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特開2023-171809ジアミン及びその製造方法並びに重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171809
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ジアミン及びその製造方法並びに重合体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20231128BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151776
(22)【出願日】2023-09-19
(62)【分割の表示】P 2020546070の分割
【原出願日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2018173034
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一世
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液晶表示素子の特性の向上を図るための新規のジアミンを用いた液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子並びにジアミン及びその製造方法並びに重合体を提供する。
【解決手段】下記式[1]で表されるジアミン。

式[1]中、Yは、脂環式構造を有する四価の有機基であり、X、Xは、二価の有機基であり、Z、Zはそれぞれ独立して、単結合、-NH-、または-O-であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表されるジアミン。
【化1】
式[1]中、Yは、脂環式構造を有する四価の有機基であり、X、Xは、二価の有機基であり、Z、Zはそれぞれ独立して、単結合、-NH-、または-O-であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記式[1]のX、Xがフェニレン基を有する二価の有機基である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項3】
前記式[1]のX、Xが下記式[2-2]で表される二価の有機基である、請求項2に記載のジアミン。
【化2】

(式中、X、Xは独立して置換基を有してもよいフェニレン基を表し;Xは炭素数10以下の二価の基を表し;L、Lは独立して単結合、-O-、又は-S-を表し;n1、n2は独立して0又は1を表し;*1、*2は、結合部位を表す。*1、*2は、一方がZ又はZに、もう一方が窒素原子に結合している。)
【請求項4】
前記式[1]において、脂環式構造を有する四価の有機基が、下記式[Y-1]~式[Y-20]から選ばれる、請求項1に記載のジアミン。
【化3】
(式[Y-1]~式[Y-4]において、R~R25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素原子数1~6の1価の有機基又はフェニル基であり、同一でも異なってもよい。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のジアミンを含むジアミン成分から得られる重合体。
【請求項6】
下記式(11)の化合物を出発原料とし、下記式(12)の化合物又は下記式(13)の化合物を経て、請求項1~4のいずれか一項に記載のジアミンを生成するジアミン化合物の製造方法。
【化4】
式(11)~(13)中、Yは、脂環式構造を有する二価の有機基であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。また、式(13)中、R31及びR32は水素原子またはアミノ基の保護基を表す。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の液晶配向剤及び液晶配向膜、並びに液晶表示素子並びに新規のジアミン及びその製造方法並びに重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子はパーソナルコンピュータや携帯電話、テレビジョン受像機等の表示部として幅広く用いられている。液晶表示素子は、例えば素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する液晶配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)等を備えている。これらのうち、液晶配向膜は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(「ポリアミック酸」ともいう)や、そのイミド化物であるポリイミドの溶液からなるポリイミド系の液晶配向剤を、基板に塗布して成膜することで作製されている。
【0003】
近年、液晶表示素子の高性能化、大面積化、表示デバイスの省電力化等が進み、それに加えて、様々な環境下で使用されるようになり、液晶配向膜に求められる特性も厳しいものになっている。そこで、ポリアミック酸やポリイミドの構造の変更、特性の異なるポリアミック酸やポリイミドのブレンドや添加剤を加える等の種々の手法により、液晶配向性や電気特性等の改善の他、プレチルト角のコントロール等が行われている。
【0004】
液晶配向膜の特性を向上させる手法の一例として、ポリアミック酸の原料である、新規構造を有するジアミンの適用が提案されている。例えば、特許文献1には、新規構造を有するジアミンと脂肪族テトラカルボン酸誘導体とを含有する液晶配向剤が開示されており、この液晶配向剤を用いることで、電圧保持率に優れ、且つ電荷蓄積を低減することが可能な液晶表示素子を提供することができる。
【0005】
しかしながら、液晶表示素子の高性能化に伴い、液晶配向膜に要求される特性も厳しくなってきており、従来の技術のみでは全ての要求特性を満足することは難しい。
【0006】
一方、液晶を配向させる一般的な方法としては、ガラス等の基板上にポリイミド等の高分子フィルムを塗布し、その表面をナイロンやポリエステル等の繊維で所定方向に擦るラビング法が使用されている。しかしながら、このラビング法は、繊維と高分子フィルムとの摩擦による微細な塵や静電気放電を発生させ、液晶パネル製造時に深刻な問題を引き起こす虞がある。
【0007】
そこで、ラビング法の問題点を解決するために、高分子膜に摩擦がなく、液晶を配向させるための光照射によって異方性が誘起される光配向法知られている。光配向法は、偏光された紫外線の照射により、液晶配向膜に含有される重合体に光分解反応や光二量化反応などの光反応を起こさせて液晶の配向方向を固定化する。このような光配向法は、液晶表示素子の高精細化、高品位化への要求が高まる中、横電界駆動方式であるIPS方式(In-Plane Switching)やFFS方式(Fringe Field Switching)の液晶表示素子への適用が行われている(例えば、特許文献2参照)。また、IPS方式については、近年、配向能をさらに向上させるため、PSA方式と組み合わせる手法が開発されている。
【0008】
しかしながら、光配向法に用いられるポリイミドは、一般に溶媒溶解性が悪いため、ポリイミドの溶液状態で塗布して配向膜を形成する過程でポリイミドを直接塗布することは困難である。このため、溶解性に優れたポリアミド酸やポリアミック酸エステルなどの前駆体を塗布し、熱処理工程を経てポリイミドを形成した後、光照射して配向させるが、ポリイミド膜を光照射して十分な液晶配向を得るためには多くのエネルギーが必要である。従って、実際に生産性を確保することが困難であり、光照射後の配向安定性を得るためには、さらに熱処理工程が必要であるという制約もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2010/053128号
【特許文献2】特開2013-080193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、液晶表示素子の特性の向上を図るための新規のジアミンを用いた液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子並びにジアミン及びその製造方法並びに重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明の態様は、下記式[3-1]で表される構造単位を含むポリイミド前駆体及びそのイミド化合物であるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤にある。
【0012】
【化1】
式中、Vは、テトラカルボン酸誘導体由来の四価の有機基であり、Wは、下記式[2-1]で表される二価の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
【0013】
【化2】
式中、Yは、脂環式構造を有する四価の有機基であり、X、Xは、二価の有機基であり、Z、Zはそれぞれ独立して、単結合、-NH-、または-O-であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基を表し、*は、結合する部位を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液晶表示素子の特性の向上を図るための新規の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子、並びに新規のジアミン及びその製造方法並びに重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
本発明の液晶配向剤は、下記式[3-1]で表される構造単位を含むポリイミド前駆体及びそのイミド化合物であるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体(以下、特定重合体Aともいう)を含有する。さらに、具体的には、かかる特定重合体Aと、有機溶媒とを含むものである。
【0017】
【化3】
式中、Vは、テトラカルボン酸誘導体由来の四価の有機基であり、Wは、下記式[2-1]で表される二価の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
【0018】
【化4】
式中、Yは、脂環式構造を有する四価の有機基であり、X、Xは、二価の有機基であり、Z、Zはそれぞれ独立して、単結合、-NH-、または-O-であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基を表し、*は、結合する部位を表す。
【0019】
上記で、式[2-1]の構造は下記式[1]で表されるジアミン(以下、本発明のジアミンともいう)に由来する二価の基であるので、まず、本発明のジアミンについて説明する。なお、式[2-1]中のY、X、X、Z、Z、R及びRにおける具体例や好ましい構造は、それぞれ式[1]の説明にて示す具体例や好ましい構造と同じである。また、式[3-1]中、Wは式[2-1]で表される二価の有機基である限り同一重合体中に1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。
【0020】
<ジアミン>
