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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171051
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20231124BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231124BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02B5/30
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083260
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】小林 信次
【テーマコード(参考)】
2G051
2G086
2H149
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB02
2G051BA11
2G051CA04
2G051CB02
2G086EE09
2H149AB26
2H149BA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA03
2H149EA19
2H149FA24Y
2H149FB08
2H149FD05
2H149FD09
(57)【要約】
【課題】位相差層の欠陥の有無を判断する検査方法であって、位相差ずれに基づく欠陥のみならず、軸ずれに基づく欠陥も容易に検出することができる検査方法を提供する。
【解決手段】第1の偏光板3Aと、第1のλ/4位相差層9Aと、を備えるフィルム状の被検査物10に検査光を入射して第1のλ/4位相差層9Aの欠陥の有無を判断する検査方法である。被検査物10、及び、第2の偏光板3Bと第2のλ/4位相差層9Bとを備える位相差フィルタ4を、互いの遅相軸のなす角度が0°±30°となるように配置する。ここで、第1のλ/4位相差層9Aと第2のλ/4位相差層9Bの面内位相差値とを異ならせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光板と、第1のλ/4位相差層と、を備えるフィルム状の被検査物に検査光を入射して前記第1のλ/4位相差層の欠陥の有無を判断する検査方法であって、
前記被検査物、及び、第2の偏光板と第2のλ/4位相差層とを備える位相差フィルタを、前記被検査物の第1のλ/4位相差層側が前記位相差フィルタ側を向くように、かつ、前記位相差フィルタの第2のλ/4位相差層側が前記被検査物側を向くように、かつ、前記第1のλ/4位相差層の遅相軸と前記第2のλ/4位相差層の遅相軸とのなす角度が前記検査光の光路方向から見た場合に0°±30°となるように配置し、
波長550nmの光で測定した前記第1のλ/4位相差層の面内位相差値と、波長550nmの光で測定した前記第2のλ/4位相差層の面内位相差値とは互いに異なっており、
前記被検査物の前記第1の偏光板側又は前記位相差フィルタの前記第2の偏光板側のいずれか一方側から、前記光路が前記被検査物上の所定の検査領域を通過するように前記検査光を入射し、その他方側から前記第2の偏光板又は前記第1の偏光板を観察する、検査方法。
【請求項2】
波長550nmの光で測定した前記第2のλ/4位相差層の面内位相差値は、波長550nmの光で測定した前記第1のλ/4位相差層の面内位相差値とは±20nmの範囲内で異なっている、請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記被検査物のうち欠陥がない部分と前記位相差フィルタとを合わせた前記検査光の透過率が、0.1%~5%となるように、波長550nmの光で測定した前記第2のλ/4位相差層の面内位相差値を選択する、請求項1又は2記載の検査方法。
【請求項4】
前記第1のλ/4位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物からなる、請求項1又は2記載の検査方法。
【請求項5】
前記検査光は、単波長ではない可視光である、請求項1又は2記載の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差層は、直線偏光を円偏光に変換したり、逆に円偏光を直線偏光に変換したりできることから、この位相差層と直線偏光板とを組み合わせた円偏光板が、有機EL表示装置や反射型液晶表示装置に適用されている。位相差層の中でも重合性液晶化合物を配向及び硬化させることで得られる位相差層は極めて薄膜のものとなることから、薄型の表示装置を製造するうえで注目されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
