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特開2023-171474位置決めデバイス、剛性低減デバイス及び電子ビーム装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171474
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】位置決めデバイス、剛性低減デバイス及び電子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20231124BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20231124BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20231124BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231124BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01J37/20 D
H01J37/20 A
H01J37/305 B
H01J37/28 B
H01L21/30 541L
G03F7/20 504
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172427
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2021531893の分割
【原出願日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】18215161.3
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロンド,マイケル,ヨハネス,クリスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ リフト,ヨハネス,ヒューベルタス,アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】クレマーズ,マールテン,フランス,ヤヌス
(72)【発明者】
【氏名】レッカーズ,エリック マリア
(57)【要約】
【課題】位置決めデバイスのステージの移動方向における有効剛性が低減されたバランスマスを有する位置決めデバイスを提供する。
【解決手段】本発明は、オブジェクトを変位させるように構成された位置決めデバイスであって、オブジェクトを支持するためのステージと、ステージを基準に対して移動方向に移動させるためのアクチュエータと、アクチュエータと基準の間に配置されて、アクチュエータから基準への反力の伝達を低減するためのバランスマスと、基準とバランスマスの間に配置されて、バランスマスを支持するための支持デバイスと、基準とバランスマスの間に作用して、バランスマスに持ち上げ力を与えて、支持デバイスによりバランスマスを支持するために提供される重力支持力を低減するための重力補償器と、を備えた位置決めデバイスを提供する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを変位させるように構成された位置決めデバイスであって、
前記オブジェクトを支持するためのステージと、
前記ステージを基準に対して移動方向に移動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータと前記基準の間に配置されて、前記アクチュエータから前記基準への反力の伝達を低減するためのバランスマスと、
前記基準と前記バランスマスの間に配置されて、前記バランスマスを支持するための支持デバイスと、 前記基準と前記バランスマスの間に作用して、前記バランスマスに持ち上げ力を与えて、前記支持デバイスにより前記バランスマスを支持するために提供される重力支持力を低減するための重力補償器と、
を備えた、位置決めデバイス。
【請求項2】
前記重力補償器が、磁気重力補償器及び/又は機械的重力補償器である、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項3】
前記位置決めデバイスが、前記磁気重力補償器の磁界を遮蔽するための磁気シールドを備えた、請求項2の位置決めデバイス。
【請求項4】
前記重力補償器が、前記バランスマスに引力を与えるように構成された、又は、
前記重力補償器が、前記バランスマスに反発力を与えるように構成された、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項5】
前記重力補償器の前記移動方向の剛性が、前記支持デバイスの前記移動方向の剛性よりも実質的に小さい、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項6】
前記重力補償器が、前記バランスマスにかかる重力の0.8倍から1.2倍の範囲の持ち上げ力を提供する、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項7】
前記位置決めデバイスが、複数の重力補償器を備え、
前記複数の重力補償器が、全体で前記バランスマスにかかる重力の0.8倍から1.2倍の範囲の持ち上げ力を提供する、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項8】
前記支持デバイスが、1つ以上の弾性誘導デバイスを備えた、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項9】
前記1つ以上の弾性誘導デバイスが、1つ以上の板バネであり、
前記1つ以上の板バネが、前記バランスマスの中心位置からの前記移動方向の最大変位を可能にし、
前記1つ以上の板バネが、それぞれ有効バネ長を有し、
前記最大変位が、有効バネ長の少なくとも0.15倍である、請求項8の位置決めデバイス。
【請求項10】
前記支持デバイスにより提供される最大持ち上げ力が、前記バランスマスにかかる重力の0.5倍未満である、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項11】
前記重力補償器が、前記移動方向の前記基準に対する前記バランスマスの可動範囲にある前記バランスマスに前記持ち上げ力を与えるように構成された、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項12】
前記重力補償器が、前記支持デバイスの前記移動方向の正の剛性に少なくとも部分的に対抗する前記移動方向の負の剛性を提供するように構成された、請求項1の位置決めデバイス。
【請求項13】
請求項1に記載の位置決めデバイスを備えたEビーム装置であって、
前記位置決めデバイスが、前記オブジェクトを電子光学系により生成されたeビームに対して変位させるように構成され、
前記eビーム装置が、eビーム検査装置、eビームリソグラフィ装置、又は、eビームを使用するその他の任意の装置である、Eビーム装置。
【請求項14】
請求項1に記載の位置決めデバイスを備えた、真空チャンバを有する装置であって、
前記位置決めデバイスが、前記真空チャンバに配置された、装置。
【請求項15】
請求項1に記載の位置決めデバイスを備えた装置であって、
前記装置が、リソグラフィ装置である、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2018年12月21日出願の欧州出願18215161.3の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、位置決めデバイス、剛性低減デバイス、及び電子ビーム(eビーム)装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 処理ツール、例えばeビーム検査ツールの内部で、オブジェクト、例えば基板を位置決めするのに位置決めデバイスが使用されることがある。ある実施形態では、位置決めデバイスは、オブジェクトを支持するための可動ステージを備える。ステージ及びステージに支持されたオブジェクトを、例えば基準に対して水平移動方向に移動させるためにアクチュエータが設けられることがある。基準とアクチュエータの間にバランスマス(balance mass)が配置されることがある。このようなバランスマスは、アクチュエータから基準への反力の伝達を低減するために設けられることがある。バランスマスは、バランスマスと基準の間に配置される支持デバイスを使用して基準に支持されることがある。
【0004】
[0004] バランスマスは、典型的にはステージの移動とは反対の移動方向に移動する。これは、ステージが例えば水平方向に沿って正の方向に移動するとき、バランスマスは、同じ水平方向の負の方向に移動することになることを意味する。さらに、バランスマスは、典型的にはステージの重量よりもかなり重い重量を有し、例えば5:1の重量比が適用されることがある。この重量差の結果として、バランスマスとステージの移動方向の変位量の間に逆の比率が生じ、依然として基準への反力の伝達を低減しながら、ステージに比べてバランスマスの変位量が小さくなる。例えば、バランスマスとステージの重量比が5:1であれば、移動方向の変位量比は1:5になる。
【0005】
