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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171826
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】新規なジアミン
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20231128BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156347
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2020556078の分割
【原出願日】2019-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018209060
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】小西 玲久
(72)【発明者】
【氏名】須賀 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰宏
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ネガ型液晶を用いた場合でも、輝点が発生せず、良好な残像特性が得られる光配向法用の液晶配向膜を得るための液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子の原料となる新規なジアミンを提供する。
【解決手段】下記式で表されるジアミン。

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-NR12-、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、ウレア結合、カーボネート結合、又はカルバメート結合であり、R12は、水素原子又はメチル基であり、Aは炭素数1又は2のアルキレン基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表されるジアミン。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-NR12-、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、ウレア結合、カーボネート結合、又はカルバメート結合であり、R12は、水素原子又はメチル基であり、Aは炭素数1又は2のアルキレン基である。)
【請求項2】
及びRは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、又は-NR12-である、請求項1に記載のジアミン。
【請求項3】
主鎖中に下記式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であって、
前記ポリイミド前駆体が、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを重合反応させることにより得られ、
前記ジアミン成分が、請求項1又は2に記載のジアミンを含む、重合体。
【化2】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-NR12-、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、ウレア結合、カーボネート結合、又はカルバメート結合であり、R12は、水素原子又はメチル基であり、Aは炭素数1又は2のアルキレン基である。B及びBは、同じ構造を有し、下記構造から選ばれる2価の有機基である。)
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造に用いられる液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子の原料となる新規なジアミンに関する。
【背景技術】
【0002】
光配向法は、ラビングレスの配向処理方法として、工業的にも簡便な製造プロセスである。特に、IPS(In-Plane-Switching)駆動方式やFFS(Flinge field Switching)駆動方式の液晶表示素子においては、上記の光配向法で得られる液晶配向膜を用いることで、ラビング処理法で得られる液晶配向膜に比べて、液晶表示素子のコントラストや視野角特性の向上が期待できる(特許文献1)。これにより、液晶表示素子の性能を向上させることが可能であり、有望な液晶配向処理方法として注目されている。
【0003】
しかし、光配向法により得られる液晶配向膜は、ラビングによるものに比べて、高分子膜の配向方向に対する異方性が小さいという問題がある。異方性が小さいと充分な液晶配向性が得られず、液晶表示素子とした場合に、残像が発生するなどの問題が発生する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-297313号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「液晶光配向膜」機能材料、Vol.17(1997)、No.11、p.13-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光配向法により得られる液晶配向膜の配向方向への異方性不足によるAC駆動後の残像発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示す通りである。
主鎖中に下記式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤。
【化1】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-NR12-、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、ウレア結合、カーボネート結合、又はカルバメート結合である。R12は、水素原子、又はメチル基である。Aは炭素数1又は2のアルキレン基である。B及びBは同じ構造を有し、かつ下記構造から選ばれる2価の有機基である。
【化2】
式中、Rは、炭素数1~5のアルキレン基である。Rは水素原子、メチル基、ヒドロキシ基又はメトキシ基である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液晶配向剤を用いることにより、高い液晶配向性を有し、AC残像の発生を抑制できる液晶配向膜を得ることが可能となる。
本発明の液晶配向剤を用いることで、なぜ上述の効果が得られるのかについては必ずしも明らかではないが、液晶配向材を構成する重合体の原料としているジアミンの化学構造が、剛直であり、かつ対称な構造を有しているためと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<特定構造>
本発明の液晶配向剤を構成する重合体の主鎖中には、上記式(1)で表される特定構造(以下、特定構造ともいう。)を含有する。
【化3】
上記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-NR12-、エステル結合、アミド結合、チオエステル結合、ウレア結合、カーボネート結合、又はカルバメート結合であり、R12は、水素原子又はメチル基である。Aは炭素数1又は2のアルキレン基である。B及びBは、同じ構造を有し、かつ下記構造から選ばれる2価の有機基である。BとBは同じ構造を有することにより、高い液晶配向性を有する液晶配向膜を得ることができる。
【0010】
【化4】
上記式中、Rは、炭素数1~5のアルキレン基である。Rは水素原子、メチル基、ヒドロキシ基又はメトキシ基である。)
【0011】
なお、上記式(1)において、なかでも、R、Rは、液晶配向性の観点から、単結合、-O-、-S-、-NR12-、エステル結合又はアミド結合が好ましく、-O-が特に好ましい。R12は、液晶配向性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。また、Aは液晶配向性の観点から、炭素鎖2のアルキレン基が好ましい。
とBは、液晶配向性の観点から、ビフェニレン基が好ましい。
上記式中、Rは、液晶配向性の観点から、炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。Rは、液晶配向性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
上記した特定構造は、ポリイミド前駆体の原料であるジアミン中に含有することが好ましい。上記した特定構造を有するジアミンの具体例としては、下記ジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。ポリイミド前駆体は、好ましくは、下記ジアミンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを重合反応させることにより得られる。
【化5】
【0012】
【化6】
(Rは、前記と同定義である。)
【0013】
【化7】
上記式において、R及びR12は、それぞれの好ましい例も含めて、前記と同定義である。
【0014】
上記の特定構造を有するジアミンは、上記特定構造の両端にアミノ基が結合したジアミンが好ましく、なかでも、配向性及び液晶表示素子にした際の輝点減少の観点から、以下のジアミンであることが好ましい。
【化8】
上記式中、R、R、Aは、それぞれの好ましい例を含めて、上記したとおりである。上記特定構造を有するジアミンとしては、なかでも、以下のジアミンが好ましい。
【化9】
【0015】
<重合体>
本発明の液晶配向剤を構成するポリイミド前駆体は、下記式(2)の構造単位を含有する。
【化10】
【0016】
は、下記式(X1-1)及び(X1-2)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である。その中でも、液晶配向性の観点から、下記式(X1-2)が好ましい。
【化11】
【0017】
は、式(1)で表される2価の有機基である。
は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基などが挙げられる。加熱によるイミド化のしやすさの観点から、Rは、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0018】
及びZは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基若しくは炭素数2~10のアルキニル基である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH-CH構造を、CH=CH構造に置き換えたものが挙げられる。具体的には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH-CH構造を、C≡C構造に置き換えたものが挙げられる。具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基などが挙げられる。
【0019】
上記のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は置換基を有していてもよく、更には、置換基によっては環構造を形成してもよい。なお、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となることを意味する。
置換基の例としては、ハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を挙げることができる。
ハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基が挙げられる。このアリール基には前述した他の置換基が、更に置換していてもよい。
【0020】
オルガノオキシ基としては、-O-Rで表される構造を示すことができる。このRは、同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
オルガノチオ基としては、-S-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる。
【0021】
オルガノシリル基としては、-Si-(R)で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基などが挙げられる。
アシル基としては、-C(O)-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0022】
エステル基としては、-C(O)O-R、又は-OC(O)-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。
チオエステル基としては、-C(S)O-R、又は-OC(S)-Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。
リン酸エステル基としては、-OP(O)-(OR)2で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。
【0023】
アミド基としては、-C(O)NH、-C(O)NHR、-NHC(O)R、-C(O)N(R)、又は-NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基が更に置換していてもよい。
アリール基としては、前述したアリール基と同じものを挙げることができる。このアリール基には、前述した他の置換基が更に置換していてもよい。
アルキル基としては、前述したアルキル基と同じものを挙げることができる。このアルキル基には、前述した他の置換基が更に置換していてもよい。
アルケニル基としては、前述したアルケニル基と同じものを挙げることができる。このアルケニル基には、前述した他の置換基が更に置換していてもよい。
アルキニル基としては、前述したアルキニル基と同じものを挙げることができる。このアルキニル基には、前述した他の置換基が更に置換していてもよい。
【0024】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、Z及びZとしては、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
上記式(2)で表される構造単位を、全構造単位に対して、20~100モル%有することが好ましく、液晶配向性の観点から、30~100モル%が特に好ましい。
【0025】
<その他の構造単位>
本発明の液晶配向剤を構成する重合体が、上記式(2)の構造単位以外の構造単位を含む場合、その構造単位は、下記式(3)で表される。
【化12】
、Z及びZの定義は、上記式(2)におけるのと同じである。
【0026】
は、4価の有機基であり、Yは、2価の有機基である。
は、テトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基であり、その構造は特に限定されるものではない。ポリイミド前駆体中、Xは2種類以上が混在していてもよい。Xの具体例を示すならば、下記式(X-1)~(X-44)の構造が挙げられる。
【0027】
【化13】
【0028】
【化14】
【0029】
【化15】
【0030】
【化16】
【0031】
上記式(X-1)におけるR~R11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基又はフェニル基である。R~R11が、嵩高い構造である場合、液晶配向性を低下させる可能性があるため、水素原子、メチル基又はエチル基がより好ましく、水素原子又は、メチル基が特に好ましい。
【0032】
式(3)において、Yは、ジアミン由来の2価の有機基であり、その構造は特に限定されない。Yの構造の具体例を示すならば、下記の(Y-1)~(Y-118)が挙げられる。
【化17】
【0033】
【化18】
【0034】
【化19】
【0035】
【化20】
【0036】
【化21】
【0037】
【化22】
【0038】
【化23】
【0039】
【化24】
【0040】
【化25】
【0041】
【化26】
【0042】
【化27】
【0043】
【化28】
【0044】
【化29】
【0045】
【化30】
【0046】
【化31】
【0047】
【化32】
【0048】
【化33】
【0049】
(式(Y-109)中、m、nは、それぞれ独立して、1~11の整数であり、m+nは2~12の整数であり、式(Y-114)中、hは1~3の整数であり、式(Y-111)及び(Y-117)中、jは0~3の整数である。)
本発明に用いるポリイミド前駆体は、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体との反応から得られるものであり、ポリアミック酸やポリアミック酸エステル等が挙げられる。
【0050】
<ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下の方法により製造される。
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、有機溶媒の存在下で、-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~12時間反応させることによって合成できる。
