(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170392
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】剥離装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231124BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231124BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20231124BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/68 N
B28D5/04 B
B26F3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082111
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】朴木 鴻揚
(72)【発明者】
【氏名】板橋 宏治
(72)【発明者】
【氏名】山本 涼兵
(72)【発明者】
【氏名】松尾 晴貴
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C060AA10
3C060CA03
3C069AA03
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5F131EC72
(57)【要約】
【課題】インゴットの上面から超音波を付与してウエーハをインゴットから剥離させて吸引し搬出する場合に、インゴットの上面からウエーハが脱落し、損傷する等の問題が解消する剥離装置を提供する。
【解決手段】インゴット10を保持する保持手段60と、インゴット10の上面12に水の層を形成する水供給手段88と、該水の層を介して超音波をインゴット10の上面12に付与する超音波手段78と、生成すべきウエーハ19の剥離を確認する剥離確認手段87と、インゴット10の上面12に対面する吸引面95aを備えた吸引パッド95を下降して生成すべきウエーハ19を吸引しインゴット10から搬出するウエーハ搬出手段90と、制御手段100とを含み、制御手段100は、剥離確認手段87がウエーハ19の剥離を確認した後、水供給手段88、超音波手段78、剥離確認手段87を退避位置に位置付けて、ウエーハ搬出手段90を作動して、インゴット10からウエーハ19を搬出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成すべきウエーハに対応する深さに剥離層が形成されたインゴットからウエーハを剥離する剥離装置であって、
インゴットを保持する保持手段と、該インゴットの上面に水の層を形成する水供給手段と、該水の層を介して超音波をインゴットの上面に付与する超音波手段と、生成すべきウエーハの剥離を確認する剥離確認手段と、インゴットの上面に対面する吸引面を備えた吸引パッドを下降して生成すべきウエーハを吸引しインゴットから搬出するウエーハ搬出手段と、制御手段とを含み、
該制御手段は、該剥離確認手段がウエーハの剥離を確認した後、該水供給手段、該超音波手段、該剥離確認手段を退避位置に位置付けて該ウエーハ搬出手段を作動して、インゴットからウエーハを搬出する剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成すべきウエーハに対応する深さに剥離層が形成されたインゴットからウエーハを剥離する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイス、LED等のデバイスは、単結晶SiCを素材としてウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。
【0003】
デバイスが形成されるウエーハは、一般的にインゴットをワイヤーソーでスライスして生成され、スライスされたウエーハの表裏面を研磨して鏡面に仕上げられる(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、単結晶SiCインゴットをワイヤーソーで切断し、表裏面を研磨してウエーハを生成すると、インゴットの70~80%が捨てられ不経済であることから、本出願人は、単結晶SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をインゴットの内部に位置付けて照射し、切断予定面に剥離層を形成し、ウエーハを剥離する技術を提案している(特許文献2を参照)。
