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特開2023-170986ウエーハの生成方法およびウエーハ生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170986
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ウエーハの生成方法およびウエーハ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231124BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231124BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20231124BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231124BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/304 631
H01L21/68 N
B23K26/53
B24B7/04 A
B28D5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083126
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永見 優
【テーマコード(参考)】
3C043
3C069
4E168
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043CC04
3C043EE04
3C069AA03
3C069BA01
3C069BA08
3C069BB04
3C069BC07
3C069CA04
3C069EA04
4E168AE01
4E168CB02
4E168DA43
4E168HA00
4E168JA13
5F057AA21
5F057AA53
5F057BA01
5F057BA12
5F057BB09
5F057CA02
5F057CA06
5F057CA11
5F057CA36
5F057DA01
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA26
5F057DA31
5F057DA38
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA37
5F131AA02
5F131AA10
5F131AA22
5F131BA32
5F131BA42
5F131BA43
5F131BA53
5F131CA12
5F131EB01
5F131EC32
5F131EC63
5F131EC64
5F131EC69
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】インゴットからウエーハを剥離した際に生じる剥離屑を除去し、加工不良を低減することができるウエーハの生成方法およびウエーハ生成装置を提供すること。
【解決手段】ウエーハの生成方法は、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置づけた状態でインゴットと集光点とを相対的に移動させることで改質部とクラックとを含む剥離層を形成する剥離層形成ステップ1と、剥離層を起点としてインゴットからウエーハを剥離するウエーハ生成ステップ2と、ウエーハの剥離面およびインゴットの剥離面の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂を含むシートを密着させて加熱するシート密着ステップ3と、シートを剥がすことで剥離面に付着した剥離屑を剥離面から除去するシート剥離ステップ4と、剥離屑が除去された剥離面を研削する研削ステップ5と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面と、該第一の面と反対側の第二の面と、を有するインゴットからウエーハを生成するウエーハの生成方法であって、
該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該第一の面側から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置づけた状態で該インゴットと該集光点とを相対的に移動させることで改質部とクラックとを含む剥離層を形成する剥離層形成ステップと、
該剥離層を起点として該インゴットからウエーハを剥離するウエーハ生成ステップと、
該ウエーハ生成ステップを実施した後、該ウエーハの剥離面および該インゴットの剥離面の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂を含むシートを密着させて加熱するシート密着ステップと、
該シート密着ステップを実施した後、該シートを剥がすことで該剥離面に付着した剥離屑を該剥離面から除去するシート剥離ステップと、
