IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-17150導体の製造方法、導体の製造装置、及び構造体
<>
  • 特開-導体の製造方法、導体の製造装置、及び構造体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017150
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】導体の製造方法、導体の製造装置、及び構造体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20230131BHJP
   C08J 7/044 20200101ALI20230131BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20230131BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20230131BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C08J9/28 CEY
C08J7/044
C08F20/00
C08F2/00 C
H05K3/12 630Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121179
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 峻
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
(72)【発明者】
【氏名】鷹氏 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】大木本 美玖
(72)【発明者】
【氏名】李 木馨
【テーマコード(参考)】
4F006
4F074
4J011
4J100
5E343
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB43
4F006AB73
4F006AB74
4F006BA07
4F006CA08
4F006DA04
4F006EA03
4F074AA48
4F074AD11
4F074AG20
4F074AH03
4F074CB34
4F074CB47
4F074CC04Y
4F074CC06X
4F074CC22X
4F074CC28Y
4F074CC29Y
4F074CC50X
4F074CE02
4F074CE16
4F074CE74
4F074CE75
4F074CE94
4F074DA03
4F074DA20
4F074DA47
4F074DA59
4J011CA01
4J011CA09
4J011CC10
4J100AB02P
4J100AL03P
4J100AL05P
4J100AL08P
4J100AL09P
4J100AL62P
4J100AL63P
4J100AL66P
4J100AL67P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA04P
4J100BA05P
4J100BA06P
4J100BA08P
4J100BA15P
4J100BA16P
4J100BC04P
4J100BC12P
4J100BC43P
4J100BC45P
4J100BC53P
4J100CA01
4J100JA43
4J100JA45
5E343AA16
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB44
5E343BB45
5E343BB59
5E343DD20
5E343ER35
5E343ER42
5E343FF01
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】 基材上に多孔質の樹脂構造体を形成し、当該樹脂構造体上に更に導体を形成する場合において、基材及び樹脂構造体の接着が高温加熱を伴うプロセスにより行われるとき、高温加熱により基材が変形することに起因して、導体における導電性が低下する課題及び導体の樹脂構造体に対する密着性が低下する課題がある。
【解決手段】 重合性化合物及び溶媒を含む樹脂形成用組成物を基材に対して付与する樹脂形成用組成物付与工程と、付与された前記樹脂形成用組成物中において前記重合性化合物を重合させることで前記基材上に多孔質の樹脂構造体を形成する樹脂構造体形成工程と、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含む導体形成用組成物を前記樹脂構造体に対して付与する導体形成用組成物付与工程と、を含むことを特徴とする導体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物及び溶媒を含む樹脂形成用組成物を基材に対して付与する樹脂形成用組成物付与工程と、
付与された前記樹脂形成用組成物中において前記重合性化合物を重合させることで前記基材上に多孔質の樹脂構造体を形成する樹脂構造体形成工程と、
金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含む導体形成用組成物を前記樹脂構造体に対して付与する導体形成用組成物付与工程と、を含むことを特徴とする導体の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子及び前記金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、前記樹脂構造体上に、前記金属酸化物粒子の還元物及び前記金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を含む前記導体を形成する導体形成工程を含む請求項1に記載の導体の製造方法。
【請求項3】
前記導体形成工程は、更に、前記金属酸化物粒子及び前記金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、前記金属酸化物粒子の還元物及び前記金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を前記樹脂構造体の孔の内部に有する領域である混合領域を形成する請求項2に記載の導体の製造方法。
【請求項4】
前記発熱は、パルス光照射又はマイクロ波照射による発熱である請求項2又は3に記載の導体の製造方法。
【請求項5】
前記重合性化合物及び前記溶媒は相溶し、
前記樹脂構造体は、前記重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物及び前記溶媒が相溶しなくなることで形成される請求項1から4のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項6】
前記導体形成用組成物付与工程は、前記導体形成用組成物を吐出する工程である請求項1から5のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項7】
前記導体形成用組成物付与工程は、前記導体形成用組成物をインクジェット方式で吐出する工程である請求項1から6のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項8】
前記基材及び前記樹脂構造体に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、前記基材における発熱ピーク又は吸熱ピークの温度は、前記樹脂構造体における吸熱ピークの温度より低い請求項1から7のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項9】
前記基材に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、300℃以下において発熱ピーク又は吸熱ピークを示す請求項1から8のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項10】
前記基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1つを含む請求項1から9のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂構造体は、複数の孔が連続して連結している共連続構造を有する請求項1から10のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂構造体は、分子内に架橋構造を有する樹脂を含む請求項1から11のいずれか一項に記載の導体の製造方法。
【請求項13】
重合性化合物及び溶媒を含む樹脂形成用組成物を基材に対して付与する樹脂形成用組成物付与手段と、
付与された前記樹脂形成用組成物中において前記重合性化合物を重合させることで前記基材上に多孔質の樹脂構造体を形成する樹脂構造体形成手段と、
金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含む導体形成用組成物を前記樹脂構造体に対して付与する導体形成用組成物付与手段と、を含むことを特徴とする導体の製造装置。
【請求項14】
基材と、前記基材上に形成された多孔質の樹脂構造体と、前記樹脂構造体上に形成された導体と、を有する構造体であって、
前記樹脂構造体を構成する樹脂は、アクリル系樹脂であり、
