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特開2023-170864樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、アンテナ装置及びアンテナモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170864
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、アンテナ装置及びアンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231124BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231124BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231124BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231124BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231124BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08K3/36
C08J5/24
B32B15/08 U
B32B27/20 Z
H05K1/03 610H
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082933
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 千尋
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】森田 高示
(72)【発明者】
【氏名】春日 圭一
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
5J045
【Fターム(参考)】
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD11
4F072AG03
4F072AL13
4F100AA20A
4F100AA34A
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AH06A
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CA08A
4F100CA23A
4F100DE04A
4F100DH01A
4F100EJ67
4F100GB43
4F100JA06
4F100JA07
4F100JB13A
4F100JB15A
4F100JG05A
4F100YY00A
4J002AA021
4J002CC031
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF211
4J002CH011
4J002CM011
4J002CM021
4J002CM041
4J002CP031
4J002DE077
4J002DE136
4J002DE147
4J002DE186
4J002DE187
4J002DE237
4J002DE247
4J002DF017
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK007
4J002FA087
4J002FD206
4J002FD207
4J002GF00
4J002GQ00
5J045AB05
5J045DA09
5J045LA03
(57)【要約】
【課題】高い比誘電率(Dk)を有しながらも、流動性に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、アンテナ装置及びアンテナモジュールを提供する。
【解決手段】(A)熱硬化性樹脂と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物であって、前記(B)無機充填材が、(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材を含有する、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、アンテナ装置及びアンテナモジュールである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性樹脂と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)無機充填材が、(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材を含有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)熱硬化性樹脂が、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B1)高誘電率無機充填材が、チタン系無機充填材である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B1)高誘電率無機充填材の平均粒子径(D50)が、0.1~20μmである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物中における前記(B1)高誘電率無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物の固形分全量に対して、10~70体積%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B2)球状無機充填材が、シリカである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B2)球状無機充填材の平均粒子径(D50)が、10~1,500nmである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物中における前記(B2)球状無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1~20体積%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
アンテナモジュール用である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有するプリプレグ。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
【請求項14】
請求項13に記載のプリント配線板を有するアンテナ装置。
【請求項15】
請求項14に記載のアンテナ装置と、給電回路と、を有するアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、アンテナ装置及びアンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の携帯端末が普及し、さらにはIoT(Internet of Things)等の技術革新が進んだ結果、無線通信機能を有する家電製品及び電子機器が増加している。これによって無線ネットワークの通信トラフィックが増大し、通信速度及び通信品質が低下することが懸念されている。
当該問題を解決するため、第5世代移動通信システム(以下、「5G」と称することがある。)の開発が進められており、現在、既に利用されつつある。5Gにおいては、複数のアンテナ素子を用いて高度なビームフォーミング及び空間多重を行なうと共に、従来から使用されている6GHz帯の周波数の信号に加えて、数十GHzといった、より高い周波数のミリ波帯の信号を使用する。それによって、通信速度の高速化及び通信品質の向上が期待されている。
一方で、スマートフォン等の携帯端末は小型化が求められるため、アンテナモジュールの小型化も必要であり、アンテナモジュールの小型化を達成するには基板の比誘電率(Dk)を高くする必要があることが広く知られている。
【0003】
基板の比誘電率(Dk)を高める方法としては、高い比誘電率(Dk)を有する充填材を添加する方法が用いられている。
特許文献1には、N吸着法によるBET比表面積が0.1~2.0m/gの範囲内で、かつ、空気透過法により測定した平均粒径が0.8~100μmの範囲内である酸化チタンまたはチタン酸塩からなるセラミックス粉末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/027074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によると、合成樹脂と複合化した場合に、十分に高い比誘電率と、十分に低い誘電正接を示す誘電性複合材料を与えることができるセラミックス粉末を提供することができるとされている。