本発明のジアミンは、下記式[1]で表されるものである。
【0021】
【化5】
式中、Yは、脂環式構造を有する四価の有機基であり、X、Xは、二価の有機基であり、Z、Zはそれぞれ独立して、単結合、-NH-、または-O-であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
【0022】
及びRが表す炭素原子数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基等が挙げられ、炭素原子数2~5のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられ、炭素原子数2~5のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル(プロパルギル)基、3-ブチニル基、ペンチニル基等が挙げられる。これらの中で、液晶配向性の観点から、R及びRはメチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0023】
、Xは二価の有機基であり、その構造は特に限定されないが、炭素数が30以下の有機基が好ましい。
また、液晶配向性の観点からはフェニレン基を有することが好ましい。
特に好ましい構造としては下記式[2-2]で表される二価の基を挙げることができる。
【0024】
【化6】
【0025】
式中、X、Xは独立して置換基を有してもよいフェニレン基を表し;Xは炭素数10以下の二価の基を表し;L、Lは独立して単結合、-O-、又は-S-を表し;n1、n2は独立して0又は1を表し;*1、*2は、結合部位を表す。*1、*2は、一方がZ又はZに、もう一方が窒素原子に結合している。
【0026】
、Xのフェニレン基が有してもよい置換基の具体例としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基及びアルコキシ基、炭素数1~5のフルオロアルキル基及びフルオロアルコキシ基、フッ素原子等が挙げられる。
【0027】
の好ましい具体例としては、下記(a)~(d)から選ばれる二価の基が挙げられる。
(a):炭素数1~10の炭化水素から2個の水素原子を除いた基。
(b):前記(a)が有する一つ以上の炭素-炭素結合間に、-O-、-S-、-SO-から選ばれる連結基を挟む構造の基。
(c):前記(a)又は(b)が有する一つ以上の炭素原子をケイ素原子又は窒素原子で置き換えた構造の基。
(d):前記(a)~(c)が有する一つ以上のメチレン基(-CH-)をカルボニル基(-CO-)で置き換えた構造の基。
前記(a)の「炭化水素」は、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、また、直鎖状又は分岐を有する鎖状構造であってもよく、環状構造又は環状構造を含む構造であってもよい。
なお、前記(c)にて、炭素原子を窒素原子で置き換えた構造とする場合、元となる炭素原子は水素原子が結合しているものに限られ、窒素原子で置き換えた後の構造において該水素原子は削除するものとする。
【0028】
、Xのさらに好ましい構造としては、(X-1)~(X-11)で表される構造を挙げることができる。
【0029】
【化7】
(nは1~6の整数を表す。)
【0030】
上記式[1]において、脂環式構造を有する四価の有機基としては、その構造は特に限定されないが、具体例としては、下記式[Y-1]~式[Y-20]を挙げることができる。
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
式[Y-1]~式[Y-4]において、R~R25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素原子数1~6の1価の有機基又はフェニル基であり、同一でも異なってもよい。液晶配向性の観点から、R~R25は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0034】
上記の中でも式[Y-1]は好ましく、式[Y-1]の具体的な構造としては、下記式[Y-1-1]~式[Y-1-6]で表される構造が挙げられる。液晶配向剤の液晶配向性及び光反応の感度の観点から、下記式[Y-1-1]で表される構造が特に好ましい。
【0035】
【化11】
【0036】
以下、ジアミンの合成方法を説明する。
【0037】
式[1]のジアミンの合成方法は、以下の式(11)で表される脂環式構造を有するテトラカルボン酸ジアルキルエステルを出発原料とし、式(12)のイソシアネート化合物又はイソシアネート化合物を経由して式(13)のアミン誘導体を得る第1工程を有する。
【0038】
式(11)の脂環式構造を有するテトラカルボン酸ジアルキルエステルから式(12)のイソシアネート化合物を得る方法は、式(11)のカルボン酸(-COOH)からカルボン酸アジド(-COON)を生成し、クルチウス転位又はシュミット転位等の転移反応を経由してイソシアネート化合物(-NCO)とする方法、又はカルボン酸(-COOH)からヒドロキシアミド誘導体(-CONHOH、-CONHOTs;Tsはトシル基(p-トルエンスルホン酸基)である)を経由してイソシアネート化合物を生成するロッセン転位を利用する方法などを挙げることができる。なお、このように生成したイソシアネート化合物は、水やtert-ブチルアルコールなどを反応させることにより、式(13)のアミン誘導体とすることができ、かかる化合物は式(11)の化合物から直接生成することができる。尚、式(13)の化合物におけるR31及びR32が水素原子の場合、すなわち式(12)のジイソシアネート化合物に水を反応させた場合、例えば二炭酸ジ-tert-ブチルや4-ニトロベンジルクロリド、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸フルオレニルメチルなどのアミノ基保護試薬を反応させ、アミノ保護体とすることで精製がしやすくなり、結果として合成がしやすくなる場合がある。
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
【化14】
【0042】
式(11)~(13)中、Yは、脂環式構造を有する二価の有機基であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。また、式(13)中、R31及びR32は水素原子またはアミノ基の保護基を表す。
ここで、R31及びR32で表されるアミノ基の保護基としては、ベンジル基、ニトロベンジル基、CBz基(ベンジルオキシカルボニル基)、Boc基(tert-ブトキシカルボニル基)、Fmoc基(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基)を挙げることができるが、これに限定はされない。
【0043】
本発明のジアミン化合物の合成方法は、式(12)のイソシアネート化合物にH-Z-X-N(Zは-O-又は-NH-を表し、Xは2価の有機基を表し、Nはアミノ基に変換できる基を表す。Xの具体例や好ましい構造は、それぞれ式[1]の説明にて示す具体例や好ましい構造と同じである。)で表されるアミン化合物やアルコール化合物を反応させる方法、又は式(13)のアミン化合物に、必要に応じて脱保護等の工程を経て活性なアミン化合物に変換し、Cl-C(=O)-X-N(Xは2価の有機基を表し、Nはアミノ基に変換できる基を表す。)で表される酸クロリド化合物やOCN-X-N(Xは2価の有機基を表し、Nはアミノ基に変換できる基を表す。)で表されるイソシアネート化合物、Cl-C(=O)-O-X-N(Xは2価の有機基を表し、Nはアミノ基に変換できる基を表す。)で表されるクロロギ酸誘導体などを反応させて下記式(14)のジアミン化合物前駆体を得る第2工程を具備する。Nはアミノ基に変換できる基であり、二トロ基又は保護アミノ基などを挙げることができる。また、保護アミノ基は、容易に脱保護してアミノ基に変換できる基であれば、特に限定されないが、アミノ基の1つの水素を、ベンジル基、ニトロベンジル基、CBz基(ベンジルオキシカルボニル基)、Boc基(tert-ブトキシカルボニル基)、Fmoc基(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基)で置換した基を挙げることができる。
【0044】
【化15】
はニトロ基又は保護アミノ基を表す。
【0045】
式(14)の化合物の具体例として、以下の式(15)~式(17)を挙げることができる。ここで、式(15)の化合物は、式(12)のイソシアネート化合物に、アミノ基と、ニトロ基又は保護アミノ基とを具備する化合物(例えば、HN-X-Nで表される化合物)を反応させて生成したものである。また、式(16)の化合物は、式(12)のイソシアネート化合物に、水酸基と、ニトロ基又は保護アミノ基とを具備する化合物(例えば、HO-X-Nで表される化合物)を反応させて生成したものである。また、式(17)の化合物は、式(13)のジアミド化合物にニトロ基又は保護アミノ基を有する酸クロリド化合物、又は適当な縮合剤の存在下でニトロ基又は保護アミノ基を有するカルボン酸を反応させて生成したものである。
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
本発明のジアミン化合物の合成方法は、式(14)の化合物のニトロ基又は保護アミノ基をアミノ基に変換する第3工程を有し、これにより、式(1)のジアミン化合物を製造することができる。なお、本発明において、第1工程及び第2工程は、それぞれ行うこともできるが、第1工程及び第2工程を連続して又は一工程として行うことができる。
【0050】
<特定重合体A>
本発明の特定重合体Aは、下記式[3-1]で表される構造単位を含むポリイミド前駆体及びそのイミド化合物であるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体であり、上記式[1]で表されるジアミンとテトラカルボン酸誘導体との反応によって得られる。
【0051】
【化19】
式において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。炭素原子数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基等が挙げられ、炭素原子数2~5のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられ、炭素原子数2~5のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル(プロパルギル)基、3-ブチニル基、ペンチニル基等が挙げられる。これらの中で、加熱時のイミド化反応の進行のし易さの観点から、R及びRは水素原子、メチル基又はエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0052】
は、テトラカルボン酸誘導体由来の四価の有機基であり、その構造は特に限定されるものではない。また、Vは、重合体の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷等、必要とされる特性の程度に応じて適宜選択され、同一重合体中に1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。
【0053】
テトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物を挙げることができる。例えば、式[3-1]におけるVの由来となるテトラカルボン酸二無水物としては、下記式[5]で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化20】
式[3-1]及び式[5]におけるVの具体例としては、前記式[1]においてYの具体例として示した脂環式構造を有する四価の有機基、及び下記式[V-1]~[V-16]に示される四価の有機基などを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【化21】
【0056】
【化22】
【0057】
本発明の特定重合体Aは、前記式[3-1]で表される構造単位以外の構造単位を含んでいてもよい。例えば、式[3-1]以外の構造単位としては下記式[3-2]で表される構造単位を挙げることができる。
【0058】
【化23】
式中、Vは、テトラカルボン酸誘導体由来の四価の有機基であり、Wは、前記式[2-1]で表される構造以外の二価の有機基であり、R3、R、A及びAは、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
、R3、Rの具体例及び好ましい構造は、それぞれ式[3-1]と同じものを挙げることができる。ただし、本発明の実施形態において、式[3-1]で表される構造単位と式[3-2]で表される構造単位とでV、R3、Rの具体的構造が必ずしも同じである必要は無い。
及びAにおける炭素原子数1~5のアルキル基の具体例は、R及びRで示した具体例を挙げることができる。液晶配向性の観点から、A及びAは水素原子又はメチル基が好ましい。
【0059】
は、前記式[1]で表されるジアミン以外のジアミン(以下、その他のジアミンともいう)に由来する二価の有機基であり、前記式[2-1]で表される構造以外の二価の有機基である限りその構造は特に限定されるものではない。その他のジアミンとしては下記式[2-2]で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【化24】
、A及びAは、それぞれ式[3-2]と同じことを表す。
【0061】
以下に、Wの構造の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
【化25】
【0063】
【化26】
【0064】
【化27】
【0065】
【化28】
【0066】
【化29】
【0067】
【化30】
【0068】
【化31】
【0069】
【化32】
【0070】
【化33】
【0071】
【化34】
【0072】
【化35】
【0073】
【化36】
【0074】
【化37】
【0075】
【化38】
【0076】
【化39】
【0077】
【化40】
【0078】
【化41】
【0079】
【化42】
【0080】
【化43】
【0081】
【化44】
【0082】
なお、式中のBoc基は、下記で表されるtert-ブトキシカルボニル基を表している。
【0083】
【化45】
【0084】
特定重合体Aが、式[3-1]の構造単位の他、式[3-2]の構造単位を同時に含む場合、式[3-1]の構造単位は、式[3-1]の構造単位と式[3-2]の構造単位との合計に対して10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上であり、特に好ましくは30モル%以上である。
【0085】
特定重合体Aの分子量は、当該重合体を含有した液晶配向剤から液晶配向膜が得られた場合に、その塗膜(液晶配向膜)の強度、塗膜形成時の作業性、及び塗膜の均一性を考慮して、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が2,000~500,000であることが好ましく、5,000~300,000であることがより好ましく、10,000~100,000であることが更に好ましい。
【0086】
<重合体の製造方法>
次に、本発明の液晶配向剤含まれる重合体の主な製造方法について説明する。なお、以下で説明した方法は製造例であり、これに限定されない。
【0087】
例えば、特定重合体Aが、ポリアミック酸である場合において、かかる重合体は、テトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応により得られる。この反応により、ポリアミック酸を得るにあたっては、公知の合成方法を用いることができる。その合成方法は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる方法である。かかる方法は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、且つ副生成物が発生しない点で有利である。
【0088】
上記反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミック酸(重合体)が溶解するものであれば特に限定されず、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。これらは、単独で使用しても混合して使用してもよい。また、ポリアミック酸(重合体)を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記有機溶媒に混合して使用してもよい。特に、有機溶媒中の水分は、重合反応を阻害し、更には生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0089】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散又は溶解させた溶液を撹拌させ、テトラカルボン酸二無水物をそのまま、又は有機溶媒に分散若しくは溶解させて添加する方法、テトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に分散又は溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを交互に添加する方法等が挙げられ、これらの何れかの方法を用いてもよい。また、テトラカルボン酸二無水物又はジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、予め混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、更に個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としてもよい。
【0090】
その際の重縮合の温度は-20℃~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは-5℃~100℃の範囲である。また、重縮合反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な撹拌が困難となるので、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分の反応溶液中での合計濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%とする。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加してもよい。
【0091】
ポリアミック酸の重合反応においては、テトラカルボン酸二無水物の合計モル数と、ジアミン成分の合計モル数の比(テトラカルボン酸二無水物の合計モル数/ジアミン成分の合計モル数)は、0.8~1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0092】
特定重合体Aが、ポリアミック酸エステルである場合においては、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分との反応や、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分を適当な縮合剤や塩基の存在下にて反応させることにより得ることができる。或いは、上記の方法で予めポリアミック酸を合成し、高分子反応を利用してアミック酸中のカルボン酸をエステル化することでも得ることができる。
【0093】
具体的には、例えば、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを、塩基と有機溶剤の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1時間~4時間反応させることによって、ポリアミック酸エステルを合成することができる。
【0094】
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン等が使用できるが、反応が穏和に進行するためピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、且つ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2倍モル~4倍モルであることが好ましい。
【0095】
また、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分を、縮合剤存在下にて重縮合する場合、塩基として、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルメチルモルホリニウム、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニル、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンー2-イル)4-メトキシモルホリウムクロリドn-水和物等を使用することができる。
【0096】
また、上記縮合剤を用いる方法において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量は、反応させるジアミン又はテトラカルボン酸ジエステルに対して0.1倍モル量~1.0倍モル量であることが好ましい。
【0097】
上記の反応に用いる溶媒は、上記にて示したポリアミック酸を合成する際に用いられる溶媒と同様の溶媒で行なうことができるが、モノマー及びポリマーの溶解性からN-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、重合体の析出が起こりにくく、且つ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドやテトラカルボン酸ジエステル等のテトラカルボン酸誘導体とジアミン成分の反応溶液中での合計濃度が1質量%~30質量%が好ましく、5質量%~20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることがよく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0098】
特定重合体Aが、ポリイミドである場合においては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸やポリアミック酸エステルを閉環イミド化させることにより得られる。このポリイミドにおいて、閉環率(イミド化率)は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0099】