製造した円偏光板は、製品として出荷する前にその欠陥の有無を検査できることも重要である。一般に光学フィルムの検査方法としては、被検査物とした光学フィルムに対して検査光を照射し、その透過光量の差により欠陥を見出すことが行われる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-58546号公報
【特許文献2】特開2021-139999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の検査方法では、被検査物である円偏光板の位相差値が理想からずれているとき(これを「位相差ずれ」と呼ぶ。)、その欠陥を色付きの光(例えば赤や青)として検出できる。しかしながら、偏光子の吸収軸に対する位相差層の遅相軸の設計軸角度からのずれ(これを「軸ずれ」と呼ぶ。)による欠陥は、色が付かず輝度のわずかな変化があるのみであるので、検出しにくい。
【0006】
そこで本発明は、位相差層の欠陥の有無を判断する検査方法であって、位相差ずれに基づく欠陥のみならず、軸ずれに基づく欠陥も容易に検出することができる検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の偏光板と、第1のλ/4位相差層と、を備えるフィルム状の被検査物に検査光を入射して第1のλ/4位相差層の欠陥の有無を判断する検査方法であって、被検査物、及び、第2の偏光板と第2のλ/4位相差層とを備える位相差フィルタを、被検査物の第1のλ/4位相差層側が位相差フィルタ側を向くように、かつ、位相差フィルタの第2のλ/4位相差層側が被検査物側を向くように、かつ、第1のλ/4位相差層の遅相軸と第2のλ/4位相差層の遅相軸とのなす角度が検査光の光路方向から見た場合に0°±30°となるように配置し、波長550nmの光で測定した第1のλ/4位相差層の面内位相差値と、波長550nmの光で測定した第2のλ/4位相差層の面内位相差値とは互いに異なっており、被検査物の第1の偏光板側又は位相差フィルタの第2の偏光板側のいずれか一方側から、光路が被検査物上の所定の検査領域を通過するように検査光を入射し、その他方側から第2の偏光板又は第1の偏光板を観察する、検査方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、被検査物が備える位相差層の欠陥として、位相差ずれに基づく欠陥のみならず、軸ずれに基づく欠陥も容易に検出することができる。
【0009】
本発明は、以下に掲げる特徴点を一つ又は複数備えていてもよい。
【0010】
本発明では、波長550nmの光で測定した第2のλ/4位相差層の面内位相差値は、波長550nmの光で測定した第1のλ/4位相差層の面内位相差値とは±20nmの範囲内で異なるようにすることができる。これを満たすことで、軸ずれに基づく欠陥を一層容易に検出することができる。
【0011】
本発明は、被検査物のうち欠陥がない部分と位相差フィルタとを合わせた検査光の透過率が、0.1%~5%となるように、波長550nmの光で測定した第2のλ/4位相差層の面内位相差値を選択してもよい。検査光の透過率がこの範囲内であると、観察視野の明るさが検査に特に適したものとなり、欠陥を欠陥であると正しく認識でき、かつ、欠陥でないものを欠陥であると誤認識しない精度が高まる。
【0012】
第1のλ/4位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物からなっていてもよい。この位相差層が延伸フィルムである場合には、延伸具合による全体的な軸ずれの発生が予想しやすいが、この位相差層が重合性液晶化合物の硬化物からなる場合は、液晶分子の配向が部分的に乱れ得るので、これに起因した軸ずれに基づく欠陥が局所的に発生し得る。本発明によれば、局所的に発生した軸ずれ欠陥も容易に検出することができる。
【0013】
