IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Mizkan Holdingsの特許一覧

特開2023-171542植物性タンパク質含有液状組成物及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171542
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】植物性タンパク質含有液状組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 1/14 20060101AFI20231124BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20231124BHJP
   A23J 3/34 20060101ALI20231124BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20231124BHJP
   A23L 11/65 20210101ALI20231124BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231124BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231124BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20231124BHJP
   A23L 11/60 20210101ALI20231124BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231124BHJP
   A23L 33/185 20160101ALI20231124BHJP
【FI】
A23J1/14
A23J3/16
A23J3/34
A23L11/00 D
A23L11/00 F
A23L11/00 Z
A23L11/65
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L2/00 J
A23L11/60
A23L2/38 D
A23L33/185
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175673
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2021513085の分割
【原出願日】2019-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 正樹
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物性タンパク質を高濃度で含有しても、ゲル化や酸による凝集・固化が起こらず、舌触り、喉ごし、風味に優れた植物性タンパク含有液状組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明によれば、以下の(a)~(e)の要件を満たす、豆類由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物が提供される。
(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること;
(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること;
(c)ブリックス値が10%以上であること;
(d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び
(e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。
(e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下
(e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下
(e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)~(e)の要件を満たす、豆類由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物:
(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること;
(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること;
(c)ブリックス値が10%以上であること;
(d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び
(e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。
(e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下
(e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下
(e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下
【請求項2】
累積50%粒子径(D50)が20μm以下である、請求項1に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
【請求項3】
前記液状組成物が、豆類の乳汁に対して酵素処理又は均質化処理の少なくとも1種の処理を行ったものを含む、請求項1又は2に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
【請求項4】
前記酵素が、タンパク質分解酵素又は多糖類分解酵素の少なくとも1種の酵素である、請求項3に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
【請求項5】
前記処理後の植物性タンパク質含有液状組成物が、以下の(f)又は(g)のうち少なくともいずれか一つを満たすように、前記処理が行われる、請求項3又は4に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
(f)該液状組成物中のタンパク質の平均分子量が4000以下であること。
(g)累積50%粒子径(D50)が2μm以下であること。
【請求項6】
pHが5.5~7.5である、請求項1~5のいずれか1項に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
【請求項7】
前記豆類が、大豆、えんどう豆、ひよこ豆、小豆、りょくとう、及び落花生から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
【請求項8】
前記豆類が、大豆を豆類全量に対して5質量%以上含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の植物性タンパク質含有液状組成物を含む、飲食品。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の植物性タンパク質含有液状組成物を製造する方法であって、以下の(a)~(e)の要件を満たすように、豆類の乳汁を加工する工程を含む、上記方法。
(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること;
(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること;
(c)ブリックス値が10%以上であること;
