(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171249
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】誘導型の位置測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/249 20060101AFI20231124BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01D5/249 C
G01B7/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023044032
(22)【出願日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】22174216
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ハイネマン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホイマン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・オーリヴァー・ティーマン
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BB03
2F063BC04
2F063DA01
2F063DA05
2F063DB01
2F063DB04
2F063DC08
2F063DD02
2F063EA02
2F063GA01
2F063GA06
2F063GA27
2F077AA46
2F077CC02
2F077NN22
2F077PP06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】絶対的な相対位置を特定する誘導型の位置測定装置を提供する。
【解決手段】走査部は第一の受信パターン路を備え、少なくとも一つの受信導線を有し、少なくとも或る長さ(L)に亘って延びる。また第二の受信パターン路を備え、少なくとも一つの受信導線を有し、少なくとも同じ長さ(L)に亘って延びる。目盛部は目盛トラックを有し、複数リブと複数ギャップから形成され、それらリブが第一方向(X)に異なる幅(BS)を有し、或いはそれらギャップが異なる深さ(HL)または異なる幅(BL)を有し、第一の受信パターン路の受信導線により第一の周期長(P1.1)を持つ第一の信号(S1.1)が生成可能で、第二の受信パターン路の受信導線により第二の周期長(P1.2)を持つ第二の信号(S1.2)が生成可能で、第一の周期長のn倍が第二の周期長のm倍に等しく、n・P1.1=m・P1.2≦L(nとmが互いに素)を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査部(1)と目盛部(2;2’)を備え、前記目盛部(2;2’)は、前記走査部(1)に対して相対的に第一方向(X)に変位可能に配置されている誘導型の位置測定装置であって、
- 前記走査部(1)は、
少なくとも一つの励起導線(1.3)を備え、
第一の受信パターン路(1.1)を備え、当該受信パターン路が少なくとも一つの受信導線(1.11,1.12,1.13,1.14)を有し、当該受信導線が第一の周期パターンで前記第一方向(X)に沿って延在し且つ少なくとも或る長さ(L)に亘って延びており
第二の受信パターン路(1.2)を備え、当該受信パターン路が少なくとも一つの受信導線(1.21,1.22)を有し、当該受信導線が第二の周期パターンで前記第一方向(X)に沿って延在し且つ少なくとも同じ前記長さ(L)に亘って延びており、
- 前記目盛部(2;2’)は、目盛トラック(2.1;2.1’)を有し、当該目盛トラックは、前記第一方向(X)に沿って目盛構造を備え、当該目盛構造は、複数のリブ(2.11;2.11’)と複数のギャップ(2.12,2.12’)から形成され、
前記リブ(2.11,2.11’)が、前記第一方向(X)に異なる幅(BS)を有しているか或いは
前記ギャップ(2.12;2.12’)が、異なる深さ(HL)または前記第一方向(X)に異なる幅(BL)を有し、
前記目盛トラック(2.1,2.1’)を介して少なくとも一つの前記励起導線(1.3)により生成された電磁場が変調可能であり、
前記第一の受信パターン路(1.1)の前記受信導線(1.11,1.12,1.13,1.14)により、第一の周期長(P1.1)を持つ第一の信号(S1.1)が生成可能であり、
