(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171431
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/14 20060101AFI20231124BHJP
B41C 1/10 20060101ALI20231124BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20231124BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20231124BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231124BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231124BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B41N1/14
B41C1/10
B41M1/06
G03F7/00 503
G03F7/004 501
G03F7/027 501
G03F7/004 507
G03F7/11 501
G03F7/004 505
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166125
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2021550361の分割
【原出願日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2019180623
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020034239
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪口 彬
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明徳
(72)【発明者】
【氏名】村上 平
(57)【要約】
【課題】現像性に優れ、また、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物1、重合性化合物2、及び、重合性化合物3、を含み、上記重合性化合物1の分子量が1,000未満であり、上記重合性化合物2の重量平均分子量が1,000以上3,000以下であり、上記重合性化合物3の重量平均分子量が3,000を超え15,000以下である、平版印刷版原版。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、及び、前記支持体上に画像記録層を有し、
前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物1、重合性化合物2、及び、重合性化合物3、を含み、
前記重合性化合物1の分子量が1,000未満であり、
前記重合性化合物2の重量平均分子量が1,000以上3,000以下であり、
前記重合性化合物3の重量平均分子量が3,000を超え15,000以下である、
平版印刷版原版。
【請求項2】
前記重合性化合物2に含まれる少なくとも1種の重合性化合物における1分子中のエチレン性不飽和基の官能基数が、前記重合性化合物1に含まれる重合性化合物の1分子中の官能基数より大きい、請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記重合性化合物1、前記重合性化合物2、及び、前記重合性化合物3の合計含有量M1+M2+M3に対する前記重合性化合物3の含有量M3の比率(M3/(M1+M2+M3))が、0.1~0.8である、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記重合性化合物1、及び、前記重合性化合物2の合計含有量M1+M2に対する前記重合性化合物2の含有量M2の比率(M2/(M1+M2))が、0.05~0.4である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記重合性化合物3のエチレン性不飽和結合価が、3.0mmol/g以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
重合性化合物3が下記式(I)で表される化合物である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
AP-(BP)nP 式(I)
式(I)中、APは水素結合性基を有するnP価の有機基を表し、BPは2以上の重合性基を有する基を表し、nPは2以上の整数を表す。
【請求項7】
前記重合性化合物3が、アダクト構造、ビウレット構造、及び、イソシアヌレート構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
前記重合性化合物3が、下記式(A-1)~式(A-3)のいずれかで表される構造を有する請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【化1】
式(A-1)中、R
A1は、水素原子、又は、炭素数1~8のアルキル基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【請求項9】
前記BPにおける重合性基が、(メタ)アクリロキシ基を含む、請求項6に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
前記BPにおける重合性基が、3以上の(メタ)アクリロキシ基を有する基である、請求項6又は請求項9に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
前記重合性化合物3における前記水素結合性基が、ウレタン基、ウレア基、イミド基、アミド基、及び、スルホンアミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、請求項6に記載の平版印刷版原版。
【請求項12】
前記画像記録層が、最外層である請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項13】
前記画像記録層が、ポリマー粒子を更に含む請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項14】
前記ポリマー粒子が、親水性基を有し、
前記親水性基が、下記式Zで表される親水性基である請求項13に記載の平版印刷版原版。
*-Q-W-Y 式Z
式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
【請求項15】
前記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤を含み、
前記赤外線吸収剤のHOMO-前記電子供与型重合開始剤のHOMOの値が、0.70eV以下である請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項16】
前記画像記録層が、発色剤を更に含有する請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項17】
前記画像記録層の上に変色性化合物を含有する保護層を有する請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項18】
前記保護層が、水溶性ポリマー及び疎水性ポリマーを含む請求項17に記載の平版印刷版原版。
【請求項19】
請求項1~請求項18のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
【請求項20】
請求項1~請求項18のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化や無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
【0004】
従来の平版印刷版原版としては、例えば、特許文献1に記載されたものが挙げられる。
特許文献1には、親水化されたアルミニウム支持体上に、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層を有し、上記画像記録層を有する側における最外層表面の算術平均高さSaが、0.3μm以上20μm以下である平版印刷版原版が記載されている。
【0005】
また、従来の平版印刷版用版面処理剤としては、例えば、特許文献2に記載されたものが挙げられる。
特許文献2には、少なくとも1つの支持体吸着性基と少なくとも1つの親水性基を有する星型ポリマーを含有することを特徴とする平版印刷版用版面処理剤が記載されている。
【0006】
特許文献1:国際公開第2018/181993号
特許文献2:特開2012-200959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、現像性に優れ、また、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することである。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物1、重合性化合物2、及び、重合性化合物3、を含み、上記重合性化合物1の分子量が1,000未満であり、上記重合性化合物2の重量平均分子量が1,000以上3,000以下であり、上記重合性化合物3の重量平均分子量が3,000を超え15,000以下である、平版印刷版原版。
<2> 上記重合性化合物2に含まれる少なくとも1種の重合性化合物における1分子中のエチレン性不飽和基の官能基数が、上記重合性化合物1に含まれる重合性化合物の1分子中の官能基数より大きい、<1>に記載の平版印刷版原版。
<3> 上記重合性化合物1、上記重合性化合物2、及び、上記重合性化合物3の合計含有量M1+M2+M3に対する上記重合性化合物3の含有量M3の比率(M3/(M1+M2+M3))が、0.1~0.8である、<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版。
<4> 上記重合性化合物1、及び、上記重合性化合物2の合計含有量M1+M2に対する上記重合性化合物2の含有量M2の比率(M2/(M1+M2))が、0.05~0.4である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<5> 上記重合性化合物3のエチレン性不飽和結合価が、3.0mmol/g以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<6> 重合性化合物3が下記式(I)で表される化合物である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
AP-(BP)nP 式(I)
式(I)中、APは水素結合性基を有するnP価の有機基を表し、BPは2以上の重合性基を有する基を表し、nPは2以上の整数を表す。
<7> 上記重合性化合物3が、アダクト構造、ビウレット構造、及び、イソシアヌレート構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<8> 上記重合性化合物3が、下記式(A-1)~式(A-3)のいずれかで表される構造を有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
【0009】
【0010】
式(A-1)中、RA1は、水素原子、又は、炭素数1~8のアルキル基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【0011】
<9> 上記BPにおける重合性基が、(メタ)アクリロキシ基を含む、<6>に記載の平版印刷版原版。
<10> 上記BPにおける重合性基が、3以上の(メタ)アクリロキシ基を有する基である、<6>又は<9>に記載の平版印刷版原版。
<11> 上記重合性化合物3における上記水素結合性基が、ウレタン基、ウレア基、イミド基、アミド基、及び、スルホンアミド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、<6>に記載の平版印刷版原版。
<12> 上記画像記録層が、最外層である<1>~<11>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<13> 上記画像記録層が、ポリマー粒子を更に含む<1>~<12>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<14> 上記ポリマー粒子が、親水性基を有する<13>に記載の平版印刷版原版。
<15> 上記親水性基が、下記式Zで表される親水性基である<14>に記載の平版印刷版原版。
*-Q-W-Y 式Z
式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
<16> 上記親水性基が、ポリアルキレンオキシド構造を含む<14>又は<15>に記載の平版印刷版原版。
<17> 上記ポリマー粒子が、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を含む<13>~<16>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<18> 上記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤を含む<1>~<17>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<19> 上記赤外線吸収剤のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値が、0.70eV以下である<18>に記載の平版印刷版原版。
<20> 上記画像記録層が、発色剤を更に含有する<1>~<19>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<21> 上記支持体が、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、上記陽極酸化皮膜が、上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜が、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、10nmを超え100nm以下であり、上記陽極酸化皮膜の上記画像記録層側の表面のL*a*b*表色系における明度L*の値が、70~100である<1>~<20>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<22> 上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が、13nm以下である<19>に記載の平版印刷版原版。
<23> 上記画像記録層の上に変色性化合物を含有する保護層を有する<1>~<22>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<24> エネルギー密度110mJ/cm2にて波長830nmの赤外線による露光を行った場合の、上記露光前後の明度変化ΔLが、2.0以上である<23>に記載の平版印刷版原版。
<25> 上記変色性化合物が、赤外線露光に起因して発色する化合物を含む<23>又は<24>に記載の平版印刷版原版。
<26> 上記変色性化合物が、赤外線露光に起因して分解する分解性化合物を含む<23>~<25>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<27> 上記変色性化合物が、赤外線露光に起因する、熱、電子移動、又はその両方により分解する分解性化合物を含む<26>に記載の平版印刷版原版。
<28> 上記変色性化合物が、シアニン色素である<23>~<27>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<29> 上記変色性化合物が、下記式1-1で表される化合物である<23>~<28>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
【0012】
【0013】
式1-1中、R1は下記式2~式4のいずれかで表される基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc、又は-NRdReを表し、Ra~Reは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、A1、A2及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A1及びA2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は、窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0014】
【0015】
式2~式4中、R20、R30、R41及びR42はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Zbは電荷を中和する対イオンを表し、波線は、上記式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0016】
<30> 上記変色性化合物が、下記式1-2で表される化合物である<23>~<29>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
【0017】
【0018】
式1-2中、R1は上記式2~式4のいずれかで表される基を表し、R19~R22はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-CN、-SRc、又は、-NRdReを表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、-Raを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又は、R23とR24は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rd1~Rd4、W1及びW2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0019】
<31> 上記変色性化合物が、下記式1-3~式1-7のいずれかで表される化合物である<23>~<30>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
【0020】
【0021】
式1-3~式1-7中、R1は上記式2~式4のいずれかで表される基を表し、R19~R22はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-CN、-SRc、又は、-NRdReを表し、R25及びR26はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は-Raを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又は、R25とR26は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rd1~Rd4、W1及びW2はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0022】
<32> 上記式1-2~式1-7におけるW1及びW2はそれぞれ独立に、置換基を有するアルキル基であり、かつ、上記置換基として、-(OCH2CH2)-、スルホ基、スルホ基の塩、カルボキシ基、又は、カルボキシ基の塩を少なくとも有する基である<30>又は<31>に記載の平版印刷版原版。
<33> 上記式1-2~式1-7におけるLが、酸素原子である<30>~<32>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<34> 上記保護層の上記変色性化合物の含有量MXと上記画像記録層の上記赤外線吸収剤の含有量MYとの比MX/MYが、0.2以上である<23>~<33>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<35> 上記保護層が、水溶性ポリマーを含む<23>~<34>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<36> 上記水溶性ポリマーが、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを含む<35>に記載の平版印刷版原版。
<37> 上記水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドンを含む<35>又は<36>に記載の平版印刷版原版。
<38> 上記保護層が、疎水性ポリマーを含む<35>~<37>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<39> 上記疎水性ポリマーが、疎水性ポリマー粒子である<38>に記載の平版印刷版原版。
<40> 上記疎水性ポリマーが、ポリビニリデンクロライド樹脂を含む<38>又は<39>に記載の平版印刷版原版。
<41> 上記疎水性ポリマーが、スチレン-アクリル共重合体を含む<38>~<40>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<42> 上記保護層が、感脂化剤を含む<23>~<41>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<43> 上記保護層の量が、0.1g/m2~2.0g/m2である<23>~<42>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<44> <1>~<43>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
<45> <1>~<43>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む平版印刷方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によれば、現像性に優れ、また、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】アルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図である。
【
図2】アルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。
【
図3】アルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【
図4】アルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0026】
(平版印刷版原版)
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物1、重合性化合物2、及び、重合性化合物3、を含み、上記重合性化合物1の分子量が1,000未満であり、上記重合性化合物2の重量平均分子量が1,000以上3,000以下であり、上記重合性化合物3の重量平均分子量が3,000を超え15,000以下である。
また、本開示に係る平版印刷版原版は、ネガ型平版印刷版原版であり、また、機上現像型平版印刷版原版として好適に用いることができる。
【0027】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、現像性に優れ、また、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供できることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
重合性化合物1及び2は、重合性化合物3に比べて重量平均分子量の小さいので画像記録層において自由度が高く、画像記録層中の重合性化合物3同士の間にこれらの重合性化合物が入り込むことによって、画像記録層中の架橋密度が高まり、かつ、未露光部では、重合性化合物1及び2が可塑剤としての作用し、画像記録層の除去が向上し、機上現像性も維持されるので、現像性(特に機上現像性)、及び、耐刷性(特にUV耐刷性)に優れると推定している。
【0028】
また、本開示に係る平版印刷版原版は、特定範囲の重量平均分子量を有する重合性化合物1~3を含むことにより、硬化した画像部において、インキの浸透、インキによる溶解及び印刷摩耗等による画像部の目減りが抑制され、UVインキを用いた場合であっても、版飛び抑制性に優れる。
なお、「版飛び」とは、平版印刷版における画像記録層が膜減りを起こし部分的にインキがつかなくなる現象を指す。平版印刷版における「版飛び」を起こすまでの印刷枚数が、「版飛びが発生しにくい」ことを示す指標となる。
【0029】
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物1、重合性化合物2、及び、重合性化合物3、を含み、上記重合性化合物1の分子量が1,000未満であり、上記重合性化合物2の重量平均分子量が1,000以上3,000以下であり、上記重合性化合物3の重量平均分子量が3,000を超え15,000以下である。
本開示における画像記録層は、ネガ型画像記録層であり、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることが好ましい。
また、本開示における画像記録層は、機上現像型画像記録層であることが好ましい。
更に、本開示における画像記録層は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、最外層であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0030】
-重合性化合物3-
上記画像記録層は、重合性化合物3を含有し、重合性化合物3の重量平均分子量が、3,000を超え15,000以下である。
【0031】
上記重合性化合物3の重量平均分子量(Mw)は、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、5,000以上15,000以下であることが好ましく、6,000以上12,000以下であることがより好ましく、7,000以上13,000以下であることが特に好ましい。
