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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170212
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/02 20060101AFI20231124BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231124BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231124BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231124BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C09J201/02
C09J7/38
C09J11/06
H01L23/30 D
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081782
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】山崎 有司
(72)【発明者】
【氏名】野村 和清
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4M109
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA08
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AA17
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004EA05
4J004FA01
4J004FA04
4J040CA001
4J040DD051
4J040DF001
4J040EF001
4J040EF262
4J040EK031
4J040FA231
4J040HB31
4J040HB34
4J040HB44
4J040HC01
4J040HC21
4J040HD41
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA11
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA32
4J040LA06
4J040LA09
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA19
4J040NA20
4J040PA23
4J040PA42
4M109EA10
4M109EA15
4M109ED04
5F063AA18
5F063EE22
(57)【要約】
【課題】本発明は、帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性に優れる粘着剤組成物および粘着シートを提供することを目的とする。
【解決手段】下記(A)成分を含有することを特徴とする粘着剤組成物である。
(A)成分:下記一般式(1)で表される過塩素酸第四級アンモニウム塩の1種以上。
一般式(1)中、R、R、および、Rのうちの1つは、炭素数が5~18のアルキル基であり、また、他の2つは、炭素数が1~4のアルキル基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分を含有する粘着剤組成物。
(A)成分:下記一般式(1)で表される過塩素酸第四級アンモニウム塩の1種以上。
一般式(1)中、R、RおよびRのうちの1つは炭素数が5~18のアルキル基であり、他の2つは炭素数が1~4のアルキル基である。
【請求項2】
さらに、下記(B)成分および(C)成分を含有し、前記(A)成分の100質量部に対して、該(B)成分を20~800質量部、該(C)成分を1~200質量部含有する請求項1記載の粘着剤組成物。
(B)成分:グリコールジアリールエステル化合物およびグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物からなる群から選ばれる1種以上。
(C)成分:エポキシ化植物油の1種以上。
【請求項3】
前記(A)成分を、前記粘着剤組成物の固形分中に0.01~15.0質量%で含有する請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
基材シートの片面または両面に、請求項1または2記載の粘着剤組成物を含有する粘着剤層が設けられている粘着シート。
【請求項5】
基材シートの片面または両面に、請求項3記載の粘着剤組成物を含有する粘着剤層が設けられている粘着シート。
【請求項6】
前記粘着シートが、電子部材、電気部材または光学部材に用いられるものである請求項4記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着シートが、保護フィルムである請求項4記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着シートが、半導体ウエハ加工に用いられるものである請求項4記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着シートが、前記半導体ウエハ加工におけるダイシングおよび/またはピックアップに用いられる請求項8記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着シートに関し、詳しくは、電子・電気・光学部材の表面保護フィルムや、半導体ウエハ加工などに用いられる、帯電防止性を有する粘着剤組成物および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に設けられている液晶ディスプレイは、偏光板をはじめとする各種の光学部材から構成されている。このような光学部材には、その表面に埃等が付着するのを防止し、かつ、輸送等の際に傷が発生するのを防止するために、通常、表面保護フィルムが貼付されている。
