(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171541
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】超音波診断装置、及び超音波診断装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175659
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2022142863の分割
【原出願日】2018-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝也
(72)【発明者】
【氏名】森本 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知
(57)【要約】
【課題】超音波画像の画質に影響を及ぼすことなく、また、回路構成の大幅な変更を招くことなく、既存の送信回路を用いて、超音波振動子の分極処理を行うことができる超音波診断装置、及び超音波診断装置の作動方法を提供する。
【解決手段】超音波内視鏡を有する超音波診断装置の制御回路は、超音波画像の取得を行う場合には、超音波画像の取得のために超音波を発生させる複数の超音波振動子にそれぞれ印加する診断用駆動パルスからなる送信信号を生成するように送信回路を制御し、分極処理を行う場合には、複数の超音波振動子の分極処理を行うために診断用駆動パルスと同じ設定可能電圧範囲内の異なる分極用駆動電圧であり、超音波画像の取得のためのプローブ周波数帯域と異なる周波数の分極用駆動パルスを生成するように送信回路を制御する。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像、及び内視鏡画像を取得する超音波診断装置であって、
複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アレイを用いて超音波を送信し、かつ前記超音波の反射波を受信する超音波観察部を備える超音波内視鏡と、
前記複数の超音波振動子から前記超音波を発生させるために、前記複数の超音波振動子に送信信号を送信する送信回路、前記複数の超音波振動子が受信した前記反射波に基づく受信信号を出力する受信回路、及び前記超音波画像を取得するために、前記受信信号を画像化して前記超音波画像を生成する超音波画像生成部を備える超音波用プロセッサ装置と、を有し、
前記複数の超音波振動子は、いずれも単結晶振動子であり、
前記複数の超音波振動子の各々を構成する圧電素子の厚みは、75μm~125μmであり、
前記超音波用プロセッサ装置は、更に、前記超音波の送信、及び前記反射波の受信を行わせるとともに、前記送信回路を用いて前記複数の超音波振動子に対して分極処理を行わせる制御回路を備え、
前記制御回路は、前記超音波画像の取得を行う場合には、前記超音波画像の取得のために前記超音波を発生させる前記複数の超音波振動子にそれぞれ印加する診断用駆動パルスからなる前記送信信号を生成するように前記送信回路を制御し、前記分極処理を行う場合には、前記複数の超音波振動子の前記分極処理を行うために、前記診断用駆動パルスと同じ設定可能電圧範囲内の大きさの異なる分極用駆動電圧であり、前記超音波画像の取得のためのプローブ周波数帯域と異なる周波数の分極用駆動パルスを生成するように前記送信回路を制御し、
前記分極用駆動パルスを前記複数の超音波振動子に印加して、前記分極用駆動パルスで前記複数の超音波振動子の前記分極処理を行う超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記プローブ周波数帯域と、前記分極処理を行う際に前記複数の超音波振動子を駆動する前記分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの周波数帯域とは、感度-20dB以上のレベルが重ならないように、前記送信回路を制御する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記分極用駆動パルスの駆動波形の前記メインローブの周波数帯域は、前記プローブ周波数帯域より低周波である請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記分極用駆動パルスの駆動波形の前記メインローブに対して、前記プローブ周波数帯域内において付随して生じる1つ以上のサイドローブの感度は、全て10dB以下であり、前記1つ以上のサイドローブの感度の平均は、-20dB以下である請求項2、又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記分極用駆動パルスの駆動波形の前記メインローブの周波数帯域は、2.3MHz以下である請求項2~4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記プローブ周波数帯域は、2.7MHz~11.7MHzである請求項1~5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記分極用駆動パルスの駆動波形は、ユニポーラの波形である請求項1~6のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記送信回路は、前記分極用駆動パルスとして、複数のユニポーラの波形を、前記波形の間隔を前記送信回路において規定される最小クロック数の時間空けて出力する請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記分極用駆動電圧は、前記診断用駆動パルスの画像用駆動電圧より高い電圧である請求項1~8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記診断用駆動パルスの画像用駆動電圧、及び前記分極用駆動パルスの前記分極用駆動電圧は、前記設定可能電圧範囲が同じであり、
前記送信回路は、前記画像用駆動電圧と、前記分極用駆動電圧と切り替えて用いる請求項1~9のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記超音波振動子アレイ上の前記複数の超音波振動子は、複数のグループにまとめられ、各グループの超音波振動子には、各グループ毎に異なる分極処理を行う送信信号により独立して分極処理が行われる請求項1~10のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
超音波画像、及び内視鏡画像を取得する超音波診断装置の作動方法であって、
前記超音波診断装置は、複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アレイを有する超音波観察部を備える超音波内視鏡と、前記複数の超音波振動子に送信信号を送信する送信回路、前記複数の超音波振動子が受信した反射波に基づく受信信号を出力する受信回路、及び前記受信信号を画像化して前記超音波画像を生成する超音波画像生成部を有する超音波用プロセッサ装置と、を備え
前記複数の超音波振動子は、いずれも単結晶振動子であり、
前記複数の超音波振動子の各々を構成する圧電素子の厚みは、75μm~125μmであり、
前記超音波画像の取得のために超音波を発生させる前記複数の超音波振動子にそれぞれ印加する診断用駆動パルスからなる前記送信信号を生成するように前記送信回路を制御するステップと、
前記送信回路から生成された前記送信信号を前記複数の超音波振動子に送信して、前記診断用駆動パルスを前記複数の超音波振動子に印加して前記超音波を発生させるステップと、
前記超音波の前記反射波を前記複数の超音波振動子が受信するステップと、
前記受信回路から前記複数の超音波振動子が受信した前記反射波に基づく受信信号を出力するステップと、
前記超音波画像生成部が前記受信信号を受信して前記受信信号を画像化して前記超音波画像を生成するステップと、を有し、
前記複数の超音波振動子の分極処理を行うために、前記診断用駆動パルスと同じ設定可能電圧範囲内の大きさの異なる分極用駆動電圧であり、前記超音波画像の取得のためのプローブ周波数帯域と異なる周波数の分極用駆動パルスを生成するように前記送信回路を制御するステップと、
前記分極用駆動パルスを前記複数の超音波振動子に印加して、前記分極用駆動パルスで前記複数の超音波振動子の前記分極処理を行うステップと、を有する、超音波診断装置の作動方法。
【請求項13】
前記診断用駆動パルスからなる前記送信信号を生成するように前記送信回路を制御するステップは、前記プローブ周波数帯域と、前記分極処理を行う際に前記複数の超音波振動子を駆動する前記分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの周波数帯域とは、感度-20dB以上のレベルが重ならないように、前記送信回路を制御する請求項12に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項14】
前記分極用駆動パルスの駆動波形の前記メインローブの周波数帯域は、前記プローブ周波数帯域より低周波である請求項13に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項15】
前記分極用駆動パルスの駆動波形の前記メインローブに対して、前記プローブ周波数帯域内において付随して生じる1つ以上のサイドローブの感度は、全て10dB以下であり、前記1つ以上のサイドローブの感度の平均は、-20dB以下である請求項13、又は14に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項16】
前記分極用駆動パルスの駆動波形の前記メインローブの周波数帯域は、2.3MHz以下である請求項13~15のいずれか1項に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項17】
前記プローブ周波数帯域は、2.7MHz~11.7MHzである請求項12~16のいずれか1項に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項18】
前記分極用駆動パルスの駆動波形は、ユニポーラの波形である請求項12~17のいずれか1項に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項19】
前記分極用駆動パルスを生成するように前記送信回路を制御するステップは、前記分極用駆動パルスとして、複数のユニポーラの波形を、前記波形の間隔を前記送信回路において規定される最小クロック数の時間空けて出力するように、前記送信回路を制御する請求項18に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項20】
前記分極用駆動電圧は、前記診断用駆動パルスの画像用駆動電圧より高い電圧である請求項12~19のいずれか1項に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項21】
前記診断用駆動パルスの画像用駆動電圧、及び前記分極用駆動パルスの前記分極用駆動電圧は、前記設定可能電圧範囲が同じであり、
前記送信回路は、前記画像用駆動電圧と、前記分極用駆動電圧と切り替えて用いる請求項12~20のいずれか1項に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項22】
前記超音波振動子アレイ上の前記複数の超音波振動子は、複数のグループにまとめられ、各グループの超音波振動子には、各グループ毎に分極処理を行う異なる送信信号により独立して分極処理が行われる請求項12~21のいずれか1項に記載の超音波診断装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波内視鏡が備える複数の超音波振動子に対して分極処理を行う超音波診断装置、及び超音波診断装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経消化管による胆膵観察を目的とする超音波診断装置として、内視鏡の先端部に超音波観察部を設けた超音波内視鏡が用いられている。このような超音波診断装置は、被検体の体腔内において複数の超音波振動子をそれぞれ駆動させて超音波を送受信することで被検体の体腔内の超音波画像を取得する。この超音波診断装置では、被検体の体腔内に入れた状態で感度低下を回避する必要がある。
超音波診断装置において複数の超音波振動子は、例えば、圧電素子である単結晶振動子によって構成されており、通常、分極した状態で用いられる。単結晶振動子によって構成された超音波振動子は、高感度にて超音波を受信することが可能であるが、駆動時間が長くなるにつれて分極の度合いが低下する脱分極現象が生じることがある。脱分極現象が生じると、超音波振動子の受信感度が低下してしまい、超音波画像の画質に影響を及ぼす虞がある。このため、単結晶振動子の脱分極の対策として、再分極処理(単に分極処理とも言う)を行うことで感度が回復することも知られている。
【0003】
脱分極のリスクは、振動子の厚さ、即ち共振周波数と相関があり、振動子の厚い(低周波)の振動子ほど、リスクが低くなる。そのため、体表用で単結晶振動子を用いた振動子を用いる場、1~6MHzの低周波数帯域で用いることで、脱分極のリスクを回避している(特許文献1参照)。
これに対し、被検体の体腔内において各超音波振動子を駆動して超音波を送受信する場合、超音波の周波数を7~8MHzレベルの高周波帯域に設定する必要があるため、比較的厚みが薄い振動子を利用することになるが、振動子の厚みが薄くなるほど、脱分極現象の発生リスクが高くなる。このため、厚みが薄い振動子の場合には再分極のプロセスが必要となる(特許文献2~3参照)。
【0004】
そのため、これまでに、超音波診断装置における脱分極に対する技術が開発されてきている。一例を挙げて説明すると、特許文献1に記載の圧電センサー装置としての超音波センサーは、圧電体及びこの圧電体を挟む一対の電極を有する圧電素子と、圧電素子から出力された検出信号を検出する検出処理を実施する検出回路と、圧電素子に分極用電圧を印加して分極処理を実施する専用の分極処理回路とを有する。このような構成の特許文献1に記載の超音波センサーでは、検出回路で脱分極を圧電素子間の特性の差分から検出し、専用の分極処理回路を用いて、分極処理を行うことで、分極を回復させることができる。なお、分極処理は、例えば、電源投入されるタイミング、検出処理を実施する旨の要求信号が入力されるタイミング(毎受信タイミング)、あるいは検出処理の終了後に所定の待機移行時間が経過したタイミングで実施される。これにより、圧電素子に脱分極現象が生じたとしても、その圧電素子を再度分極させることができ、圧電素子の受信感度を維持することが可能となる。