該シート剥離ステップを実施した後、剥離屑が除去された該剥離面を研削する研削ステップと、
を含む、ウエーハの生成方法。
【請求項2】
インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、
該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点をインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置付けた状態で該レーザービームを照射して剥離層を形成するレーザービーム照射ユニットと、
該レーザービーム照射ユニットにより形成された該剥離層を起点として該インゴットからウエーハを剥離する剥離ユニットと、
該剥離ユニットによって剥離された該ウエーハの剥離面および該インゴットの剥離面の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂を含むシートを密着させて加熱し、該剥離面に存在する剥離屑を該シートに付着させた状態で、該シートを剥がすことで該剥離面から該剥離屑を除去する剥離屑除去ユニットと、
該剥離面を研削して平坦化する研削手段を含む研削ユニットと、
を備える、ウエーハ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの生成方法およびウエーハ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスが形成される半導体ウエーハ等のウエーハの生成方法として、一般に円柱形状のインゴットをワイヤソーで薄く切断することにより生成される。しかしながら、インゴットをワイヤソーで切断した後、切り出されたウエーハの表裏面を研磨すると、インゴットの大部分が捨てられるため、不経済であるという問題があった。
【0003】
これを解決するために、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点をインゴットの内部に位置づけた状態で照射して剥離層を形成し、剥離層を起点としてウエーハを剥離する技術が提案されている(特許文献1、2参照)。このようにしてインゴットから剥離されたウエーハは、剥離面が研削されて所定の厚みを有するウエーハが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-111143号公報
【特許文献2】特開2019-102513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、剥離後のウエーハおよびインゴットにはトゲ状の剥離屑がコンタミとして残存する。この状態でウエーハを研削すると、トゲ状のコンタミが砥石に刺さってしまい、加工品質の悪化や砥石の欠け等を招く恐れがあった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インゴットからウエーハを剥離した際に生じる剥離屑を除去し、加工不良を低減することができるウエーハの生成方法およびウエーハ生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの生成方法は、第一の面と、該第一の面と反対側の第二の面と、を有するインゴットからウエーハを生成するウエーハの生成方法であって、該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該第一の面側から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置づけた状態で該インゴットと該集光点とを相対的に移動させることで改質部とクラックとを含む剥離層を形成する剥離層形成ステップと、該剥離層を起点として該インゴットからウエーハを剥離するウエーハ生成ステップと、該ウエーハ生成ステップを実施した後、該ウエーハの剥離面および該インゴットの剥離面の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂を含むシートを密着させて加熱するシート密着ステップと、該シート密着ステップを実施した後、該シートを剥がすことで該剥離面に付着した剥離屑を該剥離面から除去するシート剥離ステップと、該シート剥離ステップを実施した後、剥離屑が除去された該剥離面を研削する研削ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のウエーハ生成装置は、インゴットからウエーハを生成するウエーハ生成装置であって、該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点をインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置付けた状態で該レーザービームを照射して剥離層を形成するレーザービーム照射ユニットと、該レーザービーム照射ユニットにより形成された該剥離層を起点として該インゴットからウエーハを剥離する剥離ユニットと、該剥離ユニットによって剥離された該ウエーハの剥離面および該インゴットの剥離面の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂を含むシートを密着させて加熱し、該剥離面に存在する剥離屑を該シートに付着させた状態で、該シートを剥がすことで該剥離面から該剥離屑を除去する剥離屑除去ユニットと、該剥離面を研削して平坦化する研削手段を含む研削ユニットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、インゴットからウエーハを剥離した際に生じる剥離屑を除去し、加工不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るウエーハの生成方法の加工対象のインゴットの斜視図である。
図2図2は、図1に示すインゴットの側面図である。
図3図3は、実施形態に係るウエーハの生成方法の流れを示すフローチャート図である。
図4図4は、図3に示す剥離層形成ステップを示す斜視図である。
図5図5は、図4におけるインゴットの上面図である。
図6図6は、図3に示すウエーハ生成ステップの一状態を示す側面図である。
図7図7は、図3に示すウエーハ生成ステップの図6の後の一状態を示す側面図である。
図8図8は、図3に示すシート密着ステップおよびシート剥離ステップを実施する剥離屑除去ユニットの構成例を示す側面図である。
図9図9は、図3に示すシート密着ステップの一状態を示す上面図である。
図10図10は、図3に示すシート剥離ステップの一状態を示す側面図である。
図11図11は、図3に示す研削ステップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウエーハ30の生成方法およびウエーハ生成装置100を図面に基づいて説明する。実施形態のウエーハ30の生成方法は、図4図6図7図8図10、および図11に示すウエーハ生成装置100を用いて、図1および図2に示すインゴット10から、図7に示すウエーハ30を生成する方法である。
【0013】
(SiC単結晶インゴット)
まず、本発明の実施形態に係るウエーハ30の生成方法の加工対象のインゴット10の構成について説明する。図1は、実施形態に係るウエーハ30の生成方法の加工対象のインゴット10の斜視図である。図2は、図1に示すインゴット10の側面図である。
【0014】
図1および図2に示す実施形態のインゴット10は、SiC(炭化ケイ素)からなり、全体として円柱状に形成される、単結晶SiCインゴットである。インゴット10は、実施形態において、六方晶単結晶SiCインゴットである。インゴット10は、第一の面11と、第二の面12と、周面13と、第一オリエンテーションフラット14と、第二オリエンテーションフラット15と、を有している。
【0015】
第一の面11は、円形状であって、円柱状に形成されるインゴット10の一方の端面である。第二の面12は、円形状であって、円柱状に形成されるインゴット10の第一の面11とは反対側の端面である。第二の面12は、インゴット10の底面に相当する。周面13は、第一の面11の外縁と第二の面12の外縁とに連なる面である。
【0016】
第一オリエンテーションフラット14は、インゴット10の結晶方位を示すために周面13の一部に形成される平面である。第二オリエンテーションフラット15は、インゴット10の結晶方位を示すために周面13の一部に形成される平面である。第二オリエンテーションフラット15は、第一オリエンテーションフラット14に直交する。なお、第一オリエンテーションフラット14の長さは、第二オリエンテーションフラット15の長さより長い。
【0017】
また、インゴット10は、第一の面11の垂線16に対して第二オリエンテーションフラット15に向かう傾斜方向17にオフ角20傾斜したc軸18と、c軸18に直交するc面19と、を有している。c軸18の垂線16からの傾斜方向17は、第二オリエンテーションフラット15の伸長方向に直交し、かつ第一オリエンテーションフラット14と平行である。c面19は、インゴット10の第一の面11に対してオフ角20傾斜している。
【0018】
c面19は、インゴット10中にインゴット10の分子レベルで無数に設定される。インゴット10は、実施形態では、オフ角20を1°、4°または6°に設定されているが、本発明では、例えば1°~6°の範囲で自由に設定されて製造されてもよい。インゴット10は、第一の面11が研削装置により研削加工された後、研磨装置により研磨加工されて、第一の面11が鏡面に形成される。
【0019】
(ウエーハ30の生成方法およびウエーハ生成装置100)
次に、本発明の実施形態に係るウエーハ30の生成方法について説明する。図3は、実施形態に係るウエーハ30の生成方法の流れを示すフローチャート図である。ウエーハ30の生成方法は、剥離層形成ステップ1と、ウエーハ生成ステップ2と、シート密着ステップ3と、シート剥離ステップ4と、研削ステップ5と、を含む。
【0020】