【0003】
上記表面保護フィルムとしては、一般にポリエチレンテレフタレート等の透明なプラスチックフィルムの表面に、粘着剤を含有する粘着層を有するものが使用される。上記表面保護フィルムは、通常、偏光板等の光学部材の輸送時に加え、液晶ディスプレイ等の製造工程においても、光学部材に貼付されているが、液晶ディスプレイ等が最終製品として出荷される際には、光学部材の表面から剥離され、処分される。
【0004】
そのため、上記表面保護フィルムを構成する粘着層が、光学部材等の被着体表面から表面保護フィルムを剥離した際に被着体表面を帯電させやすい材質であると、被着体表面に埃等の汚れが付着しやすくなり、光学製品の歩留まりを低下させる場合があった。
【0005】
また、従来から、電気部品や電子部品、半導体部品を生産する際に、ダイシングなどの処理工程において、部品の固定や回路などの保護を目的として、粘着シートが使用されている。このような粘着シートとしては、基材フィルムに再剥離性のアクリル系粘着剤層が設けられた粘着シートや、貼付後の処理工程においては強い剥離抵抗性があるが、剥離時には小さい力で剥離可能なエネルギー線架橋型再剥離性粘着剤層が設けられた粘着シートなどがある。
【0006】
これらの粘着シートは、所定の処理工程が終了すると剥離されるが、このとき、部品と粘着シートとの間に、剥離帯電と呼ばれる静電気が発生する。この静電気による被着体への悪影響、例えば、回路の破壊などを抑えるために、基材フィルムの背面側を帯電防止処理した粘着シートや、粘着剤層に帯電防止剤を添加混合した粘着シート、基材フィルムと粘着剤層との間に帯電防止中間層を設けた粘着シートが使用されている。
【0007】
ところが、回路を形成する部品の基板がセラミックやガラスなどの絶縁材料である場合には、静電気の発生量が大きく、減衰に時間がかかる。このような場合には、上記のような粘着シートを用いても帯電防止性の効果が十分でなく、回路が破壊されてしまう可能性があった。
【0008】
これらフィルムやシートに帯電防止性を付与するために、使用される粘着剤に帯電防止剤を配合した、帯電防止性を備えた粘着剤が知られている。帯電防止性を備えた粘着剤としては、界面活性剤や帯電防止剤、高分子型帯電防止剤等を粘着剤用重合体中に配合した粘着剤が提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-002140号公報
【特許文献2】特開2011-241311号公報
【特許文献3】特開2007-291376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これら従来の方法では、十分な帯電防止性能は得られなかった。また、溶剤等で拭き取ることで帯電防止性能が低下し、帯電防止性能の耐久性に劣るという問題があった。さらに、粘着剤に帯電防止剤等の帯電防止成分を配合する場合、粘着剤に対する良好な溶解性が必要とされる。すなわち、粘着剤中に含まれる重合成分や、粘着剤製造時に使用される溶剤等に対する溶解性、つまり、相溶性に優れることが必要とされる。相溶性が悪いと、十分な配合量が添加できないばかりか、濁りや成分の析出等が生じ、使用に耐えないものとなる。
【0011】
従って本発明の目的は、帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性に優れる粘着剤組成物および粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記(A)成分を含有する粘着剤組成物を提供するものである。
(A)成分:下記一般式(1)で表される過塩素酸第四級アンモニウム塩の1種以上。
一般式(1)中、R、RおよびRのうちの1つは炭素数が5~18のアルキル基であり、他の2つは炭素数が1~4のアルキル基である。
【0014】
また、本発明は、さらに、下記(B)成分および(C)成分を含有し、前記(A)成分の100質量部に対して、該(B)成分を20~800質量部、該(C)成分を1~200質量部含有する上記粘着剤組成物を提供するものである。
(B)成分:グリコールジアリールエステル化合物およびグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物からなる群から選ばれる1種以上。
(C)成分:エポキシ化植物油の1種以上。
【0015】
さらに、本発明は、前記(A)成分を、前記粘着剤組成物の固形分中に0.01~15.0質量%で含有する上記粘着剤組成物を提供するものである。
【0016】
さらにまた、本発明は、基材シートの片面または両面に、上記粘着剤組成物を含有する粘着剤層が設けられている粘着シートを提供するものである。
【0017】
さらにまた、本発明は、前記粘着シートが、電子部材、電気部材または光学部材に用いられるものである粘着シートを提供するものである。
【0018】
さらにまた、本発明は、前記粘着シートが、保護フィルムである粘着シートを提供するものである。
【0019】
さらにまた、本発明は、前記粘着シートが、半導体ウエハ加工に用いられるものである粘着シートを提供するものである。
【0020】
さらにまた、本発明は、前記粘着シートが、前記半導体ウエハ加工におけるダイシングおよび/またはピックアップに用いられる粘着シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性に優れる粘着剤組成物および粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明の粘着剤組成物には、粘着剤と、後述する(A)成分とが含有されている。すなわち、本発明の粘着剤組成物は、粘着剤中に(A)成分を含有する。
【0024】