前記樹脂構造体は、孔の内部に前記導体を構成する材料と同一の材料が含まれている領域である混合領域を有することを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体の製造方法、導体の製造装置、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、印刷プロセスを利用して、基板上に金属などの導体を直接形成するプリンテッドエレクトロニクス技術の研究が盛んに行われている。
【0003】
特許文献1には、平滑な高分子樹脂シート上に多孔質高分子樹脂シートを熱プレスによって圧着させ、この多孔質高分子樹脂層シート上に金属粒子等を含む導体パターン形成用組成物を印刷し、導体パターン形成用組成物の少なくとも一部を内部発熱方式により加熱し、金属粒子等を構成する金属の焼結パターンを形成することで導体パターンを形成する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基材上に多孔質の樹脂構造体を形成し、当該樹脂構造体上に更に導体を形成する場合において、基材及び樹脂構造体の接着が高温加熱を伴うプロセスにより行われるとき、高温加熱により基材が変形することに起因して、導体における導電性が低下する課題及び導体の樹脂構造体に対する密着性が低下する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、重合性化合物及び溶媒を含む樹脂形成用組成物を基材に対して付与する樹脂形成用組成物付与工程と、付与された前記樹脂形成用組成物中において前記重合性化合物を重合させることで前記基材上に多孔質の樹脂構造体を形成する樹脂構造体形成工程と、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含む導体形成用組成物を前記樹脂構造体に対して付与する導体形成用組成物付与工程と、を含むことを特徴とする導体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基材上に多孔質の樹脂構造体を形成し、当該樹脂構造体上に更に導体を形成する場合において、導体における導電性及び導体の樹脂構造体に対する密着性を向上させることができる導体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、導体の製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
<<導体の製造方法>>
本実施形態の導体の製造方法は、重合性化合物及び溶媒を含む樹脂形成用組成物を基材に対して付与する樹脂形成用組成物付与工程と、付与された樹脂形成用組成物中において重合性化合物を重合させることで基材上に多孔質の樹脂構造体層(以降の説明において、「多孔質樹脂層」とも称する)を形成する樹脂構造体層形成工程と、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含む導体形成用組成物を樹脂構造体層に対して付与する導体形成用組成物付与工程と、を含む。また、本実施形態の導体の製造方法は、必要に応じて、その他工程を有してもよい。例えば、樹脂構造体層形成工程後であって且つ導体形成用組成物付与工程前において、樹脂構造体層から溶媒を除去する溶媒除去工程、及び導体形成用組成物付与工程後において、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、樹脂構造体層上に、金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を含む導体を形成する導体形成工程などを含んでもよい。
【0010】
<樹脂形成用組成物付与工程>
樹脂形成用組成物付与工程は、基材に対して重合性化合物及び溶媒を含む樹脂形成用組成物を付与する工程である。付与された樹脂形成用組成物は、基材上に樹脂形成用組成物の液膜である樹脂形成用組成物層を形成することが好ましい。樹脂形成用組成物を付与する方法としては、特に制限されず、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法が挙げられる。
【0011】
-樹脂形成用組成物-
樹脂形成用組成物は、重合性化合物、溶媒、及び必要に応じて重合開始剤などのその他成分を含む液体組成物である。また、樹脂形成用組成物は、硬化させられることで多孔質樹脂構造体を形成し、基材上に付与されて硬化させられることで層状の多孔質樹脂である多孔質樹脂層を形成する。
なお、本開示において、樹脂形成用組成物が多孔質樹脂構造体を形成するとは、樹脂形成用組成物中の少なくとも一部成分(重合性化合物等)が硬化(重合)させられることで多孔質樹脂構造体を形成し、樹脂形成用組成物中のその他成分(溶媒等)が硬化させられずに多孔質樹脂構造体を形成しない場合等も含む意味である。
【0012】
--重合性化合物--
重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、樹脂形成用組成物中において重合した場合に多孔質樹脂構造体の樹脂樹脂骨格を形成する。重合性化合物は、活性エネルギー線の付与等(例えば、光の照射や熱を加えること等)により樹脂を形成するものであることが好ましい。樹脂としては、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル、及びエン-チオール反応を活用した樹脂などが好ましい。これらの中でも、反応性の高いラジカル重合を利用して樹脂を形成することが容易な点から、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が生産性の観点からより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、多孔質樹脂を構成する樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0013】
重合性化合物は、少なくとも1つの重合性官能基を有するが、分子内に架橋構造を有する樹脂を形成可能である点から、複数の重合性官能基を有することが好ましい。分子内に架橋構造を有する樹脂により多孔質樹脂層の樹脂骨格が形成されることで、加熱時に多孔質樹脂層が変形することが抑制される。例えば、後述する導体形成工程において、多孔質樹脂層の内部又は近傍に位置する金属酸化物粒子又は金属粒子等が発熱することで多孔質樹脂層が加熱されたとしても、多孔質樹脂層を構成する樹脂の分解が抑制されることで多孔質樹脂層の変形が抑制され、これにより多孔質樹脂層上に設けられた導体におけるクラックの発生が抑制され、結果として導体における導電性及び導体の多孔質樹脂層に対する密着性を向上させることができる。また、分子内に架橋構造を有する樹脂により多孔質樹脂層が形成されることで、耐溶剤性も向上させることができる。
【0014】
また、重合性化合物は、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有することが好ましい。その例としては、1官能、2官能、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、及びラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が好ましい。
【0015】
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
樹脂形成用組成物中における重合性化合物の含有量は、樹脂形成用組成物全量に対して、5.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。重合性化合物の含有量が70.0質量%以下である場合、得られる多孔質樹脂の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質樹脂が適切な空隙率を有するので好ましい。また、重合性化合物の含有量が5.0質量%以上である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
【0019】
--溶媒--
溶媒(以降の記載において「ポロジェン」とも称する)は、重合性化合物と相溶する液体である。また、溶媒は、樹脂形成用組成物中において重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。樹脂形成用組成物中に溶媒が含まれることで、重合性化合物は、樹脂形成用組成物中において重合した場合に多孔質樹脂を形成する。また、光または熱によってラジカル又は酸を発生する化合物(後述する重合開始剤)を溶解可能であることが好ましい。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、溶媒は重合性を有さない。
【0020】
ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、50℃以上250℃以下であることが好ましく、70℃以上200℃以下であることがより好ましい。沸点が50℃以上であることにより、室温付近におけるポロジェンの気化が抑制されて樹脂形成用組成物の取扱が容易になり、樹脂形成用組成物中におけるポロジェンの含有量の制御が容易になる。また、沸点が250℃以下であることにより、重合後のポロジェンを乾燥させる工程における時間が短縮されて生産性が向上する。
【0021】
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体も挙げることができる。また、アセトン、2-エチルヘキサノール、1-ブロモナフタレン等の液体も挙げることができる。