【0032】
重合性化合物3、後述する重合性化合物1及び2における重量平均分子量Mwは、下記の測定機器、及び、方法により測定した。
GPC測定機器:TOSOH HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
GPC流動相:テトラヒドロフラン(THF)
検査器:示差屈折率検出器(RI)
流速:0.35mL/min
カラム:TSKgel SuperHZM-M、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ3000、及び、TSKgel SuperHZ2000(いずれも、東ソー(株)製)を連結して使用する。
カラム温度:40℃
分子量検量線用標準サンプル:ポリスチレン(PS)
【0033】
上記重合性化合物3のエチレン性不飽和結合価(「C=C価」ともいう。)は、3.0mmol/g以上であることが好ましく、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、4.0mmol/g以上であることがより好ましく、5.0mmol/g以上であることが更に好ましく、4.5mmol/g~12.0mmol/gであることがより好ましく、5.0mmol/g~10.0mmol/gであることが特に好ましく、5.5mmol/g~8.5mmol/gであることが最も好ましい。
【0034】
上記重合性化合物3の構造は、特に制限はなく、例えば、グラフト重合体、星型ポリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリマー等であってもよいが、後述するように、多官能イソシアネート化合物の多量体(アダクト体を含む。)の末端イソシアネート基を、エチレン性不飽和基を有する化合物により封止したものが好ましく挙げられる。
【0035】
星型ポリマーとしては、公知の星型ポリマーを用いることができるが、スルフィド結合を有する星型ポリマーであることが好ましく、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物に由来する構成単位を含む星型ポリマーであることがより好ましい。
また、上記チオール基由来のスルフィド結合に結合するポリマー鎖を有することが好ましく、上記ポリマー鎖は、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、エチレン性不飽和基を有する構成単位を有することがより好ましい。
星型ポリマーは、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物に由来する構成単位を1つのみ有することが好ましい。
星型ポリマーが星型高分子である場合、n-星型高分子(n-star macromolecule)であり、かつ、nは3~10の整数であることが好ましい。
星型ポリマーは規則性星型高分子(regular star macromolecule)であってもよいし、混合鎖星型高分子(variegated star macromolecule)であってもよい。
上記星型ポリマーは、例えば、3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物の存在下でモノマーとを共重合する方法等の公知の方法により製造することができる。上記星型ポリマー及び上記多官能チオール化合物の製造方法の詳細としては、特開2012-148555号公報の記載を参考にすることができる。
【0036】
本開示において用いられる3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物としては、特に限定されないが、3官能以上8官能以下の多官能チオール化合物であることが好ましく、3官能以上6官能以下の多官能チオール化合物であることがより好ましい。
また、本開示において用いられる3官能以上10官能以下の多官能チオール化合物としては、下記式S-1により表される化合物であることが好ましい。
【0037】
【0038】
式S-1中、LSはエーテル結合を含んでもよいns価の炭化水素基を表し、RSはチオール基を置換基として有する1価の炭化水素基を表し、nsは3~10の整数を表す。
式S-1中、LSはエーテル結合を含んでもよいns価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、エーテル結合を含んでもよいns価の不飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
LSの具体例としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、デュルシトール、イノシトール等の多価アルコール化合物から、化合物内に含まれる全てのヒドロキシ基を除いた構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
式S-1中、RSはチオール基を置換基として有する1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、チオール基を置換基として有する1価の不飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
RSの具体例としては、メルカプトメチル基、2-メルカプトエチル基、2-メルカプトプロピル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
式S-1中、nsは3~10の整数を表し、3~8の整数であることが好ましく、3~6の整数であることがより好ましい。
【0039】
その他、多官能チオール化合物としては、特開2012-148555号公報に記載の化合物A~化合物Fも好適に使用することができる。
【0040】
また、星型ポリマーへの重合性基の導入は、特に制限はなく、高分子反応により行っても、エチレン性不飽和基を有するポリマー鎖等を導入してもよい。
【0041】
星型ポリマーとしては、例えば、国際公開第2019/151361号に記載のものが挙げられる。
【0042】
重合性化合物3、後述する重合性化合物1及び2におけるエチレン性不飽和結合価は、以下の方法にて求めることができる。
まず、所定のサンプル量(例えば、0.2g)の化合物について、例えば、熱分解GC/MS、FT-IR、NMR、TOF-SIMS等を用いて、化合物の構造を特定し、エチレン性不飽和基の総量(mmol)を求める。求められたエチレン性不飽和基の総量(mmol)を、化合物のサンプル量(g)にて除することで、化合物におけるエチレン性不飽和結合価が算出される。
【0043】
上重合性化合物3は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、水素結合性基を有することが好ましく、3つ以上の水素結合性基を有することがより好ましい。
上記水素結合性基は、水素結合可能な基であればよく、水素結合供与性基であっても、水素結合受容性基であっても、その両方であってもよい。
上記水素結合性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基、ウレタン基、ウレア基、イミド基、アミド基、スルホンアミド基等が挙げられる。
中でも、上記水素結合性基としては、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、ウレタン基、ウレア基、イミド基、アミド基、及び、スルホンアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であることが好ましく、ウレタン基、ウレア基、イミド基、及び、アミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であることがより好ましく、ウレタン基、ウレア基、及び、イミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であることが更に好ましく、ウレタン基、及び、ウレア基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であることが特に好ましい。
【0044】
また、上記重合性化合物3は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、重合性基を有することが好ましい。
上記重合性基としては、例えば、カチオン重合性基であってもよいし、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。
上記重合性基としては、特に制限はないが、反応性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、ビニルエステル基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリロキシ基及び(メタ)アクリルアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であることがより好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、(メタ)アクリロキシ基及び(メタ)アクリルアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であることが更に好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることが特に好ましい。
【0045】
更に、上記重合性化合物3は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記重合性基として、下記式(Po-1)又は式(Po-2)で表される構造を有することが好ましく、下記式(Po-1)で表される構造を有することがより好ましい。
【0046】
【0047】
式(Po-1)及び式(Po-2)中、RPはそれぞれ独立に、アクリル基又はメタクリル基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【0048】
式(Po-1)又は式(Po-2)においては、RPは全て同じ基であることが好ましい。
また、式(Po-1)又は式(Po-2)においては、RPは、アクリル基であることが好ましい。
【0049】
また、上記重合性化合物3は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、ウレタン基を有する(メタ)アクリレート化合物、すなわち、ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
更に、上記重合性化合物3は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、多官能イソシアネート化合物が多量化した構造を有することが好ましく、二官能イソシアネート化合物が多量化した構造を有することがより好ましい。
また、上記重合性化合物3は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、多官能イソシアネート化合物が多量化した多量化体(トリメチロールプロパンアダクト体等の多官能アルコール化合物のアダクト体を含む。)の末端にヒドロキシ基(「水酸基」ともいう。)を末端に有する多官能エチレン性不飽和化合物を反応させてなるポリマーであることが好ましく、二官能イソシアネート化合物が多量化した多量化体(多官能アルコール化合物のアダクト体を含む。)の末端にヒドロキシ基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を反応させてなるポリマーであることがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが多量化した多量化体(多官能アルコール化合物のアダクト体を含む。)の末端にヒドロキシ基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を反応させてなるポリマーであることが特に好ましい。
上記多官能イソシアネート化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる、脂肪族多官能イソシアネート化合物であっても、芳香族多官能イソシアネート化合物であってもよい。
上記多官能イソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、9H-フルオレン-2,7-ジイソシアネート、9H-フルオレン-9-オン-2,7-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、トリレン-2,4-ジイソシアナート、トリレン-2,6-ジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5-ジイソシアナトナフタレン、これらのポリイソシアネートのダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)等が好ましく挙げられる。また、上記のポリイソシアネート化合物と公知のアミン化合物とを反応させたビウレット体を用いてもよい。
また、上記ヒドロキシ基を有する多官能エチレン性不飽和化合物は、ヒドロキシ基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物であることが好ましく、ヒドロキシ基を有する5官能以上のエチレン性不飽和化合物であることがより好ましい。
更に、上記ヒドロキシ基を有する多官能エチレン性不飽和化合物は、ヒドロキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0050】
上記重合性化合物3は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、アダクト構造、ビウレット構造、及び、イソシアヌレート構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を有することが好ましく、トリメチロールプロパンアダクト構造、ビウレット構造、及び、イソシアヌレート構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を有することがより好ましく、トリメチロールプロパンアダクト構造を有することが特に好ましい。
また、上記ポリマーAは、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、下記式(A-1)~式(A-3)のいずれかで表される構造を有することが好ましく、下記式(A-1)で表される構造を有することがより好ましい。
【0051】
【0052】
式(A-1)中、RA1は、水素原子、又は、炭素数1~8のアルキル基を表す。
式(A-1)~式(A-3)中、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【0053】
式(A-1)におけるRA1は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、水素原子、又は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましく、エチル基であることが特に好ましい。
【0054】
上記重合性化合物3は、下記式(I)で表されるポリマーであることが好ましい。
AP-(BP)nP 式(I)
式(I)中、APは水素結合性基を有するnP価の有機基を表し、BPは2以上の重合性基を有する基を表し、nPは2以上の整数を表す。
【0055】
上記重合性化合物3の構造は、上述するように、多官能イソシアネート化合物の多量体(アダクト体を含む。)の末端イソシアネート基を、エチレン性不飽和基を有する化合物により封止した構造が好ましく挙げられる。
【0056】
式(I)のAPにおける水素結合性基の好ましい態様は、上述した重合性化合物3における水素結合性基の好ましい態様と同様である。
式(I)におけるAPは、エチレン性不飽和結合を有しない有機基であることが好ましい。
また、式(I)におけるAPは、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、一価~nP価の脂肪族炭化水素基、一価~nP価の芳香族炭化水素基、ウレタン結合、ウレア結合、ビウレット結合、及び、アロファネート結合よりなる群から選ばれた2種以上の構造を組み合わせた基であることが好ましく、一価~nP価の脂肪族炭化水素基、一価~nP価の芳香族炭化水素基、ウレタン結合、ウレア結合、及び、ビウレット結合よりなる群から選ばれた2種以上の構造を組み合わせた基であることがより好ましい。
更に、式(I)におけるAPは、機上現像性、及び、UV耐刷性の観点から、多官能イソシアネート化合物が多量化した多量化体(トリメチロールプロパンアダクト体等の多官能アルコール化合物のアダクト体を含む。)から末端のイソシアネート基を除いた基であることが好ましく、二官能イソシアネート化合物が多量化した多量化体(多官能アルコール化合物のアダクト体を含む。)から末端のイソシアネート基を除いた基であることがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが多量化した多量化体(多官能アルコール化合物のアダクト体を含む。)から末端のイソシアネート基を除いた基であることが特に好ましい。
【0057】
また、式(I)におけるAPの重量平均分子量(Mw)は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、2,500以上14,500以下であることが好ましく、3,000以上114,000以下であることがより好ましく、4,000以上13,000以下であることが特に好ましい。
【0058】
式(I)のBPにおける重合性基の好ましい態様は、上述した重合性化合物3における重合性基の好ましい態様と同様である。
中でも、式(I)のBPにおける重合性基は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、(メタ)アクリロキシ基を含むことが好ましく、式(I)のBPは、3以上の(メタ)アクリロキシ基を有する基であることがより好ましく、5以上の(メタ)アクリロキシ基を有する基であることが更に好ましく、5以上12以下の(メタ)アクリロキシ基を有する基であることが特に好ましい。
また、式(I)のBPはそれぞれ独立に、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記式(Po-1)又は式(Po-2)で表される構造であることが好ましく、上記式(Po-1)で表される構造であることがより好ましい。
更に、式(I)のBPは、全て同じ基であることが好ましい。
【0059】
上記重合性化合物3は、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
また、上記重合性化合物3は、上記画像記録層において、バインダーポリマーであってもよいし、粒子形状のポリマー粒子であってもよい。
上記画像記録層における上記重合性化合物3の含有量は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記画像記録層の全質量に対し、5質量%~95質量%が好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、15質量%~80質量%であることが更に好ましく、15質量%~75質量%であることが特に好ましい。
【0060】
-重合性化合物2-
上記画像記録層は、重量平均分子量が1,000以上3,000以下である重合性化合物2を含む。画像記録層が重合性化合物2を含むことにより、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性に優れる。
【0061】
上記重合性化合物2は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、ラジカル重合性化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和化合物であることがより好ましい。
上記重合性化合物2の構造は、特に制限はなく、公知のオリゴマーを用いることができ、ウレタン(メタ)アクリレート化合物が好ましく挙げられる。
また、上記重合性化合物2は、多官能重合性化合物であることが好ましい。
更に、上記重合性化合物2は、3官能~40官能の多官能重合性化合物を含むことが好ましく、5官能~30官能の多官能重合性化合物を含むことがより好ましく、10官能~20官能の多官能重合性化合物を含むことが特に好ましく、12官能~18官能の多官能重合性化合物を含むことが最も好ましい。
上記重合性化合物2が有する重合性基の好ましい態様は、上述した上記重合性化合物3における重合性基の好ましい態様と同様である。
【0062】
重合性化合物2に含まれる少なくとも1種の重合性化合物における1分子中のエチレン性不飽和基の官能基数は、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、後述する重合性化合物1に含まれるいずれかの重合性化合物の1分子中の官能基数より大きいことが好ましい。
【0063】
上記重合性化合物2は、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、エチレン性不飽和結合価が1.0mmol/g以上である化合物を含むことが好ましく、エチレン性不飽和結合価が2.0mmol/g~12.0mmol/g化合物を含むことがより好ましく、5.0mmol/g~10.0mmol/gである化合物を含むことが特に好ましい。
【0064】
上記重合性化合物2の重量平均分子量(Mw)は、重量平均分子量が1,000以上3,000以下であり、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、1,100以上2,500以下であることが好ましく、1,300以上2,200以下であることがより好ましく、1,300以上1,600以下であることが更に好ましい。
【0065】
上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロキシ基を有する化合物との反応により得られる化合物が挙げられる。
【0066】
ポリイソシアネート化合物としては、2官能~5官能のポリイソシアネート化合物が挙げられ、2官能又は3官能のポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリマーAにおいて上述したポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0067】
ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロキシ基を有する化合物としては、1つのヒドロキシ基と、1以上の(メタ)アクリロキシ基とを有する化合物が好ましく、1つのヒドロキシ基と、2以上の(メタ)アクリロキシ基とを有する化合物がより好ましい。
ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロキシ基を有する化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
【0069】
【0070】
式(Ac-1)及び式(Ac-2)中、L1~L4はそれぞれ独立に、炭素数2~20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【0071】
L1~L4としては、それぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0072】
式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部分はそれぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部分と直接結合することが好ましい。
【0073】
【0074】
式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac-1)及び式(Ac-2)における波線部分との結合位置を表す。
【0075】
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により(メタ)アクリロキシ基を導入した化合物を用いてもよい。例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネー化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び(メタ)アクリロキシ基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を得てもよい。
【0076】
上記重合性化合物2は、星型ポリマーを含んでいてもよい。
星形ポリマーとしては、上述の重合性化合物3における星型ポリマーが挙げられる。
【0077】
上記重合性化合物2は、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
上記画像記録層における上記重合性化合物2の含有量は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~40質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることが特に好
【0078】
-重合性化合物1-
上記画像記録層は、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、分子量が1,000未満である重合性化合物1を含む。
本開示に用いられる重合性化合物1は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、ラジカル重合性化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和基を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)であることがより好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上10個以下有する化合物であることが更に好ましく、末端エチレン性不飽和結合を3個以上8個以下有する化合物であることが特に好ましく、末端エチレン性不飽和結合を3個以上7個以下有する化合物であることが最も好ましい。
【0079】
