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特開2023-170407金属蒸着用ポリエチレン系フィルム、金属蒸着フィルム、および金属蒸着フィルムを用いたラミネートフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170407
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】金属蒸着用ポリエチレン系フィルム、金属蒸着フィルム、および金属蒸着フィルムを用いたラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231124BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082137
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上妻 智也
(72)【発明者】
【氏名】西尾 省治
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB55
3E086CA01
3E086CA28
4F100AB10C
4F100AK05E
4F100AK06A
4F100AK51D
4F100AK51G
4F100AK62A
4F100AK62B
4F100AK63A
4F100AK63J
4F100AL01A
4F100AL01B
4F100AL01J
4F100AL05A
4F100AL05G
4F100AT00
4F100BA02
4F100BA02A
4F100BA02B
4F100CB02D
4F100CB02G
4F100EC182
4F100EC18D
4F100EH662
4F100EH66C
4F100GB15
4F100JK06C
4F100JK06D
4F100JK06E
4F100JN24
(57)【要約】
【課題】 ガスバリア性および低温シール性に優れ、リサイクルが可能なラミネートフィルムを提供する。
【解決手段】 (A)層および(B)層の少なくとも2層以上を含む金属蒸着用ポリエチレン系フィルムであって、(A)層が下記1)~3)の要件を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物からなり、(B)層が下記4)~6)の要件を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物からなり、SR1-SR2が0.2以上である、金属蒸着用ポリエチレン系フィルム。
1)密度:880~920kg/m
2)235℃で測定したスウェル比(SR1)が2.0以上
3)脂肪酸アミドが500ppm未満
4)密度:920~950kg/m
5)235℃で測定したスウェル比(SR2)が1.0~2.0
6)脂肪酸アミドが200ppm未満
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)層および(B)層の少なくとも2層以上を含む金属蒸着用ポリエチレン系フィルムであって、(A)層が下記1)~3)の要件を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物からなり、
(B)層が下記4)~6)の要件を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物からなり、
かつ、(A)層のスウェル比(SR1)と(B)層のスウェル比(SR2)の差(SR1-SR2)が0.2以上である、金属蒸着用ポリエチレン系フィルム。
1)密度:880~920kg/m
2)235℃で測定したスウェル比(SR1)が2.0以上
3)脂肪酸アミドが500ppm未満
4)密度:920~950kg/m
5)235℃で測定したスウェル比(SR2)が1.0~2.0
6)脂肪酸アミドが200ppm未満
【請求項2】
(B)層を構成する樹脂組成物に脂肪酸アミドが含まれていない、請求項1に記載の金属蒸着用ポリエチレン系フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属蒸着用ポリエチレン系フィルムの(B)層表面に金属蒸着層を有する、金属蒸着フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の金属蒸着フィルムの金属蒸着層上に、ポリウレタン接着剤、高密度ポリエチレンからなる延伸フィルムの順で積層されているラミネートフィルム。
【請求項5】
ラミネートフィルムに占めるポリウレタン系接着剤の重量比率が0.1~5重量%である、請求項4に記載のラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属蒸着用ポリエチレン系フィルム、金属蒸着フィルム、および金属蒸着フィルムを用いたラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属蒸着を施したプラスチックフィルムは、酸素等のガスバリア性や遮光性に優れるため、食品等の包装材料として広く用いられている。金属蒸着したポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムは、PETフィルムやナイロンフィルム等と積層されたラミネートフィルムとして用いられることが多い。
【0003】
