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特開2023-170334パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170334
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/38 20060101AFI20231124BHJP
   C08G 77/46 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C08G77/38
C08G77/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082009
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智幸
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA03
4J246AB02
4J246AB12
4J246BA020
4J246BA02X
4J246BB020
4J246BB021
4J246BB02X
4J246CA010
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA260
4J246CA26E
4J246CA26X
4J246CA390
4J246CA39M
4J246CA39X
4J246CA530
4J246CA53M
4J246CA53X
4J246CA660
4J246CA66M
4J246CA66X
4J246CA680
4J246CA68M
4J246CA68X
4J246EA13
4J246EA14
4J246EA15
4J246EA16
4J246FA222
4J246FA322
4J246FA371
4J246FA372
4J246FA452
4J246FC162
4J246FC232
4J246FE26
4J246GA01
4J246GC41
4J246HA56
(57)【要約】
【課題】パーフルオロポリエーテル基を有し、分子中のシロキサン単位数等の制御が可能であり、非フッ素系有機化合物との親和性に優れるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーの提供。
【解決手段】
パーフルオロポリエーテルブロック及びオルガノポリシロキサンブロックを有するパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーであって、前記オルガノポリシロキサンブロックの側鎖に、オキシアルキレン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、エポキシ基及びカルボン酸無水物基から選ばれる反応性官能基を含む有機基を1種以上有する、パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、パーフルオロポリエーテルブロック及びオルガノポリシロキサンブロックを有するパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーであって、前記オルガノポリシロキサンブロックの側鎖に、オキシアルキレン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、エポキシ基及びカルボン酸無水物基から選ばれる反応性官能基を含む有機基を1種以上有する、パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化1】
[式(1)中、
Rfは下記式(2)
【化2】
(式(2)中、zは1~4の数であり、v、w、x及びyはそれぞれ独立に0~200の数であり、v+w+x+y=3~200である。また、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、
W1は下記式(A)
【化3】
(式(A)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基である。R2は下記式(3)で表されるオキシアルキレン基、炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基を有する炭素数9~18の有機基、エポキシ基を有する炭素数6~15の有機基及びカルボン酸無水物基を有する炭素数4~32の有機基から選ばれる1種以上の反応性官能基である。R3は炭素数7~18のアラルキル基、炭素数3~12のアルコキシアルキル基、及び下記式(4)で表されるオキシアルキレン基から選ばれる1種以上の基である。
【化4】
(式(3)中、R4は炭素数2~4のアルキレン基であり、jは3~12の数であり、kは1~60の数である。なお、上記kで括られたオキシアルキレン単位は1種または2種以上で構成されたものであり、2種以上で構成される場合の各単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【化5】
(式(4)中、R4は炭素数2~4のアルキレン基であり、R5は炭素数1~4のアルキル基であり、mは3~12の数であり、nは1~60の数である。なお、上記nで括られたオキシアルキレン単位は1種または2種以上で構成されたものであり、2種以上で構成される場合の各単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
p1、q1、及びr1はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される2価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
W2はそれぞれ独立に下記式(B)
【化6】
(式(B)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基である。R2は上記式(3)で表されるオキシアルキレン基、炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基を有する炭素数9~18の有機基、エポキシ基を有する炭素数6~15の有機基及びカルボン酸無水物基を有する炭素数4~32の有機基から選ばれる1種以上の反応性官能基である。R3は炭素数7~18のアラルキル基、炭素数3~12のアルコキシアルキル基、及び上記式(4)で表されるオキシアルキレン基から選ばれる1種以上の基である。R1’は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基である。p2、q2及びr2はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される1価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
但し、上記式(A)のq1及び上記式(B)のq2は同時に0とならない。
Qは炭素数2~12の2価の有機基であり、また、上記式(1)中、QはRfの末端の炭素原子、W1の末端のケイ素原子又はW2の末端のケイ素原子のいずれかと結合しており、
gは0~50の数であるが、gが0のときW2の式(B)中のq2は0とならない。]
【請求項2】
重量平均分子量が4,000~500,000であり、1分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量が50%以上である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【請求項3】
Rfで表されるパーフルオロポリエーテルブロックが、下記式(5)で表される基である、請求項1又は2に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化7】
(式(5)中、v及びwはそれぞれ0~200の数で、但しv+w=3~200である。また、(OC24)の繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【請求項4】