(d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び
(e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。
(e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下
(e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下
(e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下
【請求項11】
前記豆類の乳汁を加工する工程が、豆類の乳汁に対して酵素処理又は均質化処理の少なくとも1種の処理を行う工程を含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記処理工程において、酵素処理及び均質化処理の両方が実施されると共に、均質化処理が、酵素処理の後に行われる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記処理工程が、該処理後の植物性タンパク質含有液状組成物が、少なくとも以下の(f)又は(g)のいずれか一つを満たすように行われる、請求項11又は12に記載の製造方法。
(f)該液状組成物中のタンパク質の平均分子量が4000以下であること。
(g)累積50%粒子径(D50)が2μm以下であること。
【請求項14】
豆類由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物の舌触り、のど越し、風味を向上させる方法であって、豆類の乳汁を、以下の(a)~(e)の要件を満たすように加工することにより、請求項1~8のいずれか1項に記載の植物性タンパク質含有液状組成物とする工程を含む方法。
(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること;
(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること;
(c)ブリックス値が10%以上であること;
(d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び
(e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。
(e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下
(e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下
(e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下
【請求項15】
前記豆類の乳汁を加工する工程が、豆類の乳汁に対して酵素処理又は均質化処理の少なくとも1種の処理を行う工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記処理工程において、酵素処理及び均質化処理の両方が実施されると共に、均質化処理が、酵素処理の後に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記処理工程が、該処理後の植物性タンパク質含有液状組成物が、少なくとも以下の(f)又は(g)のいずれか一つを満たすように行われる、請求項15又は16に記載の方法。
(f)該液状組成物中のタンパク質の平均分子量が4000以下であること。
(g)累積50%粒子径(D50)が2μm以下であること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性タンパク質を高濃度で含有する植物性タンパク質含有液状組成物、該液状組成物を含む飲食品、及び、該液状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、美容・健康意識の高まりにより、単なるダイエットにとどまらず、適度に筋肉がつき、健康的で引き締まった体を作るために、タンパク質を効率的に摂取できる飲食品が求められている。タンパク質は、肉、魚、卵などの動物性タンパク質と、豆類や穀類などの植物性タンパク質に分類される。動物性タンパク質は、アミノ酸スコアや体内での利用効率が高いものの、肉などの動物性タンパク源は飽和脂肪酸やコレステロールの含有量が高く、過剰摂取により生活習慣病や肥満の引き金となることもある。一方、植物性タンパク質は、動物性タンパク質に比べて脂質やカロリーが少ないため、動物性タンパク質を控え、その減らした分を植物性タンパク質で補うことが提唱されていることから、植物性タンパク源の代表格である大豆や、醤油、味噌、豆腐、豆乳などの大豆加工食品が注目されている。しかしながら、これらは、大量に摂取することが困難である、タンパク質の含有量が少ない、即食性が低いなどの理由で、植物性タンパク質を効率的に摂取できる飲食品として満足できるものではなかった。
【0003】
上記飲食品のうち、豆乳は容易に植物性タンパク質を摂取できるものの、脂質の含有量が高く、脂質に由来する豆臭や独特の風味が強い。また、100gあたりのタンパク質の含有量が3~4g程度と高いものではない。さらに、豆乳を美味しく飲みやすい飲料とするために、酸度の高い果汁や酸味料を配合すると、酸によるタンパク質の凝集・固化が生じるという問題があり、殊にタンパク質の含有量が高いとその傾向が顕著である。
【0004】
これまで豆乳のタンパク質の含有量や、呈味や風味を向上させるための方法について種々の試みがなされている。例えば、特許文献1には、生搾り法で得られた豆乳に、又は生搾り法で豆乳とおからに分離する前の呉に、蛋白質架橋酵素を作用させ、次いで滅菌処理することにより、通常の豆乳にはない濃厚感(コク味)と良好な風味が付与された生搾り滅菌豆乳が得られることが開示されている。しかしながら、この生搾り滅菌豆乳は、大豆固形分が15重量%(タンパク質含有量7.5質量%程度)を超えると、蛋白質架橋酵素との反応で粘度が上がりすぎ、凝集、凝固が起こりやすくなる。特許文献2には、無浸漬、低温摩砕して得た豆乳を、限外濾過膜処理することによって高蛋白濃度の豆乳を得る方法が開示されている。しかし、限外濾過膜など高度な設備を必要とし、その処理能力の限界から生産性が低く、また実施例でも蛋白質濃度が5.2%の豆乳を得たに過ぎない。特許文献3には、2つの異なる容器内で大豆タンパク質と増粘剤とを別々に水和した後に混合した後、これに乳汁由来タンパク質を添加することによってタンパク質富化食品用調製品を得る方法が開示されている。しかし、本方法では増粘剤の添加により粘度を高める必要があり、また乳汁由来の動物性タンパク質の添加が必要であり、植物性タンパク質を高濃度で摂取できるものではない。特許文献4には、動物由来タンパク質の一部の代替物として食品に使用することができる、有利な機能特性を有する、少なくとも1種の乳タンパク質と少なくとも1種の植物性タンパク質からなる集合体を製造する方法が開示されている。しかし、本方法もまた乳タンパク質を含有させることが必須条件となっており、植物性タンパク質を高濃度で摂取できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-204660号公報
【特許文献2】特開平4-299952号公報
【特許文献3】特表2008-539748号公報