[0005] バランスマスを支持するための支持デバイスは、基準とバランスマスの間に配置された複数の板バネを備えることがある。バランスマスの通常の動作中、板バネは、重力に打ち勝つためにバランスマスを垂直方向に支持するのに十分な垂直方向の剛性を提供する。板バネはさらに、板バネの剛性によりもたらされる、バランスマスの移動方向における板バネの外乱効果を減少させるために、ステージの水平移動方向に比較的低い剛性を有するように設計される。しかしながら、実際には、この移動方向の比較的低い剛性は、依然として位置決めデバイスの性能に悪影響を及ぼす剛性値を有する可能性がある。
【0006】
[0006] さらに、板バネの達成可能なストロークは、位置決めデバイスの通常動作中に生じる板バネの材料のストレスや疲労に起因して制限されることがある。このストレスや疲労はバランスマスの重量を減らすことによって軽減されることがあるが、このようにバランスマスの重量を減らすことで、ステージの移動に追従するために、より大きなストロークがバランスマスに必要になる。ストロークが大きくなると、本質的にストレスが高くなり、潜在的な疲労問題を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本発明の目的は、位置決めデバイスのステージの移動方向における有効剛性が低減されたバランスマスを有する位置決めデバイスを提供することである。
【0008】
[0008] ある実施形態では、オブジェクトを変位させるように構成された位置決めデバイスであって、
オブジェクトを支持するためのステージと、
ステージを基準に対して移動方向に移動させるためのアクチュエータと、
アクチュエータと基準の間に配置されて、アクチュエータから基準への反力の伝達を低減するためのバランスマスと、
基準とバランスマスの間に配置されて、バランスマスを支持するための支持デバイスと、 基準とバランスマスの間に作用して、バランスマスに持ち上げ力を与えて、支持デバイスによりバランスマスを支持するために提供される重力支持力を低減するための重力補償器と、
を備えた位置決めデバイスが提供される。
【0009】
[0009] 本発明のある態様によれば、オブジェクトを変位させるように構成された位置決めデバイスであって、
オブジェクトを支持するためのステージと、
ステージを基準に対して移動方向に移動させるためのアクチュエータと、
アクチュエータと基準の間に配置されて、アクチュエータから基準への反力の伝達を低減するためのバランスマスと、
基準とバランスマスの間に配置され、移動方向の第1の剛性を有する支持デバイスと、 基準とバランスマスの間に作用し、移動方向の第2の剛性を提供する剛性低減デバイスであって、第2の剛性が第1の剛性に少なくとも部分的に対抗する負の剛性である剛性低減デバイスと、
を備えた位置決めデバイスが提供される。
【0010】
[0010] 別の実施形態では、バランスマスと基準の間に配置された支持デバイスの第1の剛性を低減して、バランスマスと基準の間の移動方向の移動を可能にするための剛性低減デバイスであって、剛性低減デバイスが、移動方向の第2の剛性を提供し、第2の剛性が、第1の剛性に少なくとも部分的に対抗する負の剛性である剛性低減デバイスが提供される。
【0011】
[0011] ある実施形態では、請求項1から32のいずれかに記載の位置決めデバイスを備えたEビーム装置であって、位置決めデバイスが、オブジェクトを電子光学系により生成されたeビームに対して変位させるように構成されたEビーム装置が提供される。
【0012】
[0012] ある実施形態では、真空チャンバと、請求項1から32のいずれかに記載の位置決めデバイスと、を備えた装置であって、位置決めデバイスが真空チャンバに配置された装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013] 本発明は、類似の参照番号が類似の構造要素を表す、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明によって容易に理解されるであろう。
【0014】
図1】[0014] 図1A及び図1Bは、本発明のある実施形態に係るeビーム検査ツールの概略図である。
図2】[0015] 本発明のある実施形態に適用可能な電子光学系の概略図である。
図3】[0015] 本発明のある実施形態に適用可能な電子光学系の概略図である。
図4】[0016] 既知の位置決めデバイスの実施形態を概略的に示す。
図5】[0017] 本発明のある態様に係る位置決めデバイスの第1の実施形態を概略的に示す。
図6】[0018] 本発明のある態様に係る磁気重力補償器の実施形態の磁気アセンブリを概略的に示す。
図7a】[0019] 図6の磁気重力補償器を組み込んだ、本発明のある態様に係る位置決めデバイスの第2の実施形態を概略的に示す。
図7b】[0020] 本発明のある態様に係る位置決めデバイスの第2の実施形態の変形形態を概略的に示す。
図7c】[0021] 磁気シールドのある実施形態を概略的に示す。
図8】[0022] 本発明のある態様に係る位置決めデバイスの第3の実施形態を概略的に示す。
図9】[0023] 図8の位置決めデバイスの剛性低減デバイスの断面の上面図を概略的に示す。
図10】[0024] 図8の位置決めデバイスの剛性低減デバイスの断面の上面図を概略的に示す。
図11】[0025] 図8の実施形態の板バネ及び剛性低減デバイスの剛性プロファイルを概略的に示す。
図12】[0026] 本発明のある態様に係る位置決めデバイスの第4の実施形態を概略的に示す。
図13】[0027] 図12の位置決めデバイスの剛性低減デバイス及び磁気重力補償器の上面図を概略的に示す。
図14】[0028] 本発明のある態様に係る位置決めデバイスの第4の実施形態を概略的に示す。
図15】[0029] 図14の磁気重力補償器の実施形態の詳細を概略的に示す。
図16】[0030] 図14の磁気重力補償器の代替的な実施形態の詳細を概略的に示す。
【0015】
[0031] 本発明は、様々な変形及び代替的な形態をとりうるが、その具体的な実施形態は、図面に例として示され、本明細書に詳細に記載されることがある。図面は縮尺どおりではない場合がある。しかしながら、図面及びその詳細な説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、添付の請求項により規定される本発明の趣旨及び範囲に含まれる全ての変形、均等物及び代替物をカバーすることを意図していることが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0032] これより、本発明の様々な例示的な実施形態について、本発明の一部の例示的な実施形態が示されている添付図面を参照し、さらに充分に説明する。本明細書に開示する具体的な構造的及び機能的詳細は、本発明の例示的な実施形態を説明するための典型例に過ぎない。しかしながら、本発明は多くの代替形式で実施されてよく、本明細書に記載の実施形態のみに限定されるものと解釈すべきではない。
【0017】
[0033] したがって、本発明の例示的な実施形態は、様々な変更及び代替形態が可能であるが、その実施形態は例として図面に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本発明の例示的な実施形態を開示された特定の形態に限定する意図はなく、むしろ、本発明の例示的な実施形態は、本発明の範囲に含まれる全ての変形、均等物、及び代替物をカバーするものであることが理解されるべきである。図の記載全体を通して、同様の番号が同様の要素を示す。
【0018】
[0034] 本明細書で使用される「試料」という用語は、概して関心欠陥(DOI)が位置し得るウェーハ又は任意の他の試料を指す。「試料」及び「サンプル」という用語は本明細書では交換可能に使用されているが、ウェーハについての本明細書中で説明される実施形態は、任意の他の試料(例えば、レチクル、マスク、又はフォトマスク)のために構成及び/又は使用されることがあることを理解されたい。
【0019】
[0035] 本明細書で使用される「ウェーハ」という用語は、概して半導体又は非半導体材料で形成された基板を指す。そのような半導体又は非半導体材料の例としては、限定されるものではないが、単結晶シリコン、ヒ化ガリウム、及びリン化インジウムが挙げられる。そのような基板は、一般的に半導体製造設備内で見られる、及び/又は処理されることがある。
【0020】
[0036] 本発明では、「軸方向の」は、「装置、コラム又はレンズなどのデバイスの光軸方向の」を意味し、一方「半径方向の」は、「光軸に対して垂直な方向の」を意味する。光軸は通常、カソードが始点で試料が終点である。光軸は常に全ての図面中のz軸を指す。
【0021】
[0037] クロスオーバーという用語は、電子ビームが集束される点を指す。
【0022】
[0038] 仮想光源という用語は、カソードから放出された電子ビームを「仮想」光源まで遡れることを意味する。
【0023】
[0039] 本発明に係る検査ツールは、荷電粒子源、特にSEM、eビーム検査ツール、又はEビーム直接描画装置(E-Beam Direct Writer)(さらにEBDWとも呼ばれる)に適用可能なeビーム源に関連する。eビーム源は、この技術分野ではe銃又は電子銃と呼ばれることもある。
【0024】
[0040] 図面について、図は正確な縮尺率ではないことに留意されたい。特に、図の一部の要素のスケールは大いに誇張され、その要素の特徴を強調する場合がある。例えば、層及び領域の厚さは明確さのため誇張されることがある。図は同じ縮尺率ではないことにも留意されたい。2つ以上の図に示される、同様に構成され得る要素は、同じ参照番号を使用して示されている。
【0025】