式(A)又は式(B)中のR2が式(3)で表されるオキシアルキレン基であり、式(3)中のR4が炭素数2または3のアルキレン基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【請求項5】
式(A)又は式(B)中のR2が炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【請求項6】
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(6)で表されるヒドロキシアリール基を有する有機基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化8】
(式(6)中、aは3~4の数であり、R6は水素原子、メトキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基である。)
【請求項7】
式(6)において、R6が水素原子又はメトキシ基である、請求項6に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【請求項8】
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(7)で表されるエポキシ基を有する有機基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化9】
(式(7)中、jは3~12の数である。)
【請求項9】
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(8)で表されるエポキシ基を有する有機基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化10】
【請求項10】
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(9)又は(10)で表されるカルボン酸無水物基を有する有機基である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化11】
(式(9)中、R7は独立して、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基、及びフェニル基から選ばれる基である。bは0~4である。)
【化12】
【請求項11】
式(A)及び式(B)において、r1+r2>1である、請求項1に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【請求項12】
式(A)又は式(B)中のR3が式(4)で表されるオキシアルキレン基である、請求項11に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーフルオロポリエーテル基含有化合物は、その表面自由エネルギーが非常に低いため、耐薬品性、潤滑性、離型性、撥水撥油性などを有する。その性質を利用して、工業的には、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、紙・繊維・ガラス・樹脂などの撥水撥油防汚剤、化粧料、保護膜などとして、幅広く利用されている。
【0003】
しかし、パーフルオロポリエーテル基含有化合物の表面自由エネルギーが低いために、他の物質との相溶性、親和性が非常に低く、パーフルオロポリエーテル基含有化合物を各種工業材料等に添加して上記性質を付与しようとすると、分散安定性や反応性などに問題が生じ、パーフルオロポリエーテル基含有化合物の各種工業材料等への配合は困難であった。
【0004】
一方、ポリシロキサン化合物も、その表面自由エネルギーが低いため、撥水性・潤滑性・離型性などの性質を有する。そして、ポリシロキサン化合物は、パーフルオロポリエーテル化合物に比べて他の物質に対する親和性が良く、各種変性をすることでさらに分散安定性を向上させることも可能である。そのため、ポリシロキサン化合物は各種工業材料等に添加してシリコーンの性質を容易に付与することができ、幅広い分野で性能向上用の添加剤として利用されている。パーフルオロポリエーテル基とポリシロキサン鎖を有する化合物として、パーフルオロポリエーテル変性のポリシロキサン化合物がある(特許文献1)。
しかし、このポリシロキサン化合物において、パーフルオロポリエーテル基の性質を高めようとしてフッ素変性率を上げると、他の工業材料に対する親和性が著しく低下してしまう。このため、分散安定性や反応性などに問題を生じることがある。
【0005】
これを鑑みて、パーフルオロポリエーテルとポリシロキサン双方の特性を有し、非フッ素系有機化合物との親和性に優れた、パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体が開発されている(特許文献2、3)。
また、シロキサン部分にカルビノール基及びエポキシ基などの反応性官能基を有するパーフルオロポリエーテル変性オルガノポリシロキサンも開発されている(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-321764号公報
【特許文献2】特開2008-88412号公報
【特許文献3】特開2011-21158号公報
【特許文献4】特開平10-330487号公報
【特許文献5】特開平5-43587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び特許文献3に開示されたパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロック共重合体は非フッ素系有機化合物との親和性は良いが、反応性官能基を有していないため、種々の有機化合物と反応できず、硬化性組成物に配合しても、持続的な撥水撥油性等を付与することができない。
また、特許文献4及び特許文献5に開示された反応性官能基を有するパーフルオロポリエーテル変性オルガノポリシロキサンは、導入可能なオルガノシロキサン単位数や反応性官能基数が限定的であり、硬化性組成物に対する相溶性の制御や、得られる硬化物の架橋密度の制御が難しい。
したがって、本発明は、パーフルオロポリエーテル基を有し、ブロックコポリマーを構成する各単位の数、オルガノポリシロキサンブロックの側鎖に導入する基の変性率等の分子構造の制御が可能であり、オルガノポリシロキサンブロックに種々の有機化合物と反応可能な官能基を有し、非フッ素系有機化合物との親和性に優れるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー(以下、単にブロックコポリマーと略記することがある)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーが、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記のものである。
【0009】
[1]
下記式(1)で表される、パーフルオロポリエーテルブロック及びオルガノポリシロキサンブロックを有するパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーであって、前記オルガノポリシロキサンブロックの側鎖に、オキシアルキレン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、エポキシ基及びカルボン酸無水物基から選ばれる反応性官能基を含む有機基を1種以上有する、パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化1】
[式(1)中、
Rfは下記式(2)
【化2】
(式(2)中、zは1~4の数であり、v、w、x及びyはそれぞれ独立に0~200の数であり、v+w+x+y=3~200である。また、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、
