】実施形態における類似領域検出装置の備える数理モデル化部で用いる分割領域と隣接領域を模式的に表わした図である。
図4A】実施形態における数理モデル化部を構成する領域塊状度モデル定式化部の処理例を示す図である。
図4B】実施形態における数理モデル化部を構成する領域塊状度モデル定式化部の処理例を示す図である。
図4C】実施形態における数理モデル化部を構成する領域塊状度モデル定式化部の処理例を示す図である。
図4D】実施形態における数理モデル化部を構成する領域塊状度モデル定式化部の処理例を示す図である。
図5】実施形態における類似領域検出装置の動作を示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態における類似領域検出システム100の構成を示す図である。
類似領域検出システム100は、類似領域検出装置1と、計算機2と、を備える。
【0017】
類似領域検出装置1は、入力装置50から、目標画像と、入力画像と、を受け付け、類似検出対象となる画像が含まれる目標画像内の目標領域に類似する類似領域を入力画像から検出し、検出した類似領域を出力装置60へ出力するものである。このため、類似領域検出装置1は、予め入力画像を分割した分割領域の集合から、いずれの分割領域を選択するかを変数として、目標領域に類似する分割領域の部分集合を選択する場合に、最小の値をとる、組合せ最適化問題の数理モデルを定式化する。
【0018】
ここで、組合せ最適化問題の数理モデルについて簡単に説明する。本実施形態では、数理モデルHを以下の(式1)に示すQUBO(Quadratic Unconstraned Binary Optimaization):制約なし二次形式二値変数最適化)表現で構築する。

H=ΣΣ(Q(i,j)q) = qQq
(式1)
ここで、q、qは、ベクトルqのi番目及びj番目の要素であり、0又は1の値をとる二値変数である。
また、Σ及びΣは、ベクトルqの全ての要素の総和をとる演算子である。
ベクトルの右上の記号はベクトルの転置を表す。
Q(i,j)は、パラメータ行列Qのi行目j列目の要素であり、二値変数の積qの係数となる。
なお、数理モデルHは、QUBO表現以外にも、それと等価なイジングモデル表現を用いてもよい。
類似領域検出装置1は、予め定めた分割領域の候補からいずれを選択するかを変数として、組合せ最適化問題の数理モデルHを、例えば式1に示すQUBO表現に定式化する。
【0019】
計算機2は、類似領域検出装置1により生成される数理モデルの解を計算により求めるものである。具体的には、計算機2は、式(1)で示すqの組を計算する。なお、計算機2は、類似領域検出装置1により生成される数理モデルの解を計算するものであれば、どのような計算機でもよい。例えば、計算機2は、QUBOやイジングモデルを求解するイジングマシン等の計算機である。また、計算機2は、独立した構成とする必要はなく、類似領域検出装置1の内部に備える構成としてもよい。
【0020】
図1に、本実施形態における類似領域検出システム100を構成する類似領域検出装置1の機能構成を示す。
類似領域検出装置1は、制御部10及び記憶部20を備えた情報処理装置であり、サーバ又はパーソナルコンピュータ等汎用の装置の他、専用のハードウェアとして実装されてもよい。制御部10は、記憶部20に格納された類似領域検出プログラム等を読み出し実行することにより、後述する入力部11、特徴量抽出部12、数理モデル化部13、モデル変数計算部14、領域検出部15、及び出力部16として機能する。
類似領域検出装置1は、これらの機能部により、探索領域の位置や形状に依らず一定の計算量で、画像の特徴量のヒストグラムが類似する領域を検出することができる。
次に、類似領域検出装置1の各機能について説明する。
【0021】
入力部11は、類似領域検出装置1と通信可能に接続される入力装置50から、目標画像と入力画像とを受け付ける。ここで、目標画像は、類似検出対象とする画像となる目標領域を含む画像である。また、入力画像は、目標領域の画像に類似する領域を検出する対象となる画像である。入力部11は、受け付けた目標画像(目標領域の画像)と入力画像とを特徴量抽出部12に出力する。
なお、目標画像及び入力画像は、それぞれ任意の形状としてもよいが、本実施形態では、説明を簡単にするために、目標画像は任意の形状の物体を目標領域として設定し、入力画像は一般的な矩形の画像を例示して説明するが、目標画像と入力画像は、これに限られない。目標画像及び入力画像は、ともに任意の形状でもよい。
【0022】
特徴量抽出部12は、入力部11で受け付けた目標画像(目標領域の画像)、及び入力画像(入力画像領域)を予め設定されたサイズで分割した分割領域のそれぞれから、特徴量を抽出する。本実施形態では、特徴量として画素値等から抽出される色特徴量を例示するが、特に特徴量の種類は限定されない。例えば、輝度勾配から抽出される局所特徴量(つまり形状の特徴量)、また、HOG(Histogram of Oriented Gradient)やSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)を用いて算出される局所特徴量等を用いるようにしてもよい。
