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特開2023-171379光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム
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  • 特開-光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム 図1
  • 特開-光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム 図2
  • 特開-光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171379
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231124BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231124BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231124BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20231124BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J133/00
C08J7/04 Z CES
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147725
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2022048697の分割
【原出願日】2015-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋人
(72)【発明者】
【氏名】春日 充
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千恵
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智美
(72)【発明者】
【氏名】木俣 絵美子
(72)【発明者】
【氏名】林 益史
(57)【要約】
【課題】被着体に対する汚染が少なく、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルム用剥離シートであり、使用時に剥離シートが剥がし易い光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム1の片面に粘着剤層2が形成された帯電防止表面保護フィルムの、粘着剤層2の表面に、帯電防止剤を転写することができる帯電防止表面保護フィルム用剥離シート5が貼り合わされてなる、光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム10であって、帯電防止表面保護フィルム用剥離シート5が、基材3の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤7とを含有する樹脂組成物により形成された剥離剤層4が積層されてなり、基材3が、ポリエチレンラミネート上質紙、ポリエチレンラミネートアート紙、ポリエチレンラミネートクラフト紙からなる群から選択した1種からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に粘着剤層が形成された帯電防止表面保護フィルムの、前記粘着剤層の表面に、帯電防止剤を転写することができる帯電防止表面保護フィルム用剥離シートが貼り合わされてなる、光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルムであって、
前記帯電防止表面保護フィルム用剥離シートが、基材の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤とを含有する樹脂組成物により形成された剥離剤層が積層されてなり、前記基材が、ポリエチレンラミネート上質紙、ポリエチレンラミネートアート紙、ポリエチレンラミネートクラフト紙からなる群から選択した1種からなる、紙を含む基材であり、
前記帯電防止表面保護フィルム用剥離シートを、前記剥離剤層を介して前記粘着剤層の表面に貼り合せて積層フィルムとしてなり、前記積層フィルムは、所定サイズの光学フィルムに貼り合わせるために、所定サイズのシート状に断裁してなり、前記剥離剤層の帯電防止剤を前記粘着剤層の表面に転写でき、前記積層フィルムから前記帯電防止表面保護フィルム用剥離シートを剥離した前記帯電防止表面保護フィルムを、前記粘着剤層を介して被着体に貼り合せた後、前記被着体から前記粘着剤層を剥離するときの剥離帯電圧が低減され、かつ、断裁したシート状の前記積層フィルムの前記粘着剤層から前記帯電防止表面保護フィルム用剥離シートを剥がす剥離帯電圧が、+0.7kV~-0.7kVであることを特徴とする光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項2】
前記帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなるアクリル系粘着剤層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム用の帯電防止表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルムなどの光学部品(以下、光学用フィルムと称する場合もある。)の表面に貼合される、帯電防止表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、被着体に対する汚染が少なく、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムであり、使用時に剥離シートが剥がし易い帯電防止表面保護フィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品を製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。製品である光学用フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うこともある。
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0003】
近年、液晶ディスプレイパネルの生産工程において、光学用フィルムの上に貼合された表面保護フィルムを、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧により、液晶ディスプレイパネルの表示画面を制御するための、ドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が、発生件数は少ないながらも起きている。