本発明において、検査光は単波長ではない可視光であってもよい。単波長の光を用いる検査方法では相応のバンドパスフィルタで不要な波長の光を除く必要があるので光量が低くなり、このため光源の光量を高くする必要がある。これに対して例えば白色光のように様々な波長の光を含む光を用いることができると、検査に十分な光を被検査物に入射することができるので、光源の光量を高くする必要がない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位相差層の欠陥の有無を判断する検査方法であって、位相差ずれに基づく欠陥のみならず、軸ずれに基づく欠陥も容易に検出することができる検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の検査方法での各部材の配置を示す図である。
図2】(A)は、被検査物が備える第1のλ/4位相差層の遅相軸と、位相差フィルタが備える第2のλ/4位相差層の遅相軸との関係を示す図である。(B)は、(A)を光路側から見た図である。
図3】他の実施形態の検査方法での各部材の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
<用語および記号の定義>
本明細書における用語および記号の定義は下記のとおりである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大となる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向、「nz」は厚さ方向の屈折率である。
(2)面内位相差値
面内位相差値(Re(λ))は、23℃、波長λ(nm)におけるフィルムの面内の位相差値をいう。Re(λ)は、フィルムの厚さをd(nm)としたとき、Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚さ方向の位相差値
厚さ方向の位相差値(Rth(λ))は、23℃、波長λ(nm)におけるフィルムの厚さ方向の位相差値をいう。Rth(λ)は、フィルムの厚さをd(nm)としたとき、Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×dによって求められる。
【0018】
<検査装置と被検査物>
本実施形態の検査方法は、検査対象である被検査物が備える位相差層の欠陥の有無を検査する方法であり、所定の検査装置を用いて行う。図1に示されているとおり、検査装置1Aは、光源2、位相差フィルタ4、及び、カメラ6がこの順に配置されてなるものである。検査装置1Aは、光源2と位相差フィルタ4との間に、検査対象である被検査物10を配置する場所が用意されており、図1では、被検査物10をそこに配置した様子を描いている。
【0019】
[被検査物]
はじめに、検査対象である被検査物10について説明する。被検査物10はフィルム状の円偏光板であり、第1の偏光板3Aと、検査対象の本体である第1のλ/4位相差層9Aとが積層されて成るものである。
【0020】
・第1のλ/4位相差層
第1のλ/4位相差層9Aは重合性液晶化合物の硬化物からなっていてもよい。以下では、第1のλ/4位相差層9Aが重合性液晶化合物の硬化物からなっている場合を例にする。
【0021】
第1のλ/4位相差層9Aを形成し得る重合性液晶化合物は、例えば、特開2009-173893号公報、特開2010-31223号公報、WO2012/147904号公報、WO2014/10325号公報及びWO2017-43438号公報に開示されたものを挙げることができる。これらの公報に記載されている重合性液晶化合物は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な位相差層を形成可能である。また、いわゆる逆波長分散性を有する位相差層を形成可能である。
【0022】
第1のλ/4位相差層9Aの形成方法としては、それぞれの原料である重合性液晶化合物を含む溶液(重合性液晶化合物溶液;液状組成物)をそれぞれの基材フィルム上に塗布(塗工)して塗工膜をつくり、これを光重合させることで、極めて薄いものを形成することができる。かかる基材フィルムには、重合性液晶化合物を配向させるために配向膜が設けられていてもよい。配向膜は偏光照射により光配向させるものや、ラビング処理により機械的に配向させたもののいずれでもよい。なお、かかる配向膜の具体例としては、上記公報に記載されているものを用いることができる。
【0023】
このようにしてそれぞれ形成した第1のλ/4位相差層9Aは、例えば、第1のλ/4位相差層9Aを形成した基材フィルムを第1の偏光板3Aに対して基材フィルムごと接着層を介して貼合し、その後、基材フィルムを剥がすことで第1の偏光板3A上に転写することができる。このようにして被検査物である円偏光板を作製することができる。
