(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170875
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】搬送装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/12 20060101AFI20231124BHJP
B41J 11/04 20060101ALI20231124BHJP
B41J 13/22 20060101ALI20231124BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B65H5/12 A
B65H5/12 B
B41J11/04
B41J13/22
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082949
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】中村 颯
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
2C059
3F101
【Fターム(参考)】
2C056HA29
2C058AB16
2C058AB17
2C058AC07
2C058AC12
2C058AE02
2C058AF04
2C058AF11
2C058AF31
2C058DA10
2C058DA27
2C058DA35
2C058DA38
2C058DB14
2C059EE12
2C059EE14
2C059EE20
2C059EE23
2C059EE27
3F101CA14
3F101CA17
3F101CC07
3F101CC08
3F101CC12
3F101CE21
3F101LA01
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】液体が付与されて搬送される記録媒体の乾燥ムラを抑制する搬送装置及び印刷装置を提供する。
【解決手段】第1の面に液体が付与された記録媒体を保持する保持部材と、記録媒体の第1の面の反対面である第2の面に接触するガイド面を有するガイド部材と、保持部材及びガイド部材を搬送方向に駆動する駆動機構と、を備え、ガイド面は、穴部及び凸部の少なくとも一方を有し、穴部及び凸部の直径、又は穴部及び凸部に内接する内接円の直径は0.31mm以下である搬送装置によって乾燥ムラを抑制する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に液体が付与された記録媒体を保持する保持部材と、
前記記録媒体の前記第1の面の反対面である第2の面に接触するガイド面を有するガイド部材と、
前記保持部材及び前記ガイド部材を搬送方向に駆動する駆動機構と、
を備え、
前記ガイド面は、穴部及び凸部の少なくとも一方を有し、
前記穴部及び前記凸部の直径、又は前記穴部及び前記凸部に内接する内接円の直径は0.31mm以下である、
搬送装置。
【請求項2】
前記穴部及び前記凸部の直径、又は前記穴部及び前記凸部に内接する内接円の直径は0.3mm以下である、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記穴部及び前記凸部の直径、又は前記穴部及び前記凸部に内接する内接円の直径は0.1mm以上である、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記穴部及び前記凸部は、前記搬送方向に直交する方向に対して1°以上の角度のある方向に配列される、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
d1を中心位置が前記搬送方向に平行な直線上に存在する穴部及び凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における前記搬送方向に直交する方向の群間距離とし、d2を前記搬送方向において互いに隣接する穴部及び凸部の少なくとも一方の中心間距離とすると、前記穴部及び前記凸部は、前記搬送方向に直交する方向に対して{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度のある方向に配列される、
請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ガイド面は、前記穴部を有し、
前記ガイド面の前記穴部の単位面積当たりの開口率は3%以上9%以下の範囲である、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ガイド面は、前記凸部を有し、
前記ガイド面の前記凸部の単位面積当たりの割合は3.8%以上12.6%以下の範囲である、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記駆動機構は、前記保持部材の移動速度と前記ガイド面の移動速度とを異ならせて駆動する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記ガイド部材は、円筒状のドラムであり、
前記ガイド面は、前記ドラムの外周面であり、
前記保持部材は、前記ドラムに設けられたグリッパであり、
前記駆動機構は、前記ドラムの軸を中心に前記ドラムを回転させる、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記保持部材は、無端状のチェーンに取り付けられたグリッパであり、
前記ガイド部材は、無端状のベルトであり、
前記ガイド面は、前記ベルトの表面であり、
前記駆動機構は、前記グリッパと前記ベルトとを前記搬送方向に駆動する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記第2の面に前記ガイド面が接触した前記記録媒体の前記第1の面を加熱する乾燥機構を備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項12】
記録媒体を搬送方向に搬送する第1の搬送装置と、
前記第1の搬送装置によって搬送される前記記録媒体の第1の面に液体を吐出して画像を形成する液体吐出ヘッドと、
前記第1の搬送装置よりも前記搬送方向の下流側に配置され、前記記録媒体を前記搬送方向に搬送する第2の搬送装置と、
前記第2の搬送装置によって搬送される前記記録媒体の前記液体を乾燥させる乾燥機構と、
を備え、
前記第1の搬送装置は、
前記記録媒体を保持する第1の保持部材と、
前記記録媒体の前記第1の面の反対面である第2の面に接触する第1のガイド面を有する第1のガイド部材と、
前記第1のガイド部材を前記搬送方向に駆動する第1の駆動機構と、
を備え、
前記第1のガイド面は、第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方を有し、
前記第1の穴部及び前記第1の凸部の直径、又は前記第1の穴部及び前記第1の凸部に内接する内接円の直径は0.31mm以下であり、
前記第2の搬送装置は、
前記記録媒体を保持する第2の保持部材と、
前記記録媒体の前記第2の面に接触する第2のガイド面を有する第2のガイド部材と、
前記第2のガイド部材を前記搬送方向に駆動する第2の駆動機構と、
を備え、
前記第2のガイド面は、第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方を有し、
前記第2の穴部及び前記第2の凸部の直径、又は前記第2の穴部及び前記第2の凸部に内接する内接円の直径は0.31mm以下であり、
前記第1の穴部及び前記第1の凸部の少なくとも一方が配列される第1の方向と、前記第2の穴部及び前記第2の凸部の少なくとも一方が配列される第2の方向とは、一方は搬送方向に直交する方向であり、他方は前記搬送方向に直交する方向に対して1°以上{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度を有する、