特徴量抽出部12は、目標画像に対して類似検出したい物体(画像)が含まれる目標領域の画像特徴量を抽出する。また、特徴量抽出部12は、入力画像に対しては予め設定されたサイズで入力画像領域を分割した分割領域毎に、特徴量を抽出する。
特徴量抽出部12は、抽出した、目標領域の特徴量、及び入力画像の分割領域毎の特徴量を数理モデル化部13に出力する。
【0023】
数理モデル化部13は、ヒストグラム類似度モデル定式化部131、領域サイズモデル定式化部132、及び領域塊状度モデル定式化部133を備える。
【0024】
ヒストグラム類似度モデル定式化部131は、入力画像内の選択する分割領域の特徴量のヒストグラムを、目標画像内の目標領域の特徴量のヒストグラムにできる限り近づけるための評価関数を生成するものである。具体的には、ヒストグラム類似度モデル定式化部131により生成される評価関数の取る値が最小化されることで、分割領域の選択に際して、分割領域の特徴量のヒストグラムが、目標領域の特徴量のヒストグラムに近づくように作用する。
【0025】
領域サイズモデル定式化部132は、入力画像のうち選択する分割領域の個数を決定するための評価関数を生成するものである。具体的には、選択される分割領域の個数をできる限り最大化する、又は検出目標の分割領域の個数にするように作用する。そうすることで、入力画像のうち選択する分割領域の総和となるサイズをできるだけ最大化するか、又は検出目標の分割領域の個数にする。
【0026】
領域塊状度モデル定式化部133は、入力画像のうち隣接する分割領域を選択する度合いを表す塊状度を決定するための評価関数を生成するものである。具体的には、隣接領域のいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないとき、報酬項となり、隣接領域のいずれかのみが選択されるときには罰金項となるように定式化される。すなわち、領域塊状度モデル定式化部133により生成される評価関数のとる値が最小化されることで、分割領域の選択に際して、隣接する領域が多く選択されるように作用する。
数理モデル化部13について説明するうえで、共通に用いる記号等の定義について説明する。
【0027】
目標画像のうち類似検出したい物体(画像)が含まれる目標領域をVと表記する。
本実施形態では、前述したように入力画像は、横Wピクセル、縦Hピクセルの矩形の画像を例示する。具体的には、入力画像を、予め設定したサイズ毎に分割した分割領域の頂点集合をVとし、各分割領域をv(x,y)(x=1,2,・・・、X、y=1,2,・・・、Y)とする。
そして、分割領域v(x,y)が、選択されるときに値1をとり、選択されないときに値0を取る二値関数をv(x,y)で表す。
すなわち、入力画像を分割することで分割領域が生成され、
集合V={v(x,y);(x=1,2,・・・,X,y=1,2,・・・,Y)}
が作成される。
X,Yは、それぞれ分割領域の横の個数と縦の個数である。例えば、W=3000,H=2000,X=30,Y=20とすると、分割領域のサイズは 100ピクセル×100ピクセルとなり、分割領域の個数は、30×20=600個となる。
また例えば、W=3000,H=2000,X=3000,Y=2000とすると、分割領域は画素に一致し、分割領域のサイズは1ピクセル×1ピクセルとなり、分割領域の個数は3000×2000=6000000個となる。
分割領域のサイズ(例えば、縦のピクセル数と横のピクセル数)は、目標領域V*のサイズとは独立して設定可能である。
分割領域のサイズは、類似領域の検出を大雑把にしたり、より細かくしたりする等、検出の精度に関係する。例えば、分割領域のサイズを目標領域V*のサイズよりも大きくすると、類似領域の検出が大雑把になるため、分割領域のサイズは、目標領域V*のサイズ以下とすることが好ましい。
高精度な検出が必要な場合には、より細かく分割領域を区切ることが好ましい。ただし、細かく分割領域を区切るほど、変数の数が多くなり、計算時間が増大する。このため、具体的なピクセル数については画像や目的によって設定するものとする。
【0028】
各分割領域v(x,y)に対して、類似領域として選択される場合に値1をとり、選択されない場合に値0を取る二値関数をv(x,y)が定義される。これにより、後述するように、類似領域の検出は、分割領域v(x,y)のうちいずれの分割領域を選択するかについては、二値変数であるv(x,y)についてそれぞれ二次式で表現されるヒストグラム類似度モデルH、領域サイズモデルH、及び領域塊状度モデルHをバランス係数λ、λ、λにより加算した全体関数HALLを最小化する二値変数v(x,y)の解を算出することに帰着させることができる。

ALL = λ+λ+λ
(式2)
【0029】