前記第二の受信パターン路(1.2)の前記受信導線(1.21,1.22)により、第二の周期長(P1.2)を持つ第二の信号(S1.2)が生成可能であり、
前記第一の周期長(P1.1)のn倍が、前記第二の周期長(P1.2)のm倍に等しく、mとnは、互いに素であるとともに、前記第一の周期長(P1.1)のn倍若しくは前記第二の周期長(P1.2)のm倍は、前記長さ(L)以下である
ように構成されている位置測定装置。
【請求項2】
前記第一の受信パターン路(1.1)は、少なくとも二つの受信導線(1.11,1.12,1.13,1.14)を備え、当該受信導線により、それぞれ前記第一の周期長(P1.1)を持つ前記第一の信号(S1.1)が生成可能である請求項1に記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項3】
前記第二の受信パターン路(1.2)は、少なくとも二つの受信導線(1.21,1.22)を備え、当該受信導線により、それぞれ前記第二の周期長(P1.2)を持つ前記第二の信号(S1.2)が生成可能である請求項1または2に記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項4】
前記受信パターン路(1.1,1.2)は、前記第一方向(X)に直交する第二方向(Y)に重なり合って位置するように配置されている請求項1から3のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項5】
前記第一の周期パターンは、前記第一の周期長(P1.1)を有し、前記第二の周期パターンは、前記第二の周期長(P1.2)を有する請求項1から4のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項6】
前記第二の受信パターン路(1.2)の少なくとも一つの前記受信導線(1.21,1.22)は、前記第二の周期長(P1.2)の少なくとも3倍に亘って延びている請求項5に記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項7】
前記第一の周期長(P1.1)は、前記第二の周期長(P1.2)より短く、前記第二の受信パターン路(1.2)は、前記第一方向(X)に直交する第二方向(Y)において前記第一の受信パターン路(1.1)よりも前記目盛部(2,2’)に対して大きな距離を取って配置されている請求項1から6のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項8】
前記目盛部(2;2’)は、前記第一方向(X)に平行な向きの軸線(A)の周りに回転対称な形状を有している請求項1から7のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項9】
前記目盛部(2;2’)は、前記第一方向(X)に、少なくとも、前記長さ(L)に前記第一の周期長(P1.1)の2倍を加えたものよりも大きい寸法(M,M’)を有している請求項1から8のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項10】
或るリブ(2.11)の幅(BS)と、そのリブに隣接するギャップ(2.12)の幅(BL)の合計は、別の或るリブ(2.11)の幅(BS)と、そのリブに隣接するギャップ(2.12)の幅(BL)の合計に等しくない請求項1から9のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項11】
前記第一の周期長(P1.1)は、リブ(2.11)の最大幅(BS)よりも長いか或いはギャップ(2.12)の最大幅(BL)よりも長いかの少なくともいずれかである請求項1から10のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【請求項12】
いずれのリブ(2.11)も同じ広さの幅(BS)を有している請求項1から11のいずれかに記載の誘導型の位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対位置を特定する請求項1に係る誘導型の位置測定装置に関する。
【0002】
