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特開2023-170513シリコン単結晶の育成方法、シリコンウェーハの製造方法、および単結晶引き上げ装置
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  • 特開-シリコン単結晶の育成方法、シリコンウェーハの製造方法、および単結晶引き上げ装置 図1
  • 特開-シリコン単結晶の育成方法、シリコンウェーハの製造方法、および単結晶引き上げ装置 図2
  • 特開-シリコン単結晶の育成方法、シリコンウェーハの製造方法、および単結晶引き上げ装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170513
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】シリコン単結晶の育成方法、シリコンウェーハの製造方法、および単結晶引き上げ装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20231124BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082331
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英城
(72)【発明者】
【氏名】杉村 渉
(72)【発明者】
【氏名】横山 竜介
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 淳
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CE10
4G077EB01
4G077EG25
4G077EJ02
(57)【要約】
【課題】単結晶引き上げ装置の製造コストを増大させることなく、シリコン単結晶ごとの酸素濃度のばらつきを抑制する。
【解決手段】チャンバ2と、シリコン融液Mを貯留する坩堝3と、シリコン融液Mを加熱する加熱部4と、チャンバ2の内側に配置された円筒型の断熱材7と、を備えた単結晶引き上げ装置1を用い、シリコン融液Mに水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の育成方法であって、断熱材7の中心軸Cを、坩堝3の回転中心軸Aに対して水平磁場の磁場中心の印加方向MDと直交する水平方向に1.5mm以上ずらして配置してシリコン単結晶を育成するシリコン単結晶の育成方向を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、シリコン融液を貯留する坩堝と、前記シリコン融液を加熱する加熱部と、前記チャンバの内側に配置された円筒型の断熱材と、を備えた単結晶引き上げ装置を用い、前記シリコン融液に水平磁場を印加しながら前記シリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の育成方法であって、
前記断熱材を、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の回転中心軸に対して前記水平磁場の磁場中心の印加方向と直交する水平方向に1.5mm以上ずれるように配置してシリコン単結晶を育成するシリコン単結晶の育成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン単結晶の育成方法において、
前記断熱材は炭素繊維によって形成されているシリコン単結晶の育成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシリコン単結晶の育成方法を含み、
育成された前記シリコン単結晶からシリコンウェーハを切り出すシリコンウェーハの製造方法。
【請求項4】
チャンバと、
シリコン融液を貯溜する坩堝と、
前記シリコン融液を加熱する加熱部と、
前記チャンバの内側に配置された円筒型の断熱材と、
前記坩堝内の前記シリコン融液に水平磁場を印加する磁場印加部と、を備え、
前記断熱材は、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の回転中心軸に対して前記水平磁場の磁場中心の印加方向と直交する水平方向に1.5mm以上ずれるように配置されている単結晶引き上げ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の単結晶引き上げ装置において、
前記断熱材は炭素繊維によって形成されている単結晶引き上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶の育成方法、シリコンウェーハの製造方法、および単結晶引き上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の育成方法として、チョクラルスキー法が知られている。近年、シリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を育成する、いわゆるMCZ法が多用されるようになっている。MCZ法を用いてシリコン融液に水平磁場を印加した場合、図1(a)に示すように坩堝3内で右回りの対流C1が優勢となる場合(以下、右渦モードと呼ぶ。)と、図1(b)に示すように坩堝3内で左回りの対流C2が優勢となる場合(以下、左渦モードと呼ぶ。)のどちらかの対流モードが初期に形成される。図1において、符号MDは水平磁場の磁場中心の印加方向である。