ポリアミック酸をイミド化させる方法としては、ポリアミック酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化や、ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化等が挙げられる。
【0100】
ポリアミック酸を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃~400℃、好ましくは120℃~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行うことが好ましい。
【0101】
ポリアミック酸の触媒イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20℃~250℃、好ましくは0℃~180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5モル倍~30モル倍、好ましくは2モル倍~20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1モル倍~50モル倍、好ましくは3モル倍~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0102】
また、上述のように、ポリアミック酸エステルを高温で加熱し、脱アルコールを促し閉環させることによっても、ポリイミドを得ることができる。
【0103】
なお、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等のポリイミド前駆体や、ポリイミドの反応溶液から、生成したポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミドを回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させたポリイミド前駆体やポリイミドは濾過して回収した後、常圧或いは減圧下で、常温或いは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収したポリイミド前駆体やポリイミドを、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0104】
このようにして得られた本発明の重合体は、所定の有機溶媒に溶解して液晶配向剤として用いることができる。この液晶配向剤は、液晶表示素子において、液晶層の液晶分子の配向性を制御する液晶配向膜に用いるものである。以下、本発明の重合体を含有する液晶配向剤について説明する。
【0105】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記特定重合体Aから選択される少なくとも一種の重合体を含有する。
【0106】
ただし、本発明の液晶配向剤において含有する重合体は、全てが本発明の特定重合体Aであってもよく、また、本発明の特定重合体Aのうち、異なる構造の2種以上を含有してもよい。或いは、本発明の特定重合体Aに加えて、その他の重合体を含有してもよい。その他の重合体の種類としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン又はその誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
中でも、ポリアミック酸は好ましい。その他の重合体としてのポリアミック酸は、例えば前記式[3-2]においてR3、Rが共に水素原子である構造単位からなるポリアミック酸が挙げられる。特に式[3-2]のW中に含窒素芳香族複素環や芳香族基に結合する窒素原子を有するポリアミック酸を本発明の液晶配向剤に混合すると、本発明の液晶配向剤を用いて作製した液晶表示素子の蓄積電荷の緩和速度の向上という観点から好ましい。
【0107】
本発明の液晶配向剤がその他の重合体を含有する場合、全重合体成分に対する本発明の重合体の割合は、5質量%以上であることが好ましく、その一例として5~95質量%が挙げられる。本発明の重合体の割合は、液晶配向剤や液晶配向膜の特性に応じて、適宜選択することができる。
【0108】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を作製するために用いられるものであり、均一な薄膜を形成させるという観点から、一般的には塗布液の形態をとる。本発明の液晶配向剤においても前記した重合体成分と、この重合体成分を溶解させる有機溶媒とを含有する塗布液であることが好ましい。その際、液晶配向剤中の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができる。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点からは、1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下とすることが好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
【0109】
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等を挙げることができる。中でも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。なお、ここで例示された有機溶媒は、単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、重合体を溶解させない溶媒であっても、生成した重合体が析出しない範囲で、有機溶媒に混合して使用してもよい。
【0110】
また、液晶配向剤に含有される有機溶媒は、上記のような溶媒に加えて液晶配向剤を塗布する際の塗布性や塗膜の表面平滑性を向上させる溶媒を併用した混合溶媒を使用することが一般的であり、本発明の液晶配向剤においてもこのような混合溶媒は好適に用いられる。併用する有機溶媒の具体例を下記に挙げるが、これら限定されるものではない。
【0111】
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等の溶媒を挙げることができる。
【0112】
また、上述の溶媒の他に、例えば、下記式[S-1]~式[S-3]で示される溶媒を用いることができる。
【0113】
【化46】
式[S-1]及び式[S-2]において、R28及びR29は、炭素原子数1~3のアルキル基を示す。炭素原子数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。また、式[S-3]において、R30は、炭素原子数1~4のアルキル基を示す。炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0114】
併用する有機溶媒の中でも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルを用いることが好ましい。このような溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境等に応じて適宜選択される。
【0115】
また、これらの溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20質量%~99質量%であることが好ましい。中でも、20質量%~90質量%が好ましい。より好ましいのは、20質量%~70質量%である。
【0116】
本発明の液晶配向剤は、重合体成分及び有機溶媒以外の成分を追加的に含有してもよい。このような追加成分としては、液晶配向膜と基板との密着性や液晶配向膜とシール剤との密着性を高めるための密着助剤、液晶配向膜の強度を高めるための架橋剤、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための誘電体や導電物質等が挙げられる。これら追加成分の具体例としては、液晶配向剤に関する公知の文献に種々開示されているとおりであるが、あえてその一例を示すなら、国際公開第2015/060357号の段落[0105]~[0116]に開示されている成分等が挙げられる。
【0117】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上述した液晶配向剤から得られるものである。液晶配向剤から液晶配向膜を得る方法の一例を挙げるなら、塗布液形態の液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥し、焼成して得られた膜に対してラビング処理法又は光配向処理法で配向処理を施す方法が挙げられる。
【0118】
本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板と共に、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることもできる。その際、液晶を駆動させるためのITO電極等が形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用することができる。
【0119】
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法等が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法等があり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0120】
液晶配向剤を基板上に塗布した後の焼成は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉等の加熱手段により50~300℃、好ましくは80~250℃で行い、溶媒を蒸発させて、塗膜(液晶配向膜)を形成させることができる。焼成後に形成される塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5nm~300nm、より好ましくは10nm~100nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の塗膜をラビング又は偏光紫外線照射等で処理する。
【0121】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブン等の加熱手段により、溶媒を蒸発させ、焼成する。液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される溶媒を十分に除去するために、50℃~120℃で1分~10分焼成し、その後、150℃~300℃で、5分~120分焼成する条件が挙げられる。
【0122】
本発明の液晶配向膜は、IPS方式やFFS方式等の横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、特に、FFS方式の液晶表示素子の液晶配向膜として有用である。
【0123】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上述した液晶配向膜を具備するものであり、上述の液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して素子としたものである。一例を挙げるならば、対向するように配置された2枚の基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する液晶表示素子である。