誘導型の位置測定装置は、例えば、互いに相対的に変位可能な二つの部材の相対位置を特定する測定器として用いられる。誘導型の位置測定装置では、通常は多層とされた共通の回路基板の上に、例えば導体パターンの形で励起コイルと受信コイルが形成されていることが多いが、このユニットは、走査部と呼ばれることがある。この走査部に対向して目盛部があり、その上には、例えば、複数のリブと複数のギャップが目盛構造として配置されている。励起コイルに時間とともに交互に変化する励起電流が印加されると、目盛部と走査部とが相対運動している間に、その相対位置に依存する信号が受信コイルに生成される。これらの信号は、次に解析電子回路でさらに処理される。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、絶対的な相対位置を特定するためのエンコーダが記載されている。その記載では、絶対的な位置を割り出すために、所定数の走査部により、同数のビットが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、受信パターン路に沿って延びる第一方向において、絶対的な相対位置を簡単な方法で特定することを可能にする誘導型の位置測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴部により解決される。
【0007】
誘導型の位置測定装置は、走査部と目盛部を備え、この目盛部は、走査部に対して相対的に若しくは或る第一の方向に沿って直線的に変位可能に配置されている。この走査部は、少なくとも一つの励起導線を備えている。さらに、走査部は、第一の受信パターン路を備え、その受信パターン路は、少なくとも一つの受信導線を有し、その受信導線が第一の周期パターンで第一方向に沿って延在し且つ少なくとも或る長さLに亘って延びている。走査部は、さらに第二の受信パターン路を備え、その受信パターン路が少なくとも一つの受信導線を有し、その受信導線が第二の周期パターンで第一方向に沿って延在し且つ少なくとも同じ上記長さLに亘って延びている。目盛部は、目盛トラックを有し、この目盛トラックが第一方向に沿って目盛構造を備え、その目盛構造は、特に、交互に配置されたリブ(複数)とギャップ(複数)から形成されている。ここで、
a)これらのリブが、第一方向に複数の異なる幅を有しているか、或いは
b)これらのギャップが、複数の異なる深さ又は第一方向に複数の異なる幅を有しているか
の少なくともいずれかである。位置測定装置は、目盛トラックを介して少なくとも一つの励起導線により生成された電磁場が変調可能であるように構成されている。第一の受信パターン路の受信導線により、第一の周期長P1.1を持つ第一の信号が生成可能であり、第二の受信パターン路の受信導線により、第二の周期長P1.2を持つ第二の信号が生成可能である。ここで、第一の周期長P1.1のn倍は、第二の周期長P1.2のm倍に等しく、mとnは、互いに素であるとともに、第一の周期長P1.1のn倍若しくは第二の周期長P1.2のm倍は、上記の長さL以下である。こうして、以下が成り立つ:
【数1】
つまり、mとnは、共通の素因数を持たない二つの自然数である。従って、mまたはnは、1の値も取り得る。周期長P1.1,P1.2は、特に、幾何学的な直線の長さ寸法に対応する。
【0008】
位置測定装置を用いることで、第一の受信パターン路の受信導線および第二の受信パターン路の受信導線により、特にノギスの原理(Nonius-Prinzip)に従って、走査部に対する目盛部の絶対位置を検出することができる。
【0009】
第一の周期パターンおよび/または第二の周期パターンは、正弦波形の曲線を有することができる。第一の受信パターン路は、特に、少なくとも一つの受信導線を備え、当該受信導線は、第一方向に隣合わせに並べられた複数の巻線(Windung)を備えている。同様に、第二の受信パターン路の少なくとも一つの受信導線は、第一方向に隣合わせに並べられた複数の巻線を備えているか或いは巻線を一つだけ有している。特に、第一の受信パターン路の受信導線は、第二の受信パターン路の受信導線よりも多くの巻数を備えることができる。
【0010】
有利には、第一の周期長P1.1のn倍若しくは第二の周期長P1.2のm倍は、長さLに等しい。
n・P1.1=L
m・P1.2=L,
【0011】
第一の受信パターン路は、有利には、少なくとも二つの受信導線を備え、この二つの受信導線により、それぞれ第一の周期長P1.1を持つ、位相のずれた二つの第一の信号が生成可能である。これら少なくとも二つの受信導線はこのとき、それぞれ第一の周期長P1.1を持つ第一の周期パターンで第一方向に沿って延在している。
【0012】
本発明のさらに他の態様では、第二の受信パターン路は、少なくとも二つの受信導線を備え、この二つの受信導線により、それぞれ第二の周期長P1.2を持つ、位相のずれた第二の信号が生成可能である。これら少なくとも二つの受信導線は、第二の周期長P1.2を持つ第二の周期パターンで第一方向に沿って延在している。
