(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171531
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】デジタルアナログ変換回路及びデータドライバ
(51)【国際特許分類】
H03M 1/66 20060101AFI20231124BHJP
H03M 1/80 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H03M1/66 C
H03M1/80
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175347
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2022008558の分割
【原出願日】2019-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土 弘
(57)【要約】
【目的】デジタルアナログ変換処理の高速化を図ることが可能なデジタルアナログ変換回路及びそれを用いた表示装置のデータドライバを提供する。
【構成】本発明は、第1選択状態に設定されたときにはデジタルデータ信号に基づき参照電圧群中から互いに異なる2つの参照電圧を選択し夫々を第1及び第2の選択電圧として出力する一方、第2選択状態に設定されたときには参照電圧群中から重複も含む2つの参照電圧を選択し夫々を第1及び第2の選択電圧として出力するデコーダと、第1及び第2の選択電圧の組合せを、予め設定された重みづけ比で平均化した電圧を増幅して出力する増幅回路と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内挿演算を行う増幅回路を含むデジタルアナログ変換回路であって、
t(tは2以上の整数)ビットからなるデジタルデータ信号を所定のデータ期間毎に受け、前記デジタルデータ信号に基づき、互いに異なる電圧値又は互いに同一の電圧値を有する第1及び第2の電圧を出力するデコーダを含み、
前記増幅回路は、夫々が前記第1及び第2の電圧のうちの一方からなる複数の電圧を、予め設定された重みづけ比で平均化して増幅した電圧を出力電圧として出力し、
前記デコーダは、前記データ期間内の第1の期間に亘り第1選択状態に設定され、前記データ期間内における前記第1の期間に後続する第2の期間に亘り第2選択状態に設定され、
前記第1選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づく互いに異なる電圧値を有する2つの電圧を夫々前記第1及び第2の電圧として出力する一方、前記第2選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づく互いに異なる電圧値を有する2つの電圧のうちの一方又は双方を前記第1及び第2の電圧として出力することを特徴とするデジタルアナログ変換回路。
【請求項2】
前記増幅回路は、第1~第N(Nは2以上の整数)の入力端子を有し、夫々が前記第1の電圧又は前記第2の電圧からなるN個の電圧を前記第1~第Nの入力端子で受け、前記第1~第Nの端子毎に設定された重み付け比で平均化して増幅した電圧を前記出力電圧として出力し、
前記デコーダは、前記第1選択状態に設定されたときには、前記第1~第Nの入力端子のうちのm個(mは1以上の正数)の入力端子に前記第1の電圧を供給すると共に、前記第1~第Nの端子のうちの残りの(N-m)個の入力端子に前記第2の電圧を供給する一方、前記第2選択状態に設定されたときには、前記第1~第Nの入力端子の各々に前記第1の電圧又は前記第2の電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載のデジタルアナログ変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルアナログ変換回路、及び表示装置のデータドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アクティブマトリクス型の表示装置として、液晶表示装置、或いは有機EL表示装置等が主流となっている。このような表示装置には、複数のデータ線と複数の走査線が交差状に配線され、複数のデータ線に画素スイッチを介して接続されている表示セルがマトリクス状に配列された表示パネルと共に、表示パネルの複数のデータ線へ階調レベルに対応したアナログ電圧信号を供給するデータドライバと、表示パネルの複数の走査線へ各画素スイッチのオン、オフを制御する走査信号を供給する走査ドライバと、が搭載されている。データドライバには、映像デジタル信号を輝度レベルに対応したアナログの電圧に変換し、これを増幅した電圧信号を表示パネルの各データ線に供給するデジタルアナログ変換回路が含まれている。
【0003】
以下に、データドライバの概略構成について説明する。
【0004】
データドライバは、例えばシフトレジスタ、データレジスタラッチ、レベルシフタ、DA(digital to analog)変換部を含む。
【0005】
シフトレジスタは、表示コントローラから供給されたスタートパルスに応じて、クロック信号に同期してラッチの選択を行う為の複数のラッチタイミング信号を生成し、データレジスタラッチに供給する。データレジスタラッチは、シフトレジスタから供給されたラッチタイミング信号の各々に基づき、表示コントローラから供給された映像デジタルデータを所定個(例えばn個)毎に取り込み、各映像デジタルデータを表すn個の映像デジタルデータ信号をレベルシフタに供給する。レベルシフタは、データレジスタラッチから供給されたn個の映像デジタルデータ信号の各々に対して、その信号振幅を増加するレベルシフト処理を施して得たn個のレベルシフト後の映像デジタルデータ信号をDA変換部に供給する。