【0005】
別の例を挙げると、特許文献2に記載の超音波センサーは、圧電素子と、圧電素子を駆動する駆動回路とを有する。駆動回路は、まず、第1の電位V1によって圧電素子の分極を維持する工程、次に、最大電位VHと最小電位VLを少なくとも1回ずつ付与して圧電素子に超音波を送信させる工程、次に、第2の電位V2で圧電素子を待機させる工程、次に、第2の電位V2から第3の電位V3へ上昇させる工程、次に、圧電素子が超音波を受信する間第3の電位V3を維持する工程、次に、第3の電位V3から第1の電位V1へ戻す工程を有する駆動波形によって圧電素子を駆動する。このような構成の特許文献2に記載の超音波診断装置では、上記の6つの工程を有する駆動波形によって圧電素子を駆動することで、圧電素子の分極を維持しながら圧電素子を駆動することが可能となる。即ち、特許文献2には、圧電素子を駆動する波形を工夫することで、脱分極を防ぐ点が記載されている。
【0006】
また、特許文献3に記載の超音波装置は、被検体への超音波の送受信を行なう超音波振動子と、電源回路、送信用パルス出力部、加熱パルス出力部、分極電圧出力部、受信ビームフォーマ、及び分極制御部を備える送受信回路、又は送受信回路に加えて更に温度検出部、を備える集積回路とを有している。
特許文献3に記載の超音波装置は、加熱パルス出力部、及び分極電圧出力部を送信用パルス出力部とは別に設け、加熱パルス出力部からの加熱パルスを超音波振動子に出力して超音波振動子を加熱した状態で、分極電圧出力部から必要な直流電圧の分極電圧を超音波振動子に出力して超音波振動子を分極させる。特許文献3に記載の技術は、常温では、超音波を送信するために送信用パルス出力部から超音波振動子に出力される送信用パルスの電圧よりも高い分極電圧を、超音波振動子を加熱することにより、常温下より低くすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-005137号公報(特許第5874208号)
【特許文献2】特開2017-143353号公報
【特許文献3】特許第6158017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、特許文献1、2、及び3の各々に記載の超音波センサー、及び超音波装置では、圧電体からなる圧電素子、及び超音波振動子の分極を回復させる、又は維持することが可能である。
しかしながら、特許文献1に記載の超音波センサーのように、再度分極を行うための専用回路、及び脱分極の検出機構等を設けることはハードウェアの変更要素が大きく、既存のシステムに搭載するのは非常に困難であるという問題がある。
また、特許文献2に記載の超音波センサーにおいては、脱分極を防止し、分極を維持するために、各駆動波形中に直流成分入れることによって駆動波形のパルス長が長くなるため、フレームレートが低下して超音波画像の画質に影響を及ぼす可能性があるという問題がある。また、このような駆動波形を使って脱分極を防ぐには、画質と脱分極のリスクとのトレードオフとなるという問題がある。
【0009】
また、特許文献3に記載の超音波装置においては、超音波装置のみで再分極させることができるが、同一の集積回路、又は送受信回路で送信用パルス、及び加熱パルスと直流電圧である分極電圧を出力するため、回路規模が大きくなり、コストアップを招くという問題がある。
また、特許文献3に記載の超音波装置においては、超音波振動子を加熱する必要があるが、被検体の体腔内で使用される超音波内視鏡に適用する場合、内視鏡検査中は加熱すると、プローブの先端温度の上昇を引き起こしてしまい好ましくないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、超音波画像を取得する時間とは異なる非診断時間において、超音波画像の画質に影響を及ぼすことなく、また、回路構成の大幅な変更、及び回路規模の拡大を招くことなく、超音波内視鏡の超音波振動子に送信信号を送信する既存の送信回路を用いて、超音波振動子の分極処理を行うことができる超音波診断装置、及び超音波診断装置の作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の超音波診断装置は、超音波画像、及び内視鏡画像を取得する超音波診断装置であって、複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アレイを用いて超音波を送信し、かつ超音波の反射波を受信する超音波観察部を備える超音波内視鏡と、複数の超音波振動子から超音波を発生させるために、複数の超音波振動子に送信信号を送信する送信回路、複数の超音波振動子が受信した反射波に基づく受信信号を出力する受信回路、及び超音波画像を取得するために、受信信号を画像化して超音波画像を生成する超音波画像生成部を備える超音波用プロセッサ装置と、を有し、複数の超音波振動子は、いずれも単結晶振動子であり、複数の超音波振動子の各々を構成する圧電素子の厚みは、75μm~125μmであり、超音波用プロセッサ装置は、更に、超音波の送信、及び反射波の受信を行わせるとともに、送信回路を用いて複数の超音波振動子に対して分極処理を行わせる制御回路を備え、制御回路は、超音波画像の取得を行う場合には、超音波画像の取得のために超音波を発生させる複数の超音波振動子にそれぞれ印加する診断用駆動パルスからなる送信信号を生成するように送信回路を制御し、分極処理を行う場合には、複数の超音波振動子の分極処理を行うために、診断用駆動パルスと同じ設定可能電圧範囲内の大きさの異なる分極用駆動電圧であり、超音波画像の取得のためのプローブ周波数帯域と異なる周波数の分極用駆動パルスを生成するように送信回路を制御し、分極用駆動パルスを複数の超音波振動子に印加して、分極用駆動パルスで複数の超音波振動子の分極処理を行う。
【0012】
ここで、制御回路は、プローブ周波数帯域と、分極処理を行う際に複数の超音波振動子を駆動する分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの周波数帯域とは、感度-20dB以上のレベルが重ならないように、送信回路を制御することが好ましい。
また、分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの周波数帯域は、プローブ周波数帯域より低周波であることが好ましい。
また、分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブに対して、プローブ周波数帯域内において付随して生じる1つ以上のサイドローブの感度は、全て-10dB以下であり、1つ以上のサイドローブの感度の平均は、-20dB以下であることが好ましい。
また、分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの周波数帯域は、2.3MHz以下であることが好ましい。
また、プローブ周波数帯域は、2.7MHz~11.7MHzであることが好ましい。
【0013】
また、分極用駆動パルスの駆動波形は、ユニポーラの波形であることが好ましい。
また、送信回路は、分極用駆動パルスとして、複数のユニポーラの波形を、波形の間隔を送信回路において規定される最小クロック数の時間空けて出力することが好ましい。
また、分極用駆動電圧は、診断用駆動パルスの画像用駆動電圧より高い電圧であることが好ましい。
また、診断用駆動パルスの画像用駆動電圧、及び分極用駆動パルスの分極用駆動電圧は、設定可能電圧範囲が同じであり、送信回路は、画像用駆動電圧と、分極用駆動電圧と切り替えて用いることが好ましい。
また、超音波振動子アレイ上の複数の超音波振動子は、複数のグループにまとめられ、各グループの超音波振動子には、各グループ毎に異なる分極処理を行う送信信号により独立して分極処理が行われることが好ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様の超音波診断装置の作動方法は、超音波画像、及び内視鏡画像を取得する超音波診断装置の作動方法であって、超音波診断装置は、複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アレイを有する超音波観察部を備える超音波内視鏡と、複数の超音波振動子に送信信号を送信する送信回路、複数の超音波振動子が受信した反射波に基づく受信信号を出力する受信回路、及び受信信号を画像化して超音波画像を生成する超音波画像生成部を有する超音波用プロセッサ装置と、を備え、複数の超音波振動子は、いずれも単結晶振動子であり、複数の超音波振動子の各々を構成する圧電素子の厚みは、75μm~125μmであり、超音波画像の取得のために超音波を発生させる複数の超音波振動子にそれぞれ印加する診断用駆動パルスからなる送信信号を生成するように送信回路を制御するステップと、送信回路から生成された送信信号を複数の超音波振動子に送信して、診断用駆動パルスを複数の超音波振動子に印加して超音波を発生させるステップと、超音波の反射波を複数の超音波振動子が受信するステップと、受信回路から複数の超音波振動子が受信した反射波に基づく受信信号を出力するステップと、超音波画像生成部が受信信号を受信して受信信号を画像化して超音波画像を生成するステップと、を有し、複数の超音波振動子の分極処理を行うために、診断用駆動パルスと同じ設定可能電圧範囲内の異なる分極用駆動電圧であり、超音波画像の取得のためのプローブ周波数帯域と異なる周波数の分極用駆動パルスを生成するように送信回路を制御するステップと、分極用駆動パルスを複数の超音波振動子に印加して、分極用駆動パルスで複数の超音波振動子の分極処理を行うステップと、を有する。
【0015】
ここで、診断用駆動パルスからなる送信信号を生成するように送信回路を制御するステップは、プローブ周波数帯域と、分極処理を行う際に複数の超音波振動子を駆動する分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの周波数帯域とは、感度-20dB以上のレベルが重ならないように、送信回路を制御することが好ましい。
また、分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの周波数帯域は、プローブ周波数帯域より低周波であることが好ましい。
また、分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブに対して、プローブ周波数帯域内において付随して生じる1つ以上のサイドローブの感度は、全て-10dB以下であり、1つ以上のサイドローブの感度の平均は、-20dB以下であることが好ましい。
また、分極用駆動パルスの駆動波形の前記メインローブの周波数帯域は、2.3MHz以下であることが好ましい。
また、プローブ周波数帯域は、2.7MHz~11.7MHzであることが好ましい。
【0016】
分極用駆動パルスの駆動波形は、ユニポーラの波形であることが好ましい。
また、分極用駆動パルスを生成するように送信回路を制御するステップは、分極用駆動パルスとして、複数のユニポーラの波形を、波形の間隔を送信回路において規定される最小クロック数の時間空けて出力するように、送信回路を制御することが好ましい。
また、分極用駆動電圧は、診断用駆動パルスの画像用駆動電圧より高い電圧であることが好ましい。
また、診断用駆動パルスの画像用駆動電圧、及び分極用駆動パルスの分極用駆動電圧は、設定可能電圧範囲が同じであり、送信回路は、画像用駆動電圧と、分極用駆動電圧と切り替えて用いることが好ましい。
また、超音波振動子アレイ上の前記複数の超音波振動子は、複数のグループにまとめられ、各グループの超音波振動子には、各グループ毎に分極処理を行う異なる送信信号により独立して分極処理が行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波画像を取得する時間とは異なる非診断時間において、複数の超音波振動子の分極処理を行う。そのため、超音波画像の画質を低下させることなく、複数の超音波振動子の受信感度を常に良好に保つことができ、従って、超音波画像の画質に影響を及ぼすことなく、常に高画質な超音波画像を取得することができる。
また、本発明によれば、超音波内視鏡の超音波振動子に送信信号を送信する既存の送信回路を用いて複数の超音波振動子の分極処理を行うため、既存の回路構成を大幅に変更することなく、また、回路規模の拡大を招くことなく、超音波振動子の分極処理を行うことができる。
本発明によれば、単結晶振動子を採用する際にも、その分極に対して最適な波形で再分極することができる高感度の超音波内視鏡を有する超音波診断装置を提供でき、また、高感度の超音波内視鏡において単結晶振動子の分極に対する再分極を最適な波形で行うことができる超音波診断装置の作動方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す超音波内視鏡の挿入部の先端部及びその周辺を示す平面図である。
【
図3】
図2に示す超音波内視鏡の挿入部の先端部を
図2に図示のI-I断面にて切断したときの断面を示す図である。
【
図4】
図1に示す超音波用プロセッサ装置の構成を示すブロック図である。
【
図5A】
図4に示す送信回路から送信される分極用駆動パルスの駆動波形の一例を示すグラフである。
【
図5B】
図5Aに示す分極用駆動パルスの駆動波形の感度と周波数の関係を示すグラフである。
【
図6A】
図4に示す送信回路から送信される分極用駆動パルスの駆動波形の他の一例を示すグラフである。
【
図6B】
図5Aに示す分極用駆動パルスの駆動波形、及び
図6Aに示す分極用駆動パルスの駆動波形の感度と周波数の関係を示すグラフである。
【
図7A】
図4に示す送信回路から送信される分極用駆動パルスのパルス波形の他の一例を示すグラフである。
【
図7B】
図7Aに示す分極用駆動パルスの駆動波形の感度と周波数の関係を示すグラフである。
【
図7C】