【0013】
有利には、これらの受信パターン路は、第一方向に直交する第二方向に重なり合って位置するように配置されている。特に、これらの受信パターン路は、回路基板として作られた走査部の、重なり合う位置の層に配置することができる。
【0014】
第一の受信パターン路の受信導線の第一の周期パターンは、有利には、第一の周期長P1.1を有し、第二の受信パターン路の受信導線の第二の周期パターンは、第二の周期長P1.2.を有している。その結果、第一の信号と第一の周期パターンは、この場合、同じ長さの第一の周期長P1.1になる。同様に、第二の信号と第二の周期パターンは、同じ長さの第二の周期長P1.2になる。
【0015】
通常、走査部と目盛部は、互いに対向する位置に配置され、第二方向に拡がる空隙により互いに隔てられている。本発明のさらに他の態様では、第一の周期長P1.1は、第二の周期長P1.2よりも短い。
P1.1<P1.2
【0016】
第二の受信パターン路は、第一方向に直交する第二方向において第一の受信パターン路よりも目盛部に対して大きな距離を取って配置されている。
【0017】
第二の受信パターン路の少なくとも一つの受信導線は、第二の周期長P1.2の少なくとも3倍に亘って延びていてもよい。従って、以下が成り立つ:
L≧3・P1.2
【0018】
有利には、目盛部は、第一方向に平行な向きの軸線の周りに回転対称な形状を有している。有利には、目盛トラックは、第一方向に沿って交互に配置されたリブとギャップを備えている。或いは、目盛トラックは、第一方向に沿って交互に配置された導電性領域と非導電性領域を備えた目盛構造から形成されていてもよい。目盛構造は、その他の強磁性の幾何学形状を有していてもよい。
【0019】
目盛部が、深さの異なる複数のギャップを備えている場合、それは、一つには、目盛部が、第一方向に見て常に一定の外径を有していること、およびそれに対応して、ギャップが異なる深さで形成されていることによって実現することができる。代替的に又は付加的に、異なる高さのリブによって深さに変化を与えることもできるが、その場合には、目盛部の外径は、第一方向に沿って一定ではない。
【0020】
有利には、目盛部の最小ギャップは、0.5mmの幅を下回らず、特に、0.2mmを下回らない。
【0021】
目盛部は、有利には、第一方向に、少なくとも、長さLに第一の周期長P1.1の2倍を加えたものよりも大きい寸法Mを有している:
M≧L+2・P1.1
【0022】
本発明の有利な態様によれば、特に以下が成り立つ:
M≧L+4・P1.1,
特に、以下が成り立つのでもよい:
M≧2・L
【0023】
本発明のさらに他の態様では、目盛部は、少なくとも目盛部の領域では、或るリブの幅と、そのリブに隣接するギャップの幅の合計が、別の或るリブの幅と、そのリブに隣接するギャップの合計に等しくないように形成されている。
【0024】
有利には、第一の周期長P1.1は、一つのリブの最大幅よりも長いか若しくは最大のリブの幅よりも長い。この見方が有効なのは、リブの幅が第一方向に沿って変化する場合である。代替的または付加的に、さらに、第一の周期長P1.1は、ギャップの最大幅よりも長い。
【0025】
本発明のさらに他の態様では、いずれのリブも同じ広さの幅を有している一方、その間にあるギャップの幅は異なる広さである。
【0026】
本発明の有利な構成は、従属請求項から読み取れる。
【0027】
本発明による誘導型の位置測定装置のさらなる詳細および長所は、添付の図面に基づく以下の二つの実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】相対位置を特定する位置測定装置の側面図である。
【
図3】走査部の励起導線と第一の受信パターン路の平面図である。
【
図4】励起導線と走査部の第一の受信パターン路の二本の受信導線だけの平面図である。
【
図5】走査部の励起導線と第二の受信パターン路の平面図である。
【
図6】励起導線と走査部の第二の受信パターン路の一本の受信導線だけの平面図である。
【
図7】第一の受信導線と第二の受信導線の信号の変化の様子を示す図である。
【
図8】第二の実施例による相対位置を特定する位置測定装置の側面図である。
【
図9】第二の実施例による位置測定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
走査部1と、第一方向Xに沿って変位可能な目盛部2若しくはスケールとの間の相対位置を検出することを目的とした位置測定装置に基づいて本発明を説明する。