W1は下記式(A)
【化3】
(式(A)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基である。R2は下記式(3)で表されるオキシアルキレン基、炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基を有する炭素数9~18の有機基、エポキシ基を有する炭素数6~15の有機基及びカルボン酸無水物基を有する炭素数4~32の有機基から選ばれる1種以上の反応性官能基である。R3は炭素数7~18のアラルキル基、炭素数3~12のアルコキシアルキル基、及び下記式(4)で表されるオキシアルキレン基から選ばれる1種以上の基である。
【化4】
(式(3)中、R4は炭素数2~4のアルキレン基であり、jは3~12の数であり、kは1~60の数である。なお、上記kで括られたオキシアルキレン単位は1種または2種以上で構成されたものであり、2種以上で構成される場合の各単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【化5】
(式(4)中、R4は炭素数2~4のアルキレン基であり、R5は炭素数1~4のアルキル基であり、mは3~12の数であり、nは1~60の数である。なお、上記nで括られたオキシアルキレン単位は1種または2種以上で構成されたものであり、2種以上で構成される場合の各単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
p1、q1、及びr1はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される2価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
W2はそれぞれ独立に下記式(B)
【化6】
(式(B)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基である。R2は上記式(3)で表されるオキシアルキレン基、炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基を有する炭素数9~18の有機基、エポキシ基を有する炭素数6~15の有機基及びカルボン酸無水物基を有する炭素数4~32の有機基から選ばれる1種以上の反応性官能基である。R3は炭素数7~18のアラルキル基、炭素数3~12のアルコキシアルキル基、及び上記式(4)で表されるオキシアルキレン基から選ばれる1種以上の基である。R1’は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基である。p2、q2及びr2はそれぞれ0~1,000の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
で表される1価のオルガノポリシロキサンブロックであり、
但し、上記式(A)のq1及び上記式(B)のq2は同時に0とならない。
Qは炭素数2~12の2価の有機基であり、また、上記式(1)中、QはRfの末端の炭素原子、W1の末端のケイ素原子又はW2の末端のケイ素原子のいずれかと結合しており、
gは0~50の数であるが、gが0のときW2の式(B)中のq2は0とならない。]

[2]
重量平均分子量が4,000~500,000であり、1分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量が50%以上である、[1]に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。

[3]
Rfで表されるパーフルオロポリエーテルブロックが、下記式(5)で表される基である、[1]又は[2]に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化7】
(式(5)中、v及びwはそれぞれ0~200の数で、但しv+w=3~200である。また、(OC24)の繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよい。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。)

[4]
式(A)又は式(B)中のR2が上記式(3)で表されるオキシアルキレン基であり、式(3)中のR4が炭素数2または3のアルキレン基である、[1]~[3]のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。

[5]
式(A)又は式(B)中のR2が炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基である、[1]~[3]のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。

[6]
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(6)で表されるヒドロキシアリール基を有する有機基である、[1]~[3]のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化8】
(式(6)中、aは3~4の数であり、R6は水素原子、メトキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基である。)

[7]
式(6)において、R6が水素原子又はメトキシ基である、[6]に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。

[8]
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(7)で表されるエポキシ基を有する有機基である、[1]~[3]のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化9】
(式(7)中、jは3~12の数である。)

[9]
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(8)で表されるエポキシ基を有する有機基である、[1]~[3]のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化10】

[10]
式(A)又は式(B)中のR2が下記式(9)または(10)で表されるカルボン酸無水物基を有する有機基である、[1]~[3]のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【化11】
(式(9)中、R7は独立して、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基、及びフェニル基から選ばれる基である。bは0~4である。)
【化12】
[11]
式(A)及び式(B)において、r1+r2>1である、[1]~[10]のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。

[12]
式(A)又は式(B)中のR3が式(4)で表されるオキシアルキレン基である、[11]に記載のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマー。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブロックコポリマーは、パーフルオロポリエーテルブロックを有し、シロキサン含有量が多く、分子鎖の両末端にオルガノポリシロキサンブロックを有している。さらに、オルガノポリシロキサンブロックの側鎖にオキシアルキレン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、エポキシ基及びカルボン酸無水物基から選ばれる1種以上の基を有している。このため、パーフルオロポリエーテルブロックを有しながらも非フッ素系有機化合物と相溶しやすく、種々の有機化合物と反応可能である。また、本発明のブロックコポリマーは、オルガノポリシロキサン単位の数やオルガノポリシロキサンブロックの側鎖が有する基の変性率が容易に制御できる。さらに、非フッ素系有機化合物との親和性に優れるアラルキル基及びオキシアルキレン単位を有する基から選ばれる1種以上の基の導入も容易である。