【0024】
重合性液晶化合物の硬化物からなる第1のλ/4位相差層9Aは通常、厚さが0.2μm~10μm程度と薄く、異物等を含む場合にその部分で位相差値が低下しやすい。
【0025】
例えば、両層の形成に際し、重合性液晶化合物溶液を塗布する基材フィルムに異物等が存在していたり、基材フィルム又は第1の偏光板3A自体に傷等があったりする場合に、重合性液晶化合物溶液を塗布して得られる塗布膜自体に欠陥が生じることがある。例えば、基材フィルム上の傷は、塗布膜の厚さムラとして反映され、その部分の位相差値が変動する。
【0026】
また、配向膜をラビング処理した場合には、ラビング布の屑が配向膜上に残り、これが重合性液晶化合物溶液(液晶硬化膜形成用組成物)の塗布膜に欠陥を生じさせることもある。このように、重合性液晶化合物から位相差層を形成する場合、厚さが極めて薄い位相差層を形成可能であるが、上記のような屑や傷等が当該位相差層に光学欠陥を生じる要因となることがある。以上のようにして生じる欠陥が「位相差ずれに基づく欠陥」である。
【0027】
他方、第1のλ/4位相差層9Aには「軸ずれに基づく欠陥」も生じ得る。第1のλ/4位相差層9Aの設計値の一つの例として、第1の偏光板3Aの吸収軸と第1のλ/4位相差層9Aの遅相軸とは互いに45°とする。第1のλ/4位相差層において、何らかの原因によりこの角度からずれている部分が「軸ずれに基づく欠陥」である。
【0028】
仮に、第1のλ/4位相差層9Aが延伸フィルムである場合には、延伸具合による全体的な軸ずれの発生が予想しやすく、対処しやすい。その一方で、これらの位相差層が重合性液晶化合物の硬化物からなる場合は、液晶分子の配向が部分的に乱れ得るので、これに起因した欠陥(軸ずれに基づく欠陥)が局所的に発生し得る。
【0029】
本実施形態の検査方法によれば、位相差ずれに基づく欠陥のみならず、局所的に発生した軸ずれに基づく欠陥も容易に検出することができる。
【0030】
・第1の偏光板
第1の偏光板3Aは、光源2から入射した光を直線偏光に変換するフィルムであり、偏光フィルムの少なくとも一方の面に保護フィルムが貼合されてなるものである。偏光フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素や二色性色素が吸着・配向されたものや、重合性液晶化合物を配向・重合したものに、二色性色素が吸着・配向したものが挙げられる。
【0031】
第1の偏光板3Aは、直線偏光を出射する透過軸方向と直交する方向に吸収軸を持つ。本実施形態では、便宜的に直線偏光を出射する方向を透過軸方向、遮断する方向を吸収軸方向と定義するが、遮断する方向の偏光が反射される偏光フィルムについて排除しているものではない。
【0032】
保護フィルムは、偏光フィルムを保護するためのものである。保護フィルムとしては、適度な機械的強度を有する偏光板を得る目的で、偏光板の技術分野で汎用されているものが用いられる。典型的には、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等のセルロースエステル系フィルム;環状オレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系フィルム:ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム等の(メタ)アクリル系フィルム等である。また、偏光板の技術分野で汎用されている添加剤が、保護フィルムに含まれていてもよい。保護フィルムの位相差は小さいことが好ましく、例えば、Re(550)では、10nm以下が好ましく、5nm以下が特に好ましい。
【0033】
なお、被検査物10は、第1のλ/4位相差層9A上に、さらにポジティブCプレートを備えていてもよい。ポジティブCプレートの厚さ方向の位相差値(Rth(550))は、第1のλ/4位相差層9Aの厚さ方向の位相差値によって適宜選択すればよい。
【0034】
ここで、波長550nmにおける面内位相差値(Re(550))及び厚さ方向の位相差値(Rth(550))の求め方を示しておく。測定対象のフィルムから例えば、40mm×40mm程度の大きさの片を分取(長尺フィルムから、適当な切断具を用いて分取する等)する。この片のRe(550)を3回測定し、Re(550)の平均値を求める。片のRe(550)は、位相差測定装置KOBRA-WPR(王子計測機器株式会社製)を用い、測定温度室温(23℃)で測定することができる。
【0035】
[位相差フィルタ]