【0051】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。下記に、反応に用いる有機溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンが挙げられる。
また、ポリイミド前駆体の溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される有機溶媒を用いることができる。
【0052】
【化34】
式[D-1]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、Dは炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0053】
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
反応系中におけるポリアミック酸ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0054】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで、精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0055】
<ポリイミド前駆体(ポリアミック酸エステル)>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)、(2)又は(3)の製法で製造することができる。
【0056】
(1)ポリアミック酸から製造する場合
ポリアミック酸エステルは、前記のように製造されたポリアミック酸をエステル化することによって製造できる。具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって製造することができる。
【0057】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジ-t-ブチルアセタール、1-メチル-3-p-トリルトリアゼン、1-エチル-3-p-トリルトリアゼン、1-プロピル-3-p-トリルトリアゼン、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンー2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2~6モル当量が好ましい。
【0058】
有機溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
これらの溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、溶媒中の水分は、重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0059】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性から、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0060】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから製造することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを、塩基と有機溶剤の存在下で、-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって製造することができる。
【0061】
前記塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2~4倍モルであることが好ましい。
上記の反応に用いる溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性から、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの製造に用いる溶媒は、できるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0062】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンから製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより製造することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを、縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で、0~150℃、好ましくは0~100℃において、30分~24時間、好ましくは3~15時間反応させることによって製造することができる。
【0063】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルメチルモルホリニウム、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2~3倍モルが好ましい。
【0064】
前記塩基としては、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、ジアミン成分に対して2~4倍モルが好ましい。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0~1.0倍モルが好ましい。
【0065】
上記3つのポリアミック酸エステルの製造方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は(2)の製法が特に好ましい。
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して、精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0066】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、前記したポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。
ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に、塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の課程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0067】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において、塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては、前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもトリエチルアミンは反応を進行させるのに充分な塩基性を持つので好ましい。
イミド化反応を行うときの温度は、-20~140℃、好ましくは0~100℃であり、好ましくは反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量は、アミック酸エステル基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間等を調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0068】
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られたポリアミック酸の溶液に、触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸を、有機溶媒中において、塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては、前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも無水酢酸は、反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0069】
イミド化反応を行うときの温度は、-20~140℃、好ましくは0~100℃であり、反応時間は好ましくは1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量は、アミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量は、アミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間等を調節することで制御することができる。