【0006】
しかしながら、本発明者等の検討によると、チタン系無機充填材等の高誘電無機充填材を配合する場合、樹脂組成物の流動性が低下することが判明している。樹脂組成物の流動性の低下は、配線埋め込み性等の悪化の原因になり得るため、改善が望まれている。
【0007】
本実施形態は、このような現状に鑑み、高い比誘電率(Dk)を有しながらも、流動性に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、アンテナ装置及びアンテナモジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記の課題を解決すべく検討を進めた結果、下記の本実施形態により課題を解決できることを見出した。
すなわち、本実施形態は、下記[1]~[15]に関する。
[1](A)熱硬化性樹脂と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物であって、
前記(B)無機充填材が、(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材を含有する、樹脂組成物。
[2]前記(A)熱硬化性樹脂が、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(B1)高誘電率無機充填材が、チタン系無機充填材である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記(B1)高誘電率無機充填材の平均粒子径(D50)が、0.1~20μmである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記樹脂組成物中における前記(B1)高誘電率無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物の固形分全量に対して、10~70体積%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記(B2)球状無機充填材が、シリカである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記(B2)球状無機充填材の平均粒子径(D50)が、10~1,500nmである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記樹脂組成物中における前記(B2)球状無機充填材の含有量が、前記樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1~20体積%である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]アンテナモジュール用である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有するプリプレグ。
[11]上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
[12]上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルム。
[13]上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を有するプリント配線板。
[14]上記[13]に記載のプリント配線板を有するアンテナ装置。
[15]上記[14]に記載のアンテナ装置と、給電回路と、を有するアンテナモジュール。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、高い比誘電率(Dk)を有しながらも、流動性に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、アンテナ装置及びアンテナモジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
例えば、数値範囲「X~Y」(X、Yは実数)という表記は、X以上、Y以下である数値範囲を意味する。そして、本明細書における「X以上」という記載は、X及びXを超える数値を意味する。また、本明細書における「Y以下」という記載は、Y及びY未満の数値を意味する。
本明細書中に記載されている数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「樹脂組成物」とは、後述する各成分の混合物、当該混合物を半硬化させた物を含む。
【0012】
本明細書において、「固形分」とは、溶剤等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、樹脂組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分を示し、室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。ここで、本明細書において室温とは25℃を示す。
【0013】
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本実施形態に係る樹脂組成物の効果を奏する機序を限定するものではない。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0014】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂と、(B)無機充填材と、を含有する樹脂組成物であって、前記(B)無機充填材が、(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材を含有する、樹脂組成物である。
【0015】
なお、本明細書において、各成分はそれぞれ、(A)成分、(B)成分等と省略して称することがあり、その他の成分についても同様の略し方をすることがある。
以下、本実施形態の樹脂組成物が含有し得る各成分について順に説明する。
【0016】
<(A)熱硬化性樹脂>
(A)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
(A)熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、(A)熱硬化性樹脂としては、耐熱性及び導体接着性の観点から、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド樹脂からなる群から選択される1種以上が好ましく、マレイミド樹脂がより好ましく、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂及び該マレイミド樹脂の誘導体からなる群から選択される1種以上がさらに好ましい。
【0017】
なお、以下の説明において、「N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂及び該マレイミド樹脂の誘導体からなる群から選択される1種以上」を「マレイミド系樹脂」と称する場合がある。
【0018】
<(A)マレイミド系樹脂>
(A)マレイミド系樹脂は、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂及び該マレイミド樹脂の誘導体からなる群から選択される1種以上である。
(A)マレイミド系樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
なお、以下の説明で、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂を「マレイミド樹脂(AX)」又は「(AX)成分」と称する場合がある。
また、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂の誘導体を「マレイミド樹脂誘導体(AY)」又は「(AY)成分」と称する場合がある。
【0020】
(マレイミド樹脂(AX))
マレイミド樹脂(AX)は、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂であれば特に限定されない。
マレイミド樹脂(AX)は、導体接着性及び耐熱性の観点から、N-置換マレイミド基を2個以上有する芳香族マレイミド樹脂であることが好ましく、N-置換マレイミド基を2個有する芳香族ビスマレイミド樹脂であることがより好ましい。
【0021】