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006-508380号公報、特開2002-287344号公報、特開2008-256850号公報、特開2001-342222号公報、特開平9-179296号公報、特開平9-179297号公報、特開平9-179298号公報、特開2004-294935号公報、特開2006-243493号公報、特開2002-275129号公報、特開2003-64130号公報、特開2003-280187号公報、特開平10-333321号公報等に記載されている。
【0080】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が挙げられる。
また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0081】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(RM4)COOCH2CH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0082】
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報、特開2003-344997号公報、特開2006-65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007-94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8-505958号公報、特開2007-293221号公報、特開2007-293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0083】
重合性化合物1は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、分子量が100以上800未満であることが好ましく、300以上600未満であることが更に好ましく、400以上600未満であることが特に好ましい。
【0084】
上記重合性化合物1は、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
上記画像記録層における上記重合性化合物1の含有量は、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、画像記録層の全質量に対し、1質量%~75質量%であることが好ましく、5質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~60質量%であることが特に好ましい。
ましい。
【0085】
-M3/(M1+M2+M3)-
現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、上記重合性化合物1、上記重合性化合物2、及び、上記重合性化合物3の合計含有量M1+M2+M3に対する上記重合性化合物3の含有量M3の比率(M3/(M1+M2+M3))が、0.1~0.8であることが好ましく、0.15~0.7であることがより好ましく、0.15~0.6であることが更に好ましく、0.15~0.3であることが特に好ましい。
なお、上記M3/(M1+M2+M3)において、上記重合性化合物1、上記重合性化合物2、及び、上記重合性化合物3がそれぞれ、2種以上の重合性化合物を含む場合には、それぞれの含有量の合計量の比率を表すものとする。
【0086】
-M2/(M1+M2)-
現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、上記重合性化合物1、及び、上記重合性化合物2の合計含有量M1+M2に対する上記重合性化合物2の含有量M2の比率(M2/(M1+M2))が、0.05~0.4であることが好ましく、0.08~0.3であることがより好ましく、0.08~0.25であることが更に好ましい。
なお、上記M2/(M1+M2)において、重合性化合物1及び2を2種以上含む場合、それぞれの合計含有量の含有量比を表すものとする。
【0087】
-赤外線吸収剤-
上記画像記録層は、赤外線吸収剤を含む。
赤外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0088】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
【0089】
上記赤外線吸収剤としては、メソ位に酸素又は窒素原子を有するカチオン性のポリメチン色素であることが好ましい。カチオン性のポリメチン色素としては、シアニン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アズレニウム色素等が好ましく挙げられ、入手の容易性、導入反応時の溶剤溶解性等の観点から、シアニン色素であることが好ましい。
【0090】
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018号公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物、特開2012-206495号公報の段落0105~0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
【0091】
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
【0092】
-重合開始剤-
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、重合開始剤を含む。
また、重合開始剤としては、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましく、電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0093】
<<電子受容型重合開始剤>>
上記画像記録層は、重合開始剤として、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。
電子受容型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起した際に、分子間電子移動で一電子を受容することにより、ラジカル等の重合開始種を発生する化合物である。
本開示に用いられる電子受容型重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
電子受容型ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、及び、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
【0094】
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
【0095】
上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム塩化合物が挙げられる。中でも、耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0096】
ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0097】
スルホニウム塩化合物の例としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩化合物が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0098】
また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンの例としては、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン、トシレートアニオン、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが挙げられる。
中でも、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0099】
【0100】
電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)は、感度の向上及び版飛びを発生しにくくする観点から、-3.00eV以下であることが好ましく、-3.02eV以下であることがより好ましい。
また、下限としては、-3.80eV以上であることが好ましく、-3.60eV以上であることがより好ましい。
【0101】
本開示において、最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)のMO(分子軌道)エネルギー計算は、以下の方法により行う。
まず、計算対象となる化合物における遊離の対イオンは計算対象から除外する。例えば、カチオン性の一電子受容型重合開始剤、カチオン性の赤外線吸収剤では対アニオンを、アニオン性の一電子供与型重合開始剤では対カチオンをそれぞれ計算対象から除外する。ここでいう遊離とは、対象とする化合物とその対イオンが共有結合で連結されていないことを意味する。
量子化学計算ソフトウェアGaussian09を用い、構造最適化はDFT(B3L
YP/6-31G(d))で行う。
MO(分子軌道)エネルギー計算は、上記構造最適化で得た構造でDFT(B3LYP/6-31+G(d,p)/CPCM(solvent=methanol))で行う。
上記MOエネルギー計算で得られたMOエネルギーEbare(単位:hartree)を以下の公式により、本開示においてHOMO及びLUMOの値として用いるEscaled(単位:eV)へ変換する。
Escaled=0.823168×27.2114×Ebare-1.07634
なお、27.2114は単にhartreeをeVに変換するための係数であり、0.823168と-1.07634とは調節係数であり、計算対象となる化合物のHOMOとLUMOとを計算が実測の値に合うように定める。
【0102】
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0103】
<<電子供与型重合開始剤(重合助剤)>>
上記画像記録層は、重合開始剤として、電子供与型重合開始剤(「重合助剤」ともいう。)を含むことが好ましく、電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を含むことがより好ましい。
本開示における電子供与型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起又は分子内移動した際に、赤外線吸収剤の一電子抜けた軌道に分子間電子移動で一電子を供与することにより、ラジカル等の重合開始種を発生する化合物である。
電子供与型重合開始剤としては、電子供与型ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
上記画像記録層は、平版印刷版における耐刷性向上の観点から、以下に説明する電子供与型重合開始剤を含有することがより好ましく、その例として以下の5種が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物が好ましい。
(ii)N-アリールアルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、例えば、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもいなくてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもいなくてもよい。)が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。例えばフェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもいなくてもよい。)が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等を挙げることができる。
【0104】
これらの中でも、上記画像記録層は、耐刷性の観点から、ボレート化合物を含有することが好ましい。
ボレート化合物としては、耐刷性及び発色性の観点から、テトラアリールボレート化合物、又は、モノアルキルトリアリールボレート化合物であることが好ましく、テトラアリールボレート化合物であることがより好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
【0105】
ボレート化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
【0106】
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B-1~B-9を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Phはフェニル基を表し、Buはn-ブチル基を表す。
【0107】
【0108】
また、本開示に用いられる電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)は、感度の向上及び版飛びを発生しにくくする観点から、-6.00eV以上であることが好ましく、-5.95eV以上であることがより好ましく、-5.93eV以上であることが更に好ましい。
また、上限としては、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.40eV以下であることがより好ましい。
【0109】
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量としては、感度及び耐刷性の観点から、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%であることが好ましく、0.05質量%~25質量%であることがより好ましく、0.1質量%~20質量%であることが更に好ましい。
【0110】
本開示において、画像記録層が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤におけるアニオンと、を含む場合、画像記録層は電子受容型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤を含むものとする。
【0111】
-電子供与型重合開始剤と赤外線吸収剤との関係-
本開示における画像記録層は、感度の向上及びUV耐刷性の観点から、上記電子供与型重合開始剤及び赤外線吸収剤を含有し、赤外線吸収剤のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値が0.70eV以下であることが好ましく、-0.10eV~0.70eVであることがより好ましい。
なお、マイナスの値は、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが、赤外線吸収剤のHOMOよりも高くなることを意味する。
【0112】
-赤外線吸収剤及び電子受容型重合開始剤の好ましい態様-
本開示における赤外線吸収剤としては、感度の向上及び版飛びを発生しにくくする観点から、ハンセンの溶解度パラメータにおけるδdが16以上であり、δpが16~32であり、且つ、δhがδpの60%以下である有機アニオンを有することが好ましい態様である。
本開示における電子受容型重合開始剤としては、感度
の向上及び版飛びを発生しにくくする観点から、ハンセンの溶解度パラメータにおけるδdが16以上であり、δpが16~32であり、且つ、δhがδpの60%以下である有機アニオンを有することが好ましい態様である。
【0113】
ここで、本開示におけるハンセンの溶解度パラメータにおけるδd、δp及びδhは、ハンセン(Hansen)の溶解度パラメータにおける分散項δd[単位:MPa0.5]及び極性項δp[単位:MPa0.5]を用いる。ここで、ハンセン(Hansen)の溶解度パラメータは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメータを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものである。
ハンセン(Hansen)の溶解度パラメータの詳細については、Charles M.Hansen著の文献「Hansen Solubility Parameters;A Users Handbook(CRC Press,2007)」に記載されている。
【0114】
本開示において、上記有機アニオンのハンセンの溶解度パラメータにおけるδd、δp及びδhは、コンピュータソフトウェア「Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP ver.4.1.07)」を用いることにより、その化学構造から推算した値である。
【0115】
ハンセンの溶解度パラメータにおけるδdが16以上であり、δpが16~32であり、且つ、δhがδpの60%以下である有機アニオンの具体例としては、上述したI-1~I-15、I-17~I-21、及び、I-23~I-25、並びに、以下に示すものが好適に挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。中でも、ビス(ハロゲン置換ベンゼンスルホニル)イミドアニオンがより好適に挙げられ、上述したI-5が特に好適に挙げられる。
【0116】
【0117】
-粒子-
上記画像記録層は、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、ポリマー粒子を含むことが好ましい。
粒子としては、有機粒子であっても、無機粒子であってもよいが、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、有機粒子を含むことが好ましく、ポリマーA以外のポリマー粒子を含むことがより好ましい。
無機粒子としては、公知の無機粒子を用いることができ、シリカ粒子、チタニア粒子等の金属酸化物粒子を好適に用いることができる。
【0118】
ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の現像性を高める効果が得られる。
また、ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子であることが好ましい。
【0119】
熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー粒子が好ましい。
熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、又は、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01μm~3.0μmが好ましい。
【0120】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0121】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
【0122】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものが挙げられる。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
【0123】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、得られる平版印刷版原版の感度、及び、得られる平版印刷版の耐刷性の観点から好ましい。
【0124】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0125】
また、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012-206495号公報の段落0032~0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
【0126】
更に、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、-[CH2CH(C≡N)-]又は-[CH2C(CH3)(C≡N)-]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10~100であることが好ましく、25~75であることがより好ましく、40~50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008-503365号公報の段落0039~0068に記載のものが好ましく挙げられる。
【0127】
また、上記ポリマー粒子は、UV耐刷性、及び、現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。
上記親水性基としては、親水性を有する構造であれば、特に制限はないが、カルボキシ基等の酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ポリアルキレンオキシド構造等が挙げられる。
中でも、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造が好ましく、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリエチレン/プロピレンオキシド構造がより好ましい。
また、現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点からは、上記ポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
また、上記親水性基としては、耐刷性、着肉性、及び、現像性の観点から、シアノ基を有する構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことが好ましく、下記式(AN)で表される構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことがより好ましく、下記式Zで表される基を含むことが特に好ましい。
*-Q-W-Y 式Z
式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0128】
【0129】
式(AN)中、RANは、水素原子又はメチル基を表す。
【0130】
上記ポリマー粒子に含まれるポリマーは、UV耐刷性の観点から、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
シアノ基は、通常、シアノ基を有する化合物(モノマー)を用いて、シアノ基を含む構成単位として導入されることが好ましい。シアノ基を有する化合物としては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
シアノ基を有する構成単位としては、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位、すなわち、上記式(AN)で表される構成単位がより好ましい。
上記ポリマーが、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーを含む場合、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーにおけるシアノ基を有する構成単位、好ましくは上記式(AN)で表される構成単位の含有量は、UV耐刷性の観点から、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0131】
上記ポリマー粒子は、UV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1-ビニルナフタレン、メチル-1-ビニルナフタレン、β-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メトキシ-1-ビニルナフタレン等が挙げられ、1-ビニルナフタレンが好ましく挙げられる。
【0132】
また、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、下記式Z1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0133】
【0134】
式Z1中、RZ1及びRZ2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは芳香環基を表し、RZ3は置換基を表し、nzは0以上Arの最大置換基数以下の整数を表す。
式Z1中、RZ1及びRZ2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、いずれも水素原子であることが更に好ましい。
式Z1中、Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式Z1中、RZ3はアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましく、メチル基又はメトキシ基であることが更に好ましい。
式Z1中、RZ3が複数存在する場合、複数のRZ3は同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
式Z1中、nzは0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0135】
上記ポリマー粒子は、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
上記ポリマー粒子において、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、上記ポリマー粒子の全質量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~15質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0136】
また、ポリマー粒子は、UV耐刷性の観点から、架橋構造を有することが好ましく、架橋構造を有する構成単位を含むことがより好ましい。
ポリマー粒子が架橋構造を有することにより、ポリマー粒子自体の硬度が向上するため、画像部強度が向上し、他のインキよりも版を劣化させやすい紫外線硬化型インキを使用した場合であっても、耐刷性(UV耐刷性)が更に向上すると考えられる。