実施形態の剥離層形成ステップ1、ウエーハ生成ステップ2、シート密着ステップ3、シート剥離ステップ4、および研削ステップ5は、図4図6図7図8図10、および図11に示すウエーハ生成装置100を用いて実施される。ウエーハ生成装置100は、剥離層形成ステップ1を実施するレーザービーム照射ユニット110と、ウエーハ生成ステップ2を実施する剥離ユニット130と、シート密着ステップ3およびシート剥離ステップ4を実施する剥離屑除去ユニット140と、研削ステップ5を実施する研削ユニット170と、保持テーブル120、160、180と、を備える。
【0021】
<剥離層形成ステップ1>
図4は、図3に示す剥離層形成ステップ1を示す斜視図である。図5は、図4におけるインゴット10の上面図である。剥離層形成ステップ1は、レーザービーム112によって、インゴット10の第一の面11側から生成すべきウエーハ30の厚みに相当する深さに、改質部21とクラック22とを含む剥離層23を形成するステップである。
【0022】
実施形態の剥離層形成ステップ1は、ウエーハ生成装置100のレーザービーム照射ユニット110によって実施される。レーザービーム照射ユニット110は、例えば、レーザービーム112を出射する発振器と、レーザービーム112を保持テーブル120に保持されたインゴット10に向けて集光する集光器111と、発振器から集光器111までレーザービーム112を導く各種の光学部品と、を有する。
【0023】
保持テーブル120は、インゴット10を保持面121で保持する。保持面121は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面121は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面121は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル120は、保持面121上に載置されたインゴット10の第二の面12側を吸引保持する。
【0024】
レーザービーム照射ユニット110は、保持テーブル120の保持面121に保持されたインゴット10に、透過性を有する波長のレーザービーム112を照射する。レーザービーム照射ユニット110は、不図示の移動ユニットによって保持テーブル120と相対的に移動可能である。なお、以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。また、実施形態において、X軸方向が加工送り方向であり、Y軸方向が割り出し送り方向である。
【0025】
剥離層形成ステップ1では、まず、インゴット10の第二の面12側を保持テーブル120の保持面121に吸引保持する。この際、インゴット10の第二オリエンテーションフラット15と加工送り方向(X軸方向)とが平行になるように調整する。次に、レーザービーム112の集光点113をインゴット10内部の生成すべきウエーハ30(図6等参照)の厚みに相当する深さに位置づける。レーザービーム112は、インゴット10に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザービームである。
【0026】
剥離層形成ステップ1では、次に、集光点113をインゴット10内部の生成すべきウエーハ30(図6等参照)の厚みに相当する深さに位置づけた状態で、レーザービーム照射ユニット110の集光器111と保持テーブル120とを相対的に移動させる。すなわち、集光点113とインゴット10とを第一の面11と平行な方向(XY方向)に相対的に移動させながら、レーザービーム112をインゴット10に向けて照射する。
【0027】
剥離層形成ステップ1では、パルス状のレーザービーム112の照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離する。そして、次に照射されるパルス状のレーザービーム112が、前に形成されたCに吸収されて、SiCが連鎖的にSiとCとに分離する改質部21が、加工送り方向に沿ってインゴット10の内部に形成されるとともに、改質部21からc面19(図2参照)に沿って延びるクラック22が生成される。すなわち、実施形態では、クラック22は、割り出し送り方向(Y軸方向)に伸展する。このようにして、剥離層形成ステップ1では、改質部21と、改質部21からc面19に沿って形成されるクラック22とを含む剥離層23を形成する。
【0028】
<ウエーハ生成ステップ2>
図6は、図3に示すウエーハ生成ステップ2の一状態を示す側面図である。図7は、図3に示すウエーハ生成ステップ2の図6の後の一状態を示す側面図である。ウエーハ生成ステップ2は、剥離層形成ステップ1において形成された剥離層23を起点としてインゴット10からウエーハ30を剥離するステップである。
【0029】
実施形態のウエーハ生成ステップ2は、ウエーハ生成装置100の剥離ユニット130によって実施される。剥離ユニット130は、例えば、インゴット10を保持するインゴット保持ユニット131と、生成すべきウエーハ30を保持するウエーハ保持ユニット132と、インゴット保持ユニット131とウエーハ保持ユニット132とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、を有する。