【0006】
DA変換部は、参照電圧生成回路、デコーダ部及び増幅部を含む。
【0007】
参照電圧生成回路は、互いに電圧値が異なる複数の参照電圧を生成してデコーダ部に供給する。例えば、参照電圧生成回路は、電源電圧及び基準電圧間をラダー抵抗で分圧した複数の分圧電圧を参照電圧群としてデコーダ部に供給する。尚、このようなラダー抵抗に
よって生成された複数の参照電圧を用いたデジタルアナログ変換をRDAC方式と称する。
【0008】
デコーダ部は、データドライバの各出力に夫々対応して設けられているn個のデコーダ回路を有する。デコーダ回路の各々は、レベルシフタから供給された映像デジタルデータ信号を受け、この映像デジタルデータ信号に対応した参照電圧を、複数の参照電圧のうちから選択し、選択した参照電圧を増幅部に供給する。
【0009】
増幅部は、デコーダ部の各デコーダで選択された参照電圧を個別に増幅して出力するn個の増幅回路を有する。
【0010】
ところで、上記したDA変換部では、参照電圧生成回路で生成する参照電圧の数を多くするほど、表現できる輝度レベルの階調数(色数)を増やすことができる。しかしながら、参照電圧生成回路で生成する参照電圧の数を増やすとその分だけデータドライバのチップサイズ(製造コスト)が増加する。
【0011】
そこで、上記した増幅回路として、複数の入力電圧を重み付けして平均化(加重平均とも称する)することで、互いに隣接する入力電圧同士の間の電圧を生成する、いわゆる内挿演算を行うオペアンプを採用したデジタルアナログ変換回路が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0012】
このような内挿演算を行う増幅回路(内挿アンプとも称する)によれば、複数の入力電圧に基づく内挿演算により、当該複数の入力電圧で表現できる電圧値の数よりも多い階調数の電圧値を得ることができる。よって、参照電圧生成回路で生成する参照電圧の総数を減らしても、所望とする階調数分の電圧を生成することが可能となる。
【0013】
以下に、上記したデジタルアナログ変換回路に含まれる増幅回路について
図1A及び
図1Bを参照して説明する。
【0014】
図1Aは、当該増幅回路の構成の一例を示す回路図である。
図1Aに示す増幅回路は、x個(xは2以上の整数)の入力電圧V1~Vxを受け、当該入力電圧V1~Vxに対して内挿演算を施すことにより、入力電圧V1~Vxの加重平均電圧を生成して出力する。
【0015】
増幅回路は、入力電圧V1~Vxを受けるためのx個の非反転入力端子P1~Px、単一の反転入力端子、出力端子Sk、同一導電型のx個の差動段回路29_1~29_x、カレントミラー回路28及び増幅段回路26を有する。
【0016】
差動段回路29_xは、Nチャネル型のトランジスタ21_x及び22_xからなる差動対と、差動対を駆動する電流源23_xを有する。電流源23_xは、差動対と電源端子VSSとの間に設けられている。他の差動段回路29_1~29_(x-1)各々の構成は、差動段回路29_xと同じである。各差動対の一方のトランジスタ21_1~21_xの各ゲートが、増幅回路の非反転入力端子P1~Pxを構成する。各差動対の他方のトランジスタ22_1~22_xの各ゲートが共通接続されており、増幅回路の反転入力端子を構成する。
【0017】
増幅回路の反転入力端子は出力端子Skに接続され、ボルテージフォロワ型の帰還増幅回路を構成する。差動段回路29_1~29_x各々の差動対の一方の出力端がノードn21に共通に接続されており、差動段回路29_1~29_x各々の差動対の他方の出力端がノードn22に共通に接続されている。
【0018】
カレントミラー回路28は、Pチャネル型のトランジスタ24及び25を有し、電源端子VDDと、ノードn21及びn22との間に設けられている。増幅段回路26は、少なくともノードn21に生じる電圧を受けて増幅作用を生じ、出力電圧Voutを出力端子Skから増幅出力する。このときの出力電圧Voutの電圧値を電圧Vexpとする。
【0019】
以下に、増幅回路の非反転入力端子P1~Pxに入力される信号電圧V1~Vxと、電圧Vexpとの関係について説明する。
【0020】
尚、信号電圧V1~Vxは、所定のデータ期間毎に上記したデコーダ回路で選択されたレベルの電圧を有する。信号電圧V1~Vxは、それぞれが1つ前のデータ期間の電圧からステップ状に電圧値が変化するステップ信号電圧であり、増幅回路の出力ダイナミックレンジに対して十分小さい電圧範囲内の同一電圧を含むx個の電圧群である。
【0021】
電圧Vexpは、増幅回路の増幅率が1のとき、入力される信号電圧V1~Vxの加重平均に相当する。
【0022】
以下に、差動段回路29_1~29_xにおける第j番目(jは1~xの整数)の回路の差動対を構成するトランジスタが、チャネル長Lとチャネル幅Wとの比に相当する基準サイズ比(W/L比)に対してAj倍、つまり重み付け比がAjとなる場合を一例にとって、増幅回路の動作を説明する。
【0023】
第j番目の差動対(21_j、22_j)のドレイン電流Ia_j、Ib_jは、下記の数式(5)及び数式(6)式で表される。
【0024】
Ia_j=(Aj・β/2)・(Vj-VTH)2 ・・・(5)
Ib_j=(Aj・β/2)・(Vexp-VTH)2 ・・・(6)
β:トランジスタが基準サイズ比1のときの利得係数
VTH:トランジスタの閾値電圧
差動段回路29_1~29_xの共通接続された出力端は、カレントミラー回路28の入力(ノードn22)及び出力(ノードn21)に接続され、差動段回路29_1~29_xの共通接続された出力端の出力電流が等しくなるように制御される。これにより、差動段回路29_1~29_xの出力電流について、以下の数式(7)が成立する。
【0025】
Ia#1+Ia#2+…+Ia#x=Ib#1+Ib#2+…+Ib#x・・・(7)
数式(5)、数式(6)において、jを1~xの範囲で展開して、数式(7)に代入する。ここで、閾値電圧VTHの一次項に関しては、両辺が等しいとすると、下記の数式(8)及び数式(9)が導かれる。
【0026】
A1・V1+A2・V2+…+Ax・Vx=(A1+A2+…+Ax)×Vexp ・・・(8)
Vexp=(A1・V1+…+Ax・Vx)/(A1+…+Ax) ・・・(9)
従って、増幅回路は、数式(9)で表されるように、各差動対に入力される信号電圧と重みづけ比との積の総和(A1・V1+…+Ax・Vx)を、重みづけ比の総和(A1+…+Ax)で割った値、すなわち信号電圧V1~Vxの加重平均に相当する電圧Vexpを、出力電圧Voutとして出力する。なお、
図1AはNチャネル型トランジスタの差動対を含む差動段回路とPチャネル型トランジスタのカレントミラー回路の構成を示すが、Pチャネル型トランジスタの差動対を含む差動段回路とNチャネル型トランジスタのカレントミラー回路の構成、あるいはNチャネル型及びPチャネル型の両導電型トランジスタの差動対を含む差動段回路とカレントミラー回路の構成を採用してもよい。いずれも数式(9)が成り立つ。
【0027】
次に、
図1Aの増幅回路を、前述したデータドライバに含まれるデコーダ回路の出力増幅回路に適用する場合について説明する。
【0028】
図1Bは、差動段回路29_1~29_xが同一構成、すなわち各差動段回路の重み付け比が同一に構成された場合のデコーダ回路各々のN個の出力端子T1~TNと、増幅回路の非反転入力端子P1~Pxと、重み付け比との対応関係を示す図である。
【0029】
例えば、電圧値が互いに異なる2つの電圧VA、VBから重複も含む2つの電圧の組合せを、デコーダ回路のN(Nは2以上の整数)個の出力端子T1~TNから出力して増幅回路のx個(但し、xは2の(N-1)乗個)の非反転入力端子に所定比で供給する場合を想定する。この際、
図1Aの増幅回路は、2つの電圧VA、VBに基づき、両電圧間を2の(N-1)乗個(=x個)に分割した複数の電圧を出力することができる。
【0030】
具体的には、例えば「N」及び「x」を共に2、つまりデコーダ回路の出力端子T1及びT2を、増幅回路の非反転入力端子P1及びP2に対応させる場合、T1及びT2に対する重み付け比は1:1となる。よって、互いに異なる2つの電圧VA、VBの組合せを電圧V(T1)、電圧V(T2)として増幅回路の非反転入力端子P1及びP2へ選択入力することで、電圧VA、VBの組合せ(VA、VA)、(VB、VB)、(VA、VB)に応じて、電圧VA、VB、([VA+VB]/2)を増幅回路から出力できる。また、上記では、
図1Aの差動段回路29_1~29_xが同一構成の場合を説明したが、差動段回路ごとに所定の重み付けとなるように構成してもよい。
【0031】
また、例えば「N」を3、「x」を4、つまりデコーダ回路の出力端子T1~T3を、増幅回路の非反転入力端子P1~P4に対応させ、この際、P3及びP4を共通化し、端子(T1、T2、T3)への重み付け比を(1:1:2)とする。異なる2つの電圧VA、VBの組合せを電圧V(T1)、V(T2)、V(T3)として増幅回路の非反転入力端子へ選択入力することで、電圧VA、VBの組合せに応じて、電圧VA、VBを4個に分割した電圧を増幅回路から出力できる。同様にして更なる拡張も容易に可能である。
【0032】
これにより、
図1Aに示す増幅回路を備えたデジタルアナログ変換回路は、参照電圧生成回路で生成する参照電圧の数、デコーダ回路で参照電圧を選択するスイッチトランジスタ数を大幅に減らすことができる。特に映像デジタル信号のビット数が多い場合には、デジタルアナログ変換器の回路規模増大を抑え、チップ面積の増大を抑制する有効な手段となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】1696914237462_11696914237462_2
【特許文献2】1696914237462_31696914237462_4
【特許文献3】1696914237462_51696914237462_6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
近時、表示パネルの大画面化及び高解像度化に伴い、データドライバが駆動しなければならない表示パネルのデータ線の負荷容量が増加し、データドライバがデータ線を駆動する1画素(表示セル)あたりの駆動期間(1データ期間とも称する)が短くなる傾向にある。
【0035】
データ線の負荷容量が大きく且つ駆動期間が短くなると、データ線の全域に亘って所定値以上の充電率を確保するためには、データドライバは高速駆動が必要となる。尚、デー
タ線の充電率が所定値より低下すると輝度むら等の画質劣化を生じる。
【0036】
例えばフレーム周波数120Hzの4K表示パネル(データ線数:3840x3、走査線数:2160)の1データ期間は約3.7usであり、解像度が4Kの4倍の8K表示パネルの1データ期間は1.85us程度である。増幅回路は、動作電流を増やして出力電圧のスルーレートを上げることで、ある程度は高速化を図ることができる。しかしながら表示パネルの高精細化に伴い1データ期間が短くなったことで、増幅回路の入力電圧の変化速度が無視できなくなってきている。増幅回路の入力電圧の変化速度は、増幅回路の出力電圧の変化速度に影響し、データ線の充電率(最終的には表示セル内電極の充電率)の低下がパネル表示品質の低下を招く。
【0037】
ここで、前述したように、内挿演算を行う増幅回路は複数の入力端子を有しており、複数の入力端子の寄生容量が増幅回路の入力電圧の変化速度に影響する場合がある。以下にこの点について説明する。
【0038】
