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特開2023-170802エキスパンド装置、及び、エキスパンド方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170802
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】エキスパンド装置、及び、エキスパンド方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H01L21/78 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082837
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】天野 薫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良信
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA28
5F063AA31
5F063AA48
5F063DD74
5F063DD93
5F063DE34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷却不足の領域の有無を検出することで、被加工物の分割不良の発生を防止するエキスパンド装置及び方法を提供する。
【解決手段】被加工物が貼着されたシートを拡張するエキスパンド装置20であって、該シートを拡張する拡張機構50と、該シートに貼着された被加工物を冷却する冷却ユニット30と、拡張機構50で該シートを拡張する前に冷却ユニット30で冷却された被加工物の温度分布を検出する温度分布検出ユニット60と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が貼着されたシートを拡張するエキスパンド装置であって、
該シートを拡張する拡張機構と、
該シートに貼着された被加工物を冷却する冷却ユニットと、
該拡張機構で該シートを拡張する前に該冷却ユニットで冷却された被加工物の温度分布を検出する温度分布検出ユニットと、を備えたエキスパンド装置。
【請求項2】
警報を発信する警報発信ユニットと、
少なくとも該拡張機構と該警報発信ユニットとを制御するコントローラと、を備え、
該コントローラは、該温度分布検出ユニットで検出された被加工物の温度分布が異常か否かを判定する判定部を有し、
該判定部で被加工物の温度分布が異常と判定された場合に該警報発信ユニットから警報を発信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項3】
該拡張機構は、
被加工物の外側で該シートを挟持する複数のシート挟持ユニットと、
複数の該シート挟持ユニットを互いに離反する方向に移動させる拡張移動ユニットと、を有し
該冷却ユニットは、該シート挟持ユニットで挟持された該シートに当接する当接面を有し該シートを冷却する冷却テーブルを備え、
該温度分布検出ユニットは、該シート挟持ユニットで挟持された該シートに貼着された被加工物に対向して配置され、被加工物を撮像する赤外線カメラを有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求書2に記載のエキスパンド装置。
【請求項4】
被加工物が貼着されたシートを拡張するエキスパンド方法であって、
シートに貼着された被加工物を冷却する冷却ステップと、
該冷却ユニットで冷却された被加工物の温度分布を検出する温度分布検出ステップと、
検出された被加工物の温度分布が異常か否かを判定する判定ステップと、
判定ステップにおいて温度分布が正常と判定された場合に、該シートを拡張するエキスパンドステップと、
を備えたエキスパンド方法。
【請求項5】
該判定ステップで該被加工物の温度分布が異常と判定された場合に、
警報発信ユニットから警報を発信する警報発信ステップと、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載のエキスパンド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物が貼着されたシートを拡張するエキスパンド装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるエキスパンド装置のように、被加工物(ウェーハ)の裏面にDAF(Die Attach Film)を貼着するとともに、DAFを介してシートに貼着された被加工物に分割起点を形成し、シートを拡張することで被加工物をDAFごと分割し、裏面にDAFが貼着された複数のチップを形成することが知られている。
【0003】
DAFは延性を有し、常温では破断され難いため、シートを拡張する際にはDAFが冷却される。また、金属膜が積層されたウェーハを被加工物としてエキスパンド装置にて分割する場合においても、金属膜が延性を有するため、同様に金属膜が冷却される。