従って、本発明のブロックコポリマーは、非フッ素系有機樹脂の表面改質剤等の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーは、下記式(1)で表される。上記ブロックコポリマーは、パーフルオロポリエーテルブロック(Rf)と、オルガノポリシロキサンブロック(W1又はW2)が、交互に存在する。
【化13】
式(1)中の各符号の定義は前記と同じである。
【0012】
上記オルガノポリシロキサンブロックは、側鎖にオキシアルキレン基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、エポキシ基及びカルボン酸無水物基から選ばれる反応性官能基を含む有機基を1種以上有するため、種々の有機化合物と反応が可能である。
【0013】
上記式(1)のブロックコポリマーは、1分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量が50%以上、99%以下であることが好ましく、60%以上、90%以下であることがより好ましい。オルガノポリシロキサンブロック含有量が上記下限値以上であれば、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れ、上記上限値以下であれば、パーフルオロポリエーテル基の性質が発現しやすい。該オルガノポリシロキサンブロック含有量は、式(1)のブロックコポリマーの1H-NMRスペクトルで、上記式(1)中のQのアルキレン由来のピークと、W1及びW2中のケイ素原子上の有機基由来のピークとの積分比から、分子量既知のパーフルオロポリエーテルブロックRfと、オルガノシロキシ単位とのモル比を求め、このモル比を分子量の比に換算して算出した値である。なお、通常、式(1)のブロックコポリマーは構造に分布を有するため、上記オルガノポリシロキサンブロック含有量は1分子当たりの平均値である。
【0014】
オルガノポリシロキサンブロックW1及びW2のうち1つ以上は、下記式(11)で表されるシロキサン単位を有することが好ましい。
【化14】
【0015】
上記式(11)中、R2は下記式(3)で表されるオキシアルキレン基、炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基を有する炭素数9~18の有機基、エポキシ基を有する炭素数6~15の有機基及びカルボン酸無水物基を有する炭素数4~32の有機基から選ばれる1種以上の反応性官能基である。
【0016】
【化15】
式(3)中、R4は炭素数2~4のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2~3のアルキレン基である。jは3~12の数であり、好ましくは3~8の数である。kは1~60の数であり、好ましくは1~12の数である。上記kで括られたオキシアルキレン単位は1種または2種以上で構成されたものであり、2種以上で構成される場合の各単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0017】
2の炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基は、好ましくは炭素数3~8のものである。
【0018】
2のヒドロキシアリール基を有する炭素数9~18の有機基は、好ましくは下記式(6)で表される基が例示される。
【化16】
(式(6)中、aは3~4の数であり、好ましくは3である。R6は水素原子、メトキシ基及びヒドロキシ基から選ばれる基であり、好ましくは水素原子又はメトキシ基である。
【0019】
2のエポキシ基を有する炭素数6~15の有機基は、好ましくは下記式(7)又は下記式(8)で表される基が例示される。
【化17】
式(7)中、jは3~12の数であり、好ましくは3~8の数である。
【0020】
2のカルボン酸無水物基を有する炭素数4~32の有機基は、好ましくは下記式(9)または(10)で表される基が例示される。
【化18】
式(9)中、bは0~4であり、好ましくはb=0(単結合)、b=3(トリメチレン基)又はb=4(テトラメチレン基)である。R7は独立して、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であり、好ましくは水素原子である。
【化19】
【0021】
上記式(3)で表されるオキシアルキレン基、炭素数3~12のω-ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基を有する有機基、エポキシ基を有する有機基及びカルボン酸無水物基を有する有機基から選ばれる基を有する上記式(11)で表されるシロキサン単位は、上記式(1)中に1つ以上存在し、2個以上存在することが有機化合物との反応性の観点から好ましい。なお、オルガノポリシロキサンブロックW1及びW2における式(11)のシロキサン単位は、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0022】
上記式(1)は、オルガノポリシロキサンブロックW1及びW2のうち1つ以上に、下記式(12)で表されるシロキサン単位を有していてもよい。
【化20】
上記式(12)中、R3は炭素数7~18のアラルキル基、炭素数3~12のアルコキシアルキル基、及び下記式(4)で表されるオキシアルキレン基から選ばれる1種以上の基である。
【0023】
【化21】
式(4)中、R4は炭素数2~4のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2~3のアルキレン基である。R5は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。mは3~12の数であり、好ましくは3である。nは1~60の数であり、好ましくは2~12の数である。上記nで括られたオキシアルキレン基の繰り返し単位は1種または2種以上で構成されたものであり、2種以上で構成される場合の各単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0024】
また、R3の炭素数7~18のアラルキル基は、好ましくは下記式(13)で表される基である。
【化22】
式(13)中、R8は水素原子、メチル基又はフェニル基であり、好ましくはメチル基である。
【0025】
アラルキル基、アルコキシアルキル基及びオキシアルキレン単位を有する基から選ばれる1種以上の基を有する上記式(12)で表されるシロキサン単位は、任意で上記式(1)中に存在してよく、式(12)で表されるシロキサン単位を有する場合、式(1)のブロックコポリマーは非フッ素系有機化合物と相溶しやすくなる。なお、オルガノポリシロキサンブロックW1及びW2における式(12)のシロキサン単位は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0026】
上記式(1)中、オルガノポリシロキサンブロックW1は、下記式(A)で表される2価の基である。
【化23】
【0027】
上記式(A)中、R1は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基である。ここで、炭素数1~18のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。R1の好ましい例としては、メチル基、エチル基、フェニル基が挙げられ、特に好ましくは、メチル基である。
【0028】
上記式(A)中、R2及びR3の例としては、式(11)のR2及び式(12)中のR3で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0029】