上記架橋構造としては、特に制限はないが、多官能エチレン性不飽和化合物を重合してなる構成単位、又は1種以上の反応性基同士が粒子内部で共有結合を形成した構成単位であることが好ましい。上記多官能エチレン性不飽和化合物の官能数としては、UV耐刷性及び現像性の観点から、2~15であることが好ましく、3~10であることがより好ましく、4~10であることが更に好ましく、5~10であることが特に好ましい。
また、上記を言い換えると、上記架橋構造を有する構成単位は、UV耐刷性及び現像性の観点から、2官能性~15官能性分岐単位であることが好ましい。
なお、n官能性分岐単位とは、n本の分子鎖が出ている分岐単位のことをいい、言い換えると、n官能性分岐点(架橋構造)を有する構成単位のことである。
また、多官能メルカプト化合物により架橋構造を形成することも好ましく挙げられる。
【0137】
上記多官能エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。
また、上記多官能エチレン性不飽和化合物は、多官能(メタ)アクリレート化合物、又は多官能(メタ)アクリルアミド化合物、又は、多官能芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
【0138】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(β-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド等が挙げられる。
多官能芳香族ビニル化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0139】
上記分岐単位の炭素数としては、特に制限はないが、8~100であることが好ましく、8~70であることがより好ましい。
【0140】
上記ポリマー粒子は、架橋構造を有する構成単位を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
上記ポリマー粒子において、架橋構造を有する構成単位の含有量は、UV耐刷性及び現像性の観点から、上記ポリマー粒子の全質量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~15質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0141】
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、現像性の観点から、上記式Zで表される基を有するポリマー粒子を含むことが好ましい。
【0142】
上記式ZにおけるQは、炭素数1~20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10の二価の連結基であることがより好ましい。
また、上記式ZにおけるQは、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であることがより好ましい。
【0143】
上記式ZのWにおける親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に-CH2CH2NRW-が結合した基であることが好ましい。なお、RWは、水素原子又はアルキル基を表す。
上記式ZのWにおける疎水性構造を有する二価の基は、-RWA-、-O-RWA-O-、-RWN-RWA-NRW-、-OC(=O)-RWA-O-、又は、-OC(=O)-RWA-O-であることが好ましい。なお、RWAはそれぞれ独立に、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数6~120のハロアルキレン基、炭素数6~120のアリーレン基、炭素数6~120のアルカーリレン基(アルキルアリール基から水素原子を1つ除いた二価の基)、又は、炭素数6~120のアラルキレン基を表す。
【0144】
上記式ZのYにおける親水性構造を有する一価の基は、-OH、-C(=O)OH、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CH2CH2N(RW)-が結合した基であることが好ましい。
上記式ZのYにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数6~120のハロアルキル基、炭素数6~120のアリール基、炭素数6~120のアルカーリル基(アルキルアリール基)、炭素数6~120のアラルキル基、-ORWB、-C(=O)ORWB、又は、-OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数6~20を有するアルキル基を表す。
【0145】
上記式Zで表される基を有するポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、現像性の観点から、Wが親水性構造を有する二価の基であることがより好ましく、Qがフェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であり、Wは、ポリアルキレンオキシ基であり、Yが、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
【0146】
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、UV版飛び抑制性、及び、現像性の観点から、重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好ましく、粒子表面に重合性基を有するポリマー粒子を含むことがより好ましい。
更に、上記ポリマー粒子は、耐刷性の観点から、親水性基及び重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好ましい。
上記重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。
上記重合性基としては、重合可能な基であれば特に制限はないが、反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、(メタ)アクリロキシ基、又は、(メタ)アクリルアミド基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が特に好ましい。
また、重合性基を有するポリマー粒子におけるポリマーは、重合性基を有する構成単位を有することが好ましい。
更に、高分子反応によりポリマー粒子表面に重合性基を導入してもよい。
【0147】
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、現像性、機上現像時の現像カス抑制性の観点から、ウレア結合を有する樹脂を含むことが好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有する樹脂を含むことがより好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有し、かつポリオキシアルキレン構造として、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有する樹脂を含むことが特に好ましい。また、上記ウレア結合を有する樹脂を含む粒子は、ミクロゲルであることが好ましい。
【0148】
【0149】
式(Iso)中、nは0~10の整数を表す。
【0150】
上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水との反応の一例としては、下記に示す反応が挙げられる。なお、下記の例は、n=0、4,4-異性体を使用した例である。
下記に示すように、上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを反応させると、水によりイソシアネート基の一部が加水分解し、アミノ基が生じ、生じたアミノ基とイソシアネート基とが反応し、ウレア結合が生成し、二量体が形成される。また、下記反応が繰り返され、ウレア結合を有する樹脂が形成される。
また、下記反応において、アルコール化合物、アミン化合物等のイソシアネート基と反応性を有する化合物(活性水素を有する化合物)を添加することにより、アルコール化合物、アミン化合物等の構造をウレア結合を有する樹脂に導入することもできる。
上記活性水素を有する化合物としては、上述したミクロゲルにおいて記載したものが好ましく挙げられる。
【0151】
【0152】
また、上記ウレア結合を有する樹脂は、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、下記式(PETA)で表される基を有することがより好ましい。
【0153】
【0154】
式(PETA)中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0155】
上記粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmが好ましく、0.03μm~2.0μmがより好ましく、0.10μm~1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を有する球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
【0156】
上記画像記録層は、粒子、特にポリマー粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
また、上記画像記録層における粒子、特にポリマー粒子の含有量は、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、上記画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、20質量%~90質量%であることが更に好ましく、50質量%~90質量%であることが特に好ましい。
また、上記画像記録層におけるポリマー粒子の含有量は、現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、上記画像記録層の分子量3,000以上の成分の全質量に対し、20質量%~100質量%が好ましく、35質量%~100質量%であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0157】
-バインダーポリマー-
上記画像記録層は、ポリマーA以外のバインダーポリマーを含んでいてもよいが、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、含まないことが好ましい。
上記バインダーポリマーは、上記ポリマー粒子以外のポリマー、すなわち、粒子形状でないバインダーポリマーである。
上記バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0158】
中でも、上記バインダーポリマーは、平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう。)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0159】
また、バインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、当該ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012-148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0160】
星型高分子化合物は、特開2008-195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、スチリル基が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
【0161】
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000~300,000であることが更に好ましい。
【0162】
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0163】
本開示において用いられる画像記録層においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記バインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え20質量%以下であることが好ましく、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え10質量%以下であることがより好ましく、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え5質量%以下であることが更に好ましく、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え2質量%以下であることが特に好ましく、上記バインダーポリマーを含まないことが最も好ましい。
【0164】
-発色剤-
上記画像記録層は、発色剤を含むことが好ましく、酸発色剤を含むことがより好ましい。また、発色剤としては、ロイコ化合物を含むことが好ましい。
本開示で用いられる「発色剤」とは、光や酸等の刺激により発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味し、また、「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0165】
このような酸発色剤の例としては、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(“クリスタルバイオレットラクトン”と称される。)、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、
【0166】
3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ピロリジノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-N-エチル-N-フェニルアミノフェニル)フタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド等のフタリド類、
【0167】
4,4-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン-B-アニリノラクタム、ローダミン-(4-ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン-B-(4-クロロアニリノ)ラクタム、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0168】
3,6-ジメトキシフルオラン、3-ジメチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジ-n-ヘキシルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’,3’-ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0169】
3-N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-エトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-プロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-オクチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
【0170】
3-N-(2’-メトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-イソブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-テトラヒドロフルフリル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(4’-メチルフェニル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3’-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2-ビス〔4’-(3-N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチルフルオラン)-7-イルアミノフェニル〕プロパン、3-〔4’-(4-フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-〔4’-(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ-5,7-ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0171】
3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-n-プロポキシカルボニルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチル-4-ジn-ヘキシルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,7-ジアザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ブトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3-フェニル-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチル-ナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピラン-3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0172】
その他、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-3-オン、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、3’-N,N-ジベンジルアミノ-6’-N,N-ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、2’-(N-メチル-N-フェニル)アミノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オンなどが挙げられる。
【0173】
中でも、本開示に用いられる発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0174】
また、上記酸発色剤は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、ロイコ色素であることが好ましい。
上記ロイコ色素としては、ロイコ構造を有する色素であれば、特に制限はないが、スピロ構造を有することが好ましく、スピロラクトン環構造を有することがより好ましい。
また、上記ロイコ色素としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素であることが好ましい。
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-1)~式(Le-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le-2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0175】
【0176】
式(Le-1)~式(Le-3)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X1~X4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、X5~X10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、C又はNを表し、Y1がNである場合は、X1は存在せず、Y2がNである場合は、X4は存在せず、Ra1は、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0177】
式(Le-1)~式(Le-3)のERGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、アリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、又は、ジアリールアミノ基であることが更に好ましく、アリールアミノ基、又は、モノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるX1~X4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、又は、塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(Le-2)又は式(Le-3)におけるX5~X10はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基又はシアノ基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるY1及びY2は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1方がCであることが好ましく、Y1及びY2の両方がCであることがより好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるRa1は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるRb1~Rb4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0178】
また、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、下記式(Le-4)~式(Le-6)のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、下記式(Le-5)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0179】
【0180】
式(Le-4)~式(Le-6)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X1~X4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、C又はNを表し、Y1がNである場合は、X1は存在せず、Y2がNである場合は、X4は存在せず、Ra1は、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0181】
式(Le-4)~式(Le-6)におけるERG、X1~X4、Y1、Y2、Ra1、及び、Rb1~Rb4はそれぞれ、式(Le-1)~式(Le-3)におけるERG、X1~X4、Y1、Y2、Ra1、及び、Rb1~Rb4と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0182】
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、下記式(Le-7)~式(Le-9)のいずれかで表される化合物であることが更に好ましく、下記式(Le-8)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0183】
【0184】
式(Le-7)~式(Le-9)中、X1~X4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立に、C又はNを表し、Y1がNである場合は、X1は存在せず、Y2がNである場合は、X4は存在せず、Ra1~Ra4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb1~Rb4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rc1及びRc2はそれぞれ独立に、アリール基を表す。
【0185】
式(Le-7)~式(Le-9)におけるX1~X4、Y1及びY2は、式(Le-1)~式(Le-3)におけるX1~X4、Y1及びY2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(Le-7)~式(Le-9)におけるRa1~Ra4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le-7)~式(Le-9)におけるRb1~Rb4はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることがより好ましく、水素原子、又は、メチル基であることが特に好ましい。
式(Le-8)におけるRc1及びRc2はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フェニル基、又は、アルキルフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
また、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、X1~X4が水素原子であり、Y1及びY2がCであることが好ましい。
更に、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Rb1及びRb2がそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることがより好ましい。
【0186】
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6~8であることが特に好ましい。
【0187】
また、式(Le-1)~式(Le-9)における一価の有機基、アルキル基、アリール基、ジアルキルアニリノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基等の各基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、更にこれら置換基により置換されていてもよい。