また、液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。最近では、剥離帯電圧を+0.7kV~-0.7kVの範囲内にすることが求められてきている。
このため、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時に、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、水酸基含有アクリル系ポリマー、ポリイソシアネートからなる粘着剤を用いた、表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、イオン性液体と酸価が1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート類が開示されている。
また、特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、イオン性液体、アルカリ金属塩、ガラス転移温度0℃以下のポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献5には、アクリル系共重合体、アルキレンオキシド鎖含有アクリル系共重合体、アルカリ金属塩からなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-131957号公報
【特許文献2】特開2005-330464号公報
【特許文献3】特開2005-314476号公報
【特許文献4】特開2006-152235号公報
【特許文献5】特開2009-275128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1~5では、粘着剤層の内部に帯電防止剤が添加されているが、粘着剤層の厚みが厚くなる程、また、経過時間が経つにつれて、表面保護フィルムの貼合された被着体に対して、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の量が多くなる。また、LR(Low Reflective)偏光板やAG(Anti Glare)-LR偏光板などの光学用フィルムでは、光学用フィルムの表面が、シリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理されているため、このような光学用フィルムに使用する表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧が高くなる。
【0007】
近年、3Dディスプレイ(立体視ディスプレイ)の普及に伴い、偏光板等の光学用フィルムの表面にFPR(Film Patterned Retarder)フィルムを貼合したものがある。偏光板等の光学用フィルムの表面に貼合されていた表面保護フィルムを剥がした後に、FPRフィルムが貼合される。しかし、偏光板等の光学用フィルムの表面が、表面保護フィルムに使用している粘着剤や帯電防止剤で汚染されていると、FPRフィルムが接着し難いという問題がある。このため、当該用途に用いる表面保護フィルムには、被着体に対する汚染の少ないものが求められている。
【0008】
一方、いくつかの液晶パネルメーカーにおいては、表面保護フィルムの被着体に対する汚染性の評価方法として、偏光板等の光学用フィルムに貼合されている表面保護フィルムを一度剥がし、気泡を混入させた状態で再貼合したものを所定条件で加熱処理し、その後、表面保護フィルムを剥がして被着体の表面を観察する方法が採用されている。このような評価方法では、被着体の表面汚染が微量であっても、気泡を混入させた部分と、表面保護フィルムの粘着剤が接していた部分とで、被着体の表面汚染の差があると、気泡の跡(気泡ジミと言うこともある)として残る。そのため、被着体の表面に対する汚染性の評価方法としては、非常に厳しい評価方法となる。近年、こうした厳しい評価方法による判定の結果でも、被着体の表面に対する汚染性に問題がない表面保護フィルムが求められている。しかし従来から提案されている、帯電防止剤を含有する粘着剤層を用いた表面保護フィルムでは、当該課題を解決するのが難しい状況にあった。
【0009】
このため、光学用フィルムに使用する表面保護フィルムであって、被着体に対する汚染が非常に少なく、かつ、被着体に対する汚染性が経時変化しないものが必要とされている。さらに、被着体から剥離する時の剥離帯電圧を、低く抑えた表面保護フィルムが求められている。
【0010】
また、従来の表面保護フィルムは、粘着剤層を保護するために剥離フィルム(この場合、剥離フィルムの基材は樹脂フィルムである)を貼合することが多い(特許文献1~5の実施例でも剥離フィルムを使用)。しかしながら、粘着剤層を保護するために剥離フィルムを使用した場合には、表面保護フィルムの基材フィルムも、樹脂フィルムであることから、表面保護フィルムから剥離フィルムを剥がす際に、剥離フィルムの剥がす「きっかけ」が付けに難く、剥離フィルムが剥がしに難いという問題がある。このため、ピックアップテープなどの粘着テープを、表面保護フィルムの基材フィルム表面と、剥離フィルム表面との両方に貼り、ピックアップテープを掴んでフィルムから剥離フィルムを剥がすことを行う場合もある。
【0011】
また、表面保護フィルムを、被着体である光学フィルムなどの光学部品にロール・ツー・ロールで貼り合わせる場合には、剥離フィルムを剥がす作業が最初の1回で済む。
しかし、断裁したシート状の表面保護フィルムを、被着体に貼り合わせる使用場合には、断裁した表面保護フィルムの枚数だけ、表面保護フィルムから剥離フィルムを剥がす作業を行わなければならないため、剥離フィルムを剥がし易いことが求められる。
【0012】
また、表面保護フィルムを断裁して、被着体に貼合する場合には、断裁した表面保護フィルムは、数十枚~数百枚の数量で重ねられた状態で流通するのが一般的であり、表面保護フィルムを使用する工程では、複数枚の重ねられた表面保護フィルムの束から、表面保護フィルムを一枚ずつ取り上げて使用する。
そのため、表面保護フィルムに使用されている剥離シートの基材が、樹脂フィルムの場合には、複数の表面保護フィルムが重ねられた状態において、接触している基材フィルムと、剥離シートの基材とが、両方とも樹脂フィルムとなるため、密着してしまう。そのため、複数枚を重ねた状態で供給される表面保護フィルムから、表面保護フィルムを1枚ずつ取り上げる際に、2枚以上を一緒に取り上げてしまう不具合が生じる。
さらに、表面保護フィルムの基材が、樹脂フィルムである場合、表面保護フィルムの断裁工程において、クッション性が乏しいため、断裁作業が困難であり、断裁面がきれいに断裁できる様に断裁条件を厳しくすると、断裁刃の消耗が早くなるという問題を抱えていた。
【0013】
本発明者らは、これらの課題を解決することについて、鋭意、検討を行なった。