なお、上記の例示された液体であれば常にポロジェンに該当するわけではない。ポロジェンとは、上記の通り、重合性化合物と相溶する液体であって、且つ樹脂形成用組成物中において重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。言い換えると、ある液体がポロジェンに該当するか否かは、重合性化合物および重合物(重合性化合物が重合することにより形成される樹脂)との関係で決まる。
また、樹脂形成用組成物は、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればいいため、樹脂形成用組成物作製時の材料選択の幅が広がり、樹脂形成用組成物の設計が容易になる。樹脂形成用組成物作製時の材料選択の幅が広がることで、多孔質構造の形成以外の観点で樹脂形成用組成物に求められる特性がある場合に、対応の幅が広がる。例えば、樹脂形成用組成物をインクジェット方式で吐出する場合、多孔質形成以外の観点として、吐出安定性等を有する樹脂形成用組成物であることが求められるが、材料選択の幅が広いため、樹脂形成用組成物の設計が容易になる。
なお、樹脂形成用組成物は、上記の通り、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればいいため、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)を追加的に含有していてもよい。但し、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)の含有量は、樹脂形成用組成物全量に対して10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以下であることが特に好ましく、含まれないことが特に好ましい。なお、含まれない場合とは、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)の含有量が完全にゼロである場合に加え、樹脂形成用組成物の製造に際して、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)を積極的に使用していない場合、又は樹脂形成用組成物を公知かつ技術常識の手法で分析した場合に重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)を検出できない場合も含まれる。
【0022】
樹脂形成用組成物中におけるポロジェンの含有量は、樹脂形成用組成物全量に対して、30.0質量%以上95.0質量%以下が好ましく、40.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましい。ポロジェンの含有量が30.0質量%以上である場合、得られる多孔質体の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質体が適切な空隙率を有することができるので好ましい。また、ポロジェンの含有量が95.0質量%以下である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
【0023】
---重合誘起相分離---
多孔質樹脂は、重合誘起相分離により形成することができる。重合誘起相分離は、重合性化合物とポロジェンは相溶するが、重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)とポロジェンは相溶しない(相分離を生じる)状態を表す。相分離により多孔質体を得る方法は他にも存在するが、重合誘起相分離の方法を用いることで、網目構造を有し、多孔質樹脂を構成する2成分である孔部分及び骨格部分のそれぞれが連続する共連続構造を有する多孔質体を形成できるために、薬品や熱に対する耐性の高い多孔質体が期待できる。また、他の方法と比較して、プロセス時間が短く、表面修飾が容易といったメリットも挙げられる。
【0024】
次に、重合誘起相分離を用いた多孔質樹脂の形成プロセスについて説明する。重合性化合物は、光照射等により重合反応を生じて樹脂を形成する。このプロセスの間、成長中の樹脂におけるポロジェンに対する溶解度が減少し、樹脂とポロジェンの間における相分離が生じる。最終的に、樹脂は、ポロジェン等が孔を満たしている多孔質構造を形成する。これを乾燥すると、ポロジェン等は除去され、多孔質樹脂構造体の骨格部分が残る。そのため、適切な空隙率を有する多孔質樹脂を形成するため、ポロジェンと重合性化合物との相溶性、及びポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性が検討される。
【0025】
ポロジェンと重合性化合物との相溶性については次のようにして判断する。
まず、樹脂形成用組成物を石英セルに注入し、攪拌子を用いて300rpmで攪拌させながら、樹脂形成用組成物の波長550nmにおける光(可視光)の透過率を測定する。本開示では、光の透過率が30%以上である場合を重合性化合物とポロジェンとが相溶の状態、30%未満である場合を重合性化合物とポロジェンとが非相溶の状態であると判断する。なお、光の透過率の測定に関する諸条件を以下に示す。
・石英セル:スクリューキャップ付き特殊ミクロセル(商品名:M25-UV-2)
・透過率測定装置:Ocean Optics社製USB4000
・撹拌速度:300rpm
・測定波長:550nm
・リファレンス:石英セル内が空気の状態で、波長550nmにおける光の透過率を測定
して取得する(透過率:100%)
【0026】
ポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性については次のようにして判断する。
まず、無アルカリガラス基板上に、スピンコートにより樹脂微粒子を基板上に均一分散させ、ギャップ剤とする。続いて、ギャップ剤を塗布した基板を、ギャップ剤を塗布していない無アルカリガラス基板と、ギャップ剤を塗布した面を挟むようにして互いに貼り合わせる。次に樹脂形成用組成物を、貼り合わせた基板間に毛細管現象を利用して充填し、「UV照射前ヘイズ測定用素子」を作製する。続いて、UV照射前ヘイズ測定用素子にUV照射して樹脂形成用組成物を硬化させる。最後に基板の周囲を封止剤で封止することで「ヘイズ測定用素子」を作製する。作製時の諸条件を以下に示す。
・無アルカリガラス基板:日本電気硝子製、40mm、t=0.7mm、OA-10G
・ギャップ剤:積水化学製、樹脂微粒子ミクロパールGS-L100、平均粒子径100μm
・スピンコート条件:分散液滴下量150μL、回転数1000rpm、回転時間30s
・充填した樹脂形成用組成物量:160μL
・UV照射条件:光源としてUV-LEDを使用、光源波長365nm、照射強度30mW/cm、照射時間20s
・封止剤:TB3035B(Three Bond社製)
次に、作製したUV照射前ヘイズ測定用素子とヘイズ測定用素子を用いてヘイズ値(曇り度)を測定する。UV照射前ヘイズ測定用素子における測定値をリファレンス(ヘイズ値0)とし、ヘイズ測定用素子における測定値(ヘイズ値)のUV照射前ヘイズ測定用素子における測定値に対する上昇率を算出する。ヘイズ測定用素子におけるヘイズ値は、重合性化合物が重合することにより形成される樹脂とポロジェンとの相溶性が低いほど高くなり、相溶性が高いほど低くなる。また、ヘイズ値が高いほど重合性化合物が重合することにより形成される樹脂が多孔質構造を形成しやすくなることを示す。本開示では、ヘイズ値の上昇率が1.0%以上である場合を樹脂とポロジェンとが非相溶の状態、1.0%未満である場合を樹脂とポロジェンとが相溶の状態であると判断する。なお、測定に用いた装置を以下に示す。
・ヘイズ測定装置:Haze meter NDH5000 日本電色工業製
【0027】
--重合開始剤--
重合開始剤は、光や熱等のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させることが可能な材料である。重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0028】
光ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、商品名イルガキュアーやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、より具体的な化合物としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα-ヒドロキシ-もしくは、α-アミノセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp’-ジクロロベンゾフェン、pp’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物、等が好適に使用される。
【0029】
また、光照射により酸を発生する光酸発生剤と、酸の存在下で重合する重合性化合物と、を組み合わせた樹脂形成用組成物でも同様の機能を達成することができる。このような樹脂形成用組成物に光を照射すると、光酸発生剤が酸を発生し、この酸は重合性化合物の反応における触媒として機能する。発生した酸は樹脂形成用組成物内で拡散する。また、酸の拡散及び酸を触媒とした反応は、加熱することにより加速可能であり、この反応はラジカル重合とは異なって、酸素の存在によって阻害されることがない。得られる樹脂は、ラジカル重合系の場合と比較して密着性にも優れる。
【0030】