近年、廃棄プラスチックの削減が強く求められるようになり、包装材料のマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが注目されている。しかし、上記のようなラミネートフィルムは、マテリアルリサイクルした樹脂の物性を悪化させることが知られており、またケミカルリサイクルにおいても純度の高い化学基礎原料を得ることができず、焼却や埋立により処理されてきた。
【0004】
このような状況の中、単一素材からなるラミネートフィルムが検討されており、モノマテリアル包装と言われている。ポリエチレン系モノマテリアル包装として、延伸ポリエチレンフィルムと無延伸ポリエチレンフィルムからなるラミネートフィルム(例えば、特許文献1)や、ポリエチレンフィルムの間に金属蒸着層を設けたガスバリアに優れるラミネートフィルム(例えば、特許文献2)が提案されている。
【0005】
しかしながら、延伸ポリエチレンフィルムは、従来使用されてきたPETフィルムやナイロンフィルムに比べ耐熱性に劣るため、無延伸フィルムには低温シール性が必要となるが、低温シール性を向上させるとフィルムの滑性や抗ブロッキング性が悪化するといった課題があった。また、滑性や抗ブロッキング性を高めるために添加する滑剤は蒸着膜とポリエチレンフィルムとの接着性を損なうため添加量が制限され、満足する性能は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開1985-171149号公報
【特許文献2】特開2020-055163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性および低温シール性に優れ、リサイクルが可能なラミネートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の溶融特性を示す樹脂組成物層とエチレン・α-オレフィン共重合体層からなるフィルムが上記課題の全てを解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の各態様は、以下の[1]~[5]である。
[1] (A)層および(B)層の少なくとも2層以上を含む金属蒸着用ポリエチレン系フィルムであって、(A)層が下記1)~3)の要件を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物からなり、
(B)層が下記4)~6)の要件を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物からなり、
かつ、(A)層のスウェル比(SR1)と(B)層のスウェル比(SR2)の差(SR1-SR2)が0.2以上である、金属蒸着用ポリエチレン系フィルム。
【0010】
1)密度:880~920kg/m
2)235℃で測定したスウェル比(SR1)が2.0以上
3)脂肪酸アミドが500ppm未満
4)密度:920~950kg/m
5)235℃で測定したスウェル比(SR2)が1.0~2.0
6)脂肪酸アミドが200ppm未満
[2] (B)層を構成する樹脂組成物に脂肪酸アミドが含まれていない、上記[1]に記載の金属蒸着用ポリエチレン系フィルム。
[3] 上記[1]又は[2]に記載の金属蒸着用ポリエチレン系フィルムの(B)層表面に金属蒸着層を有する、金属蒸着フィルム。
[4] 上記[3]に記載の金属蒸着フィルムの金属蒸着層上に、ポリウレタン接着剤、高密度ポリエチレンからなる延伸フィルムの順で積層されているラミネートフィルム。
[5] ラミネートフィルムに占めるポリウレタン系接着剤の重量比率が0.1~5重量%である、上記[4]に記載のラミネートフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸着膜の接着強度、金属光沢を損なわず、低温シール性が非常に良好であり、スリップ性、抗ブロッキング性が優れた金属蒸着用ポリエチレン系フィルム、金属蒸着フィルムを得ることができ、リサイクルが容易なラミネートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の一態様である金属蒸着用フィルムは、(A)層および(B)層の少なくとも2層以上を含む。
【0014】
(A)層は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物からなる。
【0015】
(A)層に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素数が3~14のα-オレフィンを共重合することにより得られる。α-オレフィンの具体例を示せばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ノネン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。かかるコモノマー含量は特に限定するものではないが、0.1~10モル%が好ましい。
【0016】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法は、特に限定されず、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができ、低温シール性と抗ブロッキング性に優れるメタロセン触媒を用い重合したエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロン-L、ニポロン-Z、LUMITACの商品名で各々市販されている。
【0017】
またエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、その密度(JIS K6922-1)が880~930kg/m、好ましくは880~920kg/mである。該共重合体の密度が880kg/m未満では、抗ブロッキング性が悪化するため好ましくなく、930kg/mを越えると低温ヒートシール性が悪くなり包装材料の高速生産性に欠けるため好ましくない。
【0018】
本発明の(A)層に用いられる高圧法低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合により製造されたポリエチレンである。市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。
【0019】
(A)層を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物の密度は、880~920kg/m、好ましくは880~910kg/mである。該樹脂組成物の密度が880kg/m未満では、抗ブロッキング性が悪化するため好ましくなく、920kg/mを超えると低温ヒートシール性が悪くなり包装材料の高速生産性に欠けるため好ましくない。
【0020】
(A)層を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体及び高圧法低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物は、235℃で測定したスウェル比(SR1)が2.0以上、好ましくは2.1以上である。SR1が2.0未満の場合、抗ブロッキング性が悪化するため好ましくない。SR1の上限は特に限定されないが、通常2.5が製造限界である。スウェル比は、JIS K6922-1(1997年)で使用されるメルトインデクサーを用い、温度235℃、押出量3g/分の条件にて装置に充填された樹脂をオリフィスより押出し、オリフィス直下に設置したイソプロパノールを入れたメスシリンダーでストランド状の押出物を採取し、ストランドの径(D)をメルトインデクサーのオリフィス径(D)で除すことにより得られる。
【0021】
(A)層を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物には、脂肪酸アミドが500ppm未満添加されていてもよい。脂肪酸アミドの添加量が500ppmを超えるとフィルム成形の際に(B)層表面に脂肪酸アミドが転写され、その後の蒸着加工において蒸着された金属と(B)層表面との接着性が悪化するため好ましくない。脂肪酸アミドは、特に限定されるものではないが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミドが例示され、エルカ酸アミドが少量で滑性に優れるため好ましい。
【0022】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレンの配合割合は、エチレン・α-オレフィン共重合体40~90重量%、高圧法低密度ポリエチレン10~60重量%が好ましく、より好ましくはエチレン・α-オレフィン共重合体50~80重量%、高圧法低密度ポリエチレン20~50重量%である。エチレン・α-オレフィン共重合体がこの範囲より少ない場合はヒートシール強度や引裂強度、引張強度、伸び、耐衝撃強度等の機械的強度が低下する場合があり、この範囲より多いとフィルム成形性が悪化する場合がある。
【0023】
(B)層は、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物からなる。
【0024】
(B)層に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素数が3~14のα-オレフィンを共重合することにより得られる。α-オレフィンの具体例を示せばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ノネン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。
【0025】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の製造方法は、特に限定されず、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができ、蒸着工程における耐熱性に優れることからチーグラー触媒を用い重合したエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロンハード、ニポロン-L、ニポロン-Zの商品名で各々市販されている。
【0026】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、高圧法低密度ポリエチレンが添加された樹脂組成物であってもよい。
【0027】
またエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物は、その密度(JIS K6922-1)が920~950kg/m、好ましくは925~940kg/mである。該共重合体の密度が920kg/m未満では、蒸着工程における耐熱性が不足し金属光沢性やガスバリア性が悪化するため好ましくなく、950kg/mを超えると得られた金属蒸着用フィルムのカールが大きくなるため好ましくない。
【0028】