【0005】
上記した特許文献2の技術によれば、インゴットの70~80%が捨てられるという問題が解消され、不経済であるという問題が解決されるものの、レーザー光線により形成される剥離層からウエーハを剥離することが比較的困難であり、生産効率が悪いという問題がある。そこで、本出願人は生成すべきウエーハの上面に水の層を形成して超音波を付与し、インゴットから生成すべきウエーハを剥離する剥離装置を提案している(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-094221号公報
【特許文献2】特開2016-111143号公報
【特許文献3】特開2019-102513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献3の技術によれば、インゴットから効率よくウエーハを剥離することが可能となり、生産性が悪いという問題が解消する。しかし、インゴットの上面から超音波を付与してウエーハをインゴットから剥離させ、その後吸引して剥離装置から搬出する場合に、ウエーハがインゴットから完全に剥離する剥離タイミングを把握することが困難であり、該剥離タイミングが経過してしまった後にウエーハを吸引して搬出しようとしても、インゴットの上面から剥離したウエーハが水の流れに乗って脱落し、損傷する等の問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、インゴットの上面から超音波を付与してウエーハをインゴットから剥離させて吸引し搬出する場合に、インゴットの上面からウエーハが脱落し、損傷する等の問題が解消する剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、生成すべきウエーハに対応する深さに剥離層が形成されたインゴットからウエーハを剥離する剥離装置であって、インゴットを保持する保持手段と、該インゴットの上面に水の層を形成する水供給手段と、該水の層を介して超音波をインゴットの上面に付与する超音波手段と、生成すべきウエーハの剥離を確認する剥離確認手段と、インゴットの上面に対面する吸引面を備えた吸引パッドを下降して生成すべきウエーハを吸引しインゴットから搬出するウエーハ搬出手段と、制御手段とを含み、該制御手段は、該剥離確認手段がウエーハの剥離を確認した後、該水供給手段、該超音波手段、該剥離確認手段を退避位置に位置付けて該ウエーハ搬出手段を作動して、インゴットからウエーハを搬出する剥離装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の剥離装置は、生成すべきウエーハに対応する深さに剥離層が形成されたインゴットからウエーハを剥離する剥離装置であって、インゴットを保持する保持手段と、該インゴットの上面に水の層を形成する水供給手段と、該水の層を介して超音波をインゴットの上面に付与する超音波手段と、生成すべきウエーハの剥離を確認する剥離確認手段と、インゴットの上面に対面する吸引面を備えた吸引パッドを下降して生成すべきウエーハを吸引しインゴットから搬出するウエーハ搬出手段と、制御手段とを含み、該制御手段は、該剥離確認手段がウエーハの剥離を確認した後、該水供給手段、該超音波手段、該剥離確認手段を退避位置に位置付けて該ウエーハ搬出手段を作動して、インゴットからウエーハを搬出するものであることから、剥離確認手段によって生成すべきウエーハの適切な剥離のタイミングを知ることで、ウエーハ搬出手段によってインゴットから生成すべきウエーハを確実に搬出することができ、ウエーハが脱落して損傷するという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示すインゴットに対し剥離層形成加工が施される態様を示す斜視図である。
【
図3】(a)
図2に示す剥離層形成加工により剥離層が形成されたインゴットの平面図、(b)(a)のA-A断面を拡大した断面図である。
【
図5】(a)
図4に示す剥離装置により生成すべきウエーハを剥離する際の状態を示す斜視図、(b)(a)において超音波が付与される態様を示す側面図である。
【
図6】ウエーハ搬出手段をインゴットに近接させる態様を示す斜視図である。
【
図7】ウエーハ搬出手段によりウエーハが搬出された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成される剥離装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1(a)、(b)には、後述する剥離装置50(
