(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170419
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】成形用又は成型用材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/04 20060101AFI20231124BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20231124BHJP
B29B 13/10 20060101ALI20231124BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20231124BHJP
B02C 18/00 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
B29B17/04 ZAB
C08J11/06
B29B13/10
B29B9/06
B02C18/00 106B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082161
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】千手 康弘
【テーマコード(参考)】
4D065
4F201
4F401
【Fターム(参考)】
4D065CA16
4D065DD04
4D065DD18
4D065EB14
4D065ED22
4D065EE02
4F201AA03
4F201AC03
4F201AR12
4F201BA04
4F201BC01
4F201BC07
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4F201BP06
4F201BP12
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4F401AA10
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4F401AC10
4F401AD02
4F401BA13
4F401BB11
4F401CA16
4F401CA79
4F401EA59
4F401FA10Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラスチックフィルムが複数のフィルムを積層した積層フィルムであったり印刷層を有するフィルムである場合、積層フィルムを容易に単層に分離・回収可能であり、印刷層を容易に剥離可能な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、プラスチックフィルム由来の樹脂を1mm以下に粉砕する工程を有する、成形用又は成型用材料の製造方法である。また、本発明は、プラスチックフィルム由来の樹脂を含む成形用又は成型用材料であって、1mm以下の粉砕物である成形用又は成型用材料である。また、本発明は、プラスチックフィルム由来の樹脂を含む成形用又は成型用材料であって、重量平均分子量(Mw2)が450000以下である成形用又は成型用材料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム由来の樹脂を1mm以下に粉砕する工程を有する、成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項2】
粉砕後の成形又は成型材料の重量平均分子量(Mw2)が、粉砕前のプラスチックフィルム由来の樹脂の重量平均分子量(Mw1)よりも小さい、請求項1に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項3】
前記プラスチックフィルム由来の樹脂がオレフィン系樹脂を少なくとも含有する請求項1又は2に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項4】
粉砕後の成形又は成型材料の重量平均分子量(Mw2)が450000以下である請求項3に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項5】
粉砕後の成形又は成型材料のメルトフローレートが5以上である請求項3に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項6】
前記プラスチックフィルムが、前記プラスチックフィルム層と、前記プラスチック層とは異なる他のプラスチック層、蒸着膜層及び金属箔層から選ばれる層と、を少なくとも有する積層フィルムであるか、又はプラスチックフィルム上にインキ層を有するフィルムである請求項1又は2に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項7】
前記粉砕後の粉砕物を剥離剤中で攪拌し、単層構造の粉砕物とする工程を有する、請求項6に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項8】
前記単層構造の粉砕物を、各層ごとに分別して回収する工程を有する、請求項7に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項9】
前記粉砕後の粉砕物を回収し、回収物を乾燥後にペレット状に加工する請求項1又は2に記載の成形用又は成型用材料の製造方法。
【請求項10】
プラスチックフィルム由来の樹脂を含む成形用又は成型用材料であって、1mm以下の粉砕物である成形用又は成型用材料。
【請求項11】
プラスチックフィルム由来の樹脂を含む成形用又は成型用材料であって、重量平均分子量(Mw2)が450000以下である成形用又は成型用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム由来の樹脂を用いた成形用又は成型用材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックごみの分別回収しているリサイクル率は、世界全体でみると製造されたプラスチックの9%である。ゴミとなった91%のプラスチックのうち、焼却処分されたものは12%であり、79%は埋め立て処分されたか、もしくは環境中に漏れ出ている(非特許文献1)。一般社団法人プラスチック循環利用協会及び経済産業省生産動態統計月報(2020年11月版)によると、国内では、850万トン/年の廃プラスチック(100%)のうち、マテリアルリサイクルは186万トン/年(22%)、ケミカルリサイクルとして27万トン/年(3%)がリサイクルされており、エネルギーリカバリーとしては726万トン/年(61%)となっている。また、国内のPETボトルのリサイクル率は、出荷されたPETボトルに対して約89%であり51万トン/年がマテリアルリサイクルされている。一方で、包装用フィルムのリサイクル率は約8.5%の24万トン/年に留まっている。
【0003】
包装用フィルムのリサイクル率が低い状態が続いている理由の一つに、積層されている包装用フィルムの分別回収システムの困難性があげられる。プラスチックをリサイクルするためには、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の異種のプラスチック材料が一体化された廃プラスチックを、材料ごとに分離して回収する必要がある。しかし、積層フィルムをはじめとするプラスチック製品の多くは、異種プラスチック材料が接着して積層されていることから、材料ごとに分離・回収することが困難な状況である。そのため、廃プラスチックを簡易に分離・回収可能なリサイクルシステムの構築が強く求められている。
【0004】
また、リサイクルされたプラスチック製品は、コストの観点から同じ製品に戻ることは難しく、基本的にはリサイクルするたびに劣化するため、品質が落ちた製品に生まれ変わらざるを得ない。リサイクルプラスチックの品質が落ちる理由としては、プラスチックにインキや顔料が不純物として混在していることがあげられる。しかし、多くのプラスチック製品はその表面に印刷加工が施されているため、リサイクル工程で脱色することが難しく、結果として再生プラスチック製品は着色している。このような顔料やインキなどを含んだ再生プラスチックは、着色のため商品価値が著しく低いだけではなく、不純物が起点となって物性的に劣化したプラスチックにしかならないのが実情であり、良品質の再生プラスチックを生み出すリサイクル方法も求められている。
【0005】
このような課題に対して、特許文献1~3には、印刷加工が施されたロールフィルムの表面から、インキを落とす方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Science Advances 19 Jul 2017:Vol. 3, no. 7, e1700782
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2015-520684号公報
【特許文献2】特表2016-509613号公報
【特許文献3】特表2018-514384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、射出成型品の樹脂のグレードは、フィルムの樹脂のグレードと比較し、その要求特性から重量平均分子量(Mw)は小さく、メルトフローレート(MFR)は高く設定されている。
【0009】
ここで、プラスチックフィルムをリサイクル用の樹脂として用いる場合、リサイクル用樹脂の物性は、基本的にプラスチックフィルムの物性と同じになる。例えば、特許文献1にはプラスチックフィルムを6~14mmに粉砕して、プラスチックフィルム由来の粉砕物をペレット状無色再生フィルムとして得ることが記載されているが、このペレット状の無色再生フィルムはプラスチックフィルムの物性を維持している。そのため、プラスチックフィルム由来の樹脂を用いる場合、フィルムグレードの物性をそのまま維持していることから、再度フィルム原料としてリサイクルする場合には問題はない。しかしながら、射出成型等により成型品に用いる場合には、分子量が大きすぎることに由来してMFRの数値が低くなる、すなわち加熱時の流動性が低いため、射出成型には適していない。そのため、プラスチックフィルムはリサイクル時にそのまま転用できない。転用する場合には、他の樹脂等と混合して物性を調整する必要があり、手間がかかるという問題点がある。また、他の樹脂として高いMFRの樹脂と混合する必要があり、このような樹脂としてバージン材を使用することが多いことから、最終的にリサイクル率が大幅に低下してしまうという問題もある。