【0188】
好適に用いられる上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素としては、以下の化合物が挙げられる。なお、Meはメチル基を表す。
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、H-2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、TH-107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、Red-8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0195】
好適に用いられるロイコ色素としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、以下の化合物が挙げられる。
【0196】
【0197】
これらの発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0198】
-連鎖移動剤-
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
【0199】
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%が好ましく、0.05質量%~40質量%がより好ましく、0.1質量%~30質量%が更に好ましい。
【0205】
-低分子親水性化合物-
画像記録層は、耐刷性の低下を抑制させつつ現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
【0206】
低分子親水性化合物としては、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含有させることが好ましい。
【0207】
有機スルホン酸塩類の具体例としては、n-ブチルスルホン酸ナトリウム、n-ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2-エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n-オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11-トリオキサペンタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、13-エチル-5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14-テトラオキサテトラコサン-1-スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム、1-ナフチルスルホン酸ナトリウム、4-ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007-276454号公報の段落0026~0031及び特開2009-154525号公報の段落0020~0047に記載の化合物等が挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0208】
有機硫酸塩類としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1~4が好ましく、塩はナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。具体例としては、特開2007-276454号公報の段落0034~0038に記載の化合物が挙げられる。
【0209】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1~5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニオブチラート、4-(1-ピリジニオ)ブチラート、1-ヒドロキシエチル-1-イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3-トリメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホナート等が挙げられる。
【0210】
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
【0211】
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.5質量%~20質量%が好ましく、1質量%~15質量%がより好ましく、2質量%~10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な現像性と耐刷性が得られる。
低分子親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0212】
-感脂化剤-
画像記録層は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、保護層に無機層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
【0213】
ホスホニウム化合物としては、特開2006-297907号公報及び特開2007-50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7-ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9-ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン-2,7-ジスルホナート等が挙げられる。
【0214】
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p-トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008-284858号公報の段落0021~0037、特開2009-90645号公報の段落0030~0057に記載の化合物等が挙げられる。
【0215】
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5モル%~80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009-208458号公報の段落0089~0105に記載のポリマーが挙げられる。
【0216】
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009-208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5~120の範囲のものが好ましく、10~110の範囲のものがより好ましく、15~100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000~150,0000が好ましく、17,000~140,000がより好ましく、20,000~130,000が特に好ましい。
【0217】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2-(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2-エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13-エチル-5,8,11-トリオキサ-1-ヘプタデカンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート/2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
【0218】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.01質量%~30.0質量%が好ましく、0.1質量%~15.0質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0219】
-その他の成分-
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~0159の記載を参照することができる。
【0220】
-画像記録層の形成-
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1~50質量%程度であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m2~3.0g/m2が好ましい。
【0221】
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
支持体としては、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。
支持体としては、親水性表面を有する支持体(以下、「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。
【0222】
本開示における支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。即ち、本開示における支持体は、アルミニウム板とアルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化被膜とを有することが好ましい。
【0223】
本開示における支持体としては、アルミニウム支持体が好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるアルミニウム支持体は、公知の平版印刷版原版用アルミニウム支持体から適宜選択して用いることができる。
アルミニウム支持体としては、親水性表面を有するアルミニウム支持体(以下、「親水性アルミニウム支持体」ともいう。)が好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるアルミニウム支持体は、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面における空中水滴法による水との接触角が、傷汚れ抑制性の観点から、110°以下であることが好ましく、90°以下であることがより好ましく、80°以下であることが更に好ましく、50°以下であることがより更に好ましく、30°以下であることが特に好ましく、20°以下であることがより特に好ましく、10以下であることが最も好ましい。
【0224】
本開示において、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面における空中水滴法による水との接触角は、以下の方法により測定するものとする。
平版印刷版原版を画像記録層を除去可能な溶媒(例えば、画像記録層用塗布液で用いた溶媒)に浸漬させ、スポンジ及びコットンの少なくとも一方で画像記録層を掻き取り、画像記録層を溶媒中に溶解させることでアルミニウム支持体の表面を露出させる。
露出させたアルミニウム支持体の画像記録層側の表面における水との接触角は、測定装置として全自動接触角計(例えば、協和界面化学(株)製DM-501)によって、25℃における表面上の水滴の接触角(0.2秒後)として測定される。
【0225】
本開示におけるアルミニウム支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。即ち、本開示におけるアルミニウム支持体は、アルミニウム板とアルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化被膜とを有することが好ましい。
【0226】
本開示において用いられるアルミニウム支持体の好ましい態様の一例(本一例に係るアルミニウム支持体を、「支持体(1)」ともいう。)を以下に示す。
即ち、支持体(1)は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、上記陽極酸化皮膜が、上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜が、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が10nmを超え100nm以下であり、上記陽極酸化皮膜の上記画像記録層側の表面のL*a*b*表色系における明度L*の値が、70~100である。
【0227】
図1は、アルミニウム支持体12aの一実施形態の模式的断面図である。
アルミニウム支持体12aは、アルミニウム板18とアルミニウムの陽極酸化皮膜20a(以後、単に「陽極酸化皮膜20a」とも称する)とをこの順で積層した積層構造を有する。なお、アルミニウム支持体12a中の陽極酸化皮膜20aが、アルミニウム板18よりも画像記録層側に位置する。つまり、本開示に係る平版印刷版原版は、アルミニウム板上に、陽極酸化皮膜、画像記録層、及び水溶性樹脂層をこの順で少なくとも有することが好ましい。
【0228】
-陽極酸化皮膜-
以下、陽極酸化被膜20aの好ましい態様について説明する。
陽極酸化皮膜20aは、陽極酸化処理によってアルミニウム板18の表面に作製される皮膜であって、この皮膜は、皮膜表面に略垂直であり、かつ、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア22aを有する。マイクロポア22aは、画像記録層側の陽極酸化皮膜20a表面(アルミニウム板18側とは反対側の陽極酸化皮膜20a表面)から厚み方向(アルミニウム板18側)に沿ってのびる。
【0229】
陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、10nm超え100nm以下であることが好ましい。中でも、耐刷性、耐汚れ性、及び画像視認性のバランスの点から、15nm~60nmがより好ましく、20nm~50nmが更に好ましく、25nm~40nmが特に好ましい。ポア内部の径は、表層よりも広がっても狭まってもよい。
平均径が10nmを超えれば、耐刷性及び画像視認性が更に優れる。また、平均径が100nm以下であれば場合、耐刷性が更に優れる。
マイクロポア22aの平均径は、陽極酸化皮膜20a表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの径(直径)を50箇所測定し、算術平均値として算出される。
なお、マイクロポア22aの形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
【0230】
マイクロポア22aの深さは特に制限されないが、10nm~3,000nmが好ましく、50nm~2,000nmがより好ましく、300nm~1,600nmが更に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜20aの断面の写真(15万倍)をとり、25個以上のマイクロポア22aの深さを測定し、平均した値である。
【0231】
マイクロポア22aの形状は特に制限されず、
図1では、略直管状(略円柱状)であるが、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状であってもよい。また、マイクロポア22aの底部の形状は特に制限されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
【0232】
アルミニウム支持体12aの画像記録層側の表面(陽極酸化皮膜20aの画像記録層側の表面)のL*a*b*表色系における明度L*の値は、70~100であることが好ましい。中でも、耐刷性及び画像視認性のバランスがより優れる点で、75~100が好ましく、75~90がより好ましい。
上記明度L*の測定は、エックスライト(株)製、色彩色差計Spectro Eyeを用いて測定する。
【0233】
支持体(1)において、上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が15nm~150nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が13nm以下である態様(以下、上記態様に係る支持体を、「支持体(2)」ともいう。)も好ましく挙げられる。
図2は、アルミニウム支持体12aの、
図1に示したものとは別の一実施形態の模式的断面図である。
図2において、アルミニウム支持体12bは、アルミニウム板18と、大径孔部24と小径孔部26とから構成されるマイクロポア22bを有する陽極酸化皮膜20bとを含む。
陽極酸化皮膜20b中のマイクロポア22bは、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1000nm(深さD:
図2参照)の位置までのびる大径孔部24と、大径孔部24の底部と連通し、連通位置から更に深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部26とから構成される。
以下に、大径孔部24と小径孔部26について詳述する。
【0234】
大径孔部24の陽極酸化皮膜20b表面における平均径は、上述した陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径と同じで、10nm超100nm以下であり、好適範囲も同じである。
大径孔部24の陽極酸化皮膜20b表面における平均径の測定方法は、陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径の測定方法と同じである。
【0235】
大径孔部24の底部は、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nm(以後、深さDとも称する)に位置する。つまり、大径孔部24は、陽極酸化皮膜表面から深さ方向(厚み方向)に10nm~1,000nmの位置までのびる孔部である。上記深さは、10nm~200nmが好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜20bの断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の大径孔部24の深さを測定し、平均した値である。
【0236】
大径孔部24の形状は特に制限されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。
【0237】
小径孔部26は、
図2に示すように、大径孔部24の底部と連通して、連通位置より更に深さ方向(厚み方向)に延びる孔部である。
小径孔部26の連通位置における平均径は、13nm以下が好ましい。中でも、11nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、5nm以上の場合が多い。
【0238】
小径孔部26の平均径は、陽極酸化皮膜20a表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(小径孔部)の径(直径)を測定し、算術平均値として得られる。なお、大径孔部の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20b上部(大径孔部のある領域)を切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20b表面を上記FE-SEMで観察して、小径孔部の平均径を求めてもよい。
なお、小径孔部26の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
【0239】
小径孔部26の底部は、上記の大径孔部24との連通位置から更に深さ方向に20nm~2,000nmのびた場所に位置する。言い換えると、小径孔部26は、上記大径孔部24との連通位置から更に深さ方向(厚み方向)にのびる孔部であり、小径孔部26の深さは20nm~2,000nmである。なお、上記深さは、500nm~2,000nmが好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜20bの断面の写真(5万倍)をとり、25個以上の小径孔部の深さを測定し、平均した値である。
【0240】
小径孔部26の形状は特に制限されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。
【0241】
-アルミニウム支持体の製造方法-
本開示に用いられるアルミニウム支持体の製造方法としては、例えば、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
・粗面化処理工程:アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
・陽極酸化処理工程:粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
・ポアワイド処理工程:陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
以下、各工程の手順について詳述する。
【0242】
〔粗面化処理工程〕
粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。本工程は、後述する陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、特に実施しなくてもよい。
【0243】
粗面化処理は、電気化学的粗面化処理のみを実施してもよいが、電気化学的粗面化処理と機械的粗面化処理及び/又は化学的粗面化処理とを組み合わせて実施してもよい。
機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせる場合には、機械的粗面化処理の後に、電気化学的粗面化処理を実施するのが好ましい。
電気化学的粗面化処理は、硝酸又は塩酸を主体とする水溶液中で、直流又は交流を用いて行われることが好ましい。
機械的粗面化処理の方法は特に制限されないが、例えば、特公昭50-40047号公報に記載されている方法が挙げられる。
化学的粗面化処理も特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
【0244】
機械的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を実施するのが好ましい。
機械的粗面化処理の後に施される化学エッチング処理は、アルミニウム板の表面の凹凸形状のエッジ部分をなだらかにし、印刷時のインキの引っかかりを防止し、印刷版の耐汚れ性を向上させるとともに、表面に残った研磨材粒子等の不要物を除去するために行われる。
化学エッチング処理としては、酸によるエッチング及びアルカリによるエッチングが挙げられ、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ水溶液を用いる化学エッチング処理(以下、「アルカリエッチング処理」ともいう。)が挙げられる。
【0245】
アルカリ水溶液に用いられるアルカリ剤は特に制限されないが、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、及び、グルコン酸ソーダが挙げられる。
アルカリ水溶液は、アルミニウムイオンを含んでいてもよい。
アルカリ水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.01質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、30質量%以下が好ましい。
【0246】
アルカリエッチング処理を施した場合、アルカリエッチング処理により生じる生成物を除去するために、低温の酸性水溶液を用いて化学エッチング処理(以下、「デスマット処理」ともいう。)を施すのが好ましい。
酸性水溶液に用いられる酸は特に制限されないが、例えば、硫酸、硝酸、及び、塩酸が挙げられる。また、酸性水溶液の温度は、20℃~80℃が好ましい。
【0247】
粗面化処理工程としては、A態様又はB態様に示す処理を以下に示す順に実施する方法が好ましい。
【0248】
~A態様~
(2)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(4)硝酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
(5)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(7)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
(8)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
(9)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第3デスマット処理)
【0249】
~B態様~
(10)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第4アルカリエッチング処理)
(11)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第4デスマット処理)
(12)塩酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第3電気化学的粗面化処理)
(13)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第5アルカリエッチング処理)
(14)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第5デスマット処理)
【0250】
上記A態様の(2)の処理前、又は、B態様の(10)の処理前に、必要に応じて、(1)機械的粗面化処理を実施してもよい。
【0251】
第1アルカリエッチング処理及び第4アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.5g/m2~30g/m2が好ましく、1.0g/m2~20g/m2がより好ましい。
【0252】
A態様における第1電気化学的粗面化処理で用いる硝酸を主体とする水溶液としては、直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1~100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、又は、硝酸アンモニウム等を添加して得られる水溶液が挙げられる。