[0041] 図面において、各コンポーネントの及び全てのコンポーネント間の相対的な寸法は、明確さのため誇張されることがある。以下の図面の記載内で、同一又は同様の参照番号は同一又は同様のコンポーネント又はエンティティを指し、個々の実施形態に関する相違点のみが記載される。
【0026】
[0042] 図1A及び図1Bは、本発明のある実施形態に係る電子ビーム(eビーム)検査(electron beam (e-beam) inspection)(さらにEBIとも呼ばれる)システム100の上面図及び断面図を概略的に示している。示されている実施形態は、筐体110と、検査対象のオブジェクトを受け取り、検査済みのオブジェクトを出力するためのインターフェイスとしての役割を果たす1対のロードポート120と、を備える。示されている実施形態はさらに、オブジェクトを取り扱う及び/又はロードポートとの間で輸送するように構成された、機器フロントエンドモジュール(equipment front end module)130(さらにEFEMとも呼ばれる)として示されたオブジェクト搬送システムを備える。示されている実施形態では、EFEM130は、ロードポート間でオブジェクトを輸送するように構成されたハンドラロボット140と、EBIシステム100のロードロック150と、を備える。ロードロック150は、筐体110の外側及びEFEM内に生じる大気条件と、EBIシステム100の真空チャンバ160内に生じる真空条件と、の間のインターフェイスである。示されている実施形態では、真空チャンバ160は、eビームを検査対象のオブジェクト、例えば半導体基板又はウェーハに投影するように構成された電子光学系170を備える。EBIシステム100はさらに、オブジェクト190を電子光学系170により生成されたeビームに対して変位させるように構成される位置決めデバイス180を備える。
【0027】
[0043] ある実施形態では、位置決めデバイスは、通常動作中にオブジェクトの実質的に水平な面における位置決めを行うためのXYステージや、通常動作中にオブジェクトの垂直方向の位置決めを行うためのZステージなどの複数のポジショナのカスケード接続された構成を含むことがある。
【0028】
[0044] ある実施形態では、位置決めデバイスは、オブジェクトの比較的長い距離の粗動位置決めを行うように構成された粗動ポジショナと、オブジェクトの比較的短い距離の微動位置決めを行うように構成された微動ポジショナと、の組み合わせを含むことがある。
【0029】
[0045] ある実施形態では、位置決めデバイス180はさらに、EBIシステム100により行われる検査プロセス中にオブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルを備える。このような実施形態では、オブジェクト190は、静電クランプなどのクランプを用いてオブジェクトテーブルにクランプされることがある。このようなクランプは、オブジェクトテーブルに一体化されることがある。
【0030】
[0046] 本発明によれば、位置決めデバイス180は、オブジェクトテーブルを位置決めするための第1のポジショナと、第1のポジショナ及びオブジェクトテーブルを位置決めするための第2のポジショナと、を備える。
【0031】
[0047] 図2は、本発明に係るeビーム検査ツール又はシステムに適用可能な電子光学系200のある実施形態を概略的に示している。電子光学系200は、電子銃210とも呼ばれるeビーム源と、結像システム240と、を備える。
【0032】
[0048] 電子銃210は、電子源212と、サプレッサ214と、アノード216と、1セットのアパーチャ218と、コンデンサ220と、を備える。電子源212は、例えばショットキーエミッタであることがある。より具体的には、電子源212は、セラミック基板と、2つの電極と、タングステンフィラメントと、タングステンピンと、を備える。2つの電極はセラミック基板と平行に固定され、2つの電極の反対側はタングステンフィラメントの2つの端部にそれぞれ接続される。タングステンをわずかに屈曲させてタングステンピンを配置するための先端を形成する。次に、ZrO2をタングステンピンの表面に塗布し、溶融してタングステンピンを覆う一方、タングステンピンの先端を覆わないように1300℃まで加熱する。溶融したZrO2は、タングステンの仕事関数を低下させ、放出された電子のエネルギーバリアを減少させ、結果として電子ビーム202のより効率的な放出を可能にする。次に、サプレッサ214に負電圧を印加することによって電子ビーム202が抑制される。これにより、大きい広がり角を有する電子ビームは一次電子ビーム202に抑制され、その結果、電子ビーム202の輝度が高められる。アノード216の正電荷によって、電子ビーム202を抽出することができ、次に電子ビーム202のクーロン強制力が、アパーチャの外側の不要な電子ビームを除去するための異なるアパーチャサイズを有する調節可能なアパーチャ218を使用することによって制御されることがある。電子ビーム202を集光するために、拡大も行うコンデンサ220を電子ビーム202に適用する。図2に示すコンデンサ220は、例えば電子ビーム202を集光可能な静電レンズであることがある。一方、コンデンサ220は磁気レンズであってもよい。
【0033】
[0049] 図3に示す結像システム240は、ブランカ248と、1セットのアパーチャ242と、検出器244と、4セットの偏向器250、252、254、及び256と、1対のコイル262と、ヨーク260と、フィルタ246と、電極270と、を備える。電極270は、電子ビーム202を遅延及び偏向させるのに使用されるとともに、上方磁極片とサンプル300との組み合わせによる静電レンズ機能をさらに有する。さらに、コイル262及びヨーク260は磁気対物レンズを構成する。
【0034】
[0050] 比較的安定した電子ビーム202を生成するために、通常、電子源は比較的長い時間加熱される。この安定化期間中に電子が何らのサンプルに衝突するのを回避するために、ブランカ248を電子ビーム202に適用して、電子ビーム202をサンプルから離れるように一時的に偏向させる。
【0035】
[0051] 偏向器250及び256は、比較的大きい視野を得るために電子ビーム202を走査するために適用され、偏向器252及び254は、比較的小さい視野を得るために電子ビーム202を走査するのに使用される。全ての偏向器250、252、254、及び256は、電子ビーム202の走査方向を制御することがある。偏向器250、252、254、及び256は、静電偏向器又は磁気偏向器であることがある。通常動作中、ヨーク260の開口部はサンプル300の方を向き、磁界をサンプル300に浸透させる。
【0036】
[0052] サンプル300に電子ビーム202を照明することによって、サンプル300の表面から二次電子が放出される。二次電子はフィルタ246によって検出器244に向けられることがある。
【0037】
[0053] 図4は、位置決めデバイス180のある実施形態を概略的に示している。この位置決めデバイス180は、オブジェクト190、例えば基板又はウェーハを支持するように構成されたステージ181を備える。ステージ181、それと共にオブジェクト190を、基準10に対して水平移動方向yに移動させるためにアクチュエータ182が設けられる。
【0038】
[0054] ステージ181は、リニア又は平面ベアリング185、例えば、永久磁石や電磁石を備えた磁気ベアリング、エアベアリング又はローラベアリングによって支持される。平面ベアリング185は、移動方向yの剛性がないか又は比較的非常に低い状態で、ステージ181を垂直方向(z方向)に支持する。
【0039】
[0055] アクチュエータ182から基準10への反力の伝達を低減するために、アクチュエータ182と基準10の間にバランスマス183が配置される。基準10は、例えば、eビーム検査ツール100のベースフレーム又はメトロロジフレームなどのフレームである。
【0040】
[0056] ステージ181がアクチュエータ182により作動されてステージ181を正のy方向に(例えば、図4中の右方に)移動させるとき、バランスマス183は、アクチュエータ182の反力によって、負のy方向に(例えば、図4中の左方に)移動することになる。典型的には、バランスマス183の重量はステージ181の重量よりかなり大きく、例えば重量比が5:1である。この重量差の結果として、バランスマス183の負のy方向の変位量は、ステージ181の正のy方向の変位量よりかなり小さくなる。例えば、バランスマス183の重量とステージ181の重量の重量比が5:1であれば、バランスマス183の変位量とステージ181の変位量の変位量比は1:5になる。
【0041】
[0057] バランスマス183は、基準10とバランスマス183の間の複数の板バネ184を備えた支持システムによって支持される。複数の板バネ184は、バランスマス50を垂直z方向に支持するように構築された弾性誘導デバイスである。すなわち、複数の板バネ184は、バランスマス183にかかる重力に対抗するための重力支持力を提供する。板バネ184は、通常動作中の垂直z方向の持ち上げ力を提供するために、垂直方向の適切な剛性を有する。
【0042】
[0058] 板バネ184は、バランスマス183の移動方向yへの移動に対応するために、バランスマス183の移動方向yへの変位を許容しなくてはならない。板バネ184はさらに、バランスマス18の移動方向yの比較的低い剛性を有するように設計される。この板バネ184の水平移動方向の比較的低い剛性は、アクチュエータ182の移動方向への最小反力を基準10に伝達するために提供される。しかしながら、バランスマス183の重量を支えるために、板バネ184は、バランスマス183を安定的に支持するためにある程度の移動方向yの剛性を有していなければならない。