図4に示す送信回路から送信される分極用駆動パルスのパルス波形の他の一例を示すグラフである。
【
図7D】
図7Cに示す分極用駆動パルスの駆動波形の感度と周波数の関係を示すグラフである。
【
図8A】
図4に示す送信回路から送信される診断用駆動パルスのパルス波形の他の一例を示すグラフである。
【
図8B】
図8Aに示す診断用駆動パルスの駆動波形の感度と周波数の関係を示すグラフである。
【
図9】
図1に示す超音波診断装置を用いた診断処理の流れを示す図である。
【
図10】診断処理中の診断ステップの手順を示す図である。
【
図11】分極処理を行う場合の処理の流れを示す図である。
【
図12】超音波診断の実施期間中に、電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線のスキャンタイミングを表す一例の概念図である。
【
図14】超音波診断の実施期間中に分極処理を行う場合に、走査線をスキャンするタイミング、及び分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
【
図15】超音波診断を行うための走査線のライン密度を減らした場合に、分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
【
図16】超音波診断を行うための走査線のライン数を減らした場合に、分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
【
図17】超音波診断を行うための走査線のライン間隔を減らした場合に、分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
【
図18】超音波診断の実施期間中に分極処理を行う場合に、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子に対して分極処理を行う時間を長くするための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
【
図19】中央部、及び両端部の超音波振動子を表す一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る超音波診断装置を、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、以下に詳細に説明する。
なお、本実施形態は、本発明の代表的な実施態様であるが、あくまでも一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0020】
<<超音波診断装置の概要>>
本実施形態に係る超音波診断装置10について、
図1を参照しながら、その概要を説明する。
図1は、超音波診断装置10の概略構成を示す図である。
超音波診断装置10は、超音波を用いて、被検体である患者の体内の観察対象部位の状態を観察(以下、超音波診断ともいう)するために用いられる。ここで、観察対象部位は、患者の体表側からは検査な困難な部位であり、例えば胆嚢又は膵臓である。超音波診断装置10を用いることにより、患者の体腔である食道、胃、十二指腸、小腸、及び大腸等の消化管を経由して、観察対象部位の状態及び異常の有無を超音波診断することが可能である。
超音波診断装置10は、超音波画像、及び内視鏡画像を取得するものであり、
図1に示すように、超音波内視鏡12と、超音波用プロセッサ装置14と、内視鏡用プロセッサ装置16と、光源装置18と、モニタ20と、送水タンク21aと、吸引ポンプ21bと、操作卓100とを有する。
【0021】
超音波内視鏡12は、内視鏡スコープであり、患者の体腔内に挿入される挿入部22と、医師又は技師等の術者(ユーザ)によって操作される操作部24と、挿入部22の先端部40に取り付けられた超音波振動子ユニット46(
図2、及び
図3を参照)と、を備える。術者は、超音波内視鏡12の機能によって、患者の体腔内壁の内視鏡画像と、観察対象部位の超音波画像を取得する。
ここで、「内視鏡画像」は、患者の体腔内壁を光学的手法によって撮影することで得られる画像である。また、「超音波画像」は、患者の体腔内から観察対象部位に向かって送信された超音波の反射波(エコー)を受信し、その受信信号を画像化することで得られる画像である。
なお、超音波内視鏡12については、後の項で詳しく説明する。
【0022】
超音波用プロセッサ装置14は、ユニバーサルコード26及びその端部に設けられた超音波用コネクタ32aを介して超音波内視鏡12に接続される。超音波用プロセッサ装置14は、超音波内視鏡12の超音波振動子ユニット46を制御して超音波を送信させる。また、超音波用プロセッサ装置14は、送信された超音波の反射波(エコー)を超音波振動子ユニット46が受信したときの受信信号を画像化して超音波画像を生成する。
なお、超音波用プロセッサ装置14については、後の項で詳しく説明する。
【0023】
内視鏡用プロセッサ装置16は、ユニバーサルコード26及びその端部に設けられた内視鏡用コネクタ32bを介して超音波内視鏡12に接続される。内視鏡用プロセッサ装置16は、超音波内視鏡12(詳しくは、後述する固体撮像素子86)によって撮像された観察対象隣接部位の画像データを取得し、取得した画像データに対して所定の画像処理を施して内視鏡画像を生成する。
ここで、「観察対象隣接部位」とは、患者の体腔内壁のうち、観察対象部位と隣り合う位置にある部分である。
なお、本実施形態では、超音波用プロセッサ装置14及び内視鏡用プロセッサ装置16が、別々に設けられた2台の装置(コンピュータ)によって構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、1台の装置によって超音波用プロセッサ装置14及び内視鏡用プロセッサ装置16の双方が構成されてもよい。
【0024】
光源装置18は、ユニバーサルコード26及びその端部に設けられた光源用コネクタ32cを介して超音波内視鏡12に接続される。光源装置18は、超音波内視鏡12を用いて観察対象隣接部位を撮像する際に、赤光、緑光及び青光の3原色光からなる白色光又は特定波長光を照射する。光源装置18が照射した光は、ユニバーサルコード26に内包されたライトガイド(不図示)を通じて超音波内視鏡12内を伝搬し、超音波内視鏡12(詳しくは、後述する照明窓88)から出射される。これにより、観察対象隣接部位が光源装置18からの光によって照らされる。
【0025】
モニタ20は、超音波用プロセッサ装置14及び内視鏡用プロセッサ装置16に接続されており、超音波用プロセッサ装置14により生成された超音波画像、及び内視鏡用プロセッサ装置16により生成された内視鏡画像を表示する。超音波画像及び内視鏡画像の表示方式としては、いずれか一方の画像を切り替えてモニタ20に表示する方式でもよく、両方の画像を同時に表示する方式でもよい。超音波画像及び内視鏡画像の表示モードについては後述する。
なお、本実施形態では、一台のモニタ20に超音波画像及び内視鏡画像を表示するが、超音波画像表示用のモニタと、内視鏡画像表示用のモニタとが別々に設けられてもよい。また、モニタ20以外の表示形態、例えば、術者が携帯する端末のディスプレイに表示する形態にて超音波画像及び内視鏡画像を表示してもよい。
【0026】
操作卓100は、超音波診断に際して術者が必要な情報を入力したり、超音波用プロセッサ装置14に対して超音波診断の開始指示を行うなどのために設けられた装置である。操作卓100は、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド及びタッチパネル等によって構成されている。操作卓100が操作されると、その操作内容に応じて超音波用プロセッサ装置14のCPU(制御回路)152(
図4参照)が装置各部(例えば、後述の受信回路142及び送信回路144)を制御する。
【0027】
具体的に説明すると、術者は、超音波診断を開始する前段階で、検査情報(例えば、年月日及びオーダ番号等を含む検査オーダ情報、及び、患者ID及び患者名等を含む患者情報)を操作卓100にて入力する。検査情報の入力完了後、術者が操作卓100を通じて超音波診断の開始を指示すると、超音波用プロセッサ装置14のCPU152が、入力された検査情報に基づいて超音波診断が実施されるように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する。
また、術者は、超音波診断の実施に際して、各種の制御パラメータを操作卓100にて設定することが可能である。制御パラメータとしては、例えば、ライブモード及びフリーズモードの選択結果、表示深さ(深度)の設定値、及び、超音波画像生成モードの選択結果等が挙げられる。
ここで、「ライブモード」は、所定のフレームレートにて得られる超音波画像(動画像)を逐次表示(リアルタイム表示)するモードである。「フリーズモード」は、過去に生成された超音波画像(動画像)の1フレームの画像(静止画像)を、後述のシネメモリ150から読み出して表示するモードである。
【0028】
本実施形態において選択可能な超音波画像生成モードは、複数存在し、具体的には、B(Brightness)モード、CF(Color Flow)モード及びPW(Pulse Wave)モードである。Bモードは、超音波エコーの振幅を輝度に変換して断層画像を表示するモードである。CFモードは、平均血流速度、フロー変動、フロー信号の強さ又はフローパワー等を様々な色にマッピングしてBモード画像に重ねて表示するモードである。PWモードは、パルス波の送受信に基づいて検出される超音波エコー源の速度(例えば、血流の速度)を表示するモードである。
なお、上述した超音波画像生成モードは、あくまでも一例であり、上述した3種類のモード以外のモード、例えば、A(Amplitude)モード、M(Motion)モード及び造影モード等が更に含まれてもよいし、ドップラー画像を得るモードが含まれていても良い。
【0029】
<<超音波内視鏡12の構成>>
次に、超音波内視鏡12の構成について、既出の
図1及び
図2~
図4を参照しながら説明する。
図2は、超音波内視鏡12の挿入部22の先端部及びその周辺を拡大して示した平面図である。
図3は、超音波内視鏡12の挿入部22の先端部40を
図2に図示のI-I断面にて切断したときの断面を示す断面図である。
超音波内視鏡12は、前述したように挿入部22及び操作部24を有する。挿入部22は、
図1に示すように先端側(自由端側)から順に、先端部40、湾曲部42及び軟性部43を備える。先端部40には、
図2に示すように超音波観察部36及び内視鏡観察部38が設けられている。超音波観察部36には、
図3に示すように、複数の超音波振動子48を備える超音波振動子ユニット46が配置されている。
また、
図2に示すように先端部40には処置具導出口44が設けられている。処置具導出口44は、鉗子、穿刺針、若しくは高周波メス等の処置具(不図示)の出口となる。また、処置具導出口44は、血液及び体内汚物等の吸引物を吸引する際の吸引口にもなる。
【0030】
湾曲部42は、先端部40よりも基端側(超音波振動子ユニット46が設けられている側とは反対側)に連設された部分であり、湾曲自在である。軟性部43は、湾曲部42と操作部24との間を連結している部分であり、可撓性を有し、細長く延びた状態で設けられている。
挿入部22及び操作部24の各々の内部には、送気送水用の管路及び吸引用の管路が、それぞれ複数形成されている。さらに、挿入部22及び操作部24の各々の内部には、一端が処置具導出口44に通じる処置具チャンネル45が形成されている。
次に、超音波内視鏡12の構成要素のうち、超音波観察部36、内視鏡観察部38、送水タンク21a及び吸引ポンプ21b、並びに操作部24に関して詳しく説明する。
【0031】
(超音波観察部)
超音波観察部36は、超音波画像を取得するために設けられた部分であり、挿入部22の先端部40において先端側に配置されている。超音波観察部36は、
図3に示すように超音波振動子ユニット46と、複数の同軸ケーブル56と、FPC(Flexible Printed Circuit)60とを備える。
超音波振動子ユニット46は、超音波探触子(プローブ)に相当し、患者の体腔内において、後述する複数の超音波振動子48が配列された超音波振動子アレイ50を用いて超音波を送信し、且つ、観察対象部位にて反射した超音波の反射波(エコー)を受信して受信信号を出力する。本実施形態に係る超音波振動子ユニット46は、コンベックス型であり、放射状(円弧状)に超音波を送信する。ただし、超音波振動子ユニット46の種類(型式)については特にこれに限定されるものではなく、超音波を送受信できるものであれば他の種類でもよく、例えば、セクタ型、リニア型及びラジアル型等であってもよい。
【0032】
超音波振動子ユニット46は、
図3に示すように、バッキング材層54と、超音波振動子アレイ50と、音響整合層74と、音響レンズ76とを積層させることで構成されている。
超音波振動子アレイ50は、一次元アレイ状に配列された複数の超音波振動子48(超音波トランスデューサ)からなる。より詳しく説明すると、超音波振動子アレイ50は、N個(例えば、N=128)の超音波振動子48が先端部40の軸線方向(挿入部22の長手軸方向)に沿って凸湾曲状に等間隔で配列されることで構成されている。なお、超音波振動子アレイ50は、複数の超音波振動子48を二次元アレイ状に配置して構成されたものであってもよい。
【0033】
N個の超音波振動子48の各々は、圧電素子である単結晶振動子の両面に電極を配置することで構成されている。単結晶振動子としては、水晶、ニオブ酸リチウム、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PMN-PT)、亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)、亜鉛ニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PZN-PT)、インジウムニオブ酸鉛(PIN)、チタン酸鉛(PT)、タンタル酸リチウム、ランガサイト、及び酸化亜鉛のいずれかが用いられる。
電極は、複数の超音波振動子48の各々に対して個別に設けられた個別電極(不図示)と、複数の超音波振動子48に共通の振動子グランド(不図示)とからなる。また、電極は、同軸ケーブル56及びFPC60を介して超音波用プロセッサ装置14と電気的に接続される。