A態様における第2電気化学的粗面化処理及びB態様における第3電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液としては、通常の直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1g/L~100g/Lの塩酸水溶液に、硫酸を0g/L~30g/L添加して得られる水溶液が挙げられる。なお、この溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、及び、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、及び、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを更に添加してもよい。
【0253】
電気化学的粗面化処理の交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、及び、三角波等を用いることができる。周波数は0.1Hz~250Hzが好ましい。
図3は、電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
図3において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流、AAはアルミニウム板のアノード反応の電流、CAはアルミニウム板のカソード反応の電流である。台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1ms~10msが好ましい。電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taとカソード反応時間tcの比tc/taが1~20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3~20、アノード反応時間taが5ms~1,000ms、の範囲にあるのが好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに10A/dm
2~200A/dm
2が好ましい。Ic/Iaは、0.3~20が好ましい。電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は、25C/dm
2~1,000C/dm
2が好ましい。
【0254】
交流を用いた電気化学的な粗面化には
図4に示した装置を用いることができる。
図4は、交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
図4において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a及び53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。
図4中、矢印A1は電解液の給液方向を、矢印A2は電解液の排出方向をそれぞれ示している。である。電解槽を2つ以上用いるときには、電解条件は同じでもよいし、異なっていてもよい。
アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a及び53bにより電解処理される。電解液55は、電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a及び53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは、次いで、補助陽極槽60で電解処理される。この補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
【0255】
第2アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の印刷版原版が製造しやすい点で、1.0g/m2以上が好ましく、2.0g/m2~10g/m2がより好ましい。
【0256】
第3アルカリエッチング処理及び第4アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の印刷版原版が製造しやすい点で、0.01g/m2~0.8g/m2が好ましく、0.05g/m2~0.3g/m2がより好ましい。
【0257】
酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1~第5デスマット処理)では、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、又はこれらの2以上の酸を含む混酸を含む酸性水溶液が好適に用いられる。
酸性水溶液の酸の濃度は、0.5質量%~60質量%が好ましい。
【0258】
〔陽極酸化処理工程〕
陽極酸化処理工程の手順は、上述したマイクロポアが得られれば特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
陽極酸化処理工程においては、硫酸、リン酸、及び、シュウ酸等の水溶液を電解浴として用いることができる。例えば、硫酸の濃度は、100g/L~300g/Lが挙げられる。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、例えば、液温5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)、電流密度0.5A/dm2~60A/dm2(好ましくは1A/dm2~60A/dm2)、電圧1V~100V(好ましくは5V~50V)、電解時間1秒~100秒(好ましくは5秒~60秒)、及び、皮膜量0.1g/m2~5g/m2(好ましくは0.2g/m2~3g/m2)が挙げられる。
【0259】
〔ポアワイド処理〕
ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。
ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させることにより行うことができる。接触させる方法は特に制限されず、例えば、浸せき法及びスプレー法が挙げられる。
【0260】
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
【0261】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0262】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2-、-SO2NHSO2-、-COCH2COCH3が好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0263】
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号公報及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0264】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
【0265】
〔親水性化合物〕
下塗り層は、現像性の観点から、親水性化合物を含むことが好ましい。
親水性化合物としては、特に制限はなく、下塗り層に用いられる公知の親水性化合物を用いることができる。
親水性化合物としては、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。
また、親水性化合物としては、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はその塩など)が好ましく挙げられる。
【0266】
親水性化合物としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
また、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩は、傷汚れ抑制性の観点から、上記アルミニウム支持体上の層に含まれることが好ましい。また、上記アルミニウム支持体上の層は、画像記録層が形成されている側の層であることが好ましく、また、上記アルミニウム支持体と接する層であることが好ましい。
上記アルミニウム支持体上の層としては、上記アルミニウム支持体と接する層として、下塗り層又は画像記録層が好ましく挙げられる。また、上記アルミニウム支持体と接する層以外の層、例えば、保護層又は画像記録層に、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩が含まれていてもよい。
本開示に係る平版印刷版原版において、画像記録層が、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版において、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面が、少なくともヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む組成物(例えば、水溶液等)により表面処理される態様も好ましく挙げられる。上記態様である場合、処理されたヒドロキシカルボン酸又はその塩は、アルミニウム支持体と接する画像記録層側の層(例えば、画像記録層又は下塗り層)に含まれた状態で少なくとも一部を検出することができる。
下塗り層等のアルミニウム支持体と接する画像記録層側の層にヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことにより、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面を親水化することができ、また、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面における空中水滴法による水との接触角を110°以下と容易にすることができ、傷汚れ抑制性に優れる。
【0267】
ヒドロキシカルボン酸とは、1分子中に1個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基とを有する有機化合物の総称のことであり、ヒドロキシ酸、オキシ酸、オキシカルボン酸、アルコール酸とも呼ばれる(岩波理化学辞典第5版、(株)岩波書店発行(1998)参照)。
上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、下記式(HC)で表されるものが好ましい。
RHC(OH)mhc(COOMHC)nhc 式(HC)
式(HC)中、RHCはmhc+nhc価の有機基を表し、MHCはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属又はオニウムを表し、mhc及びnhcはそれぞれ独立に、1以上の整数を表し、nが2以上の場合、Mは同じでも異なってもよい。
【0268】
式(HC)において、Rで表されるmhc+nhc価の有機基としては、mhc+nhc価の炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基は置換基及び/又は連結基を有してもよい。
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基、アルケニレン基、アルケントリイル基、アルケンテトライル基、アルケンペンタイル基、アルキニレン基、アルキントリイル基、アルキンテトライル基、アルキンペンタイル基等、芳香族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基、アレーンペンタイル基等が挙げられる。ヒドロキシル基及びカルボキシル基以外の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ノルボルニル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1-プロペニルメチル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、2-メチルプロペニルメチル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。また、連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子により構成されるもので、その原子数は好ましくは1~50である。具体的には、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基などが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合及びエステル結合のいずれかで複数連結された構造を有していてもよい。
【0269】
MHCで表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。オニウムとしてはアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等が挙げられ、アンモニウムが特に好ましい。
また、MHCは、傷汚れ抑制性の観点から、アルカリ金属又はオニウムであることが好ましく、アルカリ金属であることがより好ましい。
mhcとnhcとの総数は、3以上が好ましく、3~8がより好ましく、4~6が更に好ましい。
【0270】
上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、分子量が600以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。また、上記分子量は、76以上であることが好ましい。
上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸は、具体的には、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸(2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、γ-ヒドロキシ酪酸等)、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、モノヒドロキシ安息香酸誘導体(サリチル酸、クレオソート酸(ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、バニリン酸、シリング酸等)、ジヒドロキシ安息香酸誘導体(ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸等)、トリヒドロキシ安息香酸誘導体(没食子酸等)、フェニル酢酸誘導体(マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸等)、ヒドロケイヒ酸誘導体(メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸、セレブロン酸、カルミン酸等)等が挙げられる。
【0271】
これらの中でも、上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシ基を2個以上有している化合物が好ましく、ヒドロキシ基を3個以上有している化合物がより好ましく、ヒドロキシ基を5個以上有している化合物が更に好ましく、ヒドロキシ基を5個~8個有している化合物が特に好ましい。
また、カルボキシ基を1個、ヒドロキシ基を2個以上有しているものとしては、グルコン酸、又は、シキミ酸が好ましい。
カルボキシ基を2個以上、ヒドロキシ基を1個有しているものとしては、クエン酸、又は、リンゴ酸が好ましい。
カルボキシ基及びヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有しているものとしては、酒石酸が好ましい。
中でも、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸が特に好ましい。
【0272】
親水性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
下塗り層に親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む場合、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸及びその塩の含有量は、下塗り層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~40質量%であることがより好ましく、1.0質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0273】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤等を含有してもよい。
【0274】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m2~100mg/m2が好ましく、1mg/m2~30mg/m2がより好ましい。
【0275】
<保護層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層上に、保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある。)を有していてもよい。保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0276】
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0277】
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-5D4O10(OH,F,O)2〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0278】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg3(AlSi3O10)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si4O10)F2等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si4O10)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si4O10)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si4O10)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0279】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å~15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi+、Na+の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
【0280】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0281】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは1μm~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm~50nm程度、面サイズ(長径)が1μm~20μm程度である。
【0282】
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、1質量%~60質量%が好ましく、3質量%~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
【0283】
-変色性化合物-
また、上記保護層は、変色性化合物を含むことが好ましい。
上記保護層は、変色性化合物以外に、水溶性ポリマー、疎水性ポリマー、感脂化剤、酸発生剤、赤外線吸収剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0284】
本開示に係る平版印刷版原版は、露光部の視認性を高める観点から、エネルギー密度110mJ/cm2にて波長830nmの赤外線による露光を行った場合の、露光前後の明度変化ΔLが、2.0以上であることが好ましい。
上記明度変化ΔLは、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることが更に好ましく、8.0以上であることが特に好ましく、10.0以上であることが最も好ましい。
明度変化ΔLの上限としては、例えば、20.0が挙げられる。
また、特に、変色性化合物を含む保護層を有する場合、上記明度変化ΔLの上記好ましい数値範囲を満たすことが好ましい。
【0285】
明度変化ΔLの測定は、以下の方法により行う。
平版印刷版原版を、波長830nmの赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム グラフィックシステムズ(株)製Luxel PLATESETTER T-9800により、出力99.5%、外面ドラム回転数220rpm、解像度2,400dpi(dots per inch、1inch=25.4mm)の条件(エネルギー密度110mJ/cm2)で露光する。露光は25℃、50%RHの環境下で行う。
露光前後の平版印刷版原版の明度変化を測定する。
測定には、X-Rite社製分光測色計eXactを用いる。L*a*b*表色系のL*値(明度)を用い、露光後の画像記録層のL*値と露光前の画像記録層のL*値との差の絶対値を明度変化ΔLとする。
【0286】
本開示において「変色性化合物」とは、赤外線露光に起因して、可視光領域(波長:400nm以上750nm未満)の吸収が変化する化合物をいう。つまり、本開示において「変色」とは、赤外線露光に起因して、可視光領域(波長:400nm以上750nm未満)の吸収が変化することをいう。
具体的には、本開示における変色性化合物は、(1)赤外線露光に起因して赤外線露光前より可視光領域の吸収が増加する化合物、(2)赤外線露光に起因して可視光領域の吸収を有するようになる化合物、(3)赤外線露光に起因して可視光領域に吸収を有しないようになる化合物が挙げられる。
なお、本開示における赤外線は、750nm~1mmの波長の光線であり、750nm~1,400nmの波長の光線であることが好ましい。
【0287】
変色性化合物としては、赤外線露光に起因して発色する化合物を含むことが好ましい。
また、変色性化合物としては、赤外線露光に起因して分解する分解性化合物を含むことが好ましく、中でも、赤外線露光に起因する、熱、電子移動、又はその両方により分解する分解性化合物を含むことが好ましい。
より具体的に言えば、本開示における変色性化合物は、赤外線露光に起因して分解し(より好ましくは、赤外線露光に起因する、熱、電子移動、又はその両方により分解し)、赤外線露光前に比べて、可視光領域における吸収が増加するか、又は、吸収が短波長化し可視光領域に吸収を有するようになる化合物であることが好ましい。
ここで、「電子移動により分解する」とは、赤外線露光によって変色性化合物のHOMO(最高被占軌道)からLUMO(最低空軌道)に励起した電子が、分子内の電子受容基(LUMOと電位が近い基)に分子内電子移動し、それに伴って分解が生じることを意味する。
【0288】
以下、変色性化合物の一例である分解性化合物について説明する。
分解性化合物は、赤外線波長域(750nm~1mmの波長域、好ましくは750nm~1,400nmの波長域)の少なくとも1部の光を吸収し、分解するものであればよいが、750nm~1,400nmの波長域に極大吸収を有する化合物であることが好ましい。
より具体的には、分解性化合物は、赤外線露光に起因して分解し、500nm~600nmの波長域に極大吸収波長を有する化合物を生成する化合物であることが好ましい。
【0289】
分解性化合物は、露光部の視認性を高める観点から、赤外線露光により分解する基(具体的には、下記一般式1-1~1-7におけるR1)を有する、シアニン色素であることが好ましい。
分解性化合物としては、露光部の視認性を高める観点から、下記式1-1で表される化合物であることがより好ましい。
【0290】
【0291】
式1-1中、R1は下記式2~式4のいずれかで表される基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc、又は、-NRdReを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A1、A2及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A1及びA2はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は、窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0292】
【0293】
式2~式4中、R20、R30、R41及びR42はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Zbは電荷を中和する対イオンを表し、波線は、前記式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0294】
式1-1で表される化合物は、赤外線で露光されると、R1-L結合が開裂し、Lは、=O、=S、又は=NR10となって、変色する。
【0295】
式1-1において、R1は上記式2~式4のいずれかで表される基を表す。
以下、式2で表される基、式3で表される基、及び式4で表される基についてそれぞれ説明する。
【0296】
式2中、R20は、アルキル基又はアリール基を表し、波線部分は、式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
R20で表されるアルキル基としては、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
R20で表されるアリール基としては、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。
R20としては、発色性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
【0297】
また、分解性、及び、発色性の観点から、R20で表されるアルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