【0004】
このようなDAFや被加工物の金属膜の冷却には、例えば、特許文献1に開示されるような冷却テーブルが使用され、シートに冷却テーブルを当接させることでシートを介してDAFや被加工物の金属膜の冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-186437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されるようなエキスパンド装置の冷却テーブルの構成を使用する場合において、エキスパンドの際に被加工物の屑等の異物が発生することがある。そしてこの異物が冷却テーブル上に付着すると、異物を挟み込んだ状態で冷却テーブルがシートに当接し、異物を挟み込んだ領域では充分にDAFや被加工物の金属膜を冷却できないことになる。
【0007】
そして、冷却不足の領域では被加工物が分割され難くなり、未分割の領域が生じるおそれがある。未分割の領域が一度形成されてしまうと、さらに追加的にシートを拡張しても既に分割されている領域のシートが拡張されるばかりとなり、未分割の領域は分割され難いままとなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、冷却不足の領域の有無を検出することで、被加工物の分割不良の発生を防止するための新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
本発明の一態様によれば、被加工物が貼着されたシートを拡張するエキスパンド装置であって、該シートを拡張する拡張機構と、該シートに貼着された被加工物を冷却する冷却ユニットと、該拡張機構で該シートを拡張する前に該冷却ユニットで冷却された被加工物の温度分布を検出する温度分布検出ユニットと、を備えたエキスパンド装置とする。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、警報を発信する警報発信ユニットと、少なくとも該拡張機構と該警報発信ユニットとを制御するコントローラと、を備え、該コントローラは、該温度分布検出ユニットで検出された被加工物の温度分布が異常か否かを判定する判定部を有し、該判定部で被加工物の温度分布が異常と判定された場合に該警報発信ユニットから警報を発信させる、エキスパンド装置とする。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、該拡張機構は、被加工物の外側で該シートを挟持する複数のシート挟持ユニットと、複数の該シート挟持ユニットを互いに離反する方向に移動させる拡張移動ユニットと、を有し該冷却ユニットは、該シート挟持ユニットで挟持された該シートに当接する当接面を有し該シートを冷却する冷却テーブルを備え、該温度分布検出ユニットは、該シート挟持ユニットで挟持された該シートに貼着された被加工物に対向して配置され、被加工物を撮像する赤外線カメラを有する、こととする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、被加工物が貼着されたシートを拡張するエキスパンド方法であって、シートに貼着された被加工物を冷却する冷却ステップと、該冷却ユニットで冷却された被加工物の温度分布を検出する温度分布検出ステップと、検出された被加工物の温度分布が異常か否かを判定する判定ステップと、判定ステップにおいて温度分布が正常と判定された場合に、該シートを拡張するエキスパンドステップと、を備えたエキスパンド方法とする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、該判定ステップで該被加工物の温度分布が異常と判定された場合に、警報発信ユニットから警報を発信する警報発信ステップと、を備えることとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明の一態様によれば、シートをエキスパンドする前に冷却不良を判定することで、冷却不良のままシートを拡張して被加工物の分割不良が発生してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】接着フィルムを介してウェーハがシートに貼着されることついて示す斜視図。
図2】エキスパンド装置の構成例を示す斜視図。
図3】冷却ユニットの構成を示す斜視図。
図4】エキスパンド方法の流れを示すフローチャート。
図5】(A)は挟持ステップについて説明する図。(B)は冷却ステップについて説明する図。(C)はエキスパンドステップについて説明する図。
図6】(A)は正常判定される場合のサーモグラフィの例を示す図。(B)は異常判定される場合のサーモグラフィの例を示す図。(C)は全体的に冷却不足が生じた場合のサーモグラフィの例を示す図。