【0124】
本発明の液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、通常は、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板である。具体例としては、上述の液晶配向膜で記載した基板と同様のものを挙げることができる。
【0125】
また、液晶配向膜は、この基板上に本発明の液晶配向剤を塗布した後焼成することにより形成されるものであり、詳しくは上述した通りである。
【0126】
本発明の液晶表示素子の液晶層を構成する液晶材料は特に限定されず、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、ポジ型液晶材料やネガ型液晶材料の何れを用いてもよい。具体的には、例えばメルク社製のMLC-2003、MLC-6608、MLC-6609、MLC-3019、MLC-2041、MLC-7026‐100等を用いることができる。
【0127】
具体的には、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO-TiOからなる膜とすることができる。次に、前記のような条件で、各基板の上に液晶配向膜を形成する。
【0128】
次いで、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外線硬化性のシール剤を配置し、更に液晶配向膜面上の所定の数カ所に液晶を配置した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて圧着することにより液晶を液晶配向膜前面に押し広げた後、基板の全面に紫外線を照射してシール剤を硬化することで液晶セルを得る。
【0129】
或いは、基板の上に液晶配向膜を形成した後の工程として、一方の基板上の所定の場所にシール剤を配置する際に、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておき、液晶を配置しないで基板を貼り合わせた後、シール剤に設けた開口部を通じて液晶セル内に液晶材料を注入し、次いで、この開口部を接着剤で封止して液晶セルを得る。液晶材料の注入には、真空注入法でもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法でもよい。
【0130】
上記の何れの方法においても、液晶セル内に液晶材料が充填される空間を確保する為に、一方の基板上に柱状の突起を設けるか、一方の基板上にスペーサーを散布するか、シール剤にスペーサーを混入するか、又はこれらを組み合わせる等の手段を取ることが好ましい。
【0131】
次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付けることが好ましい。
【0132】
なお、本発明の液晶配向膜及び液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤を用いている限り上記の記載に限定されるものでは無く、その他の公知の手法で作成されたものであってもよい。液晶配向剤から液晶表示素子を得るまでの工程は、例えば、特開2015-135393号公報の段落[0074]~段落[0081]等の他、数多くの文献でも開示されている。
【0133】
以上のようにして、本発明の液晶配向剤を用いて作製された液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビ等に好適に利用することができる。
【実施例0134】
以下に実施例を挙げて、さらに、本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0135】
実施例で使用した各材料を溶解するために用いた汎用溶剤および実施例で使用した各材料の原料となる単量体の化学構造式は以下に示す通りである。
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
GBL:ガンマブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
DC-1:1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
DC-2:ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物
DC-3:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
DC-4:ピロメリト酸無水物
DC-5:テトラヒドロ-1H-5,9-メタノピラノ[3,4-d]オクセピン-1,3,6,8(4H)-テトラノン
DA-1:ジメチル 2,4-ビス((4-アミノベンズアミド)シクロブタンー1,3-ジカルボキシレート
DA-2:ジメチル 2,4-ビス((4-アミノフェニル)カルバモイル)シクロブタンー1,3-ジカルボキシレート
DA-3:1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン
DA-4:1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン
DA-5:1-tertブトキシカルボニルー1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア
DA-6:ジメチル 2,4-ビス((4-アミノフェニル)ウレイド)シクロブタンー1,3-ジカルボキシレート
【0136】
【化47】
【0137】
【化48】
【0138】
実施例で使用した各材料の合成方法、各特性の測定方法は、以下に示す通りである。
【0139】
[粘度]
合成例において、ポリアミック酸溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0140】
[分子量]
分子量はGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(Mnと重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0141】
GPC装置:Shodex社製(GPC-101)、カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)、カラム温度:50℃、溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)、流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、及び150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に測定した。
【0142】
[イミド化率の測定]
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~11.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。ただし、下記式で算出するイミド化率は、重合反応に関与しない単量体中に含まれるNH基由来のプロトンピークを除外したときの数値とする。
【0143】
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
【0144】
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0145】
[FFSモード用液晶セルの作製]
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製する。
【0146】
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦約10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
【0147】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0148】
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜の直線偏光紫外(LPUV)光の偏光方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+80°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が-80°の角度(反時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
【0149】
次に、液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板と裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコートにて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させ、塗膜面に偏光板を介して消光比26:1以上の直線偏光した波長254nmの紫外線を照射した後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。上記、2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。
【0150】
[残像評価]
二枚の偏光子のなす角が90°となるように偏光子を配置し、この状態をクロスニコルとした。これら二枚の偏光子の間に、上記した残像評価用の液晶セルを配置し、注入した液晶の配向状態を観察した。具体的な評価法は、注入した液晶が液晶セル中で均一に配向しているかどうかを観察することで判断した。液晶セル中の液晶が均一に配向していない場合は輝線が見られ、二枚の偏光子と液晶の配向方向のなす角度により、明瞭な明/暗視野が観察できない。一方で液晶セル中の液晶が均一に配向している場合は輝線が見られず、二枚の偏光子と液晶の配向方向のなす角度により、明瞭な明/暗視野が観察できる。評価基準として、上記の輝線が全く見られず、明瞭な明/暗視野が観察できれば「良好」、明瞭な明/暗視野が観察できるものの、わずかに輝線がみられるものは「可」、明瞭な明/暗視野が観察できず、明瞭な輝線がみられるものは「不良」とした。
【0151】
[表示不良評価]
上記で作製した液晶セルの表示不良評価を行った。評価は、上記で作製した液晶セルを60℃の加熱オーブンで2週間以上加熱した後に、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)で観察することで行った。具体的には、液晶セルを偏光子に対してクロスニコルで設置し、レンズ倍率を5倍にした偏光顕微鏡で観察し、確認した輝点の数を数え、輝点の数が5個未満を「良好」、それ以上を「不良」とした。
【0152】
[液晶配向性評価]
上記で作製した液晶セルの配向性評価を行った。評価法として、液晶セルを偏光板クロスニコル下で最も輝度が小さくなる状態に配置し、作成直後及び再配向処理(110℃で1時間加熱し、室温に戻す)を行った後の配向状態の比較を行った。液晶セル作成直後に流動配向やドメイン等が観察されなかった場合は〇、再配向処理で流動配向やドメイン等が消失した場合は△、再配向後も前記の配向欠陥が観察された場合は×とした。