尚、説明の便宜上、デコーダ部に含まれるデコーダ回路各々の出力端子数Nを「2」、増幅回路の非反転入力端子数xを「2」とする。この際、電圧の変化速度の低下を招くワースト条件は、増幅回路の2つの非反転入力端子に同じ参照電圧が入力される場合である。つまり、デコーダ回路で選択された1つの参照電圧が、2つの出力端子を介して増幅回路の2つの非反転入力端子に夫々供給される場合である。
【0039】
例えば増幅回路の入力電圧が、1つ前のデータ期間では参照電圧VrMであり、次のデータ期間では、この電圧VrMよりも高い参照電圧Vr0aに変化する場合、その変化速度は以下の条件に依存する。つまり、デコーダ回路内における参照電圧Vr0aを伝送する配線抵抗及び選択スイッチのオン抵抗と、この参照電圧Vr0aを受ける増幅回路の2つの非反転入力端子のゲート寄生容量(例えば
図1AのCp1,Cp2)に依存する。
【0040】
データドライバの全ての出力に対応した複数の増幅回路、つまり出力増幅回路の全ての非反転入力端子が参照電圧Vr0aを受けるというワーストケースでは、インピーダンスの時定数に従って増幅回路の入力電圧がVrMからVr0aへ変化する速度が遅くなる。よって、この際、増幅回路の出力電圧の変化も遅くなるという問題が生じる。なお、各増幅回路の非反転入力端子数xが多いほど増幅回路の出力電圧変化の遅延は増加する。
【0041】
また、増幅回路の複数の非反転入力端子に同一参照電圧を供給する場合と別に、増幅回路の複数の非反転入力端子に異なる参照電圧を供給する場合もある。このため、階調レベルごとに増幅回路の出力電圧の変化速度が異なるという問題も生じる。これらの問題により輝度低下や表示むら等の表示品質の低下を招く。
【0042】
そこで、本発明では、内挿演算を行う増幅回路を含むデジタルアナログ変換回路の高速処理化、及び、増幅回路の出力電圧の変化速度の均等化を図ることが可能なデジタルアナログ変換回路及びそれを用いた表示装置のデータドライバを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明に係るデジタルアナログ変換回路は、内挿演算を行う増幅回路を含むデジタルアナログ変換回路であって、互いに異なる電圧値を有する複数の参照電圧からなる参照電圧群を生成する参照電圧生成回路と、t(tは2以上の整数)ビットからなるデジタルデータ信号を所定のデータ期間毎に受け、前記デジタルデータ信号に基づき、前記参照電圧群中から重複を含む2つの参照電圧を選択し、夫々を第1及び第2の選択電圧として出力するデコーダと、を含み、前記増幅回路は、夫々が前記第1の選択電圧又は前記第2の選択電圧からなる複数の電圧を、予め設定された重みづけ比で平均化して増幅した電圧を出力電圧として出力し、前記デコーダは、前記データ期間内の第1の期間に亘り第1選択状態に設定され、前記データ期間内における前記第1の期間に後続する第2の期間に亘り第2選択状態に設定され、前記第1選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づき前記参照電圧群中から互いに異なる2つの参照電圧を選択して夫々を前記第1及び第2の選択電圧として出力する一方、前記第2選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づき前記参照電圧群中から重複を含む2つの参照電圧を選択して夫々を前記第1及び第2の選択電圧として出力する。
【0044】
また、本発明に係るデジタルアナログ変換回路は、内挿演算を行う増幅回路を含むデジタルアナログ変換回路であって、t(tは2以上の整数)ビットからなるデジタルデータ信号を所定のデータ期間毎に受け、前記デジタルデータ信号に基づき、互いに異なる電圧値又は互いに同一の電圧値を有する第1及び第2の電圧を出力するデコーダを含み、前記増幅回路は、夫々が前記第1及び第2の電圧のうちの一方からなる複数の電圧を、予め設定された重みづけ比で平均化して増幅した電圧を出力電圧として出力し、前記デコーダは、前記データ期間内の第1の期間に亘り第1選択状態に設定され、前記データ期間内における前記第1の期間に後続する第2の期間に亘り第2選択状態に設定され、前記第1選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づく互いに異なる電圧値を有する2つの電圧を夫々前記第1及び第2の電圧として出力する一方、前記第2選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づく互いに異なる電圧値を有する2つの電圧のうちの一方又は双方を前記第1及び第2の電圧として出力する。
【0045】
また、本発明に係るデジタルアナログ変換回路は、互いに異なる電圧値を有する複数の参照電圧を有する参照電圧群を生成する参照電圧生成回路と、前記参照電圧生成回路に接続され、t(tは2以上の整数)ビットからなるデジタルデータ信号に基づいて、前記参照電圧群から第1及び第2の選択電圧を選択して出力するデコーダと、前記デコーダに接続され、前記第1の選択電圧及び前記第2の選択電圧の少なくとも一方からなる複数の第1の電圧のそれぞれを、予め設定された重みづけ比で平均化して増幅することで複数の出力電圧を出力する増幅回路と、を備えたことを特徴とするデジタルアナログ変換回路。
【0046】
本発明に係るデータドライバは、輝度レベルをt(tは2以上の整数)ビットで表す映像データ信号を受け、前記映像データ信号を前記輝度レベルに対応した大きさの電圧値を有する駆動電圧に変換して表示デバイスに供給するデジタルアナログ変換部を含むデータドライバであって、前記デジタルアナログ変換部は、互いに異なる電圧値を有する複数の参照電圧からなる参照電圧群を生成する参照電圧生成回路と、前記映像データ信号に基づき、前記参照電圧群中から重複も含む2つの参照電圧を選択し、夫々を第1及び第2の選択電圧として出力するデコーダと、夫々が前記第1の選択電圧又は前記第2の選択電圧からなる複数の電圧を、予め設定された重みづけ比で平均化して増幅した電圧を前記駆動電圧として出力する増幅回路と、を有し、前記デコーダは、自身を第1選択状態及び第2選択状態のうちのいずれか一方に設定せしめる制御信号を受け、前記第1選択状態に設定されたときには、前記映像データ信号に基づき前記参照電圧群中から互いに異なる2つの参照電圧を選択して夫々を前記第1及び第2の選択電圧として出力する一方、前記第2選択状態に設定されたときには、前記映像データ信号に基づき前記参照電圧群中から重複も含む2つの参照電圧を選択して夫々を前記第1及び第2の選択電圧として出力する。