酸の存在下で架橋する重合性化合物は、エポキシ基、オキセタン基、オキソラン基等のような環状エーテル基を有する化合物、上述した置換基を側鎖に有するアクリル又はビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子量のメラミン化合物、ビニルエーテル類やビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、アルファ-メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールとアクリル、メタクリル等のエステル化合物をはじめとするビニルアルコールエステル類等、カチオン重合可能なビニル結合を有するモノマー類を併せて使用することが挙げられる。
【0031】
光照射により酸を発生する光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルフォネート化合物、バイスルフォン化合物、スルフォニル化合物、スルフォネート化合物、スルフォニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルフォニルジアゾメタン化合物、及びそれらの混合物等を使用することができる。
中でも光酸発生剤としては、オニウム塩を使用することが望ましい。使用可能なオニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パラトルエンスルホネートアニオン、及びパラニトロトルエンスルホネートアニオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、及びスルホニウム塩を挙げることができる。また、光酸発生剤は、ハロゲン化トリアジン化合物でも使用できる。
【0032】
光酸発生剤は、場合によって、増感色素を更に含んでいてもよい。増感色素としては、例えば、アクリジン化合物、ベンゾフラビン類、ペリレン、アントラセン、及びレーザ色素類等が挙げられる。
【0033】
重合開始剤の含有量は、十分な硬化速度を得るために、重合性化合物の総質量を100.0質量%とした場合に、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
--その他--
本開示の樹脂形成用組成物は、樹脂形成用組成物中に分散物(例えば、粒子状物質)を含まない非分散系組成物であっても、樹脂形成用組成物中に分散物を含む分散系組成物であってもよいが、非分散系組成物であることが好ましい。樹脂形成用組成物が非分散系組成物であることで、樹脂形成用組成物を様々な付与手段に用いることができるためである。例えば、吐出安定性を維持することが重要となるインクジェット方式にも安定して使用することができるので好ましい。なお、樹脂形成用組成物中に分散物を含まないとは、実質的に分散物を含まない状態であればよく、例えば、分散物を含有することによる影響が現れない含有量以下であればよい。具体的には、例えば、分散物の含有量が樹脂形成用組成物の質量に対して0.1質量%以下であることが好ましく、公知かつ技術常識の手法で測定したときに分散物の含有量が検出限界以下であることがより好ましい。
【0035】
-基材-
基材は、樹脂形成用組成物を付与される部材である。基材を構成する材料としては、特に限定されないが、後述する内部発熱方式により発熱しない材料であることが好ましく、樹脂であることが好ましい。また、基材の特性としては、特に限定されないが、本発明の導体の製造方法によれば、後述する通り、耐熱性が低い基材(言い換えると、加熱されることで変形が生じやすい基材)であっても適用できる点を考慮すると、得られる効果が大きくなる観点から、耐熱性が低いことが好ましい。
【0036】
基材の特性として耐熱性が低い場合の一例としては、基材に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、300℃以下において発熱ピーク又は吸熱ピークを示す場合が挙げられる。なお、基材における示差走査熱量分析(DSC)の測定条件の一例は次の通りである。
まず、基材の一部を切断することで約5mgの試験片を作製し、当該試験片を150℃で24時間真空乾燥させて測定サンプルを得る。その後、測定サンプルの熱特性を示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて、下記の条件下で測定する。
・サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(蓋有り)
・サンプル量:5mg
・リファレンスアルミニウム製サンプルパン(空の容器)
・雰囲気:窒素(流量50mL/min)
・開始温度:25℃
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:300℃
【0037】
基材の特性として耐熱性が低い場合の別の一例としては、基材の耐熱性が多孔質樹脂の耐熱性より低い場合が挙げられる。具体的には、基材及び多孔質樹脂層に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、基材における発熱ピーク又は吸熱ピークの温度が、多孔質樹脂層における吸熱ピークの温度より低い場合が挙げられ、具体的には、例えば、20℃以上低い場合、30℃以上低い場合などが挙げられる。このように、耐熱性が低い基材であっても、基材より耐熱性が高い多孔質樹脂層を介して、後述する内部発熱方式により発熱する材料と一体化しているため、基材の変形が抑制される。これにより多孔質樹脂層上に設けられた導体におけるクラックの発生が抑制され、結果として導体における導電性及び導体の多孔質樹脂層に対する密着性を向上させることができる。なお、多孔質樹脂における示差走査熱量分析(DSC)は上記の通り行い、多孔質樹脂層における示差走査熱量分析(DSC)の測定条件は次の通りである。
まず、多孔質樹脂層の一部を削り取ることで約5mgの試験片を作製し、当該試験片を150℃で24時間真空乾燥させて測定サンプルを得る。その後、測定サンプルの熱特性を示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて、下記の条件下で測定する。
・サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(蓋有り)
・サンプル量:5mg
・リファレンスアルミニウム製サンプルパン(空の容器)
・雰囲気:窒素(流量50mL/min)
・開始温度:25℃
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:300℃
【0038】
耐熱性が低い基材の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン(TPU,Thermoplastic Polyurethane)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリテトラフロロエチレン、ポリブタジエン、ポリオレフィン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリエステル、及びポリエチレンナフタレート等が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートが好ましい。基材は、これらの材料のうち1つのみ含んでいてもよいし、2以上を含んでいてもよい。
【0039】
-樹脂形成用組成物の製造方法-
樹脂形成用組成物は、重合開始剤を重合性化合物に溶解させる工程、ポロジェンや他の成分を更に溶解させる工程、及び均一な溶液とするために撹拌する工程などを経て作製するのが好ましい。
【0040】
-樹脂形成用組成物の物性-
樹脂形成用組成物の粘度は、樹脂形成用組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が更に好ましく、5.0mPa・s以上20.0mPa・s以下が特に好ましい。樹脂形成用組成物の粘度が1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であることにより、樹脂形成用組成物をインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
【0041】
<樹脂構造体層形成工程>
樹脂構造体層形成工程は、付与された樹脂形成用組成物中において重合性化合物を重合させることで基材上に多孔質樹脂層を形成する工程である。具体的には、例えば、樹脂形成用組成物に対して活性エネルギー線を照射すること等により、付与された樹脂形成用組成物中において重合性化合物を重合させることで基材上に多孔質樹脂層を形成させる。
【0042】
本発明において、樹脂形成用組成物付与工程及び樹脂構造体層形成工程を経て基材上に多孔質樹脂層を形成することが好ましい理由について説明する。
一般に、基材上に多孔質樹脂層を形成させる方法としては、例えば、基材及び多孔質樹脂層を別に用意し、高温加熱を伴うプロセス(熱プレス等)によりこれらを接着させる方法などが挙げられる。しかしながら、このようなプロセスでは、高温加熱により基材が変形することに起因して、低耐熱材料が使用できず、高耐熱材料からなる基材及び多孔質樹脂の組み合わせに限定される課題がある。
これに対し、本発明は、高温加熱を伴わないプロセスである樹脂形成用組成物付与工程及び樹脂構造体層形成工程を経て基材上に多孔質樹脂層を形成するため、耐熱性が低い基材(言い換えると、加熱されることで変形が生じやすい基材)であっても使用することができ、基材の選択の幅が広がる。
【0043】
