(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170456
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】肉類加工食品練込用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20231124BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20231124BHJP
A23L 13/40 20230101ALI20231124BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20231124BHJP
【FI】
A23D7/00 504
A23L13/60 Z
A23L13/40
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082236
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城島 伸介
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DG12
4B026DH05
4B026DK01
4B026DK04
4B026DL03
4B026DL04
4B026DP01
4B026DP04
4B026DX04
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD20
4B042AG02
4B042AG03
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK13
4B042AK20
4B042AP04
4B042AP14
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】肉類加工食品生地製造時の作業性低下を伴うことなく、コク味及びジューシー感を向上させることができる肉類加工食品練込用油脂組成物の提供。
【解決手段】肉類加工食品練込用油脂組成物は、油分含量が60質量%以上、且つ、増粘安定剤の含有量が0.2質量%未満である高油分水中油型乳化物である。肉類加工食品練込用油脂組成物は、ペースト状であることが好適である。肉類加工食品練込用油脂組成物は、増粘安定剤を含有しないことが好適である。肉類加工食品練込用油脂組成物に含まれる油分は30℃で液状であることが好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分含量が60質量%以上、且つ、増粘安定剤の含有量が0.2質量%未満である高油分水中油型乳化物である肉類加工食品練込用油脂組成物。
【請求項2】
ペースト状である請求項1記載の肉類加工食品練込用油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の肉類加工食品練込用油脂組成物を含有する肉類加工食品生地。
【請求項4】
請求項1又は2記載の肉類加工食品練込用油脂組成物を含有する肉類加工食品。
【請求項5】
請求項1又は2記載の肉類加工食品練込用油脂組成物を練り込む工程を有する、肉類加工食品生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉類加工食品練込用油脂組成物、該肉類加工食品練込用油脂組成物を含有する肉類加工食品生地、該肉類加工食品生地を含有する肉類加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉、魚肉、植物肉、微生物肉などのミンチ状の肉類に、必要に応じ野菜、その他食品素材を混合して肉類加工食品生地を調製した後で成形を行い、焼成したり、場合によっては小麦粉等でつくられた可食性の外皮に包まれた状態で加熱調理したりして喫食する肉類加工食品がある。具体的にはハンバーグや肉団子、ソーセージ、小龍包、餃子、シュウマイ、メンチカツ、蒲鉾等が挙げられる。
【0003】
これらの肉類加工食品は肉類加工食品生地に加熱処理を施して喫食することから、加熱工程の過程で肉類の旨味成分が溶解した肉汁の流出あるいは蒸発、また、肉類の主成分である蛋白質の変性に伴って肉類の収縮などにより、ジューシー感が欠けバサバサとした食感になってしまうことがある。
【0004】
加熱工程で失われる風味や食感を補うために、出汁やスープ等を含む調味材や油脂組成物を上記肉類加工食品生地に対して混合し、ジューシー感を補強した肉類加工食品を生み出す検討がこれまで為されてきた。
【0005】
一方、調味材や油脂組成物の添加量を増やすことで肉類加工食品のジューシー感を更に強めることが可能であると考えられるが、風味・食感改善のために大量の調味材や油脂組成物を肉類加工食品生地に混合すると、肉類加工食品生地にべたつきが生じ、生地成形時の作業性が低下する上、成形後の保型性(成形性)も低下するという欠点もある。この点を克服する検討もまた行われてきた。
【0006】
特許文献1では、レシチンとカゼインナトリウムを用いて食用油脂及び水を乳化し調製された水中油型乳化物を肉類加工食品生地に練り込むことで、ジューシー感と共にソフト感を付与することを提案している。