【特許文献4】特表2017-512468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、植物性タンパク質を高濃度で含有しても、ゲル化や酸による凝集・固化が起こらず、舌触り、喉ごし、及び風味が良好である植物性タンパク含有液状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、豆類の植物性タンパク質含有液状組成物において、該組成物中のタンパク質と脂質との含有比を所定の範囲に調整すると共に、該組成物のブリックス値及び食物繊維含有量を所定の範囲に調整し、さらに、B型粘度計で測定される粘度を所定の範囲に調整することによって、植物性タンパク質を高濃度で含有しても、ゲル化や酸による凝集・固化が起こらず、舌触り、喉ごし、風味が良好な植物性タンパク質含有液状組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]以下の(a)~(e)の要件を満たす、豆類由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物:
(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること;
(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること;
(c)ブリックス値が10%以上であること;
(d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び
(e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。
(e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下
(e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下
(e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下
[2]累積50%粒子径(D50)が20μm以下である、[1]に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
[3]前記液状組成物が、豆類の乳汁に対して酵素処理又は均質化処理の少なくとも1種の処理を行ったものを含む、[1]又は[2]に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
[4]前記酵素が、タンパク質分解酵素又は多糖類分解酵素の少なくとも1種の酵素である、[3]に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
[5]前記処理後の植物性タンパク質含有液状組成物が、以下の(f)又は(g)のうち少なくともいずれか一つを満たすように、前記処理が行われる、[3]又は[4]に記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
(f)該液状組成物中のタンパク質の平均分子量が4000以下であること。
(g)累積50%粒子径(D50)が2μm以下であること。
[6]pHが5.5~7.5である、[1]~[5]のいずれかに記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
[7]前記豆類が、大豆、えんどう豆、ひよこ豆、小豆、りょくとう、及び落花生から選ばれる1種又は2種以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
[8]前記豆類が、大豆を豆類全量に対して5質量%以上含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の植物性タンパク質含有液状組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の植物性タンパク質含有液状組成物を含む、飲食品。
[10][1]~[8]のいずれかに記載の植物性タンパク質含有液状組成物を製造する方法であって、以下の(a)~(e)の要件を満たすように、豆類の乳汁を加工する工程を含む、上記方法。
(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること;
(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること;
(c)ブリックス値が10%以上であること;
(d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び
(e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。
(e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下
(e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下
(e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下
[11]前記豆類の乳汁を加工する工程が、豆類の乳汁に対して酵素処理又は均質化処理の少なくとも1種の処理を行う工程を含む、[10]に記載の製造方法。
[12]前記処理工程において、酵素処理及び均質化処理の両方が実施されると共に、均質化処理が、酵素処理の後に行われる、[11]に記載の製造方法。
[13]前記処理工程が、該処理後の植物性タンパク質含有液状組成物が、少なくとも以下の(f)又は(g)のいずれか一つを満たすように行われる、[11]又は[12]に記載の製造方法。
(f)該液状組成物中のタンパク質の平均分子量が4000以下であること。
(g)累積50%粒子径(D50)が2μm以下であること。
[14]豆類由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物の舌触り、のど越し、風味を向上させる方法であって、豆類の乳汁を、以下の(a)~(e)の要件を満たすように加工することにより、[1]~[8]のいずれかに記載の植物性タンパク質含有液状組成物とする工程を含む方法。
(a)該液状組成物中のタンパク質の含有量が6~17質量%であること;
(b)タンパク質と脂質の含有比が質量比で10:0.7~10:5.5であること;
(c)ブリックス値が10%以上であること;
(d)該液状組成物中の食物繊維の含有量が3質量%以下であること;及び
(e)B型粘度計で測定される粘度が以下の(e1)~(e3)の少なくとも何れか一つを満たすこと。
(e1)20℃における粘度が4600mPa・s以下
(e2)5℃における粘度が5000mPa・s以下
(e3)50℃における粘度が3400mPa・s以下
[15]前記豆類の乳汁を加工する工程が、豆類の乳汁に対して酵素処理又は均質化処理の少なくとも1種の処理を行う工程を含む、[14]に記載の方法。
[16]前記処理工程において、酵素処理及び均質化処理の両方が実施されると共に、均質化処理が、酵素処理の後に行われる、[15]に記載の方法。
[17]前記処理工程が、該処理後の植物性タンパク質含有液状組成物が、少なくとも以下の(f)又は(g)のいずれか一つを満たすように行われる、[15]又は[16]に記載の方法。
(f)該液状組成物中のタンパク質の平均分子量が4000以下であること。
(g)累積50%粒子径(D50)が2μm以下であること。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、豆類由来の植物性タンパク質を高濃度で含有しても、ゲル化や酸による凝集・固化が起こらず、舌触り、喉ごし、及び風味が良好である植物性タンパク含有液状組成物が提供される。本発明の液状組成物を飲料などの形態で提供することにより、良質な植物性タンパク質を簡便に効率よく、かつ美味しく摂取することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0011】
1.植物性タンパク質含有液状組成物:
本発明の植物性タンパク質含有液状組成物(以下、本明細書中、単に「本発明の液状組成物」と称する場合がある)は、豆類由来のタンパク質を高濃度で含有する植物性の高タンパク質素材である。本発明の液状組成物は、タンパク質と脂質との含有比、ブリックス値、及び食物繊維含有量が所定範囲内であると共に、B型粘度計で測定される所定温度での粘度が所定範囲内であることを特徴とする。
【0012】
(豆類)
「豆類」としては、マメ科植物に属する食用の豆類であれば特に限定はされないが、大豆(黄大豆、青大豆、黒大豆)、小豆、ささげ、りょくとう、いんげん豆、べにばないんげん(白花豆、紫花豆)、えんどう豆(青えんどう、赤えんどう、白えんどう)、ひよこ豆、レンズ豆、落花生、そら豆等が挙げられる。また、これらの豆類から搾油して脱脂したものや、これらの豆類に焙煎、乾燥、脱皮、粉砕、発酵などの加工を施したものであってもよい。特に、大豆、脱脂大豆、えんどう豆、ひよこ豆、小豆、りょくとう、落花生、脱脂落花生が好ましい。上記の豆類は1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また2種以上の豆類を混合して用いる場合は、大豆を豆類全量に対して5質量%以上含有することが好ましい。
【0013】
(豆類の乳汁)
一般に、「豆乳」とは、大豆を水に浸漬して膨潤させた後、磨砕して懸濁液(呉)を得、これを遠心分離等によって固液分離し、不溶性残さ(おから)を除去することによって得られる乳状液をいう。本発明における「豆類の乳汁」とは、豆類を原料とした乳状液であればどのようなものでもよいが、この「豆乳」の製法に準じて調製してもよく、本発明の液状組成物の原料となるものである。上記の「豆類の乳汁」としては、具体的には、1)豆類を水に浸漬して膨潤させた後にすり潰し、水を加えて煮つめ、濾過して不溶性残さ(おから)を除去したもの、2)豆類を蒸煮した後に磨砕、濾過して不溶性残さ(おから)を除去したもの、3)大豆を原料とする市販の豆乳(いわゆる無調整豆乳)などが挙げられる。
【0014】
(タンパク質の含有量)
本発明の液状組成物は、比較的高濃度のタンパク質を含有する。具体的に、本発明の液状組成物中のタンパク質の含有量の下限は、該液状組成物全量に対し、通常6質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。タンパク質の含有量が前記下限値より低いと、効率良くタンパク質を摂取することができない場合がある。一方、本発明の液状組成物中のタンパク質の含有量の上限は、該液状組成物全量に対し、通常17質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。タンパク質の含有量が前記上限値より高いと、脂質量や糖質量や粘度をコントロールしても、特に冷蔵下ではゲル化が進み、流動性がなくなる場合がある。
【0015】
なお、液状組成物中のタンパク質の含有量は、例えば豆類の乳汁の濃縮処理、原料となる豆類の配合量の調整等の手法により調整することができる。
【0016】
また、液状組成物中のタンパク質の含有量は、タンパク質源となる原料の添加量から算出することができるほか、TN分析計やケルダール法によって測定することもできる。
【0017】
(脂質の含有量)
本発明の液状組成物の脂質含有量は、後述のタンパク質と脂質との含有比を充足する限り、制限されるものではないが、その下限としては、該液状組成物全量に対し、例えば0.5質量%以上、中でも1質量%以上、更には2質量%以上であることが好ましい。脂質の含有量が前記下限値より低いと、タンパク質の苦味や収斂味が目立ち、飲食品として摂取しづらくなるほか、舌触りのざらつきが目立つようになる場合がある。一方、本発明の液状組成物の脂質含有量の上限としては、該液状組成物全量に対し、例えば8質量%以下、中でも6質量%以下、更には5質量%以下であることが好ましい。脂質の含有量が前記上限値より高いと、特に低温での粘度が高くなりやすく、流動性が失われるほか、栄養面でも高カロリーとなってしまう場合がある。
【0018】
なお、液状組成物中の脂質の含有量は、例えば豆類の乳汁の濃縮処理、原料となる豆類の脱脂、豆類由来の脂質成分の添加等の手法により調整することができる。
【0019】
また、液状組成物中の脂質の含有量は、脂質源となる原料の添加量から含有量を算出することができるほか、ソックスレー法によって測定することができる。
【0020】
(タンパク質と脂質との含有比)
本発明の液状組成物は、タンパク質と脂質との含有比が所定範囲内であることを特徴の一つとする。具体的に、本発明の液状組成物中のタンパク質と脂質との含有比は、タンパク質:脂質の質量比として、通常10:0.7以上、好ましくは10:0.9以上、より好ましくは10:1以上であり、また、通常10:5.5以下、好ましくは10:5以下、より好ましくは10:4以下である。タンパク質と脂質との含有比が上記範囲内でないと、流動性、舌触り、のど越しが悪くなる場合がある。
【0021】
なお、液状組成物中のタンパク質と脂質との含有比の調整は、上記のタンパク質及び脂質の各含有量の調整手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0022】
(食物繊維の含有量)
本発明の液状組成物は、食物繊維の含有量が所定値以下であることを特徴の一つとする。具体的に、本発明の液状組成物中の食物繊維の含有量は、該液状組成物全量に対し、通常3質量%以下である。中でも2質量%以下、更には1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは含有しなくてもよい。食物繊維の含有量が前記下限値より高いと、のど越しや舌触りが悪くなる場合がある。
【0023】
なお、液状組成物中の食物繊維の含有量は、例えば豆類の乳汁の濃縮処理、原料となる豆類の配合量の調整、濾過による除去等の手法により調整することができる。
【0024】
また、液状組成物中の食物繊維の含有量は、食物繊維源となる原料の添加量から算出することができるほか、プロスキー法によって測定することもできる。
【0025】
(ブリックス値)
本発明の液状組成物は、ブリックス値が所定値以上であることを特徴の一つとする。本発明において「ブリックス」(Brix)値とは、溶液中に含まれる可溶性固形分(例えば、糖、タンパク質、ペプチド等)の総濃度を表す指標であり、20℃で測定された当該溶液の屈折率を、ICUMSA(ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表を使用して、ショ糖溶液の質量/質量%に換算した値である。単位は「°Bx」、「%」又は「度」で表示される。本発明の液状組成物のブリックス値は、通常10%以上、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上である。ブリックス値が前記下限値より低いと、ザラつきが目立つようになり、舌触りが悪くなり、風味や味質が悪化する場合がある。一方、本発明の液状組成物のブリックス値の上限は、制限されるものではないが、例えば30%以下、中でも27%以下であることが好ましい。ブリックス値が前記上限値より高いと、のど越しが悪くなる場合がある。
【0026】
なお、液状組成物のブリックス値は、例えば豆類の乳汁の濃縮処理、原料となる豆類の配合量の調整等の手法により調整することができる。
【0027】
また、液状組成物のブリックス値は、ポケット糖度計、手持屈折計等の市販のブリックス計を用いて測定することができる。
【0028】
(粘度)
本発明の液状組成物は、特定温度で測定した粘度が所定範囲内であることを特徴の一つとする。本発明において「粘度」とは、B型粘度計で測定される液状組成物の粘度をいう。具体的に、本発明の液状組成物は、以下の20℃、5℃、及び50℃での粘度条件のうち、少なくとも何れか1つを満たす。
(1)20℃における粘度が、通常4600mPa・s以下である。中でも4400mPa・s以下、更には4300mPa・s以下であることが好ましい。