活性エネルギー線としては、重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中でも紫外線であることが好ましい。なお、特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
【0044】
活性エネルギー線(特に、紫外線)を照射する光源の照射強度に関しては、照射強度が強すぎると相分離が十分に起きる前に急激に重合が進行する為、多孔質構造が得られにくい傾向がある。また、照射強度が弱すぎる場合は、相分離がミクロスケール以上に進行し多孔質のばらつきや粗大化が起きやすい。また、照射時間も長くなり、生産性が低下する傾向にある。そのため、照射強度としては10mW/cm以上1W/cm以下が好ましく、30mW/cm以上300mW/cm以下がより好ましい。
【0045】
-多孔質樹脂-
多孔質樹脂層の膜厚は、特に限定はされないが、重合時の硬化均一性を考慮して0.01μm以上500μm以下であることが好ましく、0.01μm以上100μm以下であることがより好ましく、1μm以上50μm以下であることが更に好ましく、10μm以上20μm以下であることが特に好ましい。膜厚が0.01μm以上であることで、得られる多孔質樹脂の表面積が大きくなり、多孔質樹脂による機能を十分に得ることができる。また、膜厚が500μm以下であることで、膜厚方向において重合時に用いる光や熱のムラが抑制され、膜厚方向において均一な多孔質樹脂を得ることができる。
【0046】
多孔質樹脂の形状は、特に限定されないが、気体等の良好な透過性を確保する観点から、多孔質樹脂中の複数の孔が連続して連結している共連続構造(モノリス構造とも称する)を有することが好ましい。すなわち、多孔質樹脂は多数の孔を有しており、一つの孔がその周囲の他の孔と連結した連通性を有して三次元的に広がっていることが好ましい。
なお、共連続構造を有することで得られる物性の一つとして透気度が挙げられる。多孔質樹脂の透気度は、例えば、JIS P8117に準拠して測定され、500秒/100mL以下である場合が好ましく、300秒/100mL以下である場合がより好ましい。このとき、透気度は、例えば、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)等を用いて測定される。
【0047】
多孔質樹脂が有する孔の断面形状は、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状及び様々な大きさであって構わない。ここで、孔の大きさとは、断面形状における最も長い部分の長さを指すものとする。孔の大きさは、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面写真から求めることができる。多孔質樹脂の有する孔の大きさに関しては、特に限定はされないが、気体等の透過性の観点から0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。また、多孔質樹脂の空隙率としては、30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。多孔質樹脂の有する孔の大きさ及び空隙率をこれらの範囲にする方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂形成用組成物中における重合性化合物の含有量を上記の範囲に調整する方法、樹脂形成用組成物中におけるポロジェンの含有量を上記の範囲に調整する方法、及び活性エネルギー線の照射条件を調整する方法等が挙げられる。なお、空隙率は作製した樹脂に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後に、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて樹脂中の空隙率を測定することで求めることができる。
【0048】
<溶媒除去工程>
溶媒除去工程は、樹脂構造体層形成工程後に、多孔質樹脂から溶媒を除去する工程であり、具体的には、多孔質樹脂層の孔内等に含まれる樹脂形成用組成物に由来する溶媒を除去する工程である。溶媒を除去する方法としては特に限定されず、例えば、加熱することにより多孔質樹脂から溶媒を除去する方法が挙げられる。このとき、減圧下で加熱することで溶媒の除去がより促進され、多孔質樹脂中における溶媒の残存を抑制できるので好ましい。
【0049】
<導体形成用組成物付与工程>
導体形成用組成物付与工程は、樹脂構造体層形成工程後、好ましくは溶媒除去工程後において、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含む導体形成用組成物を多孔質樹脂層に対して付与する工程である。付与された導体形成用組成物は、多孔質樹脂層上に導体形成用組成物の含有成分(例えば、後述する金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つ等)を含む導体前駆体を形成することが好ましい。また、付与された導体形成用組成物は、一部が多孔質樹脂層内部に浸透し、浸透領域において、導体形成用組成物の含有成分(例えば、後述する金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つ等)を多孔質樹脂層の孔の内部に有する領域である混合領域前駆体を形成することが好ましい。なお、多孔質樹脂の形状が、上記の通り、複数の孔が連続して連結している共連続構造を有することで、付与された導体形成用組成物の多孔質樹脂層内部への浸透が容易になる。
導体形成用組成物を付与する方式としては、特に制限されず、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等の各種印刷方法が挙げられるが、多孔質樹脂層に対して導体形成用組成物を吐出することにより非接触でファインパターンの印刷が可能である観点からインクジェット印刷法であることが好ましい。非接触で印刷可能であることで、付与対象の多孔質樹脂層が変形することが抑制され、これにより多孔質樹脂層上に設けられた導体におけるクラックの発生が抑制され、結果として導体における導電性及び導体の多孔質樹脂層に対する密着性を向上させることができる。
【0050】
-導体形成用組成物-
導体形成用組成物は、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含み、必要に応じて、還元剤、樹脂、分散媒などを含んでもよい。
【0051】
--金属酸化物粒子及び金属粒子--
金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つは、焼結されることで導体又は後述する混合領域における孔の内部に含まれる材料を形成する。
【0052】
金属粒子を構成する材料としては、例えば、金、銀、銅、銀コート銅、アルミニウム、ニッケル、及びコバルト等を挙げることができ、導電率を向上させる観点から銀、銅、銀コート銅が好ましい。また、これら材料の中から1種を選択または任意の割合で複数種を混合して用いてもよい。
【0053】
金属酸化物粒子を構成する材料としては、上記の金属粒子を構成する材料の酸化物を挙げることができ、導電率を向上させる観点から酸化銀、酸化銅が好ましい。また、これら材料の中から1種を選択または任意の割合で複数種を混合して用いてもよい。
【0054】
金属酸化物粒子及び金属粒子の形状は特に制限はなく、球状、扁平(板)状、又は不定形のもの等を使用できる。
【0055】
金属酸化物粒子及び金属粒子の粒子径としては、目的とする印刷精度にもよるが、粒子径が過度に小さいと導体形成用組成物における分散性の担保が困難になり、凝集防止のための保護コロイドの使用量を多く用いる必要が生じ、導体形成用組成物の固形分中に金属が占める割合を高めることが困難になり、生産性の観点で不利である。また、粒径が過度に大きい場合はファインパターンの印刷が困難となり、粒子同士の接触も困難となり、焼結しにくいという課題が生じ得る。そのため、金属酸化物粒子及び金属粒子の粒子径は、5nm以上10μm以下であることが好ましく、10nm以上5μm以下であることがより好ましい。なお、金属酸化物粒子及び金属粒子における粒子径は、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法によって測定することが出来る個数基準の平均粒径D50(メジアン径)を表す。
【0056】
--還元剤--
導体形成用組成物は、金属酸化物粒子を用いる場合、還元剤を含むことが好ましい。還元剤を含むことで、金属酸化物粒子の還元物が生成され、還元物が焼結されることで導体又は後述する混合領域における孔の内部に含まれる材料(金属)を形成できる。
【0057】
還元剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール、テルペニオールのようなアルコール化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、蟻酸、酢酸、蓚酸、コハク酸のようなカルボン酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、ベンズアルデヒド、オクチルアルデヒドのようなカルボニル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニルのようなエステル化合物、ヘキサン、オクタン、トルエン、ナフタリン、デカリンのような炭化水素化合物等を挙げることができる。これらの中でも、還元剤の効率を考慮すると、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、蟻酸、酢酸、蓚酸のようなカルボン酸が好ましい。