特許文献2では、数mm角程度に細切りにし油脂を含浸させた茄子を肉類加工食品生地に混合することでジューシー感を付与することを提案している。
特許文献3では、液状の調味材を吸収させ膨潤させたゼラチンを肉類加工食品生地に混合することで、ジューシー感を付与することを提案している。
特許文献4では調味材として油中水型乳化油脂組成物を肉類加工食品生地に混合することでジューシー感と良好な風味を付与することを提案している。
特許文献5では、エステル交換油脂、及び、増粘安定剤を特定量含有する畜肉加工品用固形状水中油型乳化脂を使用し、ジューシー感やコク味を向上させることが提案されている。
【0007】
しかし、特許文献1の手法では生地製造時のハンドリング性維持の観点から添加量に上限がある。しかも、肉類加工食品生地のべたつきが強くなる上、コク味及びジューシー感の補強を十分に行うことができない。
また特許文献2の手法では混合された細切りの茄子の食感が肉類の食感・風味と異なり、好ましくない。
また特許文献3の手法では液状の調味材が油脂を殆ど含まないため、喫食時にジューシー感は感じるが肉類加工食品に求められるコク味が不足してしまう。
更に特許文献4の手法ではコク味を増強することはできるが、加熱工程の過程で失われやすい肉汁は、油脂を含む旨味成分の溶解した肉類加工食品生地中の水分であるため、油中水型乳化油脂組成物を添加した場合、添加量によっては油性感が強くなりすぎ、求める風味・食感とは異なってしまう。
特許文献5の手法は、油脂組成物を固形状のまま生地に分散させ、加熱調理段階で液状化させる方法であるため、該油脂組成物を肉類加工食品生地中へ均一に練り込むためには、サイズが大きいと難しいため微細化する必要があるなど、製造が煩雑であるなど作業性が悪いことに加え、固形状のまま生地に分散させるために増粘安定剤を多く使用することから、得られる肉類加工食品の口溶けに影響が出やすい問題もあった。
【0008】
ところで近年では、牛肉や豚肉、魚肉などの畜肉類に代えて、大豆蛋白質や微生物発酵生成物などを主体として畜肉様の食感を出す植物肉や微生物肉が望まれることも増えてきている。
【0009】
しかし、これらの植物肉や微生物肉は畜肉を使用した場合に比べてコクやジューシー感が乏しいため、これらの植物肉や微生物肉を使用して得られた肉類加工食品もまたコクやジューシー感が乏しいものとなってしまう問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05-103632号公報
【特許文献2】特開平06-303948号公報
【特許文献3】特開平08-168349号公報
【特許文献4】特開2005-087070号公報
【特許文献5】特開2017-051156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、肉類加工食品生地製造時の作業性が良好で、肉類加工食品のコク味及びジューシー感を向上させることができる肉類加工食品練込用油脂組成物、及び該肉類加工食品練込用油脂組成物を含有してなる肉類加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、増粘安定剤の含有量を一定量以下とした高油分水中油型乳化物を肉類加工食品練込用油脂組成物として使用することで、上記問題を解決可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、油分含量が60質量%以上、且つ、増粘安定剤の含有量が0.2質量%未満である高油分水中油型乳化物である肉類加工食品練込用油脂組成物を提供するものである。
更に本発明は上記肉類加工食品練込用油脂組成物を用いた肉類加工食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物は、肉類加工食品生地に配合することで、肉類加工食品生地製造時の作業性の低下を伴うことなく、コク味及びジューシー感の優れた食感を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物について、好ましい実施形態に基づき詳述する。
【0016】
本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物は、油分含量が60質量%以上、且つ、増粘安定剤の含有量が0.2質量%未満である高油分水中油型乳化組成物である。したがって本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物は油分(以下「油脂」ともいう。)及び水を含有する。
【0017】
まず、本発明で使用する上記油分含量が60質量%以上、且つ、増粘安定剤の含有量が0.2質量%未満である高油分水中油型乳化組成物(以下、単に「高油分水中油型乳化組成物」ともいう)について述べる。
【0018】
上記高油分水中油型乳化物に使用する油脂としては特に制限されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