(2)5℃における粘度が、通常5000mPa・s以下である。中でも4800mPa・s以下、更には4600mPa・s以下であることが好ましい。
(3)50℃における粘度が、通常3400mPa・s以下である。中でも3200mPa・s以下、更には3000mPa・s以下であることが好ましい。
【0029】
液状組成物の粘度が前記各粘度条件の上限値より高いと、のど越しが悪くなる場合がある。
【0030】
本発明の液状組成物の粘度の下限は、制限されるものではないが、粘度があまりに低すぎると、液中の不溶性成分等の食感のために舌触りが悪化する場合がある。よって、本発明の液状組成物は更に、以下の20℃、5℃、及び50℃での粘度条件のうち、少なくとも何れか1つを満たすことが好ましい。
(1)20℃における粘度が、通常5mPa・s以上が好ましく、12mPa・s以上がより好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい。
(2)5℃における粘度が、通常5mPa・s以上が好ましく、12mPa・s以上がより好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい。
(3)50℃における粘度が、通常5mPa・s以上が好ましく、12mPa・s以上がより好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい。
【0031】
本発明の液状組成物は、前記の20℃、5℃、及び50℃での粘度条件のうち、少なくとも何れか1つを満たせばよいが、本発明の液状組成物が用いられる温度に近い温度での粘度条件を満たすことが好ましい。例えば、本発明の液状組成物が、常温で喫食される飲食品の用途に用いられる場合には、少なくとも前記20℃での粘度条件を満たすことが好ましく、低温で喫食される飲食品の用途に用いられる場合には、少なくとも前記5℃での粘度条件を満たすことが好ましく、高温で喫食される飲食品の用途に用いられる場合には、少なくとも前記50℃での粘度条件を満たすことが好ましい。また、その用途によっては、前記の20℃、5℃、及び50℃での粘度条件のうち、何れか2つを満たすことや、3つ全てを満たすことが好ましい場合もある。特に、所望の温度帯で安定して効率よく摂取するためには、各温度帯で上記の範囲内に安定した流動性を保つことが重要であり、また、温度により粘度が大きく変化してしまうと、摂取時に口腔内で流動性の変化を感じるなどにより官能的にも好ましくない。
【0032】
なお、液状組成物の各温度における粘度は、例えば豆類の乳汁の濃縮処理、原料となる豆類の配合量の調整、後述の酵素処理、均質化処理等の手法により調整することができる。
【0033】
また、液状組成物の粘度は、市販のB型粘度計(単一円筒形回転粘度計を表し、通称ブルックフィールド形回転粘度計とも称される。)を用いて測定することができ、市販のB型粘度計としては、例えば東機産業社製の「B-II」等が挙げられる。具体的には、5℃、20℃、又は50℃に調整した液状組成物を上記のB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数(例えば、ローターNo.3、回転数30rpm)にて測定する。
【0034】
(累積50%粒子径(D50))
本発明の液状組成物は、累積50%粒子径(D50)が所定範囲内であることが好ましい。なお、本発明において「累積50%粒子径」(D50)とは、該組成物の粒子径分布をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、1:1となる粒子径として定義される。具体的に、本発明の液状組成物のD50は、通常20μm以下、中でも15μm以下、更には10μm以下、特に5μm以下であることが好ましい。液状組成物のD50が前記上限値を超えると、ざらつきが増して舌触りやのど越しが悪く、官能的に好ましくない場合がある。
【0035】
なお、特に液状組成物のタンパク質含量や脂質含量が高い場合や、液状組成物の粘度が高い場合等は、本発明の液状組成物の製造時に、後述の酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物のD50を、例えば2μm以下とすることが好ましい場合がある。後述の酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物のD50を前記上限値以下に抑えることで、舌触りなどの品質を向上させることが可能となる。
【0036】
一方、本発明の液状組成物のD50の下限は、制限されないが、例えば0.5μm以上、又は1μm以上であってもよい。液状組成物のD50が前記下限を下回ると、苦味や異味などの好ましくない呈味が増加する場合がある。
【0037】
なお、液状組成物のD50は、例えば豆類の乳汁調整における磨砕や固液分離の条件調整や、後述の均質化処理等の手法により調整することができる。
【0038】
また、液状組成物のD50の測定は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて行う。レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置としては、レーザ回折式粒度分布測定装置、例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを使用することができる。測定条件の設定は、例えば、粒子形状:非球形、粒子透過性:透過、溶媒:WATERとし、複数回測定した後の平均値を測定値とすることができる。
【0039】
(平均分子量)
本発明の液状組成物は、該液状組成物中のタンパク質の平均分子量が所定範囲内であることが好ましい。なお、本発明においてタンパク質の「平均分子量」とは、特に断りがない限り重量平均分子量をいう。具体的に、本発明の液状組成物中のタンパク質の平均分子量は、通常8000以下、中でも6000以下であることが好ましい。液状組成物中のタンパク質の平均分子量が前記上限値を超えると、ざらつきが増して舌触りやのど越しが悪く、官能的に好ましくない。
【0040】
なお、特に液状組成物中のタンパク質含量や脂質含量が高い場合や、液状組成物の粘度が高い場合等は、本発明の液状組成物の製造時に、後述の酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物中のタンパク質の平均分子量を、例えば4000以下、或いは3000以下とすることが好ましい場合がある。後述の酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物中のタンパク質の平均分子量を前記上限値以下に抑えることで、舌触りなどの品質を向上させることが可能となる。
【0041】
一方、本発明の液状組成物中のタンパク質の平均分子量の下限は、制限されないが、例えば500以上、又は1000以上であってもよい。液状組成物中のタンパク質の平均分子量が前記下限を下回ると、苦味や異味などの好ましくない呈味が増加する場合がある。
【0042】
なお、液状組成物中のタンパク質の平均分子量は、例えば使用する豆類の種類選択や、後述の酵素処理等の手法により調整することができる。
【0043】
また、液状組成物中のタンパク質の平均分子量は、例えばゲル濾過高速液体クロマトグラフィー等の公知の方法により測定することができる。
【0044】
(その他の成分)
本発明の液状組成物には、その用途等に応じて、豆類の乳汁由来の成分の他、1種又は2種以上のその他の成分を、任意の組み合わせ及び比率で加えてもよい。その他の成分としては、例えば果汁、糖類、酸味料、甘味料、香料等が挙げられる。特に、本発明の液状組成物の中でも、タンパク質を比較的高い濃度で含有する態様の場合、その他の成分の配合量を増やしても、全体として高いタンパク質の含有量を維持することができる。
【0045】
(pH)
