(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170198
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】焼結体及び焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 5/10 20060101AFI20231124BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20231124BHJP
B22F 3/035 20060101ALI20231124BHJP
B30B 11/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B22F5/10
B22F3/02 A
B22F3/035 D
B30B11/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081758
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏明
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA24
4K018AB04
4K018BA13
4K018CA11
4K018CA13
4K018CA17
4K018HA03
4K018KA44
(57)【要約】
【課題】凹部の底に貫通孔が形成される焼結体であって、製造工程を簡略化可能な焼結体を提供する。
【解決手段】焼結体は、金属粉末によって形成された焼結体であって、厚み方向の一方の面に凹部が形成されており、前記凹部の底面には前記厚み方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔の周方向の少なくとも一部分において、孔面積が前記厚み方向の一方側から他方側へ向けて漸減するように孔壁面が前記厚み方向に対して傾斜している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末によって形成された焼結体であって、
厚み方向の一方の面に凹部が形成されており、
前記凹部の底面には前記厚み方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の周方向の少なくとも一部分において、孔面積が前記厚み方向の一方側から他方側へ向けて漸減するように孔壁面が前記厚み方向に対して傾斜している、焼結体。
【請求項2】
前記貫通孔の周方向の少なくとも一部分において、前記孔壁面が前記厚み方向に対して5度~20度の範囲内で傾斜している、請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
前記貫通孔の周方向の一部の孔壁面と、前記凹部の周方向の一部の凹壁面とが前記厚み方向で連続している、請求項1に記載の焼結体。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法であって、
金属粉末を金型に充填し、加圧して成形体を形成する工程と、
前記成形体を焼結する工程と、
を有し、
前記焼結体の貫通孔となる前記成形体の貫通孔を成形する前記金型の突起部は、該突起部の周方向の少なくとも一部分において、前記突起部の断面積が根元側から先端側へ向けて漸減するように前記突起部の側壁面が前記金型の開閉方向に対して傾斜している、焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼結体及び焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結体を製造する方法として、原料の金属粉末を金型に充填して作製した成形体を熱処理し、金属粉末を焼結させる方法(粉末冶金)が知られている。粉末冶金は同じ形状の製品を大量に製造するのに適しており、種々な形状及び材質の焼結体を製造する方法として採用されている。例えば、特許文献1には、オーステナイト系ステンレス鋼からなる合金粉末を含む合金粉末組成物を成形した成形体を熱処理して焼結部品を製造することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2にはケイ素元素及び鉄元素を含むFe合金粉末を、所望の形状に圧粉成形し、得られた成形体を焼結することで焼結軟磁性部材を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-37735号公報
【特許文献2】特開2005-060830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、凹部の底に貫通孔が形成された成形体を多段プレス機で成形する場合、貫通孔からパンチを引き抜く際にパンチと貫通孔との間に生じる摩擦によってパンチに過剰な負荷が掛かる。さらに、摩擦によって成形体の貫通孔の周辺部分に破損が生じやすい、という課題がある。このため、多段プレス機で凹部の底に貫通孔がない成形体を成形し、焼結した後で、焼結体の凹部の底に貫通孔を加工している。このように凹部の底に貫通孔が形成された焼結体を製造するためには、凹部を形成した成形体を焼結した後で、凹部の底に貫通孔を後加工する必要があり、焼結体の製造工程が煩雑化している。