上記式(A)中、p1、q1、及びr1はそれぞれ0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0030】
上記式(A)で表される基の例として、下記式(14)~(26)で表される基等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0031】
上記式(1)中、オルガノポリシロキサンブロックW2は、下記式(B)で表される1価の基である。
【化28】
【0032】
上記式(B)中、R1、R2及びR3は、上記式(A)で挙げたものと同様のものが挙げられる。R1’は独立して炭素数1~18のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基である。
【0033】
上記式(B)中、p2、q2及びr2はそれぞれ0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。なお、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。但し、上記式(A)中のq1並びに上記式(B)中のq2は同時に0とならない。
【0034】
式(B)で表される基の例として、下記式(27)~(37)で表される基等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0035】
上記式(1)中のパーフルオロポリエーテルブロックRfは、下記式(2)で示されるものである。
【化33】
【0036】
式(2)中、zは1~4の数であり、v、w、x及びyはそれぞれ独立に0~200の数であり、好ましくはそれぞれ0~50の数であり、但し、v+w+x+y=3~200であり、好ましくは10~50であり、各繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0037】
上記式(2)の各繰り返し単位は、例えば下記繰り返し単位等が挙げられる。
【化34】
【0038】
中でも、上記式(2)において、z=1であり、x及びyが0である下記式(5)のパーフルオロポリエーテルブロックが、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れるため好ましい。
【化35】
【0039】
式(5)中、v及びwはそれぞれ0~200の数であり、好ましくはそれぞれ0~50の数であり、但し、v+w=3~200であり、好ましくは10~50であり、(OC24)の繰り返し単位は直鎖状でも分岐状であってもよく、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0040】
上記各式で表されるパーフルオロポリエーテルブロックは、通常、構造に分布を有したものであり、v、w、x及びyはそれぞれ1分子当たりの平均値である。
【0041】
上記式(1)中、Qは炭素数2~12、好ましくは炭素数3~6の2価の有機基である。また、上記式(1)中、QはRfの末端の炭素原子、W1の末端のケイ素原子又はW2の末端のケイ素原子のいずれかと結合している。なお、Qは酸素原子や窒素原子を含んでいてもよい。具体的には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及び2級アミノ基などが挙げられる。Qの具体例としては下記の基等が挙げられる。
【化36】
(式中、*はRfに結合する遊離基、**はW1またはW2に結合する遊離基を示す。)
【0042】
上記Qの具体例の中でも、オルガノポリシロキサンブロックとパーフルオロポリエーテルブロックの連結が容易である点で、*-CH2OCH2CH2CH2**が好ましい。
【0043】
式(1)のブロックコポリマーの重量平均分子量は4,000~500,000が好ましい。重量平均分子量がこの範囲内の数であると、非フッ素系有機化合物への溶解性に優れ、取り扱いも容易な傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、下記条件でGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定により求めたポリスチレン換算値である(以下同様)。
【0044】
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperH5000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3質量%のトルエン溶液)
【0045】
上記式(1)中、gは0~50の数であるが、式(1)のブロックコポリマーの重量平均分子量が4,000~500,000を満たす数であることが好ましい。具体的には、gは0~20の数であることが好ましく、0~10の数であることがより好ましい。ただし、gが0のときW2の式(B)中のq2は0とならない。
【0046】
[パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーの製造方法]
本発明のブロックコポリマーは、以下に述べる方法で製造できる。
(a)成分:下記式(38)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
と、
(b)成分:下記式(39)で表される末端炭素-炭素二重結合を有するオキシアルキレン基を有する化合物、炭素数3~12のω-ヒドロキシ-1-アルケン、末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数9~18のフェノール化合物、末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数6~15のエポキシ化合物及び末端炭素-炭素二重結合又は脂環式炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~32のカルボン酸無水物化合物から選ばれる1種以上
とを、
(c)成分:ヒドロシリル化反応触媒
の存在下で(a)成分と(b)成分のヒドロシリル化反応を行うことにより、上記式(1)で表されるブロックコポリマーを得ることができる。
【0047】
【化37】
【0048】
【化38】
(式(39)中、R4、j及びkはそれぞれ上記式(3)に示すものと同じである。なお、上記kで括られた繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。また、上記オキシアルキレン単位は1種または2種以上で構成されたものである。)
【0049】
上記式(38)において、Rfは上記式(2)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、g’は0~50の数である。
【0050】
式(38)中、オルガノポリシロキサンブロックW3は、それぞれ独立に下記式(A’)で表される2価の基である。
【化39】
上記式(A’)中、R1は上記式(A)中のものと同じである。p1’及びs1’はそれぞれ0~1,000の数であり、好ましくは0~200の数である。なお、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【0051】
式(38)中、オルガノポリシロキサンブロックW4は、それぞれ独立に下記式(B’)で表される1価の基である。
【化40】
上記式(B’)中、R1及びR1’は上記式(B)中のものと同じである。p2’及びs2’はそれぞれ0~1,000の数であり、好ましくは0~200の数である。なお、各繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。
但し、上記式(A’)のハイドロジェンシロキサン単位の数s1’と上記式(B’)のハイドロジェンシロキサン単位の数s2’は同時に0とならないものである。
【0052】
上記式(38)中、Qは炭素数2~12の2価の有機基である。また、QはRfの末端の炭素原子、W3の末端のケイ素原子又はW4の末端のケイ素原子のいずれかと結合している。
【0053】
