(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170479
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】アスファルト組成物及びアスファルト舗装材組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20231124BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231124BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20231124BHJP
E01C 7/26 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C08L95/00
C08L63/00
C08L23/04
E01C7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082279
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AG01
2D051AG14
2D051AG15
2D051AH03
4J002AG001
4J002BB022
4J002BP034
4J002CD193
4J002DM006
4J002FD016
4J002GL00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】ポリエチレン系樹脂を含むアスファルト組成物及びアスファルト舗装材組成物の貯蔵安定性を改善することに関する。
【解決手段】アスファルトと、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する樹脂と、を含有する、アスファルト組成物。当該アスファルト組成物と、骨材と、を含有する、アスファルト舗装材組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトと、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する樹脂と、を含有する、アスファルト組成物。
【請求項2】
前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量が、前記アスファルト100質量部に対して5質量部超20質量部以下である、請求項1に記載のアスファルト組成物。
【請求項3】
前記エポキシ基を有する樹脂が、エポキシ基を有するモノマー単位を含むポリオレフィン系共重合体である、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項4】
前記エポキシ基を有する樹脂が、エポキシ基を有するモノマー単位を含むポリエチレン系共重合体である、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基を有する樹脂の190℃、2.16kgにおけるMFRが6g/10min以上である、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基を有する樹脂の含有量が、前記アスファルト100質量部に対して0.1~10質量部である、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項7】
前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量に対する前記エポキシ基を有する樹脂の含有量の質量比率が0.01~1.5である、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項8】
前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂及び前記エポキシ基を有する樹脂以外の熱可塑性樹脂を更に含む、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項9】
当該アスファルト組成物が、前記アスファルトと、前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、前記エポキシ基を有する樹脂と、を少なくとも含有する混合物の溶融混練物である、請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のアスファルト組成物と、骨材と、を含有する、アスファルト舗装材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト組成物及びアスファルト舗装材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道、駐車場、貨物ヤード等の舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短いことから、アスファルト組成物を用いたアスファルト舗装が行われている。近年では、ライフサイクルコストの観点から、高耐久舗装の需要が伸びており、アスファルトを高耐久化する方法として、高強度で、耐油性に優れるポリエチレン系樹脂を含有するアスファルト組成物が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】The Useof Polyethylene in Hot Asphalt Mixtures, June 2007, AmericanJournal of Applied Sciences, 4(6):390-396
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、ポリエチレン系樹脂を含むアスファルト組成物及びアスファルト舗装材組成物の貯蔵安定性を改善することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの側面において、以下の[1]~[10]が提供される。
[1] アスファルトと、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する樹脂と、を含有する、アスファルト組成物。
[2] 前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量が、前記アスファルト100質量部に対して5質量部超20質量部以下である、[1]に記載のアスファルト組成物。
[3] 前記エポキシ基を有する樹脂が、エポキシ基を有するモノマー単位を含むポリオレフィン系共重合体である、[1]又は[2]に記載のアスファルト組成物。
[4] 前記エポキシ基を有する樹脂が、エポキシ基を有するモノマー単位を含むポリエチレン系共重合体である、[1]~[3]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
[5] 前記エポキシ基を有する樹脂の190℃、2.16kgにおけるMFRが6g/10min以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
[6] 前記エポキシ基を有する樹脂の含有量が、前記アスファルト100質量部に対して0.1~10質量部である、[1]~[5]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
[7] 前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量に対する前記エポキシ基を有する樹脂の含有量の質量比率が0.01~1.5である、[1]~[6]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