【0010】
従来技術においては、特許文献1~3に記載のようにプラスチックフィルムからインキを落とすという課題についての検討がなされているのみであり、リサイクル樹脂の分子量やメルトフローレートといった物性について着目されてこなかった。
【0011】
また、近年は包装材の多様化に伴い、包装材の高機能性、インキ膜のプラスチック基材への密着性の向上、印刷物の高意匠性がより一層求められている。その結果、包装材やインキの種類の多様化が進み、それと同時に、インキ層の剥離はより困難となる状況である。例えば、複数のフィルムを積層した積層フィルム、あるいはフィルム上に印刷層を設けた後、接着剤層を介して他のフィルム等を重ね合わせてラミネートした積層体において、印刷層が複数のフィルムの間に設けられている(裏刷り)積層フィルムの場合、印刷層を除去するには複数のフィルムの分離が必要となるため、特許文献1~3に記載の方法ではインキを落とすことができず、インキの剥離はより困難となる。それらの多様な構成のプラスチックフィルムに対してインキを剥離できる方法が望まれている。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、プラスチックフィルム由来の樹脂の物性を変化させて、プラスチックフィルムを種々の成形品又は成型品に加工可能な成形用又は成型用材料、及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明が解決しようとする課題は、プラスチックフィルムが複数のフィルムを積層した積層フィルムであったり印刷層を有するフィルムである場合、積層フィルムを容易に単層に分離・回収可能であり、印刷層を容易に剥離可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プラスチックフィルムを粉砕することにより、プラスチックフィルム由来の樹脂の分子量を減少させることができ、樹脂のグレードをフィルムに求められるグレードから射出成型に求められるグレードへと物性変更できることを見出した。
【0015】
即ち本発明は、プラスチックフィルム由来の樹脂を1mm以下に粉砕する工程を有する、、成形用又は成型用材料の製造方法を提供する。
【0016】
また本発明は、プラスチックフィルム由来の樹脂を含む成形用又は成型用材料であって、1mm以下の粉砕物である成形用又は成型用材料を提供する。
【0017】
また、本発明は、プラスチックフィルム由来の樹脂を含む成形用又は成型用材料であって、重量平均分子量(Mw2)が450000以下である成形用又は成型用材料を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、プラスチックフィルム由来の樹脂の物性を変化させることができる。本発明により、樹脂のグレードをフィルムに求められるグレードから射出成型に求められるグレードへと所望の物性に変更可能であるため、プラスチックフィルム由来の樹脂をそのまま用いて、フィルムのみならず射出成型品等の種々の成形品又は成型品に加工可能である。
【0019】
また、本発明により、プラスチックフィルムが複数のフィルムを積層した積層フィルムであったり印刷層を有するフィルムである場合、フィルム面に印刷層がむき出しに設けられている(表刷り)積層フィルムのみならず、印刷層が複数のフィルムの間に設けられている(裏刷り)積層フィルムのような多様な構成のプラスチック積層体においても、プラスチック積層体を単層に分離することができ、且つインキ層を容易に剥離することができる。つまり、プラスチック積層体の種類を問わず、フィルムを単層に分離可能であり、且つインキ層を容易に剥離することができる。そのため、本発明により得られた成形用又は成型用材料は、高品質なリサイクルプラスチック原料として再利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、「成型」とは、射出成型のように、樹脂を型に入れて加工することをいう。一方、「成形」とは、樹脂を溶かしてフィルムなどを製造するように、型を使用せずに樹脂を加工することをいう。
<工程1について>
本発明の成形用又は成型用材料の製造方法は、プラスチックフィルム由来の樹脂を1mm以下に粉砕して、樹脂の物性を変更する工程(工程1)を有する。
【0021】
工程1において、プラスチックフィルムを1mm以下に粉砕する工程は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。プラスチックフィルムを乾式で粉砕しても、水又は洗浄剤中の湿式で粉砕してもよい。
【0022】
中でも、水又は洗浄液中で粉砕を行うことができる湿式粉砕機を使用することが好ましい。湿式粉砕機を使用した場合、プラスチックフィルムを効率的に粉砕することができ、また、プラスチックフィルムがインキ層を有する場合やラミネートされた積層フィルムの場合、各層に剥がすことが容易となる。
【0023】
なお、インキ層を有するプラスチックフィルム又は積層フィルムを用いる場合、工程1では、プラスチックフィルム又は積層フィルムは粉砕されていればよく、粉砕物はインキが完全に除去されていたり、完全に単層に剥離されていなくてもよい。工程1において積層体が粉砕されることにより、後述する工程2においてインキ層の除去や積層フィルムの剥離を容易に行える。
【0024】
(粉砕機)
工程1において用いられる粉砕機は、プラスチックフィルムを1mm以下に粉砕可能な機器であれば特に限定されない。
【0025】
工程1において好ましく用いられる湿式粉砕機の例の1つは、液体中の固形物を粉砕・分散・混合を同時に行うことが出来る湿式粉砕機である。具体的には剪断力及び/又は摩擦力より液体中の固形物を粉砕する機構を有するものが好ましい。中でも、圧縮、剪断、転がり摩擦、すりこぎ摩擦等によって、プラスチックフィルムに対して強力な潰す力を与えつつ粉砕できる機構を有するものが好ましい。このような粉砕機としては、磨砕機、湿式粉砕ポンプ、コロイドミル等が挙げられる。
【0026】
(磨砕機)
磨砕機は、液中で上下一組の石臼を回転させながら、石臼の間に投入された固形物をせん断や摩擦により粉砕する機構を有することが好ましく、水を流しながら固形物を微粉体状まで粉砕できるものが好ましい。
【0027】
上下一組の石臼の間隔を調整することにより粉砕物のサイズを調整可能であるが、通常1mm以下、500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下に微粉砕される。このように粉砕物のサイズを小さく粉砕することにより、プラスチックフィルム由来の樹脂の分子量を減少させることができ、MFRを高くすることができる。また、プラスチックフィルムが積層フィルムの場合、積層フィルムの各層が単層に分離した状態とすることができる。また、粉砕物の保存場所を小さくすることができ、在庫管理が容易となる。また、粉砕物から再生プラスチックを作製する際、圧縮機等を経由せずに混錬機へ投入できるため、工程を簡略化できる。一方、粉砕物のサイズの下限は、回収を容易にするために、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。なお、粉砕物のサイズは、粉砕物の最長径のサイズである。
【0028】
回転速度や、水流速度は特に制限されるものではない。
【0029】
具体的な磨砕機械としては、増幸産業株式会社製のスーパーマスコロイダー等が例示できる。
【0030】
(湿式粉砕ポンプ)
湿式粉砕ポンプは、液中で固形物を圧送しながら、固形物を固定刃と回転刃により粉砕する機構を有することが好ましく、より好ましい機構は、切刃、粉砕羽根車、シュラウドリング、グリッドの4点部品の組み合わせにより、3段階に粉砕される機構である。
【0031】
湿式粉砕ポンプにより、プラスチック積層体は3段階で粉砕される。プラスチック積層体は、固定刃の切刃と回転刃の粉砕羽根車の入り口のエッジによって荒切りされ、次いで軸流型の粉砕羽根車によって攪拌圧送され、一部のプラスチック積層体は固定刃のシュラウドリングの刃部に当たって切断される。粉砕羽根車を通った積層フィルムは格子との間でさらに細かく粉砕攪拌され、グリッドを通って加圧羽根車により加圧され、次工程に圧送される。
【0032】
圧送速度は特に限定されるものではないが、インキ層の剥離やプラスチック積層体を各層に分離する際の剥離と分離効率を考慮すると、0.03m3/min以上が好ましい。圧送速度の上限は特に限定されなく、装置の標準的な運転速度、例えば1.4m3/minでも十分に、インキの剥離とプラスチック積層体の単層への分離をすることが出来る。
【0033】
グリッド形状は特に限定されない。
【0034】
具体的な湿式粉砕ポンプとしては、ハスクバーナ・ゼノア社のKDシリーズ、ニクニ社のサンカッタシリーズ、古河産機システムズ社のディスインテグレータシリーズ、相川鉄工社のインクラッシャーシリーズ、三和ハイドロテック社のスキャッターなどが例示できる。
【0035】
(コロイドミル)
本発明で使用するコロイドミルは、粒子が液体中を浮遊している分散系において粒子サイズを低減するために使用される機械である。コロイドミルは、ロータとステータの組み合わせからなり、固定されたステータに対してロータは高速で回転する。高速回転により、生じる高レベルの剪断により液中の粒子サイズを小さくするために使用される。
【0036】
コロイドミルの粉砕部は、歯形状をした円錐台形状のロータと、ステータの組み合わせからなり、ロータとステータは吐出口に近づくにつれて狭くなるようなテーパ形状となっている。積層フィルムは、吐出口に近づくにつれて狭くなるリング状の間隙で、強力な剪断、圧縮、衝撃を繰り返し与えられ粉砕される。
【0037】