【0043】
[0059] 移動方向yの変位量を乗じたy方向の剛性は、バランスマス183に静的外乱力をもたらす。必要な場合に、バランスマス183を可動範囲内のある位置に保つために、具体的には、バランスマス183が、このような板バネ184の静的外乱力の結果として中心位置に戻らないようにするために、バランスマスアクチュエータ70が設けられることがある。バランスマスアクチュエータ70は、典型的には、バランスマス183の移動方向yの剛性を有しないか又は剛性が非常に低いアクチュエータ、例えばローレンツアクチュエータである。
【0044】
[0060] 板バネ184のy方向の剛性は、バランスマス183の重量を減らす場合に低下することがある。しかしながら、このようなバランスマス183の重量の減少により、ステージ181の変位に反応したより大きい変位が必要になる。これによって、ストロークが大きくなることで、同様に板バネ184に高いストレスや潜在的な疲労がもたらされることになる。
【0045】
[0061] したがって、バランスマス183の重量を減らす必要なく、バランスマス183の移動方向におけるバランスマス183の支持デバイスの有効剛性を低減させたいという要求がある。
【0046】
[0062] 図5は、本発明のある態様に係る位置決めデバイス180の第1の実施形態を示している。図5の位置決めデバイス180では、2つの重力補償器20が設けられる。重力補償器20は、板バネ184により支持する必要があるバランスマス183の重量を減らすように構成される。図5の位置決めデバイス180の重力補償器20は、基準10とバランスマス183の間に配置されたバネ21を備えた機械的重力補償器20である。バネ21は垂直方向に伸びる。バネ21のそれぞれの上端は、ヒンジ22において基準10、具体的には、基準10のバランスマス183より高い位置に位置する部分に接続される。バネ21のそれぞれの下端は、ヒンジ23においてバランスマス183に接続される。バネ21は、バランスマス183を垂直上方向に、すなわち正のz方向に引っ張るようにあらかじめ張力がかけられている。バネ21により及ぼされた垂直上方向の引張力により、バランスマスに持ち上げ力が与えられ、その結果、バランスマス183の全体的な質量を維持しながら、板バネ184により支える必要があるバランスマス183の重量が大幅に減少する。
【0047】
[0063] 結果として、バランスマス183を安定的に支持するために最低限必要な板バネ184の垂直剛性は、図4の実施形態において必要とされる垂直剛性よりも大幅に低くなり、したがって、板バネ184は、垂直方向のより低い剛性を提供するように設計されることがある。その結果、バランスマス183の移動方向yにおける板バネ184の剛性も低くなることがある。このようにバランスマス183の移動方向における板バネ184の剛性が低くなると、ステージ181の作動に反応したバランスマス183の移動がより自在になり、アクチュエータ182から基準10への反力の伝達が少なくなる。バランスマス183の重量が図4の実施形態と同じであり得るため、ステージ181の移動に追従するための最大変位量を大きくする必要はない。
【0048】
[0064] ヒンジ22、23の使用によって、バネ21の水平剛性は実質的にゼロになる。バネ21の長さはまた比較的長い。したがって、バネ21は、バランスマス183の可動範囲内において実質的な水平剛性を導入しない。
【0049】
[0065] バネ21の結合体により提供される持ち上げ力は、バランスマス183の重量から生じる重力と実質的に同じであり得るため、バランスマス183の重量は主にバネ21によって支持される。しかしながら、バネ21の持ち上げ力は、バランスマス183にかかる重力と全く同じである必要はない。なぜなら、バランスマス183にかかる重力とバネ21により提供される持ち上げ力の差である剰余力は、板バネ184により与えられる重力支持力によって打ち消されることがあるためである。ただし、この剰余力はバランスマス183にかかる重力よりもかなり低くなる。
【0050】
[0066] 例えば、バネ21の結合体により提供される持ち上げ力がバランスマス183にかかる重力の90%~110%である場合、重力の最大10%が板バネ184によって吸収されるだけでよい。板バネ184により吸収されるこの力は、バネ21がバランスマス183にかかる重力の100%よりも小さい持ち上げ力を提供する場合は上向きの力であることがあり、バネ21がバランスマス183にかかる重力の100%よりも大きい持ち上げ力を提供する場合は下向きの力であることがある。
【0051】
[0067] ある実施形態では、複数の板バネ184が結合して提供しなければならない最大押圧/引張力は、バランスマス183の重量によりバランスマス183にかかる重力の0.5倍未満、例えば、バランスマス183の重量によりバランスマス183にかかる重力の0.08~0.2倍など、バランスマス183の重量によりバランスマス183にかかる重力の0.05~0.4倍の範囲にある。
【0052】
[0068] 代替的な実施形態では、バランスマス183に持ち上げ力を提供するのに他のタイプの機械的重力補償器が使用されることがある。例えば、図5の実施形態では、バランスマス183に持ち上げ力を提供するためにバランスマス183を上方に引っ張るバネ21が設けられる。代替的に、バランスマス183に持ち上げ力を提供するためにバランスマス183を上方に押圧するバネ又はその他の機械的重力補償器が設けられることもある。
【0053】
[0069] 図6は、磁気重力補償器の一部として使用され得る磁気アセンブリ30の実施形態を示している。磁気アセンブリ30は、隣り合って配置された3つの下方永久磁石31と3つの上方永久磁石32とを含む。各上方永久磁石32は、下方永久磁石31の1つの上に配置される。下方永久磁石31及び上方永久磁石32の隣接する磁石は、垂直方向、すなわちz方向に反対の磁化を有する。磁気アセンブリ30の個々の磁石31、32の磁化方向は、図6の個々の磁石31、32の矢印によって示される。
【0054】
[0070] 図7aは、それぞれが図6に示す磁気アセンブリ30を備えた、位置決めデバイス180用の2つの磁気重力補償器35を示している。磁気重力補償器35は、基準10に装着された下方永久磁石31と、バランスマス183に装着された上方永久磁石32と、をそれぞれ備える。上方永久磁石32とバランスマス183の間に、磁気重力補償器35の磁界を位置決めデバイス180内の他の磁界、例えばアクチュエータ182の磁界から遮蔽するための磁気シールド37が設けられる。磁気シールド37はまた、電子光学系200の電子ビーム202(図2参照)などの他の要素から磁気重力補償器35の磁界を少なくとも部分的に遮蔽するのに使用されることがある。必要に応じて、磁気重力補償器を他の磁界から遮蔽したり、この逆を行ったりするための別の磁気シールドが設けられることがある。磁気シールドは、ステージ181、バランスマス183、基準10、又はその他の任意の適切な場所に装着されることがある。
【0055】
[0071] 周囲空間、特に磁界に敏感な領域(例えば、動きが磁界に敏感な電子ビームが照射されるオブジェクト190の上又は周りの領域、電子光学系170の周りの領域、電子ビームが通過する電子光学系170とオブジェクト190の間の領域)に磁界が漏れるのを防ぐ又は減らすために、重力補償器及び/又はあらゆる磁気コンポーネント(例えば、アクチュエータ182、バランスマスアクチュエータ70)により生成される磁界を遮蔽するためのさらに別の磁気シールドが設けられることがある。図7bは、このようなさらに別の磁気シールド38の実施形態を示している。さらに別の磁気シールド38は、バランスマス183の中/上に配置される、重力補償器35の永久磁石31、32、及び/又はアクチュエータ182及びバランスマスアクチュエータ70の永久磁石182.1、70.1を取り囲む。さらに別の磁気シールド38は、バランスマス183の移動を可能にするのに必要なスリット及び/又は開口部を備えることがある(例えば、さらに別の磁気シールド38のスリット又は開口部は、バランスマス183の動き及び板バネ184の変形を可能にするために板バネ184の周りに配置されることがある)。さらに別の磁気シールド38の材料は、材料がさらに別の磁気シールド38内の磁束密度レベル(=さらに別の磁気シールド38の位置における磁束密度レベル)で高い比透磁率を有するように選ばれることがある。さらに別の磁気シールド38は、さらに別の磁気シールドの透磁率が高い場合により多くの磁界を遮断する。さらに別の磁気シールド38内の磁束密度レベルに依存して、異なる材料及び/又は材料の組成が用いられることがある。ある実施形態では、材料は鉄-ニッケル合金であることがある。このようなさらに別の磁気シールドを設けるという同じ概念が、重力補償器35がバランスマスの下方に配置される図7aの構成などの他の構成に適用可能であることは当業者にとって明らかなはずである。
【0056】