図7】(A)はフレーム貼着ステップについて説明する図。(B)はシートをカットする様子について説明する図。(C)はシートに貼着されたウェーハの搬出について説明する図。
図8】エキスパンド装置の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、加工対象となる被加工物1の例を示すものであり、被加工物1は、シリコン、ガリウムヒ素等の半導体基板にIC、LSI等のデバイスが形成された半導体ウェーハでもよいし、サファイア系の無機材料基板にLED等の光デバイスが形成された光デバイスウェーハでもよい。この他、セラミック、ガラス等の基板でもよい。
【0018】
図1に示すように、被加工物1の表面1aには、互いに交差する複数の分割予定ライン5が設定され、各分割予定ライン5で区画された各領域にそれぞれデバイス2が形成される。
【0019】
被加工物1には、分割予定ライン5に沿って分割起点が形成されている。この分割起点は、レーザー加工により被加工物1内に形成された改質層や、切削ブレードによるハーフカット加工により被加工物1の表面1aから所定の深さまで形成された切削溝などである。
【0020】
或いは、被加工物1は、分割予定ライン5に沿ってチップに分割されたものであってもよい。例えば、レーザーアブレーション加工により分割溝が形成されていることや、切削ブレードによるフルカット加工により分割溝が形成されていることや、DBG(Dicing Before Grinding)加工やSDBG(Stealth Dicing Before Grinding)加工により分割がされたものであってもよい。
【0021】
被加工物1の裏面1bには、接着フィルム4としてDAF(Die Attach Film)が貼着される。接着フィルム4は、被加工物1から個々に分割されたチップを基板などに固定するためのものである。接着フィルム4は、被加工物1よりも大径の円形状に形成され、被加工物1の裏面1bが接着フィルム4側に貼着される。接着フィルム4(DAF)は、例えば、銀粒子やAgナノ粒子などの金属粒子を含む樹脂シート(エポキシ樹脂等)でもよく、導電性を有するものでもよい。また、接着フィルム4はデバイス(チップ)と一体となって個片化されることが予定される。
【0022】
被加工物1は、接着フィルム4を介してシート11(エキスパンドシート)に貼着される。なお、図1では、シート11の表面に予め接着フィルムが配置され、この接着フィルム上に被加工物1が貼着されるものとしている。この他、液状の接着フィルム剤を被加工物1やシート11に塗布して接着フィルム層を構成してもよい。
【0023】
被加工物1の裏面1bには金属膜が形成される場合がある。この場合、被加工物1の裏面1bに接着フィルム4が貼着されずに、被加工物1がシート11に直接貼着される場合もあり、この場合には、被加工物1の裏面1bの金属膜がシート11に直接接触される。
【0024】
シート11は、伸縮性を有するものであり、例えばポリオレフィンや塩化ビニル等の合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ被加工物1の裏面1b(接着フィルム4)及び環状フレーム10に貼着する粘着層とを備える。シート11は、平面形状が矩形状でかつ環状フレーム10よりも大きい形状に形成される。環状フレーム10の開口10aの平面形状は、被加工物1及び接着フィルム4よりも大径の円形にて構成される。なお、環状フレーム10は、シート11を拡張した状態でシート11に貼着されるものであり、環状フレーム10によって分割されたチップ同士の間隔が維持される。
【0025】
図2にエキスパンド装置20の一例を示す図である。
エキスパンド装置20では、被加工物1が貼着されたシート11(図1)が第1方向D1と、第1方向D1に直交する第2方向D2と、に拡張され、ウェーハが個々のチップに分割される。本実施例のエキスパンド装置20は、被加工物1よりも径の大きい接着フィルム4を介して被加工物1が貼着されたシート11を拡張し、接着フィルム4を被加工物1の分割予定ラインに沿って破断するものである。
【0026】
図2に示すように、エキスパンド装置20は、主に、平板状の固定基台23と、固定基台23の中央に設けられた冷却加熱手段である冷却ユニット30と、拡張機構50(50A~50D)と、温度分布検出ユニット60と、コントローラ100と、を備えて構成される。
【0027】
図2に示すように、拡張機構50は、ウェーハが貼着されたシートの4辺を挟持して拡張するものである。拡張機構50は、冷却ユニット30の周囲に水平面内において90度間隔で配置される4つの挟持移動ユニット50A~50Dを有して構成される。第1挟持移動ユニット50Aと第2挟持移動ユニット50Bは、第1方向D1に沿って互いに対向し、第3挟持移動ユニット50Cと第4挟持移動ユニット50Dは、第2方向D2に沿って互いに対向する。
【0028】
各挟持移動ユニット50A~50Dは同一に構成される。