本発明では、良好な作業性、特に生地への良好な混合性を得るために、30℃で液状である油脂を使用することが好ましい。該30℃で液状である油脂としては、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油が挙げられるが、パーム油などの30℃で固形である油脂であっても、分別により分取した分別軟部油が30℃で液状である限り使用することができる。
肉類加工食品に良好なコク味を求める場合は、上記油脂として、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂を使用することが好ましい。
【0020】
上記高油分水中油型乳化物における油分含量は、高油分水中油型乳化物に使用するその他の原材料に含まれる油分も含め、60質量%以上であることが必要であり、好ましくは70質量%以上とする。60質量%未満であると本発明の効果は得られない。なお、上限については、90質量%であることが好ましい。90質量%超であると高油分水中油型乳化物が安定に製造できない可能性がある。
【0021】
上記高油分水中油型乳化物においては、増粘安定剤の含有量が0.2質量%未満、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは含有しないことが好ましい。
増粘安定剤の含有量を0.2質量%未満とすることで、肉類加工食品生地への混合性が高まり、更には得られる肉類加工食品のジューシー感を含む口溶けを優れたものとすることができる。
【0022】
上記増粘安定剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、糊化澱粉、化工澱粉、糊化化工澱粉等が挙げられる。
【0023】
上記高油分水中油型乳化物に使用する水としては特に制限されず、例えば、水道水、ミネラル水、地下水等が挙げられる。本発明においては、これらの水を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、卵、クリーム、液糖など、水分を含有する食品素材に含まれる水分を、該水として使用することもできる。
【0024】
上記高油分水中油型乳化物における水分含量は、高油分水中油型乳化物に使用するその他の原材料に含まれる水分も含め、好ましくは35質量%以下である。35質量%超であると本発明の効果は得られない場合がある。なお、下限については、8質量%であることが好ましい。8質量%未満であると高油分水中油型乳化物が安定的に製造できない可能性がある。更に好ましい水分含量は10質量%以上32質量%以下であり、一層好ましい水分含量は12質量%以上30質量%以下である。
【0025】
上記高油分水中油型乳化物は、上記油脂と上記水を乳化するための乳化剤を含有する。本発明では、上記高油分水中油型乳化物が、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルの中から選ばれた1種又は2種以上の乳化剤を含有するのが好ましい。更に好ましくはソルビタン脂肪酸エステル1種以上とグリセリン脂肪酸エステル1種以上を含有するのがよい。
【0026】
上記のソルビタン脂肪酸エステルとしては、HLBが好ましくは2~10、更に好ましくは2~8のソルビタン脂肪酸エステルを用いるのがよい。上記ソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限はなく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の残基が挙げられる。
上記ソルビタン脂肪酸エステルの含有量は上記高油分水中油型乳化物中、好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.1~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0027】
上記のグリセリン脂肪酸エステルとしては、HLBが好ましくは0~6、更に好ましくは0~4のグリセリン脂肪酸エステルを用いるのがよい。また上記のグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、グリセリン脂肪酸エステルとしてモノグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
上記グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限はなく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の残基が挙げられる。
上記グリセリン脂肪酸エステルの含有量は上記高油分水中油型乳化物中、好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.1~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0028】