(b)成分:末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数9~18のフェノール化合物は、好ましくは下記式(40)で表される化合物である。
【化41】
(式(40)中、R6及びaは上記式(6)中のものと同じである。)
【0054】
(b)成分:末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数6~15のエポキシ化合物は、好ましくは下記式(41)又は下記式(42)で表される化合物である。
【化42】
(式(41)中、jは上記式(7)中のものと同じである。)
【0055】
(b)成分:末端炭素-炭素二重結合又は脂環式炭素-炭素二重結合を有する炭素数4~32のカルボン酸無水物化合物は、好ましくは下記式(43)~(45)で表される化合物である。
【化43】
(式(43)中、R7は独立して上記式(9)中のものと同じであり、bは2~4の数である。)
【化44】
(式(44)中、R7は独立して上記式(9)中のものと同じである。)
【化45】
【0056】
(c)成分:ヒドロシリル化反応触媒は、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム触媒であり、好ましくは白金触媒である。白金触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体、白金と各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
【0057】
上記(c)成分:ヒドロシリル化反応触媒は、いわゆる触媒量でよく、上記(a)成分と(b)成分の合計に対して、金属原子重量換算で0.1~200ppmであることが好ましい。
【0058】
上記(a)成分と(b)成分のヒドロシリル化反応による、上記式(1)のブロックコポリマーの製造方法において、任意で(d)成分:末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数7~18のアラルキル化合物、末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数3~12のエーテル化合物及び下記式(46)で表される末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数6~248のオキシアルキレン単位を有する化合物から選ばれる1種以上を加えてヒドロシリル化反応を行ってもよい。上記式(1)のブロックコポリマーに上記式(12)で表されるシロキサン単位が導入され、非フッ素系有機化合物と相溶しやすくなる。
【0059】
【化46】
(式(46)中、R4、R5、m及びnはそれぞれ上記式(4)に示すものと同じである。なお、上記nで括られた繰り返し単位の配列順序は限定されず、ランダムであってもブロックであってもよい。また、上記オキシアルキレン単位は1種または2種以上で構成されたものである。)
【0060】
(d)成分:末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数7~18のアラルキル化合物は、好ましくは上記式(47)で表される化合物である。
【化47】
(式(47)中、R8は上記式(13)中のものと同じである。)
【0061】
(d)成分:末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数3~12のエーテル化合物の例として、下記式で表される化合物等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【化48】
【0062】
(d)成分:末端炭素-炭素二重結合を有する炭素数6~248のオキシアルキレン単位を有する化合物の例として、下記式で表される化合物等が挙げられるが、下記式に限定されるものではない。
【化49】
【0063】
上記式(1)のブロックコポリマーの製造方法において、任意で(e)成分:有機溶媒を加えてヒドロシリル化反応を行ってもよい。本反応は無溶媒下でも可能であるが、有機溶媒を加えることにより、(a)成分、(b)成分及び(d)成分が相溶しやすくなり、ヒドロシリル化反応が効率よく進行することがある。
【0064】
上記(e)成分:有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類;(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素化芳香族炭化水素等を挙げることができ、上記(a)成分、(b)成分及び(d)成分との相溶性が良いトルエンが好ましい。
【0065】
上記(e)成分:有機溶媒の使用量は、上記(a)成分、(b)成分及び(d)成分が相溶する量であれば特に制限はないが、上記(a)成分、(b)成分及び(d)成分の合計に対して、10~300質量%であることが好ましい。
【0066】
上記(a)成分:上記式(38)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、以下の方法などを用いて製造することができる。
【0067】
詳細には、(f)成分:下記式(48)で表されるパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーと、(g)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(h)成分:酸触媒と、必要に応じて(i)成分:下記式(49)及び下記式(50)で表されるポリシロキサンから選ばれる1種以上とを混合して、(f)成分と(g)成分及び(i)成分とのシロキサン間の交換反応を行う。
【0068】
【化50】
【0069】
【化51】
(式(49)中、R1は上記式(A’)中のものと同じである。t1は3~10の数であり、好ましくは3~8の数である。)
【0070】
【化52】
(式(50)中、R1は上記式(B’)中のものと同じである。R9は独立してヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、好ましくはヒドロキシ基、メチル基又はメトキシ基である。t2は0~5,000の数であり、好ましくは2~1,000の数である。)
【0071】
上記式(48)において、Rfは上記式(2)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックであり、g”は0~50の数である。
上記式(48)中、オルガノポリシロキサンブロックW5は、それぞれ独立に下記式(A”)で表される2価の基である。
【化53】
上記式(A”)中、R1は上記式(A’)中のものと同じである。p”は0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。
【0072】
上記式(48)中、オルガノポリシロキサンブロックW6は、下記式(B”)で表される1価の基である。
【化54】
上記式(B”)中、R1及びR1’は上記式(B’)中のものと同じである。q”は0~1,000の数であり、好ましくは0~500の数であり、より好ましくは0~200の数である。
【0073】
上記式(42)中、Qは炭素数2~12の2価の有機基である。また、QはRfの末端の炭素原子、W5の末端のケイ素原子又はW6の末端のケイ素原子のいずれかと結合している。
【0074】
上記(g)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよいが、例えば下記のシロキサン等を挙げることができる。
【化55】
【0075】
上記(h)成分:酸触媒は、上記(f)成分及び(g)成分のシロキサン結合を加水分解できるものであれば、特に制限はないが、硫酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等が好ましい。
【0076】
上記(i)成分:上記式(49)及び上記式(50)で表されるポリシロキサンとして、例えば下記のシロキサン等を挙げることができる。