【0034】
なお、本実施形態に係る超音波振動子48は、患者の体腔内の超音波画像を取得する理由から、7MHz~8MHzレベルの比較的高周波数で駆動(振動)する必要がある。そのために、超音波振動子48を構成する圧電素子の厚みは、比較的薄く設計されており、例えば、75μm~125μmであり、好ましくは90μm~110μmである。
各超音波振動子48には、パルス状の駆動電圧である診断用駆動パルスが、入力信号(送信信号)として、超音波用プロセッサ装置14から同軸ケーブル56を通じて供給される。この駆動電圧が超音波振動子48の電極に印加されると、圧電素子が伸縮して超音波振動子48が駆動(振動)する。この結果、超音波振動子48からパルス状の超音波が出力される。このとき、超音波振動子48から出力される超音波の振幅は、その超音波振動子48が超音波を出力した際の強度(出力強度)に応じた大きさとなっている。ここで、出力強度は、超音波振動子48から出力された超音波の音圧の大きさとして定義される。
【0035】
また、各超音波振動子48は、超音波の反射波(エコー)を受信すると、これに伴って振動(駆動)し、各超音波振動子48の圧電素子が電気信号を発生する。この電気信号は、超音波の受信信号として各超音波振動子48から超音波用プロセッサ装置14に向けて出力される。この時、超音波振動子48から出力される電気信号の大きさ(電圧値)は、その超音波振動子48が超音波を受信した際の受信感度に応じた大きさとなっている。ここで、受信感度は、超音波振動子48が送信する超音波の振幅に対する、その超音波振動子48が超音波を受信して出力した電気信号の振幅の比として定義される。
【0036】
本実施形態では、N個の超音波振動子48をマルチプレクサ140(
図4参照)などの電子スイッチで順次駆動させることで、超音波振動子アレイ50が配された曲面に沿った走査範囲、例えば曲面の曲率中心から数十mm程度の範囲で超音波が走査される。より詳しく説明すると、超音波画像としてBモード画像(断層画像)を取得する場合には、マルチプレクサ140の開口チャンネル選択により、N個の超音波振動子48のうち、連続して並ぶm個(例えば、m=N/2)の超音波振動子48(以下では、駆動対象振動子と言う)に駆動電圧が供給される。これにより、m個の駆動対象振動子が駆動され、開口チャンネルの各駆動対象振動子から超音波が出力される。m個の駆動対象振動子から出力された超音波は、直後に合成され、その合成波(超音波ビーム)が観察対象部位に向けて送信される。その後、m個の駆動対象振動子の各々は、観察対象部位にて反射された超音波(エコー)を受信し、その時点での受信感度に応じた電気信号(受信信号)を出力する。
【0037】
そして、上記一連の工程(すなわち、駆動電圧の供給、超音波の送受信、及び電気信号の出力)は、N個の超音波振動子48における駆動対象振動子の位置を1つずつ(1個の超音波振動子48ずつ)ずらして繰り返し行われる。具体的に説明すると、上記一連の工程は、N個の超音波振動子48のうち、一方の端に位置する超音波振動子48を中心とする、その両側のm個の駆動対象振動子から開始される。そして、上記一連の工程は、マルチプレクサ140による開口チャンネルの切り替えによって駆動対象振動子の位置がずれる度に繰り返される。最終的に、上記一連の工程は、N個の超音波振動子48のうち、他端に位置する超音波振動子48を中心とする、その両側のm個の駆動対象振動子に至るまで、計N回繰り返して実施される。
【0038】
バッキング材層54は、超音波振動子アレイ50の各超音波振動子48を裏面側から支持する。また、バッキング材層54は、超音波振動子48から発せられた超音波、若しくは観察対象部位にて反射された超音波(エコー)のうち、バッキング材層54側に伝播した超音波を減衰させる機能を有する。なお、バッキング材は、硬質ゴム等の剛性を有する材料からなり、超音波減衰材(フェライト及びセラミックス等)が必要に応じて添加されている。
音響整合層74は、超音波振動子アレイ50の上に重ねられており、患者の人体と超音波振動子48との間の音響インピーダンス整合をとるために設けられている。音響整合層74が設けられていることにより、超音波の透過率を高めることが可能となる。音響整合層74の材料としては、音響インピーダンスの値が超音波振動子48の圧電素子に比して、より患者の人体のものの値に近い様々な有機材料を用いることができる。音響整合層74の材料としては、具体的にはエポキシ系樹脂、シリコンゴム、ポリイミド及びポリエチレン等が挙げられる。
【0039】
音響整合層74上に重ねられた音響レンズ76は、超音波振動子アレイ50から発せられる超音波を観察対象部位に向けて収束させるためのものである。なお、音響レンズ76は、例えば、シリコン系樹脂(ミラブル型シリコンゴム(HTVゴム)、液状シリコンゴム(RTVゴム)等)、ブタジエン系樹脂、及びポリウレタン系樹脂等からなり、必要に応じて酸化チタン、アルミナ若しくはシリカ等の粉末が混合される。
FPC60は、各超音波振動子48が備える電極と電気的に接続される。複数の同軸ケーブル56の各々は、その一端にてFPC60に配線されている。そして、超音波内視鏡12が超音波用コネクタ32aを介して超音波用プロセッサ装置14に接続されると、複数の同軸ケーブル56の各々は、その他端(FPC60側とは反対側)にて超音波用プロセッサ装置14と電気的に接続される。
【0040】
さらに、本実施形態において、超音波内視鏡12は、内視鏡側メモリ58(
図4参照)を備えている。内視鏡側メモリ58には、超音波診断時に複数の超音波振動子48の駆動時間が記憶される。厳密には、内視鏡側メモリ58には、複数の超音波振動子48のうちの駆動対象振動子の累積駆動時間が記憶される。
なお、本実施形態では、超音波診断の実施期間中、つまり、超音波画像(動画像)の取得が開始されてから終了されるまでの期間(より詳しくは、ライブモードで超音波診断が実施された時間)を累積駆動時間としているが、これに限定されるものではなく、駆動対象振動子に駆動電圧を供給した時間を累積駆動時間としてもよい。
【0041】
超音波内視鏡12が超音波用プロセッサ装置14と接続された状態において、超音波用プロセッサ装置14のCPU152が内視鏡側メモリ58にアクセスし、内視鏡側メモリ58に記憶された累積駆動時間を読み取ることが可能である。また、超音波用プロセッサ装置14のCPU152は、内視鏡側メモリ58に記憶された累積駆動時間をデフォルト値に書き換えたり、超音波診断の実施に伴って累積駆動時間が変化した場合には新たな累積駆動時間に更新したりする。
【0042】
(内視鏡観察部)
内視鏡観察部38は、内視鏡画像を取得するために設けられた部分であり、挿入部22の先端部40において超音波観察部36よりも基端側に配置されている。内視鏡観察部38は、
図2~
図3に示すように観察窓82、対物レンズ84、固体撮像素子86、照明窓88、洗浄ノズル90及び配線ケーブル92等によって構成されている。
観察窓82は、挿入部22の先端部40において軸線方向(挿入部22の長手軸方向)に対して斜めに傾けられた状態で取り付けられている。観察窓82から入射されて観察対象隣接部位にて反射された光は、対物レンズ84で固体撮像素子86の撮像面に結像される。
【0043】
固体撮像素子86は、観察窓82及び対物レンズ84を透過して撮像面に結像された観察対象隣接部位の反射光を光電変換して、撮像信号を出力する。固体撮像素子86としては、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)、及びCMOS(Complementary MetalOxide Semiconductor:相補形金属酸化膜半導体)等が利用可能である。固体撮像素子86で出力された撮像画像信号は、挿入部22から操作部24まで延設された配線ケーブル92を経由して、ユニバーサルコード26により内視鏡用プロセッサ装置16に伝送される。
【0044】
照明窓88は、観察窓82の両脇位置に設けられている。照明窓88には、ライトガイド(不図示)の出射端が接続されている。ライトガイドは、挿入部22から操作部24まで延設され、その入射端は、ユニバーサルコード26を介して接続された光源装置18に接続されている。光源装置18で発せられた照明光は、ライトガイドを伝わり、照明窓88から観察対象隣接部位に向けて照射される。
洗浄ノズル90は、観察窓82及び照明窓88の表面を洗浄するために挿入部22の先端部40に形成された噴出孔であり、洗浄ノズル90からは、空気又は洗浄用液体が観察窓82及び照明窓88に向けて噴出される。なお、本実施形態において、洗浄ノズル90から噴出される洗浄用液体は、水、特に脱気水である。ただし、洗浄用液体については、特に限定されるものではなく、他の液体、例えば、通常の水(脱気されていない水)であってもよい。
【0045】
(送水タンク及び吸引ポンプ)
送水タンク21aは、脱気水を貯留するタンクであり、送気送水用チューブ34aにより光源用コネクタ32cに接続されている。なお、脱気水は、洗浄ノズル90から噴出される洗浄用液体として用いられる。
吸引ポンプ21bは、処置具導出口44を通じて体腔内の吸引物(洗浄用に供給された脱気水を含む)を吸引する。吸引ポンプ21bは、吸引用チューブ34bにより光源用コネクタ32cに接続されている。なお、超音波診断装置10は、所定の送気先に空気を送気する送気ポンプなどを備えていてもよい。
【0046】
挿入部22及び操作部24内には、処置具チャンネル45と送気送水管路(不図示)が設けられている。
処置具チャンネル45は、操作部24に設けられた処置具挿入口30と処置具導出口44との間を連絡している。また、処置具チャンネル45は、操作部24に設けられた吸引ボタン28bに接続している。吸引ボタン28bは、処置具チャンネル45のほかに、吸引ポンプ21bに接続されている。
送気送水管路は、その一端側で洗浄ノズル90に通じており、他端側では、操作部24に設けられた送気送水ボタン28aに接続している。送気送水ボタン28aは、送気送水管路のほかに、送水タンク21aに接続されている。
【0047】
(操作部)
操作部24は、超音波診断の開始時、診断中及び診断終了時等において術者によって操作される部分であり、その一端にはユニバーサルコード26の一端が接続されている。また、操作部24は、
図1に示すように、送気送水ボタン28a、吸引ボタン28b、一対のアングルノブ29、並びに処置具挿入口(鉗子口)30を有する。
一対のアングルノブ29の各々を回動すると、湾曲部42が遠隔的に操作されて湾曲変形する。この変形操作により、超音波観察部36及び内視鏡観察部38が設けられた挿入部22の先端部40を所望の方向に向けることが可能となる。
【0048】
処置具挿入口30は、鉗子等の処置具(不図示)を挿通するために形成された孔であり、処置具チャンネル45を介して処置具導出口44と連絡している。処置具挿入口30に挿入された処置具は、処置具チャンネル45を通過した後に処置具導出口44から体腔内に導入される。
送気送水ボタン28a及び吸引ボタン28bは、2段切り替え式の押しボタンであり、挿入部22及び操作部24の各々の内部に設けられた管路の開閉を切り替えるために操作される。
【0049】
<<超音波用プロセッサ装置の構成>>
超音波用プロセッサ装置14は、超音波振動子ユニット46に超音波を送受信させ、且つ、超音波受信時に超音波振動子48(詳しくは駆動対象素子)が出力した受信信号を画像化して超音波画像を生成する。また、超音波用プロセッサ装置14は、生成した超音波画像をモニタ20に表示する。
さらに、本実施形態において、超音波用プロセッサ装置14は、N個の超音波振動子48のうちの分極対象振動子に対して分極用電圧を供給して分極対象振動子を分極する。この分極処理を実行することにより、超音波診断の繰り返し実施によって脱分極した超音波振動子48を再度分極することができ、これにより、超音波振動子48の超音波に対する受信感度を良好なレベルまで回復させることが可能となる。
【0050】
超音波用プロセッサ装置14は、
図4に示すように、マルチプレクサ140、受信回路142、送信回路144、A/Dコンバータ146、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)148、シネメモリ150、トリガ発生回路156、CPU(Central Processing Unit)152、及びDSC(Digital Scan Converter)154を有する。
受信回路142、及び送信回路144は、超音波内視鏡12の超音波振動子アレイ50と電気的に接続する。マルチプレクサ140は、N個の超音波振動子48の中から最大m個の駆動対象振動子を選択し、そのチャンネルを開口させる。
【0051】
送信回路144は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、パルサー(パルス発生回路158)、及びSW(スイッチ)等からなり、MUX(マルチプレクサ140)に接続される。なお、FPGAの代わりにASIC(特定用途向け集積回路)を用いても良い。
送信回路144は、超音波振動子ユニット46から超音波を送信するために、CPU152から送られてくる制御信号に従って、マルチプレクサ140により選択された駆動対象振動子に対して超音波送信用の駆動電圧を供給する回路である。駆動電圧は、パルス状の電圧信号(送信信号)であり、ユニバーサルコード26及び同軸ケーブル56を介して駆動対象振動子の電極に印加される。
送信回路144は、制御信号に基づいて送信信号を生成するパルス発生回路158を有しており、CPU152の制御により、パルス発生回路158を用いて、複数の超音波振動子48を駆動して超音波を発生させる送信信号を生成して複数の超音波振動子48に供給する。
また、送信回路144は、CPU152の制御により、超音波診断を行う場合に、パルス発生回路158を用いて、超音波診断を行うための駆動電圧を有する第1の送信信号を生成する。また、CPU152の制御により、分極処理を行う場合に、第1の送信信号を生成する場合と同じパルス発生回路158を用いて、分極処理を行うための分極用電圧を有する第2の送信信号を生成する。
【0052】