次に、位相差フィルタ4について説明する。位相差フィルタ4は、第2の偏光板3Bと、これに積層された第2のλ/4位相差層9Bとを備えるものである。
【0036】
・第2の位相差層
第2のλ/4位相差層9Bとしては、波長550nmの光で測定した第1のλ/4位相差層9Aの面内位相差値と、波長550nmの光で測定した第2のλ/4位相差層9Bの面内位相差値とが互いに異なるものを選択する。
【0037】
より好ましくは、波長550nmの光で測定した第2のλ/4位相差層9Bの面内位相差値は、波長550nmの光で測定した第1のλ/4位相差層9Aの面内位相差値とは±20nmの範囲内で異なっていることである。
【0038】
上記において、「±20nm」との数値範囲の部分は、「±10nm」であってもよく、「±5nm」であってもよい。また、当該数値範囲内であれば、正負いずれか一方の数値範囲を採用してもよい。例えば「+5nm~+15nm」、「-3nm~-10nm」、「-0.1nm~-2.0nm」等である。また、当該数値範囲内であれば、正負に跨る数値範囲を採用してもよい。例えば「-10nm~+12nm」、「-4nm~+8nm」等である。
【0039】
上記の第2のλ/4位相差層9Bの面内位相差値は、被検査物10のうち欠陥がない部分と位相差フィルタ4とを合わせた検査光の透過度合い(これを「透過率」と呼ぶ。)が、被検査物10に入射する前の光量の0.1%~5%となるように選択することが好ましい。この透過率の値は、欠陥の有無の判断の基準となる値である。検査では、測定される透過率がこの値よりも大きいか否かで欠陥の有無を判断する。例えば当該透過率を0.3%として検査したときに透過率が0.45%となる点が存在すれば、それを欠陥であると判断する。また、当該透過率を1%として検査したときに透過率が1.3%となる点が存在すれば、それを欠陥であると判断する。検査光の透過率がこの範囲内であると、観察視野の明るさが本実施形態での検査に特に適したものとなり、欠陥を欠陥であると正しく認識しやすくなり、かつ、欠陥でないものを欠陥であると誤認識することが防止される。
【0040】
選択する透過率の値は、0.15%~3%であってもよく、0.2%~1%であってもよく、0.25%~0.6%であってもよい。検査対象である第1のλ/4位相差層9Aの位相差値に対して第2のλ/4位相差層9Bの位相差値をどの程度異ならせればどの程度の透過率となるかは、λ/4位相差層の位相差を様々に仮定した条件に置いて、例えば、ポアンカレ球上の偏光状態を示す点の移動を計算するコンピュータシミュレーションやミューラー行列を用いたコンピュータシミュレーション等を行うことにより推定することができる。市販ソフトとしては、例えば、シンテック株式会社のLCD Master等を挙げることができる。
【0041】
位相差フィルタ4は、さらにポジティブCプレートを備えていてもよい。ポジティブCプレートは、第1のλ/4位相差層9Aと向かい合う側の面に備えていてもよく、その反対側の面に備えていてもよい。ポジティブCプレートを用いることで検査領域を拡大することができる。ポジティブCプレートの厚さ方向の位相差値(Rth(550))は、検査する第1のλ/4位相差層9Aの厚さ方向の位相差値によって適宜選択すればよい。
【0042】
・第2の偏光板
第2の偏光板3Bの構成や材料については、第1の偏光板3Aと同様である。また、第2のλ/4位相差層9Bの形成方法も、第1のλ/4位相差層9Aの形成方法と同様である。
【0043】
[光源]
光源2は、種々の市販品を用いることができ、例えば白色光を発する光源を用いることができる。また、光源2が発する光は、完全な白色光ではなく、可視光領域の波長のうちの一部の波長の光を含まない光であってもよい。光源2が発する光は、単波長の可視光であってもよいが、単波長ではない可視光であってもよい。光源2が発する光は無偏光であり、第1の偏光板3Aを通過し所定方向の偏光となり、更に第1のλ/4位相差層9Aを通過して円偏光となる。すなわち、無偏光の光が第1の偏光板3A及び第1のλ/4位相差層9Aを通過することで、円偏光となる。
【0044】
従来の検査方法のように、単波長の光を用いる検査方法では相応のバンドパスフィルタで不要な波長の光を除く必要があるので光量が低くなり、検査感度が低下する原因になっていた。このため光源の光量を高くする必要があったが、本実施形態では例えば白色光のように様々な波長の光を含む光を用いることができるので、光源の光量を高くする必要がない。
【0045】
[カメラ]