【0047】
また、本発明に係るデータドライバは、輝度レベルをt(tは2以上の整数)ビットで表す映像データ信号を受け、前記映像データ信号を前記輝度レベルに対応した大きさの電圧値を有する駆動電圧に変換して表示デバイスに供給するデジタルアナログ変換部を含むデータドライバであって、前記デジタルアナログ変換部は、t(tは2以上の整数)ビットからなるデジタルデータ信号を受け、前記デジタルデータ信号に基づき、互いに異なる電圧値又は互いに同一の電圧値を有する第1及び第2の電圧を出力するデコーダと、夫々が前記第1及び第2の電圧のうちの一方からなる複数の電圧を、予め設定された重みづけ比で平均化して増幅した電圧を出力電圧として出力する増幅回路と、を有し、前記デコーダは、第1選択状態及び第2選択状態のうちのいずれか一方に設定することを指示する制
御信号を受け、前記第1選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づく互いに異なる電圧値を有する2つの電圧を夫々前記第1及び第2の電圧として出力する一方、前記第2選択状態に設定されたときには、前記デジタルデータ信号に基づく互いに異なる電圧値を有する2つの電圧のうちの一方又は双方を前記第1及び第2の電圧として出力する。
【発明の効果】
【0048】
本発明では、複数の電圧を受けて当該複数の電圧に基づく内挿演算を行う増幅回路を含むデジタルアナログ変換回路のデコーダとして、制御信号に応じて第1選択状態及び第2選択状態のうちの一方に設定され、且つ、選択状態が切替可能な以下のようなデコーダを採用する。
【0049】
当該デコーダは、第1選択状態に設定されたときには、デジタルデータ信号に基づき互いに異なる2つの電圧値を有する第1及び第2の選択電圧を増幅回路に供給する。一方、第2選択状態に設定されたときには、このデコーダは、デジタルデータ信号に基づく互いに異なる電圧値又は同一の電圧値を夫々が有する第1及び第2の選択電圧を増幅回路に供給する。
【0050】
これにより、第1選択状態では、デジタルデータ信号の内容に拘らず、互いに異なる電圧値を有する2つの選択電圧のうちの一方の選択電圧が増幅回路の複数の入力端子のうちのm個(mは1以上の整数)に供給され、他方の選択電圧が増幅回路のその他の入力端子に供給される。
【0051】
よって、デジタルデータ信号の内容に拘らず、1つの選択電圧が増幅回路の全入力端子に供給される従来のディジタルアナログ変換回路に場合に比べて、増幅回路の入力部での寄生容量に伴い生じる遅延時間を短縮することができる。したがって、ワーストケースに於いて増幅回路の出力電圧の変化速度の遅延が改善され、階調レベルごとの増幅回路の出力電圧の変化速度の均一化も可能となる。これにより表示品質も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】内挿演算を行う増幅回路の構成を示す回路図である。
【
図1B】デコーダ回路のN個の出力端子T1~TNと、増幅回路の非反転入力端子P1~Pxと、重み付け比との対応関係を示す図である。
【
図2】本発明に係るデジタルアナログ変換回路、及びデータドライバを含む表示装置200の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】データドライバ103の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】デジタルデータ信号としての映像データ信号によって表される輝度の階調レベルと、駆動電圧との対応関係の一例を示す特性図である。
【
図5】本発明によるDA変換回路の構成の一例を表すブロック図である。
【
図6】デコーダ30の動作を第1選択状態と第2選択状態に分けて表す図である。
【
図7】第1選択状態及び第2選択状態の各々で、デコーダ30が増幅回路20の端子T1~TNに供給する選択電圧の波形の一例を表す図である。
【
図8】参照電圧生成回路10及び変換回路DC1~DC3を抜粋して、各変換回路に含まれる増幅回路20及びデコーダ30の第1の期間Tc1での状態を模式的に表す図である。
【
図9A】増幅回路20の入力端子数NがN=2の場合に好適な仕様を表す図である。
【
図9B】増幅回路20の入力端子数NがN=3の場合に好適な仕様を表す図である。
【
図10A】第2サブデコーダ32による第1選択状態での動作形態の一例を表す図である。
【
図10B】第2サブデコーダ32による第2選択状態での動作形態の一例を表す図である。
【
図11】第2サブデコーダ32の他の実施例としての第2サブデコーダ32Aの内部構成の一例を示す回路図である。
【
図12】第2サブデコーダ32の他の実施例としての第2サブデコーダ32Bの内部構成の一例を示す回路図である。
【
図13A】第2サブデコーダ32による第1選択状態での動作形態の他の一例を表す図である。
【
図13B】第2サブデコーダ32による第2選択状態での動作形態の他の一例を表す図である。
【
図14】第2サブデコーダ32の他の実施例としての第2サブデコーダ32Cの内部構成の一例を示す回路図である。
【
図15】第1サブデコーダ31の一部の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図2は、本発明に係るデジタルアナログ変換回路、及びデータドライバを含む表示装置200の概略構成を示すブロック図である。