受信回路142は、超音波(エコー)を受信した駆動対象振動子から出力される電気信号、すなわち受信信号を受信する回路である。また、受信回路142は、CPU152から送られてくる制御信号に従って、超音波振動子48から受信した受信信号を増幅し、増幅後の信号をA/Dコンバータ146に引き渡す。A/Dコンバータ146は、受信回路142と接続しており、受信回路142から受け取った受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をASIC148に出力する。
【0053】
ASIC148は、A/Dコンバータ146と接続しており、
図4に示すように、位相整合部160、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164、CFモード画像生成部166及びメモリコントローラ151を構成している。
なお、本実施形態では、ASIC148のようなハードウェア回路によって上述の機能(具体的には、位相整合部160、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164、CFモード画像生成部166及びメモリコントローラ151)を実現しているが、これに限定されるものではない。中央演算装置(CPU)と各種データ処理を実行させるためのソフトウェア(コンピュータプログラム)とを協働させることで上記の機能を実現させてもよい。
位相整合部160は、A/Dコンバータ146によりデジタル信号化された受信信号(受信データ)に対して遅延時間を与えて整相加算する(受信データの位相を合わせてから加算する)処理を実行する。整相加算処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が生成される。
【0054】
Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164及びCFモード画像生成部166は、超音波振動子ユニット46が超音波を受信した際に複数の超音波振動子48のうちの駆動対象振動子が出力する電気信号(厳密には、受信データを整相加算することで生成された音声信号)に基づいて、超音波画像を生成する。
Bモード画像生成部162は、患者の内部(体腔内)の断層画像であるBモード画像を生成する画像生成部である。Bモード画像生成部162は、順次生成される音線信号に対し、STC(Sensitivity Time gain Control)によって、超音波の反射位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施す。また、Bモード画像生成部162は、補正後の音線信号に対して包絡線検波処理及びLog(対数)圧縮処理を施して、Bモード画像(画像信号)を生成する。
【0055】
PWモード画像生成部164は、所定方向における血流の速度を表示する画像を生成する画像生成部である。PWモード画像生成部164は、位相整合部160によって順次生成される音線信号のうち、同一方向における複数の音線信号に対して高速フーリエ変換を施すことで周波数成分を抽出する。その後、PWモード画像生成部164は、抽出した周波数成分から血流の速度を算出し、算出した血流の速度を表示するPWモード画像(画像信号)を生成する。
CFモード画像生成部166は、所定方向における血流の情報を表示する画像を生成する画像生成部である。CFモード画像生成部166は、位相整合部160によって順次生成される音線信号のうち、同一方向における複数の音線信号の自己相関を求めることで、血流に関する情報を示す画像信号を生成する。その後、CFモード画像生成部166は、上記の画像信号に基づき、Bモード画像生成部162によって生成されるBモード画像信号に血流に関する情報を重畳させたカラー画像としてのCFモード画像(画像信号)を生成する。
【0056】
メモリコントローラ151は、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164又はCFモード画像生成部166が生成した画像信号をシネメモリ150に格納する。
DSC154は、ASIC148に接続されており、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164又はCFモード画像生成部166が生成した画像の信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後にモニタ20に出力する。
【0057】
シネメモリ150は、1フレーム分又は数フレーム分の画像信号を蓄積するための容量を有する。ASIC148が生成した画像信号は、DSC154に出力される一方で、メモリコントローラ151によってシネメモリ150にも格納される。フリーズモード時には、メモリコントローラ151がシネメモリ150に格納された画像信号を読み出し、DSC154に出力する。これにより、モニタ20には、シネメモリ150から読み出された画像信号に基づく超音波画像(静止画像)が表示されるようになる。
トリガ発生回路156は、CPU152に分極処理を開始させるためのトリガを発生する。トリガの発生要因については後述する。
【0058】
CPU152は、超音波用プロセッサ装置14の各部を制御する制御部(制御回路)として機能し、受信回路142、送信回路144、A/Dコンバータ146、及びASIC148と接続されており、これらの機器を制御する。具体的に説明すると、CPU152は、操作卓100と接続しており、操作卓100にて入力された検査情報、及び制御パラメータ等に従って超音波用プロセッサ装置14各部を制御する。
また、CPU152は、超音波内視鏡12が超音波用コネクタ32aを介して超音波用プロセッサ装置14に接続されると、PnP(Plug and Play)等の方式により超音波内視鏡12を自動認識する。その後、CPU152は、超音波内視鏡12の内視鏡側メモリ58にアクセスし、内視鏡側メモリ58に記憶された累積駆動時間を読み取る。
【0059】
さらに、CPU152は、超音波診断終了時に内視鏡側メモリ58にアクセスし、内視鏡側メモリ58に記憶された累積駆動時間を、直前に実施していた超音波診断の所要時間の分だけ加算した値に更新する。
なお、本実施形態では、超音波内視鏡12に累積駆動時間が記憶されることとしたが、これに限定されるものではなく、超音波用プロセッサ装置14側に累積駆動時間が超音波内視鏡12毎に記憶されていてもよい。
【0060】
また、CPU152は、トリガ発生回路156と接続されており、トリガ発生回路156からトリガが与えられた場合に、超音波診断の実施期間中に、各々のフレーム時間内の非診断期間内において送信回路144(パルス発生回路158)を制御して、パルス状の駆動電圧である分極用駆動パルスを生成させて、超音波振動子アレイ50の複数の超音波振動子48にそれぞれ供給して、各超音波振動子48の分極処理を行う。より詳しくは、トリガ発生回路156からトリガが与えられた後、超音波診断の実施期間中に、超音波画像(動画像)の各々のフレームの画像(静止画像)が取得される各々のフレーム時間のうち、各々のフレームの画像を取得する期間以外の期間であって、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間内において、複数の超音波振動子48に対して分極用駆動パルスを供給して分極処理を行う。
【0061】
なお、本発明においては、分極用駆動パルスは、超音波画像を取得するための診断用駆動パルスを生成する送信回路144によって生成されるものである。即ち、送信回路144は、分極用駆動パルスを生成するための新たな回路構成を有していない既存の送信回路と同じ回路構成を持つものである。ここで、送信回路144は、診断用駆動パルスの画像用駆動電圧、及び分極用駆動パルスの分極用駆動電圧の少なくとも2つの駆動電圧を設定できる設定可能電圧範囲を有している。超音波画像を取得する場合には、設定可能電圧範囲内の画像用駆動電圧に設定し、分極処理を行う場合には、同じ設定可能電圧範囲内の画像用駆動電圧と異なる分極用駆動電圧に設定する。なお、本発明においては、分極用駆動電圧は、画像用駆動電圧より高い電圧に設定されることが好ましく、設定可能電圧範囲内のより高い電圧に設定されることがより好ましく、上限の電圧に設定されることが最も好ましい。
【0062】
また、詳細は後述するが、分極用駆動パルス(メインローブ)は、診断用駆動パルスが有するプローブ周波数帯域とは異なる周波数帯域の駆動パルスである。
したがって、分極処理時に超音波振動子48に印加される駆動電圧は、超音波画像の取得時に超音波振動子48に印加される駆動電圧と異なり、より高い電圧であると言える。また、分極処理時に超音波振動子48に印加される分極用駆動パルス波が、超音波画像の取得時に超音波振動子48に印加される診断用駆動パルス波と同じ送信回路144によって生成され、画像用駆動パルス波と同じ設定可能電圧範囲内の異なる分極用駆動電圧であり、超音波画像の取得のためのプローブ周波数帯域と異なる周波数の駆動パルスであると言える。
以上から、本発明は、既存の送信回路構成を有し、超音波画像の取得と同じ駆動パルス出力用の送信回路144を用いて、超音波画像を取得するための診断用駆動パルスと同じ設定可能電圧範囲内の駆動電圧、かつプローブ周波数帯域と異なる周波数の分極用駆動パルスを出力し、超音波画像を取得する時間とは異なる時間で超音波内視鏡12の超音波振動子48の分極処理を行うものである。
【0063】
分極用駆動パルスの駆動電圧の大きさ(電圧値、又は電位)は、送信回路144の設定可能電圧範囲内において、超音波用プロセッサ装置14に接続されている超音波内視鏡12が有する超音波振動子48の仕様(詳しくは、超音波振動子48の厚み及び材質)に応じて、CPU152が再分極の効果が得られる条件を満たす適切な値に設定することになっている。また、分極用駆動パルスの駆動電圧の供給時間は、超音波振動子48の仕様(詳しくは、超音波振動子48の厚み及び材質)に応じて、CPU152が再分極の効果が得られる条件を満たす適切な値に設定することになっている。その後、CPU152は、上記の設定値に基づいて分極処理を行う。
【0064】
即ち、本発明においては、CPU(制御回路)152は、超音波画像の取得を行う場合には、超音波画像の取得のために超音波を発生させる複数の超音波振動子48にそれぞれ印加する診断用駆動パルス(送信信号)を生成するように送信回路144(パルス発生回路158)を制御する。
一方、CPU(制御回路)152は、分極処理を行う場合には、複数の超音波振動子48の分極処理を行うために、診断用駆動パルスと同じ設定可能電圧範囲内の異なる分極用駆動電圧であり、超音波画像の取得のための超音波探触子(超音波振動子ユニット46)としてのプローブ周波数帯域と異なる周波数の分極用駆動パルスを生成するように送信回路を制御する。
その結果、本発明では、分極処理を行う場合には、分極用駆動パルスが複数の超音波振動子48に印加され、分極用駆動パルスによって複数の超音波振動子48の分極処理が行われる。
【0065】
次に、本発明において送信回路144から超音波振動子48に送信される分極用駆動パルス(分極用送信波)の駆動波形(送信波形)、及びパルス波形について説明する。
図5A、及び
図5Bは、
図4に示す送信回路から送信される分極用駆動パルスの駆動波形の一例のグラフ、及びその駆動波形の感度と周波数の関係を示すグラフである。
図5Aに示す駆動波形は、周波数1.25MHzのユニポーラの1つの波の波形である。
本発明においては、分極用駆動パルスの駆動波形は、特に制限的では無いが、
図5Aに示すユニポーラの波形を持ち、
図5Bに実線で示す周波数特性を持つ駆動波形を有する分極用駆動パルスを用いて超音波振動子48の分極処理を行うことが好ましい。
図5Bに示す例では、例えば、-20dB以上のレベルの感度において、超音波画像を取得するためのプローブ周波数帯域は、破線で示すように、約2.7MHz~約11.7MHzであるのに対し、実線で示す分極用駆動パルスの駆動波形のメインローブの帯域は、約2.3MHz以下である。即ち、分極用駆動パルスの周波数の帯域特性と、診断用駆動パルスの周波数の帯域特性とは、-20dB以上のレベルの感度において重ならない。
【0066】
即ち、本発明では、
図5Bに示すように、分極用駆動パルスの駆動波形においては、メインローブの周波数帯域と、破線で示すプローブ周波数帯域とは、感度-20dB以上のレベルが重ならないことが好ましい。また、メインローブの周波数帯域は、感度-20dB以上のレベルにおいて、プローブ周波数帯域より低周波であることが好ましい。この理由は、分極処理において、余分な超音波出力を防いで、超音波画像への影響等を減らし、温度上昇を防いで、温度上昇による被検体の体腔への影響等を減らす必要があるからである。特に、被検体の体腔内に挿入する超音波内視鏡12の先端部分の上限温度は、体腔等に影響を与えないように厳しく制限されており、温度上昇を防ぐ必要がある。
【0067】
本発明においては、分極用駆動パルス(メインローブ)をプローブ周波数帯域外で送信するので、超音波振動子48への投入エネルギーが小さくなり、温度上昇は抑えられる。また、プローブ周波数帯域外は、超音波振動子48が共振する共振帯域外であるので、分極用駆動パルス(メインローブ)を超音波振動子48に印加しても、出力音圧も小さくなる。
図5Bに示す分極用駆動パルスの駆動波形においては、メインローブの他に、プローブ周波数帯域内において、メインローブに付随して、同じく実線で示す1つ以上、
図5Bに示す例では4つのサイドローブが生じていることが分かる。プローブ周波数帯域内のこれらのサイドローブの最大感度は、
図5Bに示すように、全て-10dB以下であることが好ましく、これらのサイドローブの感度の平均は、-20dB以下であることが好ましい。この理由は、以下の通りである。
一般的に、プローブの周波数特性の仕様は、送受信感度の-20dBの帯域で表現される。これは、感度のピークから1/10以下の信号はほとんど画像に影響しない点から決められているからである。一方、送信波の帯域についてはプローブと異なり、送信部分のみであるため、20dB/2=10dBのレベルが閾値となる。そのため、送信成分として考えると-10dBの方がより好ましいからである。
【0068】
また、本発明においては、分極用駆動パルスの駆動波形は、特に制限的では無く、
図6Aに示すバイポーラの波形であっても良いが、
図5Aに示すように、ユニポーラの波形であることが好ましい。この理由は、