[0072] さらに別の磁気シールド38は、1つ以上の磁気シールドを含むことがある。ある実施形態では、さらに別の磁気38は、内側磁気シールド38.1及び外側磁気シールド38.2を備える。内側磁気シールド38.1は、バランスマス183の中/上に配置される、重力補償器35の永久磁石31、32、及び/又はアクチュエータ182及びバランスマスアクチュエータ70の永久磁石182.1、70.1を取り囲む。外側磁気シールド38.2は、ギャップ38.3を介して内側磁気シールド38.1を取り囲む(図7c)。永久磁石31、32、182.1、70.1の磁界の大部分は、内側磁気シールド38.1e38.1によって内側磁気シールド38.1の外側に向かって遮蔽される。次に、ギャップ38.3(例えば、本明細書の実施形態における真空、又は別の可能性のある実施形態における空気)の高い抵抗率によって、漏れた磁界は外側磁気シールド38.2に引き付けられ、その結果、外側磁気シールド38.2によって遮蔽される。ギャップ38.3はまた、非強磁性材料、比透磁率が低い(例えば、内側及び外側磁気シールド38.1、38.2の透磁率よりも低い)材料、又は比透磁率が1に近い又は実質的に等しい材料によって占められることがある。内側及び外側磁気シールド38.1、38.2に異なる材料が選ばれることがある。内側又は外側磁気シールド38.1、38.2用の材料は、材料がそれぞれ内側又は外側磁気シールド38.1、38.2の位置の磁束密度レベルで高い比透磁率を有するように選ばれることがある。内側シールド38.1用の材料は、内側磁気シールド38.1内の磁束密度レベル(=内側磁気シールド38.1の位置における磁束密度)で高い比透磁率を有する材料が選ばれることがある。外側磁気シールド38.2用の材料は、内側磁気シールド38.1用の材料とは異なる材料が選ばれることがある。外側磁気シールド38.2用の材料は、外側磁気シールド38.2内の磁束密度レベル(=外側磁気シールド38.2の位置における磁束密度レベル)で高い比透磁率を有する材料が選ばれることがある。内側及び外側磁気シールド38.1、38.2の材料は、組成比が異なる同じ合金、例えば、異なる組成比を有する鉄-ニッケル合金であることがある。
【0057】
[0073] 磁気アセンブリ30は、下方永久磁石31と上方永久磁石32の間の反発力を、この反発力がバランスマス183にかかる重力に対抗するためのバランスマス183に与えられる持ち上げ力の役割を果たすように及ぼすように設計される。通常動作では、磁気アセンブリ30は、バランスマス183の移動方向yを含む水平方向に実質的にいかなる力も及ぼすことなく、バランスマス183に垂直方向(z方向)の持ち上げ力を及ぼすように設計される。これにより、磁気アセンブリ30は、実質的に水平方向の剛性を与えることなく垂直方向の高い(磁気)剛性を提供し得る磁気重力補償器35の役割を果たす。バランスマス183にかかる重力のかなりの部分が磁気重力補償器35によって支えられ得るため、板バネ184は、大幅に低い垂直及び水平剛性を有するように設計されることがある。
【0058】
[0074] 例えば、磁気重力補償器35の結合体により与えられる持ち上げ力は、バランスマス183にかかる重力の90%~110%であることがある。この場合、重力の最大10%が板バネ184によって吸収されるだけでよい。板バネ184により吸収されるこの力は、磁気アセンブリ30の結合体がバランスマス183にかかる重力の100%よりも小さい持ち上げ力を提供する場合は上向きの力であり、磁気アセンブリ30の結合体がバランスマス183にかかる重力の100%よりも大きい持ち上げ力を提供する場合は下向きの力であることがある。
【0059】
[0075] ある実施形態では、複数の板バネ184が結合して提供しなければならない最大の力は、バランスマス183にかかる重力の0.5倍未満、例えば、バランスマス183にかかる重力の0.08~0.2倍など、バランスマス183にかかる重力の0.05~0.4倍の範囲にあることがある。
【0060】
[0076] 複数の板バネ184のより低い水平剛性のさらなる利点は、バランスマス183の中心からずれた位置から生じる外乱力に対抗するためにバランスマスアクチュエータ70により必要とされ得る作動力もまた実質的に低くなることがあることである。結果として、このようなバランスマスアクチュエータ70の熱放散もまた実質的に低くなることがある。
【0061】
[0077] 磁気重力補償器35の使用によって、その長さに対して大きい相対変位を可能にする板バネを設計することが可能である。例えば、バランスマス183の中心位置から移動方向yへの最大許容可能変位は、板バネ184の有効長の少なくとも0.15倍、例えば板バネの有効長の0.2倍であることがある。板バネの有効長は、yz平面で見て、バランスマス183に対して固定された板バネのある点と、基準10に対して固定された板バネのある点と、の間の距離である。
【0062】
[0078] 以上で説明したように、バランスマス183は、アクチュエータ182から基準10への反力の伝達を妨げる又は少なくとも低減するために、ステージ181の移動に反応して、ステージ181の移動方向とは反対方向に移動するように構築される。バランスマスの移動方向への移動の結果として、上方永久磁石32は、下方永久磁石31に対して移動方向(y方向)の異なる水平位置に位置付けられることがある。下方永久磁石32の移動方向yの長さは、図7aに示した実施形態の磁気重力補償器35が、バランスマス183の可動範囲内において、基準10の位置に対するバランスマス183の水平位置に実質的に依存せずにバランスマス183に持ち上げ力を及ぼすように、上方永久磁石の移動方向yの長さよりも大きい。磁気重力補償器35により提供される持ち上げ力は、例えば、バランスマス183の可動範囲内において、持ち上げ力が20パーセントの最大偏差、例えば10パーセントの最大偏差を有するときの、基準10に対するバランスマス183のy方向の位置に実質的に依存しないと見なされることがある。
【0063】
[0079] ある実施形態では、移動方向に対して垂直な水平方向、この例ではx方向に、バランスマス183のある程度の変位があることがある。この場合、図7aに示した実施形態の磁気重力補償器35はまた、この方向の可動範囲内において、移動方向に対して垂直な水平方向(x方向)の基準10の位置に対するバランスマス183の水平位置に実質的に依存せずに、バランスマス183に持ち上げ力を及ぼすように設計されることがある。磁気重力補償器35により提供される持ち上げ力は、例えば、バランスマス183のx方向の可動範囲内において、持ち上げ力が20パーセントの最大偏差、例えば10パーセントの最大偏差を有するときの、基準10に対するバランスマス183のx方向の位置に実質的に依存しないと見なされることがある。
【0064】
[0080] 例えば、図7aの位置決めデバイス180は、磁気重力補償器35の効果が磁力に基づくため、真空環境40、例えば内部の圧力が比較的低い真空チャンバに配置されることがある。
【0065】
[0081] 図7aの磁気重力補償器35は、バランスマス183に、バランスマス183を上方に押圧する反発力を及ぼすように設計される。代替的な実施形態では、バランスマスを上方に引っ張るための引力をバランスマスに及ぼすために、1つ以上の磁気重力補償器が設けられることがある。このような実施形態では、磁気重力補償器35は、例えば図5に示すヒンジ22、23及びバネ21に取って代わることがある。
【0066】
[0082] 図8は、本発明のある態様に係る別の実施形態による位置決めデバイス180を開示している。位置決めデバイスは、ステージ181と、アクチュエータ182と、板バネ184により基準10に支持されるバランスマス183と、を備える。図4の位置決めデバイスについて説明したように、バランスマス183の重量は、バランスマス183にかかる重力に対抗するための持ち上げ力をバランスマス183に及ぼすために、板バネ184が垂直方向の最小剛性を有することを要求する。バランスマス183の重量とステージ181の重量の重量比、及びステージ181の所望の変位量は、板バネ184が可能にしなければならないバランスマス183と基準10の間の最大変位を決定する。板バネ184の設計は、垂直方向及び水平方向の最小剛性を有するように最適化される。以上で説明したように、板バネ184は、バランスマス183を安定的に支えるために、バランスマス183の水平移動方向(y方向)のある程度の剛性も必要とするであろう。この板バネ184の水平移動方向(y方向)の剛性は通常、バランスマス183が中心位置から移動したときに、バランスマス183をバランスマス183の中心位置に押し戻す力をもたらすことになる。
【0067】
[0083] 図8に示した実施形態では、基準10とバランスマス183の間に作用して、板バネ184の水平剛性に対抗するための水平方向の負の剛性を提供する剛性低減デバイス60が設けられる。
【0068】
[0084] 剛性低減デバイス60は、基準10に装着された永久磁石61と、バランスマス183と接触するプレートサポート63が装着された、磁性材料又は磁化可能材料のプレート62と、を備える。代替的な実施形態では、永久磁石は基準10に装着されることがあり、磁性材料又は磁化可能材料のプレートは、例えばプレートサポートを用いてバランスマス183に装着されることがある。
【0069】
[0085] 図9は、剛性低減デバイス60の永久磁石61及びプレート62の断面の上面図A-Aを示している。強磁性材料などの磁性材料又は磁化可能材料から作られた板状体であるプレート62は、永久磁石61が配置される開口部64を備える。永久磁石61は、開口部64内を移動方向(y方向)、及び移動方向に対して垂直な水平方向(x方向)に移動することができる。開口部64内における永久磁石61の可動範囲は、アクチュエータ182により作動されたときのステージ181の移動の結果であるバランスマス183による移動と一致する。
【0070】
[0086] 図8及び図9では、バランスマス183がその可動範囲の中心位置にあり、永久磁石61も開口部64の中心位置に配置されている。開口部64は、この開口部64内の永久磁石61の中心位置において、永久磁石61の磁力とプレート62の磁力とが移動方向yの正及び負の方向で実質的に等しくなるように設計及び配置されている。換言すれば、永久磁石61とプレート62の間に作用する磁力は互いに補償し合う。