印刷装置。 ここで、前記第1の方向が前記搬送方向に直交する方向である場合、d1は中心位置が前記搬送方向に平行な直線上に存在する前記第2の穴部及び前記第2の凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における前記搬送方向に直交する方向の群間距離であり、d2は前記搬送方向において互いに隣接する前記第2の穴部及び前記第2の凸部の少なくとも一方の中心間距離であり、前記第2の方向が前記搬送方向に直交する方向である場合、d1は中心位置が前記搬送方向に平行な直線上に存在する前記第1の穴部及び前記第1の凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における前記搬送方向に直交する方向の群間距離であり、d2は前記搬送方向において互いに隣接する前記第1の穴部及び前記第1の凸部の少なくとも一方の中心間距離である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置及び印刷装置に係り、特に画像が形成された記録媒体を乾燥させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ユニットにより搬送される記録媒体に対してインクジェットヘッドからインクを吐出して、記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。記録媒体を支持する搬送ユニットのガイド面には、用途に応じて複数の凹凸が設けられる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、外周面に吸着孔及び突起部を有する搬送ドラムが開示されている。この搬送ドラムによれば、記録媒体を安定して搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の搬送ドラムは、搬送ドラムの外周面の突起部と突起部以外の部分とで伝熱しやすさが異なるため、液体が付与されて搬送ドラムで搬送される記録媒体に乾燥ムラが発生するという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液体が付与されて搬送される記録媒体の乾燥ムラを抑制する搬送装置及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための搬送装置の一の態様は、第1の面に液体が付与された記録媒体を保持する保持部材と、記録媒体の第1の面の反対面である第2の面に接触するガイド面を有するガイド部材と、保持部材及びガイド部材を搬送方向に駆動する駆動機構と、を備え、ガイド面は、穴部及び凸部の少なくとも一方を有し、穴部及び凸部の直径、又は穴部及び凸部に内接する内接円の直径は0.31mm以下である搬送装置である。本態様によれば、液体が付与された記録媒体の乾燥ムラを抑制することができる。
【0008】
穴部及び凸部の直径、又は穴部及び凸部に内接する内接円の直径は0.3mm以下であることが好ましい。これにより、液体が付与された記録媒体の乾燥ムラをさらに抑制することができる。
【0009】
穴部及び凸部の直径、又は穴部及び凸部に内接する内接円の直径は0.1mm以上であることが好ましい。これにより、記録媒体を安定して搬送することができる。
【0010】
穴部及び凸部は、搬送方向に直交する方向に対して1°以上の角度のある方向に配列されることが好ましい。これにより、乾燥ムラを視認されにくくすることができる。
【0011】
記録媒体を搬送方向に搬送する第1の搬送装置と、第1の搬送装置よりも搬送方向の下流側に配置され、記録媒体を搬送方向に搬送する第2の搬送装置と、を備え、第1の搬送装置は、記録媒体の第1の面の反対面である第2の面に接触する第1のガイド面を有する第1のガイド部材を備え、第1のガイド面は、第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方を有し、第2の搬送装置は、記録媒体の第2の面に接触する第2のガイド面を有する第2のガイド部材を備え、第2のガイド面は、第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方を有し、第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方が配列される第1の方向と、第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方が配列される第2の方向とは、一方が搬送方向に直交する方向であり、他方が搬送方向に直交する方向に対して1°以上の角度を有することが好ましい。これにより、乾燥ムラを視認されにくくすることができる。
【0012】
d1を中心位置が搬送方向に平行な直線上に存在する穴部及び凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における搬送方向に直交する方向の群間距離とし、d2を搬送方向において互いに隣接する穴部及び凸部の少なくとも一方の中心間距離とすると、穴部及び凸部は、搬送方向に直交する方向に対して{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度のある方向に配列されることが好ましい。これにより、乾燥ムラを視認されにくくすることができる。
【0013】
記録媒体を搬送方向に搬送する第1の搬送装置と、第1の搬送装置よりも搬送方向の下流側に配置され、記録媒体を搬送方向に搬送する第2の搬送装置と、を備え、第1の搬送装置は、記録媒体の第1の面の反対面である第2の面に接触する第1のガイド面を有する第1のガイド部材を備え、第1のガイド面は、第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方を有し、第2の搬送装置は、記録媒体の第2の面に接触する第2のガイド面を有する第2のガイド部材を備え、第2のガイド面は、第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方を有し、第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方が配列される第1の方向と、第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方が配列される第2の方向とは、一方は搬送方向に直交する方向であり、他方は搬送方向に直交する方向に対して{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度を有することが好ましい。
【0014】
ここで、第1の方向が搬送方向に直交する方向である場合、d1は中心位置が搬送方向に平行な直線上に存在する第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における搬送方向に直交する方向の群間距離であり、d2は搬送方向において互いに隣接する第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方の中心間距離である。第2の方向が搬送方向に直交する方向である場合、d1は中心位置が搬送方向に平行な直線上に存在する第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における搬送方向に直交する方向の群間距離であり、d2は搬送方向において互いに隣接する第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方の中心間距離である。これにより、乾燥ムラを視認されにくくすることができる。
【0015】
ガイド面は、穴部を有し、ガイド面の穴部の単位面積当たりの開口率は3%以上9%以下の範囲であることが好ましい。これにより、乾燥ムラの抑制と搬送の安定性を両立させることができる。
【0016】
ガイド面は、凸部を有し、ガイド面の凸部の単位面積当たりの割合は3.8%以上12.6%以下の範囲であることが好ましい。これにより、乾燥ムラを視認されにくくすることができる。
【0017】
駆動機構は、保持部材の移動速度とガイド面の移動速度とを異ならせて駆動することが好ましい。これにより、乾燥ムラをより抑制することができる。保持部材の移動速度とガイド面の移動速度との差は、記録媒体の第2の面がガイド面に接触している期間の保持部材とガイド面との移動距離の差が穴部及び凸部の直径、又は穴部及び凸部に内接する内接円の直径以上となる移動速度の差であることが好ましい。これにより、記録媒体の搬送中に記録媒体の第2面の穴部及び凸部に対応する位置が固定されることが防止されるので、乾燥ムラをより抑制することができる。
【0018】
ガイド部材は、円筒状のドラムであり、ガイド面は、ドラムの外周面であり、保持部材は、ドラムに設けられたグリッパであり、駆動機構は、ドラムの軸を中心にドラムを回転させることが好ましい。これにより、ドラムを用いた搬送において乾燥ムラを抑制することができる。
【0019】
保持部材は、無端状のチェーンに取り付けられたグリッパであり、ガイド部材は、無端状のベルトであり、ガイド面は、ベルトの表面であり、駆動機構は、グリッパとベルトとを搬送方向に駆動することが好ましい。これにより、チェーングリッパとベルトとを用いた搬送において乾燥ムラを抑制することができる。
【0020】
第2の面にガイド面が接触した記録媒体の第1の面を加熱する乾燥機構を備えることが好ましい。これにより、乾燥ムラを抑制して記録媒体を乾燥させることができる。
【0021】