本発明において、粘着剤は、特に限定はされないが、扱いの容易性から、有機溶剤可溶性粘着剤であることが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤などが挙げられる。
【0025】
アクリル樹脂系粘着剤の具体例は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主剤とする。(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種以上の単量体と、必要に応じて、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-3-ヒドロキシブチル、アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-3-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有化合物;アクリルアミドなどのアミド基含有化合物;スチレン、ビニルピリジンなどの芳香族化合物などの共重合性単量体の1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有割合は、50~98質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~93質量%がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体の質量平均分子量は、30万~250万が好ましく、40万~150万がより好ましく、45万~100万が特に好ましい。なお、本明細書において、質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0027】
これらの粘着剤は、1種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの粘着剤のうち、アクリル樹脂系粘着剤が好ましく用いられる。特に、アクリル系共重合体を、ポリイソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などの架橋剤の1種以上で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤が好ましい。
【0028】
ポリイソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、水素化トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナートおよびその水添体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、ナフチレン-1,5-ジイソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー、ポリメチロールプロパン変性TDIなどが挙げられる。
【0029】
架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の使用量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましい。
【0030】
また、アクリル樹脂系粘着剤のアクリル系共重合体は、粘着剤組成物中に重合開始剤を含有させて、単量体をラジカル重合させて調製してもよい。
【0031】
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物や、2,2’-アゾビス-(2-アミノジプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス-(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾ化合物等を使用することができる。
【0032】
次に、本発明における(A)成分について説明する。
【0033】
(A)成分は、下記一般式(1)で表される過塩素酸第四級アンモニウム塩である。
【0034】
【0035】
一般式(1)中、R、RおよびRのうちの1つは炭素数が5~18のアルキル基であり、他の2つは炭素数が1~4のアルキル基である。
【0036】
(A)成分としての、一般式(1)で表される過塩素酸第四級アンモニウム塩の、R、RおよびRのうちの1つは、炭素数が5~18のアルキル基であり、帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性の点から、好ましくは炭素数が6~10のアルキル基である。また、一般式(1)で表される過塩素酸第四級アンモニウム塩の、R、RおよびRのうちの他の2つは、同一であることが好ましく、炭素数が1~4のアルキル基であり、帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性の点から、好ましくはメチル基である。
【0037】
帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性の点から、特に好ましい(A)成分は、下記化合物A-1である。
【0038】
【0039】
(A)成分の過塩素酸第四級アンモニウム塩は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本発明の粘着剤組成物は、(A)成分を、粘着剤組成物の固形分中に0.01~15.0質量%で含有していることが、帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性の点から好ましく、0.1~10.0質量%がより好ましく、0.2~8.0質量%がさらにより好ましく、0.5~5.0質量%が特に好ましい。
【0041】
ここで、固形分とは、粘着剤組成物により粘着剤層を形成する際に、乾燥により除去される成分を除いた成分、具体的には、後述する溶剤を除いた成分をいう。以下において同様である。