図4を参照)によって剥離されるウエーハを生成するためのインゴット10であって、剥離層(後述する)が形成される前の状態を示している。本実施形態のインゴット10は、六方晶単結晶SiCから全体として略円柱形状に形成されており、円形状の第1の端面12と、第1の端面12と反対側であってサブストレート20が装着された円形状の第2の端面(番号は付していない)と、第1の端面12及び該第2の端面の間に位置する周面13と、第1の端面12から該第2の端面に至るc軸(<0001>方向)と、c軸に直交するc面({0001}面)とを有する。図示のインゴット10においては、
図1(a)に示す第1の端面12の中心16を通る垂線18に対してc軸が傾いており(
図1(b)を参照)、c面と第1の端面12とでオフ角α(例えばα=1、3、6度)が形成されている。該オフ角αが形成される方向を
図1(a)、(b)に矢印Pで示す。また、インゴット10の周面13には、結晶方位を示す矩形状の第1のオリエンテーションフラット14及び第2のオリエンテーションフラット15が形成されている。第1のオリエンテーションフラット14は、オフ角αが形成される方向Pに平行であり、第2のオリエンテーションフラット15は、オフ角αが形成される方向Pに直交している。第2のオリエンテーションフラット15の長さは、第1のオリエンテーションフラット14の長さよりも短く設定されており、インゴット10の表裏、オフ角αの傾斜方向が特定される。なお、後述する剥離装置50によってウエーハが剥離されるインゴット10は、上記したインゴット10に限定されず、たとえば、インゴットの端面の垂線に対してc軸が傾いておらず、c面と端面とのオフ角が0度である(すなわち、端面の垂線とc軸とが1致している)単結晶SiCインゴットでもよく、あるいはSi(シリコン)やGaN(窒化ガリウム)等の単結晶SiC以外の素材から形成されているインゴットでもよい。
【0014】
後述する剥離装置50でインゴット10からウエーハを剥離するには、インゴット10に剥離層を形成する必要がある。該剥離層の形成は、例えば、
図2に示すレーザー加工装置30(1部のみを示している)を用いて実施することができる。レーザー加工装置30は、被加工物を保持する図示を省略するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物にパルスレーザー光線LBを照射する集光器34を含むレーザー光線照射手段32とを備える。該チャックテーブルは、上面において被加工物を吸引保持するように構成され、図示を省略する回転駆動手段、X軸移動手段、及びY軸移動手段を備えており、保持したインゴット10を、該集光器34に対して移動させて任意のXY座標位置に位置付けることができる。集光器34は、レーザー加工装置30のパルスレーザー光線発振器(図示を省略する)が発振したパルスレーザー光線LBを集光して被加工物に照射するための集光レンズ(図示を省略する)を含む。
【0015】
図2を参照して説明を続けると、インゴット10に剥離層を形成する際は、まず、インゴット10の第1の端面12を上に向けて、サブストレート20を装着した第2の端面側を下方に向けて、該チャックテーブルの上面にインゴット10を吸引保持する。次いで、レーザー加工装置30の撮像手段(図示を省略する)でインゴット10の上方からインゴット10を撮像する。次いで、該撮像手段で撮像したインゴット10の画像に基づいて、レーザー加工装置30のX軸移動手段、Y軸移動手段及び回転駆動手段を作動して、インゴット10の向きを所定の向きに調整すると共にインゴット10を所定のXY位置に位置付ける。インゴット10の向きを所定の向きに調整する際は、
図2に示すとおり、第2のオリエンテーションフラット15をX軸方向に整合させることによって、オフ角αが形成される方向Pと直交する方向をX軸方向に整合させると共に、オフ角αが形成される方向PをY軸方向に整合させる。
【0016】
次いで、レーザー加工装置30の集光点位置調整手段(図示を省略する)で集光器34を昇降させ、インゴット10の第1の端面12から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに集光点を位置付ける。次いで、単結晶SiCに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBを集光器34からインゴット10に照射し、オフ角αが形成される方向Pと直交する方向に整合しているX軸方向にインゴット10を移動させて剥離層40を形成する剥離層形成加工を行う。該剥離層形成加工では、
図3(a)、及び
図3(a)のA-Aの断面を拡大して示す