上記目的を達成するための印刷装置の一の態様は、記録媒体を搬送方向に搬送する第1の搬送装置と、第1の搬送装置によって搬送される記録媒体の第1の面に液体を吐出して画像を形成する液体吐出ヘッドと、第1の搬送装置よりも搬送方向の下流側に配置され、記録媒体を搬送方向に搬送する第2の搬送装置と、第2の搬送装置によって搬送される記録媒体の液体を乾燥させる乾燥機構と、を備え、第1の搬送装置は、記録媒体を保持する第1の保持部材と、記録媒体の第1の面の反対面である第2の面に接触する第1のガイド面を有する第1のガイド部材と、第1のガイド部材を搬送方向に駆動する第1の駆動機構と、を備え、第1のガイド面は、第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方を有し、第1の穴部及び第1の凸部の直径、又は第1の穴部及び第1の凸部に内接する内接円の直径は0.31mm以下であり、第2の搬送装置は、記録媒体を保持する第2の保持部材と、記録媒体の第2の面に接触する第2のガイド面を有する第2のガイド部材と、第2のガイド部材を搬送方向に駆動する第2の駆動機構と、を備え、第2のガイド面は、第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方を有し、第2の穴部及び第2の凸部の直径、又は第2の穴部及び第2の凸部に内接する内接円の直径は0.31mm以下であり、第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方が配列される第1の方向と、第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方が配列される第2の方向とは、一方は搬送方向に直交する方向であり、他方は搬送方向に直交する方向に対して1°以上{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度を有する印刷装置である。
【0022】
ここで、第1の方向が搬送方向に直交する方向である場合、d1は中心位置が搬送方向に平行な直線上に存在する第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における搬送方向に直交する方向の群間距離であり、d2は搬送方向において互いに隣接する第2の穴部及び第2の凸部の少なくとも一方の中心間距離であり、第2の方向が搬送方向に直交する方向である場合、d1は中心位置が搬送方向に平行な直線上に存在する第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方が形成する複数の群における搬送方向に直交する方向の群間距離であり、d2は搬送方向において互いに隣接する第1の穴部及び第1の凸部の少なくとも一方の中心間距離である。本態様によれば、記録媒体に液体を付与して乾燥させる際に、記録媒体の乾燥ムラを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液体が付与された記録媒体の乾燥ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、ガイド面の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、ガイド面の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、インクジェット記録装置の概略構成を示す全体構成図である。
【
図8】
図8は、印字ドラムの構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、セラミックスジャケットの斜視図と一部拡大図である。
【
図10】
図10は、チェーングリッパ及び吸着コンベアの構成例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、インクジェット記録装置の制御系の機能ブロック図である。
【
図13】
図13は、ベタ画像の乾燥ムラの視認性を比較するための画像である。
【
図14】
図14は、印字ドラムの凸部、及び搬送ベルトの穴部の直径に対する乾燥ムラ視認性、及び搬送性の評価を示す表である。
【
図15】
図15は、凸部及び穴部の配置による用紙上の乾燥ムラの視認され方の模式図である。
【
図17】
図17は、穴部列の用紙幅方向を基準とした角度の定義を説明するための図である。
【
図18】
図18は、正方配列の穴部列の角度の具体例を示す図である。
【
図19】
図19は、ジグザグ配列の穴部列の角度の具体例を示す図である。
【
図20】
図20は、用紙幅方向に対する穴部列、凸部列の角度と乾燥ムラの視認性の関係の評価結果を示す表である。
【
図21】
図21は、他の態様における穴部列の用紙幅方向を基準とした角度の定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0026】
<乾燥ムラの発生>
インクジェット記録装置において形成した画像には、乾燥ムラが発生することがある。乾燥ムラとは、画像に濃淡が生じる現象であり、画像の一部が濃く見える現象、及び色が抜けて白く薄く見える現象を含む。乾燥ムラは、着弾したインクが記録媒体上で移動することにより発生する。
【0027】
インク移動は、記録媒体上の温度分布が不均一である場合に発生しやすい。温度分布が不均一であると、温度が高いところでインクが乾燥しやすく、温度が低いところでインクが乾燥しづらくなる。インクが乾燥しやすい場所では、インクが濃縮されて表面張力が大きくなる。反対に、インクが乾燥しづらい場所では、インクがあまり濃縮されないため相対的に表面張力は小さくなる。この表面張力差によって、表面張力が小さいところから大きいところへインクが移動し、乾燥ムラとなる。
【0028】
本出願の発明者は、搬送ユニットのガイド面形状によって不均一な温度分布が発生し、乾燥ムラが発生するという課題が存在することを見出した。例えば、ガイド面に凹凸がある場合、凹凸によって記録媒体との接触が不均一となり、接触した場所によって記録媒体への熱の伝わり具合が異なる。
【0029】
画像形成中に記録媒体を接触支持する搬送ユニットのガイド面は、凹凸形状を有している場合がある。
図1は、記録媒体を支持するガイド面10の一例を示す模式図である。
図1に示すガイド面10は、複数の凸部12、及び複数の穴部14を備えている。凸部12は、直径が1.0mm、高さが0.1mmの円柱形状を有する。凸部12は、縦方向及び縦方向に直交する横方向に一定間隔で2次元配置されている。穴部14は、ガイド面10を貫通する直径が1.0mmの貫通穴である。穴部14は、縦方向及び横方向に一定間隔で2次元配置されている。
【0030】
図2は、インクIが付与された用紙Pをガイド面10で支持した際のガイド面10と用紙Pの断面図であり、インクIの浸透、乾燥濃縮による表面張力の変化を示している。また、
図3は、用紙Pの上面図であり、ベタ画像が形成された用紙Pをガイド面10で支持して乾燥させた場合の乾燥ムラを示している。ベタ画像とは、インクによる被覆率が100%を超える画像である。ここでは、用紙Pの温度よりもガイド面10の温度の方が相対的に高い場合を考える。
【0031】
ガイド面10には周囲の空気と比較して熱伝導率が相対的に高い材質を用いられるため、用紙Pは凸部12と接触した箇所(凸部12と対応する位置)に熱が伝わりやすく、用紙Pの凸部12と接触した箇所は局所的に温度が高くなる。したがって、用紙Pの凸部12と接触した位置は、接触していない位置に対して温度が相対的に高くなる。このため、
図2に示すように、用紙Pに付与されたインクIは、凸部12と接触した用紙Pの位置で乾燥濃縮が促進され、接触していない位置に対して表面張力が相対的に大きくなる。この表面張力差によって、表面張力が小さいところから大きいところへインクが移動し、凸部12と接触した用紙Pの位置にインクが集中する。
【0032】
その結果、
図3に示すように、画像の一部の濃度が相対的に濃くなる乾燥ムラが発生する。なお、
図3では濃度が濃い部分を強調して示している。濃度が相対的に濃い部分は、インクが集中した部分である。
図3に示す例では、濃度が相対的に濃い部分は凸部12の位置に対応して発生し、それぞれ直径1.0mm前後の円形である。
【0033】
また、搬送ユニットのガイド面は、複数の穴部を有する場合がある。
図4は、用紙Pを支持するガイド面20の一例を示す模式図である。
図4に示すガイド面20は、複数の穴部22を備えている。穴部22は、ガイド面20を貫通する直径が0.5mmの貫通穴である。穴部22は、縦方向及び横方向に一定間隔で2次元配置されている。
【0034】
図5は、インクIが付与された用紙Pをガイド面10で支持した際のガイド面10と用紙Pの断面図であり、インクの浸透、乾燥濃縮による表面張力の変化を示している。また、
図6は、ベタ画像が形成された用紙Pをガイド面10で支持して乾燥させた場合の乾燥ムラを示している。ここでも同様に、記録媒体の温度よりもガイド面10の温度の方が相対的に高い場合を考える。
【0035】
ガイド面20の穴部22(に存在する空気)は、ガイド面20の材料と比較して熱伝導率が相対的に低いため、用紙Pは穴部22の空気と接触した箇所(穴部22に対応する位置)に熱が伝わりづらい。したがって、用紙Pの穴部22に対応する位置は、ガイド面20と接触している位置に対して温度が相対的に低くなる。このため、
図5に示すように、用紙Pに付与されたインクIは、穴部22に対応する用紙Pの位置で乾燥濃縮が促進されず、ガイド面20と接触している位置に対して表面張力が相対的に小さくなる。この表面張力差によって、表面張力が小さいところから大きいところへインクが移動し、穴部22に対応する用紙Pの位置のインクが拡散して少なくなる。
【0036】
その結果、