図6Bに示す駆動波形の周波数特性のように、メインローブの感度は、実線で示すユニポーラの波形でも、1点鎖線で示すバイポーラの波形でも変わらないが、4つのサイドローブの感度は、いずれも、ユニポーラの波形の方が、バイポーラの波形より低いからである。
このため、送信波形を
図5Aに示すようなユニポーラの波形にすることにより、メインローブだけでなく、高調波成分が抑えられ、より高い効果が期待できる。
【0069】
また、
図7Aに示すように、分極用駆動パルスとして、ユニポーラの波形で複数、
図7Aに示す例では2つのパルス波の送信を行っても良い。
図7Aに示す分極用駆動パルスは、
図5Aに示す分極用駆動パルスの駆動波形を2つのパルス波を含む駆動波形を持つ。
図7Aに示す分極用駆動パルスの駆動波形の周波数特性を
図7Bに示す。
図7Bに示す駆動波形の周波数特性は、
図5Bに示す駆動波形の周波数特性と、メインローブの波形が異なるが、サイドローブの波形は、あまり大きな変化がない。
また、
図7Cに示すように、分極用駆動パルスの駆動波形をユニポーラの波形で波形間に最小クロック数分の時間を開けた複数のパルス波形を繋いだ分極用駆動パルスの送信を行うことが好ましい。即ち、本発明では、送信回路144は、分極用駆動パルスとして、複数のユニポーラの波形を、この波形の間隔を超音波用プロセッサ装置14において規定される最小クロック数の時間空けて出力することが好ましい。
この理由は、分極処理には直流電圧を印加することが最適であるが、本発明のように、既存の送信回路構成を有する送信回路144を用いる場合には直流電圧の送信ができないからである。
【0070】
なお、超音波診断装置10に用いられている超音波用プロセッサ装置14の送信回路144のパルサー(パルス発生回路158)の種類によって、最小、及び最大の時間幅が決まっている。このため、最小の時間幅として、送信回路144において規定される最小クロック数の時間を用い、複数のユニポーラの波形の間に最小の時間幅を挟み、直流電圧に近い分極処理波形とすることで高い再分極効果が期待できる。なお、2つユニポーラのパルス波形の最小時間幅、即ち最強パルス幅は、送信回路144のパルサー(パルス発生回路158)の仕様によって決まっている。この仕様を守るような制御を送信回路144内の上述したFPGAから出している。
また、
図7Dに2点鎖線で示すように、分極用駆動パルスの駆動波形として、
図7Cに示す複数のユニポーラの波形を組み合わせて用いることにより、
図7Dに実線で示す1つのユニポーラの波形をからなる分極用駆動パルスの駆動波形よりも、サイドローブの最大感度を低下させることができる。
これらに対し、
図8A、及び
図8Bは、
図4に示す送信回路から送信される診断用駆動パルスの駆動波形の一例のグラフ、及びその駆動波形の感度と周波数の関係を示すグラフである。
図8Aに示す駆動波形は、中心周波数6MHzのバイポーラの1つの波の波形である。診断用駆動パルスの駆動波形の周波数特性を
図8Bに示す。
【0071】
<<超音波診断装置の動作例について>>
次に、超音波診断装置10の動作例として、超音波診断に関する一連の処理(以下、診断処理とも言う)の流れを、
図9~
図11を参照しながら説明する。
図9は、超音波診断装置10を用いた診断処理の流れを示す図である。
図10は、診断処理中の診断ステップの手順を示す図である。
図11は、診断ステップにおいて分極処理を行う場合の処理の流れを示す図である。
【0072】
超音波内視鏡12が超音波用プロセッサ装置14、内視鏡用プロセッサ装置16及び光源装置18に接続された状態で超音波診断装置10各部の電源が投入されると、それをトリガとして診断処理が開始される。診断処理では、
図9に示すように、先ず入力ステップが実施される(S001)。入力ステップでは、術者が操作卓100を通じて検査情報及び制御パラメータ等を入力する。入力ステップが完了すると、診断開始の指示があるまで、待機ステップが実施される(S002)。この待機ステップを利用して、超音波用プロセッサ装置14のCPU152が、超音波内視鏡12の内視鏡側メモリ58から累積駆動時間を読み取る(S003)。
【0073】
続いて、術者からの診断開始指示があると(S004でYes)、CPU152が超音波用プロセッサ装置14各部を制御して診断ステップを実施する(S005)。診断ステップは、
図10に図示の流れに沿って進行し、指定された画像生成モードがBモードである場合には(S031でYes)、Bモード画像を生成するように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する(S032)。また、指定された画像生成モードがBモードではなく(S031でNo)CFモードである場合には(S033でYes)、CFモード画像を生成するように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する(S034)。さらに、指定された画像生成モードがCFモードではなく(S033でNo)PWモードである場合には(S035でYes)、PWモード画像を生成するように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する(S036)。なお、指定された画像生成モードがPWモードではない場合には(S036でNo)、ステップS037へ進む。
【0074】
各画像生成モードにおいては、
図11に示すように、トリガ発生回路156により分極処理を開始させるためのトリガが発生され、トリガ発生回路156からCPU152に与えられる(S041)。
CPU152は、トリガ発生回路156からトリガが与えられたか否かを判定する(S042)。
CPU152にトリガが与えられていない場合(S042においてNo)、CPU152は、通常の超音波診断が行われるように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する。つまり、超音波診断の実施期間中に、分極処理は行われない(S043)。
一方、CPU152にトリガが与えられた場合(S042においてYes)、CPU152は、トリガが与えられた後、超音波診断の実施期間中に、超音波画像の各々のフレームの画像が取得される各々のフレーム時間のうち、各々のフレームの画像を取得する期間以外の期間であって、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間内において、複数の超音波振動子48に対して分極処理を行うように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する。つまり、超音波診断の実施期間中に、分極処理が行われる(S044)。
【0075】
続いて、
図10に戻って、CPU152は、超音波診断が終了したか否かを判定する(S037)。超音波診断が終了していない場合(S037でNo)、診断ステップS031へ戻り、各画像生成モードによる超音波画像の生成は、診断終了条件が成立するまで繰り返し実施される。診断終了条件としては、例えば、術者が操作卓100を通じて診断終了を指示すること等が挙げられる。
【0076】
一方、診断終了条件が成立して超音波診断が終了すると(S037でYes)、CPU152は、それまで実施していた超音波診断の所要時間を、ステップS003で内視鏡側メモリ58から読み取った累積駆動時間に加算し、内視鏡側メモリ58に記憶された累積駆動時間を加算後の累積駆動時間に更新する(S038)。診断ステップにおける上記一連の工程(S031~S038)が終了した時点で診断ステップが終了する。
続いて、
図9に戻って、超音波診断装置10各部の電源がオフとなると(S006でYes)、診断処理が終了する。一方で、超音波診断装置10各部の電源がオン状態で維持される場合には(S006でNo)、入力ステップS001に戻り、上述した診断処理の各ステップを繰り返すことになる。
【0077】
次に、超音波診断を行う場合に、電子セクタ走査によりスキャンされる走査線(ライン)をスキャンするタイミングについて説明する。
図12は、超音波診断の実施期間中に、電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線のスキャンタイミングを表す一例の概念図である。
図12において、縦軸は、走査線をスキャンするための超音波を発生させる送信信号のパルス(送信パルス)の電圧を表し、横軸は、時間の経過を表す。
【0078】
本実施形態において、複数の超音波振動子48の総数(素子数)はN=128個であり、超音波画像(動画像)の各々のフレームの画像(静止画像)が取得される各々のフレーム時間内において、走査線(ライン)の総本数は、
図13に示すように、右端側の走査線Line1から左端側の走査線Line128までの128本であるとする。また、超音波診断時に、超音波ビームを形成するために同時に駆動される超音波振動子48の数(開口チャンネル数)はm=64個であるとする。
複数の走査線Line1~Line128は、超音波画像の1フレームの画像を取得するための電子セクタ走査によりスキャンされるものであり、超音波画像の各々のラインの画像をスキャンするための超音波ビームを仮想的なラインとして表したものである。
【0079】
超音波診断を行う場合、
図12に示すように、超音波診断の実施期間中に、つまり、超音波画像(動画像)の取得が開始されてから終了されるまでの間に、超音波画像の各々のフレームの画像が取得される各々のフレーム時間内において、走査線Line1~Line128までのスキャンが順次行われる。つまり、超音波診断を行うための駆動電圧を有する送信信号(第1の送信信号)が、送信回路144から超音波診断を行うための駆動対象振動子に対して供給される。
各々のフレーム時間内において、超音波画像を取得する期間は、走査線Line1~Line128までのスキャンが行われる期間である。また、非診断期間は、走査線Line128のスキャンが終了してから各々のフレーム時間が終了するまでの期間である。
【0080】
図12に示す例では、1フレーム時間内の最後の走査線Line128のスキャンが終了してから、その次の1フレーム時間内の最初の走査線Line1のスキャンが開始されるまでの間に、超音波診断を行うための超音波の送信、及び超音波の反射波(エコー)の受信が行われていない非診断期間が設けられている。なお、本実施形態の場合には、非診断期間が設けられているが、システムによっては非診断期間が設けられていない場合もある。
【0081】
次に、超音波診断の実施期間中に分極処理を行う場合に、分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを説明する。
図14は、超音波診断の実施期間中に分極処理を行う場合に、走査線をスキャンするタイミング、及び分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
分極処理を行う場合、
図14に示すように、各々のフレーム時間内において、
図12の場合と同じように、超音波診断を行うための走査線Line1~Line128までのスキャンが順次行われる。続いて、各々のフレーム時間内において、最後の走査線Line128のスキャンが終了した後の非診断期間において分極処理が行われる。つまり、分極処理を行うための分極用電圧を有する送信信号(第2の送信信号)が、送信回路144から分極処理を行う分極対象振動子に対して供給される。
【0082】
本実施形態の場合、分極処理を行うための送信信号として、分極処理1,2という2つの分極処理用の送信信号が供給される。前述のように、複数の超音波振動子48の総数は128個であり、開口チャンネル数はその半分の64個である。これに応じて、128個の超音波振動子48のうちの半分の64個の超音波振動子48に分極処理1の送信信号が供給され、続いて残りの半分の64個の超音波振動子48に分極処理2の送信信号が供給される。
なお、分極処理1、及び2という2つの分極処理用の送信信号は、上述したように、
図5~
図8に示す駆動波形を有する分極用駆動パルスである。したがって、ここでは、これらの送信信号の分極用駆動パルスについての説明は省略する。
【0083】
本実施形態の場合、各々のフレーム時間内において非診断期間が設けられているため、この非診断期間内において分極処理を行うための送信信号を供給することにより、フレームレートを落とすことなく、分極処理を行うことができる。
なお、分極処理は、超音波画像を取得する期間以外の期間、つまり、最初の走査線Line1がスキャンされる前、及び最後の走査線Line128がスキャンされた後の期間において行うことができる。
一方、各々のフレーム時間内において非診断期間が設けられていない場合、超音波画像の画質に影響のない範囲内で意図的にフレームレートを落として分極処理を行うための送信信号を供給してもよい。超音波振動子48の受信感度が下がって全体の画像(動画像の全部)の画質が悪くなるよりも、フレームレートを下げて一時的に画像(動画像の一部)の画質が落ちる方が許容しやすいと考えられるためである。
【0084】
あるいは、超音波診断を行うための電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線のライン密度、ライン数、及びライン間隔の少なくとも1つを減らすことにより、超音波診断の実施期間中に、各々のフレーム時間内において、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間を生成し、生成された非診断期間内において、フレームレートを維持しつつ分極処理を行うことも可能である。
ここで、ライン密度は、1フレーム時間内の走査線の総本数に対して、1フレーム時間内においてスキャンされる走査線の本数の割合を表す。ライン数は、1フレーム時間内の複数の走査線のうち、1フレーム時間内においてスキャンされる走査線の本数を表す。ライン間隔は、1フレーム時間内の複数の走査線のうちの1本の走査線がスキャンされてからその次の走査線がスキャンされるまでの時間の間隔を表す。
【0085】
図15は、超音波診断を行うための走査線のライン密度を減らした場合に、分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
この場合、