被着体に対する汚染が少なく、且つ、帯電防止性能の経時変化も少なくするためには、被着体を汚染している原因と推測される帯電防止剤の添加量を減量させる必要がある。しかし、帯電防止剤の添加量を減量させた場合には、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧が高くなってしまう。本発明者らは、帯電防止剤の添加量の絶対量を増加させないで、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑える方法について検討した。その結果、粘着剤組成物の中に、帯電防止剤を添加し混ぜて粘着剤層を形成するのではなく、粘着剤組成物を塗工・乾燥させて粘着剤層を積層した後に、粘着剤層の表面に、適量の帯電防止剤の成分を付与することにより、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えられることを見出した。また、表面保護フィルムの粘着剤層の保護のために紙を含む剥離シートを使用することで、剥離シートを容易に剥がせるようになることが分かり、本発明を完成した。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、被着体に対する汚染が少なく、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムであり、使用時に剥離シートが剥がし易い帯電防止表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の帯電防止表面保護フィルムは、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、その粘着剤層の表面に適量の帯電防止剤を付与することにより、被着体に対する汚染性を低く抑えた上、被着体である光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えることを技術思想としている。
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、粘着剤層が形成されてなり、前記粘着剤層の表面に、剥離シートが貼合してなる帯電防止表面保護フィルムであって、前記剥離シートが、基材の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤とを含有する樹脂組成物により形成された剥離剤層を有してなることを特徴とする帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【0017】
また、前記基材が、紙を含む基材であることが好ましい。
【0018】
また、前記帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0019】
また、前記粘着剤層が、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなるアクリル系粘着剤層であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、上記の帯電防止表面保護フィルムが、前記剥離シートを剥がした状態で、貼り合わされてなる光学用フィルムを提供する。
【0021】
また、本発明は、上記の帯電防止表面保護フィルムが、前記剥離シートを剥がした状態で、貼り合わされてなる光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、使用時に剥離シートが剥がし易く、被着体に対する汚染が少なく、被着体に対する低汚染性が経時変化しない。また、本発明によれば、LR偏光板やAG-LR偏光板などの、被着体の表面が、シリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある光学用フィルムであっても、帯電防止表面保護フィルムを、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時に発生する剥離帯電圧を低く抑えることができ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムを提供できる。
本発明の帯電防止表面保護フィルムによれば、光学用フィルムの表面を確実に保護することができることから、生産性の向上と歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。
図2】本発明の帯電防止表面保護フィルムから、剥離シートを剥がした状態を示す断面図である。
図3】本発明の光学部品の、実施例の1つを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。この帯電防止表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の片面の表面に、粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、基材3の表面に剥離剤層4が形成された剥離シート5が、貼合されている。
【0025】
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、帯電防止表面保護フィルムを、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いる透明性を有する樹脂からなるフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚みが好ましく、20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の粘着剤層2が形成された面の反対側の面に、表面の汚れを防止する防汚層、帯電防止層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0026】
また、本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥がせ、かつ、被着体を汚染しにくい粘着剤であれば特に限定されるものではないが、光学用フィルムに貼合後の耐久性などを考慮すると(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなるアクリル系粘着剤を用いるのが一般的である。
【0027】
(メタ)アクリレート共重合体としては、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N-メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマーを共重合した共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリレート共重合体は、主モノマー及びコモノマーがすべて(メタ)アクリレートであってもよく、コモノマーとして、(メタ)アクリレート以外のモノマーを1種又は2種以上含んでもよい。
【0028】
また、(メタ)アクリレート共重合体に、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物を共重合したり、混合してもよい。共重合可能なポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートなどが挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基を含有するモノマーを、前記(メタ)アクリレート共重合体の主モノマーや官能性モノマーと共重合することにより、ポリオキシアルキレン基を含有する共重合体からなる粘着剤を得ることができる。