【0006】
本開示は上記事情に鑑み、凹部の底に貫通孔が形成される焼結体であって、製造工程を簡略化可能な焼結体及びこの焼結体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>
金属粉末によって形成された焼結体であって、
厚み方向の一方の面に凹部が形成されており、
前記凹部の底面には前記厚み方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の周方向の少なくとも一部分において、孔面積が前記厚み方向の一方側から他方側へ向けて漸減するように孔壁面が前記厚み方向に対して傾斜している、焼結体。
<2>
前記貫通孔の周方向の少なくとも一部分において、前記孔壁面が前記厚み方向に対して5度~20度の範囲内で傾斜している、<1>に記載の焼結体。
<3>
前記貫通孔の周方向の一部の孔壁面と、前記凹部の周方向の一部の凹壁面とが前記厚み方向で連続している、<1>又は<2>に記載の焼結体。
<4>
<1>~<3>のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法であって、
金属粉末を金型に充填し、加圧して成形体を形成する工程と、
前記成形体を焼結する工程と、
を有し、
前記焼結体の貫通孔となる前記成形体の貫通孔を成形する前記金型の突起部は、該突起部の周方向の少なくとも一部分において、前記突起部の断面積が根元側から先端側へ向けて漸減するように前記突起部の側壁面が前記金型の開閉方向に対して傾斜している、焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、凹部の底に貫通孔が形成される焼結体であって、製造工程を簡略化可能な焼結体及びこの焼結体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態の焼結体の正面図である。
【
図2】本開示の一実施形態の焼結体の背面図である。
【
図4】本開示の一実施形態の焼結体の製造方法において、金型に金属粉末を充填した状態を示す、金型の断面図(
図3に対応する断面図)である。
【
図5】
図4で示す金型内の金属粉末を上パンチ及び下パンチで加圧している状態を示す、金型の断面図(
図4に対応する断面図)である。
【
図6】
図5で示す金型で加圧成形された成形体を脱型する動作を示す、金型の断面図(
図5に対応する断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
まず、本実施形態の焼結体について説明する。次に、本実施形態の焼結体を製造するための製造装置及び製造方法について説明する。
【0014】
<焼結体>
本実施形態の焼結体は、金属粉末によって形成された焼結体であって、厚み方向の一方の面に凹部が形成されており、前記凹部の底面には前記厚み方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔の周方向の少なくとも一部分において、孔面積が前記厚み方向の一方側から他方側へ向けて漸減するように孔壁面が前記厚み方向に対して傾斜している。以下、焼結体の具体例を、図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0015】
本実施形態の焼結体20は、自動車部品として用いられる。具体的には、
図1~
図3に示さるように、電磁クラッチのヨークとして用いられる。なお、本開示の焼結体の用途は自動車部品に限定されるものではない。
【0016】
焼結体20は、金属粉末によって形成されている。この金属粉末としては、例えば、ケイ素元素及び鉄元素を含む粉末が挙げられる。さらに、ケイ素元素及び鉄元素を含む粉末としては、特に限定されず、例えば、ケイ素元素及び鉄元素を含むFe合金粉末を含んでいてもよく、ケイ素元素を含むSi粉末と、鉄元素を少なくとも含むFe粉末との混合粉末を含んでいてもよい。
【0017】
焼結体20は、
図1~
図3に示されるように、本体部22と、凹部24と、貫通孔26と、を備えている。
【0018】
図1に示されるように、本体部22は、円盤状に形成されている。この本体部22の径方向の中央部には、本体部22の厚み方向に貫通する貫通孔23が形成されている。なお、以下では、本体部22の径方向を矢印Rで示し、本体部22の厚み方向を矢印Tで示す。また、本体部22の厚み方向の一方の面22Aには、凹部24が形成されている。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、凹部24は、本体部22の一方の面22Aに形成されている。この凹部24は、本体部22の厚み方向の他方側へ向けて凹む凹み部分であり、本体部22の貫通孔23の孔中心Cを中心にして、一方の面22Aに円環状に形成されている。この凹部24には、例えば、電磁クラッチのコイルが格納される。また、本実施形態の凹部24は、
図3に示されるように、対向する凹壁面24A、24Bが本体部22の厚み方向に沿ってそれぞれ延びている。なお、本実施形態の凹壁面24Aは、凹部24の径方向内側に位置する壁面を指し、凹壁面24Bは、凹部24の径方向外側に位置する壁面を指している。また、凹部24の底面24Cは、本体部22の厚み方向に対して直交する方向(径方向と同じ方向)に沿って延びている。この凹部24の底面24Cには、凹部24の底部を本体部22の厚み方向に貫通する貫通孔26が形成されている。