【0030】
目盛部2は、第二方向Yに拡がる空隙のある状態で走査部1と目盛部2とが互いに対向するように走査部1に対して位置決めされている。
【0031】
目盛部2は、軸線A周りの回転対称体として作られている。この回転対称体は、提示の実施例のように、例えば真鍮などの金属材料から一体構造で製造することができる。目盛部2は、目盛トラック2.1を備えている。目盛トラック2.1は、第一方向X(測定方向)に沿って延び、複数のリブ2.11とそれらの間に位置する複数のギャップ2.12を備えている。従って、目盛トラック2.1は、交互に配置された一連のリブ2.11とギャップ2.12からなる。提示の実施例では、各リブ2.11は、3.65mmの幅BSを有している。対照的に、ギャップ2.12は、第一方向Xに沿って異なる幅BLを有している。ここで、幅BLは、最大約2.66mm、最小約0.33mmである。目盛部2は、提示の実施例では、旋削工程により製造され、リブ2.11は、リブ2.11の軸線方向に画定する鋭いエッジを備えている。或いは、目盛部2は、リブ2.11とギャップ2.12の間に比較的丸い移行部が存在するように作られていてもよい。
【0032】
走査部1は、いくつかの層(レイヤ)を備えた回路基板1.1並びにその回路基板1.1上に実装された電子部品1.4を有している。さらに、走査部1上には、プラグ部1.5が配置されており、このプラグ部にケーブルをつなげることができるので、この仕方で走査部1を後続の電子機器に接続できるようになっている。走査部1は、目盛部2を走査するのに用いられる。
【0033】
相対位置を特定するために、走査部1は、第一の受信パターン路1.1並びに第二の受信パターン路1.2を備え、両受信パターン路1.1,1.2は、異なる平面若しくは層の上に配置されている。
【0034】
図3には、第一の受信パターン路1.1が、詳細図に拡大されて示されている。この受信パターン路は、第一の受信導線1.11、第二の受信導線1.12、第三の受信導線1.13および第四の受信導線1.14を有している。第一の受信パターン路1.1は、励起導線1.3によって囲まれている。
【0035】
図4には、より分かり易く説明するために、第一の受信パターン路1.1の第一の受信導線1.11と第二の受信導線1.12だけが示されている。
図4に示す受信導線1.11,1.12は、位相が90°ずれた信号を供給する。
【0036】
第一の受信パターン路1.1は、提示の実施例では、第一方向Xにずれた状態で配置された四つの受信導線1.11,1.12,1.13,1.14を有しており、これにより、これらの受信導線が、そのずれに対応して、位相のずれた四つの信号を供給することができるようになっている。受信導線1.11,1.12,1.13,1.14はここで、導体パターンとして作られており、ビアに接続されて、回路基板若しくは走査部1の異なる層に延在していることで、交点において望まない短絡が回避されるようになっている。受信導線1.11,1.12,1.13,1.14のそれぞれが、厳密に言えば、それぞれ二平面若しくは二層に分けて隣合わせに並べられた多数の導体片からなるものであっても、以下では、このような構造をまとめて受信導線1.11,1.12,1.13,1.14と呼ぶことにする。
【0037】
受信導線1.11,1.12,1.13,1.14は、略正弦波形或いは正弦波状に形成された空間的に周期的な曲線を有し、第一の受信パターン路1.1の全ての受信導線1.11,1.12,1.13,1.14は、第一の周期長P1.1(
図3)を有している。第一の受信パターン路1.1のいずれの受信導線1.11,1.12,1.13,1.14も、長さLに亘って延びており、その長さは、第一の周期長P1.1の倍数である:
【数2】
【0038】
提示の実施例では、長さLは、第一の周期長P1.1の8倍(n=8)の長さとされ、この例では、第一の周期長P1.1が5.145mmを取るので、このとき長さLは41.16mmとなる。
【0039】
提示の実施例では、第一の受信パターン路1.1内で隣接する受信導線1.11,1.12,1.13,1.14は、
図3のように、正弦波の全周期の1/8、つまり、第一の周期長P1.1の1/8だけ第一方向Xに沿って互いにずれた状態で配置されている。受信導線1.11,1.12,1.13,1.14は、一方では0°と90°の信号を供給し、他方では45°と135°の信号を供給するように電気的に回路接続されている。0°と90°の信号から、第一の位置信号を決定することができ、45°と135°の信号から、第一の位置信号に関して冗長な第二の位置信号を決定することができる。基本的に、第一の受信導線1.11,1.12,1.13,1.14により、目盛部2が走査部1に対して相対運動する際に、比較的高解像度のインクリメンタル信号を生成することができる。