図3(b)から理解されるように、パルスレーザー光線LBの照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離し次に照射されるパルスレーザー光線LBが前に形成されたCに吸収されて連鎖的にSiCがSiとCとに分離した改質部42がX軸方向に連続的に形成されると共に、該改質部42からc面に沿って等方的に延びるクラック44が生成される。このようにして改質部42及びクラック44を形成したならば、インゴット10をY軸方向に所定のインデックス量Lで割り出し送りして、上記したレーザー加工を繰り返す。これにより、インゴット10の第1の端面12から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに、複数の改質部42およびクラック44からなる、インゴット10からウエーハを剥離するための強度が低下した剥離層40を形成することができる。
【0017】
なお、上記した剥離層40の形成する剥離層形成加工は、例えば以下の加工条件で行うことができる。
パルスレーザー光線の波長 :1064nm
繰り返し周波数 :60kHz
平均出力 :1.5W
パルス幅 :4ns
スポット径 :3μm
集光レンズの開口数(NA):0.65
加工送り速度 :200mm/s
【0018】
図4には、上記した剥離層40が形成されたインゴット10からウエーハを剥離する本実施形態の剥離装置50が示されている。
【0019】
剥離装置50は、インゴット10を保持する保持手段60と、インゴット10の上面に水の層を形成する水供給手段88と、水の層を介して超音波をインゴットの上面に付与する超音波手段78と、生成すべきウエーハの剥離を確認する剥離確認手段87と、インゴット10の上面(第1の端面12)に対面する吸引面95aを備えた吸引パッド95を下降して生成すべきウエーハを吸引しインゴット10から搬出するウエーハ搬出手段90と、制御手段100とを含む。
【0020】
保持手段60は、図中に矢印Xで示すX軸方向において移動自在に剥離装置50の基台51上に搭載された矩形状の可動板61と、可動板61の上面に固定された円筒状の支柱62と、支柱62の上端に配設され上記したインゴット10を保持し、図示しない回転駆動手段により回転可能に構成された保持テーブル64が配設されている。保持テーブル64は、多孔質材料から形成され実質上水平に延在する円形状の吸着チャック64aを上面に備えている。吸着チャック64aは、支柱62を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。保持手段60は、保持テーブル64をX軸方向に移動させる移動手段67を含む。移動手段67は、モータ65の回転運動を、ボールねじ66を介して直線運動に変換して可動板61に伝達し、基台51上にX軸方向に沿って平行に一対で配設された案内レール51A、51Aに沿って可動板61をX軸方向において進退させる。なお、図示は省略するが、保持手段60には、位置検出手段が配設されており、保持テーブル64のX方向の位置、周方向の回転位置が正確に検出され、制御手段100から指示される信号に基づいて移動手段67、及び該回転駆動手段が駆動され、任意のX軸方向の位置及び回転角度に保持テーブル64を正確に位置付けることが可能になっている。
【0021】
剥離装置50の基台51上のX軸方向の奥側には、一対の案内レール51A、51Aを挟み、第1位置付け手段70と、第2位置付け手段80が配設されている。第1位置付け手段70は、シリンダ72と、該シリンダ72によって昇降される昇降ロッド74と、昇降ロッド74の上端に配設され該シリンダ72の作用により旋回可能に構成された旋回アーム76とを備え、該旋回アーム76の先端に、所定の剥離位置に位置付けられたインゴット10に対して下面78aから超音波振動を付与する超音波手段78を備えている。第2位置付け手段80は、シリンダ82と、該シリンダ82によって昇降される昇降ロッド84と、昇降ロッド84の上端に配設され該シリンダ82の作用により旋回可能に構成された旋回アーム86とを備え、該旋回アーム86の先端に、所定の剥離位置に位置付けられたインゴット10から生成すべきウエーハの剥離を確認する剥離確認手段87と、インゴット10の上面に水の層を形成する水供給手段88と、が配設されている。
【0022】