具体的なコロイドミルは、一般的にコロイドミルと呼称される分散機であれば特に限定されないが、IKA社のコロイドミルMKシリーズ、イワキ社のWCMシリーズ、マウンテック社のPUCコロイドミルシリーズ、ユーロテック社のキャビトロンなどが例示できる。
【0038】
工程1においてプラスチックフィルムを1mm以下に粉砕することにより、プラスチックフィルム由来の樹脂の物性を変更し、例えばフィルムに求められる樹脂グレードから射出成型に求められる樹脂グレードへと物性変更できる。プラスチックを1mm以下のサイズまで微粉砕することにより、高分子鎖の切断が鎖各所で起こるため、樹脂の重量平均分子量が小さくなり、メルトフローレートが高くなったり、引張試験における伸度等の機械物性が変化すると考えられる。
【0039】
また、工程1において、積層フィルムの一部又は全部を単層のフィルムに分離することができる。また、積層フィルムには、接着剤の他、商品名等の表示や装飾性を付与するための印刷インキ層を設けている場合が殆どであるが、印刷層は、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、インクジェット印刷機等を使用し、有機溶剤型印刷インキ、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキを印刷されている場合が多い。このようなインキ層が設けられたプラスチック積層体においては、インキ層をより効率的に剥離除去するために、水に洗浄成分や剥離成分を含有させた洗浄液中でプラスチック積層体を粉砕してもよい。水に洗浄成分や剥離成分を含有させた洗浄液中でプラスチック積層体を粉砕することにより、プラスチック積層体に設けられたインキ層の剥離除去とプラスチック積層体の単層分離とを同時に行うことができる。例えば、食品包装用をはじめとしたプラスチック積層フィルムに最も多く使用されているインキはグラビアインキやフレキソインキであるが、洗浄液を用いた湿式粉砕工程においては、該印刷インキ層も剥離させることができるため、効率的である。また、積層フィルムにはアルミニウム等の金属の箔や蒸着膜が積層している場合もあるが、本発明においては金属の箔や蒸着膜も剥離あるいは溶解させることができる。なお、粉砕により、積層体を構成する各層が単層に剥離されてもいいし、粉砕された積層体の一部が部分的に剥離した状態であってもよい。また、積層フィルムに設けられたインキ層は、工程1においてプラスチックフィルムから完全に除去される必要はなく、部分的に付着されていてもよいし、あるいは、インキ層から除去されなくてもよい。
【0040】
工程1において、水をそのまま用いて粉砕を行ってもよいし、水に無機塩基や界面活性剤等の洗浄あるいは剥離成分、又はその他の成分を含有させた洗浄液を用いて粉砕を行ってもよい。洗浄液は、以下にあげる成分を1種または2種以上を適宜に組合せて水に含有させたものを使用できる。洗浄液がアルカリ性である場合は粉砕機を傷める場合があるので、洗浄液は、粉砕機との相性やインキ層の剥離性の相性によって選択することが好ましい。
【0041】
(無機塩基)
工程1において使用可能な水性洗浄液として、水に無機塩基を含有させたものを用いることができる。無機塩基としては、具体的には水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが挙げられる。これらの無機塩基は、水性洗浄液全量に対して0.1~10重量%の濃度で含有するが、0.1重量%~5重量%の濃度がより好ましい。またpHは10以上が好ましい。
【0042】
(界面活性剤)
工程1において使用可能な水性洗浄液として、水に界面活性剤を含有させたものを用いることができる。界面活性剤は特に限定されるものではなく、公知の界面活性剤を使用できるが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0043】
ノニオン性界面活性剤としては一般的には、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などをあげることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーがあげられる。
【0044】
本発明においては、50重量%以上の水、及び、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を0.01重量%~5重量%含有する水性洗浄液であることが好ましい。
【0045】
R1-O-[CH2-CH(X1)-O]n1-H (1)
一般式(1)中、R1は直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はオクチルフェノール基を表し、n1は平均付加モル数を表し、X1は水素又は短鎖アルキル基を示す。
【0046】
さらに好ましくは、一般式(1)のうちR1が示す炭素原子数が10以上の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。炭素原子数は、10を超えて多いほどインキ剥離性がよく好ましい。具体的な炭素原子数は、炭素原子数10のデシル基、炭素原子数12のラウリル基、炭素原子数13のトリデシル基、炭素原子数14のミリスチル基、炭素原子数16のセチル基、炭素原子数18のオレイル基、ステアリル基があげられる。
【0047】
具体的な製品としては、第一工業製薬社製のノイゲンシリーズ,DSK NL-Dashシリーズ,DKS-NLシリーズ、日油社製のノニオンシリーズ、花王の社製エマルゲンシリーズ、ライオン社製のレオックスシリーズ,レオコールシリーズ,ライオノールシリーズなどのうち、一般式(1)であらわされるノニオン系界面活性剤のうちR1が示す炭素原子数が10以上であれば該当するが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤におけるHLB値は特に限定されるものではない。なお、ここでいうHLB値とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であり、グリフィン法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)で定義されるものである。
【0049】
前記一般式(1)で表されるノニオン系界面活性剤のうち、R1が示す炭素原子数が10以上でかつ、HLB値が12.5未満の具体的な界面活性剤は、第一工業製薬社では、ノイゲンXL-41、ノイゲンLF-40X、ノイゲンTDS-30、ノイゲンTDS-50、ノイゲンTDS-70、ノイゲンTDX-50、ノイゲンSD-30、ノイゲンSD-60、DKS NL-15、DKS NL-30、DKS NL-40、DKS NL-50、DKS NL-60、DKS NL-70、ノイゲンET-83、ノイゲンET-102、DSK Dash400、DSK Dash403、DSK Dash404、DSK Dash408、ノイゲンLP-55ノイゲンLP-70、ノイゲンET-65、ノイゲンET-95、ノイゲンET-115、ノイゲンET-69、ノイゲンET-89、ノイゲンET-109、ノイゲンET-129、ノイゲンET-149、日油社製では、ノニオンK-204、パーソフトNK-60、ノニオンP-208、ノニオンP-210、ノニオンE-202、ノニオンE-202S、ノニオンE-205、ノニオンE-205S、ノニオンS-202、ノニオンS-207、ノニオンEH-204、ノニオンID-203、ノニオンHT-505、ノニオンHT-507、ノニオンHT-510、ノニオンHT-512、花王社製では、エマルゲン102KG、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン210P、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409PV、エマルゲン705、エマルゲン707、ライオン社製では、レオックスCL-30、レオックスCL-40、レオックスCL-50、レオックスCL-60、レオコールNL-30C、レオコールTD-50、レオコールTD-70、レオコールSC-50、レオコールSC-70などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0050】
また、一般式(1)で表されるノニオン系界面活性剤のうち、R1の炭素原子数が10以上の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、かつHLB値が12.5以上の具体的な界面活性剤は、第一工業製薬社では、ノイゲンXL-61、ノイゲンXL-6190、ノイゲンXL-70、ノイゲンXL-80、ノイゲンXL-100、ノイゲンXL-140、ノイゲンXL-160、XL-400D、ノイゲンXL-1000、ノイゲンLF-60X、ノイゲンLF-80X、ノイゲンLF-100X、ノイゲンTDS-80、ノイゲンTDS-100、ノイゲンTDS-120、ノイゲンTDS-200D、ノイゲンTDS-500F、ノイゲンTDX-80、ノイゲンTDX-80D、ノイゲンTDX-100D、ノイゲンTDX-120D、ノイゲンSD-70、ノイゲンSD-80、ノイゲンSD-110、ノイゲンSD-150、DKS NL-80、DKS NL-90、DKS NL-100、DKS NL-110、DKS NL-180、DKS NL-250、DKS NL-450F、DKS NL-600F、ノイゲンET-160,ノイゲンET-170,ノイゲンET-190,DSK Dash410,ノイゲンLP-80、ノイゲンLP-100、ノイゲンLP-180、ノイゲンET-135、ノイゲンET-165、ノイゲンET-159、ノイゲンET-189、日油社製では、ノニオンK-220,ノニオンK-230,ノニオンK-2100W,パーソフトNH-90C、パーソフトNK-100、パーソフトNK-100C、ノニオンP-210、ノニオンP-213、ノニオンE-212、ノニオンE-215、ノニオンE-230、ノニオンS-215、ノニオンS-220、ノニオンB-250、ノニオンID-206、ノニオンID-209、ディスパノールTOC、ノニオンHT-515、ノニオンHT-518、花王社製では、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン130K、エマルゲン147、エマルゲン150、エマルゲン220、エマルゲン320P、エマルゲン350、エマルゲン420、エマルゲン430、エマルゲン709、エマルゲン1108、エマルゲン1118S-70,エマルゲン1135S-70,エマルゲン1150S-60,エマルゲン4085,エマルゲン2020G-HA,エマルゲン2025G、ライオン社製では、レオックスCL-90、レオックスCL-230、レオコールTD-90、レオコールTD-90D、レオコールTDA-90-25、レオコールTDN-90-80、レオコールTD-120、レオコールTD-200、レオコールTDA-400-75、レオコールSC-80、レオコールSC-90、レオコールSC-120、レオコールSC-150、レオコールSC-200、レオコールSC-300、レオコールSC-400などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0051】