図15に示すように、各々のフレーム時間内において、偶数番目の64本の走査線Line2, Line4,…, Line128のスキャンが省かれ、奇数番目の64本の走査線Line1, Line3,…, Line127のスキャンのみが順次行われる。続いて、各々のフレーム時間内において、最後の走査線Line127のスキャンが終了した後、偶数番目の64本の走査線Line2, Line4,…, Line128のスキャンを省くことによって生成された非診断期間において、
図14の場合と同じように分極処理が行われる。
このように、超音波診断を行うための走査線のライン密度を減らすことにより、各々のフレーム時間内において非診断期間を生成することができるため、フレームレートを維持しつつ、生成された非診断期間内において分極処理を行うことができる。
【0086】
なお、奇数番目の64本の走査線Line1, Line3,…, Line127のスキャンを省き、偶数番目の64本の走査線Line2, Line4,…, Line128のスキャンのみを行ってもよい。また、例えば2本の走査線をスキャンする毎に、その次の1本の走査線のスキャンを省くというように、1本以上の走査線をスキャンする毎に、その次の1本以上の走査線のスキャンを省いてもよい。走査線のライン密度を減らす場合、超音波画像の画質、及び分極処理を行うために必要な時間等に応じて、走査線のライン密度を減らす割合を適宜決定することができる。
【0087】
続いて、
図16は、超音波診断を行うための走査線のライン数を減らした場合に、分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
この場合、
図16に示すように、各々のフレーム時間内において、右端部側の9本の走査線Line1~Line9、及び左端部側の10本の走査線Line119~走査線Line128のスキャンが省かれ、中央部の109本の走査線Line10~Line118のスキャンが順次行われる。続いて、各々のフレーム時間内において、最後の走査線Line118のスキャンが終了した後、走査線Line1~Line9、及び走査線Line119~走査線Line128のスキャンを省くことによって生成された非診断期間において、
図14の場合と同じように分極処理が行われる。
【0088】
このように、超音波診断を行うための走査線のライン数を減らすことにより、各々のフレーム時間内において非診断期間を生成することができるため、フレームレートを維持しつつ、生成された非診断期間内において分極処理を行うことができる。
なお、各々のフレーム時間内において、両側端部の走査線のスキャンを省くことは必須ではなく、一方の端部の走査線のスキャンのみを省いてもよい。走査線のライン数を減らす場合、分極処理を行うために必要な時間等に応じて、走査線のライン数を減らす本数を適宜決定することができる。また、走査線のライン数を減らす場合、超音波画像の画質の低下を防止するために、中央部の走査線のスキャンを省くよりも端部側から順次走査線のスキャンを省く方が望ましい。
【0089】
続いて、
図17は、超音波診断を行うための走査線のライン間隔を減らした場合に、分極処理を行うための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
この場合、
図17の上側に示す状態から下側に示す状態のように、各々のフレーム時間内において、走査線Line1~Line128のライン間隔(隣り合う2つの走査線の間の時間間隔)が減らされて(狭められて)、走査線Line1~Line128のスキャンが順次行われる。続いて、各々のフレーム時間内において、最後の走査線Line128のスキャンが終了した後、走査線Line1~Line128のライン間隔を減らすことによって生成された非診断期間において、
図14の場合と同じように分極処理が行われる。
【0090】
走査線のライン間隔は、超音波を送信し、その反射波を受信するまでの時間等によって概ね決定される。走査線のライン間隔を減らし過ぎると、取得される超音波画像に悪影響が出る場合もあるが、通常、走査線のライン間隔には、超音波を送信し、その反射波を受信するまでの時間に加えて、マージンの時間が設けられている。そのため、このマージンの時間の範囲内であれば、超音波画像の画質を低下させることなく走査線のライン間隔を減らすことが可能である。
このように、超音波診断を行うための走査線のライン間隔を減らすことにより、各々のフレーム時間内において非診断期間を生成することができるため、フレームレートを維持しつつ、生成された非診断期間内において分極処理を行うことができる。
【0091】
なお、各々のフレーム時間内において、走査線のライン間隔を減らす場合、走査線のライン間隔を減らすことが可能な範囲内において、分極処理を行うために必要な時間等に応じて、走査線のライン間隔を減らす時間を適宜決定することができる。
また、超音波診断を行う場合、端部側よりも中央部に配置された超音波振動子48の駆動回数の方が多いため、端部側よりも中央部に配置された超音波振動子48の方が脱分極するリスクが高い。
【0092】
本実施形態の場合、開口チャンネル数は64個であるため、中央部の走査線Line64をスキャンする場合、中央部の超音波振動子48を中心とするその両側の64個の超音波振動子48、例えば中央部の超音波振動子48から左端部側の32個の超音波振動子48と、中央部の超音波振動子48の1つ右側の超音波振動子48から右端部側の32個の超音波振動子48とを含む、合計64個の超音波振動子48が同時に駆動される。その他の中央部の走査線Line33~Line96をスキャンする場合も同様である。
これに対し、右端部の走査線Line1をスキャンする場合、開口チャンネル数は64個であるが、右端部の超音波振動子48のさらに右側には超音波振動子48が存在しないため、右端部の超音波振動子48から中央部側の32個の超音波振動子48のみが同時に駆動される。
【0093】
また、右端から2番目の走査線をスキャンする場合、右側から2番目の超音波振動子48の右側には右端部の超音波振動子48の1つのみしか存在しないため、右端から2番目の超音波振動子48から中央部側の32個の超音波振動子48と、右端部の1個の超音波振動子48とを含む、合計33個の超音波振動子48のみが同時に駆動される。
右端から3つ目~32個目の走査線Line3~Line32をスキャンする場合も同様であり、それぞれ、合計34個~63個の超音波振動子48のみが同時に駆動される。また、左端部側の走査線Line97~Line128をスキャンする場合も同様である。従って、各々のフレーム時間内において、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子48に対して分極処理を行う時間を長くすることが望ましい。
【0094】
次に、超音波診断の実施期間中に分極処理を行う場合に、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子48に対して分極処理を行う時間を長くするための送信信号を供給するタイミングを説明する。
図18は、超音波診断の実施期間中に分極処理を行う場合に、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子に対して分極処理を行う時間を長くするための送信信号を供給するタイミングを表す一例の概念図である。
この場合、
図18に示すように、各々のフレーム時間内において、
図12の場合と同じように、超音波診断を行うための走査線Line1~Line128までのスキャンが順次行われる。続いて、各々のフレーム時間内において、最後の走査線Line128のスキャンが終了した後の非診断期間において、
図19に示すように、中央部の64個の超音波振動子48と、右端部の32個、及び左端部の32個を含む、両端部の64個の超音波振動子48と、に分けて分極処理が行われる。
【0095】
本実施形態の場合、分極処理を行うための送信信号として、分極処理1~3という3つの送信信号が供給される。128個の超音波振動子48のうち、右側端部の32個の超音波振動子48、及び左側端部の32個の超音波振動子48を含む、合計64個の超音波振動子48に分極処理1の送信信号が供給され、続いて中央部の64個の超音波振動子48に分極処理2,3の送信信号が供給される。
つまり、各々のフレーム時間内において、両端部の64個の超音波振動子48には1回の分極処理が行われるのに対して、中央部の64個の超音波振動子48には2回の分極処理が行われる。これにより、両端部の64個の超音波振動子48よりも脱分極するリスクが高い中央部の64個の超音波振動子48に対して、両端部の64個の超音波振動子48の2倍の時間の分極処理を行うことができる。
なお、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子48に対して分極処理を行う時間を長くすることができればよく、例えば中央部の64個の超音波振動子48に対して、両端部の64個の超音波振動子48の2倍以上の時間の分極処理を行ってもよい。
【0096】
次に、トリガの発生タイミング、つまり、分極処理を開始させるタイミングについて説明する。
超音波振動子48は、超音波診断を行うための超音波の送信、及びその反射波の受信が行われた時間、つまり、複数の超音波振動子48の累積駆動時間に応じて、超音波振動子48の両面に付与された双極子が減少して脱分極が進行する。
トリガ発生回路156は、超音波振動子48が脱分極しているか否かを直接判定することができないため、例えば前述の超音波振動子48の累積駆動時間に基づいて超音波振動子48が脱分極しているか否かを判定し、超音波診断を行うための複数の超音波振動子48の累積駆動時間が規定時間以上となった場合にトリガを発生することができる。
規定時間は、トリガ発生回路156において時間のデフォルト値が設定されていてもよいし、ユーザの指示により任意の時間を設定可能としてもよい。なお、規定時間とは、任意の時間であって、数時間のオーダでもよいし、数フレーム時間のオーダでもよい。
【0097】
また、トリガ発生回路156は、ユーザの指示により、分極処理の開始を指示するボタンが押下された場合にトリガを発生することができる。つまり、ユーザの指示により、任意のタイミングで分極処理を開始させることができる。
ボタンは、操作卓100のタッチパネル内において表示される電子的なボタンでもよいし、あるいは超音波内視鏡12の操作部24に設けられる機械的なボタンでもよい。
また、トリガ発生回路156は、超音波画像生成モードが、造影剤を用いて取得された造影画像を強調表示する造影モードに設定された場合にトリガを発生することができる。造影モードの場合、超音波振動子48から送信される超音波は、一般的に造影剤に含まれるバブルを破壊しない低い出力に設定される。そのため、画像のS/N比が低下するため、脱分極による感度低下の悪影響が出やすい。
一般的に造影剤に含まれるバブルを破壊しない低い出力に設定される。そのため、画像のS/N比が低下するため、脱分極による感度低下の悪影響が出やすい。
【0098】
また、超音波振動子48の脱分極が進行してその受信感度が低下すると、表示深さが比較的深い位置において取得された超音波画像は、表示深さが比較的浅い位置において取得された超音波画像よりもS/N比が悪く、画質が低下しやすい。これに応じて、トリガ発生回路156は、超音波診断を行うための超音波画像の表示深さが一定深さ以上に設定された場合にトリガを発生することができる。
ユーザの指示により、超音波診断を行うための超音波画像の表示深さを、例えば深さが4cmの位置、及び10cmの位置というように設定することができる。例えば、前述の一定深さが5cmに設定されているとすると、トリガ発生回路156は、超音波画像の表示深さが深さ4cmの位置に設定された場合にはトリガを発生せず、深さ10cmの位置に設定された場合にはトリガを発生する。
一定深さは、トリガ発生回路156において深さのデフォルト値が設定されていてもよいし、ユーザの指示により任意の深さを設定可能としてもよい。
【0099】
同様に、超音波振動子48の脱分極が進行してその受信感度が低下すると、表示深さが比較的深い位置において取得されたBモードの超音波画像は、表示深さが比較的浅い位置において取得されたBモードの超音波画像よりも輝度が低下しやすい。これに応じて、トリガ発生回路156は、表示深さが一定深さ以上に設定されて取得されたBモードの超音波画像の輝度が一定輝度以下の場合にトリガを発生することができる。
一定輝度は、トリガ発生回路156において輝度のデフォルト値が設定されていてもよいし、ユーザの指示により任意の輝度を設定可能としてもよい。
【0100】
また、超音波診断の実施期間中の超音波画像を解析することにより、ユーザが穿刺中である、ステントのリリース中である、超音波画像の取得開始から30分が経過している等のように、ユーザが超音波画像を閲覧しながら何らかの処置を行っていることを認識することができる。この場合、処置中は、内視鏡画像、X線透視画像と併用して使用する場合が多く、超音波画像が主たる注視画像として使われる場合に比べて、超音波画像の細部を注視していないため、画質に拘らず好適に分極処理を行うことができる。これに応じて、トリガ発生回路156は、ユーザが超音波画像を閲覧しながら処置を行っていることが、超音波画像に基づいて認識された場合にトリガを発生することができる。
【0101】
また、超音波診断装置10は、超音波画像、及び内視鏡画像を取得し、これらの超音波画像、及び内視鏡画像を、様々な表示モードによってモニタ20に表示させることができる。
図20に示すように、表示モードには、超音波画像のみを表示する第1の表示モード、ピクチャ・イン・ピクチャ(PinP)により、超音波画像を内視鏡画像よりも大きく表示する第2の表示モード、同じくPinPにより、超音波画像を内視鏡画像よりも小さく表示する第3の表示モード、及び内視鏡画像のみを表示する第4の表示モードがある。ユーザの指示により、第1~第4の表示モードを任意に切り替えて表示させることができる。
ここで、第3の表示モードの場合、超音波画像が内視鏡画像よりも小さく表示されるため、画質に拘らず好適に分極処理を行うことができる。これに応じて、トリガ発生回路156は、第3の表示モードに設定されて、ピクチャ・イン・ピクチャにより、超音波画像が内視鏡画像よりも小さく表示された場合にトリガを発生することができる。
【0102】
なお、トリガの発生要因について例示して説明したが、上記各要因以外であっても、任意の要因に基づいてトリガを発生させてもよい。