【0153】
「モノマー合成例」
合成例1 Dimethyl 2,4-bis(3-(4-aminophenyl)ureido)cyclobutane-1,3-dicarboxylateの合成
【0154】
【化49】
【0155】
<第1工程>
Dimethyl 2,4-bis(3-(4-nitrophenyl)ureido)cyclobutane-1,3-dicarboxylateの合成
窒素導入管をとりつけた1Lの4口フラスコに、bis(methoxycarbonyl)cyclobutane-1,3-dicarboxylic acid(100.0g:384.23mmol)をはかり取り、トルエン(500.0g)を加え、トリエチルアミン(97.2g:960.58mmol)、Diphenylphosphoryl Azide[DPPA](232.6g:845.31mmol)を加え、窒素雰囲気下室温で30分攪拌した後、60℃に昇温し、更に3時間反応させた。反応が進行するに従いガスが発生し、ガスの発生が止まるのを確認した。反応溶液を室温に戻し、1,4diaza-bicyclo[2.2.2]octane[DABCO](2.15g:19.21mmol)、4-Nitroaniline(116.76g:845.31mmol)、テトラヒドロフラン(200.0g)を加え、再び60℃に昇温し、窒素雰囲気下で24時間反応させた。TLCにて原料の消失を確認した後、反応溶液を分液ロートに移した。この時有機層は2層に分かれるため、下の層を分取し、メタノール中に投入し攪拌すると固体が析出した。この固体を濾過により回収した。一方の上層を100mlの純水にて3回洗浄し、有機層をロータリーエバポレータにより溶媒留去を行ったところ固体が析出してきた。この祖物を回収し、前記で得られた固体と混合し、メタノール(300.0g)にて加熱洗浄(還流:1時間)を2回行い、真空乾燥させることで薄黄色の固体(136.56g:収率67%)を得た。構造確認は核磁気共鳴スペクトル[H-NMR(400MHz)]にて行い目的物であることを確認した。以下に測定データを示す。
【0156】
H-NMR(400MHz:D6-DMSO)δ:9.34(s:2H)、8.11(q:4H)、7.60(q:4H)、7.04(d:2H)、4.78(q:2H)、4.07(m:2H)、3.60(s:6H)
【0157】
<第2工程>
Dimethyl 2,4-bis(3-(4-amonophenyl)ureido)cyclobutane-1,3-dicarboxylateの合成
1Lの4口フラスコに前記の操作にて得られたDimethyl 2,4-bis(3-(4-nitro-phenyl)ureido)-cyclobutane-1,3-dicarboxylate(100.0g:188.52mmol)、10%パラジウムカーボン(10.0g)、十分に脱気したN,N-ジメチルホルムアミド(500.0g)を加え、水素ガスを置換し、60℃で強めに攪拌しながら24時間反応させた。原料の消失を確認し、熱い状態で濾過によりパラジウムカーボンを除去し、更に活性炭(30g)を加え、60℃で3時間攪拌し、熱時濾過を行った。ろ液を1Lのメタノール中に投入し、10℃でしばらく攪拌すると固体が析出してきた。得られた固体を濾過により回収し、300.0gのメタノールにて加熱洗浄を2回行い、真空乾燥させることで、目的物の乳白色固体74.5gを得た。構造確認は核磁気共鳴スペクトル[H-NMR(400MHz)]にて行い目的物であることを確認した。以下に測定データを示す。
【0158】
H-NMR(400MHz:D6-DMSO)δ:8.01(s:4H)、6.95(q:4H)、6.49(d:2H)、6.45(q:4H)、4.75(q:2H)、4.73(br:4H)、3.64(s:6H),3.35(m:2H)
【0159】
合成例2
Dimethyl 2,4-bis(4-aminobenzamido)cyclobutane-1,3-dicarboxylateの合成
【0160】
【化50】
【0161】
<第1工程>
Dimethyl 2,4-bis((tert-butoxycarbonyl)amino)cyclobutane-1,3-dicarboxylateの合成
窒素導入管をとりつけた2Lの4口フラスコに、bis(methoxycarbonyl)cyclobutane-1,3-dicarboxylic acid(100g:418mmol)をはかり取り、トルエン(1000g)を加え、トリエチルアミン(92.0g:916mmol)、Diphenylphosphoryl Azide[DPPA](252g:916mmol)を加え、窒素雰囲気下室温で30分攪拌した後、60℃に昇温し、更に3時間反応させた。反応が進行するに従いガスが発生し、ガスの発生が止まるのを確認した。反応溶液を室温まで冷却し、1,4diaza-bicyclo[2.2.2]octane[DABCO](2.35:20.9mmol)、tert-butyl alcohol(155g:2.09×10mmol)を加え、80℃に昇温し、窒素雰囲気下で24時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を-20℃で冷却し、生成物を再結晶した。その固体を良溶媒として酢酸エチル、貧溶媒としてヘキサンを用いて再結晶し、これを真空乾燥することで目的の白色固体(60.0g:145mmol、収率:35%)を得た。生成物の構造確認は核磁気共鳴スペクトル[H-NMR(400MHz)]にて行い目的物であることを確認した。以下に測定データを示す。
【0162】
H-NMR(400MHz:D6-DMSO)δ:7.40-7.38(s-s:2H)、4.51-4.49(q:2H)、3.56(s:6H)、3.42-3.38(q:2H)、1.36(s:18H)
【0163】
<第2工程>
Dimethyl 2,4-bis(4-nitrobenzamido)cyclobutane-1,3-dicarboxylateの合成
窒素導入管をとりつけた2Lの4口フラスコに前記操作で得られたDimethyl 2,4-bis((tert-butoxycarbonyl)amino)cyclobutane-1,3-dicarboxylate(60.0g:145mmol)をはかり取り、クロロホルム(600.0g)を加え、氷浴中でトリフルオロ酢酸[TFA](164g:1.45×10mmol)を加え、40℃で12時間加熱撹拌した。その反応溶液を0℃程度に冷却し、トリエチルアミン(32.1g:318mmol)を加え、室温で0.5時間撹拌した。その後、クロロホルム670gに溶解した4-ニトロ安息香酸クロリド(67.0g:602mmol)を静かに滴下し、室温で6時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、純水200mlで3回洗浄し、飽和食塩水200mlで1回洗浄した。その後、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてヘキサンを用いて再結晶し、得られた固体を真空乾燥することで目的の薄黄色固体56.0g(112mmol)を得た。生成物の構造確認は核磁気共鳴スペクトル[H-NMR(400MHz)]にて行い目的物であることを確認した。以下に測定データを示す。
【0164】
H-NMR(400MHz:D6-DMSO)δ:9.29-9.27(d:2H)、8.37(d-d:4H)、8.06(d-d:4H)、5.23-5.17(m:2H)、3.86-3.82(m:2H)、3.55(s:6H)
【0165】
<第3工程>
Dimethyl 2,4-bis(4-aminobenzamido)cyclobutane-1,3-dicarboxylateの合成
1Lの4口フラスコに前記操作で得られたDimethyl 2,4-bis(4-nitrobenzamido)cyclobutane-1,3-dicarboxylate(20.0g:112mmol)、10%パラジウムを担持させた活性カーボン(11.2g)、十分に脱気したN,N-ジメチルホルムアミド(500g)を加え、系中に水素ガスを充填置換し、室温で48時間強攪拌した。反応終了後、パラジウムカーボンを除去し、N,N-ジメチルホルムアミドを減圧濃縮した。析出した固体を最少量のDMFに溶解し、貧溶媒としてヘキサンを用いることで再結晶した。得られた固体をメタノールに分散し、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、濾過にて固体を回収し、減圧乾燥することで目的の白色固体(35.0g:79.5mmol、収率:71%)を得た。構造確認は核磁気共鳴スペクトル[H-NMR(400MHz)]にて行い目的物であることを確認した。以下に測定データを示す。
【0166】
H-NMR(400MHz:D6-DMSO)δ:8.36-8.34(d-d:2H)、7.56-7.53(q:4H)、6.55-6.52(q:4H)、5.65(br:4H)、5.14-5.08(q:2H)、3.76-3.72(q:2H)、3.49(s:6H)
【0167】
[合成例1]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1を5.06g(11.5mmol)取り、NMPを20.3g加えて、窒素を送りながら70℃で30分間加熱撹拌し、溶解した。このジアミン溶液を水冷により室温まで冷却した後、撹拌しながらDC-1を2.37g(11.3mmol)添加し、さらにNMPを9.50g加え、40℃で24時間加熱撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-1)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は300mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量および分子量分布はMn=1.27×10、Mw=3.07×10、Mw/Mn=2.41であった。
【0168】
[合成例2、3、4、5、6]
下記表1に示す、ジアミン成分、テトラカルボン酸成分、及びNMPを使用し、それぞれ、反応温度、固形分濃度、合成例1と同様に実施することにより、下記表1に示すポリアミック酸溶液PAA-2、PAA-3、PAA-4、PAA-5、PAA-6を得た。また、得られたポリアミック酸の粘度、及び分子量は、下記表2に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
[合成例7]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100ml四つ口フラスコに得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を55.0g取り、NMPを18.3g加え、室温で30分撹拌した。得られたポリアミック酸溶液に、無水酢酸を5.12g(50.7mmol)、ピリジンを1.59g(20.1mmol)加えて、55℃で6時間加熱撹拌し、化学イミド化を行った。得られた反応液を218mlのメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物を回収し、続いて、218mlのメタノールで3回洗浄した。得られた樹脂粉末を60℃で12時間乾燥することで、ポリイミド樹脂粉末(PIP-1)を得た。このポリイミド樹脂粉末のイミド化率は95%以上であった。