一般式(1)のうちR1がオクチルフェノール基のとき、オクチルフェノールエトキシレートが好ましい。
【0052】
具体的な製品としては、ダウケミカル社TRITON(登録商標)シリーズ、ローディア社のIgepal CAシリーズ、シェルケミカルズ社のNonidet Pシリーズ、日光ケミカルズ社のNikkol OPシリーズがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
両性界面活性剤として具体的には、ベタイン型の両面活性剤が好ましく、例えば一般式(2a)で表される少なくとも1種の化合物を含有するアルキルカルボキシベタイン骨格又はアルキルアミドカルボキシベタイン骨格の両性界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0054】
R1-R2-N+(CH3)2CH2COO- (2a)
(一般式(2a)中、R1は水素又はC(=O)R3-NH-(R3は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)を示し、R2はアルキレン基、アルケニレン基を示す。)
一般式(2a)中、R1は水素原子を表すことが好ましい。
一般式(2a)で表される化合物は、一般式(2a-1)で表されるアルキルカルボキシベタイン骨格である両性界面活性剤であることが好ましい。
【0055】
CnH2n+1N+(CH3)2CH2COO- (2a-1)
(一般式(2a-1)中、nは平均付加モル数を示す。)
一般式(2a-1)において、nは8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、11以上であることが好ましい。
【0056】
一般式(2a)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンアノンBDF(登録商標)-R、ニッサンアノンBDF(登録商標)-SF、ニッサンアノンBDC-SF、ニッサンアノンBDL-SF、第一工業製薬社製では、アモーゲンCB-H、アモーゲンHB-C、新日本理化社製では、リカビオンB-200、リカビオンB-300、東邦化学工業社製では、オバゾリンCAB-30、オバゾリンISABなどがあげられる。また、一般式(1a-1)に該当する具体的な製品としては、第一工業製薬社製では、アモーゲンS、アモーゲンS-H、アモーゲンK、花王社製では、アンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、日油社製では、ニッサンアノンBF、ニッサンアノンBL、ニッサンアノンBL-SF、新日本理化社製では、リカビオンA-100、リカビオンA-200、リカビオンA-700、東邦化学社製では、オバゾリンLB、オバゾリンLB-SF、などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
また、ベタイン型の両性界面活性剤としては、イミダゾリニウムベタイン骨格を有するものでもよく、該当する具体的な製品としては日油社製では、ニッサンアノンGLM-R、ニッサンアノンGLM-R-LV、花王社製ではアンヒトール20Y-Bなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
また、両性界面活性剤としては、以下の一般式(2b)で表される界面活性剤であってもよい。
【0059】
R4-(NHC2H4)nb-N(R5)2 (2b)
(一般式(2b)中、R4は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、nbは0~5の整数を表し、R5は水素、-CH2COONa又は-CH2COOHを示すが、2つ存在するR5は同一であっても異なってもよく、少なくとも一つのR5は-CH2COONaを示す。)
一般式(2b)中、R4は直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、R4の炭素原子数は8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、12以上であることが好ましい。
【0060】
一般式(2b)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンアノンLG-R、ニッサンアノンLAなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
また、両性界面活性剤としては、以下の一般式(2c)で表されるアミンオキサイド型の界面活性剤であってもよい。
【0062】
R6-N+(CH3)2O- (2c)
(一般式(2c)中、R6は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
一般式(2c)中、 R6は一般式(2b)中、R4は直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、R4の炭素原子数は8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、12以上であることが好ましい。
【0063】
一般式(2c)に該当する具体的な製品としては、第一工業製薬社製では、アモーゲンAOL、花王社製ではアンヒトール20Nなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
カチオン性界面活性剤として具体的には、4級アンモニウム骨格のカチオン性面活性剤が好ましく、例えば一般式(3a)で表される少なくとも1種の化合物を含有する4級アンモニウム骨格のカチオン性界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0065】
R1-N+(R2R3)-R4 (3a)
(一般式(3a)中、R1は直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の-CH2-は-C(=O)-、-NH-又は-C(=O)-NH-で置換されてもよく、R2及びR3は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、R4は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基又はフェニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の末端の-CH3は、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されてもよい。)
一般式(3a)中、R1は、インキの剥離性をより高めるために、長鎖のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、具体的には炭素素原子数8~30のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数10~25のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数12~22のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。アルキル基又はアルケニル基は直鎖であっても分岐していてもよいが、直鎖であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
【0066】
R1は、アルキル基又はアルケニル基中の少なくとも一つ以上の-CH2-が-C(=O)-、-NH-又は-C(=O)-NH-で置換されてもよい。中でも、アルキル基又はアルケニル基中の少なくとも一つ以上の-CH2-が-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)で置換されていることが好ましく、アルキル基中の一つの-CH2-が-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)で置換されていることが好ましく、R1中にアミドプロピル骨格を有することがより好ましい。
【0067】
R2及びR3は直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示すことが好ましく、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表すことが好ましい。中でも、炭素原子数1~3直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
【0068】
R4は、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基又はフェニル基を示すことが好ましく、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表すことがより好ましい。また、アルキル基又はアルケニル基中の末端の-CH3は、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されていることが好ましい。