【0030】
インゴット保持ユニット131は、インゴット10を保持面133で保持する。保持面133は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面133は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面133は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。インゴット保持ユニット131は、保持面133上に載置されたインゴット10の第二の面12側を吸引保持する。
【0031】
ウエーハ保持ユニット132は、生成すべきウエーハ30を保持面134で吸引保持する。保持面134は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面134は、実施形態において、水平方向と平行かつインゴット保持ユニット131の保持面133と対向する平面である。保持面134は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。ウエーハ保持ユニット132は、保持面134に当接しているインゴット10の第一の面11側を吸引保持する。ウエーハ保持ユニット132は、不図示の移動ユニットによって、インゴット保持ユニット131に対して近接可能かつ離隔可能である。
【0032】
なお、インゴット保持ユニット131は、保持テーブル120と共有で使用されるものでもよい。すなわち、レーザービーム照射ユニット110によって剥離層23を形成されたインゴット10を、ウエーハ保持ユニット132に対向する位置まで保持テーブル120上で搬送してもよい。
【0033】
図6に示すように、ウエーハ生成ステップ2では、まず、インゴット10の第二の面12をインゴット保持ユニット131の保持面133で吸引保持する。次に、ウエーハ保持ユニット132をインゴット保持ユニット131側に近接させ、インゴット10の第一の面11を保持面134で吸引保持する。この状態で、図7に示すように、次に、ウエーハ保持ユニット132をインゴット保持ユニット131から離隔させる。これにより、上下に引っ張られたインゴット10が剥離層23を起点として分離し、インゴット10の第一の面11側の剥離した一部がウエーハ30として生成される。
【0034】
<シート密着ステップ3およびシート剥離ステップ4>
図8は、図3に示すシート密着ステップ3およびシート剥離ステップ4を実施する剥離屑除去ユニット140の構成例を示す側面図である。図9は、図3に示すシート密着ステップ3の一状態を示す上面図である。図10は、図3に示すシート剥離ステップ4の一状態を示す側面図である。
【0035】
シート密着ステップ3は、ウエーハ生成ステップ2を実施した後に実施される。シート密着ステップ3は、ウエーハ30の剥離面31およびインゴット10の剥離面24の少なくともいずれかに熱可塑性樹脂を含むシート141を密着させて加熱するステップである。また、シート剥離ステップ4は、シート密着ステップ3で貼り付けたシート141を剥がすことで剥離面31、24に付着した剥離屑を剥離面31、24から除去するステップである。
【0036】
実施形態のシート密着ステップ3および後述のシート剥離ステップ4は、ウエーハ生成装置100の剥離屑除去ユニット140によって実施される。剥離屑除去ユニット140は、保持テーブル160に保持されたウエーハ30またはインゴット10の剥離面31、24にシート141を密着させるとともに、密着させたシート141を剥がすことで剥離面31、24から剥離屑を除去するユニットである。剥離屑除去ユニット140は、支持ローラ150と、搬送ローラ151、152と、剥離ローラ153と、保護紙巻回ローラ154と、押圧ローラ155と、シート巻回ローラ156と、加熱手段157と、を有する。
【0037】
シート141は、シート状に形成される熱可塑性樹脂である。シート141は、柔軟性、非粘着性、および熱可塑性を有し、粘着性を有する糊層を備えない。シート141は、アルケンをモノマーとして合成されるポリマーのシートであり、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリスチレン等により構成されている。
【0038】
実施形態において、シート141は、長尺な帯状の部材として成形され、一方の面142が内側となるようにロール状に巻回され、シートロール145を構成している。この際、シート141は、他方の面143側に保護紙144を合わせた状態でロール状に巻回されており、シートロール145の状態において、外側のシート141の一方の面142と内側のシート141の他方の面143との間に保護紙144が挟み込まれるようにしている。保護紙144は、シート141へのゴミの付着や、ロール状態での内外のシート141同士の意図せぬ接着を抑制する。
【0039】