また、分極処理の終了条件は、例えば分極処理の累積処理時間が一定時間に到達した場合、ユーザにより分極処理の終了が指示された場合、造影モードから他の超音波画像生成モードに変更された場合、超音波診断を行うための超音波の表示深さが一定深さ未満に設定された場合、ユーザが処置中であることが、内視鏡画像に基づいて認識されなくなった場合、超音波の表示深さが比較的深い位置において取得されたBモードの超音波画像の輝度が一定輝度よりも大きくなった場合、第3表示モードから他の表示モードに変更された場合などが考えられるが、これ以外の終了条件によって分極処理を終了させてもよい。
【0103】
<<本発明の超音波診断装置10の有効性について>>
超音波診断装置10は、超音波診断の実施期間中に、各々のフレーム時間のうち、各々のフレームの画像を取得する期間以外の期間であって、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間内において分極処理を行う。そのため、超音波診断の実施期間中であっても、フレームレートが低下しないので超音波画像の画質を低下させることなく、複数の超音波振動子48の受信感度を常に良好に保つことができ、従って常に高画質な超音波画像を取得することができる。
また、超音波診断装置10は、既存の送信回路144、より詳しくはパルス発生回路158を用いて分極処理を行うため、既存の回路を大幅に変更することなく、超音波診断の実施期間中に分極処理を行うことができる。
【0104】
なお、超音波振動子48の総数、及び開口チャンネル数は、任意の個数に変更してもよい。例えば、開口チャンネル数が超音波振動子48の総数と同じ場合、前述の分極処理1,2という2つの分極処理用の送信信号の代わりに、128個の超音波振動子48を駆動するための1つの分極処理用の送信信号を供給することもできる。あるいは、開口チャンネル数が超音波振動子48の総数の4分の1である場合、それぞれ、32個の超音波振動子48を駆動する分極処理1~4という4つの分極処理用の送信信号を供給することもできる。
【0105】
また、走査線のライン密度を減らす場合と、走査線のライン数を減らす場合と、走査線のライン間隔を減らす場合とを、組み合わせて分極処理を行ってもよい。また、走査線のライン密度、ライン数、及びライン間隔の少なくとも1つを減らす場合と、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子48に対して分極処理を行う時間を長くする場合とを、組み合わせて分極処理を行うことも可能である。その他、上記各実施例の特徴を組み合わせて実施してもよい。
また、送信回路144は、第1のパルス発生回路158を用いて第1の送信信号を生成し、第2のパルス発生回路を用いて第2の送信信号を生成してもよい。つまり、第1の送信信号と第2の送信信号とを異なる送信回路144内のパルス発生回路を用いて生成してもよい。
【0106】
上述した例では、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間は、超音波診断の実施期間中に、超音波画像の各々のフレームの画像が取得される各々のフレーム時間のうち、各々のフレームの画像を取得する期間以外の期間であるとしたが、本発明はこれに限定されない。
本発明においては、複数の超音波振動子48に対して分極処理を行うための非診断期間は、超音波画像の取得のための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていなければ、どのような時間、又は期間でも良く、超音波診断の実施期間以外の時間、又は期間であっても良い。超音波画像の取得、及び超音波診断の実施がなされていないあらゆる非診断時間、又は期間に複数の超音波振動子48に対して分極処理を行っても良い。
【0107】
また、上述した例では、トリガ発生回路156から分極処理を開始させるためのトリガが与えられた後、超音波診断の実施期間中の非診断期間に分極処理を行っているが、本発明はこれに限定されず、非診断時間、又は期間においては、非診断時間、又は期間に入ると共に、自動的に分極処理を介しても良いし、手動で強制的に介しても良い。
【0108】
また、本発明は、更に、超音波画像の画質に影響を及ぼすことなく、超音波診断の実施期間中に分極処理を行うことができる超音波診断装置、及び超音波診断装置の作動方法を提供することを目的としていても良い。
また、本発明は、更に、上記目的に加えて、既存の回路を大幅に変更することなく、分極処理を行うことができる超音波診断装置、及び超音波診断装置の作動方法を提供することを目的としていても良い。
【0109】
また、本発明の超音波診断装置は、超音波画像、及び内視鏡画像を取得する超音波診断装置であって、複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アレイを用いて超音波を送信し、超音波の反射波を受信して受信信号を出力する超音波観察部を備える超音波内視鏡と、受信信号を画像化して超音波画像を生成する超音波用プロセッサ装置と、を備え、超音波用プロセッサ装置は、分極処理を開始させるためのトリガを発生するトリガ発生回路と、トリガが与えられた後、超音波診断の実施期間中に、超音波画像の各々のフレームの画像が取得される各々のフレーム時間のうち、各々のフレームの画像を取得する期間以外の期間であって、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間内において、複数の超音波振動子に対して分極処理を行う制御回路と、を備えるものであっても良い。
【0110】
ここで、超音波用プロセッサ装置は、さらに、制御回路の制御により、パルス発生回路を用いて、複数の超音波振動子を駆動して超音波を発生させる送信信号を生成して複数の超音波振動子に供給する送信回路を備え、送信回路は、超音波診断を行う場合に、パルス発生回路を用いて、超音波診断を行うための第1の送信信号を生成し、分極処理を行う場合に、第1の送信信号を生成する場合と同じパルス発生回路を用いて、分極処理を行うための第2の送信信号を生成することが好ましい。
また、制御回路は、超音波画像の1フレームの画像を取得するための電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線の総本数に対して、1フレーム時間内においてスキャンされる走査線の本数の割合を表すライン密度を減らすことにより非診断期間を生成し、生成された非診断期間内において分極処理を行うことが好ましい。
【0111】
また、制御回路は、超音波画像の1フレームの画像を取得するための電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線のうち、1フレーム時間内においてスキャンされる走査線の本数を表すライン数を減らすことにより非診断期間を生成し、生成された非診断期間内において分極処理を行うことが好ましい。
また、制御回路は、超音波画像の1フレームの画像を取得するための電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線のうちの1本の走査線がスキャンされてからその次の走査線がスキャンされるまでの時間の間隔を表すライン間隔を減らすことにより非診断期間を生成し、生成された非診断期間内において分極処理を行うことが好ましい。
また、制御回路は、超音波診断の際に、同時に駆動される超音波振動子の数が複数の超音波振動子の総数よりも少ない場合、各々のフレーム時間内において、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子に対して分極処理を行う時間を長くすることが好ましい。
【0112】
また、トリガ発生回路は、超音波診断を行うための複数の超音波振動子の累積駆動時間が規定時間以上となった場合にトリガを発生することが好ましい。
また、トリガ発生回路は、分極処理の開始を指示するボタンが押下された場合にトリガを発生することが好ましい。
また、トリガ発生回路は、超音波画像生成モードが、造影剤を用いて取得された造影画像を強調表示する造影モードに設定された場合にトリガを発生することが好ましい。
また、トリガ発生回路は、超音波診断を行うための超音波画像の表示深さが一定深さ以上に設定された場合にトリガを発生することが好ましい。
また、トリガ発生回路は、ユーザが超音波画像を閲覧しながら処置を行っていることが、超音波画像に基づいて認識された場合にトリガを発生することが好ましい。
また、トリガ発生回路は、表示深さが一定深さ以上に設定されて取得されたBモードの超音波画像の輝度が一定輝度以下の場合にトリガを発生することが好ましい。
また、トリガ発生回路は、ピクチャ・イン・ピクチャにより、超音波画像が内視鏡画像よりも小さく表示された場合にトリガを発生することが好ましい。
【0113】
また、本発明は、超音波画像、及び内視鏡画像を取得する超音波診断装置の作動方法であって、超音波診断装置の超音波内視鏡が備える超音波観察部が、複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アレイを用いて超音波を送信し、超音波の反射波を受信して受信信号を出力するステップと、超音波診断装置の超音波用プロセッサ装置が、受信信号を画像化して超音波画像を生成するステップと、を含み、超音波画像を生成するステップは、超音波用プロセッサ装置のトリガ発生回路が、分極処理を開始させるためのトリガを発生するステップと、超音波用プロセッサ装置の制御回路が、トリガが与えられた後、超音波診断の実施期間中に、超音波画像の各々のフレームの画像が取得される各々のフレーム時間のうち、各々のフレームの画像を取得する期間以外の期間であって、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間内において、複数の超音波振動子に対して分極処理を行うステップと、を含む、超音波診断装置の作動方法を提供する。
【0114】
ここで、超音波画像を生成するステップは、さらに、超音波用プロセッサ装置の送信回路が、制御回路の制御により、パルス発生回路を用いて、複数の超音波振動子を駆動して超音波を発生させる送信信号を生成して複数の超音波振動子に供給するステップを含み、
送信信号を生成するステップは、超音波診断を行う場合に、パルス発生回路を用いて、超音波診断を行うための第1の送信信号を生成するステップと、分極処理を行う場合に、第1の送信信号を生成する場合と同じパルス発生回路を用いて、分極処理を行うための第2の送信信号を生成するステップと、を含むことが好ましい。
また、分極処理を行うステップは、超音波画像の1フレームの画像を取得するための電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線の総本数に対して、1フレーム時間内においてスキャンされる走査線の本数の割合を表すライン密度を減らすことにより非診断期間を生成し、生成された非診断期間内において分極処理を行うことが好ましい。
【0115】
また、分極処理を行うステップは、超音波画像の1フレームの画像を取得するための電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線のうち、1フレーム時間内においてスキャンされる走査線の本数を表すライン数を減らすことにより非診断期間を生成し、生成された非診断期間内において分極処理を行うことが好ましい。
また、分極処理を行うステップは、超音波画像の1フレームの画像を取得するための電子セクタ走査によりスキャンされる複数の走査線のうちの1本の走査線がスキャンされてからその次の走査線がスキャンされるまでの時間の間隔を表すライン間隔を減らすことにより非診断期間を生成し、生成された非診断期間内において分極処理を行うことが好ましい。
また、分極処理を行うステップは、超音波診断の際に、同時に駆動される超音波振動子の数が複数の超音波振動子の総数よりも少ない場合、各々のフレーム時間内において、両端部よりも中央部に配置された超音波振動子に対して分極処理を行う時間を長くすることが好ましい。
【0116】
本発明によれば、更に、超音波診断の実施期間中に、各々のフレーム時間のうち、各々のフレームの画像を取得する期間以外の期間であって、超音波診断を行うための超音波の送信、及び反射波の受信が行われていない非診断期間内において分極処理を行う。そのため、超音波診断の実施期間中であっても、フレームレートが低下しないので超音波画像の画質を低下させることなく、複数の超音波振動子の受信感度を常に良好に保つことができ、従って常に高画質な超音波画像を取得することができる。
また、本発明によれば、更に、既存のパルス発生回路を用いて分極処理を行うため、既存の回路を大幅に変更することなく、超音波診断の実施期間中に分極処理を行うことができる。
【0117】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良、及び変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0118】
10 超音波診断装置
12 超音波内視鏡
14 超音波用プロセッサ装置
16 内視鏡用プロセッサ装置
18 光源装置
20 モニタ
21a 送水タンク
21b 吸引ポンプ
22 挿入部
24 操作部
26 ユニバーサルコード
28a 送水送気ボタン
28b 吸引ボタン
29 アングルノブ
30 処置具挿入口
32a 超音波用コネクタ
32b 内視鏡用コネクタ
32c 光源用コネクタ
34a 送気送水用チューブ
34b 吸引用チューブ
36 超音波観察部
38 内視鏡観察部
40 先端部
42 湾曲部
43 軟性部
44 処置具導出口
45 処置具チャンネル
46 超音波振動子ユニット
48 超音波振動子
50 超音波振動子アレイ
54 バッキング材層
56 同軸ケーブル
58 内視鏡側メモリ
60 FPC
74 音響整合層
76 音響レンズ
82 観察窓
84 対物レンズ
86 固体撮像素子
88 照明窓
90 洗浄ノズル
92 配線ケーブル
100 操作卓
140 マルチプレクサ
142 受信回路
144 送信回路
146 A/Dコンバータ
148 ASIC
150 シネメモリ
151 メモリコントローラ
152 CPU
154 DSC
156 トリガ発生回路
158 パルス発生回路
160 位相整合器
162 Bモード画像生成部
164 PWモード画像生成部
166 CFモード画像生成部