【0070】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して、精製されたポリイミドの粉末を得ることができる。
貧溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0071】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、主鎖中に特定構造を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する。重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、更に好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、更に好ましくは、5,000~50,000である。
【0072】
本発明の液晶配向剤中の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点からは、1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下とすることが好ましい。重合体の濃度は好ましくは2~7質量%である。
【0073】
本発明に用いられる液晶配向剤に含有される、重合体を溶解させる有機溶媒(以下、良溶媒ともいう)は、重合体が均一に溶解するものであれば特に限定されない。
例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンを挙げることができる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。
更に、本発明の重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることが好ましい。
本発明の液晶配向剤における良溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましい。なかでも、20~90質量%が好ましい。より好ましいのは、30~80質量%である。
【0074】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)を用いることができる。貧溶媒の具体例を挙げる。
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒などを挙げることができる。
【0075】
なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
これら貧溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%であるのが好ましい。なかでも、10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。
【0076】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の重合体以外の重合体、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、更には塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を添加してもよい。
【0077】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥し、焼成して得られる膜である。液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることが、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0078】
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択できる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために、乾燥温度は好ましくは50~120℃であり、乾燥時間は好ましくは1~10分である。また、焼成温度は好ましくは150~300℃であり、焼成時間は好ましくは5~120分である。
焼成後の膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が損なわれる可能性があるので、好ましくは5~300nm、より好ましくは10~120nmである。
【0079】
液晶配向膜の光配向処理の方法としては、塗膜表面に、一定方向に偏向した放射線を照射し、場合によっては、更に150~250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100~800nmの波長を有する紫外線及び可視光線を用いることができる。このうち、100~400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200~400nmの波長を有するものが特に好ましい。また、液晶配向性を改善するために、塗膜基板を50~250℃で加熱しつつ、放射線を照射してもよい。放射線の照射量は、1~10,000mJ/cmが好ましく、100~5,000mJ/cmが特に好ましい。上記のようにして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
より高い異方性が付与できるため、偏光された紫外線の消光比は高いほど好ましい。具体的には、直線に偏光された紫外線の消光比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましい。
【0080】
偏光された放射線を照射した膜は、次いで、水及び有機溶媒から選ばれる少なくとも1種を含む溶媒で接触処理してもよい。
接触処理に使用する溶媒としては、光照射によって生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。汎用性や安全性の点から、水、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。水、2-プロパノール、又は、水と2-プロパノールの混合溶媒が特に好ましい。
【0081】
本発明において、偏光された放射線を照射した膜と有機溶媒を含む溶液との接触処理としては、浸漬処理、噴霧(スプレー)処理などが挙げられ、膜と液とが十分に接触するような処理が好ましい。なかでも、好ましくは10秒~1時間、より好ましくは1~30分、有機溶媒を含む溶液中で、膜を浸漬処理する方法が好ましい。接触処理は、常温でも加温してもよいが、好ましくは10~80℃、より好ましくは20~50℃で実施される。また、必要に応じて、超音波などの接触を高める手段を施すことができる。
接触処理の後に、使用した溶液中の有機溶媒を除去する目的で、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンス)や乾燥のいずれか、又は両方を行ってもよい。
【0082】
更に、溶媒による接触処理をした膜は、溶媒の乾燥及び膜中の分子鎖の再配向を目的に、150℃以上で加熱してもよい。加熱温度としては、150~300℃が好ましい。温度が高いほど、分子鎖の再配向が促進されるが、温度が高すぎると分子鎖の分解を伴う恐れがある。そのため、加熱温度は、180~250℃がより好ましく、200~230℃が特に好ましい。
加熱する時間は、短すぎると分子鎖の再配向の効果が得られない可能性があり、長すぎると分子鎖が分解してしまう可能性があるため、10秒~30分が好ましく、1~10分がより好ましい。
【0083】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を有する基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、該セルを使用して素子としたものである。
液晶セルの作製方法の一例として、以下に、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。なお、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0084】
まず、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えば、ITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようにパターニングされる。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO-TiOからなる膜とすることができる。