図6に示すように、画像の一部が白く抜けて濃度が相対的に薄くなる乾燥ムラが発生する。なお、
図6では濃度が薄い部分を強調して示している。濃度が相対的に薄い部分は、インクが少ない部分である。
図6に示す例では、濃度が相対的に薄い部分は穴部22の位置に対応して発生し、それぞれ直径0.5mm前後の円形である。
【0037】
従来、インクIを付与する前工程で用紙P上に処理液を塗布し、インクIの粘度を大きくすることで流動性を抑えていた。一方、処理液を塗布しない1液インクで画像を形成する場合は、インクIが移動しやすい。
【0038】
上記のガイド面10、ガイド面20を有するガイドはいずれも、用紙Pを高精度で搬送し、十分に伝熱乾燥させる目的で、用紙Pと密着し、用紙Pと殆ど同じ速度で搬送方向に駆動される。このような本来の搬送乾燥の役割を十分満たしながらも、上記乾燥ムラを抑制するために、穴部及び凸部の径及び配列を工夫することで、乾燥ムラの視認性を低下させることが重要である。以下において、乾燥ムラの視認性を低下させる搬送装置及び印刷装置について説明する。
【0039】
なお、以下において、用紙Pの搬送方向を用紙搬送方向といい、用紙搬送方向に直交し、かつ用紙Pの紙面と平行な方向を用紙幅方向という。
【0040】
<インクジェット記録装置>
〔全体構成〕
図7は、インクジェット記録装置30の概略構成を示す全体構成図である。インクジェット記録装置30は、枚葉の用紙Pにカラー画像を印刷する印刷装置である。用紙Pは、例えばコピー用上質紙等の通常の紙である。
図7に示すように、インクジェット記録装置30は、印刷部40と、乾燥部50と、集積部60と、を備える。
【0041】
〔印刷部〕
印刷部40(「第1の搬送装置」の一例)は、印字ドラム42と、インクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kと、を備える。印刷部40は、不図示の給紙部から供給された用紙Pにインクを付着させて印刷を実施する。
【0042】
印字ドラム42は、外周面42Aにグリッパ46(「保持部材」の一例、「第1の保持部材」の一例)を備える。グリッパ46は、用紙Pの先端部を把持する保持部材である。用紙Pの先端部とは、用紙搬送方向下流側における用紙Pの端部である。グリッパ46は、印字ドラム42の軸方向に沿って並ぶ複数の把持爪を備える。複数の把持爪は、不図示の爪支持部材を用いて開閉可能に支持される。複数の把持爪は、印字ドラム42の軸方向に間隔をあけて配置され、用紙幅方向の複数箇所で用紙Pを把持する。
【0043】
印字ドラム42は、外周面42Aの2か所の位置に、概ね180度等配の位置に、グリッパ46が配置されている。すなわち、印字ドラム42は1回転で2枚の用紙Pを搬送し得る。印字ドラム42の直径によっては、1回転で3枚以上の用紙Pを搬送する形態も可能である。
【0044】
印字ドラム42は、モータ152A(
図12参照)の動力によって回転する。すなわち、印字ドラム42は、グリッパ46を用いて用紙Pの先端を把持して回転し、用紙Pを外周面42Aに巻き付けて、用紙Pの非印刷面(「第1の面の反対面である第2の面」の一例)を外周面42Aで支持して外周面42Aと一体に搬送する。印字ドラム42は、不図示の吸着機構を備え、外周面42Aに巻き付けられた用紙Pを外周面42Aに吸着させる。
【0045】
吸着には、負圧が利用される。印字ドラム42は、外周面42Aの穴部44B(
図9参照)を介して内部から吸引して、用紙Pを外周面42Aに吸着させる。吸着には、静電気を用いてもよい。この場合、印字ドラム42を帯電させることで吸着を行う。
【0046】
インクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kは、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインク(「液体」の一例)をインクジェット方式で吐出する液体吐出ヘッドである。インクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kの各々は、印字ドラム42を用いた用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔で配置される。
【0047】
ここでは、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4色のインクを用いる構成を例示したが、インク色、及び色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。
【0048】
印字ドラム42によって搬送される用紙Pに向けてインクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kの少なくとも1つからインクが吐出されることにより、用紙Pの印刷面(「第1の面」の一例)にインクが付与されて画像が形成される。こうして、印刷部40によって画像が形成された用紙Pは、印字ドラム42のグリッパ46から乾燥部50へと受け渡される。
【0049】
〔乾燥部〕
乾燥部50(「第2の搬送装置」の一例)は、印刷部40によって画像が形成された用紙Pに対して乾燥処理を施す。乾燥部50は、チェーングリッパ70と、第1のガイド80と、第2のガイド84と、加熱乾燥処理装置90と、吸着コンベア100と、を備える。
【0050】
チェーングリッパ70(「第2の搬送装置」の一例)は、一対の無端状のチェーン72と、複数のグリッパ74と、を備える。なお、
図7には一対のチェーン72のうち一方のみを図示する。各チェーン72は、不図示の2つのスプロケットに巻き掛けられており、スプロケットがモータ152B(
図12参照)により回転することにより、チェーン72は
図7における時計回り方向へ周回する。「周回する」とは循環移動することと同義である。
【0051】
複数のグリッパ74(「保持部材」の一例、「第2の保持部材」の一例)はチェーン72の周回方向に規定の間隔をおいて、チェーン72に取り付けられている。各グリッパ74は、用紙幅方向(
図7における紙面奥行き方向)の一方の端部と他方の端部のそれぞれが、一対のチェーン72のそれぞれに取り付けられている。各グリッパ74は、用紙幅方向に沿って並ぶ複数の把持爪を備える。複数の把持爪は2本のチェーン72の間に渡された不図示の爪支持部材を用いて開閉可能に取り付けられる。これら複数の把持爪が用紙Pの先端部を把持する。
【0052】
チェーングリッパ70は、印字ドラム42から用紙Pを受け取り、用紙Pの先端部をグリッパ74によって把持して用紙Pを搬送する。チェーングリッパ70による用紙Pの搬送経路には、チェーン72に対向して用紙搬送方向の上流側から第1のガイド80、吸着コンベア100、及び第2のガイド84が順に配置される。
【0053】
第1のガイド80は、用紙Pの搬送経路における印字ドラム42と吸着コンベア100との間の領域において用紙Pをガイドする機構である。第1のガイド80は、用紙幅方向に沿って長さを有している。
【0054】
吸着コンベア100は、用紙Pの搬送経路における第1のガイド80と第2のガイド84との間の領域において、無端状の搬送ベルト110に用紙Pを吸着させた状態で搬送ベルト110を走行させて、用紙Pを搬送する搬送ユニットである。
【0055】
第2のガイド84は、用紙Pの搬送経路における吸着コンベア100と集積部60の間の領域において用紙Pをガイドする機構である。第2のガイド84は、用紙幅方向に沿って長さを有している。
【0056】
加熱乾燥処理装置90は、吸着コンベア100に対向して配置される。加熱乾燥処理装置90は、インクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kによってインクが付与された用紙Pを加熱してインクの溶媒を蒸発させ用紙Pを乾燥させる乾燥機構である。加熱乾燥処理装置90は、不図示の送風ユニットを備える。送風ユニットはヒータとファンとを含んで構成され、チェーングリッパ70及び吸着コンベア100を用いて搬送される用紙Pに温風を吹き当てる。
【0057】
加熱乾燥処理装置90は不図示の排気装置を含んでもよい。排気装置は、加熱乾燥処理装置90の処理領域の空気をインクジェット記録装置30の外部へ排気する。これにより、熱の滞留に起因するインクジェット記録装置30内の温度上昇を抑制する。
【0058】
チェーングリッパ70は、加熱乾燥処理装置90による乾燥処理を経た用紙Pを集積部60へと搬送する。チェーングリッパ70は、用紙Pが集積部60へ到達した際に、グリッパ74を開いて用紙Pをリリースする。
【0059】
〔集積部〕
集積部60は、用紙Pを集積する集積装置62を備える。集積装置62は、チェーングリッパ70からリリースされた用紙Pを受け取り、集積装置62の集積トレイの上に用紙Pを束状に集積する。
【0060】
〔印字ドラム〕
図8は、印字ドラム42の構成を示す斜視図である。
図8に示すように、印字ドラム42(「ガイド部材」の一例、「第1のガイド部材」の一例)は、円筒状のドラム本体43の周面にセラミックスジャケット44が装着されて外周面42A(「ガイド面」の一例、「第1のガイド面」の一例)が構成される。
【0061】