上記有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、酢酸グリセリン脂肪酸エステル、乳酸グリセリン脂肪酸エステル、コハク酸グリセリン脂肪酸エステル、ジアセチル酒石酸グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量は上記高油分水中油型乳化物中、好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.1~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0029】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリン残基としては特に制限はないが、重合度が1~10のものが好ましい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は上記高油分水中油型乳化物中、好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.1~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0030】
上記高油分水中油型乳化物には、所望により以下のその他の成分を適宜量配合できる。
その他の成分としては、例えば砂糖、ぶどう糖、液糖、還元糖、水飴、還元水飴、アステルパーム等の甘味料、食塩や塩化カリウム等の塩味材、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、燐酸、フィチン酸等の有機酸及び無機酸、醗酵乳等の酸味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白・大豆蛋白等の植物蛋白、乳蛋白・畜肉蛋白等の動物蛋白、卵、卵黄、卵白、及び卵加工品、ソース、ケチャップ、果汁、果肉、香辛料、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料が挙げられる。
【0031】
上記高油分水中油型乳化物の性状は特に制限されず、固形、顆粒状、粉末状、ペースト状、流動状、液状、可塑性、小片状等のいずれの形態も可能であるが、肉類加工食品生地への混合性の点で、25℃においてペースト状であることが好ましい。
上記成分を含んで成る上記高油分水中油型乳化物において、上記のペースト状とは、ゲル状とは異なる性状であり、常温(25℃)において粘稠性がありフレキシブルな容器から押し出し可能な程度の硬さ状態になっていることをいう。上記高油分水中油型乳化物の性状をペースト状とするためには、例えば、増粘安定剤の含有量を好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは含有しないようにするか、あるいは、上記高油分水中油型乳化物に使用する油脂として、上記30℃で液状である油脂を油脂中の50質量%以上、好ましくは60質量%以上使用すればよい。特に好ましくはこの両方を実施する。
【0032】
次に、上記高油分水中油型乳化物の製造方法を説明する。上記高油分水中油型乳化物は、その製造方法が特に制限されるものではなく一般的な水中油型乳化物の製造方法により得ることができるが、好ましくは以下の方法により製造する。
まず、油脂、及び必要によりソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、その他の油溶性物質を添加した油相を用意する。
これを、必要により水溶性物質を添加した水相に添加し、水中油型に乳化する。そして必要により殺菌処理を行う。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、これを容器に入れ、冷却固化し高油分水中油型乳化物を得る。また、上記高油分水中油型乳化物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させてもよく、あるいは含気させなくても構わない。
【0033】
続いて本発明の肉類加工食品生地及び肉類加工食品について述べる。
本発明の肉類加工食品生地は、上記本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物を含有してなるものであり、本発明の肉類加工食品は、上記本発明の肉類加工食品生地を使用した食品である。
【0034】
肉類加工食品生地とは、畜肉、魚肉、植物肉、微生物肉などのミンチ状の肉類に、必要に応じ、ミンチ状以外の肉類や、肉類以外の食品素材、例えば野菜、その他食品素材を細かく刻んだものを配合し、適宜混練した物であり、加熱処理前の物を示す。
また、肉類加工食品は、上記肉類加工食品生地をそのまま、あるいは、成形を行い、焼成したり、場合によっては小麦粉等でつくられた可食性の外皮に包まれた状態で加熱調理したりして得られる加工食品である。
【0035】
肉類加工食品の具体例としては、例えば生ハム、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、ミートローフ、ミートソース、ミートパテ、ミートコロッケ、メンチカツ、ロールキャベツ、シュウマイ、餃子、小龍包、肉まん、牛丼、つくね、ハム、ハムステーキ、ソーセージ、さつま揚げ、蒲鉾、つみれ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ、スコッチエッグ等の生地が挙げられる。