(B)層を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物は、235℃で測定したスウェル比(SR2)が1.0~2.0、好ましくは1.2~1.9である。SR2が1.0未満の場合、フィルム成形性が悪化するため好ましくなく、2.0を超えると金属光沢性が悪化するため好ましくない。スウェル比は、JIS K6922-1(1997年)で使用されるメルトインデクサーを用い、温度235℃、押出量3g/分の条件にて装置に充填された樹脂をオリフィスより押出し、オリフィス直下に設置したイソプロパノールを入れたメスシリンダーでストランド状の押出物を採取し、ストランドの径(D)をメルトインデクサーのオリフィス径(D)で除すことにより得られる。
【0029】
また、該SR1と該SR2の差(SR1-SR2)は0.2以上、好ましくは0.3以上である。この差が0.2未満であると得られたラミネートフィルムの金属光沢性、ガスバリア性、接着性、低温シール性、滑性、抗ブロッキング性を満足することができないため好ましくない。
【0030】
(B)層を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を含む樹脂組成物には、脂肪酸アミドが200ppm未満添加されていてもよい。脂肪酸アミドの添加量が200ppmを超えると蒸着加工において蒸着された金属と(B)層表面との接着性が悪化するため好ましくない。脂肪酸アミドは、特に限定されるものではないが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミドが例示され、エルカ酸アミドが少量で滑性に優れるため好ましい。
【0031】
なお、(A)層又は(B)層には、金属光沢性や接着性、低温シール性を損なわない範囲でシリカ、炭酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム等の無機粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド等のポリマー粒子、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、ヒドロキシ脂肪酸アミン、アミノ脂肪酸ナトリウム塩等の有機物、その他公知のスリップ剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤・吸収剤、核剤を添加しても良い。
【0032】
また、本発明を構成する(A)層と(B)層の厚みは、特に限定されるものではなく、それぞれ5~80μmが例示される。(A)層と(B)層の厚み比率は、蒸着加工性に優れることから、1:1~5:1が好適である。
【0033】
金属蒸着用ポリエチレンフィルムの成形方法は、特に限定されるものではないが、公知のインフレーションフィルム成形、Tダイキャスト成形が例示され、蒸着加工性と抗ブロッキング性に優れることからインフレーションフィルム成形が好ましい。
【0034】
上記成形によって得られたフィルムの(B)層表面に金属蒸着を施す前に蒸着強度を増大させるための公知の方法が採用できる。これら公知の方法を具体的に開示すれば、該フィルムにコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施す方法等が挙げられる。上記表面処理の場合は放電後のJIS K6768で測定したぬれ指数が37dyne/cm以上となるように処理するのが好ましく、39dyne/cm以上が特に好ましい。
【0035】
本発明の一態様である金属蒸着フィルムは、上記金属蒸着用ポリエチレン系フィルムの(B)層表面に金属蒸着層を有する。
【0036】
蒸着用フィルムに金属を蒸着する方法は、特に限定するものではなくバッチ式または連続式真空蒸着で電熱加熱、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビーム等の公知の手段を用いることができる。このように得られる蒸着フィルムの蒸着層の厚みは接着性、耐久性、経済性の点から一般的には数十~数百オングストロームである。
【0037】
なお、蒸着させる金属はたとえばアルミニウム、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、クロム、チタン、セレン、ゲルマニウム、スズ等が挙げられるが、作業性、光沢、安全性等からアルミニウムが好ましい。
【0038】
本発明の一態様であるラミネートフィルムは、上記金属蒸着フィルムの金属蒸着層上に、ポリウレタン接着剤、高密度ポリエチレンからなる延伸フィルムの順で積層されている。
【0039】
ラミネートフィルムを構成するポリウレタン接着剤は、公知のドライラミネート用接着剤、押出ラミネート用アンカーコート剤を使用することができる。ポリウレタン系接着剤は、分子内に少なくとも2個以上の水酸基を有する少なくとも1種以上のポリオール成分と分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する少なくとも1種以上のポリイソシアネート成分及び/又はジイソシアネートから構成される接着剤であることが好ましい。ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどから適宜選択することができる。ジイソシアネートとしては、4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネートジフェニルメタン、1,5-ジイソシアネートナフタリン、4,4’-ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン、1,4-ジイソシアネートベンゼン、及び/又は2,4-もしくは2,6-ジイソシアネートトルエンなどの芳香族ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,10-ジイソシアネートデカン、1,3-ジイソシアネートシクロペンタン、1,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-3もしくは-5-イソシアネートメタンシクロヘキサンなどの脂肪族および脂環式ジイソシアネートを例示することができる。ポリイソシアネート成分は、これらのジイソシアネート単量体から製造することができる。このようなポリウレタン接着剤は、適宜市販品の中から選択することができ、東ソー(株)から商品名ニッポランとして販売されている。