本発明の液状組成物のpHの下限は、特に制限されないが、通常は5.0より高いことが好ましく、5.5以上がより好ましく、6.0以上がさらに好ましい。低pHにすると、舌触りのザラつきや流動性低下などが生じ、飲食時の官能品質低下が問題となる場合がある。一方、本発明の液状組成物のpHの上限は、特に制限されないが、7.5以下が好ましく、7.0以下がより好ましい。液状組成物のpHが前記上限値を超えると、呈味や舌触りが悪くなる場合がある。
【0046】
なお、液状組成物のpHは、例えば果汁や各種有機酸などの酸を用いる等の手法により調整することができる。
【0047】
また、液状組成物のpHは、公知の方法を用いることができ、例えばJIS Z 8802のpH測定方法等の手法により測定可能である。
【0048】
2.植物性タンパク質含有液状組成物を含む飲食品:
上述の本発明の液状組成物は、そのままでも飲用することができるが、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、副原料や食品衛生法上許容されうる添加物等を混合して飲食品の形態で提供することができる。よって、本発明の液状組成物の飲食品における態様には、当該組成物が飲食品そのものである場合と、飲食品を製造する際の原料あるいは中間製品である場合とが含まれる。飲食品は、液状の飲食品に限定はされず、ゲル化剤(ゼラチン、寒天、ペクチン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム等)を添加して、ゲル状飲食品とすることもできる。
【0049】
飲食品の種類としては、特に限定はされず、豆乳飲料、果実又は野菜入り飲料、ゼリー飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク等の飲料類;ゼリー、ババロワ、ムース、プリン等の菓子類;ヨーグルトやチーズ等の乳製品;アイスクリーム、ジェラート、スムージー等の冷菓・氷菓;ホイップクリーム等のクリーム類;介護食、離乳食等の各種流動食;スープ、ホワイトソース、パスタソース、鍋つゆ、マヨネーズ、ドレッシング、ポン酢醤油等の調味料が挙げられる。また、本発明の液状組成物は、酸による凝集・固化が生じないことから、酢や柑橘類などの酸度の高い果汁を配合した酸性の飲食品にも好適に配合することができる。
【0050】
本発明の液状組成物を飲食品の形態で提供する場合は、種実やナッツ類(アーモンド、ピーナッツ、クルミ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ココナッツ、ごま、ピスタチオ、かぼちゃの種、ひまわりの種、松の実、クコの実、ひしの実、クリ等)、果汁・果実(バナナ、リンゴ、ナシ、キウイ、マンゴー、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ、メロン、ブドウ、モモ、イチゴ、ブルーベリー等)、野菜汁・野菜(トマト、ニンジン、カボチャ、さつまいも、ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、小松菜、セロリ、ホウレンソウ、ケール、モロヘイヤ等)、牛乳、コーヒー、茶葉、ココアパウダー、甘酒などを配合することができる。これらのうち、種実やナッツ類は、まろやかで良好な風味を付与し、豆臭を抑制することができるので好ましく、焙煎したものや、破砕したものや、乳汁として加工したもの、など適宜の形態で用いることができる。また、当該飲食品には、飲食品に通常使用される添加剤を含有してもよく、例えば、糖類(ショ糖、麦芽糖、果糖、ブドウ糖、転化糖、粉末水飴類、デキストリン、オリゴ糖等)、高甘味度甘味料(アスパルテーム、ステビア、スクラロース、アセスルファムカリウム等)、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸等の有機酸等)、着色料(ベニバナ色素、クチナシ色素、カロチノイド色素、アントシアニン色素、カラメル色素等)、香料(バナナフレーバー、アップルフレーバー、オレンジフレーバー、ピーチフレーバー等)、増粘剤(キサンタンガム等)、酸化防止剤(ビタミンC、トコフェロール、クロロゲン酸、塩酸システイン等)などを添加してもよい。また、健康機能の増強のために、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD等)、ミネラル類(カルシウム、カリウム、マグネシウム等)等の各種機能成分を添加してもよい。
【0051】
本発明において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、並びに科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。
【0052】
本発明の飲食品における本発明の液状組成物の配合量は、限定はされず、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコストなどを考慮して適宜設定すればよい。例えば、飲料の場合は、通常、成人1日当たりのタンパク質摂取量が、例えば50~60gとなる量とすればよい。
【0053】
3.植物性タンパク質含有液状組成物の製造方法:
本発明の液状組成物は、豆類の乳汁を、任意によりその他の成分と混合した上で適宜加工し、前記の各要件を満たすようにその組成及び物性を調整することにより、製造することできる。具体的に、液状組成物中のタンパク質の含有量、脂質の含有量、タンパク質と脂質との含有比、食物繊維の含有量、ブリックス値、粘度、D50、タンパク質の平均分子量、及びpHの各々の調整法は、何れも前述したとおりである。
【0054】
中でも、本発明の液状組成物を製造するに当たっては、豆類の乳汁に対し、濃縮処理、酵素処理、均質化処理、及び/又は、加熱殺菌処理を加えることが好ましい場合がある。以下、これらの処理について個別に説明する。
【0055】
(濃縮処理)
液状組成物中のタンパク質の含有量、脂質の含有量、タンパク質と脂質との含有比、食物繊維の含有量等を調整する際には、原料として用いる豆類の乳汁の成分組成にもよるが、豆類の乳汁を濃縮することが好ましい場合がある。濃縮を行う場合、濃縮の方法は特に限定されない。例としては、減圧濃縮、加熱濃縮、凍結濃縮、膜濃縮が挙げられるが、減圧濃縮が好ましい。
【0056】
(酵素処理・均質化処理)
前述のように、本発明の液状組成物の製造時に、酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物のD50及び/又は液状組成物中のタンパク質の平均分子量を調整することが好ましい場合もある。酵素処理及び/又は均質化処理を行い、液状組成物のD50及び/又は液状組成物中のタンパク質の平均分子量を前記上限値以下に抑えることで、舌触りなどの品質を向上させることが可能となる。酵素処理及び均質化処理はいずれか一方を行ってよく、両方を行ってもよい。酵素処理及び均質化処理の両方を行う場合は、酵素処理の後に均質化処理を行うことが好ましい。
【0057】
酵素処理は、タンパク質分解酵素又は多糖類分解酵素のいずれか又は両方を用いて行う。タンパク質分解酵素を用いた酵素処理により、各成分の配合量の調整や濃縮などによってタンパク質の含有量を高めた場合でも、本発明の液状組成物の流動性を良好に保つことができる。また、多糖類分解酵素を用いた酵素処理により、ペクチン質、澱粉質、繊維質が分解され、同じく本発明の液状組成物の粘度を下げて流動性を良好に保つことができる。また、タンパク質の酵素分解により、本発明の液状組成物を酸性飲料などの原材料として用いる場合でも、その配合上で添加される酸材の影響による凝集、沈殿、ざらつきなどの舌触りの悪化を防ぐことができる。
【0058】