超音波手段78、剥離確認手段87、及び水供給手段88は、制御手段100によって適宜制御される。超音波手段78は、例えば、100Wの出力で、25kHzの振動周波数を付与するものである。剥離確認手段87は、例えばいわゆる近接センサによって構成され、該剥離確認手段87の直下に位置付けられたインゴット10の第1の端面12の表面高さの変化(剥離の開始によってインゴットから第1の端面12が浮き上がることで表面の高さが変化する)を検出する手段である。該剥離確認手段87を構成する近接センサは、特に限定されず、例えば、超音波をインゴット10に照射して、反射波を検出し、この反射波の帰還時間に基づいて、超音波が照射された高さ位置を検出する超音波型センサであってよく、その他の近接センサ、例えば電磁波型、赤外線型等のセンサであってもよい。水供給手段88は、垂直部91、水平部92を介して、図示を省略する水供給源に接続されており、下面から、例えば毎分3リットルの水が供給される。
【0023】
ウエーハ搬出手段90は、剥離装置50のX軸方向における奥側端部であって、一対の案内レール51A、51Aの一端部側に配設された移動手段67に対し反対側端部に配設されている。ウエーハ搬出手段90は、基台51に立設された垂直部91と、該垂直部91の上端に配設され水平に伸びる水平部92と、該水平部92の端部に配設されたシリンダ93と、該シリンダ93によって昇降される昇降ロッド94と、昇降ロッド94の下端に配設され下面側に吸引面95aを備えた吸引パッド95と、を備えている。該水平部92には、吸引パッド95の吸引面95aに負圧を生成するための吸引口96が配設され、該吸引口96は、図示を省略する吸引源に接続される。
【0024】
保持テーブル64は、上記した移動手段67を作動することによりX軸方向で進退し、
図4において保持テーブル64が位置付けられている搬出入位置とウエーハ搬出手段90の吸引パッド95の直下である剥離位置とに移動させることができる。また、
図4では、超音波手段78、剥離確認手段87、及び水供給手段88は、第1位置付け手段70及び第2位置付け手段80の作用により、吸引パッド95の昇降を阻害しない退避位置に位置付けられている。
【0025】
本実施形態の剥離装置50は、概ね上記したとおりの構成を備えており、以下に本実施形態の剥離装置50によってインゴットからウエーハを剥離して搬出する態様について説明する。
【0026】
上記した剥離層形成加工により生成すべきウエーハに対応する深さに剥離層40が形成されたインゴット10を、
図4に基づき説明した剥離装置50に搬入する。次いで、
図4において保持テーブル64が位置付けられている搬出入位置の保持テーブル64の吸着チャック64aに、サブストレート20側を下方に向けてインゴッド10を載置し、図示を省略する吸引手段を作動して保持する。
【0027】
該搬出入位置においてインゴッド10を保持した保持テーブル64は、上記の移動手段67を作動して、ウエーハ搬出手段90の吸引パッド95の直下、すなわち剥離位置に移動させられる。このとき、吸引パッド95は、シリンダ93の作用により、超音波手段78、剥離確認手段87、水供給手段88の移動を妨げない上方位置に移動させられている。
【0028】
次いで、上記した第2位置付け手段80のシリンダ82により、旋回アーム86が旋回しても、剥離確認手段87、水供給手段88がインゴッド10の第1の端面12と十分な距離があり接触しない位置まで上昇させると共に、旋回アーム86を回転して、
図5(a)に示すように、剥離確認手段87、水供給手段88をインゴット10の第1の端面12上に移動させる。次いで、上記の剥離確認手段87に装着された図示を省略する近接センサの作用により、インゴット10の第1の端面12の高さ位置が検出され、該第1の端面12から所定の高さ位置(例えば2mm)に、同一の高さに設定された剥離確認手段87及び水供給手段88の下面を位置付ける。次いで、上記したシリンダ72により旋回アーム76を回転して、
図5(a)に示すように、超音波手段78をインゴット10の第1の端面12上に位置付ける。なお、超音波手段78を旋回させる際には、予め剥離確認手段87によってインゴット10の第1の端面12の高さが検出されて制御手段100に記憶されており、該記憶された情報に基づいて、シリンダ72を作動して超音波手段78の高さ位置が調整され、インゴット10の第1の端面12から該超音波手段78の下面78aまでの高さは、上記の剥離確認手段87及び水供給手段88と同様又はそれ以下の高さ位置(例えば1mm)になるように設定される。
【0029】
上記したように、剥離確認手段87、水供給手段88、及び超音波手段78をインゴット10の第1の端面12上に位置付けたならば(