【0020】
図3に示されるように、貫通孔26は、凹部24の底面24Cから本体部22の厚み方向の他方の面22Bに向けて延びて、凹部24の底部を貫通している。なお、ここでいう凹部24の底部とは、本体部22において、凹部24の底面24Cから本体部22の他方の面22Bまでの部分を指している。
【0021】
貫通孔26は、
図1及び
図2に示されるように、本体部22の厚み方向から見て、長円形状とされている。この貫通孔26は、
図1に示されるように、貫通孔26の周方向の少なくとも一部分において、孔面積が厚み方向の一方側(面22A側)から他方側(面22B側)へ向けて漸減するように孔壁面26Aが本体部22の厚み方向に対して傾斜している(
図3参照)。具体的には、貫通孔26の周方向の一部分における孔壁面26Aには、孔面積が厚み方向の一方側から他方側へ向けて漸減するように傾斜する傾斜部27が形成されている。なお、本実施形態では、貫通孔26の本体部22の径方向外側に位置する部分の孔壁面26Aに傾斜部27が形成されており、貫通孔26の他の部分(傾斜部27が形成されない部分)の孔壁面26Aは、本体部22の厚み方向に沿って延びている。
【0022】
孔壁面26Aの傾斜部27は、
図3に示されるように、本体部22の厚み方向に対して角度θで傾斜している。この角度θは、5度~20度、より好ましくは8度~15度の範囲内で設定することが好ましい。
【0023】
また、孔壁面26Aの傾斜部27の本体部22の厚み方向に沿った長さは、
図3に示されるように、貫通孔26の本体部22の厚み方向に沿った長さLの80%~100%、より好ましくは90%~100%の範囲内に設定することが好ましい。
【0024】
本実施形態では、貫通孔26の周方向の一部分の孔壁面26Aと、凹部24の周方向の一部分の凹壁面24Bとが本体部22の厚み方向で連続している。具体的には、
図1及び
図3に示されるように、貫通孔26の孔壁面26Aのうち、傾斜部27が形成される部分と反対側の部分が凹部24の一部の凹壁面24Bと連続している。
【0025】
また、
図2に示されるように、本実施形態の焼結体20には、本体部22の他方の面22Bに貫通孔26から本体部22の外周縁まで延びる溝部30が形成されている。この溝部30は、例えば、凹部24に格納されたコイルから延びる配線を通すための溝である。なお、コイルの配線は、貫通孔26及び溝部30を通して焼結体20の外部へ延出するようになっている。
【0026】
<焼結体20の製造装置>
次に、本実施形態の焼結体20を製造するための製造装置のうち、金属粉末から成形体40を成形する多段プレス機50について
図4~
図6を用いて説明する。
【0027】
図4~
図6に示されるように、多段プレス機50は、金属粉末を成形するための金型52を備えている。この金型52は、コア54と、ダイ56と、上パンチ58と、下パンチ60と、下パンチ62と、下パンチ64と、を備えている。
【0028】
コア54は、焼結体20の貫通孔23に対応する成形体40の貫通孔23を形成する型部材である。また、ダイ56は、焼結体20の本体部22の外周面に対応する成形体40の本体部42の外周面を形成する型部材である。
【0029】
また、上パンチ58は、焼結体20の本体部22の他方の面22Bに対応する成形体40の本体部42の他方の面42Bを形成する型部材である。
【0030】
そして、下パンチ60と下パンチ64は、焼結体20の本体部22の一方の面22Aに対応する成形体40の本体部42の一方の面42Aを形成する型部材である。
【0031】
また、下パンチ62は、焼結体20の凹部24に対応する成形体40の凹部44を形成する型部材である。また、この下パンチ62には、焼結体20の貫通孔26に対応する成形体40の貫通孔46を形成するための突起部63が形成されている。この突起部63の少なくとも周方向の一部分は、突起部63の断面積が根元側から先端側へ向けて漸減するように突起部63の側壁面63Aが金型52の加圧方向(成形体40の厚み方向と平行な方向)に対して傾斜している。具体的には、突起部63の側壁面63Aには、成形体40の貫通孔46の孔壁面46Aの傾斜部47に対応する部分に、傾斜部63Bが形成されている。
【0032】
また、多段プレス機50は、金属粉末を上パンチ58と下パンチ60~64とを用いて加圧(プレス)するための図示しない駆動源を備えている。
【0033】
<焼結体の製造方法>
次に、本実施形態の焼結体を製造するための焼結体の製造方法について説明する。
本実施形態の焼結体の製造方法は、厚み方向の一方の面に凹部が形成されており、前記凹部の底面には前記厚み方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔の周方向の少なくとも一部分において、孔面積が前記厚み方向の一方側から他方側へ向けて漸減するように孔壁面が前記厚み方向に対して傾斜している焼結体の製造方法であって、金属粉末を金型に充填し、加圧して成形体を形成する工程と、前記成形体を焼結する工程と、を有し、前記焼結体の貫通孔となる前記成形体の貫通孔を成形する前記金型の突起部は、該突起部の周方向の少なくとも一部分において、前記突起部の断面積が根元側から先端側へ向けて漸減するように前記突起部の側壁面が前記金型の開閉方向に対して傾斜している。以下、焼結体の製造方法の具体例を、図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0034】