支持ローラ150は、軸心が水平な円柱状に形成され、軸心回りに回転自在に設けられる。実施形態において、支持ローラ150の軸心は、X軸方向に平行である。支持ローラ150は、シートロール145の芯内に挿通されて、シートロール145を水平な軸心回りに支持する。支持ローラ150は、外周面にシートロール145の芯の内周面を固定し、軸心回りに回転することで、シート141を端から順に保持テーブル160の保持面161上に送り出す。
【0040】
搬送ローラ151、152は、軸心が支持ローラ150の軸心と平行な円柱状に形成され、軸心回りに回転自在に設けられる。搬送ローラ151は、保持テーブル160のX軸方向の一端部の上方かつ保持テーブル160と支持ローラ150との間に配置される。搬送ローラ152は、保持テーブル160のX軸方向の他端部の上方に配置される。搬送ローラ151、152は、シート141を支持ローラ150からシート巻回ローラ156に搬送するとともに、シート141に弛みが生じることを抑制するためにシート141にテンションを付与する。搬送ローラ151、152は、外周面でシート141の一方の面142側を保持テーブル160に向かって押圧して、シート141にテンションを付与する。
【0041】
剥離ローラ153は、軸心が支持ローラ150および搬送ローラ151、152の軸心と平行な円柱状に形成され、軸心回りに回転自在に設けられる。剥離ローラ153は、支持ローラ150と搬送ローラ151との間に配置され、シート141の他方の面143側に合わされた保護紙144をシート141から剥離する。剥離ローラ153は、外周面で支持ローラ150から送り出されたシート141に合わされた保護紙144を押圧して、保護紙144をシート141から剥離する。
【0042】
保護紙巻回ローラ154は、軸心が支持ローラ150、搬送ローラ151、152および剥離ローラ153の軸心と平行な円柱状に形成され、不図示のモータ等の駆動装置により軸心回りに回転する。保護紙巻回ローラ154は、支持ローラ150の下方に配置されている。保護紙巻回ローラ154は、回転することによって、支持ローラ150から送り出されたシート141から、剥離ローラ153により剥離された保護紙144を外周面上に巻き取る。保護紙巻回ローラ154に巻き取られた保護紙144は、ロール状に巻回され、保護紙ロール146を構成する。
【0043】
押圧ローラ155は、軸心が支持ローラ150、搬送ローラ151、152、剥離ローラ153、および保護紙巻回ローラ154の軸心と平行な円柱状に形成され、軸心回りに回転自在に支持されている。押圧ローラ155は、保持テーブル160の保持面161の上方に配置されている。押圧ローラ155は、不図示の移動機構に保持テーブル160の保持面161に対して直交する方向に昇降自在、かつ保持面161に沿って軸心に対して直交する方向に移動自在に設けられている。
【0044】
押圧ローラ155は、移動機構により下降した状態で保持面161に沿って転動することで、支持ローラ150から保持テーブル160の保持面161上に供給されたシート141を、保持テーブル160の保持面161に吸引保持されたウエーハ30またはインゴット10の剥離面31、24に向かって押圧して、密着させる。
【0045】
シート巻回ローラ156は、軸心が支持ローラ150、搬送ローラ151、152、剥離ローラ153、保護紙巻回ローラ154、および押圧ローラ155の軸心と平行な円柱状に形成され、不図示のモータ等の駆動装置により軸心回りに回転する。シート巻回ローラ156は、保持テーブル160のX軸方向の他端部および搬送ローラ152の上方に配置されている。シート巻回ローラ156は、回転することで、支持ローラ150に支持されたシートロール145からシート141を引き出し、外周面上にシート141を巻き取る。シート巻回ローラ156に巻き取られたシート141は、ロール状に巻回され、不要シートロール147を構成する。
【0046】
シート巻回ローラ156は、保持テーブル160の保持面161に吸引保持されたウエーハ30またはインゴット10の剥離面31、24にシート141が付着している状態で回転することにより、シート141を剥離面31、24から剥がす。これにより、剥離面31、24に存在し、シート141に付着した剥離屑を、剥離面31、24から除去する。
【0047】
加熱手段157は、保持テーブル160の保持面161の上方に配置される熱源を備え、保持面161上に供給されたシート141を、一方の面142側から加熱する。加熱手段157は、例えば、不図示の移動機構によって保持テーブル160の保持面161に対して直交する方向に昇降自在に設けられ、加熱時と、シート141の剥離時とで、保持テーブル160に対して接近および離隔可能である。
【0048】
保持テーブル160は、インゴット10またはウエーハ30を保持面161で保持する。保持面161は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面161は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面161は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル160は、保持面161上に載置されたインゴット10の第二の面12側、またはウエーハ生成ステップ2でインゴット10から剥離されたウエーハ30の第一の面11側を吸引保持する。