【0054】
図2に示すように、表示装置200は、表示パネル100、駆動制御部101、走査ドライバ102及びデータドライバ103を有する。
【0055】
表示パネル100は、例えば液晶又は有機ELパネル等からなり、2次元画面の水平方向に伸張するr個(rは2以上の自然数)の水平走査線S1~Srと、2次元画面の垂直方向に伸張するn個(nは2以上の自然数)のデータ線D1~Dnと、を含む。水平走査線及びデータ線の各交叉部には、画素を担う表示セルが形成されている。
【0056】
駆動制御部101は、各走査線に供給する水平走査パルスを生成する走査タイミング信号を走査ドライバ102に供給する。
【0057】
更に、駆動制御部101は、映像信号VDに基づき、スタートパルス信号STP、クロック信号CLK、制御信号CTL及びXCTLを含む各種の制御信号、及び映像デジタル信号DVSを生成し、データドライバ103に供給する。
【0058】
走査ドライバ102は、駆動制御部101から供給された走査タイミング信号に基づいて、水平走査パルスを表示パネル100の水平走査線S1~Srの各々に順次印加する。
【0059】
データドライバ103は、駆動制御部101から供給された各種の制御信号(STP、CLK、CTL、XCTL)に応じて、映像デジタル信号DVSに含まれる、各画素の輝度レベルを例えば8ビットにて個別に表す映像データPDの系列を取り込む。尚、映像データPDのビット数は8ビットに限定されない。そして、データドライバ103は、取り込んだ映像データPDの系列を1水平走査線分(n個)ずつ、各映像データPDが示す輝度レベルに対応した大きさの電圧値を有するn個の駆動電圧G1~Gnに変換し、夫々を表示パネル100のデータ線D1~Dnに供給する。
【0060】
図3は、データドライバ103の内部構成を示すブロック図である。
【0061】
図3に示すように、データドライバ103は、シフトレジスタ50、データレジスタラッチ60、レベルシフタ70、及びDA(digital to analog)変換部80を含む。
【0062】
シフトレジスタ50は、駆動制御部101から供給されたスタートパルスSTPに応じて、クロック信号CLKに同期してラッチの選択を行う為のラッチタイミング信号U1~Unを生成し、データレジスタラッチ60に供給する。
【0063】
データレジスタラッチ60は、ラッチタイミング信号U1~Unに基づき、駆動制御部101から供給された映像データPDを順次取り込み、1水平走査線分(n個)毎に、各映像データPDを表す映像データ信号R1~Rnをレベルシフタ70に供給する。
【0064】
レベルシフタ70は、映像データ信号R1~Rnの各々に対して、その信号レベルを増加するレベルシフト処理を施して得たn個の映像データ信号J1~JnをDA変換部80に供給する。
【0065】
DA変換部80は、デジタルデータ信号としての映像データ信号J1~Jnの各々を受け、制御信号CTL及びCTLXに基づき、夫々をアナログの電圧値を有する駆動電圧G1~Gnに変換して出力する。
【0066】
図4は、デジタルデータ信号としての映像データ信号によって表される輝度の階調レベルと、駆動電圧との対応関係の一例を示す特性図である。
図4に示す一例では、映像データ信号によって表される輝度の階調レベルに対して、表示パネル100のデータ線に印加される駆動電圧は線形特性を有している。尚、
図4に示す一例では、映像データ信号によって表される輝度の階調レベルに対して直線的に駆動電圧が変化しているが、所定の階調レベルの範囲区間内で線形近似であればよく、その区間ごとに傾きが変化しても良い。また階調レベルに対する駆動電圧が線形特性の区間だけでなく非線形特性の区間も有する場合、本発明は線形特性の区間に対して適用することが可能である。
【0067】
DA変換部80は、
図3に示すように、参照電圧生成回路10と、変換回路DC1~DCnと、を含む。
【0068】
参照電圧生成回路10は、夫々電圧値が異なる複数の参照電圧からなる参照電圧群VXを生成し、変換回路DC1~DCnの各々に供給する。
【0069】
変換回路DC1~DCnは、夫々が個別に映像データ信号J1~Jnを受け、制御信号CTL及びCTLXに基づき、映像データ信号J1~Jn毎に、その映像データ信号に対応した電圧値を有する参照電圧を、参照電圧群VX中から選択する。そして、変換回路DC1~DCnは、夫々が選択した参照電圧を駆動電圧G1~Gnとして出力する。尚、
図3に示すように、変換回路DC1~DCnは、映像データ信号J1~Jnに夫々対応して設けられており、互いに同一の内部構成を有する。
【実施例0070】
図5は、
図3に示す変換回路DC1~DCnのうちからDC1を抜粋して、当該変換回路DC1と参照電圧生成回路10とから構成される、本発明によるデジタルアナログ変換回路の構成の一例を表すブロック図である。
【0071】
参照電圧生成回路10は、例えば所定の電位VGH及びこの電位VGHより低い電位VGLを受け、電位VGH及びVGL間の電圧を互いに電圧値が異なる複数の電圧に分圧するラダー抵抗LDRを含む。参照電圧生成回路10は、このラダー抵抗LDRによって分圧された複数の電圧を参照電圧群VXとして生成し、変換回路DC1~DCnの各々に供給する。
【0072】
変換回路DC1は、増幅回路20及びデコーダ30を含む。
【0073】
デコーダ30は、参照電圧群VXと、第1選択状態及び第2選択状態のうちの一方の状態に設定させることを指示する制御信号(CTL、XCTL)と、例えば8ビットからなるデジタルデータ信号としての映像データ信号J1と、を受ける。
【0074】