【0003】
対流モードが右渦モードとなるか左渦モードとなるかはランダムであり、対流モードと炉内環境によって結晶に取り込まれる酸素濃度がばらついてしまう。安定した酸素濃度を有するシリコン単結晶を得るためには、引き上げ中のシリコン融液の対流モードを制御することが重要となる。このため、坩堝内のシリコン融液の対流モードを制御する手法について様々な検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、2つの対流モードのうち一方(右渦モードまたは左渦モード)を安定的に選択することによって、対流モードに起因する酸素濃度のばらつきを排除する方法が
開示されている。具体的には、装置の左右でヒーターの抵抗値や断熱材の厚みを異ならせて炉内の熱環境を非対称とすることによって対流モードを一方に固定し、シリコン単結晶ごとの酸素濃度のばらつきを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-151502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、「左右で抵抗値が異なるヒーター」や「左右で厚みが異なる断熱材」といった特別な部材が必要となり、装置の製造コストが増大するという課題がある。
【0007】
本発明は、単結晶引き上げ装置の製造コストを増大させることなく、シリコン単結晶ごとの酸素濃度のばらつきを抑制できるシリコン単結晶の育成方法、シリコンウェーハの製造方法、および単結晶引き上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシリコン単結晶の育成方法は、チャンバと、シリコン融液を貯留する坩堝と、前記シリコン融液を加熱する加熱部と、前記チャンバの内側に配置された円筒型の断熱材と、を備えた単結晶引き上げ装置を用い、前記シリコン融液に水平磁場を印加しながら前記シリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の育成方法であって、前記断熱材を、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の回転中心軸に対して前記水平磁場の磁場中心の印加方向と直交する水平方向に1.5mm以上ずれるように配置してシリコン単結晶を育成することを特徴とする。
【0009】
上記シリコン単結晶の育成方法において、前記断熱材は炭素繊維によって形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記シリコン単結晶の育成方法を含み、育成された前記シリコン単結晶からシリコンウェーハを切り出すことを特徴とする。
【0011】
本発明の単結晶引き上げ装置は、チャンバと、シリコン融液を貯溜する坩堝と、前記シリコン融液を加熱する加熱部と、前記チャンバの内側に配置された円筒型の断熱材と、前記坩堝内の前記シリコン融液に水平磁場を印加する磁場印加部と、を備え、前記断熱材は、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の回転中心軸に対して前記水平磁場の磁場中心の印加方向と直交する水平方向に1.5mm以上ずれるように配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記単結晶引き上げ装置において、前記断熱材は炭素繊維によって形成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】対流モードを説明する模式図である。
図2】本発明の実施形態の単結晶引き上げ装置の模式断面図である。
図3】シリコン単結晶の育成方法における断熱材の配置位置を説明する模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔単結晶引き上げ装置の構成〕
本発明の実施形態の単結晶引き上げ装置の構成について説明する。
図2に示すように、単結晶引き上げ装置1は、MCZ法によりシリコン融液Mに水平磁場を印加しながらシリコン単結晶SMを引き上げる装置である。単結晶引き上げ装置1は、チャンバ2と、チャンバ2内に配置されシリコン融液Mを貯留する坩堝3と、ヒーター4と、シリコン単結晶SMを引き上げる引き上げ部5と、坩堝3の上方においてシリコン単結晶SMを囲むように設けられた熱遮蔽体6と、断熱材7と、坩堝駆動部8と、シリコン融液Mに水平磁場を印加する磁場印加部9(図3参照)と、を備えている。
【0015】
坩堝3は、石英坩堝3Aと、石英坩堝3Aを収容する黒鉛坩堝3Bとから構成される二重構造である。
坩堝駆動部8は、坩堝3を下方から支持する支持軸11を備え、坩堝3を回転中心軸A回りに所定の速度で回転および昇降させる。
【0016】
チャンバ2は、メインチャンバ12と、メインチャンバ12の上部に接続されたプルチャンバ13とを備えている。メインチャンバ12とプルチャンバ13とは、ゲートバルブ14を介して接続されている。
【0017】