【0029】
(メタ)アクリレート共重合体に混合可能なポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリレート共重合体が好ましく、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル系モノマーの重合物がより好ましく、例えば、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートなどの重合物が挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基を含有する化合物を、前記(メタ)アクリレート共重合体と混合することにより、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が添加された粘着剤を得ることができる。
【0030】
粘着剤層2に添加する硬化剤としては、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させる架橋剤として、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。また、粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。
【0031】
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2の厚みは、特に限定はないものの、例えば、5~40μm程度の厚みが好ましく、10~30μm程度の厚みがより好ましい。帯電防止表面保護フィルムの被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.03~0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層2であることが、被着体から帯電防止表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。また、帯電防止表面保護フィルム10から剥離シート5を剥がす時の操作性に優れることから、剥離シート5を粘着剤層2から剥がす時の剥離力が、0.2N/50mm以下であることが好ましい。
【0032】
また、本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される剥離シート5は、基材3の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物を用いた剥離剤層4が形成されている。
【0033】
基材3としては、紙を含む基材であり、紙単体でも、プラスチックなど他の材料を積層した紙でも、いずれでもよい。具体的には、紙単体としては、上質紙、アート紙、クラフト紙、クレーコート紙、グラシン紙などが挙げられ、プラスチックなど他の材料を積層した紙としては、ポリエチレンラミネート上質紙、ポリエチレンラミネートアート紙、ポリエチレンラミネートクラフト紙などが挙げられる。
基材3の厚みは、特に限定はないが、例えば、30~200μm程度の厚みが好ましく、50~150μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材3の表面に、フレーム処理やコロナ放電による表面改質、紙への剥離剤塗料の浸透を防ぐ目止め剤の塗付などを施してもよい。
【0034】
基材3として紙を含む基材を用いることにより、帯電防止表面保護フィルムから剥離シートを剥がす際の作業性が向上する。本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10は、基材フィルム1、粘着剤層2、剥離シート5からなっている。
一般的に、表面保護フィルムから剥離シートを剥がす場合、表面保護フィルムを若干、撓ませて変形させながら表面保護フィルムの側面を指の腹で擦り、剥離シートのエッジ部分を指の腹で引っかけるようにして、剥離シートを剥がす「きっかけ」を作る。表面保護フィルムから剥離シートを剥がすための「きっかけ」ができた後は、剥離シートの「きっかけ」の部分をつかんで剥がすことができる。表面保護フィルムの粘着剤層を保護する部材が、基材フィルムと同種類の材質の基材フィルムを用いた剥離フィルムである場合には、表面保護フィルムを、若干、撓ませて変形をさせても、基材フィルムと剥離フィルムとが一緒に変形してしまい、「きっかけ」が生じ難いため、剥離フィルムを剥がすのが容易ではない。
これに対して、本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10は、剥離シート5の基材3に、紙を含む基材を使用するため、基材フィルム1と剥離シート5とのコシ(弾性率)が異なり、帯電防止表面保護フィルムから剥離シートを剥がし易くなる。このため、帯電防止表面保護フィルムから剥離シートを剥がして、光学部品に貼合する作業の効率が良くなる。
【0035】
また、本発明に係わる帯電防止表面保護フィルムの被着体である、光学部材の種類や使用する用途によっては、帯電防止表面保護フィルムを、光学部材にロール・ツー・ロールで貼り合わせるのではなく、所定サイズのシート状に断裁した帯電防止表面保護フィルムを、所定サイズの光学部材に貼り合わせることもある。この場合、あらかじめ所定のサイズに断裁し、複数枚を重ねた状態の帯電防止表面保護フィルムの束から、帯電防止表面保護フィルムを1枚ずつ取り上げ、剥離シートを剥がした後、光学部材に貼り合わせる。
帯電防止表面保護フィルムの粘着剤層を保護する部材が、樹脂フィルムを用いた剥離フィルムである場合には、複数の帯電防止表面保護フィルムが重ねられた状態において、接触している基材フィルムと、剥離フィルムの基材フィルムとが、両方とも樹脂フィルムとなるため、密着してしまう。そのため、複数枚を重ねた状態で供給される帯電防止表面保護フィルムから、帯電防止表面保護フィルムを1枚ずつ取り上げる際に、2枚以上を一緒に取り上げてしまう不具合が生じる。剥離シートの基材に、紙を含む基材を使用することにより、基材フィルムと異なる材質の表面を有する、剥離シートの基材の紙層が基材フィルムに接触するため、2枚以上の帯電防止表面保護フィルムを一緒に取り上げる不具合を防止できる。
また、帯電防止表面保護フィルムから剥離シートを剥がす回数は、断裁した帯電防止表面保護フィルムの枚数と同じになるため、剥離シートを剥がす作業性に優れた本発明に係わる帯電防止表面保護フィルムを使用することにより、作業効率の改善を図ることができる。
【0036】