【0042】
本発明の粘着剤組成物は、相溶性の点から、さらに、(B)成分としての、グリコールジアリールエステル化合物およびグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物からなる群から選ばれる1種以上、並びに、(C)成分としての、エポキシ化植物油の1種以上を、含有することも好ましい。(B)成分および(C)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、(B)成分を20~800質量部、(C)成分を1~200質量部とすることが好ましい。
【0043】
次に、本発明における(B)成分について説明する。
【0044】
(B)成分は、グリコールジアリールエステル化合物およびグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物からなる群から選ばれる1種以上である。
【0045】
(B)成分は、相溶性の点から、下記一般式(2)で表されるグリコールジアリールエステル化合物の1種以上であることが好ましい。
【0046】
【0047】
一般式(2)中、Rは、水素原子または炭素数が1~4のアルキル基であり、Aは、炭素数が4~9のグリコールの水酸基を除いた残基である。
【0048】
(B)成分としての、一般式(2)で表されるグリコールジアリールエステル化合物におけるRは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、相溶性の点から、好ましくは水素原子である。
【0049】
(B)成分としての、一般式(2)で表されるグリコールジアリールエステル化合物におけるAは、炭素数が4~9のグリコールの水酸基を除いた残基である。炭素数4~9のグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが挙げられ、相溶性の点から、ジプロピレングリコールが好ましい。すなわち、Aは、相溶性の点から、ジプロピレングリコールの水酸基を除いた残基であることが好ましい。
【0050】
(B)成分としての、一般式(2)で表されるグリコールジアリールエステル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジ安息香酸エステル、トリエチレングリコールジ安息香酸エステル、テトラエチレングリコールジ安息香酸エステル、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステル、トリプロピレングリコールジ安息香酸エステル、ジエチレングリコールジトルイルエステル、トリエチレングリコールジトルイルエステル、テトラエチレングリコールジトルイルエステル、ジプロピレングリコールジトルイルエステル、トリプロピレングリコールジトルイルエステル等が、好ましい化合物として挙げられ、これらの中でも、帯電防止性および相溶性の点から、ジエチレングリコールジ安息香酸エステル、トリエチレングリコールジ安息香酸エステル、テトラエチレングリコールジ安息香酸エステル、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステル、トリプロピレングリコールジ安息香酸エステルがより好ましく、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステルが特に好ましい。
【0051】
(B)成分としての、一般式(2)で表されるグリコールジアリールエステル化合物は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
(B)成分としての、一般式(2)で表されるグリコールジアリールエステル化合物は、炭素数4~9のグリコールと、安息香酸等のアリールカルボン酸とを、エステル化反応させることによって得ることができる。もちろん、市販されているものを使用してもよい。
【0053】
また、(B)成分は、相溶性の点から、下記一般式(3)で表されるグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物の1種以上であることが好ましい。
【0054】
【0055】
一般式(3)中、Rは炭素数が1~8のアルキル基であり、Bは、炭素数が2~9のグリコールの水酸基を除いた残基である。
【0056】
(B)成分としての、一般式(3)で表されるグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物におけるRは、炭素数が1~8のアルキル基である。Rとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシルが挙げられ、相溶性の点から、ブチル基が好ましい。
【0057】
(B)成分としての、一般式(3)で表されるグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物におけるBは、炭素数が2~9のグリコールの水酸基を除いた残基である。炭素数2~9のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが挙げられ、相溶性の点から、エチレングリコールが好ましい。すなわち、Bは、相溶性の点から、エチレングリコールの水酸基を除いた残基であることが好ましい。
【0058】