なお、本明細書中、「芳香族マレイミド樹脂」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物を意味する。また、本明細書中、「芳香族ビスマレイミド樹脂」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個有する化合物を意味する。また、本明細書中、「芳香族ポリマレイミド樹脂」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を3個以上有する化合物を意味する。また、本明細書中、「脂肪族マレイミド樹脂」とは、脂肪族炭化水素に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物を意味する。
【0022】
マレイミド樹脂(AX)としては、下記一般式(A-1)で表されるマレイミド樹脂が好ましい。
【0023】
【化1】

(式中、XA1は2価の有機基である。)
【0024】
上記一般式(A-1)中のXA1は、2価の有機基である。
上記一般式(A-1)中のXA1が表す2価の有機基としては、例えば、下記一般式(A-2)で表される2価の有機基、下記一般式(A-3)で表される2価の有機基、下記一般式(A-4)で表される2価の有機基、下記一般式(A-5)で表される2価の有機基、下記一般式(A-6)で表される2価の有機基、下記一般式(A-7)で表される2価の有機基等が挙げられる。
【0025】
【化2】

(式中、RA1は、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。nA1は0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0026】
上記一般式(A-2)中のRA1が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。該炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記一般式(A-2)中のnA1は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
A1が2以上の整数である場合、複数のRA1同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
【化3】

(式中、RA2及びRA3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。XA2は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(A-3-1)で表される2価の有機基である。nA2及びnA3は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0028】
上記一般式(A-3)中のRA2及びRA3が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。該炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(A-3)中のXA2が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該炭素数1~5のアルキレン基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0030】
上記一般式(A-3)中のXA2が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2~4のアルキリデン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキリデン基がより好ましく、イソプロピリデン基がさらに好ましい。
【0031】
上記一般式(A-3)中のnA2及びnA3は、各々独立に、0~4の整数である。
A2又はnA3が2以上の整数である場合、複数のRA2同士又は複数のRA3同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
上記一般式(A-3)中のXA2が表す一般式(A-3-1)で表される2価の有機基は以下のとおりである。
【0033】
【化4】

(式中、RA4及びRA5は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。XA3は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。nA4及びnA5は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0034】
上記一般式(A-3-1)中のRA4及びRA5が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。該炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(A-3-1)中のXA3が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該炭素数1~5のアルキレン基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0036】
上記一般式(A-3-1)中のXA3が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2~4のアルキリデン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキリデン基がより好ましく、イソプロピリデン基がさらに好ましい。
【0037】
上記一般式(A-3-1)中のnA4及びnA5は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
A4又はnA5が2以上の整数である場合、複数のRA4同士又は複数のRA5同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
上記一般式(A-3)中のXA2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、上記一般式(A-3-1)で表される2価の有機基が好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0039】
【化5】

(式中、nA6は0~10の整数である。*は結合部位を表す。)
【0040】
上記一般式(A-4)中のnA6は、入手容易性の観点から、好ましくは0~5の整数、より好ましくは0~4の整数、さらに好ましくは0~3の整数である。
【0041】
【化6】

(式中、nA7は0~5の数である。*は結合部位を表す。)
【0042】
【化7】

(式中、RA6及びRA7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。nA8は1~8の整数である。*は結合部位を表す。)
【0043】
上記一般式(A-6)中のRA6及びRA7が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基;炭素数2~5のアルケニル基;炭素数2~5のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
上記一般式(A-6)中のnA8は、1~8の整数であり、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数、さらに好ましくは1である。nA8が2以上の整数である場合、複数のRA6同士又は複数のRA7同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
【化8】

(式中、RA8は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又はメルカプト基であり、nA9は0~3の整数である。RA9~RA11は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基である。RA12は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基又はメルカプト基である。nA10は、各々独立に、0~4の整数であり、nA11は、0.95~10.0の数値である。*は結合部位を表す。)
【0045】
上記一般式(A-7)中のRA8で表される炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
A8で表される炭素数1~10のアルキルオキシ基及び炭素数1~10のアルキルチオ基に含まれるアルキル基としては、上記炭素数1~10のアルキル基と同じものが挙げられる。
A8で表される炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