酵素処理に用いるタンパク質分解酵素としては、例えば、バシラス属(Bacillus)又はアスペルギルス属(Aspergillus)に属する微生物由来のタンパク質分解酵素、パパイヤ由来のパパイン、パイナップル由来のブロメライン、キウイ由来のアクチニダインなどの植物由来のタンパク質分解酵素、パンクレアチン、トリプシン、キモトリプシンなどの動物由来のタンパク質分解酵素が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらのタンパク質分解酵素は、市販品を用いることができる。市販品のタンパク質分解酵素としては、例えば、商品名「プロテアーゼM」(天野エンザイム社)、商品名「プロテアーゼN」(天野エンザイム社)、商品名「プロテアーゼP」(天野エンザイム社)、商品名「プロテアーゼA」(天野エンザイム社)、商品名「ペプシン」(和光純薬社)、商品名「ペプチダーゼR」(天野エンザイム社製)、商品名「フレーバザイム」(ノボザイムズ社)、商品名「ニュートラーゼ」(ノボザイムズ社)などが挙げられが、これらに限定されない。
【0059】
酵素処理に用いる多糖類分解酵素としては、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、ガラクトシダーゼ、ポリガラクツロナーゼ、β-グルコシダーゼ、デキストラナーゼ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
上記のタンパク質分解酵素及び多糖類分解酵素として、当該酵素を含む果物類、野菜類、キノコ類などの食材を用いてもよい。かかる食材としては、例えば、パパイヤ、パイナップル、キウイ、イチジク、マンゴー、リンゴ、メロン、バナナ、ナシ、イチゴ、タマネギ、サツマイモ、ジャガイモ、アスパラガス、マイタケ、ショウガ、ダイコン、カボチャ、トマト、ナス、米麹等が挙げられ、これらの食材を酵素として使用する場合は、例えば、抽出物や搾汁液の形で使用すればよい。酵素を含む食材を用いることによって、当該食材の自然な風味や風合いを保ちつつ酵素処理を行うこともできる。
【0061】
酵素処理に関し、酵素の添加量、反応時間及び処理温度は適宜設定できるが、通常、酵素の添加量は処理液の固形分に対して0.01質量%以上、10質量%以下の範囲が好ましい。また、反応時間は制限されないが、通常0.5時間以上、中でも2時間以上であることが好ましく、また、通常6時間以下、中でも5時間以下であることが好ましい。また、反応温度も制限されないが、通常30℃以上、中でも40℃以上であることが好ましく、通常60℃以下、中でも50℃以下であることが好ましい。反応液のpHは、使用する酵素の至適pHに付近であることが好ましく、適宜調整すればよい。なお、酵素反応終了後は、加熱するなどして酵素を失活させることが好ましい。
【0062】
一方、均質化処理は、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、マスコロイダー、媒体撹拌ミル等を用いて行うことができるが、高圧ホモジナイザーを用いるのが好ましい。高圧ホモジナイザーを用いる場合は、機種、液量、温度、液性(粘度、流動性等)により圧力は適宜調整すればよいが、例えば50MPa前後が適当である。均質化処理により、本発明の液状組成物の液性を良好に保つことができる。また、本発明の液状組成物を酸性飲料などの原材料として用いる場合でも、その配合上で添加される酸材の影響による凝集、沈殿、ざらつきなどの舌触りの悪化を防ぐことができる。さらに上記酵素処理と併用すれば、酵素処理による苦味・異味などの呈味増加を抑制することもできる。
【0063】
(加熱殺菌処理)
本発明の液状組成物は、商業流通のために必要な範囲で、加熱殺菌処理を行うこともできる。例えば、品温80~120℃、5秒~15分の範囲で行うことが好ましい。上記以上の熱負荷をかけると、特に舌触り、のど越しが悪化し、官能的に好ましくない場合がある。
【0064】
4.植物性タンパク質含有液状組成物の舌触り、のど越し、風味を向上させる方法:
本発明によれば、豆類由来のタンパク質と脂質を含有する植物性タンパク質含有液状組成物の舌触り、のど越し、風味を向上させる方法であって、豆類の乳汁を、本発明の液状組成物の各要件を満たすように加工することにより、本発明の液状組成物とする工程を含む方法も提供される。その詳細については、本発明の液状組成物及びその製造方法に関して前述したとおりである。
【実施例0065】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例にも束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0066】
[参考例]物性の測定方法
下記試験例において調製した試験品の物性の測定は、以下の方法で行った。
(1)粘度
試験品の粘度の測定は、測定用容器に試料を約150cc充填し、所定の温度(5℃、20℃、50℃)に調整した後、測定用容器をB型粘度計(東機産業社製、型名:BMII)にセットし、ローター(ローターNo.3使用)を用いて回転数30rpmの条件で20秒間測定することによって行った。
【0067】
(2)タンパク質の平均分子量
試験品中のタンパク質の平均分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の条件にて行った。
機種:LC-20AD(株式会社島津製作所)
検出器:紫外可視検出器(株式会社島津製作所)
カラム:TSKgel G2500PWXL、φ7.8mm×300mm(東ソー株式会社)
カラム温度:40℃
移動相:水、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸の混液(55:45:0.1)
流量:0.5ml/min
測定波長:220nm
注入量:20μl
【0068】
(3)累積50%粒子径(D50)
試験品の累積50%粒子径(D50)は、マイクロトラックレーザー解析・散乱式粒度分析機(マイクロトラック・ベル株式会社製「MT3300EX-II」)を使用して以下の条件で測定した。
粒子形状:非球形
粒子透過性:透過
溶媒:WATER
【0069】
[試験例1]高タンパク質含有液状組成物におけるタンパク質と脂質との含有比の検討
(実施例1~9、比較例1~5)
【0070】
(1)試験品の調製
下記表1に示す大豆由来のタンパク質と脂質を含む原料1~4を用い、下記表2に示す実施例1~9及び比較例1~5の各液状組成物を調製し、飲用適性を評価した。原料1~4の食物繊維の含有量は、プロスキー法により測定した値である。
【0071】
【表1】
【0072】
原料1、2は、表2に示す濃縮倍率となるように50℃で減圧濃縮を行ってから使用した。原料1、2、3、4及び水を表2に示す配合率(%)で混合することによって、タンパク質の含有量及びタンパク質と脂質との含有比(質量比)の異なる実施例1~9及び比較例1~5の各液状組成物を調製した。タンパク質と脂質との含有比は、一般的な豆乳飲料と同程度の10:8から10:0.03まで段階的に調整した。
【0073】
また、実施例3の液状組成物は、後述の試験例3と同様、原料の混合後に酵素処理及び均質化処理を行った。酵素処理は、プロテアーゼM(天野エンザイム株式会社製)を、液状組成物に対して0.1w/v%添加し、40℃で1時間反応させることにより行った。また、均質化処理は、酵素処理の後、高圧ホモジナイザー(IRO SOAVI社製「Panda PLUS 2000型」)を用いて50MPaの圧力で2回パスさせることにより行った。
【0074】
【表2】
【0075】
(2)評価試験
(1)で調製した試験品を、85℃で10分間加熱殺菌した後、参考例の記載に従い、粘度及び累積50%粒子径(D50)を測定した。また、「舌触り」、「のど越し」、及び「風味」について下記の指標に基づき評価を行った。
【0076】
「舌触り」:口に含んだときに舌で感じる感触について、ザラつきがなく滑らかであることを好ましいとして評価した。
「のど越し」:のどを通るときの感触について、のどに引っ掛かりなくスムーズに飲み込めるものを好ましいとして評価した。