【0069】
R4の炭素原子数1~8であることが好ましく、1~5であることが好ましく、1~3であることが好ましく、1又は2を表すことがより好ましい。
【0070】
R4がメチル基を表す場合は、R2及びR3もメチル基を表し、一般式(3a)がアルキルトリメチルアンモニウム骨格を示すことが好ましい。
【0071】
また、R4がエチル基を表す場合は、エチル基中の末端の-CH3は、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されていることが好ましい。つまり、R4が-CH2-(C(=O)OHを表すか、若しくは、ベンジル基を表すことが好ましい。
一般式(3a)で表される化合物は、一般式(3a-1)で表される4級アンモニウム骨格のカチオン性界面活性剤が好ましい。
【0072】
CnH2n+1N+(CH3)2R4 (3a-1)
(一般式(3a-1)中、nは平均付加モル数を示し、R4は請求項3に記載の一般式(3a)中のR4と同じ意味を示す。)
一般式(3a-1aにおいて、nが示す炭素原子数は8以上が好ましい。炭素原子数は、8を超えて多いほどインキ剥離性がよく好ましい。具体的な炭素原子数は、炭素原子数8のオクチル基、炭素原子数9のノニル基、炭素原子数10のデシル基、炭素原子数11のウンデシル基、炭素原子数12のラウリル基、炭素原子数13のトリデシル基、炭素原子数14のミリスチル基、炭素数15のペンタデシル基本、炭素原子数16のセチル基、炭素原子数18のオレイル基、ステアリル基があげられる。
【0073】
R4の好ましい基は、一般式(3a)と同様である。
これらの4級アンモニウム骨格のカチオン性面活性剤は、ハロゲンと塩を形成した4級アンモニウム骨格塩型であることが好ましく、Cl-と塩を形成することが好ましいく、より好ましくはBr-と塩を形成することが好ましく、更に好ましくは、I-と塩を形成することが好ましい。ハロゲンと塩を形成した4級アンモニウム骨格塩は、ハロゲンの求核作用によりインキ膜の加水分解を促進することから、インキの剥離性を向上させると考えられる。
【0074】
中でも、塩化アルキルトリメチルアンモニウム型、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム型、塩化アルキルベンザルコニウム型の化合物が好ましい。
【0075】
一般式(3a)あるいは(3a-1)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンカチオンMA、ニッサンカチオンSA、ニッサンカチオンBB、ニッサンカチオンFB、ニッサンカチオンPB-300、ニッサンカチオンABT2-500、ニッサンカチオンAB、ニッサンカチオンAB-600、ニッサンカチオンVB-Mフレーク、ニッサンカチオンVB-F、ニッサンカチオン2-DB-500E、ニッサンカチオン2-DB-800E、ニッサンカチオン2ABT、ニッサンカチオン2-OLR、ニッサンカチオンF2-50R、ニッサンカチオンM2-100Rがあげられ、第一工業社製では、カチオーゲンTML、カチオーゲンTMP、カチオーゲンTMS、カチオーゲンDDM-PG、カチオーゲンBC-50、カチオーゲンTBBがあげられ、花王社では、コータミン24P、コータミン86Pコンク、コータミン60W、コータミン86W、サニゾールC、サニゾールB-50があげられ、ライオン社製では、リポガードC-50、リポガードT-28、リポガードT-30、リポガードT-50、リポガードT-800、リポガード16-29、リポガード16-50E、リポガード18-63、リポガード22-80、リポガードCB-50、リポガード210-80E、リポガード2C-75、リポガード2HP-75、リポガード2HPフレーク、リポガード2HT-75、リポガード2HTフレーク、リポガード20-75l、リポガード41-50、TMAC-50、TPAH-40、TBAB-50A、TBAB-100A、TBAH-40、リポガードPH-100、BTMAC-50、BTMAC-100A、BTEAC-50、BTEAC-100A、BTBAC-50A、などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
また、カチオン性界面活性剤は、1級~2級のアルカノールアミン骨格で表される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましく、モノアルカノールアミン骨格で表される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
1級のモノアルカノールアミンとしては、炭素原子数1~4の低級アルカノールであることが好ましく、具体的には、モノエタノールアミン、2-アミノイソブタノールなどがあげられ、2級のモノアルカノールアミンとしては、N-メチルエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、イソプロパノールアミンなどがあげられるが、例示以外の物質も適宜使用することができる。また、これらモノアルカノールアミン系化合物は1種を単独でまたは2種以上を適宜に組合せて使用でき、水に混合して使用することもできる。
これらのモノアルカノールアミン骨格のカチオン性面活性剤は、ハロゲンと塩を形成したモノアルカノールアミン塩型であることが好ましく、Cl-と塩を形成することが好ましい。
【0077】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。その添加量は水性洗浄液全量に対し5重量%以下の範囲が好ましく、2質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の下限値は特に限定されず、0質量%でもよいが、界面活性剤を含有する場合は0.1質量%以上であることが好ましい。
【0078】
(アルキレングリコールアルキルエーテル溶剤)
工程1において使用可能な水性洗浄液として、水にアルキレングリコールアルキルエーテル溶剤を含有させたものを用いることができる。好ましくは、一般式(4)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテル骨格を有する溶剤を20重量%以上含有する水性洗浄液であることが好ましい。
【0079】
R1-O-[CH2-CH(X)-O]n1-R2 (4)
(一般式(4)中、R1は炭素原子数1以上のアルキル基を、R2は炭素原子数1以上のアルキル基または水素を、n1は1~3の整数を、Xは水素又はメチル基を示す。)
一般式(4)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテルの中でさらに好ましくは、水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテルである。
【0080】
一般式(4)で表される水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルプロピルエーテル、エチレングリコールエチルプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどが例示できる。
これらアルキレングリコールアルキルエーテルは1種を単独でまたは2種以上を適宜に組合せて使用でき、水に混合して使用することもできる。アルキレングリコールアルキルエーテルの含有量は20重量%以上であれば特に問題はないが、水が媒体の場合は30重量%以上が好ましく、40重量%以上が最も好ましい。一方、上限は100重量%でもよいが、環境への影響や安全性の観点から水を媒体とする方が好ましい。
【0081】
一般式(4)で表される水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテルのうち、さらに好ましいのは一般式(5)で表されるアルキレングリコールモノアルキルエーテルである。
【0082】
R2-O-[CH2-CH(X)-O]n2-H (5)
(一般式(5)中、R2は炭素原子数1以上のアルキル基を、n2は1~3の整数を、Xは水素又はメチル基を示す。)
一般式(5)で表される水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが例示できる。
【0083】
さらに、一般式(5)で表される水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテルを含有する水性洗浄液において、水の含有割合が、50重量%を大きく超えて配合される組成でも剥離性を維持できる点では、R2は炭素原子数3以上のアルキル基、n2は1~3、X2は水素又はメチル基であるものが好ましい。
【0084】
具体的には、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが例示できる。これらアルキレングリコールアルキルエーテルは1種を単独でまたは2種以上を適宜に組合せて使用でき、水に混合して使用することもできる。
【0085】
さらに、これらの中でも環境特性、引火性、消泡性の点から、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが特に好ましい。
【0086】
(消泡剤)
工程1において使用する水は、消泡剤を含んでいてもよい。工程1において、攪拌や粉砕工程において多量の泡が発生する場合があり、泡が残るとプラスチックフィルムの回収工程において泡があふれ出すことがある。また、プラスチックフィルムの粉砕工程においては、洗浄液中に泡を多量に巻き込んだ場合に、プラスチック基材が所望のサイズに粉砕されない場合がある。
【0087】
消泡剤として一般的に用いられる化合物として、水溶性の有機溶剤やHLB値の低いノニオン性界面活性剤が使われるが、消泡能力が高いという点で特に好ましい化合物としてはシリコーン系化合物である。中でもエマルジョン型や自己乳化型のシリコーン化合物が好ましい。
【0088】