メインチャンバ12は、坩堝3、ヒーター4、熱遮蔽体6などが配置される本体部12Aと、本体部12Aの上面を閉塞する蓋部12Bとを備えている。本体部12Aは円筒型をなしている。蓋部12Bには、アルゴンガスなどの不活性ガスをメインチャンバ12に導入するための開口部15が設けられている。本体部12Aと蓋部12Bとの間には、内側に延びる支持部17が設けられている。
【0018】
プルチャンバ13には、不活性ガスをメインチャンバ12内に導入するガス導入口20が設けられている。メインチャンバ12の本体部12Aの下部には、図示しない真空ポンプの駆動により、メインチャンバ12内の気体を吸引して排出するガス排気口21が設けられている。
ガス導入口20からチャンバ2内に導入された不活性ガスは、育成中のシリコン単結晶SMと熱遮蔽体6との間を下降する。次いで、不活性ガスは熱遮蔽体6の下端とシリコン融液Mの液面との隙間を経た後、熱遮蔽体6の外側、さらに坩堝3の外側に向けて流れる。その後、不活性ガスは坩堝3の外側を下降し、ガス排気口21から排出される。
【0019】
ヒーター4は抵抗加熱式による加熱部であり、シリコン融液Mを加熱する。ヒーター4は、坩堝3の周囲、かつ、断熱材7の内側に配置されている。ヒーター4は、その全体が円筒状となるように形成されている。
【0020】
引き上げ部5は、一端に種結晶SCが取り付けられる引き上げ軸24と、引き上げ軸24を昇降および回転させる引き上げ駆動部23とを備えている。
チャンバ2とヒーター4の中心軸は坩堝3の回転中心軸Aと一致し、また、坩堝3の回転中心軸Aは引き上げ軸24と一致している。
【0021】
断熱材7は円筒型をなし、径方向に所定の厚みを有している。断熱材7は、ヒーター4の外側、かつ、チャンバ2の内側に配置されている。断熱材7は、断熱材7の中心軸C(図3参照)を回転中心軸Aと一致するように配置した場合に、断熱材7の外周面とメインチャンバ12の本体部12Aの内周面との間に、少なくとも1.5mmの隙間が生じるように形成されている。
【0022】
断熱材7は、メインチャンバ12の底面12C上に載置されている。断熱材7とメインチャンバ12の底面12Cとの間には黒鉛製のリング16が介在している。リング16は省略することもできる。
断熱材7は、炭素繊維によって形成された炭素繊維断熱材である。
断熱材7は、チャンバ2内において径方向(水平方向)に移動させることが可能である。単結晶引き上げ装置1は、断熱材7を移動後、断熱材7の位置を固定する固定具を備えてもよい。
【0023】
熱遮蔽体6は、育成中のシリコン単結晶SMに対して、坩堝3内のシリコン融液Mやヒーター4や坩堝3の側壁からの高温の輻射熱を遮断する。また、熱遮蔽体6は、結晶成長界面である固液界面の近傍に対しては、外部への熱の拡散を抑制し、シリコン単結晶SMの中心部および外周部の上下方向の温度勾配を制御する。
さらに、熱遮蔽体6は、シリコン融液Mからの蒸発物を炉上方から導入した不活性ガスにより、炉外に排気する整流筒として機能する。
【0024】
熱遮蔽体6は、上端がチャンバ2の支持部17に支持されている。熱遮蔽体6は、下端に向かうにしたがって直径が小さくなる円錐台筒状に形成されている。
なお、熱遮蔽体6の形状は上記したような形状に限ることはなく、例えば円筒状の本体部と、本体部の下端全周から内側に鍔状に突出する突出部とを備え、突出部を下方に向かうにしたがって直径が小さくなる円錐台筒状に形成してもよい。
【0025】
磁場印加部9(図3参照)は、電磁コイルで構成された第1の磁性体9Aおよび第2の磁性体9Bを備えている。磁性体9A,9Bは、チャンバ2の外側において坩堝3を挟んで対向するように設けられている。このように磁場印加部9は、磁場中心の印加方向MDが、坩堝3の回転中心軸Aを通り水平方向となるように配置される。すなわち、磁場中心は坩堝3の回転中心軸Aを通る水平方向である。
【0026】
〔シリコン単結晶の育成方法〕
次に、上記した単結晶引き上げ装置1を用いたシリコン単結晶の育成方法を説明する。
図3は、シリコン単結晶の育成方法における断熱材7の配置位置を説明する模式平面図である。なお、図3においては、断熱材7の配置方法を説明するために、断熱材7のずれ量Δx(移動量)を強調している。
【0027】
まず、作業者は、図3に示すように、断熱材7を、断熱材7の中心軸Cが坩堝3の回転中心軸Aに対して水平磁場の磁場中心の印加方向MDと直交する水平方向(x軸方向)にずれるように配置する。具体的には、鉛直方向をz軸、水平磁場の磁場中心の印加方向MDをy軸、z軸およびy軸と直交する水平方向をx軸とした場合に、断熱材7を、断熱材7の中心軸Cがx軸方向にずれるように配置する。
断熱材7のずれ量Δxは、1.5mm以上である(|Δx|≧1.5mm)。なお、図3では、断熱材7を-x方向にずらしているが、断熱材7を+x方向にずらしてもよい。また、断熱材7のずれ量Δxの上限は、3.0mmである(|Δx|≦3.0mm)。この上限は、断熱材7がチャンバ2の内周面やヒーター4の外周面に干渉することによるものである。
【0028】
次いで、水平磁場を印加せずに、チャンバ2内に不活性ガスを導入し、減圧下の不活性ガス雰囲気に維持した状態で、坩堝3を回転させるとともに、坩堝3に貯留された多結晶シリコンなどの固形原料をヒーター4の加熱により溶融させ、シリコン融液Mを生成する。