図7には、例えば、目盛部2が長さLの移動経路だけ変位したときに第一の受信パターン路1.1の受信導線1.11,1.12,1.13,1.14により生成される第一の信号S1.1の変化の様子が示されている。
【0040】
図5および
図6には、第二の受信パターン路1.2が示されている。この受信パターン路は、第二の受信パターン路1.2が第一の受信パターン路1.1に対して第二方向Yにシフトされて配置されるように、走査部1若しくは回路基板の二つの層の上に存在している。さらに、第一の受信パターン路1.1は、第二の受信パターン路1.2を基準にして重なるように配置されている。提示の実施例では、第二の受信パターン路1.2は、第一の受信パターン路1.1よりも目盛部2若しくは軸線Aからさらに遠く離れた位置にある。
【0041】
第二の受信パターン路1.2は、
図5による提示の実施例では、第一方向Xに互いにずれた状態で配置された第5の受信導線1.21および第6の受信導線1.22、すなわち二本の受信導線1.21,1.22を有しており、これにより、これらの受信導線が、そのずれに対応して、位相が90°だけずれた二つの信号を供給することができるようになっている。受信導線1.21,1.22は、導体パターンとして作られ、ここでも、ビアに接続されて、回路基板若しくは走査部1の異なる層に延在している。第五の受信導線1.21と第六の受信導線1.22はいずれも、ここでは三重に形成され、直列に回路接続されている。ここで、第五の受信導線1.21(0°の受信導線)と第六の受信導線1.22(90°の受信導線)は、それぞれ+30°と-30°の分で電気的に3倍にされる。従って、第五の受信導線1.21により、目盛部2の位置は、(受信信号の位相位置を基準にして)-30°,0°および+30°の位置で検知される。これに対応にして、第六の受信導線1.22により、目盛部2の位置は、(受信信号の位相位置を基準にして)60°,90°および120°の位置で検出される。
【0042】
図6に見て取れるように、第五の受信導線1.21の導体パターン部分は、第二の受信パターン路1.2の左端で互いに直列に接続されている。対照的に、第六の受信導線1.22では、対応する回路接続が第二の受信パターン路1.2の右端で行われている(
図5)。この直列の回路接続により、結果的に、それぞれ信号の振幅が増幅された0°の信号と90°の信号が生じる。信号の振幅の増幅は、特に第二の受信パターン路1.2にとって有利である。というのも、この受信パターン路は、第二方向Yにおいて第一の受信パターン路1.1よりも目盛部2までの距離が離れているからである。
図7には、目盛部2が長さLの移動経路だけ変位したときに、第二の受信パターン路1.2の受信導線1.21,1.22により生成される第二の信号S1.2の変化の様子が例示的に示されている。
【0043】
第五および第六の受信導線1.21,1.22も空間的に周期的な曲線を有し、その曲線は、略正弦波形若しくは正弦波状に形成され、第二の受信パターン路1.2のいずれの受信導線1.21,1.22も、第二の周期長P1.2(
図6)を有している。提示の実施例では、第二の周期長P1.2は、13.72mmである。提示の実施例では、第二の周期長P1.2は、第一の周期長P1.1より長いので、第一の周期長P1.1は、第二の周期長P1.2に等しくないということになる。第五および第六の受信導線1.21,1.22は、それぞれ第二の周期長P1.2の倍数である長さLに亘って延びている:
【数3】
【0044】
提示の実施例では、長さLは、第二の周期長P1.2の3倍(m=3)の長さとされ、それにより長さL=41.16mm=13.72mm・3が成り立つ。
【0045】
図1の組み立て状態では、走査部1と目盛部2は空隙を有して対向しており、これにより、目盛部2と走査部1の間に相対運動があると、受信導線1.11,1.12,1.13,1.14,1.21,1.22に、誘導効果によりそれぞれ相対位置に応じた信号を生じさせることができる。対応した信号を形成するための前提条件は、励起導線1.3が、一つ一つ走査される目盛構造2.1の領域に、時間的に交互に変化する電磁的な励起場を生成することである。図示の実施例では、励起導線1.3は、平坦且つ平行の、電流が流れる複数の個別の導体パターンとして形成されている。走査部1は、電子部品1.4を有する電子回路を備えている。この電子回路は、例えば、ASICモジュールを有していてもよい。走査部1の電子回路は、解析素子としてだけでなく、励起制御素子としても働き、その制御下で、励起電流が発生若しくは生成され、この電流が次に励起導線1.3を通って流れる。