【0049】
加熱手段162は、保持テーブル160の内部に配置される熱源を備え、保持面161上に供給されたシート141を、他方の面143側から加熱する。加熱手段157および加熱手段162は、いずれか一方のみ設けられていてもよく、また、剥離面24、31に密着させたシート141を加熱するものであれば、実施形態の構成に限定されなくてよい。
【0050】
剥離屑除去ユニット140は、加熱手段157、162によってシート141を加熱しながら、押圧ローラ155でシート141を剥離面24、31に対して押圧することで熱圧着を実施する。これにより、熱可塑性樹脂を含むシート141は、軟化して、剥離面31、24に存在する剥離屑が、シート141に付着する。なお、シート141は、押圧ローラ155によって熱圧着される際、加熱手段157、162によって、軟化点以上かつ融点以下の温度に加熱されることが好ましい。
【0051】
また、実施形態の押圧ローラ155は、内部に熱源を備えるヒートローラであってもよく、保持テーブル160側とでシート141を両面側から加熱しながら押圧してもよい。押圧ローラ155は、表面がフッ素樹脂で被覆されていてもよい。
【0052】
なお、保持テーブル160は、インゴット保持ユニット131と共有で使用されるものでもよい。すなわち、剥離ユニット130によってウエーハ30が剥離されたインゴット10を、剥離面24がシート141の他方の面143に対向する位置までインゴット保持ユニット131上で搬送してもよい。また、保持テーブル160は、ウエーハ保持ユニット132と共有で使用されるものでもよい。すなわち、剥離ユニット130によってインゴット10から剥離されたウエーハ30を、剥離面31がシート141の他方の面143に対向する位置までウエーハ保持ユニット132上で搬送してもよい。
【0053】
シート密着ステップ3およびシート剥離ステップ4において、インゴット10の剥離面24の剥離屑を除去する場合について説明する。図8に示すように、シート密着ステップ3では、まず、インゴット10の第二の面12を保持テーブル160の保持面161で吸引保持し、支持ローラ150から送り出されたシート141の下方に位置づける。この際、インゴット10の第二オリエンテーションフラット15と加工送り方向(X軸方向)とが平行になるように保持面161に保持する。
【0054】
次に、加熱手段157および加熱手段162を作動させ、保持テーブル160の保持面161上のシート141を加熱する。なお、連続的にシート密着ステップ3およびシート剥離ステップ4を実行する場合、加熱手段157および加熱手段162を常に作動させておいてもよい。
【0055】
次に、図8および図9に示すように、押圧ローラ155を下降させるとともに、保持面161に沿って軸心に対して直交する方向、すなわちY軸方向に転動させ、シート141をインゴット10の剥離面24に密着させる。これにより、熱可塑性樹脂を含むシート141は、軟化して、剥離面24に存在する剥離屑が、シート141に付着する。
【0056】
なお、押圧ローラ155によるシート141の密着は、一面の剥離面24、31に対して複数回行ってもよい。この場合、押圧ローラ155を往復で転動させて密着させてもよいし、一度元の位置に戻って再度転動させて密着させてもよい。剥離面24の全面にシート141を密着させた後は、押圧ローラ155を上昇させ、シート141から離隔させるとともに所定の初期位置に復帰させる。加熱により軟化した熱可塑性樹脂を含むシート141は、剥離面24に密着した状態を維持する。
【0057】
次に、図10に示すように、シート剥離ステップ4では、シート巻回ローラ156を回転させ、シート141を巻き取る。これにより、インゴット10の剥離面24に密着したシート141が、上方に引っ張られてシート巻回ローラ156側の端部から剥がれるので、シート141に付着した剥離屑が剥離面24から除去される。剥離屑は、シート141とともにシート巻回ローラ156に巻き取られて回収される。
【0058】
なお、シート密着ステップ3においてシート141を貼り込む方向、すなわち押圧ローラ155を転動させる方向は、実施形態と同様に、剥離層形成ステップ1で改質部21を形成した加工送り方向(X軸方向)と直交するY軸方向であることが好ましい。これにより、シート剥離ステップ4において、剥離面24の剥離屑がより効果的に除去できる。
【0059】
上記では、インゴット10の剥離面24の剥離屑を除去する場合について説明したが、ウエーハ30の剥離面31の剥離屑を除去する場合も同様の手順で実施可能である。
【0060】
<研削ステップ5>
図11は、図3に示す研削ステップ5の一例を示す図である。研削ステップ5は、シート剥離ステップ4を実施した後に実施される。研削ステップ5は、剥離屑が除去されたインゴット10の剥離面24を研削するステップである。
【0061】