(B)成分としての、一般式(3)で表されるグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物としては、例えば、ビス(エチレングリコールモノメチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノメチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノメチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノエチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノエチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノエチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル)フタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノブチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノブチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノヘキシルエーテル)フタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノヘキシルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノヘキシルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル)フタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(プロピレングリコールモノメチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(プロピレングリコールモノメチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(プロピレングリコールモノメチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(プロピレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(プロピレングリコールモノブチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(プロピレングリコールモノブチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(テトラエチレングリコールモノメチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(テトラエチレングリコールモノメチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(テトラエチレングリコールモノメチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(ジプロピレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(ジプロピレングリコールモノブチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(ジプロピレングリコールモノブチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)テレフタル酸エステル、ビス(トリプロピレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステル、ビス(トリプロピレングリコールモノブチルエーテル)イソフタル酸エステル、ビス(トリプロピレングリコールモノブチルエーテル)テレフタル酸エステル等が好ましい化合物として挙げられ、これらの中でも、相溶性の点から、ビス(エチレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステルが、特に好ましい。
【0059】
(B)成分としての、一般式(3)で表されるグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
(B)成分としての、一般式(3)で表されるグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物は、フタル酸等のアリールジカルボン酸と、炭素数2~9のグリコールのモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素数は1~8)とを、エステル化反応させることによって得ることができる。もちろん、市販されているものを使用してもよい。
【0061】
本発明の粘着剤組成物は、相溶性の点から、(A)成分の過塩素酸第四級アンモニウム塩の1種以上を100質量部に対し、(B)成分のグリコールジアリールエステル化合物およびグリコールモノアルキルエーテルのアリールエステル化合物からなる群から選ばれる1種以上を20~800質量部で含有することが好ましい。この含有量は、より好ましくは50~350質量部であり、さらにより好ましくは80~200質量部である。この含有量を、20質量部以上とすることで、十分な相溶性を得ることができ、800質量部以下とすることで、他の性能に悪影響を与えることを防止できる。
【0062】
次に、本発明における(C)成分について説明する。
【0063】
(C)成分は、エポキシ化植物油の1種以上である。エポキシ化植物油としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化サフラワー油等が挙げられ、相溶性の点から、エポキシ化大豆油が好ましい。
【0064】
本発明の粘着剤組成物は、相溶性の点から、(A)成分の過塩素酸第四級アンモニウム塩の1種以上を100質量部に対し、(C)成分のエポキシ化植物油の1種以上を1~200質量部で含有することが好ましい。この含有量は、より好ましくは5~100質量部であり、さらにより好ましくは10~50質量部である。この含有量を、1質量部以上とすることで、十分な相溶性を得ることができ、200質量部以下とすることで、他の性能に悪影響を与えることを防止できる。
【0065】