【0046】
励起導線1.3に電流が流れると、励起導線1.3の周りに管状若しくは筒状に配向した電磁場ができる。その結果生じる電磁場の磁力線は、励起導線1.3の周囲に延在し、磁力線の向きは、既知の態様と仕方で、励起導線1.3内の電流の向きに依存する。リブ2.11の領域には、渦電流が誘起され、その結果、相対位置に依存した場の変調がそれぞれ実現される。それに対応して、受信導線1.11,1.12,1.13,1.14,1.21,1.22により、その相対位置をそれぞれ測定することができる。
【0047】
第一の受信パターン路1.1は、より短い第一の周期長P1.1で延在するその受信導線1.11,1.12,1.13,1.14を備えており、目盛部2を走査することで、第一の受信パターン路1.1によって相対位置を比較的詳細に特定することが可能となる。その上方に位置する第二の受信パターン路1.2は、より粗い第二の周期長P1.2で延在するその受信導線1.21,1.22を備えており、目盛部2を同時に走査する。従って、第二の受信パターン路1.2によって、相対位置の比較的大まかな特定が実現できる。その他の点では、第一の受信パターン路1.1の全ての受信導線1.11,1.12,1.13,1.14は、それぞれ同じ第一の周期長P1.1を有し、第二の受信パターン路1.2の受信導線1.21,1.22は、それぞれ同じ第二の周期長P1.2を有している。両方の受信パターン路1.1,1.2の走査が同時に行われ、個々の受信パターン路1.1,1.2を切り替える必要はない。第一の受信パターン路1.1の受信導線1.11,1.12,1.13,1.14により受信される信号S1.1と、第二の受信パターン路1.2の受信導線1.21,1.22により受信される信号S1.2が、
図7に示されている。このことから、目盛部2が、第一方向Xに沿って長さLの移動経路に亘って、すなわち、ここでは41.16mmに亘って相対運動すると、第一の受信パターン路1.1の受信導線1.11,1.12,1.13,1.14によって、8個(n=8)の完全な信号周期を有する信号S1.1が生成される一方、同じ移動経路に亘って、第二の受信パターン路1.2の受信導線1.21,1.22によって、信号周期が3個(m=3)しかない信号S1.2が生成されることが分かる。受信信号S1.1,S1.2は、唸り若しくはノギス(バーニア)のアルゴリズムを用いて結合されることで、両方の信号S1.1,S1.2によって、走査部1と目盛部2の間の相対位置を絶対的に特定することができるようになっている。このとき重要なのは、それぞれ生成された電気的な信号S1.1,S1.2の第一の周期長P1.1のn倍と第二の周期長P1.2のm倍が同じ大きさであり、mおよびnは互いに素であることである。
【数4】
【0048】
提示の実施例ではつまり、第一の受信パターン路1.1の受信導線1.11,1.12,1.13,1.14の第一の周期パターンは、第一の周期長P1.1を有し、第二の受信パターン路1.2の受信導線1.21,1.22の第二の周期パターンは、第二の周期長P1.2を有する。さらに、第一の受信パターン路1.1の受信導線1.11,1.12,1.13,1.14によって生成された信号S1.1は、第一の周期長P1.1を有し、第二の受信パターン路1.2の受信導線1.21,1.22によって生成された信号S1.2は、第二の周期長P1.2を有する。
【0049】
図8および
図9に基づいて、第二の実施例を説明することができる。第二の実施例は、変更された目盛部2’が用いられる点で第一の実施例とは異なる。この実施例は、目盛トラック2.1’を備え、その目盛トラックが、複数のリブ2.11’とそれらの間に位置する複数のギャップ2.12’を備えて第一方向Xに沿って延びている。第二の実施例では、ギャップ2.12’は、第一方向Xに沿って異なる深さHL(
図9)を有し、つまり、走査領域内において走査部1までの距離が異なる。対照的に、それぞれのリブ2.11’は、走査領域内において走査部1までの距離が同じである。深さの異なるギャップ2.12’を配置することで、目盛部2’における位置情報が反映されている。
【0050】
目盛部2,2’を回転対称に作ることによって、組み立て状況やドリフト運動によって目盛部2,2’が測定中に軸線Aの周りに回転した場合でも、相対位置の正確な特定を実現することが可能である。
【外国語明細書】