第1挟持移動ユニット50Aを用いて説明すると、第1挟持移動ユニット50Aは、固定基台23上に設けられた柱状の移動基台52と、移動基台52に鉛直方向に移動自在に設けられたシート挟持ユニット53(53U,53D)と、シート挟持ユニット53の上側シート挟持ユニット53Uと下側シート挟持ユニット53Dを互いに近づく方向及び互いに離れる方向に移動させる上下移動ユニット54と、を備える。上側シート挟持ユニット53Uと、下側シート挟持ユニット53Dは、互いに鉛直方向に間隔をあけて配置され、上下移動ユニット54により互いに近づけられて間にシート挟んで保持する。上下移動ユニット54は、移動基台52に設けられる。
【0029】
上下移動ユニット54は、一対のシート挟持ユニット53を鉛直方向に移動自在とするモータ55と、モータ55により軸心回りに回転されるボールねじ56と、ボールねじ56に螺合しかつシート挟持ユニット53に対してアーム部材57と連結されるナット58と、を備える。上下移動ユニット54は、モータ55がボールねじ56を軸心回りに回転させることで、ナット58、アーム部材57、及び、シート挟持ユニット53を鉛直方向に移動させる。
【0030】
また、上下移動ユニット54は、モータ55によりボールねじ56を軸心回りに回転することで、シート挟持ユニット53を鉛直方向に同方向に移動させることもできる。これにより、シートを挟んだ状態のシート挟持ユニット53を上下移動ユニット54で上昇させることにより、冷却ユニット30に対しシートを鉛直方向に相対移動させることができる。なお、冷却ユニット30の円板状の冷却テーブル31を昇降させることで、シート挟持ユニット53に対しシートを鉛直方向に相対移動させる構成としてもよい。
【0031】
シート挟持ユニット53は、上下に対向する上側シート挟持ユニット53Uと、下側シート挟持ユニット53Dを有しており、各シート挟持ユニット53U,53Dは、上下方向に対向し、その間にシートを挟持するための複数のローラー53aを有して構成される。ローラー53aはシートが伸びる方向と直行する方向に自由回転するように構成され、シートを挟持しつつ、シートをエキスパンドすることができるようになっている。
【0032】
第1挟持移動ユニット50Aの移動基台52は、拡張移動ユニット59により固定基台23に対し第1方向D1に移動自在に設けられている。拡張移動ユニット59は、モータ59aと、モータ59aにより回転されるボールねじ59bと、を有し、モータ59aにてボールねじ59bを回転駆動することで、移動基台52が第1方向D1に移動される。
【0033】
以上の構成により、第1、第2挟持移動ユニット50A,50Bが第1方向D1に互いに離間する方向に移動され、第3、第4挟持移動ユニット50C,50Dが第2方向D2に互いに離間する方向に移動され、各挟持ユニットにより挟持されたシートが拡張される。
【0034】
シートを拡張する前に、図2、及び、図3に示される冷却ユニット30によってシートの冷却が行われる。冷却ユニット30は、円板状の冷却テーブル31と、冷却テーブル31の冷却、加熱を行う図示せぬペルチェ素子機構と、を有して構成される。なお、冷却テーブル31の形状は円板状に限定されず、例えば、矩形状でもよい。
【0035】
図3に示すように、冷却ユニット30の冷却テーブル31の上面34は、水平方向に沿って平坦に形成され、冷却テーブル31の上面34をシート11の裏面に接触させることで、テープを介して接着フィルム4や被加工物1を冷却する。冷却テーブル31は、昇降機構32によって上下方向に移動する。
【0036】
図2に示すように、冷却ユニット30の冷却テーブル31の上方には、温度分布検出ユニット60が配設される。温度分布検出ユニット60は、各シート挟持ユニット53で挟持されたシートに貼着された被加工物に対向して配置され、被加工物を撮像する赤外線カメラを有して構成される。温度分布検出ユニット60は、赤外線サーモグラフィカメラにて構成され、冷却ユニット30で冷却された被加工物の温度分布を検出することができる。
【0037】
図2に示すように、エキスパンド装置20には、冷却ユニット30で冷却された被加工物の温度分布に異常がある場合に、警報を発信する警報発信ユニットとして機能する表示モニタ71、スピーカー72が設けられる。
【0038】
図2に示すように、コントローラ100は、冷却ユニット30、拡張機構50(挟持移動ユニット50A~50D)、温度分布検出ユニット60を制御し、シートを拡張する前に被加工物の温度分布を検出し、検出した温度分布に基づいてシートの拡張を行う。
【0039】
図2に示すように、コントローラ100は、各ユニットを制御するための制御部102と、被加工物の温度分布の異常判定を行う判定部104と、を有する。
【0040】
次に、以上の装置構成を用いたシートのエキスパンド方法の例について説明する。
図4は、エキスパンド方法の各ステップについて示すフローチャートである。
【0041】
<挟持ステップ>