具体的な消泡剤として、自己乳化型としては、信越化学社製、X-50-1176、KS-530、KS-537があげられ、エマルジョン型としては、信越化学社製KM-7750D、KM-7752、KM-98、ナガセケムスペック社製FS Antifoam 025、FS Antifoam 80、FS Antifoam 92、FS Antifoam 93、DKQ1-1183、DKQ1-1247などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0089】
(液温)
工程1に使用する水又は洗浄液の液温は、液体状態が保てれば特段限定されず、通常は液温が0℃~90℃で行うことが好ましい。水に界面活性剤等を添加した水性洗浄液を利用する場合、界面活性剤の種類に応じて液温を調節することが好ましい。洗浄効果に優れる最適な温度は界面活性剤の種類によって異なるが、例えば40℃以上が好ましく、65℃以上が好ましく、85℃以上が好ましい。
【0090】
<工程2について>
本発明の成形用又は成型用材料は、工程1において粉砕したプラスチックフィルムの噴砂物を剥離剤中で加熱及び攪拌する工程2を有していてもよい。プラスチックフィルムがインキ層を有するプラスチックフィルムである場合、工程1において積層フィルムを粉砕した後に工程2を行うことにより、粉砕物から剥離せずに付着したまま残っていたインキ層の剥離を行うことができる。
【0091】
また、プラスチックフィルムがプラスチックフィルム層と、プラスチック層とは異なる他のプラスチック層、蒸着膜層及び金属箔層から選ばれる層と、を少なくとも有する積層フィルムである場合、工程1において積層フィルムを粉砕した後に工程2を行うことにより、積層フィルムをより完全に単層へと剥離することができる。例えば、工程1の粉砕工程によりフィルム同士が完全に単層に剥離されなかった場合でも、工程1により破断面が露出しているため、工程1の後に工程2を行うことにより、洗浄液が浸透しやすくなり、単層化が促進される。
【0092】
従って、工程2を行うことにより、より高品質な成形用又は成型用材料を得られる。プラスチックフィルムがバージンプラスチックフィルムである場合、工程2は不要である。
【0093】
(剥離剤)
工程2で使用する剥離剤は、積層体を単層に分離することを促進し、また、インキ層を有するプラスチックフィルムからインキ層を容易に剥離することを促進するものを用いることができる。このような剥離剤として、(a)溶剤、及び(b)無機塩基を含有するものを用いることが好ましい。
【0094】
(a)溶剤は、(b)無機塩基を溶解可能なものであればよく、水溶性溶剤であっても非水性溶剤であってもよい。
【0095】
水溶性溶剤は、水溶性のアルコール類もしくは、引火点が21℃以上の水溶性溶剤を1種又は2種以上含有することが好ましい。剥離剤に水溶性溶剤を用いることにより、剥離剤中に含有する無機塩基から生じる水酸化物イオンが水和されにくいため、水酸化物イオンの求核性が高くなり、また、疎水場環境においてインキ層剥離の反応を進行させることができることから、インキ膜の剥離に効果的である。
引火点が21℃以上の水溶性溶剤は、消防法に定める第二石油類及び第三石油類に該当する有機溶媒のうち水溶性の溶剤が好ましい。また、水溶性のアルコール類としては消防法に定めるアルコールが挙げられる。これらとして具体的には、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール等が挙げられ、これらを単独で用いても混合して用いてもよい。
【0096】
非水性溶剤は、エチレングリコール骨格及び芳香族骨格を有する化合物であることが好ましく、フェノキシエタノールを用いることが好ましい。
【0097】
剥離剤全体において、上記のような溶剤を20質量%以上の範囲で含有することが好ましい。水溶性溶剤の含有量が20質量%未満であると、インキ層を剥離したりする上で十分な効果を得ることが難しくなる。インキ層の剥離性の観点からは剥離剤中に水溶性溶剤を多く含有することが好ましく、具体的には、水溶性溶剤は30質量%以上が好ましく、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましい。
【0098】
(b)無機塩基は、具体的には水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが挙げられ、水酸化カリウムを用いることが好ましい。これらの無機塩基は、インキ剥離剤全量に対して0.1~10重量%の濃度で含有することが好ましく、0.1重量%~5重量%の濃度がより好ましい。またpHは10以上が好ましく、11以上が好ましく、12以上がより好ましい。
【0099】
工程2の剥離剤が水溶性溶剤の場合は、(c)水を含有してもよい。工程2の剥離剤中に水を含有することにより、工程2における作業安定性や環境安定性を向上させることができる。水の含有量は、剥離剤に対し80質量%以下で含有することが好ましい。水の含有量が80質量%を超えると、積層体を単層に分離したりインキ層を剥離したりする上で十分な効果を得ることが難しくなる。
【0100】
水溶性溶剤と水との割合は、プラスチックフィルムやインキ層の剥離効果と安全性の観点から適宜調整可能であるが、質量比で、水溶性溶剤:水=20:80~100:0の範囲で用いることが好ましい。水溶性溶剤と水の総量において水溶性溶剤の割合の下限値は20質量%であることが好ましく、30質量%であることが好ましく、50質量%であることが好ましく、70質量%であることが好ましく、80質量%であることが好ましく、90質量%であることが好ましく、100質量%であることが好ましい。
【0101】
工程2の剥離剤は、(d)界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は特に限定されるものではなく、公知の界面活性剤を使用できるが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤の具体的な種類は、工程1において水に含有可能な界面活性剤として記載したものと同様のものを用いることができる。
工程2の剥離剤において、界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。その添加量は剥離剤全量に対し5重量%以下の範囲が好ましく、2質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の下限値は特に限定されず、0質量%でもよいが、界面活性剤を含有する場合は0.01質量%以上であることが好ましい。
【0102】
(温度)
工程2において、洗浄液を攪拌するときの温度即ち液温は特に限定されるものではない。剥離剤としての洗浄効果がより高いのは液温が高い方であることから、40℃以上が好ましく、50℃以上が好ましく、60℃以上が好ましい。液温の上限は、液体状態が保てれば特段限定されないが、通常は90℃以下が好ましい。
【0103】
(攪拌)
工程2において、粉砕した積層体を洗浄液中で攪拌する設備や方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を利用できる。具体的には、容器内で洗浄液を攪拌することができる攪拌翼付きモータを具備した装置、超音波を発生させる装置を具備した装置、容器ごと振盪することができる装置、湿式粉砕機などがあげられる。湿式粉砕機は、工程1において記載した粉砕機と同様のものを用いることができる。工程2において湿式粉砕機を用いることにより強攪拌を施すことができることから、工程1において積層体の一部が完全に単層に剥離しきれなかった場合に、工程2において単層に剥離することができる。
【0104】
(回収設備)
工程2において単層に分離されたプラスチック粉砕物は、単層ごとに回収することができる。プラスチック粉砕物を回収する設備や方法は特に限定されるものではないが、例えば、濾過機、遠心分離機、自動掻上げバー・スクリーン、傾斜式ワイヤ・スクリーン、回転ドラム式スクリーンなどを用いることができる。
【0105】
(プラスチックフィルム)
本発明の成形用又は成型用材料に利用されるプラスチックフィルムは、単層のフィルムであっても多層の積層フィルムであってもよい。また、軟包装材等に利用された印刷層等を有するリサイクルフィルムであってもよいし、バージンのプラスチックフィルムであってもよい。
【0106】
プラスチックフィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)などのポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミド(N-MXD6)などのポリアミド系フィルム;ポリ乳酸などの生分解性フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)系フィルム;ポリビニルアルコール系フィルム;ポリ塩化ビニリデン、等のKコート等、これらの顔料を含むフィルムが挙げられる。これらフィルムにアルミナ、またはシリカ等の蒸着した透明蒸着フィルムも使用してよい。中でも、ポリオレフィン系樹脂を少なくとも含有するフィルムであることが好ましい。
【0107】
本発明において、プラスチックフィルムを粉砕した成形又は成型材料は、粉砕後の成形又は成型材料の重量平均分子量(Mw2)が、粉砕前のプラスチックフィルム由来の樹脂の重量平均分子量(Mw1)よりも小さくなる。具体的には、プラスチックフィルムとしてオレフィン系樹脂を用いる場合、オレフィン系樹脂のフィルムグレードは重量平均分子量が45万程度であるが、粉砕後の成形又は成型材料の重量平均分子量(Mw2)が40万以下であることが好ましく、38万以下であることが好ましく、35万以下であることが好ましい。
【0108】
また、本発明において、プラスチックフィルムを粉砕した成形又は成型材料は、粉砕後の成形又は成型材料のメルトフローレート(MFR2)が、粉砕前のプラスチックフィルム由来の樹脂のメルトフローレート(MFR1)よりも大きくなる。具体的には、プラスチックフィルムとしてオレフィン系樹脂を用いる場合、オレフィン系樹脂のフィルムグレードはMFRが5~10程度であるが、粉砕後の成形又は成型材料のメルトフローレート(MFR2)は粉砕前より大きければよく、例えば5以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、15以上であることが好ましい。