【0071】
[0087] 図10は、プレート62の開口部64内の中心位置から(例えば、図10に示すように正のy方向に)移動した後の永久磁石61を示している。この移動は、バランスマス183の中心位置からの移動から生じる。この開口部64に対する永久磁石61の非中心位置において、永久磁石61とプレート62の間の磁力はもはや互いに補償し合わなくなる。例えば、永久磁石61の一方の側(例えば、図10中の右側)において、永久磁石61とプレート62の間の距離が短くなり、永久磁石61とプレート62の間の引き合う磁力が大きくなり、一方、永久磁石61の反対側(例えば、図10中の左側)において、永久磁石61とプレート62の間の距離が長くなり、永久磁石61とプレート62の間の引き合う磁力が小さくなる。図10に示した位置における永久磁石61とプレート62の間のこのような引き合う磁力の不均衡の結果として、永久磁石61は、実質的に永久磁石61とプレート62の間の磁力によって正のy方向に(図10中の右方に)引っ張られることになる。この永久磁石61にかかる引張力は、バランスマス183を移動方向yの反対の負の方向に(図10中の左方に)開口部64の永久磁石61の中心位置に押し戻すことになる板バネ184のy方向の水平剛性に対抗するのに用いられ得る負の剛性として機能する。
【0072】
[0088] この実施形態では、剛性低減デバイス60により提供される負の剛性は、板バネ184の剛性に対抗するように構成される。負の剛性は、必ずしも材料の剛性によって生成されるわけではない。
【0073】
[0089] 板バネ184の剛性、及び剛性低減デバイス60により提供される負の剛性は、バランスマス183のサポートの結合剛性を提供する。この結合剛性は、板バネ184の水平剛性よりも低い剛性である。結果として、板バネ184の水平剛性の外乱効果は大幅に減少することがある。
【0074】
[0090] 図11は、板バネ184の第1の剛性プロファイルSLSと、剛性低減デバイス60の第2の剛性プロファイルSRDと、第1の剛性プロファイルSLS及び第2の剛性プロファイルSRDの剛性を結合した結合剛性プロファイルCSPと、を示している。剛性プロファイルは、中心位置(P=0)に対する移動方向yのバランスマス183の位置Pと、結果として生じるバランスマス183に作用する移動方向yの力Fとの関係を示す。結果として生じる力Fが、Fがこの文脈において、特に前の段落を考慮して正の値を有する場合は引張力であることは当業者にとって明らかなはずである。ある実施形態では、結合剛性プロファイルCSPは、板バネ184の正の剛性と剛性低減デバイス60の負の剛性との結合が安定したシステムをもたらすように、小さい正の剛性を提供する。
【0075】
[0091] 板バネ184の第1の剛性プロファイルSLS及び剛性低減デバイス60の第2の剛性プロファイルSRDは、線形剛性プロファイルである。剛性低減デバイス60の第2の剛性プロファイルSRDが、所定の結合剛性プロファイルCSPを得るために板バネ184の第1の剛性プロファイルSLSに適応されることは明らかであろう。剛性低減デバイス60の第2の剛性プロファイルSRDは、所望の結合剛性プロファイルCSPを得るために線形又は非線形となるように設計されることがある。剛性低減デバイス60の第2の剛性プロファイルSRDは、プレート62の開口部64の形状及びサイズ、永久磁石61の形状及びサイズ、及び永久磁石61の磁化によって決定される。
【0076】
[0092] 例えば、第1の剛性プロファイルSLSは、非線形剛性プロファイル、例えば、バランスマス183の中心位置から次第に増加する剛性を有する剛性プロファイルであることがある。第2の剛性プロファイルSRDは、線形の結合剛性プロファイルCSPを得るための反対方向の対応する非線形剛性プロファイルを提供することがある。別の実施形態では、結合剛性プロファイルCSPは非線形剛性プロファイルであることがある。
【0077】
[0093] x方向、すなわち、(主)移動方向yに対して垂直な水平方向の板バネ184の正の剛性に対抗するために、剛性低減デバイス60はまた、x方向の負の剛性を提供するように構成されることがある。バランスマス183が、図8及び図9に示すように、そのx方向の可動範囲の中心位置にあるとき、永久磁石61もまた、開口部64のx方向の中心位置にあることになる。開口部64は、この開口部64内の永久磁石61の中心位置において、永久磁石61とプレート62の間のx方向の正及び負の方向の磁気引力が同じ又は少なくとも実質的に同じになるように設計及び配置されることがある。換言すれば、永久磁石61とプレート62の間にx方向に作用する磁力は、永久磁石61がx方向に見て開口部64の中心位置に配置されるときに互いに補償し合う。
【0078】
[0094] 開口部64の永久磁石61が中心位置からx方向に移動するとき、永久磁石61を中心位置から実質的に引き離すことになる、永久磁石61とプレート62の間に作用する磁力間に不均衡が生じることになる。したがって、永久磁石61が図9に示す中心位置から正のx方向に(図10の上方に)移動するとき、永久磁石61とプレート62の間に作用する磁力は共に、永久磁石61に正のx方向の引張力を及ぼすことになる。この永久磁石61にかかる引張力は、バランスマス183をx方向の反対方向に(図10の下側に)開口部64の永久磁石61の中心位置に押し戻すことになる、板バネ184のx方向の水平剛性に対抗する負の剛性として機能する。よって、x方向においても、負の剛性が剛性低減デバイス60によって提供されることがある。
【0079】
[0095] 永久磁石61の形状及びその磁化、並びにプレート62の形状及びその開口部64は、所望の負の剛性のプロファイルを提供するように選択される。ある実施形態では、この所望の負の剛性のプロファイルは、バランスマス183の寄生移動に適応されることがあり、その結果、寄生移動から生じるx方向の水平剛性は、剛性低減デバイス60によって少なくとも部分的に補償される。
【0080】
[0096] 剛性低減デバイス60の設計において、剛性低減デバイス60により許容される可動範囲、すなわち開口部64の永久磁石61の可動範囲は、一方又は両方の水平方向のバランスマス183の所望の可動範囲に適応されることになる。
【0081】
[0097] 図8に示した実施形態では、位置決めデバイス180は、真空環境40、例えば内部の圧力が比較的低い真空チャンバに配置される。剛性低減デバイス60の効果は磁力に基づいているため、剛性低減デバイス60は実質的に真空環境40に適用されることがある。さらに、剛性低減デバイス60の実施形態はさらに、剛性低減デバイス60の磁界をその周囲から遮蔽する又は減らすための磁気シールド(図示されていないが、図7aの磁気シールド37と同様である)を備えることがある。
【0082】
[0098] 図8には、バランスマスアクチュエータ70が示されている。このようなバランスマスアクチュエータ70は、必要に応じて、特にバランスマス183が板バネ184の水平剛性の結果としてバランスマス183の中心位置に戻らないようにするために、バランスマス183を可動範囲内のある位置に保つために設けられることがある。ある実施形態では、バランスマスアクチュエータ70は、剛性低減デバイスとしての役割も果たすように設計されることがあり、バランスマスアクチュエータは、板バネ184の移動方向の剛性から生じる静的外乱力に対抗する作動力を能動的に提供するように構成される。
【0083】
[0099] 図12は、磁気重力補償器35の磁気アセンブリ30の上方永久磁石32が、バランスマス183の移動方向yの水平剛性を減らすための剛性低減デバイスの永久磁石としても使用される、本発明のある態様に係る位置決めデバイス180の実施形態を示している。磁気アセンブリ30は、図6に示した磁気アセンブリに対応する。
【0084】
[00100] 図13は、磁気アセンブリ30の上方永久磁石32の高さにおける位置決めデバイス180の断面B-Bを示している。
【0085】
[00101] 磁気アセンブリ30の下方永久磁石31は基準10に装着され、上方永久磁石32はバランスマス183に装着される。磁気アセンブリ30は磁気シールド37の下方に配置される。下方永久磁石31は、上方永久磁石32と、これと共にバランスマス183と、に持ち上げ力を及ぼし、使用中に、バランスマス183により垂直方向に板バネ184に与えられる重力を減少させる。バランスマス183の重量のかなりの部分が磁気アセンブリ30により形成された磁気重力補償器によって支えられることになるため、板バネ184は大幅に低減された垂直剛性を有するように設計されることがある。結果として、バランスマス183の移動方向yにおける板バネ184の水平剛性も低減されることがある。これは、板バネ184の水平剛性から生じる外乱力を実質的に低下させることになる。同様に、外乱力に対抗するための、アクチュエータ70により提供される作動力も低くなり、アクチュエータ70の熱放散の低下をもたらすことがある。
【0086】
[00102] 板バネ184の水平剛性の効果をさらに減らすために、上方永久磁石32は、プレートサポート63によって基準10に装着されるプレート62の開口部64に配置されることがある。上方永久磁石32及びプレート62は、剛性低減デバイスの役割を果たす。プレート62の開口部64は、図12及び図13に示すように、(バランスマス183に取り付けられた)上方永久磁石32の中心位置において、上方永久磁石32とプレート62の間に有効な磁力が与えられないように設計される。換言すれば、上方永久磁石32とプレート62の間に作用する磁力は互いに補償し合う。