【0036】
上記の肉類加工食品生地における、本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物の含有量は限定されないが、該肉類加工食品生地中に2~25質量%となるように添加するのが好ましく、3~15質量%となるように添加するのが更に好ましく、3~10質量%となるように添加するのが最も好ましい。2質量%未満であると本発明品の効果により得られるジューシー感やコク味を十分に感じることができない場合があり、加えてボソボソとした食感となる恐れがある。また添加量が25質量%を超えると油性感が強くなってしまうことに加えて、肉類加工食品の肉粒感を感じづらくなる恐れがある。
【0037】
上記肉類加工食品に用いられる畜肉の種類としては、例えば牛、豚、鶏、羊、馬、鹿、兎、猪、熊等の動物肉を挙げることができる。
上記肉類加工食品に用いられる魚肉の種類としては、例えばサケ、スケトウダラ、ホキ、タイ、マグロ、カジキ、イワシ、サバ、アジ、サンマ、ウナギ、ハモ、タチウオ、コイ、フナ、タコ、イカ、オキアミ、イセエビ、エビ等の魚肉や、アザラシ及び鯨などの海産動物肉を挙げることができる。
【0038】
上記肉類加工食品に用いられる植物肉の種類としては、例えば大豆、エンドウ、緑豆、ヒヨコ豆、ササゲ等の豆類やキャノーラ種子等の植物の蛋白を使用して得られる植物肉を挙げることができる。
【0039】
上記肉類加工食品に用いられる微生物肉の種類としては、例えば酵母、プランクトンなどを使用して得られる微生物肉を挙げることができる。
【0040】
上記肉類加工食品に対する、本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物の添加方法としては特に限定されず均質に練り込むことができる方法であれば特に限定されないが、肉類を使用して肉類加工食品生地を製造する際に添加、混合する方法が好ましい。
【0041】
上記本発明の肉類加工食品生地は加熱調理前に冷凍することができる。その場合、冷凍のまま加熱調理してもよく、あるいは解凍した後に加熱調理してもよい。
【0042】
上記本発明の肉類加工食品生地から肉類加工食品を得る方法は、各種肉類加工食品の一般的な製造方法に従えばよく、例えばハンバーグの場合は、フライパンで140~160℃で10~15分、表裏を順に焼成する方法や、スチームオーブンで140~200℃で10~20分焼成する方法などが挙げられる。
【実施例0043】
以下、実施例、比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例などによって何ら制限を受けるものではない。なお、文中の「部」又は、「%」とあるのは、断りのない限り質量基準である。
【0044】
<高油分水中油型乳化物の調製>
〔実施例1〕
ラード(豚脂):ナタネ液状油=2:3(質量比)の混合油脂72部に、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0部、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0部を添加、加温溶解し油相を得た。水のみからなる水相24部に、上記油相76部を徐々に添加しながら乳化させ、冷却固化し、増粘安定剤を含有せず、油分含量が72%の高油分水中油型乳化物である、本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物Aを得た。得られた肉類加工食品練込用油脂組成物Aは常温(25℃)においてペースト状であった。
【0045】
〔実施例2〕
ラード(豚脂):ナタネ液状油=2:3の混合油脂に代えて、ラード(豚脂)を使用した以外は実施例1と同様にして、増粘安定剤を含有せず、油分含量が72%の高油分水中油型乳化物である、本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物Bを得た。得られた肉類加工食品練込用油脂組成物Bは常温(25℃)において可塑性のある固形であった。
【0046】
〔実施例3〕
ラード(豚脂):ナタネ液状油=2:3の混合油脂に代えて、ナタネ液状油を使用した以外は実施例1と同様にして、増粘安定剤を含有せず、油分含量が72%の高油分水中油型乳化物である、本発明の肉類加工食品練込用油脂組成物Cを得た。得られた肉類加工食品練込用油脂組成物Cは常温(25℃)においてペースト状であった。
【0047】
〔比較例1〕
上記実施例1における混合油脂72部を56部に変更し、水相24部を40部に変更し、油相76部を60部に変更した以外は実施例1と同様にして、油分含量が56%の水中油型乳化物である比較例の肉類加工食品練込用油脂組成物Dを得た。得られた肉類加工食品練込用油脂組成物Dは増粘安定剤を含有せず、常温(25℃)においてペースト状であった。
【0048】
〔比較例2〕