【0172】
[合成例8]
ポリアミック酸溶液(PAA-2)を使用し、それぞれ、無水酢酸およびピリジンの導入量また、反応温度は合成例7と同様の手順において化学イミド化を実施した。しかし、加熱撹拌中にゲル状の固形物が析出し、正確に化学イミド化できなかった。
【0173】
[合成例9]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50ml四つ口フラスコに得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を24.0g取り、NMPを8.00g加え、室温で30分撹拌した。得られたポリアミック酸溶液に、無水酢酸を2.56g(25.0mmol)、ピリジンを1.19g(15.1mmol)加えて、55℃で4時間加熱撹拌し、化学イミド化を行った。得られた反応液を107mlのメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物を回収し、続いて、107mlのメタノールで3回洗浄した。得られた樹脂粉末を60℃で12時間乾燥することで、ポリイミド樹脂粉末(PIP-3)を得た。このポリイミド樹脂粉末のイミド化率は95%以上であった。
【0174】
[合成例10]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50ml四つ口フラスコに得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を18.0g取り、NMPを6.00g加え、室温で30分撹拌した。得られたポリアミック酸溶液に、無水酢酸を0.77g(7.53mmol)、ピリジンを0.30g(3.80mmol)加えて、55℃で2時間加熱撹拌し、化学イミド化を行った。得られた反応液を75.2mlのメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物を回収し、続いて、75.2mlのメタノールで3回洗浄した。得られた樹脂粉末を60℃で12時間乾燥することで、ポリイミド樹脂粉末(PIP-4)を得た。このポリイミド樹脂粉末のイミド化率は73%であった。
【0175】
[合成例11]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50ml四つ口フラスコに得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を44.0g取り、NMPを14.7g加え、室温で30分撹拌した。得られたポリアミック酸溶液に、無水酢酸を4.50g(44.1mmol)、ピリジンを2.09g(26.5mmol)加えて、55℃で2時間加熱撹拌し、化学イミド化を行った。得られた反応液を196mlのメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物を回収し、続いて、196mlのメタノールで3回洗浄した。得られた樹脂粉末を60℃で12時間乾燥することで、ポリイミド樹脂粉末(PIP-5)を得た。このポリイミド樹脂粉末のイミド化率は95%以上であった。
【0176】
[合成例12]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100ml四つ口フラスコに得られたポリアミック酸溶液(PAA-5)を96.5g取り、NMPを32.2g加え、室温で30分撹拌した。得られたポリアミック酸溶液に、無水酢酸を7.03g(68.9mmol)、ピリジンを3.64g(46.0mmol)加えて、55℃で2時間加熱撹拌し、化学イミド化を行った。得られた反応液を433mlのメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物を回収し、続いて、433mlのメタノールで3回洗浄した。得られた樹脂粉末を60℃で12時間乾燥することで、ポリイミド樹脂粉末(PIP-6)を得た。このポリイミド樹脂粉末のイミド化率は62%であった。
【0177】
[合成例13]
ポリアミック酸溶液(PAA-6)を使用し、それぞれ、無水酢酸およびピリジンの導入量また、反応温度は合成例12と同様の手順において化学イミド化を実施し、ポリイミド樹脂粉末(PIP-7)を得た。このポリイミド樹脂粉末のイミド化率は68%であった。
【0178】
合成例7、8、9、10、11、12、13で得られたポリイミド樹脂粉末のイミド化率を下記表3に示す。
【0179】
【表3】
【0180】
[合成例14]
ポリイミド樹脂粉末(PIP-1)5.56gを50mlナスフラスコに取り、固形分濃度が12%になるようにNMPを40.7g加え、70℃で24時間撹拌し、溶解させてポリイミド溶液(PIS-1)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。このポリイミド溶液の分子量および分子量分布はMn=1.30×10、Mw=3.35×10、Mw/Mn=2.56であった。
【0181】
[合成例15]
ポリイミド樹脂固体(PIP-2)を用いて合成例14と同様の方法でポリイミド溶液(PIS-2)を得た。しかし、不要物が生じており、均一なポリイミド溶液を得ることができなかった。
【0182】
[合成例16、17、18、19、20]
ポリイミド樹脂粉末(PIP-3、PIP-4、PIP-5、PIP-6、PIP-7)を用いて合成例14と同様の方法でポリイミド溶液(PIS-3、PIS-4、PIS-5、PIS-6、PIS-7)を得た。また、得られたポリイミド溶液の分子量は、下記表4に示す。
【0183】
【表4】
【0184】
DA-1またはDA-2とDC-1を逐次重合することによって得られるポリアミック酸溶液を化学イミド化した時に、DA-1からなるポリアミック酸は正常に化学閉環できたのに対し、DA-2からなるポリアミック酸は化学閉環中にゲル状の固形物が析出し、評価に至ることができなかった。
【0185】
本請求項に含まれるDA-1類縁体を用いることで、DA-2類縁体に比べて、ポリアミック酸およびこれを化学閉環したポリイミドとしたときに溶剤に対する溶解性が特異的に良化する。また、本請求項に含まれる材料であるPIS-1、PIS-3、PIS-4、PIS-5は、液晶配向膜として実用に耐え得る特性を示し、さらに表示不良のリスクの低減を図ることが可能であるため、以下に示す。
【0186】
[合成例21]
撹拌子の入った20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリイミド溶液(PIS-1)を6.50g取り、NMPを1.00g、GBL溶液を3.53g、およびBCSを3.00g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-1)を得た。この液晶配向剤(A-1)を用いて下記に示すような手順で液晶配向性評価および輝点評価用液晶セルの作製を行った。
【0187】
[合成例22]
ポリイミド溶液(PIS-3、PIS-4、PIS-5、PIS-6、PIS-7)を用いて合成例21と同様の方法で液晶配向剤(A-2、A-3、A-4、A-5、A-6、A-7)を得た。
【0188】
この液晶配向剤(A-2、A-3、A-4、A-5、A-6、A-7)を用いて下記に示すような手順で液晶配向性評価および輝点評価用液晶セルの作製を行った。
【0189】
[実施例1]
合成例21で得られた液晶配向剤(A-1)を1.0μmのフィルターで濾過した後、30mm×40mmのITO基板に、液晶配向剤をスピンコート塗布し、80℃のホットプレート上で2分間乾燥させ、塗膜面に偏光板を介して消光比26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を0.15J/cmから0.40J/cmの間の種々の露光量で照射した後、230℃の熱風循環式オーブンで17分間焼成を行い、液晶配向膜付きの基板を得た。得られた上記2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、液晶配向性液晶セルを得た。それぞれにおける残像評価結果を下記表5に示す。なお、液晶配向性は前述の評価基準に基づいて、評価を行った。
【0190】
[実施例2、3、4]
液晶配向剤(A-1)の代わりに、それぞれの液晶配向剤(A-2、A-3、A-4)を用い、また、紫外線の照射量、および焼成温度を実施例1と同様の方法で残像評価用液晶セルを作製した。それぞれにおける残像評価結果を下記表5に示す。
【0191】
[比較例1、2]
液晶配向剤(A-1)の代わりに、それぞれの液晶配向剤(A-5、A-6)を用い、また、紫外線の照射量、および焼成温度を実施例1と同様の方法で残像評価用液晶セルを作製した。それぞれにおける残像評価結果を下記表5に示す。
【0192】
【表5】
【0193】
本請求項に記載のDA-1とDC-1からなる液晶配向剤(A-1、A-2、A-3、A-4)は露光量が0.10J/cmから0.40J/cmの間で非常に良好な残像特性を示す。また、DA-1かつ他種のジアミン成分とDC-1を用いた共重合型ポリイミドにおいても良好な残像特性を示し、組み合わせるジアミン成分によって残像特性の良し悪しや露光量が変動する。例として、DA-1とDA-3を共重合することで得られる液晶配向剤(A-2)において、露光量が0.10J/cmから0.40J/cmの間でより広露光量範囲でより良好な残像特性を示す。さらに、DA-1とDA-3からなるポリアミドを化学イミド化する工程でイミド化率を制御したポリイミド溶液(PIS-3)を用いて作製した液晶配向剤(A-3)は、0.10J/cm前後で良好な残像特性を示すため、非常に低露光量で良好な残像特性を得ることができる材料である。さらに、DA-1とDA-4からなる液晶配向剤(A-4)も前述の液晶配向剤(A-3)と同様に、非常に低露光量で非常に良好な残像特性を得ることが可能である。
【0194】
一方で、比較例1で示すDA-3かつDA-5およびDC-1かつDC-2からなる液晶配向剤(A-5)は、良好な残像特性を示すが、0.20J/cm以上の露光量を必要とする。必要露光量の観点で、上記液晶配向剤(A-2、A-3、A-4)は良好な残像特性を示す時の必要露光量が0.10J/cm程度で良いため、本請求項に含まれるDA-1の優位性が示唆される。さらに、高分子ユニットの組み合わせにより必要露光量を調節できるため、実際の製造現場を考慮した際にユーザーの希望するタクトタイムを実現することも可能である。
【0195】
また、DA-3かつDA-5とDC-1から得られる液晶配向剤(A-6)は、上記液晶配向剤(A-1、A-2、A-3、A-4)と類似の母骨格を有するものの良好な残像特性は得られないため、本請求項に含まれるDA-1を用いることの優位性が示唆される。
【0196】
[実施例5]
実施例1で液晶配向剤(A-1)を用いて作製した残像評価用の液晶セルを60℃の加熱オーブンで2週間以上加熱した後に、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)で観察することで行った。なお、判断基準は前述の通り、偏光顕微鏡観察で確認した輝点の数に応じ、輝点の数が5個未満を「良好」、それ以上を「不良」とした。それぞれにおける長期交流駆動後におけるこの液晶セルの輝点評価結果を表6に示す。
【0197】