【0058】
--樹脂--
導体形成用組成物は、バインダー機能を有する樹脂を含むことが好ましく、更に、バインダー機能に加えて還元剤も兼ねた樹脂を含むことがより好ましい。
【0059】
バインダー機能を有し還元剤も兼ねた樹脂としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクトンのようなポリ-N-ビニル化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリTHFのようなポリアルキレングリコール化合物、ポリウレタン、セルロース化合物およびその誘導体、エポキシ化合物、ポリエステル化合物、塩素化ポリオレフィン、ポリアクリル化合物のような熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら中でも、バインダー機能を考慮するとポリビニルピロリドンが好ましく、還元機能を考慮するとポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリウレタン化合物が好ましい。なお、ポリエチレングリール、ポリプロピレングリコールは多価アルコールの分類に入り、特に還元剤として好適な特性を有する。
【0060】
--分散媒--
導体形成用組成物は、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの分散媒を含むことが好ましい。分散媒としては、公知の液体成分を使用することができる。
【0061】
-導体形成用組成物の製造方法-
導体形成用組成物は、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを分散媒に分散させる工程、他の成分を更に溶解又は分散させる工程、及び均一な分散液とするために撹拌する工程などを経て作製するのが好ましい。
【0062】
-導体形成用組成物の物性-
導体形成用組成物の粘度は、導体形成用組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が更に好ましく、5.0mPa・s以上20.0mPa・s以下が特に好ましい。導体形成用組成物の粘度が1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であることにより、導体形成用組成物をインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
【0063】
<導体形成工程>
導体形成工程は、導体形成用組成物付与工程後に、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、多孔質樹脂層上に、金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を含む導体を形成する工程である。具体的には、導体形成用組成物付与工程において多孔質樹脂層上に形成された導体前駆体に含まれる金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、多孔質樹脂層上に、金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を含む導体を形成する工程である。
【0064】
また、導体形成工程は、上記の導体の形成と同時に、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を多孔質樹脂層の孔の内部に有する領域である混合領域を形成する工程であることが好ましい。具体的には、導体形成用組成物付与工程において多孔質樹脂層内に形成された混合領域前駆体に含まれる金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を多孔質樹脂層の孔の内部に有する領域である混合領域を形成する工程であることが好ましい。
なお、混合領域前駆体は、導体前駆体を形成するために付与された導体形成用組成物が多孔質樹脂層内に浸透することで形成されているため、導体形成工程を経て形成される混合領域の孔の内部に含まれる構成の材料及び導体を構成する材料は同一であり、混合領域の孔の内部に含まれる構成及び導体は連続しており、導体及び混合領域は隣接している。これにより、導体の多孔質樹脂層に対する密着性が向上する。また、多孔質樹脂の形状が、上記の通り、複数の孔が連続して連結している共連続構造であり、複数の孔の内部に含まれる構成同士が連続している場合、導体の多孔質樹脂層に対する密着性がより向上する。
なお、多孔質樹脂層における混合領域の分布は、混合領域の孔の内部に含まれる構成及び導体が連続していることで。導体の多孔質樹脂層に対する密着性が向上する分布であればよく、多孔質樹脂層の全域に渡って混合領域が存在する必要はない。具体的には、混合領域は、導体及び混合領域の界面から多孔質樹脂層の膜厚方向に対してわずかに存在していれば密着性が向上する。より具体的には、例えば、混合領域における膜厚方向の長さ(X)と多孔質樹脂層の混合領域を除いた領域における膜厚方向の長さ(Y)との比(X/Y)は、0.5/99.5以上1.0/99.0以下が好ましい。
【0065】
金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させる方法としては、内部発熱方式が挙げられる。本開示における内部発熱方式は、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを発熱させるが、基材及び多孔質樹脂層は発熱させない。基材及び多孔質樹脂層が発熱しないことで、基材及び多孔質樹脂層の変形が抑制され、これにより多孔質樹脂層上に設けられた導体におけるクラックの発生が抑制され、結果として導体における導電性及び導体の多孔質樹脂層に対する密着性を向上させることができる。また、基材及び多孔質樹脂層が発熱しないため、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを十分に発熱させることができ、形成される導体における導電性を向上させることができる。更に、基材が発熱しないため、耐熱性が低い基材(言い換えると、加熱されることで変形が生じやすい基材)であっても使用することができ、基材の選択の幅が広がる。なお、本開示において発熱とは、対象物自体が昇温することを表し、対象物の周囲の物が昇温することに起因して対象物が昇温することは含まれない。
【0066】
内部発熱方式としては、生産性向上の観点から、パルス光照射による方式又はマイクロ波照射による方式などが好ましいが、パルス光照射による方式がより好ましい。
パルス光照射におけるパルス光は、光照射期間(照射時間)が数マイクロ秒から数十ミリ秒の短時間の光であり、光照射を複数回繰り返す場合は第一の光照射期間(on)と第二の光照射期間(on)との間に光が照射されない期間(off)を有する光照射を表す。具体的には、パルス光の1回の光照射時間(on)は、約20マイクロ秒から約10ミリ秒の範囲が好ましい。20マイクロ秒より長いと焼結が促進され、形成される導体における導電性が向上する。また、10ミリ秒より短いと光劣化による影響が抑制される。また、1回の光照射期間(on)内で光強度が変化してもよい。また、照射する光の波長は、200nm~3000nmであることが好ましい。また、パルス光を照射する光源としては、例えば、キセノンフラッシュランプ等のフラッシュランプを備える光源が挙げられる。
マイクロ波照射におけるマイクロ波は、波長範囲が1m~1mm(周波数が300MHz~300GHz)の電磁波を表す。
【0067】
パルス光照射又はマイクロ波照射により金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させた場合、これらが急速に発熱し、周囲に存在する還元剤等の有機成分が分解されてガスが発生し、当該ガスに起因して導体内に空隙が生じることで、導体における導電性及び導体の多孔質樹脂層に対する密着性が低下する場合がある。これに対し、本開示の導体は多孔質樹脂層上に形成されるため、発生したガスが多孔質樹脂層内部の細孔を通して外部に放出され、導体における導電性及び導体の多孔質樹脂層に対する密着性の低下が抑制される。このとき、多孔質樹脂の形状が、上記の通り、複数の孔が連続して連結している共連続構造であることで、発生したガスの外部放出がより容易になる。
【0068】
<<導体の製造装置>>
本実施形態の導体の製造装置は、重合性化合物及び溶媒を含む樹脂形成用組成物を基材に対して付与する樹脂形成用組成物付与手段と、付与された樹脂形成用組成物中において重合性化合物を重合させることで基材上に多孔質樹脂層を形成する多孔質樹脂層形成手段と、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを含む導体形成用組成物を多孔質樹脂層に対して付与する導体形成用組成物付与手段と、を含む。また、本実施形態の導体の製造装置は、必要に応じて、その他手段を有してもよい。例えば、多孔質樹脂層形成手段による多孔質樹脂層の形成後であって且つ導体形成用組成物付与手段による付与前において、多孔質樹脂層から溶媒を除去する溶媒除去手段、及び導体形成用組成物付与手段による付与後において、金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させ、多孔質樹脂層上に、金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を含む導体を形成する導体形成手段などを含んでもよい。