次に、ヒストグラム類似度モデル定式化部131について説明する。ヒストグラム類似度モデル定式化部131は、入力画像内の選択する分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムF(x,y)を、目標画像内の目標領域Vの特徴量のヒストグラムhにできる限り近づけるための評価関数を生成するものである。ここでは、特徴量として、画素値等から抽出される色特徴量を例示する。
具体的には、例えばRGBそれぞれを4階調とした64色の色特徴量を用いる場合、各画素の特徴量は、各画素(w,h)の色番号に対応する要素を1、それ以外を0とする64次元のone-hotベクトルf(w、h)で表される。なお、特徴量としては、前述したように、例えば、輝度勾配から抽出される局所特徴量(つまり形状の特徴量)等、任意の特徴量を適用してもよい。いずれの特徴量であっても、特徴量の種類を問わず、特徴量の個数の次元のベクトルとして表すことができる。
【0030】
目標領域Vの特徴量のヒストグラムhは、出現頻度の総和で正規化した相対度数として、以下の式3([数1])により定義することができる。
明細書中の数式は、式n(n:自然数)により表し、引用している。ただし、イメージ化した式には墨付きカッコによる数を付加する必要がある。このため、式を示す番号と、墨付きカッコ内の番号と、は異なる。
【数1】
(式3)
ここで、|V|は目標領域Vに含まれる画素(w,h)数を表わす演算子、Σは、Vに含まれる画素(w,h)についてf(w、h)の総和をとる演算子である。
【0031】
入力画像内の各分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムF(x,y)についても出現頻度の総和で正規化した相対度数として、以下の式4により定義することができる。
【数2】
(式4)
ここで、|v(x,y)|は、分割領域v(x,y)に含まれる画素(w,h)数を表す演算子、Σは、分割領域v(x,y)に含まれる画素(w,h)について、f(w、h)の総和をとる演算子である。
【0032】
次に、各分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムF(x,y)を要素とするXY次元のベクトルFを

F={F(1,1) F(1,2)・・・F(X,Y-1) F(X,Y)}
(式5)
と定義するとともに、
各分割領域の二値関数値v(x,y)を要素とするXY次元のベクトルv
={v(1,1) v(1,1)・・・v(X,Y-1) v(X,Y)}
(式6)
と定義する。
そうすると、入力画像内の選択する分割領域v(x,y)の目標個数|Vtarget|を予め設定する場合(以下、「分割領域の目標個数が設定される場合」ともいう)、入力画像内の選択する分割領域v(x,y)における特徴量のヒストグラムhは、選択される分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムF(x,y)の総和を目標個数(|Vtarget|)で正規化した相対度数として、以下の式7により定義することができる。
h=(1/|Vtarget|)Fv
(式7)
ここで、「分割領域の目標個数が設定される場合」とは、例えば、次のようなケースを意味する。例えば、目標画像に含まれるニンジンを類似検出対象とする場合、入力画像内にニンジンの含まれるピクセル数を予め把握することができれば、目標画像に類似する類似領域の目標サイズを予め設定することができる。このような場合、目標サイズから目標個数|Vtarget|を算出することができる。
【0033】
「分割領域の目標個数が設定される場合」、ヒストグラム類似度モデルH11は、以下の式8で定義することができる。
【数3】
(式8)
ここで、|| || は、L2ノルム|| ||の2乗、ベクトルの右上の記号Tはベクトルの転置を表す。
式8に、「分割領域の目標個数が設定される場合」の選択される分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムh(式7)を代入すると、ヒストグラム類似度モデルH11は、次の式9で表される。
【数4】
(式9)
【0034】
他方、「分割領域の目標個数を設定しない場合」、選択される分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムhを、選択される分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムF(x,y)の総和を、選択される分割領域v(x,y)の総数で正規化した相対度数として、以下の式10により定義することができる。
【数5】
(式10)
ここで、Σは、入力画像の全ての分割領域v(x,y)の総和をとる演算子である。すなわち、Σの値は選択される分割領域v(x,y)の総数である。
【0035】
「分割領域の目標個数が設定されない場合」、ヒストグラム類似度モデルH12は、以下の式11で定義することができる。
【数6】
(式11)
式11に、「分割領域の目標個数が設定されない場合」の選択される分割領域v(x,y)の特徴量のヒストグラムh(式10)を代入すると、
ヒストグラム類似度モデルH12は、式12で表される。
【数7】
(式12)