A8で表される炭素数6~10のアリールオキシ基及び炭素数6~10のアリールチオ基に含まれるアリール基としては、上記炭素数6~10のアリール基と同じものが挙げられる。
A8で表される炭素数3~10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
上記一般式(A-7)中のnA9が1~3の整数である場合、RA8は、溶剤溶解性及び反応性の観点から、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0046】
A9~RA11で表される炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。これらの中でも、RA9~RA11は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
上記一般式(A-7)中のnA9は、0~3の整数であり、nA9が2又は3である場合、複数のRA8同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
以上の中でも、上記一般式(A-7)で表される2価の有機基は、他の樹脂との相容性、溶剤溶解性、誘電特性、導体との接着性及び製造容易性の観点から、nA9が0であり、RA9~RA11がメチル基である、2価の有機基であることが好ましい。
【0048】
上記一般式(A-7)中、複数のRA8同士、複数のRA12同士、複数のnA9同士、複数のnA10同士は、各々について、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、nA11が1を超える場合、複数のRA9同士、複数のRA10同士及び複数のRA11同士は、各々について、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
上記一般式(A-7)中のRA12が表す炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基についての説明は、上記RA8が表す炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基についての説明と同じである。
これらの中でも、RA12は、他の樹脂との相容性、溶剤溶解性、誘電特性、導体との接着性及び製造容易性の観点から、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
上記一般式(A-7)中のnA10は、0~4の整数であり、他の樹脂との相容性、溶剤溶解性、誘電特性、導体との接着性及び製造容易性の観点から、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0又は2である。
なお、nA10が1以上であることによって、ベンゼン環とN-置換マレイミド基とがねじれた配座を有するものになり、分子間のスタッキング抑制によって溶剤溶解性がより向上する傾向にある。同様の観点から、nA10が1以上である場合、RA12の置換位置は、N-置換マレイミド基に対してオルト位であることが好ましい。
上記一般式(A-7)中のnA11は、他の樹脂との相容性、溶剤溶解性、溶融粘度、ハンドリング性及び耐熱性の観点から、好ましくは0.98~8.0、より好ましくは1.0~7.0、さらに好ましくは1.1~6.0である。
【0050】
上記一般式(A-7)で表される2価の有機基は、下記一般式(A-7-1)で表される2価の有機基、下記一般式(A-7-2)で表される2価の有機基、下記一般式(A-7-3)で表される2価の有機基、下記一般式(A-7-4)で表される2価の有機基等が好ましく挙げられる。
【0051】

(式中、nA11は、上記一般式(A-7)中のものと同じである。*は結合部位を表す。)
【0052】
マレイミド樹脂(AX)としては、例えば、芳香族ビスマレイミド樹脂、芳香族ポリマレイミド樹脂、脂肪族マレイミド樹脂等が挙げられ、これらの中でも、芳香族ビスマレイミド樹脂が好ましい。
マレイミド樹脂(AX)の具体例としては、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、インダン骨格を有する芳香族ビスマレイミド樹脂、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、誘電特性の観点から、インダン骨格を有する芳香族ビスマレイミド樹脂が好ましい。
【0053】
(マレイミド樹脂誘導体(AY))
マレイミド樹脂誘導体(AY)としては、上記したマレイミド樹脂(AX)由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを含有するアミノマレイミド樹脂が好ましい。
【0054】
アミノマレイミド樹脂が含有するマレイミド樹脂(AX)由来の構造単位としては、例えば、マレイミド樹脂(AX)が有するN-置換マレイミド基のうち、少なくとも1つのN-置換マレイミド基が、ジアミン化合物が有するアミノ基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
アミノマレイミド樹脂中に含まれるマレイミド樹脂(AX)由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0055】
アミノマレイミド樹脂が含有するジアミン化合物由来の構造単位としては、例えば、ジアミン化合物が有する2個のアミノ基のうち、一方又は両方のアミノ基が、マレイミド樹脂(AX)が有するN-置換マレイミド基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
アミノマレイミド樹脂中に含まれるジアミン化合物由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
ジアミン化合物としては、例えば、後述する(C)硬化剤として挙げられるものを使用できる。
【0056】
((A)熱硬化性樹脂の含有量)
本実施形態の樹脂組成物において、(A)熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂成分の総量(100質量%)に対して、好ましくは40~98質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは80~90質量%である。
(A)熱硬化性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。また、(A)熱硬化性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、誘電特性がより良好になり易い傾向にある。
【0057】
ここで、本明細書において、「樹脂成分」とは、樹脂及び硬化反応によって樹脂を形成する化合物を意味する。
本実施形態の樹脂組成物が、任意成分として、(A)成分以外に樹脂又は硬化反応によって樹脂を形成する化合物を含有する場合、これらの任意成分も樹脂成分に含まれる。但し、後述する(D)成分、(E)成分及び(F)成分は、樹脂成分には含めないものとする。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物中における樹脂成分の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~30質量%である。
樹脂成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。また、樹脂成分の含有量が上記上限値以下であると、低熱膨張性がより良好になり易い傾向にある。
【0059】
(A)熱硬化性樹脂中における上記マレイミド系樹脂の含有量は、特に限定されないが、(A)熱硬化性樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは95~100質量%である。
マレイミド系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。また、マレイミド系樹脂の含有量が上記上限値以下であると、誘電特性がより良好になり易い傾向にある。
【0060】
<(B)無機充填材>
(B)無機充填材は、(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材を含有する。
【0061】
((B1)高誘電率無機充填材)
(B1)高誘電率無機充填材は、樹脂組成物の硬化物の比誘電率(Dk)の向上に寄与する無機充填材である。
なお、本実施形態において、(B1)高誘電率無機充填材は、10GHzにおける比誘電率(Dk)が、10以上である無機充填材を意味する。