【0069】
導体の製造装置の詳細について図1を参照しつつ説明する。図1は、導体の製造装置の一例を示す模式図である。
導体の製造装置100は、上記の樹脂形成用組成物及び導体形成用組成物を用いて導体を製造する装置である。導体の製造装置100は、基材6上に樹脂形成用組成物を付与して樹脂形成用組成物層を形成する工程を実行する樹脂形成用組成物付与工程部10と、樹脂形成用組成物層の重合開始剤を活性化させて重合性化合物の重合により基材6上に形成された多孔質樹脂層8を得る工程を実行する樹脂構造体層形成工程部20と、多孔質樹脂層8を加熱して溶媒を除去する工程を実行する溶媒除去工程部30と、多孔質樹脂層8上に導体形成用組成物を付与して多孔質樹脂層8上の導体前駆体及び多孔質樹脂層8内の混合領域前駆体を形成する工程を実行する導体形成用組成物付与工程部40と、導体形成用組成物に含まれていた金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させて多孔質樹脂層8上の導体及び多孔質樹脂層8内の混合領域を形成する導体形成工程部50と、を備える。導体の製造装置100は、基材6を搬送する複数の搬送部7を備え、搬送部7は、樹脂形成用組成物付与工程部10、樹脂構造体層形成工程部20、溶媒除去工程部30、導体形成用組成物付与工程部40、導体形成工程部50の順に基材6をあらかじめ設定された速度で搬送する。
【0070】
<樹脂形成用組成物付与工程部>
樹脂形成用組成物付与工程部10は、図1に示すように、基材6上に樹脂形成用組成物を付与する樹脂形成用組成物付与手段の一例である印刷装置1aと、樹脂形成用組成物11を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された樹脂形成用組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
【0071】
収容容器1bは樹脂形成用組成物11を収容し、樹脂形成用組成物付与工程部10は、印刷装置1aから樹脂形成用組成物11を吐出して、基材6上に樹脂形成用組成物11を付与して樹脂形成用組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、導体の製造装置100と一体化した構成であってもよいが、導体の製造装置100から取り外し可能な構成であってもよい。また、導体の製造装置100と一体化した収容容器や導体の製造装置100から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0072】
印刷装置1aは、樹脂形成用組成物11を付与できるものであれば、特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に応じた任意の印刷装置を用いることができる。
【0073】
収容容器1bや供給チューブ1cは、樹脂形成用組成物11を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。収容容器1bや供給チューブ1cを構成する材料は、紫外光および可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、樹脂形成用組成物11が外光により重合開始されることが防止される。
【0074】
<樹脂構造体層形成工程部>
樹脂構造体層形成工程部20は、図1に示すように、樹脂形成用組成物に対して熱、光などの活性エネルギー線を照射することにより重合性化合物を重合させる多孔質樹脂層形成手段の一例である照射装置2aと、重合不活性気体を循環させる重合不活性気体循環装置2bを有する。照射装置2aは、樹脂形成用組成物付与工程部10により形成された樹脂形成用組成物層に重合不活性気体存在下において光を照射し多孔質樹脂層を形成させる。
【0075】
照射装置2aは、樹脂形成用組成物層に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択され、樹脂形成用組成物層中の重合性化合物の重合を開始および進行させられるものならば特に限定はなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等の紫外線光源が挙げられる。ただし、短波長の光ほど一般に深部に到達しやすい傾向を持つため、形成する多孔質樹脂層の厚みに応じて光源を選択することが好ましい。
【0076】
重合不活性気体循環装置2bは、大気中に含まれる重合活性な酸素濃度を低下させ、樹脂形成用組成物層の表面近傍の重合性化合物の重合反応を阻害されることなく進行させる役割を担う。そのため、用いられる重合不活性気体は上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えば窒素や二酸化炭素やアルゴンなどが挙げられる。
【0077】
また、重合不活性気体の流量としては阻害低減効果が効果的に得られる事を考慮して、O濃度が20%未満(大気よりも酸素濃度が低い環境)であることが好ましく、0%以上15%以下であることがより好ましく、0%以上5%以下であることが更に好ましい。また、重合不活性気体循環装置2bは安定した重合進行条件を実現させる為に、温度を調節できる温調手段が設けられていることが好ましい。
【0078】
<溶媒除去工程部>
溶媒除去工程部30は、図1に示すように、溶媒除去手段の一例である加熱装置3aを有し、樹脂構造体層形成工程部20により形成した多孔質樹脂層8に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する。溶媒除去工程部30は、溶媒除去工程を減圧下で実施しても良い。
なお、溶媒除去工程部30は、多孔質樹脂層8に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去してもよい。
【0079】
加熱装置3aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒーターや温風ヒーターなどが挙げられる。
また、加熱温度や加熱時間に関しては、多孔質樹脂層8に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0080】
<導体形成用組成物付与工程部>
導体形成用組成物付与工程部40は、図1に示すように、多孔質樹脂層8上に導体形成用組成物を付与する導体形成用組成物付与手段の一例である印刷装置4aと、導体形成用組成物41を収容する収容容器4bと、収容容器4bに貯留された導体形成用組成物を印刷装置4aに供給する供給チューブ4cを備える。
【0081】
収容容器4bは導体形成用組成物41を収容し、導体形成用組成物付与工程部40は、印刷装置4aから導体形成用組成物41を吐出して、多孔質樹脂層8上に導体形成用組成物41を付与して多孔質樹脂層8上の導体前駆体及び多孔質樹脂層8内の混合領域前駆体を形成する。なお、収容容器4bは、導体の製造装置100と一体化した構成であってもよいが、導体の製造装置100から取り外し可能な構成であってもよい。また、導体の製造装置100と一体化した収容容器や導体の製造装置100から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0082】
印刷装置4aは、導体形成用組成物41を付与できるものであれば、特に制限はなく、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等の各種印刷方法に応じた任意の印刷装置を用いることができる。
【0083】
収容容器4bや供給チューブ4cは、導体形成用組成物41を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0084】
<導体形成工程部>
導体形成工程部50は、図1に示すように、導体形成用組成物に含まれていた金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを選択的に発熱させて多孔質樹脂層8上の導体及び多孔質樹脂層8内の混合領域を形成させる導体形成手段の一例である照射装置5aを有する。照射装置5aは、導体形成用組成物に含まれていた金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを内部発熱方式で発熱させ、多孔質樹脂層上に金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を含む導体と、多孔質樹脂層の孔の内部に金属酸化物粒子の還元物及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つの焼結体を有する領域である混合領域と、を形成させる。
【0085】
照射装置5aは、導体形成用組成物に含まれていた金属酸化物粒子及び金属粒子から選ばれる少なくとも1つを内部発熱方式で発熱させることができるものならば特に限定はなく、例えば、上記の通り、パルス光を照射可能な装置又はマイクロ波を照射可能な装置等が挙げられる。
【0086】
<<構造体>>
本実施形態の構造体は、基材と、基材上に形成された多孔質樹脂層と、多孔質樹脂層上に形成された導体と、を有する。また、本実施形態の構造体は、必要に応じて、その他構造を有してもよい。基材、多孔質樹脂層、及び導体の構造及び構成材料等の詳細については上記の通りであるため説明を省略する。
【実施例0087】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0088】