ここで、1XYは、全ての要素が1であるXY次元ベクトル、1(XY)×(XY)は、全ての要素が1である(XY)×(XY)次元行列である。また、式12で、「〇の中にXが記載された記号」は、テンソル積を示す。
すなわち、1XYと(h*TF)とのテンソル積は、XY次元の全ての行が(h*TF)である行列であり、(h*TF)1(XY)×(XY)は、(XY)×(XY)次元の全ての要素が、(h*TF)である行列となる。
以上、ヒストグラム類似度モデル定式化部131は、「分割領域の目標個数が設定される場合」と、「分割領域の目標個数が設定されない場合」と、のそれぞれのケースに応じて、式9で示すヒストグラム類似度モデルH11、及び式12で示すヒストグラム類似度モデルH12を出力する。その後、ヒストグラム類似度モデル定式化部131は、ヒストグラム類似度モデルH11又はヒストグラム類似度モデルH12をモデル変数計算部14に出力する。
以上により、前述したように、ヒストグラム類似度モデル定式化部131により生成される評価関数の取る値が最小化されることで、分割領域の選択に際して、分割領域の特徴量のヒストグラムが、目標領域の特徴量のヒストグラムに近づくように作用する。
【0036】
領域サイズモデル定式化部132は、前述したように、入力画像のうち選択する分割領域の個数を決定するための評価関数を生成するものである。具体的には、選択される分割領域の個数をできる限り最大化する、又は検出目標の分割領域の個数にするように作用する。そうすることで、入力画像のうち選択する分割領域の総和となるサイズをできるだけ最大化する。
【0037】
領域サイズモデル定式化部132は、ヒストグラム類似度モデル定式化部131と同様に、「分割領域の目標個数が設定される場合」と、「分割領域の目標個数が設定されない場合」と、のそれぞれのケースに応じて領域サイズモデルH21及び領域サイズモデルH22を出力する。その後、領域サイズモデル定式化部132は、領域サイズモデルH21、及び領域サイズモデルH22をモデル変数計算部14に出力する。
まず、「分割領域の目標個数が設定される場合」について説明する。
【0038】
「分割領域の目標個数が設定される場合」、領域サイズモデルH21は、式13で表される。
【数8】
(式13)
式13に示す領域サイズモデルH21は、入力画像における分割領域の目標個数(目標サイズ)と、入力画像内の選択する分割領域の個数との差の二乗である。したがって、最小化されることで、選択する分割領域をできる限り分割領域の目標個数(目標サイズ)に近づける働きをする。
【0039】
他方、「分割領域の目標個数が設定されない場合」、領域サイズモデルH22は、式14で表される。
【数9】
(式14)
式14に示す領域サイズモデルH22は、入力画像のうち選択する分割領域の個数の総和に負の符号をつけたものである。したがって、最小化されることで、選択する分割領域の個数(目標サイズ)をできる限り最大化する働きをする。
領域サイズモデル定式化部132は、「分割領域の目標個数が設定される場合」、式(13)に示す領域サイズモデルH21を、また「分割領域の目標個数が設定されない場合」、式(14)に示す領域サイズモデルH22をモデル変数計算部14に出力する。
【0040】
最後に、領域塊状度モデル定式化部133について説明する。領域塊状度モデル定式化部133は、前述したように、入力画像のうち隣接する分割領域を選択する度合いを表す塊状度を決定するための評価関数を生成するものである。具体的には、隣接領域がいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないとき、報酬項となり、隣接領域がいずれかのみ選択されるときには罰金項となるように定式化される。すなわち、領域塊状度モデル定式化部133により生成される評価関数のとる値が最小化されることで、分割領域の選択に際して、隣接する領域が多く選択されるように作用する。
隣接する分割領域を選択する度合いを表す塊状度を説明するうえで、隣接する分割領域について説明する。
隣接する分割領域となる2つの隣接領域を結ぶ辺集合をEとし、各隣接領域の関係となる分割領域のペアを(v(x,y),v(x’、y’))、ただし、v(x,y)≠v(x’、y’)とする。2つの隣接領域と隣接領域の共有する辺(「隣接領域を結ぶ辺」ともいう)とは、1対1に対応する。
ここで、隣接領域の集合を、隣接領域を結ぶ辺集合Eと同一視する。
なお、画像の最外縁の分割領域は画像の最外縁と隣接すると見做すことで、当該分割領域の外側の辺を便宜上、辺集合Eに含むと定義する。この場合、v(x‘、y’)は、画像の外側にあると仮定する。なお、v(x’、y’)は画像に含まれないが、v(x‘、y’)の値は、隣接領域v(x,y)の関数v(x,y)の値と同一の値とする。
【0041】