(B1)高誘電率無機充填材の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、入手容易性及び樹脂組成物の比誘電率(Dk)をより高め易くするという観点から、好ましくは10~3,000、より好ましくは13~2,500、さらに好ましくは15~2,000である。
(B1)高誘電率無機充填材の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
(B1)高誘電率無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
(B1)高誘電率無機充填材としては、例えば、チタン系無機充填材、ジルコン系無機充填材等が挙げられる。
チタン系無機充填材としては、例えば、二酸化チタン;チタン酸カリウム等のチタン酸アルカリ金属塩;チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸アルカリ土類金属塩;チタン酸鉛などが挙げられる。
ジルコン系無機充填材としては、例えば、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム等のジルコン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
以上の選択肢の中でも、(B1)高誘電率無機充填材は、高い比誘電率(Dk)を得るという観点から、チタン系無機充填材が好ましく、チタン酸アルカリ土類金属塩がより好ましく、チタン酸カルシウムがさらに好ましい。
【0063】
(B1)高誘電率無機充填材は、カップリング剤等によって表面処理されたものであってもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、チタネートカップリング剤が好ましい。
【0064】
(B1)高誘電率無機充填材の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~15μm、さらに好ましくは0.7~10μmである。
(B1)高誘電率無機充填材の平均粒子径(D50)が上記下限値以上であると、(B1)高誘電率無機充填材の比表面積が小さくなり、(B1)高誘電率無機充填材の固体表面による、(A)熱硬化性樹脂の意図しない硬化反応の促進が抑制され易い傾向にある。また、(B1)高誘電率無機充填材の平均粒子径(D50)が上記上限値以下であると、樹脂組成物の硬化物の均質性がより良好になり易い傾向にある。
(B1)高誘電率無機充填材の平均粒子径(D50)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0065】
(B1)高誘電率無機充填材の形状は特に限定されないが、製造容易性の観点から、非球状であることが好ましい。なお、本実施形態における「非球状」とは、後述する「球状」以外の形状を意味する。
非球状である形状は、製造容易性の観点から、複数の角を有する不規則な形状が好ましい。複数の角を有する不規則な形状としては、例えば、破砕によって形成される破砕状が挙げられる。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物中における(B1)高誘電率無機充填材の質量基準の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは20~95質量%、より好ましくは40~90質量%、さらに好ましくは60~80質量%である。
本実施形態の樹脂組成物中における(B1)高誘電率無機充填材の体積基準の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは10~70体積%、より好ましくは20~60体積%、さらに好ましくは30~50体積%である。
(B1)高誘電率無機充填材の含有量が上記下限値以上であると、樹脂組成物の比誘電率(Dk)をより高め易い傾向にある。また、(B1)高誘電率無機充填材の含有量が上記上限値以下であると、流動性がより良好になり易い傾向にある。
【0067】
<(B2)球状無機充填材>
本実施形態の樹脂組成物は、(B2)球状無機充填材を含有する。
(B2)球状無機充填材は、本実施形態の樹脂組成物の流動性の向上に寄与する無機充填材である。(B2)球状無機充填材を含有することによって、本実施形態の樹脂組成物の流動性が向上する原因の詳細は定かではないが、(B1)高誘電率無機充填材の近傍に、(B2)球状無機充填材が存在することによって、(B1)高誘電率無機充填材同士の衝突或いは衝突による摩擦の発生等が抑制されることが一因と推察される。
(B2)球状無機充填材は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、(B2)球状無機充填材の「球状」とは、真球及び楕円球を含む概念であるが、アスペクト比(長軸径/短軸径)が1.2以上である楕円球は、「球状」には分類しないものとする。
無機充填材の形状及びアスペクト比は、当該無機充填材を、例えば、走査型電子顕微鏡等によって観察することによって確認することができる。
【0068】
(B2)球状無機充填材の材質としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、ベリリア、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。
【0069】
(B2)球状無機充填材は、樹脂組成物の流動性をより良好にするという観点から、カップリング剤等によって表面処理されたものであってもよい。カップリング剤としては、後述する(F)カップリング剤として挙げられるものを使用することができる。
【0070】
(B2)球状無機充填材の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、樹脂組成物の流動性をより良好にするという観点から、好ましくは10~1,500nm、より好ましくは20~1,000nm、さらに好ましくは30~800nmである。
(B2)球状無機充填材の平均粒子径(D50)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0071】
(B2)球状無機充填材の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、特に限定されないが、入手容易性の観点から、好ましくは10未満であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは2~5である。
(B2)球状無機充填材の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0072】
本実施形態の樹脂組成物中における(B2)球状無機充填材の質量基準の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.3~10質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
本実施形態の樹脂組成物中における(B2)球状無機充填材の体積基準の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1~20体積%、より好ましくは0.3~10体積%、さらに好ましくは0.5~5体積%である。
(B2)球状無機充填材の含有量が上記下限値以上であると、本実施形態の樹脂組成物の流動性がより良好になり易い傾向にある。また、(B2)球状無機充填材の含有量が上記上限値以下であると、高い比誘電率(Dk)をより維持し易い傾向にある。
【0073】
本実施形態の樹脂組成物中における(B2)球状無機充填材の体積基準の含有量に対する、(B1)高誘電率無機充填材の体積基準の含有量の比[(B1)/(B2)]は特に限定されないが、好ましくは2~500、より好ましくは5~100、さらに好ましくは10~50である。
体積基準の含有量の比[(B1)/(B2)]が上記範囲であると、本実施形態の樹脂組成物の流動性がより良好になり易い傾向にある。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物中における(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材の質量基準の合計含有量は、樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは22~97質量%、より好ましくは42~92質量%、さらに好ましくは62~82質量%である。
本実施形態の樹脂組成物中における(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材の体積基準の合計含有量は、樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは10~70体積%、より好ましくは20~60体積%、さらに好ましくは30~50体積%である。