実施形態の研削ステップ5は、ウエーハ生成装置100の研削ユニット170によって実施される。研削ユニット170は、保持テーブル180に保持されたインゴット10の剥離面24またはウエーハ30の剥離面31を研削して平坦化する研削手段を含む。研削手段は、回転軸部材であるスピンドル171と、スピンドル171の下端に取り付けられた研削ホイール172と、研削ホイール172の下面に装着される研削砥石173と、研削水を供給する不図示の研削水供給ノズルと、を備える。
【0062】
保持テーブル180は、インゴット10を保持面181で保持する。保持面181は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面181は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面181は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル180は、保持面181上に載置されたインゴット10の第二の面12側またはウエーハ30の第一の面11側を吸引保持する。
【0063】
なお、保持テーブル180は、保持テーブル160と共有で使用されるものでもよい。すなわち、剥離屑除去ユニット140によって剥離面24、31の剥離屑が除去されたインゴット10またはウエーハ30を、研削ユニット170に対向する位置まで保持テーブル160上で搬送してもよい。
【0064】
研削ステップ5において、インゴット10の剥離面24を研削する場合について説明する。図11に示すように、研削ステップ5では、まず、インゴット10の第二の面12側を保持テーブル180の保持面181に吸引保持する。次に、保持テーブル180を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール172を軸心回りに回転させる。なお、研削ホイール172は、保持テーブル180の軸心と平行な回転軸で回転する。
【0065】
次に、研削水供給ノズルから研削水を供給するとともに、研削ホイール172の下面に装着された研削砥石173を保持テーブル180に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石173でインゴット10を剥離面24側から研削する。これにより、インゴット10の剥離面24における凹凸が除去される。
【0066】
上記では、インゴット10の剥離面24を研削する場合について説明したが、ウエーハ30の剥離面31を研削する場合も同様の手順で実施可能である。
【0067】
研削ステップ5が終了すると、図3に示すフローチャートの全工程を終了する。その後は、インゴット10から所定数のウエーハ30を生成するまで、図3に示すフローチャートの工程を繰り返し実施する。なお、図3に示すフローチャートの工程で、次の第一の面11として扱われるのは、研削ステップ5で剥離面24を研削された後の面である。
【0068】
以上説明したように、実施形態のウエーハ30の生成方法およびウエーハ生成装置100では、剥離面24に加熱した熱可塑性樹脂を含むシート141を密着させて剥がすことにより剥離屑を除去した後、剥離面24を研削している。これにより、剥離面24に強固に付着した剥離屑も除去することができるため、研削ステップ5において剥離屑が研削砥石173に刺さることによる不具合を抑制することが可能となり、加工品質の向上に貢献する。また、剥離屑が存在した状態でウエーハ30やインゴット10を搬送することがなくなるため、装置内を清潔に保つことができるという利点も存在する。また、シート141は、糊層等の粘着力によって剥離面24、31に付着させるものではないため、剥離面24、31に糊残りさせることがない。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、加熱手段157、162によるシート141の加熱は、押圧ローラ155によって剥離面24、31に密着させた後に行ってもよいし、加熱しながら密着させてもよい。
【0070】
例えば、ウエーハ30の生成方法は、剥離層形成ステップ1の後、ウエーハ生成ステップ2の前に、超音波を付与する、または剥離層23に楔を入れる等の外力を付与するステップを含んでもよい。
【0071】
また、シート密着ステップ3およびシート剥離ステップ4において、シート141は、実施形態では他方の面143側に保護紙144を合わせた状態でロール状に巻回されるが、本発明では保護紙144を必ずしも備えなくてよい。この場合、剥離屑除去ユニット140は、保護紙144をシート141から剥離して回収する剥離ローラ153および保護紙巻回ローラ154を備えなくてよい。
【符号の説明】
【0072】
10 インゴット
11 第一の面(上面)
12 第二の面
21 改質部
22 クラック
23 剥離層
24 剥離面
30 ウエーハ
31 剥離面
100 ウエーハ生成装置
110 レーザービーム照射ユニット
112 レーザービーム
113 集光点
130 剥離ユニット
140 剥離屑除去ユニット
141 シート
157、162 加熱手段
170 研削ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11