更に、分解性、及び、発色性の観点から、R20で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又はtert-ブチル基が特に好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
【0298】
以下に、上記式2で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0299】
【0300】
式3中、R30は、アルキル基又はアリール基を表し、波線部分は、式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
R30で表されるアルキル基及びアリール基としては、式2中のR20で表されるアルキル基及びアリール基と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0301】
分解性、及び、発色性の観点から、R30で表されるアルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
また、分解性、及び、発色性の観点から、R30で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又はtert-ブチル基が特に好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
更に、分解性、及び、発色性の観点から、R30で表されるアルキル基は、置換アルキル基であることが好ましく、フルオロ置換アルキル基であることがより好ましく、パーフルオロアルキル基であることが更に好ましく、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0302】
分解性、及び、発色性の観点から、R30で表されるアリール基は置換アリール基であることが好ましく、置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~4のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)等が挙げられる。
【0303】
以下に、上記式3で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0304】
【0305】
式4中、R41及びR42はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Zbは電荷を中和する対イオンを表し、波線部分は、式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
R41又はR42で表されるアルキル基及びアリール基としては、式2中のR20で表されるアルキル基及びアリール基と同様であり、好ましい態様も同様である。
R41としては、分解性、及び、発色性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
R42としては、分解性、及び、発色性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
【0306】
分解性、及び、発色性の観点から、R41で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
分解性、及び、発色性の観点から、R42で表されるアルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
また、分解性、及び、発色性の観点から、R42で表されるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又は、tert-ブチル基が特に好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
【0307】
式4におけるZbは、電荷を中和するための対イオンであればよく、化合物全体として、式1-1におけるZaに含まれてもよい。
Zbは、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は過塩素酸塩イオンが好ましく、テトラフルオロボレートイオンがより好ましい。
【0308】
以下に、上記式4で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1-1中のLで表される基との結合部位を表す。
【0309】
【0310】
式1-1において、Lは、酸素原子、又は-NR10-が好ましく、酸素原子が特に好ましい。
また、-NR10-におけるR10は、アルキル基が好ましい。R10で表されるアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。また、R10で表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
アルキル基の中では、メチル基又はシクロヘキシル基が好ましい。
-NR10-におけるR10がアリール基の場合、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。また、これらアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0311】
式1-1において、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、-Ra、-ORb、-SRc、又は-NRdReであることが好ましい。
Ra~Reで表される炭化水素基は、炭素数1~30の炭化水素基が好ましく、炭素数1~15の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~10の炭化水素基が更に好ましい。
上記炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
上記炭化水素基としては、アルキル基が特に好ましい。
【0312】
上記アルキル基としては、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2-ノルボルニル基が挙げられる。
アルキル基の中で、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましい。
【0313】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及びこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0314】
式1-1におけるR11~R14はそれぞれ独立に、水素原子、又は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることがより好ましく、以下の場合を除き、水素原子であることが更に好ましい。
中でも、Lが結合する炭素原子と結合する炭素原子に結合するR11及びR13は、アルキル基が好ましく、両者が連結して環を形成することがより好ましい。上記形成される環としては、単環であってもよく、多環であってもよい。形成される環として、具体的には、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環等の単環、及び、インデン環、インドール環等の多環が挙げられる。
また、A1
+が結合する炭素原子に結合するR12はR15又はR16(好ましくはR16)と連結して環を形成することが好ましく、A2が結合する炭素原子に結合するR14はR17又はR18(好ましくはR18)と連結して環を形成することが好ましい。
【0315】
式1-1において、n13は1であり、R16は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましい。
また、R16は、A1
+が結合する炭素原子に結合するR12と連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドリウム環、ピリリウム環、チオピリリウム環、ベンゾオキサゾリン環、又はベンゾイミダゾリン環が好ましく、露光部の視認性を高める観点から、インドリウム環がより好ましい。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
式1-1において、n14は1であり、R18は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましい。
また、R18は、A2が結合する炭素原子に結合するR14と連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドール環、ピラン環、チオピラン環、ベンゾオキサゾール環、又はベンゾイミダゾール環が好ましく、露光部の視認性を高める観点から、インドール環がより好ましい。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
式1-1におけるR16及びR18は同一の基であることが好ましく、それぞれが環を形成する場合、A1
+及びA2を除き、同一の構造の環を形成することが好ましい。
【0316】
式1-1におけるR15及びR17は同一の基であることが好ましい。また、R15及びR17は、-Ra(即ち炭化水素基)であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、置換アルキル基であることが更に好ましい。
【0317】
式1-1により表される化合物において、水溶性を向上させる観点からは、R15及びR17は置換基アルキル基であることが好ましい。
R15又はR17で表される置換アルキル基としては、下記式(a1)~式(a4)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0318】
【0319】
式(a1)~式(a4)中、RW0は炭素数2~6のアルキレン基を表し、Wは単結合又は酸素原子を表し、nW1は1~45の整数を表し、RW1は炭素数1~12のアルキル基又は-C(=O)-RW5を表し、RW5は炭素数1~12のアルキル基を表し、RW2~RW4はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1~12のアルキレン基を表し、Mは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、又は、オニウム基を表す。
【0320】
式(a1)において、RW0で表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、又はn-ブチレン基が好ましく、n-プロピレン基が特に好ましい。
nW1は1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。
RW1で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、又はn-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、メチル基、又はエチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
RW5で表されるアルキル基は、RW1で表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様もRW1で表されるアルキル基の好ましい態様と同様である。
【0321】
式(a1)で表される基の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
【0322】
【0323】
式(a2)~式(a4)において、RW2~RW4で表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基等が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、又は、n-ブチレン基が好ましく、エチレン基、又は、n-プロピレン基が特に好ましい。
式(a3)において、2つ存在するMは同じでも異なってもよい。
【0324】
式(a2)~式(a4)において、Mで表されるオニウム基としては、アンモニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。
式(a2)におけるCO2M、式(a2)におけるPO3M2、及び式(a4)におけるSO3Mは、いずれもMが解離したアニオン構造を有していてもよい。アニオン構造の対カチオンは、A1
+であってもよいし、式1-1中のR1-Lに含まれうるカチオンであってもよい。
【0325】
式(a1)~式(a4)で表される基の中で、式(a1)、式(a2)、又は式(a4)で表される基が好ましい。
【0326】
式1-1におけるn11及びn12は同一であることが好ましく、いずれも、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0327】
式1-1におけるA1及びA2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、窒素原子が好ましい。
式1-1におけるA1及びA2は同一の原子であることが好ましい。
【0328】
式1-1におけるZaは、電荷を中和する対イオンを表す。
R11~R18及びR1-Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンとなる。但し、R11~R18及びR1-Lは、アニオン構造又はカチオン構造を有していてもよく、例えば、R11~R18及びR1-Lに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
なお、式1-1で表されるシアニン色素が、Zaを除き、化合物の全体において電荷的に中性な構造であれば、Zaは必要ない。
Zaが対アニオンである場合、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、テトラフルオロボレートイオンが好ましい。
Zaが対カチオンである場合、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンがより好ましい。
【0329】
分解性化合物としては、露光部の視認性を高める観点から、下記式1-2で表される化合物(即ち、シアニン色素)であることがより好ましい。
【0330】
【0331】
式1-2中、R1は上記式2~式4のいずれかで表される基を表し、R19~R22はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-CN、-SRc、又は-NRdReを表し、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、又は、-Raを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又は、R23とR24は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rd1~Rd4、W1及びW2はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0332】
式1-2におけるR1は、式1-1におけるR1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0333】
式1-2において、R19~R22は、それぞれ独立に、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、又は-CNであることが好ましい。
より具体的には、R19及びR21は、水素原子、又は-Raであることが好ましい。
また、R20及びR22は、水素原子、-Ra、-ORb、又は-CNであることが好ましい。
R19~R22で表される-Raとしては、アルキル基、又はアルケニル基が好ましい。
R19~R22のすべてが-Raである場合、R19とR20及びR21とR22が連結して単環又は多環を形成することが好ましい。
R19とR20又はR21とR22が連結して形成される環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0334】
式1-2において、R23とR24は、連結して単環又は多環を形成していることが好ましい。
R23とR24が連結して形成される環としては、単環であってもよく、多環であってもよい。形成される環として、具体的には、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環等の単環、及び、インデン環等の多環が挙げられる。
【0335】
式1-2において、Rd1~Rd4は、無置換アルキル基であることが好ましい。また、Rd1~Rd4は、いずれも同一の基であることが好ましい。
無置換アルキル基としては、炭素数1~4の無置換アルキル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。
【0336】
式1-2において、W1及びW2はそれぞれ独立に、式1-2で表される化合物に水溶性を高める観点から、置換アルキル基であることが好ましい。
W1及びW2で表される置換アルキル基としては、式1-1における式(a1)~式(a4)のいずれかで表される基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
また、W1及びW2はそれぞれ独立に、機上現像性の観点から、置換基を有するアルキル基であり、かつ、上記置換基として、-(OCH2CH2)-、スルホ基、スルホ基の塩、カルボキシ基、又は、カルボキシ基の塩を少なくとも有する基であることが好ましい。
【0337】
Zaは、分子内の電荷を中和する対イオンを表す。
R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W1、W2、及び、R1-Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンとなる。但し、R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W1、W2、及び、R1-Lは、アニオン構造又はカチオン構造を有していてもよく、例えば、R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W1、W2、及び、R1-Lに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
なお、式1-2で表される化合物が、Zaを除き、化合物の全体において電荷的に中性な構造であれば、Zaは必要ない。
Zaが対アニオンである場合の例は、式1-1におけるZaと同様であり、好ましい態様も同様である。また、Zaが対カチオンである場合の例も、式1-1におけるZaと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0338】
分解性化合物としてのシアニン色素は、分解性、及び、発色性の観点から、下記式1-3~式1-7のいずれかで表される化合物であることが更に好ましい。
特に、分解性、及び、発色性の観点から、式1-3、式1-5、及び式1-6のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0339】
【0340】
式1-3~式1-7中、R1は上記式2~式4のいずれかで表される基を表し、R19~R22はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-CN、-SRc、又は、-NRdReを表し、R25及びR26はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、-Raを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又は、R25とR26は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は、-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rd1~Rd4、W1及びW2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0341】
式1-3~式1-7におけるR1、R19~R22、Rd1~Rd4、W1、W2、及びLは、式1-2におけるR1、R19~R22、Rd1~Rd4、W1、W2、及びLと同義であり、好ましい態様も同様である。
式1-7におけるR25及びR26はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0342】
以下に、分解性化合物のシアニン色素の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0343】
【0344】
また、分解性化合物であるシアニン色素は、国際公開第2019/219560号に記載の赤外線吸収性化合物を好適に用いることができる。
【0345】
また、上記変色性化合物は、酸発色剤を含んでいてもよい。
酸発色剤としては、画像記録層において酸発色剤として記載したものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0346】
変色性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用してもよい。
変色性化合物としては、既述の分解性化合物と後述の酸発生剤とを組み合わせて使用してもよい。
【0347】
保護層中の変色性化合物の含有量は、発色性の観点から、保護層の全質量に対し、0.10質量%~50質量%が好ましく、0.50質量%~30質量%がより好ましく、 1.0質量%~20質量%が更に好ましい。
【0348】
上記保護層の上記変色性化合物の含有量MXと上記画像記録層の上記赤外線吸収剤の含有量MYとの比MX/MYが、発色性の観点から、0.1以上であることが好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上3.0以下が特に好ましい。
【0349】
-水溶性ポリマー-
上記保護層は、現像除去性(より好ましくは、機上現像性)の観点から、水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
本開示において、水溶性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対して1g以上溶解し、かつ、70℃、100gの純水に対して1gのポリマーが溶解した溶液を25℃に冷却しても析出しないポリマーをいう。
保護層に用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0350】
上記水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールが好ましいものとして挙げられる。中でも、水溶性ポリマーとしては、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを用いることが更に好ましい。
上記けん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
上記けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定される。
【0351】
上記水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドンも好ましいものとして挙げられる。
親水性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを組み合わせて使用することも好ましい。
【0352】
水溶性ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0353】
保護層が水溶性ポリマーを含む場合、水溶性ポリマーの含有量は、保護層の全質量に対して、1質量%~99質量%であることが好ましく、3質量%~97質量%であることがより好ましく、5質量%~95質量%であることが更に好ましい。
【0354】
-その他の成分-
上記保護層は、既述の変色性化合物及び水溶性ポリマー以外に、疎水性ポリマー、感脂化剤、酸発生剤、赤外線吸収剤等の他の成分を含んでいてもよい。
以下、その他の成分について説明する。
【0355】
〔疎水性ポリマー〕
上記保護層は、疎水性ポリマーを含むことが好ましい。
疎水性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対する1g未満で溶解するか、又は、溶解しないポリマーをいう。
疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等)、これらのポリマーの原料モノマーを組み合わせた共重合体等が挙げられる。
また、疎水性ポリマーとしては、ポリビニリデンクロライド樹脂を含むことが好ましい。
更に、疎水性ポリマーとしては、スチレン-アクリル共重合体を含むことが好ましい。
更にまた、疎水性ポリマーは、機上現像性の観点から、疎水性ポリマー粒子であることが好ましい。
【0356】
疎水性ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0357】
保護層が疎水性ポリマーを含む場合、疎水性ポリマーの含有量は、保護層の全質量に対して、1質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましい。
【0358】
〔感脂化剤〕
上記保護層は、インキ着肉性の観点から、感脂化剤を含むことが好ましい。
上記保護層に用いられる感脂化剤としては、上記画像記録層において記載した感脂化剤を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0359】
感脂化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
保護層が感脂化剤を含む場合、感脂化剤の含有量は、保護層の全質量に対して、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0360】
〔酸発生剤〕
上記保護層は、変色性化合物として酸発色剤を用いる場合に、酸発生剤を含むことが好ましい。
本開示における「酸発生剤」とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、具体的には、赤外線露光によって分解し酸を発生する化合物をいう。
発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。酸発生剤から発生した酸によって、既述の酸発色剤が変色することができる。
【0361】