デコーダ30は、第1選択状態を指示する制御信号(CTL、XCTL)を受けた場合には、映像データ信号J1に基づき、参照電圧群VX中から互いに異なる2つの参照電圧VA及びVBを選択する。そして、デコーダ30は、選択した2つの参照電圧VA及びVBを夫々第1及び第2の選択電圧として出力する。また、デコーダ30は、第2選択状態を指示する制御信号(CTL、XCTL)を受けた場合には、映像データ信号J1に基づき、参照電圧群VX中から重複をも含む2つの参照電圧を選択する。そして、デコーダ30は、選択した2つの参照電圧のうちの一方又は両方を第1及び第2の選択電圧として出力する。
【0075】
デコーダ30は、例えば
図5に示すように第1サブデコーダ31及び第2サブデコーダ32を含む。
【0076】
第1サブデコーダ31は、映像データ信号J1中の例えば最上位ビットを含む上位ビット群からなる第1ビット信号群BT1、及び参照電圧群VXを受ける。第1サブデコーダ31は、当該第1ビット信号群BT1に基づき、参照電圧群VX中から互いに異なる2つの参照電圧を選択し、選択した2つの参照電圧を夫々選択電圧VA及びVBとして、端子TA及びTBを介して増幅回路20に供給する。
【0077】
第2サブデコーダ32は、映像データ信号J1中の、例えば最下位ビットを含む下位ビット群からなる第2ビット信号群BT2と、制御信号(CTL、XCTL)と、選択電圧VA及びVBと、を受ける。第2サブデコーダ32は、第2ビット信号群BT2、及び制御信号(CTL、XCTL)に基づき、選択電圧VA及びVBのうちの一方、又は両方を第1及び第2の選択電圧として増幅回路20に供給する。
【0078】
増幅回路20は、非反転入力端子として第1~第N(Nは2以上の整数)の端子T1~TNを備えた差動増幅器、いわゆるオペアンプからなり、例えば
図1Aの増幅回路を用いることができる。
【0079】
増幅回路20は、端子T1~TNで受けた、夫々が第1の選択電圧又は第2の選択電圧からなるN個の電圧を、端子T1~TNの各々に予め設定されている重みづけ比で平均化し、増幅したものを出力電圧Voutとして出力する。この際、変換回路DC1に含まれる増幅回路20は、当該出力電圧Voutを駆動電圧G1として出力する。
【0080】
尚、上記した選択電圧VA及びVBは、好ましくは参照電圧群VX中で互いに隣接する電圧値、或いは電圧値の差が小さい電圧の組合せとする。
【0081】
以下に、
図5に示すデコーダ30(31、32)の動作について説明する。
【0082】
図6は、デコーダ30の動作を、第1選択状態と第2選択状態とに分けて表す図である。
【0083】
図6において、制御信号(CTL、XCTL)は、例えばCTL=0(論理値のローレベル)のときに第1選択状態を指示し、CTL=1(論理値のハイレベル)のときに第2選択状態を指示するものとして説明する。尚、XCTLはCTLの相補信号である。また
増幅回路20の入力端子数N、上記した「m」については、m≧1、N≧2とし、選択電圧はVA≠VBであるものとする。
【0084】
デコーダ30は、第1選択状態(CTL=0)では、デジタルデータ信号としての例えば8ビットの映像データ信号J1に基づき、参照電圧群VX中から重複しない2つの異なる参照電圧VA及びVBを選択する。ここで、デコーダ30は、これら2つの異なる参照電圧を、第1の選択電圧としての電圧VA、及び第2の選択電圧としての電圧VBとする。そして、デコーダ30は、増幅回路20の端子T1~TNのうちのm個(mは1以上の整数)の端子に選択的に第1の選択電圧VAを供給し、かかる端子T1~TNのうちの残りの(N-m)個の端子に選択的に第2の選択電圧VBを供給する。
【0085】
一方、第2選択状態(CTL=1)では、デコーダ30は、映像データ信号J1に基づき、参照電圧群VX中から、重複をも含む2つの参照電圧を、第1の選択電圧としての電圧VA又はVB、及び第2の選択電圧としての電圧VA又はVBとして選択する。そして、デコーダ30は、増幅回路20の端子T1~TNの各々に第1及び第2の選択電圧として電圧VA又はVBを供給する。このとき、増幅回路20の端子T1~TNに電圧VAのみ、又は電圧VBのみが供給される場合も含む。
【0086】
図7は、
図5に示す構成において、制御信号(CTL,XCTL)による第1選択状態及び第2選択状態の各々で、デコーダ30が増幅回路20の端子T1~TNに供給する第1及び第2の選択電圧の波形の一例を表す図である。尚、
図7では、増幅回路20が1画素分の映像データ信号を受けてから、その映像データ信号に対応した選択電圧を出力するまでの1データ期間を示している。
【0087】
図7に示すように、1データ期間は第1の期間Tc1と、第1の期間Tc1に引き続く第2の期間Tc2とを有する。第1の期間Tc1では、制御信号(CTL,XCTL)がCTL=0(ローレベル:L)であり、これに応じてデコーダ30が第1選択状態に設定される。第2の期間Tc2では、制御信号(CTL,XCTL)がCTL=1(ハイレベル:H)であり、これに応じてデコーダ30が第2選択状態に設定される。なお、制御信号XCTLは、CTLの相補信号であるので説明は省略する。
【0088】
図7において、期間Tc1の実線波形W1及びW2は、デコーダ30から出力された第1選択状態での選択電圧の出力波形である。破線波形W3は、従来のデコーダ、つまり1データ期間に亘り上記した第2選択状態を維持するデコーダの出力波形である。また、
図7では、最大の選択電圧VrMから最低の選択電圧Vr0に切り替わる1データ期間において、データドライバのn個の全出力が同じ動作を行うというワーストケースの例を示している。
【0089】
破線波形W3は、1データ期間内において、1つ前の1データ期間に選択された選択電圧VrMから選択電圧Vr0に変化する。この際、従来のデコーダは、1データ期間に亘り選択電圧Vr0を選択し、これを増幅回路20の端子T1~TNに供給力する。破線波形W3の電圧変化の速さは、増幅回路20の入力容量(差動対トランジスタのゲート寄生容量)が負荷となり、当該選択電圧Vr0を伝送する配線の抵抗やデコーダ自体のインピーダンスも合せた時定数に依存する。