本発明の粘着剤組成物は、エネルギー線硬化性の粘着剤であってもよい。
【0066】
本発明の粘着剤組成物を、エネルギー線を照射することにより硬化させる場合は、粘着剤組成物中にエネルギー線重合性基を有する化合物を含有する、エネルギー線硬化型粘着剤を用いる。
【0067】
エネルギー線重合性基を有する化合物としては、例えば、エネルギー線重合性基を有する粘着剤の主剤、エネルギー線重合性基を有するモノマーやオリゴマーなどが挙げられる。エネルギー線重合性基を有する粘着剤の主剤の例としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の水酸基やカルボキシル基(アクリル酸等)と反応する官能基およびエネルギー線重合性基を有する化合物を、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に付加させたものなどが挙げられる。このような付加させる化合物の例としては、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートやメタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0068】
エネルギー線硬化型粘着剤に含有させるエネルギー線重合性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、多官能アクリレート、ウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート等の2官能基以上を有する多官能のエネルギー線硬化型のアクリル系化合物が挙げられ、ウレタンアクリレート系オリゴマーやポリエステルアクリレート系オリゴマーが好ましく、ウレタンアクリレート系オリゴマーが特に好ましい。
【0069】
エネルギー線重合性基を有するオリゴマーの分子量(質量平均分子量)は、1000~10万が好ましい。特に、ウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量は、1000~50000が好ましく、2000~30000がより好ましい。
【0070】
エネルギー線重合性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。エネルギー線重合性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーの含有量は、特に制限されないが、粘着剤組成物の固形分中に5~80質量%が好ましく、15~60質量%がより好ましい。
【0071】
エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線などが挙げられる。紫外線を使用する場合は、粘着剤組成物には、光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物、2-ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物、1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物などの公知の光重合開始剤を用いることができ、また、オリゴマー型光重合開始剤を用いることもできる。
【0072】
光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤の配合量は、エネルギー線重合性基を有する化合物100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、0.2~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部がさらに好ましい。
【0073】
本発明の粘着剤組成物は、溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、イソブタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。これらの中でも、相溶性の点から、極性溶媒が好ましく、酢酸エチル、メチルイソブチルケトンがより好ましい。
【0074】
本発明の粘着シートは、基材シートの片面または両面に、上記粘着剤組成物を含有する粘着剤層が設けられているものである。
【0075】
基材シートとしては、種々のプラスチックシートやフィルムが使用できる。基材シートの具体例としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの各種合成樹脂を用いたシートおよびフィルムが挙げられ、特に、高強度であり安価であることから、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂よりなるシートおよびフィルムが好ましい。基材シートは、単層であってもよいし、同種または異種の2層以上を積層した多層であってもよい。さらに、これらシートまたはフィルムを着色したもの、または、これらシートまたはフィルムに印刷を施したものであってもよく、硬化性樹脂を薄膜化し、硬化してシート化したものを用いてもよい。なお、粘着剤としてエネルギー線硬化型粘着剤を用いる場合には、エネルギー線を透過する基材シートが好ましい。
【0076】
基材シートの厚みは、特に制限されないが、通常、10~350μmが好ましく、25~300μmがより好ましく、50~250μmが特に好ましい。基材シートの表面には、易接着処理を施してもよい。易接着処理としては、特に制限されないが、例えば、コロナ放電処理等が挙げられる。
【0077】
本発明の粘着シートにおいては、基材シートの片面または両面に、上記粘着剤組成物を含有する粘着剤層が形成されている。粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、通常、乾燥後の膜厚で3~150μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、10~60μmがさらに好ましい。