【化56】
【0077】
上記シロキサン間の交換反応による上記式(38)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの製造方法において、任意で(j)成分:有機溶媒を加えて、シロキサン間の交換反応を行ってもよい。本反応は無溶媒下でも可能であるが、有機溶媒を加えることにより、(f)成分:パーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーと、(g)成分及び(i)成分のポリシロキサンが相溶しやすくなり、シロキサン間の交換反応を効率よく進行させることができる。
【0078】
(j)成分:有機溶媒の使用量は、上記(f)成分、(g)成分及び(i)成分が相溶する量であれば特に制限はないが、(f)成分、(g)成分及び(i)成分の合計に対して、10~300質量%であることが好ましい。
【実施例0079】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、重量平均分子量は、上記した測定条件に基づくGPC測定により求めたポリスチレン換算値である。また、下記例において、繰り返し単位数gは、29Si-NMRスペクトルにおいて上記式(1)に基づくSi(R1'3-O-構造のSiに由来する積分値Mと、上記式(1)に基づく-Q-Si(R12-O-構造のSiに由来する積分値M’とから算出される値であり、g=(M’/M)-1である。
【0080】
[実施例1]ブロックコポリマー(1-1)の合成
反応容器に、下記式(38-1)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン2.2gと、エチレングリコールモノアリルエーテル0.39gと、溶媒としてトルエン2.5gを入れて、80℃で5分攪拌した。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.01gを加え、110℃で4時間攪拌した。次いで、過剰量のエチレングリコールモノアリルエーテルと溶媒であるトルエンを減圧留去して、液状生成物2.3gを得た。
【化57】
【0081】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果を表1~3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0082】
以上の結果から、生成物は下記式(1-1)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は77%のブロックコポリマーであることが分かった。また、該ブロックコポリマーのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は12,440であった。
【化58】
【0083】
[実施例2]ブロックコポリマー(1-2)の合成
反応容器に、上記式(38-1)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン2.0gと、下記式(46-2)で示される末端炭素-炭素二重結合を有するヒドロキシ基を有する化合物0.89gと、溶媒としてトルエン2.9gを入れて、85℃で5分攪拌した。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.02gを加え、100℃で3時間攪拌した。次いで、溶媒であるトルエンを減圧留去して、液状生成物2.5gを得た。
【0084】
【化59】
【0085】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果を表4~6に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【0086】
以上の結果から、生成物は下記式(1-2)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は83%のブロックコポリマーであることが分かった。また、該ブロックコポリマーのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は16,600であった。
【化60】
【0087】
[実施例3]ブロックコポリマー(1-3)の合成
反応容器に、下記式(38-2)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.5gと、2-アリルフェノール0.58gと、溶媒としてトルエン3.5gを入れて、100℃で5分攪拌した。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.01gを加え、100℃で4時間攪拌した。次いで、過剰量の2-アリルフェノールと溶媒であるトルエンを減圧留去して、液状生成物3.7gを得た。
【0088】
【化61】
【0089】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果を表7~9に示す。
【表7】
【表8】
【表9】
【0090】
以上の結果から、生成物は下記式(1-3)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は62%のブロックコポリマーであることが分かった。また、該ブロックコポリマーのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は8,850であった。
【0091】
【化62】
【0092】
[実施例4]ブロックコポリマー(1-4)の合成
反応容器に、上記式(38-1)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.0gと、アリルグリシジルエーテル0.51gと、溶媒としてトルエン3.0gを入れて、100℃で5分攪拌した。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.02gを加え、100℃で7時間攪拌した。次いで、過剰量のアリルグリシジルエーテルと溶媒であるトルエンを減圧留去して、液状生成物2.8gを得た。
【0093】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果を表10~12に示す。
【表10】
【表11】
【表12】
【0094】
以上の結果から、生成物は下記式(1-4)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は78%のブロックコポリマーであることが分かった。また、該ブロックコポリマーのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は8,680であった。
【0095】
【化63】
【0096】
[実施例5]ブロックコポリマー(1-5)の合成
反応容器に、上記式(38-1)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.0gと、アリルコハク酸無水物0.52gと、溶媒としてトルエン3.0gを入れて、105℃で5分攪拌した。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.02gを加え、105℃で8時間攪拌した。次いで、過剰量のアリルコハク酸無水物と溶媒であるトルエンを減圧留去して、液状生成物3.1gを得た。
【0097】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果は次の通りであった。
【表13】
【表14】
【表15】
【0098】
以上の結果から、生成物は下記式(1-5)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は78%のブロックコポリマーであることが分かった。また、該ブロックコポリマーのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は9,220であった。