【0109】
プラスチックフィルムは、インキ層を有していてもよい。
【0110】
(プラスチック積層体)
本発明の成形用又は成型用材料に利用されるプラスチックフィルムは、プラスチックフィルム層と、プラスチックフィルム層、蒸着膜層及び金属箔層から選ばれる層と、を少なくとも有する積層フィルムであってもよい。積層フィルムは、プラスチックフィルム上に、インキ層、接着剤層、他のプラスチックフィルム等の複数の層がラミネートされた積層フィルムである。このような積層フィルムとしては、特に限定なく食品包装用や生活用品に使用されている反応性接着剤でラミネート接着された積層フィルムがあげられるが、もちろん非反応性の接着剤、例えば熱可塑性樹脂接着剤でラミネート接着された積層フィルムや、押し出し積層法で熱融着して得られた積層フィルムも、本発明の分離回収方法で各々の単層フィルムに分離回収することができる。また、シート状や容器形状の積層体であってもよい。
【0111】
即ちリサイクルによって廃棄された様々な種類の樹脂層を有するプラスチック積層フィルムを、特に再分別する必要はなく、一緒に処理できることが本発明の特徴である。
【0112】
また、例えばペットボトルなどの容器には、商品名等の表示や装飾性を付与するために、筒状に形成された積層フィルムであるシュリンクラベルが用いられており、リサイクル時には該シュリンクラベルを消費者がはがして、ペットボトル本体とシュリンクラベルとを別々に廃棄することが多いが、本発明の分離回収方法では、ペットボトル本体とシュリンクラベルとが一体となった状態でも、ペットボトル本体からシュリンクラベルを分離し、且つシュリンクラベルを各々の単層フィルムに分離することができる。
【0113】
反応性接着剤でラミネート接着された積層フィルムは、少なくとも2つの樹脂フィルム層または金属箔や蒸着膜層の間に前記反応性接着剤からなる接着剤層を積層されていることが多い。具体的には、該積層フィルムにおいて、樹脂フィルム層を(F)と表現し、金属箔や蒸着膜層の金属箔層を(M)と表現し、前記反応性接着剤等の接着剤層を(AD)と表現すると、積層フィルムの具体的態様として以下の構成が考えられるが、もちろんこれに限定されることはない。
(F)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)、
(F)/(AD)/(M)/(F)、
(F)/(AD)/(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(M)/(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(AD)/(F)/(AD)/(F)/(AD)、等。
【0114】
積層フィルムは、さらに、紙層、酸素吸収層、アンカーコート層、インキ層、インキの剥離を容易にするために設けられた脱離用プライマー層等を有することもある。
【0115】
インキ層は、例えば、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、インクジェット印刷機等を使用し、有機溶剤型印刷インキ、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキを印刷された印刷インキである。複数のインキ種を用いる多色印刷のインキ層であってもよい。本発明では工程1及び工程2を経ることにより、インキの種類を問わずインキ層を剥離できる。
【0116】
インキ層の設けられる場所は特に限定されない。例えば、インキ層は積層フィルムの最外層に設けられていてもよいし、樹脂フィルム層(F)と接着剤層(AD)の間であってもよい。樹脂フィルム層(F)と接着剤層(AD)の間にインキ層を有する場合は(裏刷り)、インキ層と接着剤層がより強固に結合することからインキ層の剥離がより困難となるが、本発明の方法により裏刷り印刷の構成においてもインキ層を効果的に剥離することができる。
【0117】
例えば、積層フィルムの構成が(F1)/INK/(AD)/(M)/(F2)や、(F1)/INK/(AD)/(F2)の構成である場合のように、インキ層が積層体を構成する層間に存在し、且つ、インキ層と接着剤層がより強固に結合することから、これらを単層に分離し、インキ層を除去することは難しい積層体の構成であるが、工程1においてF2のフィルムを一部剥がす、またはF2が剥がれやすい状態の粉砕物にしておけば、工程2において、残りの層構成を容易に剥離でき、且つインキ層を除去することが可能である。
【0118】
樹脂フィルム層(F)は、求められる役割で分類すると、基材フィルム層(F1)や包装材料を形成する際にヒートシール部位となるシーラント層(F2)などとして機能する。基材フィルム層(F1)は、上述したプラスチックフィルムと同様のものであり、オレフィン系樹脂を少なくとも含有することが好ましい。また、当該フィルムの表面に火炎処理、コロナ放電処理、またはプライマー等のケミカル処理などの各種表面処理が実施されていることもある。
【0119】
シーラント層(F2)となる可撓性ポリマーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム、イオノマー樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂、EMA樹脂、EMMA樹脂、生分解樹脂のフィルムなどが好ましい。汎用名では、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、VMLDPE(アルミ蒸着無低密度ポリエチレンフィルム)フィルム、これらの顔料を含むフィルム等が挙げられる。フィルムの表面には火炎処理、コロナ放電処理、またはプライマー等のケミカル処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。
【0120】
金属箔層(M)としては、例えば金、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、錫及びこれらの合金、スチール、ステンレス、アルミニウム等の、展延性に優れた金属の箔があげられる。
【0121】
紙層としては、天然紙や合成紙などが挙げられる。第1および第2のシーラント層は、上述のシーラント層と同様の材料で形成されていることもある。
【0122】
他の層には、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、非反応性接着剤層、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいる場合もある。
【0123】
本発明の積層フィルムは、工程1及び工程2を経て、積層フィルム中のプラスチックフィルム由来樹脂の粉砕物を分離回収することにより、成形用又は成型用材料を得られる。
【0124】
以下、成形用又は成型用材料の製造方法について、具体的態様の一例を説明する。
【0125】
(1)プラスチックフィルムの粉砕工程(工程1)
まず、プラスチックフィルム又はプラスチックフィルムを含有する積層フィルムを、水又は洗浄液に満たされた粉砕機に順次投入して、プラスチック粉砕物とする。このとき、プラスチックフィルム又は積層フィルムを、例えば5mm~10mm四方サイズ程度の大きさのプラスチック片に裁断したものを、粉砕機に投入してもよい。当該裁断工程を経ることにより、次工程における粉砕機における粉砕をより効率的に行うことができる。裁断は公知の粉砕機を利用することができ、例えば、ハンマークラッシャー、ロータリークラッシャー等の衝撃式粉砕機、シュレッダー、カッター等の乾式粉砕機があげられる。裁断されたプラスチック積層体片のサイズや形状も特に限定されるものではないが、プラスチック片の最大長は例えば100mm以下が好ましく、70mm以下が好ましく、50mm以下が好ましい。下限は特に限定は無いが、1mm以上が好ましく、3mm以上が好ましく、5mm以上が好ましい。
【0126】
例えば、フィルムロールを5~10mm四方サイズ程度に裁断した積層フィルムは、粉砕機の吸引により粉砕部に引き込まれ、水中または洗浄剤中で1mm以下、好ましくは500μm以下に微粉砕される。粉砕物のサイズの下限は特に限定されるものではないが、例えば10μm以上であり、50μm以上であることが好ましい。
【0127】
このとき、投入されたフィルムは、粉砕されるときに受ける高剪断により、積層フィルムを構成する各層の少なくとも一部が単層分離されやすくなる。積層フィルムにインキ層が設けられている場合は、粉砕による高剪断によりインキ層もフィルムから剥離・除去されやすくなり、インキ層の少なくとも一部が剥離されていることが好ましい。
【0128】
湿式粉砕対象が積層フィルムロールではなく、市場から回収されてきた個別のフィルム袋であっても、湿式粉砕機には、回収されてきたままの状態でそのまま投入することができる。
【0129】
前記工程1における粉砕工程の回数は、1回でも数回に分けて行ってもよい。例えば、工程1において複数湿式粉砕工程を行う場合は、それぞれの洗浄液を変更してもよい。また該工程の間、あるいは工程1の後に、水洗や水切り、脱水、乾燥等、公知の工程を適宜加えてもよい。
【0130】
(2)プラスチック粉砕物を洗浄液中で攪拌する工程(工程2)
プラスチックフィルムがインキ層を有する場合には、工程2を行ってもよい。工程2では、工程1において粉砕したプラスチック粉砕物を、剥離剤中でホモディスパー等の公知の撹拌装置や工程1と同様の湿式粉砕機を使用して攪拌することにより、積層フィルムを単層に分離すると共に、インキ層を有する場合はインキ層をプラスチックフィルムから剥離する。
【0131】
剥離剤中で攪拌するときの液温及び攪拌時間は特に限定されるものではなく、用いた洗浄液の材料、積層体の構成等の各種条件から適宜調整可能である。
【0132】
工程2における剥離剤中での攪拌工程の回数は、1回でも数回に分けて行ってもよい。例えば、工程2を複数回行う場合は、それぞれの剥離剤を変更してもよい。また該工程の間、あるいは工程2の後に、水洗や水切り、脱水、乾燥等、公知の工程を適宜加えてもよい。