図5(b)を参照)、水供給手段88から、インゴット10の第1の端面12上に毎分3リットルの水89を供給する。このとき供給される水89の量は、超音波手段78の下面78aとインゴット10の第1の端面12との間、及び剥離確認手段87の下面とインゴット10の第1の端面12との間に、水89の層が形成される量である。該水89の供給量は、超音波手段78の下面78aとインゴット10の第1の端面12との間、及び剥離確認手段87の下面とインゴット10の第1の端面12との間の寸法に応じて適宜変更される。
【0030】
上記したように、水供給手段88から十分な量の水89が供給されて水89の層が形成されている状態で、保持テーブル64を
図5に矢印R1で示す方向に回転させ、超音波手段78の下面78aから超音波を発振して、インゴット10の第1の端面12の全域に超音波を付与する。該超音波を付与している間、上記の剥離確認手段87を作動してインゴット10の第1の端面12の高さ位置の変化を検出する。上記した超音波をインゴット10の第1の端面12に付与することで、水89を介してインゴット10の第1の端面12に超音波が伝達して剥離層40のクラック44が伸長し、該剥離層40を起点としたインゴット10の剥離が進むと、インゴット10の第1の端面12の高さ位置が上方に変化する。ここで、本実施形態では、ウエーハ搬出手段90を使用して、インゴット10の第1の端面12側からウエーハを搬出する前に、搬出すべきウエーハがインゴット10から脱落して損傷することを防止すべく、生成すべきウエーハがインゴット10から脱落せず、且つウエーハ搬出手段90によってウエーハを搬出可能な状態となる剥離状態を検出する。より具体的には、ウエーハがインゴット10から完全に剥離して脱落する高さの変化よりも小さい剥離開始時の高さの変化(例えば5~10μmに設定)を剥離確認手段87によって検出する。なお、上記した超音波の付与の開始から該剥離開始が検出されるまでの時間は、概ね20~30秒程度である。
【0031】
上記したように、剥離確認手段87によって、剥離層40を起点とする剥離開始を確認したならば、水供給手段88、超音波手段78、剥離確認手段87の作動を停止すると共に上記した退避位置に位置付ける。該退避位置は、例えば、
図4において、水供給手段88、超音波手段78、及び剥離確認手段87が位置付けられている位置であり、ウエーハ搬出手段90の吸引パッド95の昇降に支障がない位置である。次いで、
図6に示すように、ウエーハ搬出手段90の吸引パッド95を下降して、インゴット10の第1の端面12に吸引パッド95の吸引面95aを当接し、図示を省略する吸引手段を作動して、上記した吸引口96から空気を吸引して吸引面95aに負圧を生成し、該吸引面95aによってインゴット10の第1の端面12を吸引する。次いで、該ウエーハ搬出手段90の吸引パッド95を上昇させることにより、
図7に示すように、剥離層40によってその厚みが規定されたウエーハ19がインゴット10の剥離層40から剥離されて搬出される(
図7では、説明の都合上ウエーハ搬出手段90の吸引パッド95は省略している)。ウエーハ19が搬出されたインゴット10の新たな第1の端面12’は、上記した剥離層形成加工が施されていることにより、粗な剥離面となっており、新たなウエーハ19を生成する前に、研磨手段によって研磨され、上記した剥離層形成加工が実施可能な程度の鏡面に仕上げられる。
【0032】
インゴット10から搬出されたウエーハ19は、その他の図示を省略する搬送機構により次工程に搬送されるか、又は図示を省略する収容容器に収容される。
【0033】
上記した実施形態によれば、剥離確認手段によって生成すべきウエーハの適切な剥離のタイミングを知ることで、ウエーハ搬出手段90によってインゴットから生成すべきウエーハを確実に搬出することができ、ウエーハが脱落して損傷するという問題が解消する。
【符号の説明】
【0034】
10:インゴット
12:第1の端面
13:周面
14:第1のオリエンテーションフラット
15:第2のオリエンテーションフラット
16:中心
18:垂線
19:ウエーハ
20:サブストレート
30:レーザー加工装置
32:レーザー光線照射手段
34:集光器
40:剥離層
42:改質部
44:クラック
50:剥離装置
51:基台
51A:案内レール
60:保持手段
61:可動板
62:支柱
64:保持テーブル
64a:吸着チャック
65:モータ
66:ボールねじ
67:移動手段
70:第1位置付け手段
72:シリンダ
74:昇降ロッド
76:旋回アーム
78:超音波手段
78a:下面
80:第2位置付け手段
82:シリンダ
84:昇降ロッド
86:旋回アーム
87:剥離確認手段
88:水供給手段
89:水
90:ウエーハ搬出手段
91:垂直部
92:水平部
93:シリンダ
94:昇降ロッド
95:吸引パッド
95a:吸引面
96:吸引口
100:制御手段