【0087】
[00103] 開口部64の上方永久磁石32が中心位置から、例えば正のy方向に移動する場合、上方永久磁石32は、開口部64の一縁部により近づいて、開口部64の反対側の縁部からより遠ざかることになる。これによって、上方永久磁石32の一方の側とプレート62の縁部の間に作用する磁力と、上方永久磁石32の反対の側とプレート62の開口部64の反対側にあるプレート62の縁部の間に作用する磁力と、の間に不均衡が生じる。この不均衡は、上方永久磁石32が、永久磁石32とプレート62の間に作用する磁力によって中心位置から、例えば正のy方向に開口部64の近い方の縁部に向かって実質的に引き離されるという結果をもたらすことになる。この上方永久磁石32にかかる引張力は、バランスマス183を移動方向の反対方向に(図13中の左方に)バランスマス183の中心位置に押し戻すことになる、板バネ184のy方向の水平剛性に少なくとも部分的に対抗する負の剛性として機能する。
【0088】
[00104] 図8に示された実施形態に対応して、磁気アセンブリ30の永久磁石32と、プレート62、具体的にはプレート62の開口部64と、により形成される剛性低減デバイスから生じる剛性プロファイルは、バランスマス183の所望の結合剛性プロファイルを生成するために、板バネ184の剛性プロファイルに対して適応されることがある。
【0089】
[00105] 図14は、本発明のある態様に係る位置決めデバイス180の第4の実施形態を概略的に示している。位置決めデバイス180は、1つの磁気重力補償器80を備える。実際には、複数の磁気重力補償器が設けられることがある。磁気重力補償器80は、サポート82を用いてバランスマス183に装着された、磁化可能材料の第1の要素81を備える。磁気重力補償器80はさらに、どちらも(例えば、第1の要素81の穴を通して、又は図示されていないサポートなどの他の手段によって)基準10に装着された、磁化可能材料の第2の要素84に配置された永久磁石83を備える。第1の要素81及び第2の要素84は、永久磁石83により提供される磁界を誘導するために設けられる。
【0090】
[00106] 磁気重力補償器80は、磁石83が第1の要素81に引力を与えるように構築される。この磁気重力補償器80の引力は、バランスマス183を上方に引っ張る。これは、重力補償器の他の実施形態について以上で説明したように、板バネ184により支えなければならない力を大幅に減らすことができるという利点を有する。結果として、板バネ184は、移動方向yの外乱力を低下させ、バランスマスアクチュエータ70の熱放散を低下させるより低い水平剛性を有するように設計することができる。
【0091】
[00107] この実施形態では、磁気重力補償器80は、第1の要素81と、永久磁石83と第2の要素84の結合体と、の間の実質的に同じ引付け磁力を維持しながら、移動方向y、及び必要に応じてx方向へのバランスマス183の移動を可能にするように構築される。
【0092】
[00108] さらに、磁気重力補償器80は、バランスマス183にかかる重力よりも大きい引付け磁力を第1の要素81と永久磁石83の間に提供するように構成される。これは、重力が第1の要素81と永久磁石83の間の引付け磁力によって完全に補償され、その結果、例えば疲労により板バネ184が故障した場合に、バランスマス183が磁気重力補償器80によって持ち上げられることになるという利点を有する。第1の要素81と磁石83の間のギャップが比較的小さいため、板バネ183が故障してもバランスマス184の上方移動が小さくなるだけで、バランスマス184が基準10に落下する代わりに、第1の要素81と磁石83の間のギャップが縮まることになる。磁気重力補償器80のこの実施形態は、アクチュエータ182や、バランスマスアクチュエータ70や、磁気シールドなどの位置決めデバイス180の部品の損傷を防ぐことができる。
【0093】
[00109] 図15は、第1の要素81と、永久磁石83と、第2の要素84と、を備えた図14の位置決めデバイスの詳細を示している。第2の要素84の第1の要素81の方を向いている表面にリム85が設けられる。リム85は、板バネ184が故障した場合に第1の要素83が永久磁石83に抗して移動することを防ぐ。リムによって永久磁石83の損傷を防ぐことができる。代替手段として、バルブなどの他の突出体が、磁石83を保護するために、第2の要素84の第1の要素81の方を向いている表面に設けられることがある。
【0094】
[00110] 図16は、板バネ184が故障した場合に、第1の要素81が上方に移動することにより引き起こされ得る損傷から永久磁石83が保護される、第1の要素81、永久磁石83、及び第2の要素84の代替的な実施形態を示している。この実施形態では、第2の要素84は、永久磁石83が配置される窪み86を備え、窪み86の深さは、同じ方向の永久磁石83の高さよりも大きい。結果として、永久磁石83は窪み86内に完全に配置される。板バネ184の故障後に第1の要素81が上方に移動するとき、第2の要素84の窪み86を取り囲み第1の要素81の方を向いている表面は、第1の要素81が永久磁石83に接触することを防ぐことになる。
【0095】
[00111] 図14の実施形態では、第1の要素81はバランスマス183に装着され、永久磁石83及び第2の要素84は基準10に装着される。代替的な実施形態では、第1の要素81は基準10に装着されることがあり、永久磁石83及び第2の要素84はバランスマス183に装着されることがある。さらに、第1の要素81及び永久磁石83はまた、第1の要素81と永久磁石83の間に、バランスマス183に持ち上げ力を与えるのに用いられる反発力を提供するように設計されることがある。
【0096】
[00112] 以上、バランスマスの移動方向にバランスマスを支持する板バネの剛性の外乱効果が、重力補償器及び/又は剛性低減デバイスによって少なくとも部分的に補償される位置決めデバイスの様々な実施形態を説明した。このような位置決めデバイスは、任意のeビーム装置、例えば、eビーム検査装置、eビームリソグラフィ装置、又はeビームを用いるその他の任意の装置などに適用されることがある。
【0097】
[00113] 上記の実施形態では、バランスマス183は、ステージ181の移動に追従するために1つの水平方向に移動することが意図されていた。他の実施形態では、バランスマス183は、2つの垂直な水平方向に移動することがある。重力補償器及び/又は剛性低減デバイスは、バランスマスが2つの水平方向の可動範囲で移動することを可能にするように設計されることがある。
【0098】
[00114] 以上で説明した重力補償器及び/又は剛性低減デバイスは永久磁石を使用する。代替的な実施形態では、磁石はまた、電気エネルギにより磁化され得る電磁石であることがある。
【0099】
[00115] さらに、上記の実施形態の一部では、永久磁石が基準に装着される一方、磁石と磁気的に協働するカウンタ要素がバランスマスに装着される。代替的な実施形態では、磁石はバランスマスに装着されることがある一方、カウンタ要素は基準に装着されることがある。
【0100】
[00116] 重力補償器及び/又は剛性低減デバイスはまた、バランスマスの水平移動方向の剛性を有するバランスマスを支持する別の支持デバイスの外乱効果を減少させるために、eビーム装置の位置決めデバイスに適用されることがある。
【0101】
[00117] 実施形態は以下の条項を使用してさらに記述されることがある。
1.オブジェクトを変位させるように構成された位置決めデバイスであって、
オブジェクトを支持するためのステージと、
ステージを基準に対して移動方向に移動させるためのアクチュエータと、
アクチュエータと基準の間に配置されて、アクチュエータから基準への反力の伝達を低減するためのバランスマスと、
基準とバランスマスの間に配置されて、バランスマスを支持するための支持デバイスと、
基準とバランスマスの間に作用して、バランスマスに持ち上げ力を与えて、支持デバイスによりバランスマスを支持するために提供される重力支持力を低減するための重力補償器と、
を備えた、位置決めデバイス。
2.重力補償器が、磁気重力補償器である、条項1の位置決めデバイス。
3.位置決めデバイスが、磁気重力補償器の磁界を遮蔽するための磁気シールドを備えた、条項2の位置決めデバイス。
4.重力補償器が機械的重力補償器である、条項1の位置決めデバイス。
5.重力補償器がバランスマスに引力を与えるように構成された、又は、重力補償器がバランスマスに反発力を与えるように構成された、条項1から4のいずれかの位置決めデバイス。
6.重力補償器の移動方向の剛性が、支持デバイスの移動方向の剛性よりも実質的に小さい、条項1から5のいずれかの位置決めデバイス。
7.重力補償器が、バランスマスにかかる重力の0.8倍から1.2倍の持ち上げ力を提供する、条項1から6のいずれかの位置決めデバイス。
8.位置決めデバイスが、複数の重力補償器を備え、複数の重力補償器が、全体でバランスマスにかかる重力の0.8倍から1.2倍の持ち上げ力を提供する、条項1から6のいずれかの位置決めデバイス。
9.支持デバイスが、1つ以上の弾性誘導デバイスを備えた、条項1から8のいずれかの位置決めデバイス。
10.1つ以上の弾性誘導デバイスが、1つ以上の板バネであり、1つ以上の板バネが、バランスマスの中心位置からの移動方向の最大変位を可能にし、1つ以上の板バネが、それぞれ有効バネ長を有し、最大変位が、有効バネ長の少なくとも0.15倍である、条項9の位置決めデバイス。