【0133】
(3)分離した各単層の粉砕混合物の回収工程(工程3)
積層体を工程1、又は工程1及び工程2によりプラスチック粉砕物として単層に分離した場合、工程1における水又は洗浄液、及び工程2における剥離剤中には、分離した各層の単層フィルムと、接着剤や印刷インキ、金属箔等の残渣が浮遊あるいは溶解している状態となっている。これらを洗浄液から取り出した後、分別して回収する。
【0134】
具体的な方法の一例としては、例えば、浮上選別において、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等の比重の軽いプラスチックと(浮物)、ポリオレフィンより比重の重いポリエステル、ナイロン等の縮合合成系フィルム、もしくは金属箔等の重量物を選別し、重量物を取り除き、次に、洗浄脱水工程で回収したプラスチックを洗浄・脱水し、遠心分離で比重の異なるプラスチックを分別する。例えば水に沈む比重1以上の塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート等を含むプラスチック分離物と、塩化ビニル樹脂を含まないポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を含むプラスチック分離物に分けることができる。さらなる分別は、浮遊分別で使用する液体、例えば水と有機溶剤や塩との配合比率を適宜変更することにより比重を変化させることで可能である。
【0135】
比重分離で荒い分別回収したのちに、プラスチックの固有帯電特性を利用した静電分離などを用いて高度な分別をしても良い。
【0136】
具体的な方法の一例としては、あらかじめ帯電したプラスチック混合物を電圧の印加された平行平板電極間に落下することで分離する方法である。比重分離では分離困難な比重差の小さいプラスチックの組合せも分別することができる。
【0137】
(4)洗浄溶液の回収、再利用(工程4)
工程1~2で使用した水、洗浄液又は剥離剤は、これらを回収するために濾過機、遠心分離機、限外濾過機から選ばれるいずれか1つ以上のリサイクル機に供給し、固形物を取り除いたのちに再利用される。工程1~2において湿式粉砕工程、比重分離工程を行いながら、その一方で水、洗浄液又は剥離剤の再利用工程を連続的に運転し、固形物を水、洗浄液又は剥離剤から分離することもできる。
【0138】
(5)プラスチック分離物の乾燥(工程5)
工程3において分離・回収した積層体の回収物を、残留水分を除去するために減圧加熱乾燥、熱風乾燥、加圧圧縮乾燥から選ばれるいずれか1つ以上の方法により、フィルム片の乾燥を行う。工程5でのリサイクルペレットを作製する事前処理として、回収物であるフィルム片の乾燥後もしくは乾燥中に、ペレットミル(御池鐡工所社製)やステラ(エルコム社製、ブリケットマシンのような加圧圧縮機を用いてブリケットを作製してもよい。本発明においてはプラスチックフィルムを粉体状に粉砕しており、粉砕物が10~500μm程度に粉砕され、粉砕物の密度が高いことから、加圧圧縮工程を省略することができる。密度は、粉砕物を構成する材料によって異なるが、混錬機にかけるためには密度が大きいほど扱いやすいため好ましい。具体的には、乾燥状態で0.03kg以上が好ましく、0.05kg以上がより好ましく、0.2kg以上がより好ましく、0.3kg以上が更に好ましい。
【0139】
(6)リサイクルペレットの作製(工程6)
工程5で乾燥されたフィルム片もしくはブリケットを1軸および2軸の成形機に投入し、リサイクルペレットを作製する。混錬機条件は特に限定されないが、リサイクル前の樹脂性能を大きく劣化させないために、180~240℃で運転することが好ましい。
【実施例0140】
以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明する。また、各実施例及び比較例で原料として用いたフィルム、印刷インキ、反応性接着剤、有機溶剤を以下に示す。
【0141】
(使用するプラスチックフィルム)
OPP:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、P2161)
厚さ20μm、主原料ポリプロピレン単独重合体
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、P1128)
厚さ35μm、主原料ポリプロピレンランダム共重合体
(印刷インキ)
INK1:グロッサ 507原色藍S2(DICグラフィックス(株)社製)
INK2:フィナート R507原色藍(DICグラフィックス(株)社製)
INK2:フィナート R794白 G3(DICグラフィックス(株)社製)
(反応性接着剤)
AD1:溶剤型接着剤 ディックドライ LX-401AとSP-60との2液型接着剤(エーテル系接着剤)(DIC(株)社製)
AD2:無溶剤接着剤 ディックドライ 2K-SF-400AとHA-400Bとの2液型接着剤(エステル系接着剤)(DIC(株)社製)
(積層フィルムの製造方法)
積層フィルムは、下記印刷方法により対象とするフィルムに印刷後、下記ラミネート方法により対象とするフィルムを貼りあわせて作成した。フィルムの層構成や反応性接着剤、印刷インキの種類は表1の組み合わせにより行った。
【0142】
(印刷方法)
印刷インキであるグラビアインキやフレキソインキは、プルーファーを用いて各インキをフィルム「Film1」に展色した。
【0143】
(ラミネート方法)
印刷インキを展色したフィルム「Film1」の印刷インキの展色面に、反応性接着剤「AD」をラミネーターで固形分3g/m2の塗膜量になるように塗布し、フィルム「Film2」と貼り合わせた。貼り合わせた積層フィルムは、40℃で72時間エージング反応させた。表1に示す積層フィルム「LAM1」~「LAM2」を得た。
【0144】
【0145】
フィルム単体である「FilmA」~「FilmB」、FilmAに展色した「PrintC」(表刷り)、積層フィルム「LAM1」~「LAM2」(裏刷りラミネート)を2cm×6cmのサイズにカットし試験片を得た。
【0146】
(工程1)
PRO1:IKA社製 MultiDriveを使用し、20000rpmで2分間運転し、破砕後のサイズを、5mm~20mm程度とした。
PRO2:増幸産業株式会社製 スーパーマスコロイダーを使用し、1500rpmで破砕後のサイズ(粉砕物の最長径)が500μm以下程度になるまで粉砕した。なお、粉砕物のサイズは20μm~500μmくらいで分布しており、モード径(最頻値)は100~200μm程度である。
【0147】
工程1は、水中で粉砕を行った。
【0148】
(工程2)
「PrintC」、「LAM1」~「LAM2」については、ホモディスパーを使用し、液温を70℃に保ちながら、200rpmで10分間攪拌して工程2を行った。
【0149】
工程2において使用したインキ洗浄剤は、表2に示す溶剤と、水酸化カリウムを2重量%とを混合して、表3に示すインキ洗浄剤を調整した。
【0150】
【0151】
【0152】
(積層フィルムからのインキ除去性)
表4~5の洗浄結果は、工程2実施後のフィルムからのインキ除去状態を示している。各洗浄工程で積層フィルムを洗浄し、乾燥したのちに、印刷部のインキ除去性について、光学顕微鏡を用いて撮影された写真の画像処理にて面積を算出し、以下式を用いてインキ除去率を求めることで判定した。
インキ除去率(%)=(1-洗浄後のインキ付着面積/洗浄前のインキ付着面積)×100
◎:印刷部の100%が除去。
〇:印刷部の75%以上100%未満が除去。
〇△:印刷部もしくは積層部の50%以上75%未満が除去。
× :全く剥離しない~50%未満が除去。
なお、◎、○は実用上問題がない範囲である。
【0153】
(脱水、乾燥)
粉砕、粉砕したフィルムは、スリーエム社製PP不織布フィルターバッグ1μmを用いて回収し、ハイスマートジャパン社製コンパクト高速脱水機ドライサイクロンHS-S60Aを用いて、3000rpmで5分脱水し、80℃に設定した乾燥機で3時間乾燥させ、乾燥フラフを得た。
【0154】
(押出機によるペレット化)
得られた乾燥フラフを2軸押出機(株式会社テクノベル製、KZW15)を用いて、200℃150rpmの条件で溶融混練し、ペレットを作製した。
【0155】
(プレス成型、打ち抜き)
得られたペレットを井元製作所製電動油圧加熱プレス機4B00を用いて、厚さ1mmの金型を使用し210℃30MPa2分の条件でプレス成型物を得た。その後、スーパーダンベル社製のダンベル規格5Bで打抜きを行い、恒温恒湿室で約24時間静置した。
【0156】
(引張試験)
打抜いたダンベル試験片は、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度200mm/分で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した強度及び伸度を記録した。
【0157】
重量平均分子量は、押出機によって得られたペレットを東ソー株式会社製の高温GPC HLC-8321GPC/HTを用い、カラムにTSKgel GMHHR-H(20)HT、溶離液に1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB) + BHT、測定温度140℃、流速1mL/min、試料注入量300Lで測定し、ポリスチレン換算のMwを得た。
【0158】
MFRは、押出機によって得られたペレット8gをシリンダ内に投入し、230℃に昇温した。2.16kgfの荷重条件において、シリンダ底部のダイスから押し出される樹脂を1分間ごと測定し、10分当たりの樹脂量を計算し、その平均値を算出してMFRの値を得た。
【0159】
【0160】
【0161】
この結果より、実施例は比較例に比べて重量平均分子量が小さくなり、メルトフローレートの値を大きくすることができた。例えば一般的な射出成型用のポリプロピレン単独重合体は、重量平均分子量が約30万、メルトフローレートが約10(cm3/10min)のグレードが求められることから、実施例1の結果より、本発明のフィルム粉砕物は、プラスチックフィルム由来の樹脂の物性を射出成型用の樹脂に適する物性に変化させることができた。