[実施例6、7、8]
液晶配向剤(A-1)の代わりに、それぞれの液晶配向剤(A-2、A-3、A-4)を用い、また、紫外線の照射量、および焼成温度を実施例5と同様の方法で表示不良評価用液晶セルを作製した。それぞれにおける表示不良評価結果を下記表6に示す。
【0198】
[比較例3、4]
液晶配向剤(A-1)の代わりに、それぞれの液晶配向剤(A-5、A-6)を用い、また、紫外線の照射量、および焼成温度を実施例5と同様の方法で表示不良評価用液晶セルを作製した。それぞれにおける表示不良評価結果を下記表6に示す。
【0199】
【表6】
【0200】
本請求項に記載のDA-1とDC-1からなる液晶配向剤(A-1、A-2、A-3、A-4)は評価不良評価において非常に良好な結果を示す。一方で、比較例1に示すDA-3かつDA-5およびDC-1かつDC-2を共重合することで得られる可溶性ポリイミドやDA-3かつDA-5およびDC-1を共重合することで得られる可溶性ポリイミドからなる液晶配向剤は不良が見られた。本請求項に含まれるDA-1を用いた可溶性ポリイミドからなる液晶配向剤は、表示不良の抑制にも効果がある。
【0201】
[合成例23]
DC-3/DA-6 ポリアミック酸の重合
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-6を4.00g(8.50mmol)取り、NMPを40.58g加えて、窒素を送りながら室温℃で10分間撹拌し、溶解させた。このジアミン溶液に撹拌しながらDC-3を1.54g(7.64mmol)添加し、室温℃で24時間加撹拌して濃度12質量%のポリアミック酸の溶液(PAA-8)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は420mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量および分子量分布はMn=9.82×10、Mw=2.16×10、Mw/Mn=2.20であった。
【0202】
[合成例24、25、26、27、28、29]
下記表7に示す、ジアミン成分、テトラカルボン酸成分、及びNMPを使用し、それぞれ、反応温度、固形分濃度、合成例1と同様に実施することにより、下記表7に示すポリアミック酸溶液PAA-9、PAA-10、PAA-11、PAA-12、PAA―13、PAA-14を得た。また、得られたポリアミック酸の粘度、及び分子量は、下記表8に示す。
【0203】
【表7】
【0204】
【表8】
【0205】
[合成例30]
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100ml四つ口フラスコに得られたポリアミック酸溶液(PAA-8、PAA-9、PAA-10、PAA-11、PAA-12、PAA-13、PAA-14)をそれぞれ30.0g取り、NMPを30.0g加え、室温で30分撹拌した。得られたポリアミック酸溶液に、無水酢酸をポリアミック酸のカルボン酸に対し5mol倍量、およびピリジンを5mol倍量加えて、70℃で3時間加熱撹拌し、化学イミド化を行った。得られた反応液を500mlのメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物を回収し、続いて、300mlのメタノールで3回洗浄した。得られた樹脂粉末を80℃で12時間乾燥することで、ポリイミド樹脂粉末(PIP-8、PIP-9、PIP-10、PIP-11、PIP-12、PIP-13)を得た。PIP-14に関しては化学イミド化中にゲル化したため、ポリイミドとして得ることができなかった。このポリイミド樹脂粉末の分子量及びイミド化率を以下の表9に示す。
【0206】
【表9】
【0207】
[実施例7~12]
50mlナスフラスコに、上記で得られたポリアミック酸溶液(PAA-8~PAA―14)を10.0gはかり取り、NMPを4.00g、BCSを6.0g加え、室温で24時間撹拌し、液晶配向剤(A-8~A-14)を得た。尚A-14は比較対象として用いた。
【0208】
[実施例13~18]
50mlナスフラスコに上記で得られたポリイミド樹脂粉末(PIP-8~PIP―13)を2.0gはかり取り、NMPを18.0g加え、室温で24時間撹拌し、更にNMP6.67g、BCSを6.67g加え、1時間攪拌し、液晶配向剤(A-15~A-20)を得た。
【0209】
[試験例1]
実施例7~18で得られた配向剤A-8~A-20において、下記手法に基づき、液晶配向膜の評価を実施した。また比較対象として、A-14(比較例3)及び日産化学(株)製のSE-6414(比較例4)を用いた。
【0210】
<液晶配向性および電圧保持率、プレチルト角の評価>
液晶配向性および電圧保持率、プレチルト角は以下のようにして評価した。
【0211】
[液晶配向性観察および電圧保持率・プレチルト角測定用液晶セルの作製]
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で1分間乾燥させた後、IR式オーブンを用いて120℃で20分間焼成を行った基板と、230℃で焼成を行った基板を準備した。膜厚は焼成後100nmになるようにした。この液晶配向膜をレーヨン布(吉川化工製YA-20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。
【0212】
上記の液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、MLC-3019(メルク株式会社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、液晶の配向性を観察した後、液晶セルを110℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置し、電圧保持率測定用液晶セルを得た。
【0213】
上記の手順で得られた電圧保持率測定用液晶セルを用いて、60℃の温度下で1Vの電圧を60μs間印加し、166.7ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。なお、電圧保持率の測定には東陽テクニカ社製のVHR-1電圧保持率測定装置を使用した。
【0214】
[プレチルト角の評価]
プレチルト角の測定にはオプトメトリクス社製 Axo Scan ミュラーマトリクスポーラリメーターを用いた。
【0215】
[ラビング耐性の評価]
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で1分間乾燥させた後、IR式オーブンを用いて120℃で20分間焼成を行った基板と、230℃で焼成を行った基板を準備した。膜厚は焼成後100nmになるようにした。この液晶配向膜をレーヨン布(吉川化工製YA-20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.5mm)した後、共焦点レーザー顕微鏡を用いてラビング耐性の評価を行った。剥離している場合は剥離、削れカスや傷が多く見られた場合は不良、良好な場合は良好とする。
【0216】
[液晶配向性の評価]
実施例1と同様の評価基準に基づいて液晶配向性の評価を行った。尚、前記評価基準の「〇」を「良好」とし、前記評価基準の「×」を「不良」とした。
上記した各種評価の結果を表10~表13に示す。
【0217】
<配向剤印刷性、ラビング耐性、セル表示特性評価結果>
【0218】
【表10】
【0219】
【表11】
【0220】
【表12】
【0221】
【表13】
【0222】
120℃焼成で成膜を行った場合、特にポリアミック酸はこの条件ではイミド化することができないため、物理的強度が非常に弱くなり、ラビング処理により膜が削れてしまい液晶の配向も悪化する傾向にあるが、本発明のジアミンを用いたポリアミック酸及びポリイミドは低温焼成でも非常にラビング耐性に優れ、液晶配向性も良好になる。更にプレチルト角も非常に小さく、VHRも高い特徴がある。
【0223】
更に、本発明のジアミンは溶解性を非常に高くすることが可能であり、未導入のPAA-14は化学イミド化できなかったが、ジアミン成分として50mol%導入したPIP-13に関してはイミド化率を95%以上にしても問題なく調整でき、良好な配向膜特性が得られている。一般的にDC-1やDC-4のような溶解性が非常に乏しい成分を組み込んだ場合、化学イミド化は困難な場合が多いが、本発明のジアミンを用いることで高イミド化率の可溶性ポリイミドが調整できるようになる。可溶性ポリイミドにすることで更に信頼性も向上させることができる。
【0224】
230℃焼成の場合、比較例の材料もイミド化が進行するためラビング耐性と液晶配向性、信頼性が向上するが、本発明の配向剤は良好な特性を示し、若干プレチルト角が向上する傾向にあるが、比較対象に比べて非常に小さいメリットがある。更に信頼性も非常に高くなる。
【0225】
よって、本発明のジアミンを用いることで低温焼成から高温焼成に対応した液晶配向剤が作れ、更には非常にプレチルトの低い配向膜を得ることができる。
【0226】
[試験例2]
実施例14、実施例15、実施例18で得られた液晶配向剤(A-16,A-17、A-20)及び比較例の液晶配向剤A-5を1.0μmのフィルターで濾過した後、30mm×40mmのITO基板に、液晶配向剤をスピンコート塗布し、80℃のホットプレート上で2分間乾燥させ、塗膜面に偏光板を介して消光比26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を0.1~1.0J/cmの範囲でそれぞれ照射した後、150℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、液晶配向膜付きの基板を得た。得られた上記2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、液晶配向性液晶セルを得た。それぞれにおける液晶配向性の結果を以下表14に示す。なお、実施例1と同様の評価基準に基づいて評価を行った。
【0227】
【表14】
【0228】
本発明のジアミンとDC-1を用いた可溶性ポリイミドにおいて、仮乾燥後UVを照射し150℃で焼成したもので配向性を示すことが分かった。比較例1の材料は高温時では配向性を示すが、低温ではUVの照射強度によらず配向性を示さない。よって本発明のジアミンを用いることで低温での光配向が可能になることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明のジアミンから得られるポリアミック酸、ポリイミドは溶媒への溶解性に優れるため、これまで溶解性の観点で実現できなかった液晶配向剤及び膜の製造が可能となる。また、ラビング用配向膜から光配向膜に至るまで幅広く応用が可能である。特に今後横電界方式のトレンドとなる低温焼成や低プレチルト角材料、光配向の工程簡略化等に対応可能になると考えられる。
【0230】
本発明の材料から製造された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、残像特性や長期表示の安定化に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビや中小型のカーナビゲーションシステムやスマートフォンなどに好適に利用することができる。さらに、製造工程においてより簡便に作製することが可能となるため、歩留まりや生産効率の向上が期待できる。