本実施形態の樹脂組成物が含有する(B)無機充填材の総量に対する、(B1)高誘電率無機充填材及び(B2)球状無機充填材の合計含有量が占める割合は、特に限定されないが、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは95~100質量%である。
【0075】
<(C)硬化剤>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(C)硬化剤を含有することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(C)硬化剤を含有することによって、硬化性がより向上する傾向にある。
(C)硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
(C)硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられ、(A)熱硬化性樹脂の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0077】
本実施形態の樹脂組成物が(A)熱硬化性樹脂として、マレイミド系樹脂を含有する場合は、本実施形態の樹脂組成物は、(C)硬化剤として、アミン系硬化剤を含有することが好ましい。
アミン系硬化剤としては、ジアミン化合物が好ましく挙げられる。
ジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン化合物;第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物などが挙げられる。
なお、本明細書中、「芳香族ジアミン化合物」とは、芳香環に直接結合するアミノ基を2個有する化合物を意味する。
これらの中でも、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましい。
【0078】
本実施形態の樹脂組成物が(C)硬化剤を含有する場合、その含有量は、(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは2~40質量部、より好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは10~20質量部である。
(C)硬化剤の含有量が上記範囲であると、樹脂組成物の硬化性がより良好になり易い傾向にある。
【0079】
<(D)硬化促進剤>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化反応を促進させるという観点から、さらに、(D)硬化促進剤を含有することが好ましい。
(D)硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
(D)硬化促進剤としては、例えば、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン、ジシアンジアミド等のアミン化合物;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等のイソシアネートマスクイミダゾール化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物;マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、硬化促進効果及び保存安定性の観点から、イソシアネートマスクイミダゾール化合物が好ましい。
【0081】
本実施形態の樹脂組成物が(D)硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~7質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
(D)硬化促進剤の含有量が、上記下限値以上であると、十分な硬化促進効果が得られ易い傾向にある。また、(D)硬化促進剤の含有量が、上記上限値以下であると、保存安定性がより良好になる傾向にある。
【0082】
<(E)難燃剤>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(E)難燃剤を含有することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(E)難燃剤を含有することによって、難燃性がより向上する傾向にある。
(E)難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
(E)難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、金属水和物、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
リン系難燃剤は、無機系のリン系難燃剤であってもよいし、有機系のリン系難燃剤であってもよい。
無機系のリン系難燃剤としては、例えば、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル化合物、1置換ホスホン酸ジエステル化合物、2置換ホスフィン酸エステル化合物、2置換ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物等が挙げられる。これらの中でも、芳香族リン酸エステル化合物、2置換ホスフィン酸の金属塩が好ましい。
金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウムの水和物、水酸化マグネシウムの水和物等が挙げられる。
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤等が挙げられる。
【0084】
本実施形態の樹脂組成物が(E)難燃剤を含有する場合、(E)難燃剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは20~70質量部、より好ましくは30~60質量部、さらに好ましくは40~50質量部である。
(E)難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、難燃性がより良好になり易い傾向にある。また、(E)難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、誘電特性、成形性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。
【0085】
<(F)カップリング剤>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(F)カップリング剤を含有することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(F)カップリング剤を含有することによって、流動性がより向上する傾向にある。
(F)カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
(F)カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられ、これらの中でも、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、アルケニルシラン系カップリング剤が好ましい。アルケニルシラン系カップリング剤としては、ビニルシラン系カップリング剤が好ましい。
【0087】
本実施形態の樹脂組成物が(F)カップリング剤を含有する場合、(F)カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して、好ましくは0.1~7質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
(F)カップリング剤の含有量が上記範囲であると、樹脂組成物の流動性がより良好になり易い傾向にある。
【0088】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上記各成分以外にも、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
その他の成分としては、例えば、(A)熱硬化性樹脂以外の樹脂、有機溶媒、その他の添加剤等が挙げられる。
これらは、各々について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