【0078】
本発明の粘着シートは、基材シートの片面または両面に、上記粘着剤組成物を塗布して、必要に応じて乾燥することにより、製造することができる。上記粘着剤組成物の基材シートへの塗布方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンコート法など従来公知の方法が挙げられる。乾燥は、通常、20~150℃で行うことが好ましい。
【0079】
本発明の粘着シートは、被着体に貼付して使用され、帯電防止性が要求される分野であれば、その用途は限定されない。本発明の粘着シートは、粘着シートを被着体に貼付した後、エネルギー線を照射しない用途に使用することもできるし、粘着シートを被着体に貼付し、処理工程を経た後、エネルギー線を照射して、粘着力を低減し、被着体から剥離し、除去する用途に使用することもできる。
【0080】
前者の、エネルギー線を照射しない粘着シートの用途としては、偏光板等の光学部材や電子部材、電気部材に用いる用途が挙げられ、具体的には例えば、保護フィルムが挙げられる。すなわち、本発明の粘着シートは、例えば、光学部材や電子部材、電気部材の保護フィルムとして使用することができる。
【0081】
後者の、エネルギー線を照射する粘着シートの用途としては、例えば、半導体ウエハ加工に用いる用途が挙げられる。半導体ウエハ加工は、例えば、半導体ウエハをダイシングして半導体チップを得るダイシング工程と、得られた半導体チップをピックアップするピックアップ工程と、を含む。すなわち、本発明の粘着シートは、半導体ウエハ加工におけるダイシングおよび/またはピックアップに好適に用いることができ、具体的には例えば、半導体ウエハを接着固定し、形成素子を小片に切断、分割して、その素子小片をピックアップ方式で自動回収するダイシング工程において、半導体ウエハの裏面に貼付してウエハを保持するために用いられるウエハダイシングシートやダイシングテープとして、また、半導体ウエハの裏面研削工程において、半導体ウエハ表面を保護するために用いられる表面保護シート、つまり、裏面研削シートとして、使用することができる。
【0082】
照射されるエネルギー線としては、種々のエネルギー線発生装置から発生するエネルギー線が用いられる。例えば、紫外線としては、通常は、紫外線ランプから輻射される紫外線が用いられる。この紫外線ランプとしては、通常、波長300~400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュ-ジョンHランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプが用いられ、照射量は通常、50~3000mJ/cmが好ましい。
【実施例0083】
以下、本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、「%」、「ppm」および「部」は、特に記載がない限り、質量基準である。
【0084】
[実施例1~18、比較例1~4]
表1~3に示す処方(質量部)で各種成分を配合し、本発明の粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を用いて、下記<試験用キャストフィルム作製方法>に従い、試験用キャストフィルムを作製した。
【0085】
得られた試験用キャストフィルムを用いて、下記測定方法に従い、表面抵抗率(SR値)の測定を行い、帯電防止性の評価を行った。また、得られた試験用キャストフィルムを用いて、下記<耐久性試験方法>に従い、耐久性の評価を行った。さらに、得られた試験用キャストフィルムを用いて、下記<相溶性試験方法>に従い、相溶性の評価を行った。同様にして、下記の表4に示す配合で、比較例の粘着剤組成物を調製し、それぞれ評価を行った。これらの結果を、表1~4に示す。
【0086】
なお、粘着剤組成物における(A)成分としては下記化合物A-1を、(B)成分としては、化合物B-1としてビス(エチレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステルを、化合物B-2としてジプロピレングリコールジ安息香酸エステルを、それぞれ使用した。また、(C)成分としては、エポキシ化大豆油としての、株式会社ADEKA製、製品名O-130Pを使用した。さらに、比較帯電防止剤成分として、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを使用した。
【0087】
(A)成分
【0088】
また、アクリル酸エステル共重合体としては、下記製造例1で得られたアクリル酸エステル共重合体-1を使用した。
【0089】
さらに、ポリイソシアネート系架橋剤として、DIC株式会社製、製品名バーノックDN-980Sを使用した。
【0090】
〔製造例1〕
[アクリル酸エステル共重合体-1の製造]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート942質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート56質量部、アクリル酸2質量部、酢酸エチル730質量部、および、メチルエチルケトン250質量部を仕込み、攪拌下、窒素ブローを行いながら反応容器内を72℃まで昇温した。
【0091】
その後、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液20質量部(固形分5質量%)を添加し、反応を開始した。
【0092】
攪拌下、72℃にて4時間ホールドした後、75℃まで昇温し12時間ホールドして、冷却した。冷却後、酢酸エチルで固形分30質量%になるまで希釈し、アクリル酸エステル共重合体-1の有機溶剤溶液(固形分30質量%)を得た。
【0093】
<粘着剤組成物の作製>