剥離剤層4を構成するジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系剥離剤が挙げられる。付加反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、KS-776A、KS-847T、KS-779H、KS-837、KS-778、KS-830(信越化学工業(株)製)、SRX-211、SRX-345、SRX-357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC-300B、LTC-350G、LTC-310(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。縮合反応型として市販されている製品には、例えば、SRX-290、SYLOFF-23(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。カチオン重合型として市販されている製品には、例えば、TPR-6501、TPR-6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62-7622(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合型として市販されている製品には、例えば、X62-7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0037】
剥離剤層4を構成する帯電防止剤としては、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤溶液に対して分散性の良いもので、かつ、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の硬化を阻害しないものが好ましい。こうした帯電防止剤としては、アルカリ金属塩が好適である。
【0038】
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩が挙げられ、具体的には、たとえば、Li、Na、Kよりなるカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(CFSO、(CSO、(CFSOよりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。なかでも特に、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく用いられる。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類や剥離剤との親和性の度合いにより異なるが、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0039】
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤との混合方法には、特に限定はない。ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に、帯電防止剤を添加して、混合した後に剥離剤硬化用の触媒を添加・混合する方法、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちに帯電防止剤と剥離剤硬化用の触媒を添加、混合する方法、シロキサンを主成分とする剥離剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後帯電防止剤を添加、混合する方法など、いずれの方法でも良い。また、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤やポリオキシアルキレン基を含有する化合物などの帯電防止効果を補助する材料、を添加しても良い。
【0040】
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤との混合比率は、特に限定はないが、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して、帯電防止剤を固形分として5~100程度の割合が好ましい。帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して5の割合より少ないと、粘着剤層の表面への帯電防止剤の転写量も少なくなり、粘着剤に帯電防止の機能が発揮され難くなる。また、帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して100の割合を越えると、帯電防止剤とともにジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤も、粘着剤層の表面に転写されてしまうため、粘着剤の粘着特性を低下させる可能性がある。
【0041】
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10の基材フィルム1に、粘着剤層2を形成する方法、及び剥離シート5を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥し粘着剤層を形成した後に、剥離シート5を貼合する方法、(2)剥離シート5の表面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層を形成した後に、基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。
【0042】
また、基材フィルム1の表面に、粘着剤層2を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0043】
また、同様に、基材3に、剥離剤層4を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0044】
上記の構成を有する本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10は、剥離シート5を剥がした状態で、被着体である光学用フィルムに貼合した後、光学用フィルムから剥離する際の表面電位が、+0.7kV~-0.7kVであることが好ましい。さらに、表面電位が、+0.5kV~-0.5kVであることがより好ましく、表面電位が、+0.1kV~-0.1kVであることが特に好ましい。
【0045】
図2は、本発明の帯電防止表面保護フィルムから、剥離シートを剥がした状態を示す断面図である。
図1に示した帯電防止表面保護フィルム10から、剥離シート5を剥がすことにより、剥離シート5の剥離剤層4に含まれる、帯電防止剤(符号7)の成分が、帯電防止表面保護フィルム10の粘着剤層2の表面に転写され、粘着剤層の表面のみに存在する。そのため、図2においては、剥離シートを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11の粘着剤層2の表面に転写された、帯電防止剤の成分を、符号7の斑点で模式的に示している。
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルムでは、図2に示した剥離シートを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層2の表面のみに存在する、帯電防止剤の成分が、被着体の表面に接触する。そのことにより、再度、被着体から帯電防止表面保護フィルムを剥がす時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる。