次に、各基板の上に、本発明の液晶配向膜を形成する。次に、一方の基板に他方の基板を、互いの配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール材で接着する。シール材には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入することが好ましい。また、シール材を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。また、シール材の一部には、通常、外部から液晶を充填可能な開口部が設けられる。
【0085】
次に、シール材に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール材で包囲された空間内に液晶材料を注入する。その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に、一対の偏光板を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、本発明の液晶表示素子が得られる。
本発明において、シール剤としては、例えば、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ヒドロキシ基、アリル基、アセチル基などの反応性基を有する紫外線照射や加熱によって硬化する樹脂が用いられる。特に、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方の反応性基を有する硬化樹脂系を用いるのが好ましい。
【0086】
上記のシール剤には、接着性、耐湿性等の向上を目的として、無機充填剤を配合してもよい。使用可能な無機充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、球状シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、チタンブラック、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられる。好ましくは、球状シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、チタンブラック、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムなどである。前記の無機充填剤は2種以上を混合して用いてもよい。
【実施例0087】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記における化合物の略号、及び各特性の測定方法は、以下のとおりである。
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、
BCS:ブチルセロソルブ
【0088】
【化35】
【0089】
【化36】
【0090】
【化37】
なお、式中、Fmocは、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を表し、Bocは、t-ブトキシカルボニル基を表す。
【0091】
H NMR]
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT-NMR)INOVA-400(Varian社製)400MHz
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d))
標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
積算回数:8、又は、32
【0092】
[粘度]
ポリイミド及びポリアミック酸溶液の粘度は、E型粘度計(東機産業社製、VE-22H)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0093】
[液晶セルの作製]
FFSモード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製した。
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×50mmの長方形で、厚みが0.7mmのガラス板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
【0094】
第3層目の画素電極は、中央部分が内角160°に屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字の「くの字」に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0095】
次に、得られた液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板と裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコートにて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、厚み100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面に偏光紫外線を500mJ/cmとなるように照射して配向処理を施し、液晶配向膜付き基板を得た。なお、上記電極付き基板に形成する液晶配向膜は、画素屈曲部の内角を等分する方向と液晶の配向方向とが直交するように配向処理し、第2のガラス基板に形成する液晶配向膜は、液晶セルを作製した時に第1の基板上の液晶の配向方向と第2の基板上の液晶の配向方向とが一致するように配向処理する。上記2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合う配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で1時間加熱し、一晩放置してから残像評価に使用した。
【0096】
[長期交流駆動による残像評価]
上記の液晶セルを用い、60℃の恒温環境下、周波数30Hzで±5Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度Δとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し、同様の角度Δを算出した。そして、第1画素と第2画素の角度Δ値の平均値を液晶セルの角度Δとして算出した。
上記で得られた液晶セルの角度Δが0.15°以上を「×」とし、0.15°未満0.1°以上を「△」、0.1°未満を「〇」と評価した。
【0097】
(合成例1:DA-5の合成)
以下の手順でDA-5を合成した。
【化38】
【0098】
化合物[1]の合成
ジメチルホルムアミド(500g)に対して、エチレングリコールジトシラート(40.6g、110mmol)、4-ヒドロキシ-4’-ニトロビフェニル(49.5g)、及び炭酸カリウム(37.8g)を加え、80℃で23時間撹拌した。室温まで冷却した後、純水(1000g)中に流し入れながら撹拌して結晶を析出させた。結晶を濾過し、濾物をメタノール(500g)でスラリー洗浄し、濾過した後、濾物を乾燥させることで粗体(47.6g)を得た。粗体に対し、ジメチルホルムアミド(333g)を加え、100℃で加熱溶解させた後、メタノール(333g)を加えて冷却し、結晶を析出させた。濾過した後、濾物を乾燥させることで化合物[1]を得た(収量:40.2g、収率:80%、黄色結晶)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.28(d, 4H, J = 9.2 Hz), 7.95(d, 4H, J = 9.2 Hz), 7.80(d, 4H, J = 9.2 Hz), 7.17(d, 4H, J = 9.2 Hz), 4.44(s, 4H).
【0099】
化合物[DA-5]の合成
ジメチルホルムアミド(800g)に対して、化合物[1](40.2g)及び5%パラジウムカーボン(4.0g)を加え、水素雰囲気下、60℃で19時間撹拌した。窒素置換した後、ジメチルホルムアミド(680g)を加えて130℃でジアミンを加熱溶解させ、触媒を熱時濾過し、濾液を一部濃縮して内容量を813gとした。ジメチルホルムアミド(60g)を加え、120℃で溶解させた後、メタノール(838g)を加えて冷却し、結晶を析出させた。濾過した後、濾物を乾燥させることで、化合物[DA-5]を得た(収量:33.6g、収率:96%、黄土色結晶)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):7.46(d, 4H, J = 8.8 Hz), 7.29(d, 4H, J = 8.8 Hz), 7.00(d, 4H, J = 8.8 Hz), 6.61(d, 4H, J = 8.8 Hz), 5.13(br, 4H), 4.32(s, 4H).