得られたアクリル酸エステル共重合体-1に、表中に記載の配合量で、架橋剤、(A)、(B)および(C)の各成分を配合し、均一となるよう撹拌混合して、粘着剤組成物を得た。
【0094】
<試験用キャストフィルム作製方法>
得られた粘着剤組成物を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに溶液流延し、室温で3日間乾燥して、粘着剤層の厚さ25μmの試験用キャストフィルムを作製した。
【0095】
<表面抵抗率(SR値)測定方法>
得られた試験用キャストフィルムを、温度25℃、湿度50%RHの条件下に保存し、7日保存後に、同雰囲気下で、ハイレスターUX抵抗計を用いて、印加電圧1000Vで、粘着剤面の、表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0096】
<耐久性試験方法>
表面抵抗率(SR値)測定方法に従い表面抵抗率を測定した試験用キャストフィルムの粘着剤面を、エタノールを含ませた布で、20回拭き取った。その後、拭き取った箇所の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0097】
<相溶性試験方法>
得られた試験用キャストフィルムの外観を目視で観察して、1~5の5段階で評価した。評価1が、粘着剤層に、白濁や析出物が見られず、最も相溶性に優れることを意味し、数値が増えるにつれて、白濁または析出物が見られ、相溶性が悪化することを意味し、評価5が、最も相溶性に劣る。
【0098】
【表1】
【0099】
*1:DIC株式会社製、商品名「バーノックDN-980S」
*2:株式会社ADEKA製、製品名O-130P
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
[実施例19~36、比較例5~8]
表5~7に示す処方(質量部)で各種成分を配合し、本発明の粘着剤組成物を得た。
【0104】
なお、粘着剤組成物における(A)成分としては上記化合物A-1を、(B)成分としては、上記化合物B-1としてビス(エチレングリコールモノブチルエーテル)フタル酸エステルを、上記化合物B-2としてジプロピレングリコールジ安息香酸エステルを、(C)成分としては、エポキシ化大豆油としての、株式会社ADEKA製、製品名O-130Pを、それぞれ使用した。
【0105】
また、アクリル酸エステル共重合体としては、アクリル酸エステル共重合体-2として、アクリル酸エステル共重合体樹脂(アクリル酸n-ブチル/アクリル酸=90/10(質量比)、質量平均分子量70万、溶剤トルエン、固形分濃度40質量%)を使用した。
【0106】
さらに、ポリイソシアネート系架橋剤として、DIC株式会社製、製品名バーノックDN-980Sを使用した。
【0107】
さらにまた、エネルギー線重合性基含有オリゴマーとして、ウレタンアクリレート系オリゴマーとしての、三菱ケミカル株式会社製、UV硬化型ウレタンアクリレート UV-3520EAを使用した。
【0108】
さらにまた、光重合開始剤として、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンを使用した。
【0109】
得られた粘着剤組成物を、PET樹脂からなる基材シート(厚み50μm)の片面に、乾燥膜厚が15μmになるように塗布し、乾燥させて、粘着シートを作製した。
【0110】
さらに、得られた粘着シートに、合計1000mJ/cmの紫外線を基材シート面から照射して、粘着シートを紫外線硬化させた。
【0111】
粘着シートの帯電防止性を、紫外線の照射前および照射後において、下記<表面抵抗率(SR値)測定方法>に従い、評価した。また、粘着シートの耐久性を、紫外線照射前において、下記<耐久性試験方法>に従い、評価した。さらに、粘着シートの相溶性を、紫外線の照射前および照射後において、下記<相溶性試験方法>に従い、評価した。 同様にして、下記の表8に示す配合で、比較例の粘着剤組成物を調製し、それぞれ評価を行った。これらの結果を、表5~8に示す。
【0112】
なお、比較帯電防止剤成分として、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを使用した。
【0113】
<表面抵抗率(SR値)測定方法>
得られた、紫外線の照射前および照射後におけるそれぞれの粘着シートを、温度25℃、湿度50%RHの条件下に保存し、7日保存後に、同雰囲気下で、ハイレスターUX抵抗計を用いて、印加電圧1000Vで、粘着剤面の、表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0114】
<耐久性試験方法>
表面抵抗率(SR値)測定方法に従い、表面抵抗率を測定した粘着シートの粘着剤面を、エタノールを含ませた布で、20回拭き取った。その後、拭き取った箇所の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0115】
<相溶性試験方法>
得られた、紫外線の照射前および照射後におけるそれぞれの粘着シートの外観を、目視で観察して、1~5の5段階で評価した。評価1が、粘着剤層に、白濁や析出物が見られず、最も相溶性に優れることを意味し、数値が増えるにつれて、白濁または析出物が見られ、相溶性が悪化することを意味し、評価5が、最も相溶性に劣る。
【0116】
【表5】
【0117】
*1:DIC株式会社製、商品名「バーノックDN-980S」
*2:株式会社ADEKA製、製品名O-130P
*3:三菱ケミカル株式会社製 UV硬化型ウレタンアクリレート UV-3520EA
*4:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン
【0118】
【表6】
【0119】
【表7】
【0120】
【表8】
【0121】
表1~8に示す結果から、本発明の粘着剤組成物および粘着シートは、帯電防止性およびその耐久性、並びに、相溶性に優れていることが明らかである。