【0099】
【化64】
【0100】
[実施例6]ブロックコポリマー(1-6)の合成
反応容器に、上記式(38-1)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.0gと、イソプロペニルベンゼン0.15gと、溶媒としてトルエン3.0gを入れて、100℃で5分攪拌した。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.02gを加え、100℃で3時間攪拌した。次いで、アリルグリシジルエーテル0.30gを加え、100℃で7時間攪拌した。次いで、過剰量のアリルグリシジルエーテルと溶媒であるトルエンを減圧留去して、液状生成物3.1gを得た。
【0101】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果は次の通りであった。
【表16】
【表17】
【表18】
【0102】
以上の結果から、生成物は下記式(1-6)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は76%のブロックコポリマーであることが分かった。また、該ブロックコポリマーのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は8,950であった。
【0103】
【化65】
【0104】
[実施例7]ブロックコポリマー(1-7)の合成
反応容器に、上記式(38-1)で示されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.0gと、下記式(46-7)で示される末端炭素-炭素二重結合を有するオキシアルキレン単位を有する化合物0.77gと、溶媒としてトルエン3.5gを入れて、100℃で5分攪拌した。次いで、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.02gを加え、100℃で1時間攪拌した。次いで、アリルグリシジルエーテル0.30gを加え、100℃で7時間攪拌した。次いで、過剰量のアリルグリシジルエーテルと溶媒であるトルエンを減圧留去して、液状生成物3.7gを得た。
【化66】
【0105】
得られた生成物の各NMRスペクトルの測定結果は次の通りであった。
【表19】
【表20】
【表21】
【0106】
以上の結果から、生成物は下記式(1-7)で表される構造を有し、分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量は81%のブロックコポリマーであることが分かった。また、該ブロックコポリマーのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は11,170であった。
【0107】
【化67】
【0108】
[比較例1(分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量:0%)]
パーフルオロポリエーテルジオール(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、商品名、Fomblin D2)。
【0109】
[比較例2(分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量:25%)]
反応容器に、2-アリルフェノール0.59gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.59gを入れて、100℃で5分攪拌し、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.01gを加えた。次いで、下記式(51)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン4.4gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン4.4gの混合溶液を、100℃で15分間かけて滴下し、さらに100℃で2時間攪拌した。次いで、過剰量の2-アリルフェノールと溶媒である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを減圧留去して、下記式(52)で表されるブロックコポリマー4.6gを得た。
【0110】
【化68】
【0111】
[比較例3(分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量:24%)]
反応容器に、アリルグリシジルエーテル0.59gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.59gを入れて、100℃で5分攪拌し、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.01gを加えた。次いで、上記式(51)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン4.4gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン4.4gの混合溶液を、100℃で15分間かけて滴下し、さらに100℃で3時間攪拌した。次いで、過剰量のアリルグリシジルエーテルと溶媒である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを減圧留去して、下記式(53)で表されるブロックコポリマー4.6gを得た。
【0112】
【化69】
【0113】
[比較例4(分子中のオルガノポリシロキサンブロック含有量:26%)]
反応容器に、アリルコハク酸無水物0.60gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.60gを入れて、100℃で5分攪拌し、白金のビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.01gを加えた。次いで、上記式(51)で表されるパーフルオロポリエーテルブロックを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン4.4gと、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン4.4gの混合溶液を、105℃で15分間かけて滴下し、さらに105℃で4時間攪拌した。次いで、過剰量のアリルグリシジルエーテルと溶媒である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを減圧留去して、下記式(54)で表されるブロックコポリマー4.6gを得た。
【0114】
【化70】
【0115】
[非フッ素系有機化合物への溶解性の評価]
上記の実施例及び比較例のブロックコポリマー1gを、下記の非フッ素系有機化合物9gと混合し、その混合液を目視で観察して、下記の基準により溶解性を評価した。
【0116】
評価基準
○:混合液が透明である。
△:混合液が白濁している。
×:混合液が二相に分離している。
【0117】
【表22】
【0118】
表22の結果から、本発明のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーは、オルガノポリシロキサンを有さないパーフルオロポリエーテル化合物やシロキサン含有量が少ない比較例のブロックコポリマーよりも、非フッ素系有機化合物への溶解性に優れることがわかった。
また、本発明のパーフルオロポリエーテル-オルガノポリシロキサンブロックコポリマーは、オルガノシロキサン単位数や、ヒドロキシ基、フェノール基、エポキシ基及びカルボン酸無水物基から選ばれる1種以上の基を有するシロキサン単位数、及びアラルキル基及びオキシアルキレン単位を有する基から選ばれる1種以上の基を有するシロキサン単位数の制御が容易であるため、相溶性や硬化物の架橋密度の制御も可能であり、非フッ素系有機樹脂の表面改質剤等の用途に有用である。