図3は、隣接する2つの分割領域に対して、2つの隣接領域を結ぶ辺を対応づけた図である。図3を参照すると、20個の分割領域v(x,y)(x=1,2,3,4,5、y=1,2,3,4)がある。そして、最外縁の分割領域が画像の最外縁と隣接すると見做すと、画像の最外縁は便宜上v(0、y)、v(6,y)(y=1,2,3,4)、v(x,0)、v(x、5)(x=1,2,3,4,5)により表される。2つの隣接領域を結ぶ(矢印で示す)辺が、yの値を固定したとき、6(=5+1)個あり、xの値を固定したとき、5(=4+1)個あることがわかる。すなわち、隣接領域の個数は、(5+1)・4+5・(4+1)=49個あることがわかる。
このように、隣接領域の個数は、X・(Y+1)+(X+1)・Y個であることがわかる。
【0042】
領域塊状度モデル定式化部133は、領域塊状度モデルHを以下の式15により定義することができる。
【数10】
(式15)
ここで、Σは、入力画像の全ての隣接する分割領域の総和をとる演算子である。
なお、v(0、y)の値は、隣接領域v(1,y)の関数v(1,y)の値と同一の値とする。同様に、v(X+1、y)の値は、隣接領域v(X,y)の関数v(X,y)の値と同一の値とする。v(x、0)及びv#(x、Y+1)についても同様である。
そうすると、隣接領域がいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないとき、
[-(2v(x,y)-1)・(2v(x’,y’)-1)]=-1となり、最小化される場合には報酬項となるように作用する。
他方、隣接領域がいずれかのみ選択されるとき、
[-(2v(x,y)-1)・(2v(x’,y’)-1)]=1となり、最小化される場合には罰金項となるように作用する。よって、この式に示す領域塊状度モデル Hは、最小化されることで、できる限り隣接する分割領域を選択する働きをする。隣接する領域が多く選択される場合は、高い塊状度となりHの値は、より小さくなる。隣接しない領域を多く選択される場合は、低い塊状度となりHの値は、より大きくなる。
【0043】
図4Aから図4Bを参照して、領域塊状度モデル定式化部133の処理例を説明する。ここでは、X=5,Y=4の場合を例示している。ここで、選択する分割領域はハッチングで示している。また、白矢印に対応する隣接する分割領域はいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないケースを、黒矢印に対応する隣接する分割領域はいずれかのみ選択されるケースを示す。
図4A図4B図4C、及び図4Dのように分割領域を選択する場合、Hの値は、それぞれ以下のように算出できる。
【0044】
図4Aを参照すると、隣接領域がいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないケース(白矢印)が39個、隣接領域がいずれかのみ選択されるケース(黒矢印)が10個であることから、
=-1・39+1・10=-29
となる。
図4Bを参照すると、隣接領域がいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないケース(白矢印)が37個、隣接領域がいずれかのみ選択されるケース(黒矢印)が12個であることから、
=-1・37+1・12=-25
となる。
図4Cを参照すると、隣接領域がいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないケース(白矢印)が29個、隣接領域がいずれかのみ選択されるケース(黒矢印)が20個であることから、
=-1・29+1・20=-9
となる。
図4Dを参照すると、隣接領域がいずれも選択されるか、あるいはいずれも選択されないケース(白矢印)が25個、隣接領域がいずれかのみ選択されるケース(黒矢印)が24個であることから、
=-1・25+1・24=-1
となる。
の値は、図4Aの場合が最小値をとり、図4Dの場合が、最大の値を取ることがわかる。このように、領域塊状度モデルHは、入力画像のうち隣接する分割領域を選択する度合いを表す塊状度を示し、領域塊状度モデルHはとる値が最小化されることで、分割領域の選択に際して、隣接する領域が多く選択されるように作用することがわかる。
以上、数理モデル化部13について説明した。
【0045】
数理モデル化部13により生成されるヒストグラム類似度モデルH11、H12、領域サイズモデルH21、H22、及び領域塊状度モデルHは、いずれも二値変数であるv(x,y)について二次式で表現されることから、式変形によって、前述した式(1)で表されるQUBO表現に変換することができる。
なお、二値変数について次数が二次以下であれば、QUBO表現に変換することが可能であることは当業者にとって自明である。すなわち、0又は1をとる二値変数qでは、qとqの二乗とは等価(0も1も二乗しても不変)であるため、一次の項と二次の項とは等価変換することができる。また、定数項は、二値変数をどのように選んでも評価関数には影響を与えないことから無視することができる。このように、二値変数v(x,y)について、ヒストグラム類似度モデルH11、H12、領域サイズモデルH21、H22、及び領域塊状度モデルHは、いずれも次数が二次以下であることから、QUBO表現に変換することができる。
次に、モデル変数計算部14について説明する。
【0046】