図5(A)に示すように、被加工物1の外側の位置でシート11を複数のシート挟持ユニット53で挟持するステップである。図5(A)では第1方向D1に対向するシート挟持ユニット53,53を示すが、第2方向D2(図2)において対向するシート挟持ユニット53,53においても同様に挟持される。
【0042】
被加工物1には、分割予定ラインに沿って分割起点が形成されている、或いは、分割予定ラインに沿ってチップに分割されている。被加工物1は、接着フィルム4を介してシート11に貼着された状態となっている。
【0043】
シート11において、接着フィルム4とシート挟持ユニット53の間のフレーム被貼着領域15には、後に環状フレーム10(図7(C))が貼着されることが予定される。
【0044】
<冷却ステップ>
図5(B)に示すように、シート11に貼着された被加工物1を冷却するステップである。具体的には、冷却ユニット30の冷却テーブル31をシート11の裏面側に当着させ、シート11を介して接着フィルム4や被加工物1を冷却する。この冷却により、接着フィルム4の破断性や、被加工物1に形成される金属膜の破断性が向上する。
【0045】
なお、冷却ユニット30の冷却テーブル31は、シート11の裏面側に当着させなくてもよく、また、冷却ユニット30とは異なる別の冷却機構によって接着フィルム4や被加工物1を冷却することとしてもよい。例えば、冷却チャンバー内にエキスパンド装置を収容し、冷却チャンバー内の雰囲気温度を低下させることで接着フィルム4や被加工物1を冷却することとしてもよい。
【0046】
<温度分布検出ステップ>
図5(B)に示すように、冷却ユニット30で冷却された被加工物1の温度分布を検出するステップである。具体的には、温度分布検出ユニット60により被加工物1の上面を撮像し、赤外線サーモグラフィによって被加工物1の温度分布を検出する。
【0047】
図6(A)は、サーモグラフィ64の表示の例であり、この例では、被加工物1の全体が同一の色で表示され、均一な温度に冷却されていることが検出された様子を示している。一方で、図6(B)のサーモグラフィ64では、被加工物1の全体において色が均一ではなく、他の領域と比較して温度が高い冷却不足領域1Xが検出された様子を示している。
【0048】
図6(A)(B)のサーモグラフィ64は、図2に示す表示モニタ71に表示され、作業者は被加工物1の冷却の状態を確認することができ、また、冷却な不十分な箇所を特定することができる。なお、冷却不足は、例えば、図5(B)において、冷却テーブル31とシート11の間に異物を挟み込んだ場合などに発生することになる。
【0049】
<判定ステップ>
検出された被加工物の温度分布が異常か否かを判定するステップである。
コントローラ100の判定部104(図2)は、例えば、図6(B)のサーモグラフ表示64に示すように、被加工物1の温度分布において、色が均一でない場合、即ち、一部の領域の温度が高い場合には、当該領域において冷却不足が生じ冷却不足領域1Xが存在するものとして異常判定を行う。
【0050】
一方で、図6(A)のサーモグラフ表示64に示すように、被加工物1の温度分布において、色が均一である場合には、冷却が適切に行われているものとして、コントローラ100の判定部104(図2)は正常判定を行う。
【0051】
なお、図6(B)の例のように、一部の冷却不足領域1Xの温度が高い場合に異常判定をすることに加え、図6(C)の例のように、温度が均一であったとしても全体的に温度が高く、全体として冷却不足が生じている場合に異常判定をすることとしてもよい。即ち、例えば、規定温度T1を設定し、規定温度T1よりも温度が高い場合には異常判定をするなどである。
【0052】
<警報発信ステップ>
判定部104(図2)で被加工物の温度分布が異常と判定された場合に、警報発信ユニットから警報を発信させるステップである。
【0053】
具体的には、コントローラ100は、図2に示す表示モニタ71に被加工物の冷却状態が異常であることの表示をさせたり、スピーカー72から警報音を発生させる。
【0054】
作業者は、この警報に基づいて、エキスパンド装置の稼働を停止し、冷却テーブル31とシート11の間の異物の存在の確認や、冷却テーブル31のクリーニングなど、必要な対応を取ることが可能となる。
【0055】
<エキスパンドステップ>
図5(C)に示すように、判定ステップにおいて温度分布が正常と判定された場合に、シートを拡張するステップである。
【0056】
具体的には、図5(C)に示すように、シート挟持ユニット53,53を互いに離反する方向に移動させることでシート11を拡張し、接着フィルム4を分割予定ラインに沿って破断させる。この際、接着フィルム4や被加工物は均一に冷却され、冷却にばらつきが存在していないので、分割予定ラインに沿った破断が良好に行われ、破断不良の発生が抑えられる。
【0057】
図5(C)に示すように、被加工物1に分割起点が形成されている場合には、被加工物1も同時に分割されてチップCに個片化され、被加工物1が既に分割されている場合には、各チップCの間に間隔が形成される。
【0058】