11.支持デバイスにより提供される最大持ち上げ力が、バランスマスにかかる重力の0.5倍未満である、条項1から10のいずれかの位置決めデバイス。
12.重力補償器が、移動方向の基準に対するバランスマスの可動範囲にあるバランスマスに持ち上げ力を与えるように構成された、条項1から11のいずれかの位置決めデバイス。
13.重力補償器がさらに、移動方向に対して垂直な水平方向の基準に対するバランスマスの可動範囲にあるバランスマスに持ち上げ力を与えるように構成された、条項12の位置決めデバイス。
14.移動方向が、水平方向である、条項1から13のいずれかの位置決めデバイス。
15.重力補償器が、支持デバイスの移動方向の正の剛性に少なくとも部分的に対抗する移動方向の負の剛性を提供するように構成された、条項1から14のいずれかの位置決めデバイス。
16.重力補償器が、移動方向の基準に対するバランスマスの位置に依存する負の剛性を提供するように構成された、条項15の位置決めデバイス。
17.正の剛性及び負の剛性が、移動方向の基準とバランスマスとの結合剛性をもたらし、重力補償器が、移動方向に沿った所定の結合剛性プロファイルを提供するように設計された、条項15又は16の位置決めデバイス。
18.オブジェクトを変位させるように構成された位置決めデバイスであって、
オブジェクトを支持するためのステージと、
ステージを基準に対して移動方向に移動させるためのアクチュエータと、
アクチュエータと基準の間に配置されて、アクチュエータから基準への反力の伝達を低減するためのバランスマスと、
基準とバランスマスの間に配置され、移動方向の第1の剛性を有する支持デバイスと、
基準とバランスマスの間に作用し、移動方向の第2の剛性を提供する剛性低減デバイスであって、第2の剛性が第1の剛性に少なくとも部分的に対抗する負の剛性である剛性低減デバイスと、
を備えた、位置決めデバイス。
19.剛性低減デバイスが、移動方向の基準に対するバランスマスの位置に依存する第2の剛性を提供するように構成された、条項18の位置決めデバイス。
20.剛性低減デバイスの第2の剛性が、移動方向の基準に対するバランスマスの位置に線形従属している、条項19の位置決めデバイス。
21.剛性低減デバイスの第2の剛性が、移動方向の基準に対するバランスマスの位置に非線形従属している、条項19の位置決めデバイス。
22.第1の剛性及び第2の剛性が、第1の移動方向の基準とバランスマスとの結合剛性をもたらし、剛性低減デバイスが、移動方向に沿った所定の結合剛性プロファイルを提供するように設計された、条項19から21のいずれかの位置決めデバイス。
23.所定の結合剛性プロファイルが、線形プロファイルである、条項22の位置決めデバイス。
24.所定の結合剛性プロファイルが、非線形プロファイルである、条項22の位置決めデバイス。
25.剛性低減デバイスが、結合剛性プロファイルを提供するように構成され、基準に対するバランスマスの位置における結合剛性が、第1の剛性の0.2倍未満の正の剛性である、条項22から24のいずれかの位置決めデバイス。
26.剛性低減デバイスが、バランスマスが基準に対する中心位置にあるとき、実質的にゼロに等しい第2の剛性を提供するように構成された、条項18から25のいずれかの位置決めデバイス。
27.所定の結合剛性プロファイルが、移動方向のバランスマスの中心位置から増加する次第に増加する結合剛性を有する、条項24又は26の位置決めデバイス。
28.剛性低減デバイスが、基準及びバランスマスのうちの一方に装着され、基準及びバランスマスのうちの他方に装着された磁気構造又は磁化可能構造に移動方向に作用する1つ以上の磁石を備えた、条項18から27のいずれかの位置決めデバイス。
29.剛性低減デバイスが、開口部と、開口部に配置された1つ以上の磁石と、を有する磁気構造又は磁化可能構造を備え、開口部及び/又は1つ以上の磁石の寸法が、移動方向の開口部に対する1つ以上の磁石の位置に依存する所定の第2の剛性を提供するように選択された、条項18から28のいずれかの位置決めデバイス。
30.1つ以上の磁石が、永久磁石又は電磁石である、条項28又は29の位置決めデバイス。
31.バランスマスアクチュエータが、支持デバイスの移動方向の剛性から生じる外乱力に少なくとも部分的に対抗する作動力を能動的に提供するように構成された、条項18から30のいずれかの位置決めデバイス。
32.支持デバイスが、バランスマスと基準の間に配置された1つ以上の弾性誘導デバイスを備えた、条項18から31のいずれかの位置決めデバイス。
33.バランスマス及び磁気重力補償器の少なくとも一部を実質的に取り囲むように構成されて、磁気重力補償器の磁界を遮蔽するための磁気シールドを備え、磁気シールドが、反力に応じてバランスマスが移動することを可能にするための開口部を備えた、条項1から32のいずれかの位置決めデバイス。
34.磁気シールドの材料が、磁界の効率的な遮蔽を達成するために、磁気シールド内のある磁束密度レベルにおける材料の比透磁率に基づいて選ばれる、条項33の位置決めデバイス。
35.アクチュエータ及び/又はバランスマスアクチュエータの動作中に磁界を生成するアクチュエータ及び/又はバランスマスアクチュエータの少なくとも一部が、バランスマスの中、上、もしくは周囲に配置されているか、又はバランスマスに接続されており、磁気シールドが、アクチュエータ及び/又はバランスマスアクチュエータの少なくとも一部を実質的に取り囲んでいる、条項33又は34の位置決めデバイス。
36.磁気シールドが、第1の磁気シールド及び第2の磁気シールドを含み、第1の磁気シールドが、バランスマス、磁気重力補償器、並びにアクチュエータ及び/又はバランスマスアクチュエータの少なくとも一部のうちの1つ以上を実質的に取り囲み、第2の磁気シールドが、第1の磁気シールドを実質的に取り囲んでいる、条項33から35のいずれかの位置決めデバイス。
37.磁気シールドが、第1の磁気シールドと第2の磁気シールドの間の空間、又は、第1の磁気シールドと第2の磁気シールドの間の非強磁性材料、第1及び第2の磁気シールドよりも小さい比透磁率を有する材料、及び、1に近いもしくは実質的に等しい比透磁率を有する材料、のうちの1つ以上を備えた、条項36の位置決めデバイス。
38.磁界の効率的な遮蔽を達成するために、第1の磁気シールドの第1の材料が、第1の磁気シールド内の第1の磁束密度レベルにおける第1の材料の第1の比透磁率に基づいて選ばれ、第1の材料と異なる、第2の磁気シールドの第2の材料が、第2の磁気シールド内の第2の磁束密度レベルにおける第2の材料の第2の比透磁率に基づいて選ばれた、条項36又は37の位置決めデバイス。
39.基準とバランスマスの間に配置された支持デバイスの第1の剛性を低減して、バランスマスと基準との間の移動方向の移動を可能にするための剛性低減デバイスであって、剛性低減デバイスが、移動方向の第2の剛性を提供し、第2の剛性が、第1の剛性に少なくとも部分的に対抗する負の剛性である剛性低減デバイス。
40.剛性低減デバイスが、基準及びバランスマスのうちの一方に装着され、基準及びバランスマスのうちの他方に装着された磁気構造又は磁化可能構造に移動方向に作用する1つ以上の磁石を備えた、条項39に記載の剛性低減デバイス。
41.剛性低減デバイスが、移動方向の基準に対するバランスマスの位置に依存する第2の剛性を提供するように構成された、条項39から40のいずれかに記載の剛性低減デバイス。
42.第1の剛性及び第2の剛性が、第1の移動方向の基準とバランスマスとの結合剛性をもたらし、剛性低減デバイスが、移動方向に沿った所定の結合剛性プロファイルを提供するように構成された、条項39から41のいずれかに記載の剛性低減デバイス。
43.条項1から38のいずれかに記載の位置決めデバイスを備えたEビーム装置であって、位置決めデバイスが、オブジェクトを電子光学系により生成されたeビームに対して変位させるように構成されたEビーム装置。
44.eビーム装置が、eビーム検査装置、eビームリソグラフィ装置、又はeビームを使用するその他の任意の装置である、条項43のeビーム装置。
45.条項1から38のいずれかに記載の位置決めデバイスを備えた、真空チャンバを有する装置であって、位置決めデバイスが真空チャンバに配置された装置。
46.条項1から38のいずれかに記載の位置決めデバイスを備えた装置であって、装置がリソグラフィ装置である装置。
【0102】
[00118] 本発明についてその好適な実施形態に関連付けて説明したが、この後特許請求される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の変更及び変形も実施可能であることは理解されよう。可能な他の用途には、本発明の位置決めデバイスを備えた、パターンを半導体ウェーハに(例えば露光プロセスにより)転写するためのリソグラフィ装置が含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを変位させるように構成された位置決めデバイスであって、
前記オブジェクトを支持するためのステージと、
前記ステージを基準に対して移動方向に移動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータと前記基準の間に配置されて、前記アクチュエータから前記基準への反力の伝達を低減するためのバランスマスと、
前記基準と前記バランスマスの間に配置されて、前記バランスマスを支持するための支持デバイスと、 前記基準と前記バランスマスの間に作用して、前記バランスマスに持ち上げ力を与えて、前記支持デバイスにより前記バランスマスを支持するために提供される重力支持力を低減するための重力補償器と、
を備えた、位置決めデバイス。
【外国語明細書】