図9は、セラミックスジャケット44の斜視図と一部拡大図である。
図9に示すように、セラミックスジャケット44は、多数の凸部44A及び穴部44Bを有する。
【0062】
凸部44Aは、印字ドラム42の外周面42Aに巻き付けられた用紙Pのしわの発生を防止する。凸部44A(「第1の凸部」の一例)は、直径が0.3mm、高さが0.1mmの円柱形状を有する。複数の凸部44Aは、第1の方向に一定間隔で一列に配置されて凸部列を形成する。また、各凸部列は、第1の方向に直交する第2の方向に一定間隔で複数列配置される。凸部44Aは、正方配列されてもよいし、千鳥配置されてもよい。凸部列を形成する隣り合う凸部44Aの中心間距離(ピッチ)は、2.5mm~3mmである。セラミックスジャケット44の表面における凸部44Aの単位面積当たりの割合は、3.8%~12.6%の範囲である。
【0063】
穴部44B(「第1の穴部」の一例)は、印字ドラム42の外周面42Aに巻き付けられた用紙Pを吸引する。穴部44Bは、セラミックスジャケット44を貫通する貫通穴である。穴部44Bは、例えば直径が0.3mmである。複数の穴部44Bは、第1の方向に一定間隔で一列に配置されて穴部列を形成する。また、各穴部列は、第2の方向に一定間隔で複数列配置される。穴部44Bは、正方配列されてもよいし、千鳥配置されてもよい。穴部列を形成する隣り合う穴部44Bの中心間距離(ピッチ)は、4.5mm~5mmである。セラミックスジャケット44の表面における穴部44Bの単位面積当たりの開口率は、2.0~2.5%の範囲である。
【0064】
〔チェーングリッパ及び吸着コンベア〕
図10は、チェーングリッパ70及び吸着コンベア100の構成例を示す斜視図である。
図10に示すように、チェーングリッパ70は、一対の無端状のチェーン72と、複数のグリッパ74と、を備える。また、吸着コンベア100は、搬送ベルト110と、駆動プーリ112と、従動プーリ114と、吸着ユニット116と、を備える。
【0065】
搬送ベルト110(「ガイド部材」の一例、「第2のガイド部材」の一例)は、無端状(環状)である。搬送ベルト110は、用紙Pの用紙幅より大きいベルト幅を有する。搬送ベルト110は、金属製であることが耐久性の点で好ましい。搬送ベルト110として、例えば、厚みが0.3mmのSUS304(Steel Use Stainless 304)のベルトを用いることができる。
【0066】
搬送ベルト110の搬送面110A(「ガイド面」の一例、「第2のガイド面」の一例)は、多数の穴部110B(
図11参照)を有する。穴部110B(「第2の穴部」の一例)は、搬送ベルト110を貫通する直径が0.3mmの貫通穴である。穴部110Bは、正方配列されてもよいし、ジグザグ配列されてもよい。隣り合う穴部110Bの中心間距離(ピッチ)は、4.5mm~5mmである。穴部110Bの単位面積当たりの開口率は、3~9%の範囲が好ましく、本実施形態では5%程度である。搬送ベルト110の搬送面110Aは、多数の凸部(「第2の凸部」の一例)を有してもよい。
【0067】
駆動プーリ112は、従動プーリ114に対して、用紙搬送方向下流側に配置される。駆動プーリ112と従動プーリ114とは、平行に配置される。搬送ベルト110は、駆動プーリ112及び従動プーリ114に張架されている。駆動プーリ112は、動力源としてのモータ152C(
図12参照)によって回転駆動される。モータが駆動されると、駆動プーリ112が
図10において左回りに回転する。
【0068】
従動プーリ114は、駆動プーリ112の回転に従動して
図10において左回りに回転する。駆動プーリ112及び従動プーリ114の回転により、搬送ベルト110は駆動プーリ112及び従動プーリ114の間を搬送方向に走行する。
【0069】
搬送ベルト110の搬送面110Aには、チェーングリッパ70により搬送される用紙Pが載置される。吸着コンベア100は、印刷面にインクが付与された用紙Pの非印刷面を搬送ベルト110の搬送面110Aで支持して、搬送ベルト110を走行させることで用紙搬送方向に用紙Pを搬送する。すなわち、用紙Pは、グリッパ74により先端部が把持され、その把持された先端部よりも後端側において非印刷面が搬送ベルト110に吸着された状態で、チェーングリッパ70及び吸着コンベア100によって搬送される。搬送面110Aは、少なくとも用紙Pの裏面と当接している間は平坦な面を形成する。
【0070】
チェーングリッパ70のチェーン72及びグリッパ74は、搬送ベルト110の搬送面110Aとの距離が5mm以上10mm以下の位置を移動する。グリッパ74と搬送面110Aとの距離が離れ過ぎると、グリッパ74に把持された用紙Pの先端部が大きく曲がり、しわの原因となり得る。用紙Pを把持しているグリッパ74と搬送面110Aとの距離はなるべく近いことが好ましい。
【0071】
吸着ユニット116は搬送ベルト110の内側に配置されている。吸着ユニット116は空気吸引用のブロア118(
図7参照)と接続されており、ブロア118を作動させることにより、搬送ベルト110の穴部110Bを通じて用紙Pを吸引する負圧を発生させる。吸着ユニット116は、チャンバ132と、多孔質吸着板134と、耐摩耗シート136と、を備えている。
【0072】
チャンバ132は、搬送ベルト110と対向する面が開放された直方体形状を有する。なお、チャンバ132の形状は直方体形状に限定されず、箱形の形状であればよい。チャンバ132の開放面には、多孔質体を用いて構成された多孔質吸着板134が配置される。多孔質吸着板134は、多孔質体によって構成されることで、厚み方向(
図10においてZ方向)に通気可能となっている。すなわち、多孔質吸着板134は、空気を通す不図示の多数の連通孔を有する。
【0073】
多孔質吸着板134の上面は平坦に形成されており、耐摩耗シート136が配置される。耐摩耗シート136は、搬送ベルト110を介して用紙Pを吸着するための不図示の複数の吸着孔が設けられている。耐摩耗シート136は、例えば、フッ素樹脂の被覆層を有するガラスクロス製の部材である。耐摩耗シート136は、吸着ユニット116の最上部に位置し、搬送ベルト110と摺動する。
【0074】
多孔質吸着板134は、チャンバ132側と耐摩耗シート136側とが、多数の連通孔により、連通している。多孔質吸着板134は、樹脂製、酸化アルミニウム等のセラミック製、又は炭化ケイ素(SiC)系材料製であることが耐久性の点で好ましく、フッ素樹脂製、セラミック製、又は炭化ケイ素系材料製であることが耐熱性の点で好ましい。
【0075】
チェーングリッパ70は、乾燥部50において吸着コンベア100と協働して用紙Pを搬送する。搬送ベルト110は、チェーン72の動きと同期しながら移動する。搬送ベルト110の走行速度と、チェーングリッパ70の走行速度とは略同じ速度に制御される。
【0076】
図11は、搬送ベルト110の穴部110Bの配列を示す図である。
図11のF11Aは正方配列された穴部110Bを示している。F11Aに示すように、穴部110Bは第3の方向に一定間隔で配置されて第3の方向に沿う穴部列110Cを形成しており、各穴部列110Cは第4の方向に一定間隔で複数列配置される。例えば、第3の方向は用紙幅方向であり、第4の方向は用紙搬送方向である。ここでは、穴部110Bは、第3の方向に隣り合う穴部110Bとの距離と第4の方向に隣り合う穴部110Bとの距離とが等しく配置される。
【0077】
図11のF11Bはジグザグ配列された穴部110Bを示している。F11Bに示すように、穴部110Bは第3の方向に一定間隔で配置されて第3の方向に沿う穴部列110Cを形成しており、各穴部列110Cは第4の方向に一定間隔で複数列配置される。また、第4の方向に隣り合う各穴部列110Cは、第3の方向の穴部110Bの位置が第3の方向の穴部110Bの間隔の半分だけずらして配置される。例えば、第3の方向は用紙幅方向であり、第4の方向は用紙搬送方向である。ここでは、穴部110Bは、第3の方向に隣り合う穴部110Bとの距離と隣り合う穴部列のうち最も近い穴部110Bとの距離とが等しく配置される。
【0078】
<制御系の構成>
図12は、インクジェット記録装置30の制御系の機能ブロック図である。インクジェット記録装置30は、システムコントローラ150、搬送制御部152、画像形成制御部154、乾燥制御部156、及び集積制御部158を備える。
【0079】
システムコントローラ150は、インクジェット記録装置30の各部を統括的に制御する全体制御部である。システムコントローラ150は、各種演算処理を行う演算部である。システムコントローラ150は、メモリにおけるデータの読み出し、及びデータの書き込みを制御するメモリーコントローラである。
【0080】
搬送制御部152は、印字ドラム42のモータ152A(「駆動機構」の一例、「第1の駆動機構」の一例)、チェーングリッパ70のモータ152B、及び吸着コンベア100のモータ152C(「駆動機構」の一例、「第2の駆動機構」の一例)の駆動を制御する。
【0081】