モデル変数計算部14は、数理モデル化部13で生成された数理モデルで、最適な分割領域となる変数の解を、計算機2により計算するものである。モデル変数計算部14は、数理モデル化部13で生成された数理モデルを加算した全体関数を、計算機2に出力し、計算結果となる変数の解を取得する。
ここでは、モデル変数計算部14は、「分割領域の目標個数が設定される場合」、ヒストグラム類似度モデルH11と、領域サイズモデルH21と、領域塊状度モデルHと、をバランス係数λ、λ、λを用いて加算した以下の式2-1の全体関数HALLを最小化する二値変数であるv(x,y)の解の計算を、計算機2に指示する。
ALL = λ11+λ21+λ
(式16)
同様に、モデル変数計算部14は、「分割領域の目標個数が設定されない場合」、ヒストグラム類似度モデルH12と、領域サイズモデルH22と、領域塊状度モデルHと、をバランス係数λ、λ、λを用いて加算した以下の式2-2の全体関数HALLを最小化する二値変数であるv(x,y)の解の計算を、計算機2に指示する。
ALL = λ12+λ22+λ
(式17)
【0047】
ここで、バランス係数λ、λ、λは、3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHのそれぞれに掛かる比重であって、その値が大きいほどその値に係るモデルに比重が置かれる。バランス係数λ、λ、λに予め初期値を設定し、計算機に計算を実行させて、変数v(x,y)の解を取得する。例えば、目標領域のヒストグラムにどの程度類似した領域を検出するか、あるいは塊状度がどの程度高い領域を検出するか、等に応じて初期値を設定する。
取得した変数の解を用いて、3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHを計算し、それぞれ3つのモデルの値(計算結果)が予めそれぞれのモデルに定めた閾値以下になるように、対応するバランス係数を調整する。そして、バランス係数λ、λ、λを調整する間、計算機に全体関数HALLの再計算(求解)を行う処理を繰り返す。例えば、3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)又はHのいずれかの値が予め定めた閾値以下でない場合、そのモデルに対応するバランス係数λ、λ、λのいずれかを増加させることで、このモデルに課される比重を重くする。これによって、このモデルの値を減少させることができる。
このようにバランス係数λ、λ、λを調整することで、全体関数HALLの最適化を図ることができる。
なお、この全体関数HALLの再計算には、繰り返し回数の上限を設けてもよい。これによって、設定した繰り返し回数の上限の値によっては、3つのモデルの何れかの値が閾値以下とならない場合でも、計算を終了させるようにしてもよい。
その後、モデル変数計算部14は、変数v(x,y)の解を領域検出部15に出力する。
【0048】
領域検出部15は、モデル変数計算部14で計算された変数v(x,y)の解に基づいて、類似領域として検出する領域を決定するものである。変数v(x,y)の解を直接用いる場合、対応する分割領域v(x,y)を類似領域としてもよい。
また、変数v(x,y)の解に対応する分割領域v(x,y)を用いて後処理をしたものを類似領域としてもよい。例えば、解に対応する分割領域の集合により複数の4連結成分が作成される場合、それらの4連結成分のうち、最大の4連結成分を類似領域とすることが考えられる。なお、4連結成分に換えて8連結成分を適用してもよい。また、解に対応する分割領域に対して、二値画像処理における膨張や収縮を用いるクロージングやオープニングの処理を施したものを類似領域とすることも考えられる。
類似領域のデータ形式としてはv(x,y)を用いたデータとしてもよいし、また画素情報に修正したデータや、枠線等により類似領域を示す画像データとしてもよい。
このように、類似領域を決定することで、例えば、ユーザの目的に応じた出力形態により類似領域を表示することができる。
その後、領域検出部15は、類似領域を、出力部16に出力する。
【0049】
出力部16は、領域検出部15で決定した類似領域を出力装置60に出力する。なお、出力部16は、領域検出部15で決定した類似領域を出力装置60に限らず、通信可能に接続された装置(又はシステム)(図示せず)に対して出力するようにしてもよい。
以上、類似領域検出システム100の備える機能について説明した。次に、類似領域検出装置1の動作について説明する。
【0050】
図5は、類似領域検出装置1の動作を示すフローチャートを示す図である。
図5を参照すると、ステップS01において、入力部11は、入力装置50を介して、目標画像と入力画像と、を受け付ける。
【0051】
ステップS02において、特徴量抽出部12は、ステップS01で受け付けた目標画像と入力画像と、からそれぞれ特徴量を抽出する。具体的には、特徴量抽出部12は、目標画像から類似検出したい物体(画像)が含まれる目標領域の画像特徴量を抽出する。また、特徴量抽出部12は、入力画像から、予め設定されたサイズで入力画像領域を分割した分割領域v(x,y)毎に特徴量を抽出する。