[8] 前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂及び前記エポキシ基を有する樹脂以外の熱可塑性樹脂を更に含む、[1]~[7]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
[9] 当該アスファルト組成物が、前記アスファルトと、前記エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、前記エポキシ基を有する樹脂と、を少なくとも含有する混合物の溶融混練物である、[1]~[8]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のアスファルト組成物と、骨材と、を含有する、アスファルト舗装材組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一側面によれば、ポリエチレン系樹脂を含むアスファルト組成物及びアスファルト舗装材組成物の貯蔵安定性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例7で得られたアスファルト組成物の光学顕微鏡による観察画像である。
【
図2】
図2は、比較例5で得られたアスファルト組成物の光学顕微鏡による観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は以下に説明される例に限定されるものではない。
【0009】
本発明のアスファルト組成物の一例は、アスファルトと、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する樹脂と、を含有する、アスファルト組成物である。アスファルト組成物は、アスファルトと、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する樹脂と、を含有する混合物の溶融混練物であってもよい。
【0010】
アスファルトは、特に制限されないが、例えば、舗装用ストレートアスファルト、レークアスファルト等の天然アスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルトで変性されたストレートアスファルト、タール変性されたストレートアスファルト、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0011】
アスファルトの含有量は、アスファルト組成物の全質量を基準として、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってもよく、99.9質量%以下、99.5質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、92質量%以下、又は90質量%以下であってもよい。
【0012】
エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂は、エポキシ基を有さず、且つエチレンに基づくモノマー単位を含む重合体である。ポリエチレン系樹脂は、例えば、エチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体であってもよい。
【0013】
エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン-プロピレン共重合体等の無極性のポリエチレン系樹脂;アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、変性ポリエチレン系樹脂(例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、酸無水物、エステル、又は金属塩とポリエチレン系樹脂との反応物)等の極性を有するポリエチレン系樹脂が挙げられる。エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂は、単独又は2種以上を併用することができる。エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン、VLDPE、EVA、EMMAを含んでもよい。
【0014】
エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量は、アスファルト100質量部に対して、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、5質量部超、又は6質量部以上であってもよく、30質量部以下、20質量部以下、20質量部未満、15質量部以下、又は10質量部以下であってもよい。エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量は、アスファルト100質量部に対して、1~30質量部、5~20質量部、5質量部超20質量部以下又は6~20質量部であってもよい。
【0015】
エポキシ基を有する樹脂は、例えば、エポキシ基を有するモノマー単位と、エチレン及び/又はα-オレフィンから誘導されるモノマー単位とを含む、ポリオレフィン系共重合体であってもよく、エポキシ基を有するモノマー単位を含むポリエチレン系共重合体であってもよい。
【0016】
アスファルト組成物がエポキシ基を有する樹脂を含有することにより、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の分散性が向上し、アスファルト組成物の貯蔵安定性が向上する。その理由として、アスファルト組成物がエポキシ基を有する樹脂のような反応性を有する樹脂を含有することにより、エポキシ基を有する樹脂がアスファルトの官能基と反応し、さらにエポキシ基を有する樹脂はエポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と高い親和性を有することから、アスファルト組成物中のエポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の凝集が抑制され、分散性が向上すると考えられる。また、アスファルト組成物がエポキシ基を有する樹脂のような反応性を有する樹脂を含有することにより、アスファルト組成物を作製した後であっても、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂同士の凝集が抑制されるため、アスファルト組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0017】
エチレン及び/又はα-オレフィンから誘導されるモノマー単位の割合(エチレンから誘導されるモノマー単位及びα-オレフィンから誘導されるモノマー単位の合計の割合)は、エポキシ基を有する樹脂の全量に対して、80質量%以上、90質量%以上、96質量%以上、96.5質量%以上、97質量%以上、97.2質量%以上、97.4質量%以上、又は97.5質量%以上であってもよく、99質量%以下、98.5質量%以下、98.2質量%以下、98質量%以下、97.8質量%以下、又は97.7質量%以下であってもよい。エポキシ基を有する樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0018】
エポキシ基を有するモノマー単位は、例えば、不飽和カルボン酸グリシジルエステルに由来するモノマー単位、又は不飽和基を有するグリシジルエーテルに由来するモノマー単位であってもよい。
【0019】
不飽和カルボン酸グリシジルエステルは、下記式(1)で表される化合物であってもよい。式(1)中、R1は、炭素原子数2~18のアルケニル基を示し、アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。式(1)で表される化合物の例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びイタコン酸グリシジルエステルが挙げられる。