<フレーム貼着ステップ>
図7(A)に示すように、エキスパンドステップを実施した後、環状フレーム10をフレーム被貼着領域15に貼着するステップである。
【0059】
具体的には、フレーム搬送ユニット65により環状フレーム10を搬送し、環状フレーム10の開口10aで被加工物1を取り囲むようにして、環状フレーム10をフレーム被貼着領域15に貼着する。
【0060】
次いで、図7(A)に示すように、シート11の裏側からフレーム貼着用ローラー36を押し当てて、環状フレーム10とシート11をより強固に接着させる。フレーム貼着用ローラー36は、例えば、図3に示す冷却ユニット30の冷却テーブル31の側方に位置するように回転テーブル37に設けられ、回転テーブル37が360度回転されることで、シート11を裏側から上方に押し上げる。
【0061】
次いで、図7(B)に示すように、シート11の裏側からシートカッター38を当接させ、環状フレーム10がシート11に貼着される箇所において、環状フレーム10の幅方向の略中央となる位置においてシート11を円周方向にカットする。シートカッター38は、例えば、円板状のカッターで構成され、図3に示す冷却ユニット30の冷却テーブル31の側方に位置するように回転テーブル37に設けられ、回転テーブル37が360度回転されることで、シート11を周方向にカットする。
【0062】
次いで、図7(C)に示すように、フレーム搬送ユニット65を上昇させ、シート11と一体となった被加工物1を搬出する。
【0063】
以上のようにして、シート11をエキスパンドする前に冷却不良を判定することで、冷却不良のままシート11を拡張して被加工物1の分割不良が発生してしまうことを防止できる。
【0064】
なお、本発明は、図8に示されるエキスパンド装置80の構成においても実施することができる。図8に示す構成では、拡張ドラム81と、下側プレート82と、昇降機構83と、上側挟持プレート84と、を有してシート11を拡張する拡張機構と、該シートに貼着された被加工物を冷却する冷却ユニット85と、該拡張機構で該シートを拡張する前に該冷却ユニットで冷却された被加工物の温度分布を検出する温度分布検出ユニット86と、を備えたエキスパンド装置80としている。
【0065】
下側プレート82は、四箇所に設けられた昇降機構83によって昇降し、下側プレート82の中央の開口82aに収められた拡張ドラム81が下側プレート82と相対的に上下動する。
【0066】
上側プレート84は、下側プレート82との間でシート11を挟持するものである。上側プレート84には接着フィルム4や被加工物1よりも直径の広い開口84aが形成され、開口84aを通じて冷却ユニット85の冷却プレート85aが被加工物1に対向させることができる。冷却プレート85aからは冷気が放出されて被加工物1や接着フィルム4を冷気によって冷却する。なお、冷却ユニット85により冷却する構成とする他、例えば、冷却チャンバー内に拡張ドラム81と、下側プレート82と、昇降機構83と、上側挟持プレート84と、を収容し、冷却チャンバー内の雰囲気温度を低下させることで接着フィルム4や被加工物1を冷却することとしてもよい。
【0067】
拡張ドラム81には、下側からシート11を介して被加工物1に対向する温度分布検出ユニット86が設けられる。
【0068】
以上の構成において、上側プレート84と下側プレート82との間でシート11を挟持するとともに、冷却ユニット85にて被加工物1と接着フィルム4を冷却する。そして、温度分布検出ユニット86により温度分布が異常であるか否かを判定する。
【0069】
異常と判定された場合には、冷却ユニット85の不良発生などの確認を適宜実施する。このように、シート11をエキスパンドする前に冷却不良を判定することで、冷却不良のままシート11を拡張して被加工物1の分割不良が発生してしまうことを防止できる。
【0070】
正常と判定された場合には、下側プレート82と上側プレート84を一体として下降させ、拡張ドラム83を相対的に上昇させることでシート11がエキスパンドされ、被加工物1が分割される。
【符号の説明】
【0071】
1 被加工物
1X 冷却不足領域
1a 表面
1b 裏面
2 デバイス
4 接着フィルム
5 分割予定ライン
10 環状フレーム
11 シート
20 エキスパンド装置
30 冷却ユニット
31 冷却テーブル
50 拡張機構
50A 挟持移動ユニット
50B 挟持移動ユニット
50C 挟持移動ユニット
50D 挟持移動ユニット
52 移動基台
53 シート挟持ユニット
53U 上側シート挟持ユニット
53D 下側シート挟持ユニット
54 上下移動ユニット
59 拡張移動ユニット
60 温度分布検出ユニット
64 サーモグラフィ
65 フレーム搬送ユニット
71 表示モニタ
72 スピーカー
100 コントローラ
102 制御部
104 判定部
C チップ
T1 規定温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8