画像形成制御部154は、システムコントローラ150からの指令に応じて、インクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kの動作を制御する。また、画像形成制御部154は、不図示の画像処理部を備える。画像処理部は入力画像データからドットデータを形成する。画像処理部は、不図示の色分解処理部、不図示の色変換処理部、不図示の補正処理部、及び不図示のハーフトーン処理部を備える。
【0082】
色分解処理部は、入力画像データに対して色分解処理を施す。例えば、入力画像データがRGB(Red Green Blue)で表されている場合、入力画像データをR、G、及びBの色ごとのデータに分解する。
【0083】
色変換処理部は、R、G、及びBに分解した色ごとの画像データを、インク色に対応するC、M、Y、及びKに変換する。
【0084】
補正処理部では、C、M、Y、及びKに変換した色ごとの画像データに対して、補正処理を施す。補正処理の例として、ガンマ補正処理、濃度むら補正処理、及び異常記録素子補正処理等が挙げられる。
【0085】
ハーフトーン処理部は、例えば、0から255といった多階調数で表された画像データを、2値、又は入力画像データの階調数未満の3値以上の多値で表されるドットデータに変換する。ハーフトーン処理部は、予め決められたハーフトーン処理規則を適用する。ハーフトーン処理規則の例として、ディザ法、及び誤差拡散法等が挙げられる。
【0086】
画像形成制御部154は、不図示の波形生成部、不図示の波形記憶部、及び不図示の駆動回路を備える。波形生成部は駆動電圧の波形を生成する。波形記憶部は駆動電圧の波形が記憶される。
【0087】
駆動回路はドットデータに応じた駆動波形を有する駆動電圧を生成する。駆動回路は駆動電圧を、インクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kへ供給する。
【0088】
すなわち、画像処理部による処理を経て生成されたドットデータに基づいて、各画素位置の吐出タイミング、及びインク吐出量が決められる。各画素位置の吐出タイミング、及びインク吐出量に応じた駆動電圧、並びに各画素の吐出タイミングを決める制御信号が生成される。駆動電圧、及び制御信号がインクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kへ供給され、インクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kから吐出されたインクによって用紙Pにドットが形成される。
【0089】
乾燥制御部156は、システムコントローラ150からの指令に応じて加熱乾燥処理装置90の動作を制御する。
【0090】
集積制御部158は、システムコントローラ150からの指令に応じて集積装置62の動作を制御する。集積装置62の動作には、集積装置62に画像形成済の用紙Pを集積させる際のグリッパ74の開閉動作が含まれてもよい。
【0091】
〔各種制御部のハードウェア構成〕
図12に示した各種制御部は、プロセッサ(processor)が適用される。プロセッサのハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサである。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるPLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0092】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、又はCPUとFPGAの組み合わせ、あるいはCPUとGPUの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の機能部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の機能部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能部として作用させる形態がある。第2に、SoC(System On Chip)等に代表されるように、複数の機能部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0093】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0094】
プロセッサは、不図示のメモリに記憶された命令を実行する。メモリは、プロセッサに実行させるための命令を記憶する。メモリは、不図示のRAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。プロセッサは、RAMを作業領域とし、ROMに記憶された調査支援プログラムを含む各種のプログラム及びパラメータを使用してソフトウェアを実行し、かつROM等に記憶されたパラメータを使用することで、各種の処理を実行する。
【0095】
<インクジェット記録装置の作用>
インクジェット記録装置30は、用紙Pを印字ドラム42のグリッパ46で把持し、印字ドラム42の外周面42Aで支持して外周面42Aと一体に搬送する。インクジェット記録装置30は、印字ドラム42によって搬送される用紙Pに対してインクジェットヘッド48C、48M、48Y、48Kからインクを吐出して画像を形成する。
【0096】
さらに、インクジェット記録装置30は、画像が形成された用紙Pをグリッパ74で把持し、チェーングリッパ70の搬送経路に沿って搬送する。用紙Pは、第1のガイド80、吸着コンベア100、及び第2のガイド84によって非印刷面をガイドされる。インクジェット記録装置30は、用紙Pを搬送しながら、用紙Pに付与されたインクを加熱乾燥処理装置90により乾燥させる。
【0097】
最後に、インクジェット記録装置30は、インクが乾燥された用紙Pを集積装置62に集積させる。
【0098】
<乾燥ムラの視認性の低減>
本実施形態において、乾燥ムラとは、画像の一部が濃く見える現象、及び色が抜けて白く薄く見える現象を指す。本実施形態は、乾燥ムラの視認性を低下させるため、以下の対策を講じる。
【0099】
〔穴部及び凸部の直径〕
液体が付与された用紙を搬送する搬送ユニットのガイド面に穴部又は凸部がある場合、穴部及び凸部の径を相対的に小さくすることで乾燥ムラの大きさを小さくし、視認性を低下させる。インクジェット記録装置30において、ガイド面の凸部は印字ドラム42の外周面42Aの凸部44Aを指し、ガイド面の穴部は、搬送ベルト110の搬送面110Aの穴部110Bを指す。ガイド面の穴部は、印字ドラム42の外周面42Aの穴部44Bを指してもよい。
【0100】
図13は、インクジェット記録装置30によって印刷及び乾燥させたベタ画像の乾燥ムラの視認性を比較するための画像である。
図13のF13Aは、搬送ベルト110の穴部110Bの直径が0.5mmの場合のベタ画像の乾燥ムラを示す画像であり、
図13のF13Bは、搬送ベルト110の穴部110Bの直径が0.3mmの場合のベタ画像の乾燥ムラを示す画像である。
図13に示すように、穴部110Bの直径を0.3mmにすることで、穴部110Bの直径が0.5mmの場合よりも色が抜けて白く薄く見える現象の視認性を低下させることができる。
【0101】
図14は、印字ドラム42の凸部44A、及び搬送ベルト110の穴部110Bの直径に対する乾燥ムラ視認性、及び搬送性の評価結果を示す表である。評価条件は、凸部44Aは正方配置されており、隣り合う凸部44Aの中心間距離は、用紙幅方向、及び用紙搬送方向ともに2.5mmである。また、穴部110Bは正方配置されており、隣り合う穴部110Bの中心間距離は、用紙幅方向が1.0mmであり、用紙搬送方向が1.25mmである。
【0102】
乾燥ムラの視認性は、以下のように分類した。分類A、B、Cが合格であり、分類Dが不合格である。
【0103】
A:とてもよい(乾燥ムラが視認されない)
B:Aよりも悪くCよりもよい
C:よい(乾燥ムラがほとんど視認されない)
D:悪い(乾燥ムラが視認される)
【0104】
搬送性は、以下のように分類した。分類A、B、Cが合格であり、分類Dが不合格である。
【0105】
A:とてもよい(良好に搬送できる)
B:Aよりも悪くCよりもよい
C:よい(搬送できる)
D:悪い(搬送に支障がある)
【0106】
図14に示すように、穴部110Bの直径が0.01mmの場合、乾燥ムラは視認されないが、搬送に支障があった。穴部110Bの直径が0.011mm~0.31mmの場合、乾燥ムラの視認性及び搬送性はともに合格である。また、穴部110Bの直径が0.5mmの場合、搬送性はよいが、乾燥ムラが視認される。このように、穴部110Bの直径は、0.011mm~0.31mmの範囲であることが好ましいことがわかった。
【0107】
穴部110Bは、用紙Pを吸着する目的として使用される。穴部110Bの直径は、代表的な多孔質シートPTFE(polytetrafluoroethylene、ポリテトラフルオロエチレン)の孔径より、0.01mmを超える大きさであることが望ましい。穴部110Bの直径が過度に小さくなると、通気性抵抗が低くなり、搬送性が損なわれる。
【0108】
また、