本実施形態の検査装置1Aでは、被検査物10及び位相差フィルタ4を通過した光を観察するために、光路12上、且つ、位相差フィルタ4の両側のうち光源2がある側とは反対側の位置に、検出手段としてのカメラ6が配置されている。カメラ6は、例えばCCDカメラであり、この場合CCDカメラと画像処理装置を組み合わせた画像処理解析により自動的に検出し、これによって被検査物10の検査を行うことができる。なお、検出手段はカメラでなく肉眼であってもよい。
【0046】
<検査方法>
以下、検査装置1Aを用いた円偏光板の検査方法について説明する。図1に示されているとおり、検査装置1Aの光源2と位相差フィルタ4との間に、被検査物10を配置する。このとき、被検査物10は、第1のλ/4位相差層9Aが位相差フィルタ4側を向くように配置される。このとき、位相差フィルタ4は、第2のλ/4位相差層側9Bが被検査物10側を向くように配置される。また、図2に示されているとおり、被検査物10が備える第1のλ/4位相差層9Aの遅相軸pと位相差フィルタ4が備える第2のλ/4位相差層9Bの遅相軸qとのなす角度θが、光路12の方向から見た場合に0°±30°となるように配置する。この角度は、0°±20°とすることが好ましく、0°±10°とすることがより好ましい。ここで角度θは0°以上90°以下の値で表現するものとし、90°を超える角度は、0°以上90°以下の値で表現するものとする。このような角度で配置することにより、検査光が遮断され、第1のλ/4位相差層9Aのうち位相差値が所望の値とずれている部分(位相差ずれ)の透過光量が相対的に大きくなり、欠陥として検出しやすい。
【0047】
被検査物10を配置した後、光源2から、被検査物10の所定の検査領域に検査光を照射する。上記の角度θを満たすように配置した位相差フィルタ4は、光源2の反対側からカメラ6(又は肉眼)で観察すると、被検査物10のうち正常部分は、上記で選択した透過率に応じて視野が暗くなっている。ここで、色が異なって見える部分、及び、選択した透過率を上回る量の光を観察する部分を欠陥であると判断する。
【0048】
従来の検査方法では、位相差ずれに基づく欠陥は正常部分とは色が異なって見えるので検出しやすかったが、軸ずれに基づく欠陥は正常部分と色が異ならないので検出しにくかった。本実施形態では、第1のλ/4位相差層9Aの面内位相差値と第2のλ/4位相差層9Bの面内位相差値とが互いに異なり、かつ、検査光の透過率を適正に選択しているので、軸ずれに基づく欠陥を透過光量から容易に認識することができる。
【0049】
なお、被検査物10と位相差フィルタ4とを位相差に関して平行配置にすれば、位相差フィルタ4の位相差値を被検査物の位相差値と異ならせるように調整していない場合でも位相差ずれ及び軸ずれに基づく欠陥を検出できるといえる。しかしながら、その配置では2nm以下の位相差ズレを検出するような高精度の検出ができない。本実施形態のように位相差フィルタ4の位相差値を被検査物の位相差値と異ならせるように調整することにより、2nm以下の位相差ズレが検出できるような高精度な検査が可能となる。
【0050】
以上のことから、本実施形態の検査方法によれば、被検査物が備える位相差層の欠陥として、位相差ずれに基づく欠陥のみならず、軸ずれに基づく欠陥も容易に検出することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、光源2が発した検査光が被検査物10、位相差フィルタ4の順に入射し、位相差フィルタ4から出射する検査光をカメラ6で捉える態様を示したが、光源2とカメラ6は、位置を逆としてもよい。すなわち、図3に示されているとおり、光源2が発した検査光が位相差フィルタ4、被検査物10の順に入射し、被検査物10から出射する検査光をカメラ6で捉える態様(検査装置1B)としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では被検査物が矩形の枚葉状のものである態様を示したが、被検査物は例えば長尺のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、位相差層の欠陥の有無を判断する検査に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B…検査装置、2…光源、3A…第1の偏光板、3B…第2の偏光板、4…位相差フィルタ、6…カメラ、9A…第1のλ/4位相差層、9B…第2のλ/4位相差層、10…被検査物、12…光路、p…第1のλ/4位相差層の遅相軸、q…第2のλ/4位相差層遅相軸、θ…角度。

図1
図2
図3