【0029】
次いで、磁場印加部9を駆動して水平磁場を印加する。ここで、断熱材7をx軸方向にずらして設置していることにより、断熱材7とヒーター4との間の隙間は、周方向で不均一となっている。本実施形態では、断熱材7を-x方向にずらしているため、図3における右側(+x方向)の隙間が狭くなっている。この状態でシリコン融液Mの加熱を行うと、シリコン融液Mは左側よりも右側が相対的に高温になる。具体的には、右側の方が断熱材7とヒーター4との間の隙間が小さく、輻射による熱移動がより大きくなるため、それに近いシリコン融液Mの温度が高くなる。
シリコン融液Mの左側よりも右側が相対的に高温になると、シリコン融液Mの浮力は左側よりも右側の方が大きくなり、対流モードは右渦モードよりも左渦モードの方が形成されやすくなる。
【0030】
なお、本実施形態では、左渦モードを形成しやすくするために断熱材7を-x方向にずらしたが、断熱材7を+x方向にずらした場合は、右渦モードが形成されやすくなる。
【0031】
この後、事前に設定されたプロセス条件に基づき、シリコン融液Mに種結晶SCを着液してから、シリコン単結晶SMを引き上げる。
【0032】
〔シリコンウェーハの製造方法〕
上記したシリコン単結晶の育成方法で育成されたシリコン単結晶SMのインゴットから、図示しないワイヤソーを用いてシリコンウェーハを切り出し、面取り、研磨、洗浄などの一般的なウェーハ製造加工工程を経ることで、シリコンウェーハを製造することができる。
【0033】
上記実施形態によれば、断熱材7を、水平磁場の磁場中心の印加方向MDと直交する水平方向にずれるように配置するだけの簡単な方法で、引き上げ装置1の構造の対称性に関係なく、対流モードを一方のモード(右渦モードまたは左渦モード)に固定しやすできる。したがって、対流モードの固定によって、シリコン単結晶SMごとの酸素濃度のばらつきを抑制できる。
【0034】
また、周方向に厚みが異なるような特殊形状の断熱材を用いる場合は、右渦モード用の断熱材/左渦モード用の断熱材を使い分ける必要があるが、上記実施形態のように断熱材の厚みや構造が周方向で同じであれば、断熱材の設計や製造、管理が容易である。
【0035】
また、断熱材7を炭素繊維によって形成された炭素繊維断熱材としたことによって、耐熱温度が高く、かつ、断熱性能に優れた断熱材とすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、作業者が断熱材7を移動させる構成としたが、これに限ることはなく、単結晶引き上げ装置1の製造段階で、断熱材7の中心軸Cが坩堝3の回転中心軸Aに対して水平磁場の磁場中心の印加方向MDと直交する水平方向に1.5mm以上ずれるように、断熱材7を配置してもよい。
【0037】
〔実施例〕
断熱材のずれ量を変化させながら、シリコン単結晶の育成を行い、シリコン単結晶の酸素濃度を比較した。
表1に示すように、変化させる断熱材のずれ量ΔxはΔx=-3.0mm、-2.0mm、-1.5mm、-1.0mm、+1.0mm、+1.5mm、+2.0mm、+3.0mmとした。
これら条件で、直径300mm、結晶長2000mmのシリコン単結晶を育成した。シリコン単結晶は、各条件で20本ずつ育成した。
【0038】
【表1】
【0039】
各条件における右渦モード/左渦モードの発生率と、育成したシリコン単結晶の頂部から1000mm下方の位置の酸素濃度をフーリエ変換赤外線分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy/FTIR)で測定した結果を表1に示す。
右渦モード/左渦モードの判断は、温度計測部30(図2参照)を用いてシリコン融液表面の2ヶ所T1、T2を測定し、その温度の大小から判断した。温度計測部30は、一対の反射部30Aと、一対の放射温度計30Bとを備え、シリコン融液Mの表面の温度を計測する。
また、表1の酸素濃度は、比較例1(Δx=0mm)の酸素濃度の平均値を基準値として、各条件20本のシリコン単結晶の酸素濃度の最小値~最大値を基準値に対する比として示した。
【0040】
表1からわかるように、|Δx|≧1.5mmであれば(実施例1~6)、対流モード発生率が左渦モード100%または右渦モード100%となり、右渦モードまたは左渦モードに固定できることがわかる。一方、|Δx|=1.0の場合(比較例2,3)、右渦モードまたは左渦モードに固定できず、酸素濃度の最大値・最小値の幅も0.3と大きくなっている。
右渦モード/左渦モードのどちらになるかによって、酸素濃度の平均値は基準値(1.0)からは増加または減少しているが、最大値・最小値の幅は0.4(比較例1)から0.05(実施例1~6)へと大きく減少しており、酸素濃度の制御性が向上していることがわかる。所望の酸素濃度の結晶を育成するには、右渦または左渦モードに固定したうえで、結晶育成時のルツボ回転速度や結晶回転速度などの他のプロセス条件を調整すればよい。
【符号の説明】
【0041】
1…単結晶引き上げ装置、2…チャンバ、3…坩堝、4…ヒーター(加熱部)、5…引き上げ部、6…熱遮蔽体、7…断熱材、9…磁場印加部、23…引き上げ駆動部、24…引き上げ軸、A…回転中心軸、C…中心軸、M…シリコン融液、MD…水平磁場の磁場中心の印加方向、SC…種結晶、SM…シリコン単結晶。
図1
図2
図3