【0100】
(合成例2)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-1を1.30g(12.0mmol)、DA-2を2.93g(12.0mmol)、DA-6を2.05g(6.00mmol)量り取り、次いで、NMPを77g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDAH-1を6.19g(27.6mmol)添加し、更に固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、40℃で12時間撹拌してポリアミック酸(PAA-1)の溶液(粘度:340mPa・s)を得た。
【0101】
(合成例3)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA-1を1.17g(10.8mmol)、DA-3を3.46g(10.8mmol)、DA-6を1.84g(5.39mmol)量り取り、次いで、NMPを75g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDAH-1を5.57g(24.8mmol)添加し、更に固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、40℃で12時間撹拌してポリアミック酸(PAA-2)の溶液(粘度:340mPa・s)を得た。
【0102】
(合成例4)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、DA-1を1.17g(10.8mmol)、DA-4を4.43g(10.8mmol)、DA-6を1.84g(5.39mmol)量り取り、次いで、NMPを83g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDAH-1を5.75g(25.7mmol)添加し、更に固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、40℃で12時間撹拌してポリアミック酸(PAA-3)の溶液(粘度:360mPa・s)を得た。
【0103】
(合成例5)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA-1を0.56g(5.18mmol)、 DA-5を2.06g(5.20mmol)、DA-6を0.89g(2.61mmol)量り取り、次いで、NMPを39g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDAH-1を2.68g(12.0mmol)添加し、更に固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、40℃で12時間撹拌してポリアミック酸(PAA-4)の溶液(粘度:215mPa・s)を得た。
【0104】
(合成例6)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA-7を3.83g(19.2mmol)、DA-8を1.43g(4.79mmol)量り取り、次いで、NMPを78g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDAH-2を6.56g(22.2mmol)添加し、更に固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、70℃で20時間撹拌してポリアミック酸(PAA-5)の溶液(粘度:420mPa・s)を得た。
【0105】
(比較例1)
撹拌子を入れた50mLの三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を6.25g量り取った。次いで、NMPを3.50g、BCSを4.5g加えマグネチックスターラーで終夜撹拌し液晶配向剤(AL-1)を得た。
【0106】
(比較例2)
撹拌子を入れた50mLの三角フラスコに、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を6.25g量り取った。次いで、NMPを3.50g、BCSを4.5g加えマグネチックスターラーで終夜撹拌し液晶配向剤(AL-2)を得た。
【0107】
(比較例3)
撹拌子を入れた50mLの三角フラスコに、合成例4で得られたポリアミック酸溶液(PAA-3)を6.25g量り取った。次いで、NMPを3.50g、BCSを4.5g加えマグネチックスターラーで終夜撹拌し液晶配向剤(AL-3)を得た。
【0108】
(実施例1)
撹拌子を入れた50mLの三角フラスコに、合成例5で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を6.25g量り取った。次いで、NMPを3.50g、BCSを4.5g加えマグネチックスターラーで終夜撹拌し液晶配向剤(AL-4)を得た。
【0109】
(実施例2)
撹拌子を入れた50mLの三角フラスコに、合成例5で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を2.50g、合成例6で得られたポリアミック酸溶液(PAA-5)を3.75g取った。NMPを3.50g、BCSを4.50g加え、AD-1の10%NMP溶液を0.75g、及びAD-2を0.113g加えマグネチックスターラーで終夜撹拌し液晶配向剤(AL-5)を得た。AL-5について、-20℃環境において保存することで、冷凍保存時の安定性を確認した。冷凍保管1か月後に析出がなく、フィルターろ過性も良好であることを確認した。
【0110】
(比較例4)
比較例1で得られた液晶配向剤(AL-1)について、上記したようにして長期交流駆動による残像評価を行った。すなわち、液晶配向剤(AL-1)を使用し、上記したようにしてFFSモード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製し、このFFS駆動液晶セルについて、長期交流駆動による残像評価を実施した。その結果、長期交流駆動後におけるこの液晶セルの角度Δの値は、0.16度であった。
【0111】
(比較例5)
比較例2で得られた液晶配向剤(AL-2)を用いた以外は、比較例4と同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製した。このFFS駆動液晶セルについて、長期交流駆動による残像評価を実施した結果、長期交流駆動後におけるこの液晶セルの角度Δの値は、0.11度であった。
【0112】
(比較例6)
比較例3で得られた液晶配向剤(AL-3)を用いた以外は、比較例4と同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製した。このFFS駆動液晶セルについて、長期交流駆動による残像評価を実施した結果、長期交流駆動後におけるこの液晶セルの角度Δの値は、0.17度であった。
【0113】
(実施例3)
実施例1で得られた液晶配向剤(AL-4)を用いた以外は、比較例4と同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製した。このFFS駆動液晶セルについて、長期交流駆動による残像評価を実施した結果、長期交流駆動後におけるこの液晶セルの角度Δの値は、0.05度であった。
【0114】
(実施例4)
実施例2で得られたポリマー2成分ブレンド液晶配向剤(AL-5)を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた。その後、温度230℃のIR式オーブンで30分間の焼成を経て、膜厚100nmのイミド化した膜を得た。焼成膜の状態を確認したところ、ムラやハジキがなく、均一に製膜できていることを確認した。
【0115】
比較例4~6及び実施例3の液晶配向剤についての長期交流駆動による残像評価の結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0116】
なお、2018年11月6日に出願された日本特許出願2018-209060号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。