【0052】
ステップS03において、数理モデル化部13は、ステップS02で抽出された特徴量に基づいて、類似領域として検出する分割領域を決定する数理モデルとして、ヒストグラム類似度モデルHと、領域サイズモデルHと、領域塊状度モデルHと、を生成する。具体的には、分割領域の目標個数が設定される場合、数理モデル化部13は、ヒストグラム類似度モデルH11と、領域サイズモデルH21と、領域塊状度モデルHと、を生成する。分割領域の目標個数を設定されない場合、数理モデル化部13は、ヒストグラム類似度モデルH12と、領域サイズモデルH22と、領域塊状度モデルHと、を生成する。
【0053】
ステップS04において、モデル変数計算部14は、ステップS03で生成された3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHから、全体関数HALLを算出する際のバランス係数λ、λ、λの初期値を設定する。
【0054】
ステップS05において、モデル変数計算部14は、ステップS03で生成された3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHと、ステップS04で設定された、あるいは、後記するステップS08で調整されたバランス係数λ、λ、λと、を用いて、全体関数HALLを最小化する二値変数であるv(x,y)の解を、計算機2を用いて計算する。
【0055】
ステップS06において、モデル変数計算部14は、全体関数HALLを最小化する変数を計算する計算回数が予め定めた閾値以下か否かを判定する。ここで、計算回数が予め定めた閾値以下の場合(Yesの場合)、ステップS07に動作を進める。計算回数が予め定めた閾値を超えた場合(Noの場合)、ステップS09に動作を進める。
【0056】
ステップS07において、モデル変数計算部14は、ステップS05で求められた変数の解を用いて、3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHを計算し、それぞれの数理モデルの値が、予めモデル毎に定めた閾値以下か否かを判定する。3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHのそれぞれの閾値は、所望の性能に応じて自由に設定できる。ここで、3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHのそれぞれの値が、予めモデル毎に定めた閾値以下の場合(Yesの場合)、ステップS09に動作を進める。一方、3つのモデルH(H11又はH12),H(H21又はH22)及びHのいずれかの値が予めモデル毎に定めた閾値以下でない場合(Noの場合)、ステップS08に動作を進める。
【0057】
ステップS08において、モデル変数計算部14は、数理モデルの値が予め定めた閾値以下である数理モデルについて、対応するバランス係数に予め定めた正の実数を加算することでバランス係数を増加させるか、あるいは、数理モデルの値が予め定めた閾値以下でない数理モデルについて、バランス係数に予め定めた負の実数を加算することで、バランス係数を減少させる。例えば、ヒストグラム類似度モデルH(H11又はH12)の値のみが閾値以下でない場合、バランス係数λを増加させるか、あるいはバランス係数λ、λを減少させる。その後、ステップS05に動作を戻す。
【0058】
ステップS09において、領域検出部15は、ステップS05で求められた、二値変数v(x,y)の解に基づいて、類似領域を決定する。
【0059】
ステップS10において、出力部16は、領域検出部15で決定した類似領域を出力装置60へ出力する。
以上、類似領域検出装置1の動作について説明した。
【0060】
本実施形態によれば、類似領域検出装置1において、特徴量抽出部12は目標画像V及び入力画像を受け付け、目標画像Vから特徴量hを抽出するとともに、入力画像を予め設定されたサイズで分割した分割領域v(x,y)のそれぞれから、特徴量を抽出し、数理モデル化部13は、目標画像から抽出された特徴量と、入力画像の各分割領域から抽出された特徴量と、に基づいて、分割領域からいずれを選択するかを変数として数理モデルを生成し、モデル変数計算部14は、生成された数理モデルHの値が、予め定めた閾値の条件を満たすように数理モデルHを最小化する変数v(x,y)の解を取得することで、領域検出部15は変数の解で特定される類似領域を決定する。
これにより、類似領域検出装置1は、探索領域の位置や形状によらず一定の計算量で、画像の特徴量のヒストグラムが類似する領域を検出することで、目標画像に類似する、入力画像内の類似領域を検出することができる。
【0061】
数理モデル化部13は、領域検出部15により決定される類似領域の検出目標とするサイズを予め設定するようにしてもよい。それにより、入力画像における検出目標にサイズが既知であれば、計算量を減らすことができる。
【0062】