(A)熱硬化性樹脂以外の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、その誘導体等の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0090】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノン、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0091】
その他の添加剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、スチレン化フェノール酸化防止剤等の酸化防止剤;ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素化合物、シランカップリング剤等の密着性向上剤;シアナミド系架橋剤等の架橋剤などが挙げられる。
【0092】
その他の成分の含有量は特に限定されず、必要に応じて、本実施形態の効果を阻害しない範囲で使用すればよい。
【0093】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、上記各成分を混合することによって製造することができる。
各成分を混合する際には、各成分は撹拌しながら溶解又は分散させてもよい。また、原料を混合する順序、混合温度、混合時間等の条件は、特に限定されず、原料の種類等に応じて任意に設定すればよい。
【0094】
<硬化物の比誘電率(Dk)>
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、特に限定されないが、好ましくは5~40、より好ましくは7~20、さらに好ましくは10~15である。
硬化物の10GHzにおける比誘電率(Dk)が上記下限値以上であると、アンテナモジュールをより小型化し易い傾向にある。また、硬化物の10GHzにおける比誘電率(Dk)が上記上限値以下であると、他の物性とのバランスを良好に保ち易い傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0095】
<樹脂組成物の用途>
本実施形態の樹脂組成物は、高い比誘電率(Dk)を有しながらも、流動性に優れる樹脂組成物であるため、アンテナモジュール用の樹脂組成物として好適である。
【0096】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、本実施形態の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有するプリプレグである。
本実施形態のプリプレグは、アンテナモジュール用のプリプレグとして好適である。
【0097】
本実施形態のプリプレグは、例えば、本実施形態の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、シート状繊維基材と、を含有するものである。
【0098】
本実施形態のプリプレグが含有するシート状繊維基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている公知のシート状繊維基材を使用することができる。
シート状繊維基材の材質としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらのシート状繊維基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。
【0099】
本実施形態のプリプレグは、例えば、本実施形態の樹脂組成物を、シート状繊維基材に含浸又は塗布してから、加熱乾燥してB-ステージ化することによって製造することができる。
加熱乾燥の温度及び時間は、特に限定されないが、生産性及び本実施形態の樹脂組成物を適度にB-ステージ化させるという観点から、例えば、50~200℃、1~30分間とすることができる。
【0100】
本実施形態のプリプレグ中の樹脂組成物由来の固形分濃度は、特に限定されないが、積層板とした際に、より良好な成形性が得られ易いという観点から、好ましくは20~90質量%、より好ましくは25~80質量%、さらに好ましくは30~75質量%である。
【0101】
[樹脂フィルム]
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルムである。
本実施形態の樹脂フィルムは、アンテナモジュール用の樹脂フィルムとして好適である。
【0102】
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、有機溶媒を含有する本実施形態の樹脂組成物、つまり樹脂ワニスを支持体に塗布してから、加熱乾燥させることによって製造することができる。
支持体としては、例えば、プラスチックフィルム、金属箔、離型紙等が挙げられる。
加熱乾燥の温度及び時間は、特に限定されないが、生産性及び本実施形態の樹脂組成物を適度にB-ステージ化させるという観点から、50~200℃、1~30分間とすることができる。
【0103】
本実施形態の樹脂フィルムは、プリント配線板を製造する場合において、絶縁層を形成するために用いられることが好ましい。
【0104】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物又は本実施形態のプリプレグの硬化物と、金属箔と、を有する積層板である。
本実施形態の積層板は、アンテナモジュール用の積層板として好適である。
なお、金属箔を有する積層板は、金属張積層板と称されることもある。
【0105】
金属箔の金属としては、特に限定されず、例えば、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素を1種以上含有する合金等が挙げられる。
【0106】
本実施形態の積層板は、例えば、本実施形態のプリプレグの片面又は両面に金属箔を配置してから、加熱加圧成形することによって製造することができる。
通常、この加熱加圧成形によって、B-ステージ化されたプリプレグを硬化させて本実施形態の積層板が得られる。
加熱加圧成形する際、プリプレグは1枚のみを用いてもよいし、2枚以上のプリプレグを積層させてもよい。
加熱加圧成形は、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用することができる。
加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、例えば、温度100~300℃、時間10~300分間、圧力1.5~5MPaとすることができる。
【0107】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物、本実施形態のプリプレグの硬化物、及び本実施形態の積層板からなる群から選択される1種以上を有するプリント配線板である。
本実施形態のプリント配線板は、アンテナモジュール用のプリント配線板として好適である。
【0108】
本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態のプリプレグの硬化物、本実施形態の樹脂フィルムの硬化物及び積層板からなる群から選択される1種以上に対して、公知の方法によって、導体回路形成を行うことによって製造することができる。また、さらに必要に応じて多層化接着加工を施すことによって、多層プリント配線板を製造することもできる。導体回路は、例えば、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等を適宜施すことによって形成することができる。
【0109】
[アンテナ装置]
本実施形態のアンテナ装置は、本実施形態のプリント配線板を有するアンテナ装置である。
本実施形態のアンテナ装置は、例えば、本実施形態のプリント配線板にアンテナ素子を搭載することによって製造することができる。
アンテナ素子の設置方法に特に制限はないが、例えば、二次元のアレイ状に配置することが好ましい。アンテナ装置の構成については、特に制限されるものではないが、例えば、特許第6777273号公報等を参照することができる。
【0110】
[アンテナモジュール]
本実施形態のアンテナモジュールは、本実施形態のアンテナ装置と、給電回路と、を有するアンテナモジュールである。
本実施形態のアンテナモジュールは、例えば、給電回路と、本実施形態のアンテナ装置と、を設置することを含む方法によって製造することができる。
給電回路としては、特に制限されるものではないが、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)等を使用することができる。RFICは、スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰機、移相機、信号合成-分波機、ミキサ、増幅回路等を備えるものである。