「風味」:青臭さ、豆臭さなど喫食時に不快に感じる植物性素材特有の異味・異臭の程度が、口いっぱいに含んでも不快に感じない程度に低いものを好ましいとして評価した。
【0077】
各評価は、訓練された6名の専門パネラーにより、5点:好ましい、4点:やや好ましい、3点:どちらともいえない、2点:やや好ましくない、1点:好ましくない、の5段階で評価し、平均値を求めた。
【0078】
また、上記評価結果を総合して、以下の基準により飲用適性の総合評価を行った。
A:全ての項目が3点以上且つ2以上の項目が3.5点以上で極めて好適である。
B:全ての項目が2.5点以上且つ1以上の項目が3.5点以上で好適である。
C:1の項目が2.5点未満で適性に欠ける。
D:2以上の項目が2.5点未満で不適である。
【0079】
(3)試験結果
上記の各試験結果を下記表3に示す。またpH及びBrixも合わせて示す。
【0080】
【表3】
【0081】
表2及び表3に示されるように、本発明の規定を満たす実施例1~9の試験品は、官能評価において優れた飲用適性を示した。一方、タンパク質と脂質との含有比が10:8である比較例1の試験品(一般的な豆乳の濃縮物)、及び、タンパク質と脂質との含有比が10:0.03である比較例2の試験品(粉末状大豆タンパク質を主体とした組成物)は、何れものど越し及び風味が良くなかった。また、5℃、20℃、及び50℃の粘度が何れも20000mPa・sを超える比較例3の試験品は、のど越しが良くなかった。また、タンパク質と脂質との含有比が10:0.2であり、食物繊維が3.2質量%である比較例4の試験品、及び、食物繊維が3.1質量%である比較例5の試験品は、繊維質のザラつきが感じられ、舌触り及びのど越しが良くなかった。
【0082】
[試験例2]豆類の種類の検討
(実施例10~13)
【0083】
(1)試験品の調製
大豆以外の豆類の乳汁(豆乳汁)を用いて、タンパク質の含有量が8.0質量%以上の液状組成物を調製し、飲用適性を評価した。大豆以外の豆類として小豆、えんどう豆(青えんどう)、ひよこ豆を用い、それらの乳汁を、以下の通り調製した。
【0084】
小豆、えんどう豆、ひよこ豆をそれぞれ十分量の水に20℃で12時間浸漬した後、浸漬水を除き、再度十分量の水を加えて洗浄した。洗浄水を除いた後に、浸漬前の原料豆の乾燥重量の6.5倍量の冷水を加えて、高圧ホモジナイザーを用いてD50が20μm以下となるように適宜の条件で磨砕した。その後、撹拌しながら90℃まで加熱し、40メッシュサイズでろ過したものを乳汁とした。それぞれの乳汁はデンプン質やペクチン質を多く含み、高粘度であることから、アミラーゼ及びペクチナーゼを乳汁に対してそれぞれ0.1w/v%加えて40℃で1時間作用させた後、再度85℃で10分間加熱した。乳汁のタンパク質の含有量は、ケルダール法で分析した窒素量に窒素-タンパク白質換算係数6.25を乗じて算出した。乳汁の脂質の含有量は日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用した各素材のタンパク質と脂質との比率をもとに、先のタンパク質の含有量より算出した。乳汁の食物繊維含有量は、プロスキー法により測定した。それぞれの乳汁100gあたりのタンパク質の含有量、脂質の含有量、食物繊維の含有量を表4に示す。なお、上記で調製した乳汁の累積50%粒子径(D50)を参考例の記載に従って測定したところ、小豆の乳汁のD50は14.40μm、えんどう豆の乳汁のD50は12.12μm、ひよこ豆の乳汁のD50は10.25μmであった。
【0085】
【表4】
【0086】
調製した小豆、えんどう豆、ひよこ豆の各乳汁、大豆の乳汁(豆乳)(キッコーマン飲料社製「おいしい無調整豆乳」(100gあたり、タンパク質4.5g、脂質3.6g、食物繊維0.2g)を表5に示す配合率(%)で混合し、50℃で減圧濃縮を行い、タンパク質の含有量が8.0質量%以上で、タンパク質と脂質との含有比の異なる試験品を調製した。
【0087】
【表5】
【0088】
(2)評価試験
(1)で調製した試験品を、85℃で10分間加熱殺菌した後、参考例の記載に従って粘度を測定し、試験例1と同様にして「舌触り」、「のど越し」、及び「風味」について評価し、飲用適性の総合評価を行った。
【0089】
(3)試験結果
上記の各試験結果を下記表6に示す。またpH、Brixも合わせて示す。
【0090】
【表6】
【0091】
表5及び表6に示されるように、大豆以外の豆類の豆乳液を用いて調製した、本発明の規定を満たす実施例10~13の試験品も、官能評価において優れた飲用適性を示した。
【0092】
[試験例3]酵素処理及び/又は均質化処理の検討
(実施例14~20、比較例6、7)
【0093】
(1)試験品の調製
下記表7に示す実施例14~16(タンパク質含有量12質量%)並びに実施例17~20及び比較例6、7(タンパク質含有量15質量%)の各液状組成物を調製し、飲用適性を評価した。
【0094】
タンパク質の含有量が12質量%の試験区(実施例14~16)では、酵素処理は、プロテアーゼM(天野エンザイム株式会社製)を、液状組成物に対して0.1w/v%添加し、40℃で1時間反応させることにより行った(表中*1)。また、均質化処理は、高圧ホモジナイザー(IRO SOAVI社製「Panda PLUS 2000型」)を用いて50MPaの圧力で2回パスさせることにより行った。酵素処理と均質化処理の両方を行う試験区については、酵素処理の後、均質化処理を行った。
【0095】
タンパク質の含有量が15質量%の試験区(実施例17~20及び比較例6、7)では、酵素処理は、プロテアーゼM(天野エンザイム株式会社製)及びペクチナーゼG(天野エンザイム株式会社製)を、液状組成物に対してそれぞれ0.1w/v%添加し、40℃で1時間反応させることにより(表中*2)、或いは、酵素製剤の代わりにキウイ果汁を2w/v%添加し、40℃で1時間反応させることにより(表中*3)、それぞれ酵素反応を行った。また、均質化処理は、高圧ホモジナイザー(IRO SOAVI社製「Panda PLUS 2000型」)を用いて50MPaの圧力で2回パスさせることにより行った。酵素処理と均質化処理の両方を行う試験区については、酵素処理の後、均質化処理を行った。
【0096】
【表7】
【0097】
(2)評価試験
(1)で調製した試験品を、85℃で10分間加熱殺菌した後、参考例の記載に従って、粘度、タンパク質の平均分子量、累積50%粒子径(D50)を測定した。また、試験例1と同様の項目について官能評価を行い、飲用適性の総合評価を行った。
【0098】
(3)試験結果
上記の各試験結果を下記表8に示す。またpH、Brixも合わせて示す。
【0099】
【表8】
【0100】
表7及び表8に示されるように、本発明の規定を満たす実施例14~20の試験品は、官能評価において優れた飲用適性を示した。一方、タンパク質と脂質との含有比が10:6であり、5℃、20℃、50℃の粘度が何れも5000mPa・sを超える比較例6の試験品は、風味が良くなかった。また、食物繊維が3.1質量%である比較例7の試験品は、繊維質のザラつきが感じられ、舌触り及びのど越しが良くない上に、風味の点でも良くなかった。
【0101】
なお、実施例17の試験品の調製に用いた酵素をセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アミラーゼに置き換えて、それぞれ試験したが、実施例17と同様の結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、豆類由来の良質な植物性タンパク質を効率良く摂取でき、舌触りがまろやかで風味のよい高タンパク飲料、鍋つゆやドレッシングなど調味料の製造分野において利用できる。
【0103】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。