【0040】
ラミネートフィルムを構成するポリウレタン系接着剤は、ラミネートフィルム全体の重量に占める比率が0.1~5重量%であるとリサイクル性に優れるため好ましい。
【0041】
ラミネートフィルムを構成する高密度ポリエチレンからなる延伸フィルムは、特に限定はなく、用途に応じ適時選択される。該延伸フィルムの延伸方向は特に限定はなく、MD方向の一軸延伸、TD方向の一軸延伸、MD及びTD方向の二軸延伸が例示される。また、延伸方法についても特に限定はなく、テンター延伸やチューブラー延伸、ロール延伸などが例示される。また、高密度ポリエチレンを含む単層フィルムでもよく、多層フィルムでもよい。
【0042】
このような延伸フィルムを構成する高密度ポリエチレンについても特に限定はないが、熱シール時の耐熱性に優れることから、JIS K6922-1(1997年)により測定された密度が945~980kg/mであることが好ましい。
【0043】
また、延伸フィルムを構成する高密度ポリエチレンのJIS K6922-2(1997年)により測定した溶融温度は、熱シール時の耐熱性に優れることから、130~160℃の範囲が好ましい。
【0044】
このような延伸フィルムは市販品の中から便宜選択することができ、例えば東京インキ(株)からハイブロンの商品名で、フタムラ化学(株)からPE3Kの商品名で、デンカ(株)からカラリヤンの商品名で各々市販されている。
【0045】
延伸フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、20~50μmの範囲にあると、剛性、ヒートシール外観に優れるため好ましい。
【0046】
ラミネートフィルムには、金属蒸着フィルム、ポリウレタン系接着剤、高密度ポリエチレンを含む延伸フィルム以外の層が存在していても構わない。例えば、ポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコール等のガスバリア性コーティング剤、印刷インキ等が挙げられる。この層は、ラミネートフィルム全体に占める重量比率が5%未満であることが好ましい。
【0047】
ラミネートフィルムは、食品や飲料、医薬品、サニタリー用品、洗剤等の包装材料として好適に使用することができる。
【実施例0048】
次に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお実施例および比較例における性能の測定は下記の方法によった。
【0049】
(1)メルトマスフローレート(MFR)
メルトインデクサー(宝工業製)を用いてJIS K6922-1(1997年、190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定した。
【0050】
(2)スウェル比(SR)
JIS K6922-1(1997年)で使用されるメルトインデクサーを用い、温度235℃、押出量3g/分の条件にて装置に充填された樹脂をオリフィスより押出し、オリフィス直下に設置したイソプロパノールを入れたメスシリンダーでストランド状の押出物を採取し、ストランドの径(D)をメルトインデクサーのオリフィス径(D)で除した値(D/D)を算出し、スウェル比とした。
【0051】
(3)密度
JIS K6922-1(1997年)に準拠し測定した。
【0052】
(4)ヒートシール強度
ホットタックテスター(テスター産業製)を用い、ラミネートされたフィルムの(A)層同士を接触させ、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒にて上下加熱でヒートシールした後、引張試験機(ORIENTEC製 テンシロンRTE-1210)を用い、サンプル幅15mm、300mm/分の引張速度にて、T字剥離したときの剥離強度を測定した。
【0053】
(5)ブロッキング強度
ラミネートされたフィルムの(A)層同士を重ね、その上に2cm×2cm四方のガラス板を乗せ、1kgの荷重をかけ40℃×24時間放置する。常温になるまで空冷した後、引張試験機(ORIENTEC製 テンシロンRTE-1210)を用い、300mm/分の引張速度にて、剪断剥離したときの剥離強度を測定した。2N/4cm以下であれば抗ブロッキング性に優れていると評価した。
【0054】
(6)蒸着強度
金属蒸着表面にポリウレタン系接着剤を2g/mの厚みで塗布し、その上に15μm厚みの二軸延伸ナイロンフィルムを貼り合わせた後、40℃で48時間エージングした。その後、引張試験機(ORIENTEC製 テンシロンRTE-1210)を用い、サンプル幅15mm、300mm/分の引張速度にて、T字剥離したときの剥離強度を測定した。通常、蒸着基材フィルムと蒸着層間で剥離する。
【0055】
(7)蒸着光沢