酸発生剤として具体的には、感度と安定性の観点から、オニウム塩化合物が好ましい。
酸発生剤として好適なオニウム塩の具体例は、国際公開第2016/047392号の段落0121~段落0124に記載された化合物が挙げられる。
中でも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムの、スルホン酸塩、カルボン酸塩、BPh4
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-などが好ましい。ここで、Phはフェニル基を表す。
【0362】
酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
保護層が酸発生剤を含む場合、酸発生剤の含有量は、保護層の全質量に対して、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0363】
上記保護層は、既述の成分以外にも、無機層状化合物、界面活性剤等の公知の添加物を含有してもよい。
【0364】
保護層は、公知の方法で塗布され、乾燥することで形成される。
保護層の塗布量(固形分)は、0.01g/m2~10g/m2が好ましく、0.02g/m2~3g/m2がより好ましく、0.1g/m2~2.0g/m2が特に好ましい。
保護層の膜厚は、0.1μm~5.0μmであることが好ましく、0.3μm~4.0μmであることがより好ましい。
【0365】
上記保護層の膜厚は、後述する画像記録層の膜厚に対し、0.1倍~5.0倍であることが好ましく、0.2倍~3.0倍であることがより好ましい。
【0366】
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。
【0367】
(平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(機上現像工程)と、得られた平版印刷版により印刷する工程(印刷工程)と、を含むことが好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
以下、平版印刷版の作製方法における露光工程及び機上現像工程について説明するが、本開示に係る平版印刷版の作製方法における露光工程と、本開示に係る平版印刷方法における露光工程とは同様の工程であり、本開示に係る平版印刷版の作製方法における機上現像工程と、本開示に係る平版印刷方法における機上現像工程とは同様の工程である。
また、上記最外層は、機上現像時において、一部は除去され、一部は画像部の表面に残留又は画像部の内部に印刷インキにより浸透しているものと推定している。
【0368】
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。波長750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm2~300mJ/cm2であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0369】
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
以下に、機上現像方式について説明する。
【0370】
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
【0371】
上記本開示に係る平版印刷版原版を画像露光するレーザーとしては、光源の波長は300nm~450nm又は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。波長300nm~450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、波長750nm~1,400nmの光源は上述したものが好ましく用いられる。波長300nm~450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。
【0372】
<現像液現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、現像液により非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(「現像液現像工程」ともいう。)と、を含む方法であってもよい。
また、本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、現像液により非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む方法であってもよい。
現像液としては、公知の現像液を用いることができる。
現像液のpHは、特に制限はなく、強アルカリ現像液であってもよいが、pH2~11の現像液が好ましく挙げられる。pH2~11の現像液としては、例えば、界面活性剤及び水溶性高分子化合物のうち少なくとも1種を含有する現像液が好ましく挙げられる。
強アルカリ現像液を用いた現像処理においては、前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを水洗除去し、ガム液処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が挙げられる。
また、界面活性剤又は水溶性高分子化合物を含有する上記現像液を用いる場合は、現像-ガム液処理を同時に行うことができる。よって、後水洗工程は特に必要とせず、1液で現像とガム液処理を行った後、乾燥工程を行うことができる。更に、保護層の除去も現像、ガム液処理と同時に行うことができるので、前水洗工程も特に必要としない。現像処理後、スクイズローラー等を用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
【0373】
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程又は上記現像液現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
【0374】
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃~500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
【実施例0375】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。
【0376】
<重合性化合物3の合成>
表1に記載のポリイソシアネート(いずれも三井化学(株)製)4.7質量部、表1に記載の水酸基含多官能アクリレート(いずれも東亞合成(株)製)ポリイソシアネートのNCO価と水酸基含有多官能アクリレートの水酸基価が1:1となる量、t-ブチルベンゾキノン0.02質量部、メチルエチルケトン11.5質量部の混合溶液を65℃に加熱した。反応溶液に、ネオスタンU-600(ビスマス系重縮合触媒、日東化成(株)製)0.11質量部を加え、同温度で4時間加熱した。反応溶液を室温(25℃)まで冷却し、メチルエチルケトンを加えることで、固形分が50質量%のウレタンアクリレート溶液を合成した。
続いて、リサイクル型GPC(機器:LC908-C60、カラム:JAIGEL-1H-40及び2H-40(日本分析工業(株)製))で、テトラヒドロフラン(THF)溶離液にて、ウレタンアクリレート溶液の分子量分画を実施した。そして、表1に記載のM3-1~M3-3をそれぞれ得た。
【0377】
<重量平均分子量(Mw)、及び、エチレン性不飽和結合価(C=C価)の測定>
重合性化合物3の重量平均分子量Mwは、下記の測定機器、方法により測定した。
GPC測定機器:TOSOH HLC-8320GPC、GPC流動相:THF
検査器:示差屈折率検出器(RI)、流速:0.35mL/min
カラム:TSKgel SuperHZM-M、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ3000、及び、TSKgel SuperHZ2000を連結して使用した。
カラム温度:40℃
分子量検量線用標準サンプル:ポリスチレン(PS)
また、化合物のエチレン性不飽和結合価(C=C価)は、1H-NMR測定より化合物の(モデル)構造を解析し、算出した。
【0378】
【0379】
<支持体の作製>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム合金板に対し、特開2012-158022号公報の段落0126に記載の(A-a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)から段落0134に記載の(A-i)酸性水溶液中でのデスマット処理を実施した。
次に、特開2012-158022号公報の段落0135に記載の(A-j)第1段階の陽極酸化処理から段落0138に記載の(A-m)第3段階の陽極酸化処理の各処理条件を適宜調整して、平均系35nm、深さ100nmの大径孔部と、平均径10nm、深さ1,000nmの小径孔部を有し、大径孔部の平均径に対する大径孔部の深さの比が2.9である陽極酸化皮膜を形成し、アルミニウム支持体Aを得た。
なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラーで液切りを行った。
【0380】
<下塗り層の形成>
上記支持体A上(印刷面側)に、下記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が87mg/m2になるよう塗布して、下塗り層を形成した。
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.971g/m2の画像記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。
なお、ポリマー粒子(ミクロゲル)を含む画像記録層塗布液(1)の調製は、下記ミクロゲル液以外の成分を混合した感光液と、下記ミクロゲル液とを塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
【0381】
<下塗り層用塗布液>
・下塗り層用化合物(P-1)〔下記構造〕:0.1370部
・グルコン酸ナトリウム:0.0700部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成(株)製):0.00149部
・水:3.29000部
【0382】
【0383】
<<画像記録層塗布液(1)>>
・IR-1(赤外線吸収剤、下記化合物):0.01970部
・発色剤(S-15)〔上記構造〕:0.02000部
・IA-1(電子受容型重合開始剤、下記化合物):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(ボレート化合物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム):0.025部
・表2に記載の重合性化合物3:表2に記載の量
・表2に記載の重合性化合物2:表2に記載の量
・表2に記載の重合性化合物1:表2に記載の量
・アニオン界面活性剤(A-1)〔下記構造〕:0.004部
・フッ素系界面活性剤(W-1)〔下記構造〕:0.00416部
【0384】
【0385】
【0386】
・2-ブタノン:4.92部
・1-メトキシ-2-プロパノール:3.10部
・メタノール:2.79部
・ミクロゲル液:2.32部
【0387】
〔赤外線吸収剤〕
IR-1:下記構造の化合物、HOMO=-5.35eV、LUMO=-3.73eV、なお、Phはフェニル基を表す。
【0388】
【0389】
〔電子受容型重合開始剤〕
IA-1:下記構造の化合物、LUMO=-3.02eV
【0390】
【0391】
-ミクロゲル液の調製-
・ミクロゲル(ポリマー粒子):2.640部
・蒸留水:2.425部
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲルの調製法を以下に示す。
【0392】
-多価イソシアネート化合物の調製-
イソホロンジイソシアネート17.78g(80mmol)と下記多価フェノール化合物(1)7.35g(20mmol)との酢酸エチル(25.31g)懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成(株)製)43mgを加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
【0393】
【0394】
-ミクロゲルの調製-
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpm(revolutions per minute)で10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20gを加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル(1)の水分散液が得られた。光散乱法により平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
【0395】
~油相成分~
(成分1)酢酸エチル:12.0g
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これに片末端メチル化ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76g
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0g
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54g
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42g
【0396】
~水相成分~
蒸留水:46.87g
【0397】
<評価>
(1)紫外線硬化型インキ耐刷性(UV耐刷性)
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm2相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Amplitude Modulation Screen)10%網点のチャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S-Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(連量:76.5kg、三菱製紙(株)製)紙に500枚印刷を行った。
続けて、更に印刷を行った。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像部が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるAMスクリーン10%網点の網点面積率をグレタグ濃度計(GretagMacbeth社製)で計測した値が、印刷500枚目の計測値よりも3%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。実施例1の刷了枚数を100として耐刷性を相対比較した。数値が大きいほど、耐刷性が良好である。評価結果は表2に記載した。
【0398】
(2)機上現像性
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm2相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Amplitude Modulation Screen)3%網点のチャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S-Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に500枚印刷を行った。
上記機上現像において、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測し、表2に記載した。上記枚数が少ないほど、機上現像性が良好であるといえる。
【0399】
(3)UV版飛び抑制性
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm2相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)3%網点のチャートを含むようにした。
得られた露光済み原版の網点部に、直径0.4mmのピアノ線((株)エスコ製)を版胴の回転方向に対して垂直方向に貼り付け、現像処理することなく、菊判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S-Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に印刷を行った。
印刷枚数が2,000枚に達したところで、版からピアノ線を取り外し、再度印刷機にセットし、印刷を開始した。再開後100枚目の印刷物を確認し、ピアノ線の位置に対応する画像部を確認し、着肉不良が生じているか50倍拡大鏡を用いて目視で確認し、着肉不良を10段階で評価した。点数が高いほど着肉不良が発生しないことを示している。評価結果は表2に記載した。
【0400】
【0401】
表2中、「-」は該当する成分を含まないことを意味している。
また、表2中の重合性化合物3の「比率」とは、重合性化合物1、重合性化合物2、及び、重合性化合物3の合計含有量M1+M2+M3に対する重合性化合物3の含有量M3の比率(M3/(M1+M2+M3))を意味している。また、表2中の重合性化合物2の「比率」とは、重合性化合物1、及び、重合性化合物2の合計含有量M1+M2に対する記重合性化合物2の含有量M2の比率(M2/(M1+M2))を意味している。
更に、「C=C価」は、エチレン性不飽和基価を表し、単位はmmol/gである。
表2に記載の略称の詳細を以下に示す。
【0402】
〔重合性化合物1〕
・M1-1:下記化合物(ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製)
【0403】
【0404】
・M1-2:下記化合物(DPPA、製品名:アロニックスM-403、東亞合成(株)製)
【0405】
【0406】
・M1-3:下記化合物((トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、製品名:NKエステル A-9300、新中村化学工業(株)製)
【0407】
【0408】
・M1-4:下記化合物(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、製品名:A-BPE-4、新中村化学工業(株)製)
【0409】
【0410】
〔重合性化合物2〕
・M2-1:下記化合物
【0411】
【0412】
・M2-2:下記化合物
【0413】
【0414】
〔重合性化合物3〕
・M3-4:下記化合物
下記構造の星型ポリマー、下記に示すポリマー鎖の組成は、モノマーの重合モル比で、a/b/c=33/42/25である。
【0415】
【0416】
〔発色剤〕
・C-1、及び、C-2:下記化合物
【0417】
【0418】
表2に記載の結果から、本開示に係る平版印刷版原版である実施例1~21の平版印刷版原版は、機上現像性に優れ、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れている。
また、表2に記載の結果から、本開示に係る平版印刷版原版である実施例1~21の平版印刷版原版は、UV版飛び抑制性にも優れる。
【0419】
(実施例22~32)
画像記録層の形成までは、表3に示すように、実施例1と同様に行った。
【0420】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記表4に記載の成分を含む保護層塗布液(ただし、保護層塗布液は、表4に記載の各成分を含み、イオン交換:で固形分が20質量%になるように調製した。)をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.50g/m2の保護層を形成した。
以上の工程を経て、平版印刷版原版を得た。
【0421】
<平版印刷版原版の評価>
UV耐刷性、UV版飛び性、及び、機上現像性(直後)については、上記と同様に評価を行った。
【0422】
〔経時機上現像性〕
得られた平版印刷版原版を室温(25℃)、湿度50%の環境下、三菱電機(株)製OSRAM FLR40SW蛍光灯を光源に用い、東京光電(株)製ポケット照度計ANA-F9型にて1000lxの照度の位置に平版印刷版原版をセットし、2時間白色光を照射した。照射後の平版印刷版を使用し、上記機上現像性評価と同様にして機上現像性(白灯曝光2時間後)を測定した。結果を表4に示す。
【0423】
〔視認性(発色性):露光前後の明度変化ΔLの測定〕
露光直後、及び、露光後暗所(25℃)で24時間保存後の平版印刷版原版を、波長830nmの赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム グラフィックシステムズ(株)製Luxel PLATESETTER T-9800により、出力99.5%、外面ドラム回転数220rpm、解像度2,400dpi(dots per inch、1inch=25.4mm)の条件(エネルギー密度110mJ/cm2)で露光した。露光は25℃、50%RHの環境下で行った。
露光前後の平版印刷版原版の明度変化を測定した。測定には、X-Rite社製分光測色計eXactを用いた。L*a*b*表色系のL*値(明度)を用い、露光後の画像記録層のL*値と露光前の画像記録層のL*値との差の絶対値を明度変化ΔLとした。ΔLが大きいほど、露光部の視認性に優れると評価する。露光直後の平版印刷版原版を用い、求められたΔLの値は、表3の「ΔL(直後)」の欄に記載した。また、24時間保存後の平版印刷版原版を用い、求められたΔLの値は、表3の「ΔL(24時間後)」の欄に記載した。
【0424】
〔耐傷性(傷汚れ抑制性)〕
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm(revolutions per minute)、レーザー出力70%、及び、解像度2,400dpi(dots per inch)の条件で露光した。露光処理後に、温度25℃、湿度70%の環境下にて得られた平版印刷版に引っかき試験機によってキズを付けた。
この引っかき試験機としては、HEIDON scratching Intersity TESTER HEIDEN-18を使用し、直径0.1mmのサファイア針を用いて、引っ掻き荷重は50(g)とした。キズ付け後の版を現像処理することなく、三菱製ダイヤIF2印刷機の版胴に取り付けた。IF102(富士フイルム(株)製)/水道水=3/97(容量比)の湿し水とValues-G(N)墨インキ(DIC(株)製)とを用い、ダイヤIF2の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート紙(連量:76.5kg、三菱製紙(株)製)を用いて印刷を行い、キズ付け部が印刷汚れにならないか評価した。結果を表3に示す。また、9点、7点等の中間点については、上限の評価基準の中間である場合に中間点の評価とした。評価基準10点~6点であることが好ましい。
-評価基準-
10点:キズ付け部が印刷汚れにならない。
8点:目視では判別できないわずかな印刷汚れがキズ付け部に認められる。
6点:目視によりわずかな印刷汚れがキズ付け部に認められる。
4点:目視により印刷汚れがキズ付け部に認められる。
2点:キズ付け部に明らかな印刷汚れが認められる。
【0425】
【0426】
【0427】
表3における「C=C価」は、エチレン性不飽和基価を表し、単位はmmol/gである。
以下に、上述した以外の表4に記載の化合物の詳細を示す。
【0428】
〔変色性化合物〕
IR-1~IR-7:下記構造の化合物
【0429】
【0430】
【0431】
〔酸発色剤〕
S-1:下記構造の化合物
S-2:下記構造の化合物
【0432】
【0433】
〔水溶性ポリマー〕
PVA-1:Mowiol 4-88、Sigma Aldrich社製Mowiol(登録商標) 4-88
PVA-2:Mowiol 8-88、Sigma Aldrich社製Mowiol(登録商標) 8-88
WP-1:下記構造の化合物(ポリビニルピロリドン、重量平均分子量45,000)
【0434】
【0435】
〔疎水性ポリマー〕
P-1:下記構造の化合物(ポリ塩化ビニリデン樹脂、重量平均分子量40,000)
P-2:下記構造の化合物(スチレン-アクリル酸メチル共重合体、n=0.3、m=0.7、重量平均分子量40,000)
【0436】
【0437】
〔酸発生剤〕
Int-1:下記構造の化合物、Phはフェニル基を表す。
【0438】
【0439】
〔感脂化剤〕
A-1:下記構造の化合物
【0440】
【0441】
表3及び表4に記載の結果から、本開示に係る平版印刷版原版である実施例22~32の平版印刷版原版は、機上現像性に優れ、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れている。
また、表3及び表4に記載の結果から、本開示に係る平版印刷版原版である実施例22~32の平版印刷版原版は、UV版飛び抑制性、視認性(発色性)、経時視認性(経時発色性)、経時機上現像性、及び、耐傷性にも優れる。
【0442】
2019年9月30日に出願された日本国特許出願2019-180623号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
18:アルミニウム板、ta:アノード反応時間、tc:カソード反応時間、tp:電流が0からピークに達するまでの時間、Ia:アノードサイクル側のピーク時の電流、Ic:カソードサイクル側のピーク時の電流、AA:アルミニウム板のアノード反応の電流、CA:アルミニウム板のカソード反応の電流、10:平版印刷版原版、12a,12b:アルミニウム支持体、14:下塗り層、16:画像記録層、20a,20b:陽極酸化皮膜、22a,22b:マイクロポア、24:大径孔部、26:小径孔部、D:大径孔部の深さ、50:主電解槽、51:交流電源、52:ラジアルドラムローラ、53a,53b:主極、54:電解液供給口、55:電解液、56:補助陽極、60:補助陽極槽、W:アルミニウム板、A1:給液方向、A2:電解液排出方向、610:陽極酸化処理装置、612:給電槽、614:電解処理槽、616:アルミニウム板、618,26:電解液、620:給電電極、622,628:ローラ、624:ニップローラ、630:電解電極,632:槽壁、634:直流電源