RFICから供給される高周波信号は、アンテナモジュール用積層板のビアに形成した短絡用導体を経由して、前記給電用導体の給電点に伝達される。
アンテナモジュールの構成については、特に制限されるものではないが、例えば、特許第6777273号公報等を参照することができる。
【実施例0111】
以下、実施例を挙げて、本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0112】
(数平均分子量(Mn)の測定方法)
数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製、商品名]を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
〔GPCの測定条件〕
装置:高速GPC装置 HLC-8320GPC
検出器:紫外吸光検出器 UV-8320[東ソー株式会社製]
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn SuperHZ-L+カラム;TSKgel SuperHZM-N+TSKgel SuperHZM-M+TSKgel SuperH-RC(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:4.6×20mm(ガードカラム)、4.6×150mm(カラム)、6.0×150mm(リファレンスカラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/5mL
注入量:25μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0113】
(無機充填材の平均粒子径(D50)の測定方法)
無機充填材の平均粒子径(D50)は、測定対象である無機充填材0.1gを溶媒(種類:メチルエチルケトン)20gで希釈させた後、100Wの超音波ホモジナイザーで5~20分間振動させることによって、分散させたものを測定試料とした。
上記測定試料を測定セルに1~2滴注入し、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル株式会社製、商品名:マイクロトラックMT3000)を用いて、国際標準規格ISO13321に準拠して、25℃、屈折率1.38にて粒子径分布を測定した。得られた粒子径分布における積算値50%(体積基準)に相当する粒子径を平均粒子径(D50)とした。
【0114】
(無機充填材の10GHzにおける比誘電率(Dk)の測定方法)
無機充填材の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、以下の手順にて測定した。
測定対象である無機充填材とポリフェニレンエーテル樹脂とを、無機充填材20体積%、ポリフェニレンエーテル樹脂80体積%の比率で配合し、混合した。得られた混合物を、230℃、30分、3MPaの条件でプレス成形し、幅50mm×長さ130mm×厚さ0.5mmに成形したものを比誘電率(Dk)の試験片とした。
次に、上記で得られた試験片を用いて、周波数10GHz、25℃の条件下で、下記装置及びプログラムを用い、空洞共振器摂動法によって比誘電率(Dk)を測定した。
・測定器:アジレントテクノロジー社製のベクトル型ネットワークアナライザ「N5227A」
・空洞共振器:株式会社関東電子応用開発製の「CP129」(10GHz帯共振器)
・測定プログラム:株式会社関東電子応用開発製の「CPMA-V2」
上記で測定された試験片の比誘電率(Dk)をDk1、予め測定したポリフェニレンエーテル樹脂単体の上記測定条件における比誘電率(Dk)をDk2として、下記式に基づいて、無機充填材単体の比誘電率(Dk)を求めた。
比誘電率(Dk)=(Dk1-Dk2×0.8)/0.2
【0115】
[樹脂組成物の製造]
実施例1~3、比較例1~3
表1に記載の各成分を表1に記載の配合組成に従って配合し、必要に応じてトルエンと共に、室温(25℃)で撹拌及び混合して、固形分濃度70質量%の樹脂組成物を製造した。なお、表1の配合組成に記載の数値の単位は質量部であり、溶液の場合は、固形分換算の質量部を意味する。
【0116】
[両面銅箔付き樹脂板の製造]
上記で得た樹脂組成物を、厚さ38μmのPETフィルム(帝人株式会社製、商品名:G2-38)に塗布した後、170℃で5分間加熱乾燥することによって、B-ステージ状態の樹脂フィルムを作製した。該樹脂フィルムをPETフィルムから剥離した後、粉砕してB-ステージ状態の樹脂粉末を得た。
上記で得た樹脂粉末を、厚さ0.5mm×長さ50mm×幅35mmのサイズに型抜きしたテフロン(登録商標)シートに投入し、その上下に厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:3EC-VLP-18)を配置した。なおロープロファイル銅箔は、M面を樹脂粉末側にして配置した。続いて、この加熱加圧成形前の積層物を、温度230℃、圧力2.0MPa、時間120分間の条件で加熱加圧成形し、樹脂粉末を樹脂板に成形しつつ硬化させることによって、両面銅箔付き樹脂板を作製した。得られた両面銅箔付き樹脂板の樹脂板部分の厚さは0.5mmであった。
【0117】
[測定及び評価方法]
上記実施例及び比較例で得られた樹脂組成物及び両面銅箔付き樹脂板を用いて、下記方法に従って各測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
(1.比誘電率(Dk)の測定)
上記で得られた両面銅箔付き樹脂板の外層銅箔を、銅エッチング液(過硫酸アンモニウムの10質量%溶液、三菱ガス化学株式会社製)に浸漬することにより除去した後、長さ60mm、幅0.5mmに切り出したものを比誘電率(Dk)の試験片とした。当該試験片を用いて、周波数10GHz、25℃の条件下で、下記装置及びプログラムを用い、空洞共振器摂動法によって比誘電率(Dk)を測定した。
・測定器:アジレントテクノロジー社製のベクトル型ネットワークアナライザ「N5227A」
・空洞共振器:株式会社関東電子応用開発製の「CP129」(10GHz帯共振器)
・測定プログラム:株式会社関東電子応用開発製の「CPMA-V2」
【0119】
(2.溶融粘度の評価)
上記[両面銅箔付き樹脂板の製造]に記載の方法で得た樹脂粉末約0.6gを秤量し、錠剤成形器により直径20mmの円盤状のタブレットに成形した。続いて、このタブレットを測定試料として、レオメータ(レオメトリック社製、商品名:ARES-2K STD-FCO-STD)を用いて、昇温速度3℃/min、荷重0.2N、測定温度範囲50~200℃の条件で粘度を測定し、その最低溶融粘度を溶融粘度とした。
【0120】
【表1】
【0121】
なお、表1に示す各成分の詳細は、以下のとおりである。
[(A)成分]
・マレイミド樹脂:インダン骨格を有する芳香族ビスマレイミド樹脂
【0122】
[(B1)成分]
・チタン酸カルシウム:共立マテリアル株式会社製、商品名「CT-3」、平均粒子径(D50):2μm、10GHzにおける比誘電率(Dk):175
【0123】
[(B2)成分]
・球状シリカ1:アミノシランカップリング剤で表面処理した溶融球状シリカ、株式会社アドマテックス製、商品名「SO-C2」、平均粒子径(D50)500nm、分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分濃度70質量%、10GHzにおける比誘電率:3.8
・球状シリカ2:アミノシランカップリング剤で表面処理した合成球状シリカ、株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C」、平均粒子径(D50)50nm、分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分濃度50質量%、10GHzにおける比誘電率:3.8
【0124】
[(C)成分]
・ジアミン化合物:4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン
【0125】
[(D)成分]
・硬化促進剤:イソシアネートマスクイミダゾール、第一工業製薬株式会社製、商品名「G-8009L」
【0126】
[(E)成分]
・難燃剤:4,4’-ビフェニレン-テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)リン酸エステル
【0127】
[(F)成分]
・カップリング剤:ビニルトリメトキシシラン
【0128】
表1から、本実施形態の実施例1~3の樹脂組成物は、十分に高い比誘電率(Dk)を有しながらも、溶融粘度が低く、流動性に優れていることが分かる。
一方、(B2)成分を配合しなかった比較例1の樹脂組成物は、溶融粘度が高く、流動性に劣っていた。また、(B1)成分を配合しなかった比較例2及び3の樹脂組成物は、比誘電率(Dk)が低かった。