まず、各種粉末を混合して金属粉末を作製する。
【0035】
次に、
図4に示される多段プレス機50の金型52に金属粉末を充填する。そして、
図5に示されるように、充填された金属粉末を上下のパンチで加圧して、成形体40を成形する。
【0036】
そして、
図5に示されるように、成形体40を金型52から脱型する。ここで、本実施形態では、成形体40の貫通孔46の孔壁面46Aの一部に傾斜部47が形成されていることから、例えば、貫通孔46が一定径の構成と比べて、下パンチ62の突起部63を貫通孔46から引き抜く際に、突起部63と孔壁面46Aとの間の摩擦が低減される。このように突起部63と孔壁面46Aとの間の摩擦が低減されることで、下パンチ62の引き抜き時に突起部63に掛かる負担が軽減される。そして、成形体40の貫通孔46の周辺部分(孔壁面46Aや孔縁部等)が破損するのも抑制される。
【0037】
次に、成形体40を焼結して、焼結体20を形成する。その後、焼結体20の角張っている部分(例えば、外周縁部や孔縁)をC面取りやR面取りすることで、焼結体20が製品形状となる。
【0038】
次に本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施形態の焼結体20では、凹部24の底面24Cに形成された貫通孔26の周方向の一部分において、孔面積が本体部22の厚み方向の一方側から他方側へ向けて漸減するように孔壁面26Aを本体部22の厚み方向に対して傾斜させている。すなわち、貫通孔26に傾斜部27を形成している。このような焼結体20となる成形体40では、貫通孔26の傾斜する孔壁面26A(傾斜部27)に対応する部分(貫通孔46の傾斜部47)が傾斜するため、
図6に示されるように、成形体40の脱型時に、金型52に掛かる負担を低減でき、さらに、成形体40の貫通孔46の周辺部分の破損を抑制できる。このように、本実施形態の焼結体20では、貫通孔26に傾斜部27を形成することで、成形体40の成形時に凹部44の底面44Cに貫通孔46を形成しても、金型52及び成形体40に不具合が生じにくいため、焼結後に凹部の底面に貫通孔を後加工する必要がない。このため、焼結体20では、例えば、成形体の焼結後に焼結体の凹部の底面に貫通孔を後加工する場合と比べて、焼結体20の製造工程を簡略化することができる。
【0039】
また、焼結体20では、傾斜部27の角度θを5度~20度の範囲内に設定している。ここで、角度θが5度未満の場合、傾斜部27に対応する成形体40の傾斜部47と下パンチ62の突起部63との間の摩擦を低減する効果が少ない。また、角度θが20度を超える場合、成形体40の貫通孔46の径が細くなるのに合わせて、この貫通孔46を形成する突起部63も細くなり、突起部63の強度が低下し、不具合が生じやすくなる。このため、焼結体20の傾斜部27の角度θは、5度~20度、より好ましくは8度~15度の範囲内に設定することが好ましい。
【0040】
また、焼結体20では、孔壁面26Aの傾斜部27の本体部22の厚み方向に沿った長さを貫通孔26の長さLの80%~100%の範囲内に設定している。ここで、傾斜部27の上記長さが80%未満の場合、傾斜部27に対応する成形体40の傾斜部47と下パンチ62の突起部63との間の摩擦を低減する効果が少ない。このため、焼結体20の傾斜部27の上記長さは、貫通孔26の長さLの80%~100%、より好ましくは90%~100%の範囲内に設定することが好ましい。
【0041】
また、焼結体20では、貫通孔26の周方向の一部の孔壁面26Aと、凹部24の周方向の一部の凹壁面24Bとが本体部22の厚み方向で連続しているため、例えば、孔壁面26Aと凹壁面24Bとの間に変曲点があるものと比べて、対応する成形体40の貫通孔46を形成する突起部63の太さを確保することができる。これにより、金型52(下パンチ62の突起部63)の強度を確保することができる。
【0042】
[その他の実施形態]
前述の実施形態では、焼結体20の貫通孔26の周方向の一部分の孔壁面26Aを本体部22の厚み方向に対して傾斜させているが、本開示はこの構成に限定されず、焼結体20の貫通孔26の周方向の全ての部分の孔壁面26Aを本体部22の厚み方向に対して傾斜させてもよい。
【0043】
また、前述の実施形態では、
図1に示されるように、焼結体20の貫通孔26が凹部24の幅方向で凹壁面24A寄りに形成されているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、焼結体20の貫通孔26が凹部24の幅方向で凹壁面24B寄りに形成されてもよいし、焼結体20の貫通孔26の中心が凹部24の幅方向中心と一致するように貫通孔26が形成されてもよい。
【0044】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0045】
20 焼結体
22A 一方の面
22B 他方の面
24 凹部
24B 凹壁面
24C 底面
26 貫通孔
26A 孔壁面
40 成形体
44 凹部
44C 底面
46 貫通孔
52 金型
63 突起部
63A 側壁面
θ 角度
T 厚み方向