<実施例1>
-樹脂形成用組成物付与工程-
下記の通り調整した樹脂形成用組成物を、基材(PETフィルム、東レ株式会社製)に対し、ディスペンサーを用いて塗布した。なお、基材に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったところ、300℃以下において吸熱ピークを示した。
(樹脂形成用組成物の調整)
以下に示す割合で材料を混合し樹脂形成用組成物を調製した。なお、調整した樹脂形成用組成物において、撹拌しながら波長550nmにおける光の透過率を上記の方法で測定したところ30%以上であった(重合性化合物及び溶媒が相溶していた)。また、調整した樹脂形成用組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を上記の方法で測定したところ1.0%以上であった(重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物及び溶媒が相溶しなくなった)。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社):49.0質量%
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製):50.0質量%
・Irgacure184(BASF製):1.0質量%
【0089】
-樹脂構造体層形成工程-
次に、樹脂形成用組成物を基材に塗布してから1分後に、窒素雰囲気下で紫外線を照射して基材上に多孔質樹脂層を形成した。UV照射条件を以下に示す。
・光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)
・光源波長:365nm
・照射強度:30mW/cm
・照射時間:20s
【0090】
-溶媒除去工程-
次に、120℃のホットプレート上で1分間加熱することで、多孔質樹脂層から樹脂形成用組成物に由来する溶媒を乾燥除去した。
なお、得られた多孔質樹脂層をSEMで観察したところ、0.1~1μm程度の孔径を有する孔が複数連続して連結している共連続構造が観察された。また、基材及び多孔質樹脂層に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったところ、基材における発熱ピーク又は吸熱ピークの温度は、多孔質樹脂層における吸熱ピークの温度より低かった。
【0091】
-導体形成用組成物付与工程-
次に、インクジェット印刷装置(IJ-DESK、GENESIS社製)を用いて、形成した多孔質樹脂層上に導体形成用組成物(酸化銅インク(ICI-003)、Novacentrix社製)を吐出した。その後、100℃のホットプレート上で10分間加熱することで、導体形成用組成物に由来する溶媒を乾燥除去した。
【0092】
-導体形成工程-
次に、光焼結装置(Sinteron2000、Xenon社製)を用い、照射エネルギー3J/cmで光照射を行い、基材上に多孔質樹脂層及び導体が順次積層された配線基板である構造体を作製した。
また、構造体をSEMで観察したところ、多孔質樹脂層には、孔の内部に導体を構成する材料と同一の材料が含まれている領域である混合領域が形成されており、混合領域の孔の内部に含まれる構成及び導体は連続していた。また、導体の厚みを触針式段差計(α-step)により計測したところ1μmであった。また、混合領域の厚みは100nmであった。
【0093】
<実施例2>
実施例1において、基材(PETフィルム、東レ株式会社製)の代わりに異なる基材(PENフィルム、帝人株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして配線基板である構造体を作製した。
なお、基材に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったところ、300℃以下において吸熱ピークを示した。
【0094】
<実施例3>
実施例1において、基材(PETフィルム、東レ株式会社製)の代わりに異なる基材(ポリカーボネートシート、三菱ガス化学株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして配線基板である構造体を作製した。
なお、基材に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったところ、300℃以下において発熱ピークを示した。
【0095】
<比較例1>
実施例1において、樹脂形成用組成物付与工程、樹脂構造体層形成工程、及び溶媒除去工程を行わず、導体形成用組成物付与工程において基材(PETフィルム、東レ株式会社製)上に導体形成用組成物を吐出した以外は実施例1と同様にして配線基板である構造体を作製した。
【0096】
<比較例2>
実施例1において、上記の樹脂形成用組成物の代わりに下記の樹脂形成用組成物を用いた以外は実施例1と同様にして配線基板である構造体を作製した。
なお、下記の樹脂形成用組成物により形成された樹脂をSEMで観察したところ多孔質構造を有さない樹脂層であった。
(樹脂形成用組成物の調整)
以下に示す割合で材料を混合し樹脂形成用組成物を調製した。なお、調整した樹脂形成用組成物において、撹拌しながら波長550nmにおける光の透過率を上記の方法で測定したところ30%以上であった(重合性化合物及び溶媒が相溶していた)。また、調整した樹脂形成用組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率を上記の方法で測定したところ1.0%未満であった(重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物及び溶媒が相溶していた)。
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社):49.0質量%
・シクロヘキサノン(関東化学工業株式会社製):50.0質量%
・Irgacure184(BASF製):1.0質量%
【0097】
<比較例3>
比較例1において、基材(PETフィルム、東レ株式会社製)の代わりに異なる基材(多孔質PETフィルム(IJ-220)、Novacentrix社製)を用いた以外は実施例1と同様にして配線基板である構造体を作製した。
なお、基材に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったところ、300℃以下において吸熱ピークを示した。
【0098】
<比較例4>
比較例1において、基材(PETフィルム、東レ株式会社製)の代わりに異なる基材(非連通多孔質ポリカーボネートフィルム(Isopore VCTP14250)、メルク社製)を用いた以外は実施例1と同様にして配線基板である構造体を作製した。
なお、基材に対して示差走査熱量分析(DSC)を行ったところ、300℃以下において発熱ピークを示した。
【0099】
次に、製造した各構造体に関し、導体における導電性及び導体の隣接部材(多孔質樹脂層等)に対する密着性を下記方法に従って評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0100】
[導電性]
導体の厚みに基づき、四探針法抵抗率計(低抵抗率計、ロレスタ、日東精工アナリテック株式会社製)を用いて四端子法により体積抵抗率を測定し、次の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cm未満である
B:体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cm以上1.0×10-2Ω・cm未満である
C:体積抵抗率が1.0×10-2Ω・cm以上である
【0101】
[密着性]
導体上に貼り付けた粘着テープを剥がすテープ剥離試験を行い、試験後の導体表面の状態を顕微鏡観察し、次の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:クラックが観察されない
B:クラックが観察されるが、欠損は観察されない
C:欠損が観察される
【0102】
【表1】
【0103】
実施例1~3の評価結果によると、本発明の製造方法により製造された構造体は、導電性及び密着性に優れることが分かった。
一方で、比較例1の評価結果によると、基材に対して直接導体を形成した場合、導電性及び密着性が不十分であることが分かった。
また、比較例2の評価結果によると、基材上に形成された樹脂が多孔質構造を有さないものであったため、導電性及び密着性が不十分であることが分かった。
また、比較例3の評価結果によると、耐熱性に劣る多孔質構造を有する基材に対して直接導体を形成した場合、導電性及び密着性が不十分であることが分かった。
また、比較例4の評価結果によると、耐熱性に劣る非連通性の多孔質構造を有する基材に対して直接導体を形成した場合、導電性及び密着性が不十分であることが分かった。
【符号の説明】
【0104】
1a:印刷装置
1b:収容容器
1c:供給チューブ
2a:照射装置
2b:重合不活性気体循環装置
3a:加熱装置
4a:印刷装置
4b:収容容器
4c:供給チューブ
5a:照射装置
6:基材
7:搬送部
8:多孔質の樹脂構造体
10:樹脂形成用組成物付与工程部
11:樹脂形成用組成物
20:樹脂構造体形成工程部
30:溶媒除去工程部
40:導体形成用組成物付与工程部
41:導体形成用組成物
50:導体形成工程部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特許第4426157号
図1