図14に示すように、凸部44Aの直径が0.01mm、及び0.011mmの場合、乾燥ムラは視認されないが、搬送に支障があった。凸部44Aの直径が0.1mm~0.31mmの場合、乾燥ムラの視認性及び搬送性はともに合格である。また、凸部44Aの直径が0.5mmの場合、搬送性はよいが、乾燥ムラが視認される。
【0109】
凸部44Aは、用紙Pをグリップする目的として使用される。凸径が過度に小さくなると、グリップ力が低くなり、搬送性が損なわれる。このように、凸部44Aの直径は、0.1mm~0.31mmの範囲であることが好ましいことがわかった。
【0110】
ここでは、穴部及び凸部の用紙Pに接触する上面が円形である場合について説明したが、穴部及び凸部の上面は多角形、その他の形状であってもよい。穴部110Bの上面が円形でない場合、穴部110Bの上面に内接する内接円の直径が、0.011mm~0.31mmの範囲であればよい。また、凸部44Aの上面が円形でない場合、凸部44Aの上面に内接する内接円の直径が0.1mm~0.31mmの範囲であればよい。
【0111】
〔穴部列及び凸部列の周期性〕
液体が付与された用紙を搬送する搬送ユニットに、異なる場所で凸部を有するガイド面と穴部を有するガイド面とが存在する場合、1つの画像上に「画像の一部が濃く見える現象」及び「画像の一部が薄く見える現象」が視認されることがある。
【0112】
本実施形態に係るインクジェット記録装置30は、印字ドラム42に凸部44Aが設けられ、搬送ベルト110に穴部110Bが設けられている。すなわち、インクジェット記録装置30には、異なる場所で凸部を有するガイド面と穴部を有するガイド面とが存在する。
【0113】
図11を用いて説明したように、搬送ベルト110の穴部110Bは、穴部列を形成している。穴部列が延びる方向は、例えば用紙幅方向である。印字ドラム42の凸部44Aも同様に、凸部列を形成する。
【0114】
印字ドラム42の凸部44Aの凸部列が用紙幅方向に延びる場合、「画像の一部が濃く見える現象」は用紙幅方向にライン状に見えることがある。また、搬送ベルト110の穴部110Bの穴部列が用紙幅方向に延びる場合、「画像の一部が薄く見える現象」が用紙幅方向にライン状に見えることがある。ここで、「画像の一部が濃く見える現象」のラインが「画像の一部が薄く見える現象」のライン間に入り込むと、周期的な濃淡差により、より視認されやすくなる。
【0115】
図15は、凸部及び穴部の配置による用紙P上の乾燥ムラの視認され方の模式図である。
図15において、白色の円形は乾燥ムラにより薄く視認される現象の位置を示し、黒色の円形は用紙P上の乾燥ムラにより濃く視認される現象の位置を示す。
【0116】
図15のF15Aは、印字ドラム42の凸部44A及び搬送ベルト110の穴部110Bがともに正方配列であり、凸部44Aが形成する凸部列と穴部110Bが形成する穴部列とがともに用紙幅方向に平行な場合を示している。F15Aに示すように、用紙幅方向に濃く見える現象のラインと薄く見える現象のラインが発生し、薄く見える現象のラインの間に濃く見える現象のラインが入り込んでいる。このため、濃く見える現象のラインがより濃く見えてしまう。
【0117】
図15のF15Bは、印字ドラム42の凸部44Aが正方配列であり、搬送ベルト110の穴部110Bがジグザグ配列であり、凸部44Aが形成する凸部列と穴部110Bが形成する穴部列とがともに用紙幅方向に平行な場合を示している。F15Aの場合と同様に、用紙幅方向に濃く見える現象のラインと薄く見える現象のラインが発生し、薄く見える現象のラインの間に濃く見える現象のラインが入り込んでいる。このため、濃く見える現象のラインがより濃く見えてしまう。
【0118】
図15のF15Cは、印字ドラム42の凸部44Aが正方配列であり、凸部44Aが形成する凸部列が用紙幅方向に平行であり、搬送ベルト110の穴部110Bが用紙幅方向に対して10°傾けられた正方10°配列であり、穴部110Bが形成する穴部列が用紙幅方向に対して10°傾いている場合を示している。F15Cに示すように、薄く見える現象のラインは用紙幅方向に対して10°傾いており、用紙幅方向に発生する濃く見える現象のラインとは、周期性を有しない。このため、乾燥ムラが視認されにくくなる。
【0119】
ここでは、凸部列が用紙幅方向であり、穴部列が用紙幅方向に対して10°傾いている例を説明したが、周期的な濃淡差が発生しない原理は同じであるため、用紙幅方向に対して傾ける列は凸部及び穴部どちらでもよい。また、凸部列及び穴部列のいずれか一方が用紙幅方向である必要はなく、凸部列の方向と穴部列の方向とが異なればよい。
【0120】
図16は、実際の乾燥ムラを示す画像である。
図16に示すF16Aは、
図15のF15Aに示した場合の乾燥ムラである。薄く見える現象のラインの間に濃く見える現象のラインが入り込み、周期的な濃淡差で乾燥ムラが視認されやすい。一方、
図16に示すF16Bは、
図15のF15Cで示した場合の乾燥ムラである。周期的な濃淡差が発生せず、乾燥ムラが視認されにくいことがわかる。
【0121】
〔穴部列及び凸部列の角度の定義〕
図17は、穴部列の用紙幅方向を基準とした角度の定義を説明するための図である。ここでは、穴部110Bが形成する穴部列について説明するが、凸部44Aが形成する凸部列についても同様である。
【0122】
図17のF17Aは、穴部110Bが正方0°配列(直方配列)の例を示している。正方0°配列の場合、穴部110Bは、用紙幅方向に一定の間隔で配置され、かつ用紙搬送方向に一定の間隔で配置される。
【0123】
穴部110Bは、中心位置が用紙搬送方向に平行な直線上に存在する穴部110Bの群を形成する。F17Aに示す例では、F17Aの左側からn群、(n+1)群、(n+2)群とする。n群と(n+1)群との用紙幅方向の距離、及び(n+1)群と(n+2)群との用紙幅方向の距離、すなわち群間距離を、それぞれd1とする。また、用紙搬送方向に隣り合う穴部110Bの中心間距離をd2とする。d1=d2であってもよい。
【0124】
図17のF17Bは、穴部110Bが正方θ°配列の例を示している。正方θ°配列とは、(n+2)群目の穴部110Bの中心位置が、用紙幅方向に平行かつn群目の穴部110Bの中心位置を通る直線Lから、n群目の穴部110Bの中心位置を中心としてθ°ずれた直線M上を通る配列である。θは、n群目の穴部110Bの中心位置を中心とした際に、反時計回り(左回り)の回転方向を正とする。正方θ°配列では、群間距離は正方0°配列と同様にd
1である。また、正方θ°配列では、n群、(n+1)群、(n+2)群、…、の用紙搬送方向に隣り合う穴部110Bの中心間距離は正方0°配列と同様にd
2である。
【0125】
図17のF17Cは、穴部110Bが正方θ°配列であり、θ=tan
-1(d
2/d
1)°の例を示している。F17Cに示すように、θ=tan
-1(d
2/d
1)°の場合、正方θ°配列は、穴部110Bが用紙幅方向に一定の間隔で配置され、かつ用紙搬送方向に一定の間隔で配置される。すなわち、θ=tan
-1(d
2/d
1)°の正方θ°配列は、正方0°配列と同じ配列になる。
【0126】
図18は、正方配列の穴部列の角度の具体例を示す図である。ここでは、穴部110Bが形成する穴部列について説明するが、凸部列についても同様である。
【0127】
図18のF18Aは、穴部110Bが正方0°配列の例を示している。ここでは、穴部110Bの径は0.3mmであり、穴部110Bの群間距離は1.0mmであり、用紙搬送方向に互いに隣接する穴部110Bの中心間距離は1.25mmである。すなわち、d
1=1.0mmであり、d
2=1.25mmである。
【0128】
図18のF18Bは、穴部110Bが正方10°配列の例を示しており、
図18のF18Cは、穴部110Bが正方30°配列の例を示している。いずれも正方0°配列と同様に、穴部110Bの群間距離は1.0mmであり、用紙搬送方向に互いに隣接する穴部110Bの中心間距離は1.25mmである。
【0129】
また、
図18のF18Dは、穴部110Bが正方51.34°配列、すなわち正方{tan
-1(1.25/1.0)}°配列の例を示している。F18Dに示すように、正方51.34°配列は、正方0°配列と同じ配列である。
【0130】
図19は、ジグザグ配列の穴部列の角度の具体例を示す図である。ここでは、穴部110Bが形成する穴部列について説明するが、凸部列についても同様である。
【0131】
図19のF19Aは、穴部110Bがジグザグ0°配列の例を示している。ここでは、穴部110Bの径は0.3mmであり、穴部110Bの群間距離は1.0mmである。また、用紙幅方向に互いに隣接する穴部110Bの中心間距離は2.0mmであり、用紙搬送方向に互いに隣接する穴部110Bの中心間距離は1.25mmである。すなわち、d
1=1.0mmであり、d
2=1.25mmである。
【0132】
図19のF19Bは、穴部110Bがジグザグ10°配列の例を示している。ジグザグ0°配列と同様に、穴部110Bの群間距離は1.0mmであり、用紙搬送方向に互いに隣接する穴部110Bの中心間距離は1.25mmである。
【0133】
また、
図19のF19Cは、穴部110Bがジグザグ51.34°配列、すなわちジグザグ{tan