【0090】
一方、本実施例では、1データ期間の開始直後の第1の期間Tc1ではデコーダ30が第1選択状態(CTL=0)に設定され、異なる2つの電圧(VA、VB)=(Vr0、Vr1)が第1及び第2の選択電圧として選択される。ここで選択電圧Vr1は、例えば選択電圧Vr0と隣接する電圧、例えばVr0よりも1段階だけ高い電圧とする。そして、デコーダ30は、増幅回路20の端子T1~TNのうちのm個に選択電圧Vr0を出力
し、端子T1~TNのうちの(N-m)個に選択電圧Vr1を供給する。選択電圧Vr0及びVr1がそれぞれ供給される各端子の実線波形W1及びW2は、1つの参照電圧線に接続される増幅回路20の入力容量が減ることで、その電圧変化が破線波形W3よりも速くなる。なお、増幅回路20の端子T1~TNは所定の重み付け比が設定されており、増幅回路20は、選択電圧Vr0、Vr1の間の電圧、すなわち重み付け比に応じた加重平均電圧を出力する。選択電圧Vr0、Vr1の重み付け比が1:1に近いほど波形W1、W2の電圧変化は同等に近づき、電圧変化も速くなる。
【0091】
第2の期間Tc2では、デコーダ30が第2選択状態(CTL=1)に設定され、映像データ信号J1に応じた選択電圧Vr0が第1及び第2の選択電圧として選択される。そしてデコーダ30は、増幅回路20の端子T1~TNに選択電圧Vr0を供給する。第1の期間Tc1で選択電圧Vr1が供給されていた端子は、選択電圧Vr0の供給に切り替わるが、選択電圧Vr0及びVr1同士の電位差が小さいため速やかに切り替わる。増幅回路20は、選択電圧Vr0が入力され、選択電圧Vr0を増幅して出力する。
【0092】
以上のように、本実施例では、制御信号(CTL、XCTL)により1データ期間を第1選択状態の期間Tc1と、第2選択状態の期間Tc2とに分けた例を示す。この際、第1選択状態時(T1)には、デコーダ30は、互いに異なる電圧値を有する選択電圧群を増幅回路20に供給する。一方、第2選択状態時(T2)には、デコーダ30は、デジタルデータ信号(J1)に基づく互いに同一の電圧値、又は互いに異なる電圧値を夫々が有する選択電圧群を増幅回路20に供給する。これにより、増幅回路20での入力電圧の変化を加速させることができ、それに伴い増幅回路20の出力電圧の変化速度も速めることが可能となる。また本発明が適用可能な、全階調レベルに対して同様の制御を行うことにより、階調レベルごとの増幅回路20の出力電圧の変化速度を揃えることができる。
【0093】
以下に、
図5に示す構成の変換回路DC1~DCnを含むデータドライバ103による効果について、増幅回路20の入力端子数N及び上記した「m」を夫々、N=2、m=1とした一例をもって、
図8を参照しつつ説明する。
【0094】
図8は、変換回路DC1~DCnのうちからDC1~DC3各々の増幅回路20、デコーダ30と、参照電圧生成回路10と、を抜粋して、第1の期間Tc1での状態を模式的に表す図である。
【0095】
第1の期間Tc1では変換回路DC各々のデコーダ30は第1選択状態に設定される。
図8に示す一例では、第1の期間Tc1において、デコーダ30がデータドライバ103の全出力に対応したn個の増幅回路20各々の複数の入力端子に、互いの電位差が小さい2つの異なる選択電圧Vr0及びVr1を供給する。この際、選択電圧Vr0を受ける各増幅回路20の入力端子各々の寄生容量Cp1が接続される配線LV0と、選択電圧Vr1を受ける入力端子各々の寄生容量Cp2が接続される配線LV1とは異なる配線、つまり互いに電気的に接続されていない配線である。よって、従来のデコーダのように、かかる第1の期間Tc1において、配線LV0又はLV1が、全ての増幅回路各々の入力端子に寄生する寄生容量Cp1及びCp2の両方に接続される場合に比べて、配線LV0及びLV1にそれぞれ接続される寄生容量が小さくなり、それに伴い、各入力端子の電圧変化が速くなる。そして、第1の期間Tc1において、各増幅回路の入力端子が受けた電圧がVr0、Vr1に十分近づいたら、第2の期間Tc2において従来のデコーダと同様な動作状態に戻す。
【0096】
これにより、第2の期間Tc2において全出力に対応したn個の増幅回路20の全ての入力端子が配線LV0及びLV1のうちの一方に接続されるというワーストケースでも、1データ期間内の増幅回路の入力電圧の変化を加速させることができる。また階調レベル
ごとの増幅回路の入力電圧の変化の速さも揃えることができる。その結果、増幅回路の出力電圧変化を加速させ、階調間の出力電圧変化の速さを均一化させることができる。
尚、上記した一例では、第1選択状態に設定されている間(Tc1)にデコーダが選択する参照電圧を、出力電圧のレベルに対応した参照電圧と、その参照電圧に最も近い電圧値を有する参照電圧とにしているがこれに限定されない。
例えば、直前の1データ期間で増幅回路20が出力した電圧(直前出力電圧と称する)に対して、現時点の1データ期間で増幅回路20が出力する電圧(現出力電圧)が低くなる場合には、第1選択状態に設定されている間に亘り、デコーダは、直前出力電圧よりも低く且つ互いに異なる2つの参照電圧を選択すれば良い。また、上記した直前出力電圧に対して現出力電圧が高くなる場合には、第1選択状態に設定されている間に亘り、デコー
ダは、直前出力電圧よりも高く且つ互いに異なる2つの参照電圧を選択すれば良い。
なお、増幅回路20の入力端子数Nは拡張可能である。例えば、端子数NをN=4とし、4個の端子T1、T2、T3、T4の重み付け比を1:1:2:4とし、その出力電圧Voutを、
Vout=[V(T1)+V(T2)+2×V(T3)+4×V(T4)]/8 とする仕様の拡張も可能である。その場合の仕様は、8レベル置きに参照電圧が設けられ、ビットコードに応じて異なる2つの参照電圧が増幅回路20の4個の入力端子に振り分けられて供給される。