数理モデルHは、ヒストグラム類似度モデルHと、領域サイズモデルHと、領域塊状度モデルHと、を備え、ヒストグラム類似度モデルHは最小化されることで、分割領域の特徴量のヒストグラムhが目標画像から抽出された特徴量hのヒストグラムに近づくように作用し、領域サイズモデルHは最小化されることで、分割領域から選択される分割領域の個数を予め定めた条件を満たすように作用し、領域塊状度モデルHは最小化されることで、分割領域のうち、隣接する分割領域を選択する度合いが高くなるように作用するため、適切な類似領域の検出が可能である。
【0063】
モデル変数計算部14は、ヒストグラム類似度モデルHと、領域サイズモデルHと、領域塊状度モデルHと、をそれぞれ異なるバランス係数λ、λ、λによりそれぞれ重みづけをしたうえで加算して算出される全体関数HALLを予め定めた閾値の条件を満たすように最小化する変数v(x,y)の解を取得するようにしてもよい。
このように、バランス係数λ、λ、λに基づいて作成される全体関数HALLの最適化を図ることができる。
【0064】
モデル変数計算部は、さらに前記全体関数を予め定めた閾値の条件を満たすように最小化することで取得した前記変数の解を用いて、前記ヒストグラム類似度モデルと、前記領域サイズモデルと、前記領域塊状度モデルの値を計算し、それぞれのモデルの値が、それぞれ予め定めた閾値以下になるように、前記バランス係数を調整するようにしてもよい。
このようにバランス係数λ1、λ2、λ3を調整することで、全体関数HALLの最適化を図ることができる。
【0065】
前記領域検出部は、前記モデル変数計算部で取得された変数の解で特定される分割領域を用いて後処理をすることで、前記類似領域を決定するようにしてもよい。
具体的には、前記後処理は、前記分割領域から生成される4連結成分のうち最大の4連結成分を類似領域とする処理、前記分割領域から生成される8連結成分のうち最大の8連結成分を類似領域とする処理、二値画像に対して数回の膨張処理を行った後に、前記膨張処理と同じ回数の収縮処理を行うクロージング処理、又は二値画像に対して数回の収縮処理を行った後に、前記収縮処理と同じ回数の膨張処理を行うオープニング処理、の何れかの処理であるようにしてもよい。
このように類似領域を決定することで、例えば、ユーザの目的に応じた出力形態により類似領域を表示することができる。
【0066】
また、本発明に係る類似領域検出プログラムは、前記類似領域検出装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0068】
本実施形態において、モデル変数計算部14は、ヒストグラム類似度モデルHを画素値から抽出される色特徴量を用いて、算出するようにしたが、前述したように、特徴量として、例えば輝度勾配から抽出される局所特徴量(つまり形状の特徴量)、HOG(Histogram of Oriented Gradient)やSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)を用いて算出される局所特徴量等を用いるようにしてもよい。
すなわち、ヒストグラム類似度モデルHとして、異なる特徴量に基づいて、2種類以上のヒストグラム類似度モデルH1-1、H1-2等を生成することができる。
そうすると、2種類以上のヒストグラム類似度モデルH1-1、H1-2等と、領域サイズモデルHと、領域塊状度モデルHと、をバランス係数λ1-1、λ1-2、λ、λを用いて加算した式18に示す全体関数HALLを最小化する変数v(x,y)を求めるようにしてもよい。
ALL = λ1-11-1+λ1-21-2+λ+λ
(式18)
そうすることで、2種類以上の特徴量によるヒストグラム類似度モデルH1-1、H1-2を用いる全体関数により算出される類似領域は、2種類以上の特徴量を考慮した類似領域を検出することが可能である。
【0069】
本実施形態では、主に類似領域検出装置1の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、類似領域を出力装置60に出力するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0070】
さらに、類似領域検出装置1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0071】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0072】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
100 類似領域検出システム
1 類似領域検出装置
10 制御部
11 入力部
12 特徴量抽出部
13 数理モデル化部
131 ヒストグラム類似度モデル定式化部
132 領域サイズモデル定式化部
133 領域塊状度モデル定式化部
14 モデル変数計算部
15 領域検出部
16 出力部
20 記憶部
50 入力装置
60 出力装置
2 計算機(イジングマシン)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5