-1(1.25/1.0)}°配列の例を示している。この場合も、穴部110Bの群間距離は1.0mmであり、用紙搬送方向に互いに隣接する穴部110Bの中心間距離は1.25mmである。F19Cに示すように、ジグザグ51.34°配列は、ジグザグ0°配列と同じ配列である。
【0134】
〔穴部列及び凸部列の角度と視認性〕
図20は、用紙幅方向に対する穴部列、凸部列の角度と乾燥ムラの視認性の関係の評価結果を示す表である。評価条件は、印字ドラム42の凸部44A、及び搬送ベルト110の穴部110Bはともに正方配列であり、凸部44Aの径は1.0mmであり、凸部44Aの径は0.3mmである。ここでは、凸部44Aが形成する凸部列が用紙幅方向に平行であり、穴部110Bが形成する穴部列の角度を反時計回りの回転方向を正として0.9°、1°、10°、{tan
-1(d
2/d
1)-1}°、及び{tan
-1(d
2/d
1)-0.9}°に変更して評価した。なお、d
1は中心位置が用紙搬送方向に平行な直線上に存在する穴部110Bが形成する複数の群における用紙搬送方向に直交する方向の群間距離であり、d
2は用紙搬送方向において互いに隣接する穴部110Bの中心間距離である。
【0135】
乾燥ムラの視認性は、以下のように分類した。分類A、B、Cが合格であり、分類Dが不合格である。
【0136】
A:とてもよい(乾燥ムラが視認されない)
B:Aよりも悪くCよりもよい
C:よい(乾燥ムラがほとんど視認されない)
D:悪い(乾燥ムラが視認される)
【0137】
図20に示すように、凸部列に対する穴部列の角度が0.9°、1°、10°、{tan
-1(d
2/d
1)-1}°、及び{tan
-1(d
2/d
1)-0.9}°の場合の評価結果は、それぞれD、B、A、B、及びD判定であった。この結果から、凸部44Aが形成する凸部列が用紙幅方向に平行な場合、乾燥ムラの周期性を無くすためには、穴部110Bが形成する穴部列は用紙幅方向に対して1°以上{tan
-1(d
2/d
1)-1}°以下の角度を有することが好ましいことがわかった。
【0138】
ここでの穴部列の角度は、n群目の穴部110Bの中心位置を中心とした際に、反時計回り(左回り)の回転方向を正としたが、時計回り(右回り)の回転方向を正とした場合も上記の関係が成り立つと考えられる。
【0139】
乾燥ムラの周期性の原理を鑑みると、穴部110Bが形成する穴部列が用紙幅方向に平行な場合、乾燥ムラの周期性を無くすためには、凸部44Aが形成する凸部列は用紙幅方向に対して1°以上{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度を有することが好ましい。すなわち、凸部列の方向と穴部列の方向とは、1°以上{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度を有することが好ましい。
【0140】
〔穴部列及び凸部列の角度の他の態様〕
ここまでは、穴部及び凸部の配置を変更することで穴部列及び凸部列の角度を変更する例を説明したが、穴部及び凸部の配置を維持したまま穴部列及び凸部列の角度を変更してもよい。
【0141】
図21は、他の態様における穴部列の用紙幅方向を基準とした角度の定義を説明するための図である。
【0142】
図21のF21Aは、穴部110Bが正方0°配列であって、正方0°配列が用紙幅方向を基準として0°に配置された例を示している。正方0°配列が0°に配置された場合、穴部110Bは、用紙幅方向に一定の間隔で配置され、かつ用紙搬送方向に一定の間隔で配置される。
【0143】
穴部110Bは、F17Aに示した例と同様に、中心位置が用紙搬送方向に平行な直線上に存在する穴部110Bの群を形成する。n群と(n+1)群との用紙幅方向の距離、及び(n+1)群と(n+2)群との用紙幅方向の距離、すなわち群間距離を、それぞれd1とする。また、用紙搬送方向に隣り合う穴部110Bの中心間距離をd2とする。d1=d2であってもよい。
【0144】
図21のF21Bは、穴部110Bが正方0°配列であって、正方0°配列が用紙幅方向を基準としてθ°傾けて配置された例を示している。正方0°配列がθ°傾けて配置された場合、n群、(n+1)群、及び(n+2)群のそれぞれの穴部110Bは、中心位置が用紙搬送方向に対してθ°傾いた直線上に平行となる。
【0145】
図21のF21Cは、穴部110Bが正方0°配列であって、正方0°配列が用紙幅方向を基準としてθ°傾けて配置され、θ=tan
-1(d
2/d
1)°の例を示している。F21Cに示すように、θ=tan
-1(d
2/d
1)°の場合、穴部110Bが用紙幅方向に平行に配置される。
【0146】
乾燥ムラの周期性の原理を鑑みると、凸部44Aが形成する凸部列が用紙幅方向に平行な場合、乾燥ムラの周期性を無くすためには、正方0°配列の穴部110Bは、用紙幅方向に対して1°以上{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度を有することが好ましい。同様に、穴部110Bが形成する穴部列が用紙幅方向に平行な場合、乾燥ムラの周期性を無くすためには、正方0°配列の凸部44Aは、用紙幅方向に対して1°以上{tan-1(d2/d1)-1}°以下の角度を有することが好ましい。
【0147】
ここでの穴部列の角度は、n群目の穴部110Bの中心位置を中心とした際に、反時計回りの回転方向を正としたが、時計回りの回転方向を正とした場合も上記の関係が成り立つと考えられる。
【0148】
ここでは、正方0°配列の穴部110Bの配置を維持したまま穴部列の角度を変更する例について説明したが、正方θ°配列の穴部110Bの配置を維持したまま穴部列の角度を変更してもよいし、ジグザグ0°配列、又はジグザグθ°配列の配置を維持したまま穴部列の角度を変更してもよい。また、穴部110Bが形成する穴部列について説明したが、凸部44Aが形成する凸部列についても同様である。
【0149】
〔保持部とガイド面の移動速度差〕
用紙を保持する保持部と用紙をガイドするガイド面とは、用紙を精度高く搬送し、用紙を十分に加熱するため、殆ど同じ移動速度で駆動されるが、移動速度は異なることが好ましい。移動速度の差は、保持部とガイド面とのズレ量≧穴部、凸部の径となる速度差であればよい。すなわち、保持部材の移動速度とガイド面の移動速度との差は、記録媒体の第2の面がガイド面に接触している期間の保持部材とガイド面との移動距離の差が穴部及び凸部の直径、又は穴部及び凸部に内接する内接円の直径以上となる移動速度の差であればよい。
【0150】
インクジェット記録装置30では、乾燥部50において、チェーングリッパ70及び吸着コンベア100によって用紙Pを搬送している。したがって、用紙Pを保持するチェーングリッパ70のグリッパ74と、用紙Pをガイドするガイド面に相当する吸着コンベア100の搬送ベルト110とは、移動速度が異なることが好ましい。これにより、用紙Pが搬送ベルト110と常時同じ箇所で接触している状態を解除し、乾燥ムラを抑えることができる。
【0151】
グリッパ74と搬送ベルト110の速度差は、用紙Pが搬送ベルト110によってガイドされて搬送される期間におけるグリッパ74と搬送ベルト110とのズレ量が、搬送ベルト110の穴部110Bの直径以上となる速度差であればよい。
【0152】
また、搬送ベルト110の移動速度が、グリッパ74の移動速度の1/2以上であれば、乾燥ムラ抑制に効果がある。
【0153】
<その他>
以上のように、ガイド面の凸部及び穴部の直径及び配列を工夫することで、乾燥ムラ視認性低下を実現することができる。加えて、ガイド面を用紙と合わせて駆動させることで、用紙搬送性及び乾燥性が向上し、本来の搬送乾燥の役割を十分満たすことができる。
【0154】
本実施形態では、記録媒体として枚葉の用紙Pの例を説明したが、記録媒体は樹脂シート、フィルム、その他材質及び形状を問わず、様々なシート体を用いることができる。
【0155】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0156】
10…ガイド面
12…凸部
14…穴部
20…ガイド面
22…穴部
30…インクジェット記録装置
40…印刷部
42…印字ドラム
42A…外周面
43…ドラム本体
44…セラミックスジャケット
44A…凸部
44B…穴部
46…グリッパ
48C…インクジェットヘッド
48K…インクジェットヘッド
48M…インクジェットヘッド
48Y…インクジェットヘッド
50…乾燥部
60…集積部
62…集積装置
70…チェーングリッパ
72…チェーン
74…グリッパ
80…第1のガイド
84…第2のガイド
90…加熱乾燥処理装置
100…吸着コンベア
110…搬送ベルト
110A…搬送面
110B…穴部
110C…穴部列
112…駆動プーリ
114…従動プーリ
116…吸着ユニット
118…ブロア
132…チャンバ
134…多孔質吸着板
136…耐摩耗シート
150…システムコントローラ
152…搬送制御部
152A…モータ
152B…モータ
152C…モータ
154…画像形成制御部
156…乾燥制御部
158…集積制御部
I…インク
L…直線
M…直線
P…用紙