【0046】
図3は、本発明の光学部品の実施例を示した断面図である。
本発明の帯電防止表面保護フィルム10から、剥離シート5が剥がされて、粘着剤層2が表出した状態で、その粘着剤層2を介して被着体である光学部品8に貼合される。
すなわち、図3には、本発明の帯電防止表面保護フィルム10から、剥離シートを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11が貼合された光学部品20を示している。光学部品としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の、光学系装置等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある、低反射処理偏光板(LR偏光板)やアンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)などの光学用フィルムの、防汚染処理した面に貼合される、帯電防止表面保護フィルムとして好適に使用することができる。
本発明の光学部品によれば、剥離シートを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11を、被着体である光学部品(光学用フィルム)から剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
【実施例0047】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例1)
(帯電防止表面保護フィルムの作製)
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-211)10重量部、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド1.0重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒90重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-212)0.06重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。坪量53gの上質紙の片面に、ポリエチレン層の厚みが20μmになるようにラミネートして作成した、ポリエチレンラミネート上質紙のポリエチレン層の面に、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚みが0.5μmになるようにメイヤーバーにて塗布し、130℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例1の剥離シートを得た。
一方、2-エチルヘキシルアクリレート90重量部、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート7重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート3重量部の共重合体からなる、実施例1の粘着剤ポリマーの40%酢酸エチル溶液100重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(東ソー社製コロネート(登録商標)HX)2重量部、を撹拌・混合して、実施例1の粘着剤組成物を調合した。
厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、調合した実施例1の粘着剤組成物を乾燥後の厚みが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、実施例1の剥離シートを、剥離剤層(シリコーン処理面)を介して貼合し積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤層を硬化させて、実施例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0048】
(実施例2)
実施例1の付加反応型のシリコーンを、信越化学工業(株)製、品名:KS-847Hにし、白金触媒を信越化学工業(株)製、品名:CAT PL-50T、添加量を0.1重量部にし、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの代りにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0049】
(比較例1)
実施例1のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを使用しなかった以外は実施例1と同様にした、比較例1の剥離帯電防止性能を有していない表面保護フィルムを得た。
【0050】
(比較例2)
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-211)10重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒90重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-212)0.06重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、比較例2の剥離剤層を形成する塗料を調整した。坪量53gの上質紙の片面に、ポリエチレンを20μm厚になるようにラミネートして作成した、ポリエチレンラミネート上質紙のポリエチレンの面に、比較例2の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚みが0.5μmになるようにメイヤーバーにて塗布し、130℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、比較例2の剥離シートを得た。
一方、実施例1の粘着剤ポリマーの40%酢酸エチル溶液100重量部に対して、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド10%酢酸エチル溶液3重量部、イソシアネート系硬化剤(東ソー社製コロネート(登録商標)HX)2重量部、を撹拌・混合して、比較例2の粘着剤組成物を調合し、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、比較例2の剥離シートを、剥離剤層(シリコーン処理面)を介して貼合し積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤層を硬化させて、比較例2の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0051】