金属蒸着面を測定面とし、JIS K7136に準拠し測定した。
【0056】
(8)静摩擦係数
スリップテスター(東洋精機製)を用いて、JIS K7125(1999年)に準拠し測定した。
【0057】
実施例1
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)としてMFRが4.0g/10分、密度が905kg/mであるエチレン・α-オレフィン共重合体(東ソー(株)製 商品名二ポロン-Z HF310R)を70重量%、MFRが1.6g/10分、密度が919kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 360)を30重量%、さらにこれらの混合樹脂に対してエルカ酸アミドを200ppmと抗ブロッキング剤を9000ppm添加した樹脂組成物を、(A)層を形成する55mmφ押出機へ供給し、同時にエチレン・α-オレフィン共重合体(B)としてMFRが1.6g/10分、密度927kg/mであるエチレン・α-オレフィン共重合体(東ソー(株)製 商品名二ポロン-Z TZ250B)と、抗ブロッキング剤(東ソー(株)製 商品名二ポロン-L BL81MB)を3000ppm添加した混合物を、(B)層を形成する45mmφ押出機に供給し、それぞれの押出機に連結した2.0mmのスリットを有する直径75mmの環状ダイからなるインフレーション成形機(プラコー(株)製)を用いて、樹脂温度170℃、ブロー比2.3、(A)層および(B)層の厚み比率が1:1になる条件で溶融押出後空冷し、(B)層表面にコロナ放電処理を施した後、速度10m/分で巻き取り、厚み40μm、処理面の濡れ指数が40dye/cmの筒状の金属蒸着用ポリエチレン系フィルムを得た。
【0058】
次に得られたフィルムを真空蒸着装置にセットし、10-4torr以下の真空下でフィルムのコロナ処理面にアルミニウム蒸着を施して蒸着膜の厚みが450オングストロームの蒸着フィルムを得た。
【0059】
続いて、コロナ処理面に以下に示す比率で配合したポリウレタン系接着剤を塗布し溶剤を乾燥させた厚さ25μmの高密度ポリエチレン延伸フィルムをラミネートし、高密度ポリエチレン延伸フィルム、ポリウレタン系接着剤、アルミニウム、ポリエチレン系フィルム((B)層、(A)層)の順に積層されてなるラミネートフィルムを得た。
ポリウレタン系接着剤の配合:タケラックA3210(15部)+タケネートA3072(5部)+酢酸エチル(140部)
タケラックA3210、タケネートA3072はいずれも三井化学ポリウレタン(株)製
接着剤厚み:0.2μm
このラミネートフィルムの評価結果を表1および表2に示す。低温シール性、蒸着光沢に優れ、かつ抗ブロッキング性に優れた蒸着フィルムを得ることができた。
【0060】
実施例2
(A)層のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレンの配合割合を60重量%/40重量%としたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。低温シール性、蒸着光沢に優れ、かつ抗ブロッキング性に優れたラミネートフィルムを得ることができた。
【0061】
実施例3
エルカ酸アミドの添加量を100ppmとしたこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。低温シール性、蒸着光沢に優れ、かつ抗ブロッキング性に優れたラミネートフィルムを得ることができた。
【0062】
実施例4
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)をMFRが2.0g/10分、密度が910kg/mであるエチレン・α-オレフィン共重合体(東ソー(株)製 商品名二ポロン-Z HF210K)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。低温シール性、蒸着光沢に優れ、かつ抗ブロッキング性に優れたラミネートフィルムを得ることができた。
【0063】
比較例1
高圧法低密度ポリエチレンをMFRが1.0g/10分、密度が924kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 176R)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを得たが、抗ブロッキング性が劣っていた。
【0064】
比較例2
(A)層にMFRが1.8g/10分、密度が927kg/mのエチレン・α-オレフィン共重合体と、MFRが1.0g/10分、密度が924kg/mの高圧法低密度ポリエチレンが80重量%/20重量%で配合された樹脂組成物(東ソー(株)製 商品名二ポロン-Z TZ250B)を使用し、エルカ酸アミドを添加せず、抗ブロッキング剤を3000ppm添加した以外は比較例1と同様にしてフィルムを得たが、低温シール性が劣っていた。
【0065】
比較例3
(A)層にエルカ酸アミドを750ppm添加した以外は比較例1と同様にしてフィルムを得たが、蒸着強度が劣っていた。
【0066】
比較例4
(B)層に実施例1のA層に用いたエルカ酸アミドを添加していないエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレンの樹脂組成物を使用した以外は比較例1と同様にしてフィルムを得たが、蒸着面光沢と蒸着強度が劣っていた。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】