ラード(豚脂)72部に、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0部、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0部を添加、加温溶解し、ここにタピオカ由来の加工澱粉(糊化リン酸架橋デンプン)2部を添加、分散し、油相を得た。水17部に、ゼラチン5部を添加、溶解し、水相を得た。上記水相22部に、上記油相78部を徐々に添加しながら乳化させ、冷却固化し、油分含量が72%の高油分水中油型乳化物である、比較例の肉類加工食品練込用油脂組成物Eを得た。得られた肉類加工食品練込用油脂組成物Eは増粘安定剤を含有し、常温(25℃)において固形であった。
【0049】
〔比較例3〕
ラード(豚脂))72部に、グリセリン脂肪酸エステル(HLB2)4.0部を添加、加温溶解し油相を得た。水のみからなる水相24質量部を、上記油相76質量部に徐々に添加しながら乳化させ、マーガリン製造機(コンビネーター)で急冷可塑化し、油分含量が72%の油中水型乳化物である比較例の肉類加工食品練込用油脂組成物Fを得た。得られた肉類加工食品練込用油脂組成物Fは常温(25℃)において可塑性のある固形であった。
【0050】
〔比較例4〕
ナタネ液状油をそのまま比較例の肉類加工食品練込用油脂組成物Gとした。肉類加工食品練込用油脂組成物Gは常温(25℃)において液状であった。
【0051】
<肉類加工食品(ハンバーグ)の製造>
牛豚あい挽肉40質量部、大豆蛋白質20質量部、みじん切りローストオニオン18質量部、乾燥パン粉10質量部、濃縮牛乳状組成物(「プライムEF」:株式会社ADEKA製)2質量部、食塩0.9質量部、ナツメグ0.05質量部、白コショウ0.05質量部、及び水4質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーを使用して中速3分混合した。ここに肉類加工食品練込用油脂組成物A~Gそれぞれ5質量部を添加し、低速1分中速1分混合し、肉類加工食品生地を得た。なお、比較例2で得られた肉類加工食品練込用油脂組成物Eについては、そのままでは生地に均質に分散しないので、5mm角にあらかじめカットしてから使用した。
【0052】
この肉類加工食品生地を40gに分割して楕円形にまるめ、スチームオーブン(設定温度:175℃)で13分間焼成し、本発明の肉類加工食品であるハンバーグA~C(実施例4~6)、及び、比較例の肉類加工食品であるハンバーグD~G(比較例4~7)を得た。
一方、肉類加工食品練込用油脂組成物を無添加とした以外は同様の配合・製法で比較例のハンバーグH(比較例8)を得た。
【0053】
得られたハンバーグA~Hについて、コク味及びジューシー感について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を表1に記載した。
また、製造途中の肉類加工食品生地の段階での生地製造時の作業性(生地への混合性及び成形時のべたつき)についても下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を表1に記載した。
なお、肉類加工食品練込用油脂組成物Aについては、肉類加工食品練込用油脂組成物の添加量を5質量部から10質量部に変更した以外は実施例4と同様の配合・製法で得られたハンバーグA2(実施例7)、同じく添加量を20質量部に変更した以外は実施例4と同様の配合・製法で得られたハンバーグA3(実施例8)についても同様の評価を行い、結果を表1に記載した。
【0054】
評価方法
<生地成形時の作業性(混合性)の評価基準>
◎:低速1分の段階で生地へ均質に練り込まれ、混合性が優れている
○:中速1分の段階で生地へ均質に練り込まれ、混合性が良好である
△:生地への添加時に液状化して滑りが多いため均質に混合されず、混合性が低い
×:生地への添加時に壁面に張り付くため均質に混合されず、混合性が低い
××:生地への添加時に固形のまま分散するため均質に混合されず、混合性が低い
【0055】
<生地成形時の作業性(べたつき)の評価基準>
◎:生地がべたつかず、適度な柔らかさを保ったまま十分な成形性を有している
〇:生地がややべたつくが、十分な成形性を有している
△:生地がべたつき、成形性が低い
×:生地のねちゃつきが激しい
【0056】
<食感(コク味及びジューシー感)の評価基準>
15人のパネラーにて、コク味及びジューシー感についてそれぞれ、きわめて良好:4点、良好:3点、やや良好:2点、やや不良:1点、不良:0点の5段階評価し、それぞれその合計点を評価点数とした。
(合計点の評価基準)
◎ :51~60点
○+ :41~50点
○ :31~40点
○- :21~30点
△ :11~20点
× :10点以下
【0057】
【0058】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたハンバーグは、ハンバーグ生地を調製するときの作業性が良好であり、またハンバーグのコク味及びジューシー感が高いものであることが分かる。特に、実施例4及び6と、実施例5との対比から明らかなとおり、肉類加工食品練込用油脂組成物がペースト状であると、ハンバーグ生地の調製時における作業性が一層向上することが分かる。