【0020】
【0021】
不飽和基を有するグリシジルエーテルは、下記式(2)で表される化合物であってもよい。式(2)中、R2は、炭素原子数2~18のアルケニル基を示し、アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。Xは、CH2-O又は酸素原子を示す。式(2)で表される化合物の例としては、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、及びスチレン-p-グリシジルエーテルが挙げられる。
【0022】
【0023】
エポキシ基を有するモノマー単位の割合は、アスファルト組成物の貯蔵安定性が更に優れる観点から、エポキシ基を有する樹脂の全量に対して、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は2.5質量%以下であってもよい。エポキシ基を有するモノマー単位の割合は、エポキシ基を有しないポリエチレン樹脂との親和性が更に向上し、貯蔵安定性が更に優れる観点から、エポキシ基を有する樹脂の全量に対して、1質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2質量%以上、2.2質量%以上、又は2.3質量%以上であってもよい。
【0024】
エポキシ基を有する樹脂は、エポキシ基を有するモノマー単位、エチレン及び/又はα-オレフィンから誘導されるモノマー単位に加えて、スチレン、アクリロニトリル、不飽和カルボン酸エステル(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等)、アクリル酸、不飽和ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)などのモノマー単位を含んでもよい。
【0025】
エポキシ基を有する樹脂の例としては、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-ノルマルプロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-イソプロピル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-ノルブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-イソブチル(メタ)アクリレート共重合体、及びエチレン-グリシジル(メタ)アクリレート-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する樹脂は、グリシジル基を有する樹脂であってもよく、グリシジル基を有するモノマー単位を含むポリエチレン系共重合体であってもよく、グリシジル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位を含むポリエチレン系共重合体であってもよく、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体であってもよい。エポキシ基を有する樹脂の全量に対するグリシジル基を有するモノマー単位及びグリシジル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の割合は、上述したエポキシ基を有するモノマー単位の割合と同様の範囲内であってもよい。エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体の市販品の例として、住友化学製「ボンドファースト」(商品名)がある。
【0026】
エポキシ基を有する樹脂のその他の例としては、グリシジルメタアクリレート-スチレン共重合体、グリシジルメタアクリレートーアクリロニトリルースチレン共重合体、及びグリシジルメタアクリルレート-プロピレン共重合体が挙げられる。
【0027】
エポキシ基を有する樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、水添及び非水添のスチレン-共役ジエン系重合体等に、エポキシ基を有するモノマーを、溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させた重合体であってもよい。
【0028】
エポキシ基を有する樹脂の190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、1g/10min以上、3g/10min以上、5g/10min超、6g/10min以上、10g/10min以上、20g/10min以上、40g/10min以上、60g/10min以上、80g/10min以上、100g/10min以上、150g/10min以上、又は180g/10min以上であってもよい。エポキシ基を有する樹脂の190℃、2.16kgにおけるMFRは、500g/10min以下、400g/10min以下、300g/10min以下、又は200g/10min以下であってもよい。エポキシ基を有する樹脂のMFRは、JIS7210-1:2014に基づき、190℃、荷重2.16kgの条件下で、A法(所定の時間で生じた押出物の重量から、10分間当たりのグラム数単位(g/10min)として、押出速度を計算する方法)で測定される値である。
【0029】
エポキシ基を有する樹脂の含有量は、アスファルト100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、又は10質量部以上であってもよく、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってもよい。エポキシ基を有する樹脂の含有量は、アスファルト100質量部に対して、0.1~40質量部、0.1~20質量部、0.1~10質量部、1~40質量部、5~30質量部、又は10~20質量部であってもよい。
【0030】
エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量に対するエポキシ基を有する樹脂の含有量の質量比率(エポキシ基を有する樹脂の含有量/エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量)は、0.01以上、0.05以上、又は0.1以上であってもよく、1.5以下、1以下、0.8以下、又は0.6以下であってもよい。エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂の含有量に対するエポキシ基を有する樹脂の含有量の質量比率は、0.01~1.5、又は0.1~0.6であってもよい。
【0031】
一実施形態に係るアスファルト組成物は、アスファルト、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂、及びエポキシ基を有する樹脂以外の成分を更に含有していてもよい。アスファルト組成物は、例えば、熱可塑性樹脂を更に含有していてもよい。
【0032】
アスファルト組成物は、熱可塑性樹脂を含有することにより、耐熱性及び耐久性を向上させることができる。熱可塑性樹脂としては、スチレンブタジエンブロック共重合体、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンランダム共重合体、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンイソプレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0033】