以下、評価試験の方法および結果について示す。評価試験の方法において使用した表面保護フィルムは、実施例1~2及び比較例2では、帯電防止表面保護フィルム、比較例1では、剥離帯電防止性能を有していない表面保護フィルムである。
〈剥離シートの剥離力の測定方法〉
表面保護フィルムのサンプルを幅50mm、長さ150mmに裁断する。23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、剥離シートを剥離したときの強度を測定し、これを剥離シートの剥離力(N/50mm)とした。
【0052】
〈表面保護フィルムの粘着力の測定方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)を、貼合機を用いて両面粘着テープにより貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断して剥離シートを剥がした状態の表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを粘着力(N/25mm)とした。
【0053】
(粘着剤層の表面抵抗率の測定方法)
表面保護フィルムのサンプルから剥離シートを剥離した後、粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定した。
【0054】
〈表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)を、貼合機を用いて両面粘着テープにより貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断して剥離シートを剥がした状態の表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
【0055】
〈表面保護フィルムの表面汚染性の確認方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)を、貼合機を用いて両面粘着テープにより貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断して剥離シートを剥がした状態の表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に3日および30日保管した。その後、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染性を目視にて観察した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染移行が無かった場合を(○)とし、偏光板に汚染移行が確認された場合を(×)とした。
【0056】
得られた実施例1~2の帯電防止表面保護フィルム、比較例1の剥離帯電防止性能を有していない表面保護フィルム、及び比較例2の帯電防止表面保護フィルムについて、測定した測定結果を表1に示した。「2EHA」は、2-エチルヘキシルアクリレートを、「HEA」は、2-ヒドロキシエチルアクリレートを、「#400G」はメトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレートを、「AS剤(1)」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを、「AS剤(2)」は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、「SRX-211」はSRX-211を、「KS-847H」はKS-847Hを、「SRX212」は白金触媒SRX-212を、「PL-50T」は白金触媒CAT PL-50Tを、それぞれ意味する。また、表面抵抗率の「4.7E10」は4.7×1010を、「オーバーレンジ」は測定機の測定限界を超えてしまうことを意味し、1.0×1013Ω/□以上を意味する。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示した測定結果から、以下のことが分かる。
本発明に係わる実施例1~2の帯電防止表面保護フィルムは、適度な粘着力があり、被着体の表面に対する汚染がなく、かつ、帯電防止表面保護フィルムを、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が低い。
一方、剥離剤層に帯電防止剤を添加しなかった比較例1の剥離帯電防止性能を有していない表面保護フィルムでは、該表面保護フィルムを、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が高くなった。
また、帯電防止剤を粘着剤層に添加した比較例2の帯電防止表面保護フィルムは、該帯電防止表面保護フィルムを、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が低く良好であるが、剥離した後の、被着体に対する汚染が多くなった。
すなわち、比較例1の剥離帯電防止性能を有していない表面保護フィルム、及び比較例2の帯電防止表面保護フィルムでは、剥離帯電圧の低減と被着体に対する汚染性を両立することが難しい。他方、剥離シートの剥離剤層に、帯電防止剤を添加した後、粘着剤層の表面に、帯電防止剤を転写させ、粘着剤層の表面のみに帯電防止剤の成分が存在する実施例1~2の帯電防止表面保護フィルムでは、帯電防止剤の少量の添加で剥離帯電圧の低減効果があるため、被着体に対する汚染もなく、良好な帯電防止表面保護フィルムが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、例えば、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、などの光学用フィルム、その他、各種の光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等の表面を保護するために用いることができる。特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある、LR偏光板やAG-LR偏光板などの光学用フィルムの帯電防止表面保護フィルムとして使用する場合であっても、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時に、静電気の発生量を少なくすることができる。
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、使用時に剥離シートが剥がし易く、被着体に対する汚染が少なく、さらには、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有することから、生産工程の作業性や歩留まりを向上させることができ、産業上の利用価値が極めて大である。
【符号の説明】
【0060】
1…基材フィルム、2…粘着剤層、3…基材、4…剥離剤層、5…剥離シート、7…帯電防止剤、8…被着体(光学部品)、10…帯電防止表面保護フィルム、11…剥離シートを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム、20…帯電防止表面保護フィルムを貼合した光学部品。
図1
図2
図3