熱可塑性樹脂の含有量は、アスファルト100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、又は3質量部以上であってもよく、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、又は5質量部以下であってもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、アスファルト100質量部に対して、0.1~30質量部、0.5~15質量部、又は1~10質量部であってもよい。
【0034】
アスファルト組成物は、アスファルトと、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と、エポキシ基を有する樹脂と、を含有する混合物を溶融混練することにより得ることができる。アスファルトに対してエポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂、エポキシ基を有する樹脂等の樹脂を添加する順序は特に限定されず、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂とエポキシ基を有する樹脂とを予め混練した後に、得られた混合物をアスファルトと溶融混練してもよく、アスファルトと、エポキシ基を有する樹脂とを予め混練した後に、得られた混合物を、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と溶融混練してもよい。アスファルト組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、アスファルトと、エポキシ基を有しないエポキシ基を有する樹脂と、熱可塑性樹脂とを予め混練した後に、得られた混合物を、エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂と溶融混練してもよい。溶融混練する際の温度は、例えば、100~250℃又は150~200℃であってもよい。溶融混練する時間は、例えば、0.01~6時間であってもよい。
【0035】
アスファルト組成物は、例えば、骨材と混合して用いることができ、アスファルト組成物と骨材とを含有する道路舗装用アスファルト組成物として用いることができる。骨材は、アスファルト組成物を製造する過程において添加されてもよい。すなわち、本発明の他の一実施形態は、アスファルト組成物と、骨材と、を含有するアスファルト舗装材組成物(道路舗装用アスファルト組成物)である。
【0036】
骨材の種類及びその含有量は、道路舗装の分野において一般に採用されている範囲で、適宜調整することができる。骨材の例としては、砕石、砕砂であってよく、堆積岩(例えば、硬質砂岩、石灰岩)の砕石、砕砂であってよい。骨材の含有量は、例えば、アスファルト組成物100質量部に対して、1000~10000質量部であってもよい。
【実施例0037】
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
1.原材料
(1)アスファルト
・ストレートアスファルト:StAs、ENEOS株式会社製、針入度:60/80
(2)エポキシ基を有しないポリエチレン系樹脂(添加剤A)
・L420:低密度ポリエチレン、住友化学株式会社製、MFR3.5g/10min(190℃、2.16kg荷重)
・CL5035:線状低密度ポリエチレン(C4LL)、住友化学株式会社製、MFR50g/10min(190℃、2.16kg荷重)
(3)エポキシ基を有する樹脂(添加剤B)
・BF-30C:エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(以下「EGMA共重合体」ともいう)、住友化学株式会社製、グリシジルメタクリレート含有量:19質量%、MFR7g/10分(190℃、2.16kg荷重)
・BF-2C:EGMA共重合体、住友化学株式会社製、グリシジルメタクリレート含有量:6質量%、MFR3g/10min(190℃、2.16kg荷重)
・BF1:EGMA共重合体、住友化学株式会社製、グリシジルメタクリレート含有量:2.3質量%、MFR44g/10min(190℃、2.16kg荷重)
・BF3:EGMA共重合体、住友化学株式会社製、グリシジルメタクリレート含有量:2.5質量%、MFR180g/10min(190℃、2.16kg荷重)
・BF-7M:エチレン/グリシジルメタクリレート/メチルアクリレート共重合体(以下「EGMAMA共重合体」ともいう)、住友化学株式会社製、グリシジルメタクリレート含有量:6質量%、メチルアクリレート含有量:27質量%、MFR7g/10min(190℃、2.16kg荷重)
(4)添加剤C
・SBS:スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体、旭化成株式会社製、T437L
【0039】
2.アスファルト組成物の調製
(実施例1~12、比較例1~6)
StAs400gを180℃のオーブンで30分間加熱した。加熱することで軟化したStAsに、ホモミクサーMARKII2.5型の攪拌部を差し込み、攪拌部の回転数を徐々に上げながら、添加剤Aを投入した。次いで、180℃に加熱しながら回転数4000rpmで1時間、溶融混練した。形成された溶融混練物を1昼夜かけて室温まで冷却して、アスファルト組成物を得た。添加剤A~Cの投入量は、表1~表3に示す量(アスファルト100質量部に対する量。単位:質量部)となるように調整した。比較例3で得られたアスファルト組成物は、添加剤の溶け残りがあったため、評価不可とした。
【0040】
3.評価
(分散性)
180℃に熱したホットプレートの上に、ガラス板を設置した。ガラス板の上に作製したアスファルト組成物を少量乗せた後、その上にカバーガラスを乗せた。アスファルト組成物が半透明になる程度までゆっくり押し付けて、測定用のサンプル得た。サンプルを光学顕微鏡にセットし、添加剤の分散状態を観察したところ、実施例1~12では200μmを超える大きさの樹脂の分散相が確認されなかった。比較例1、2、及び4~6では、200μmを超える大きさの樹脂の分散相が確認された。実施例7及び比較例5で得られたアスファルト組成物から作製したサンプルの光学顕微鏡による観察画像を
図1及び
図2にそれぞれ示す。
【0041】
(針入度)
JIS K2207に従って、作製したアスファルト組成物を針入度測定用供試体として25℃における針入度を測定した。表中の針入度は、標準針の貫入量を1/10mmの単位で表記した。
【0042】
(軟化点)
ASTM D3461-14に従って、Mettler Cup-and-Ball Methodにより、アスファルト組成物の軟化点(単位:℃)を測定した。
【0043】
(貯蔵安定性)
作製したアスファルト組成物をアルミ缶にいれ、175℃のオーブンで1日貯蔵した。貯蔵後、アルミ缶内のアスファルト組成物をスパチュラでかき混ぜた際に、塊及び相分離が確認されなかった場合、貯蔵安定性を「A」と評価し、塊が確認された場合、貯蔵安定性を「B」と評価し、相分離が確認された場合、貯蔵安定性を「C」と評価した。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
表1~3より、実施例1~12と比較例1~6との比較から、アスファルト組成物が、エポキシ基を有しないポリエチレンル系樹脂と共に、エポキシ基を有する樹脂を含有することにより、ポリエチレン系樹脂の貯蔵安定性が優れることがわかった。また、実施例7及び比較例5のアスファルト組成物から作製したサンプルの光学顕微鏡による観察画像をそれぞれ比較すると、エポキシ基を有する樹脂の添加により、ポリエチレン系樹脂の分散性が向上することが確認できた。