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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171888
(43)【公開日】2023-12-05
(54)【発明の名称】音波センサ及びその質問
(51)【国際特許分類】
   G01H 11/08 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
G01H11/08 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171515
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021557482の分割
【原出願日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】1903330
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(72)【発明者】
【氏名】バランドラス, シルヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア, ジュリアン
(57)【要約】
【課題】音波センサに質問する式な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、質問器によって、送信アンテナによって質問無線周波数信号を音波センサに送信することと、質問器によって、受信アンテナによって音波センサからの応答無線周波数信号を受信することと、質問器の処理手段により、受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域と周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得することと、処理手段によって、時間領域と周波数領域の両方で、得られた同相及び直交成分の摂動を決定し、処理手段によって検出された摂動に基づいて測定量の値を決定することと、を含む、音波センサに質問する方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波センサに質問する方法であって、
質問器によって、送信アンテナによって質問無線周波数信号を前記音波センサに送信するステップと、
前記質問器によって、受信アンテナによって前記音波センサからの応答無線周波数信号を受信するステップと、
前記質問器の処理手段により、前記受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域と周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得するステップと、
前記処理手段によって、前記時間領域と前記周波数領域の両方で、前記得られた同相及び直交成分の摂動を検出するステップと、
前記処理手段によって前記検出された摂動に基づいて測定量の値を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記周波数領域での前記摂動が第1の所定の閾値を超える場合、前記測定量の前記値は前記時間領域で決定され、前記時間領域での前記摂動が第2の所定の閾値を超える場合、前記測定量の前記値は前記周波数領域で決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信された応答無線周波数信号はフレームで処理され、前記測定量の前記値を決定するときに、所定の閾値を超える摂動を含むフレームが削除される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定量の前記値は、前記受信された応答無線周波数信号の位相に少なくとも部分的に基づいて、前記時間領域及び/又は前記周波数領域で決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記時間領域での前記摂動が前記第2の所定の閾値を超えず、前記周波数領域での前記摂動も前記第1の所定の閾値を超えない場合、前記質問器に対する前記音波センサの並進及び/又は回転運動は、前記時間領域及び前記周波数領域の両方で前記得られた同相及び直交成分に基づいて決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記摂動の前記決定は、それぞれのフレーム全体にわたって前記得られた同相及び直交成分の分散又は標準偏差を決定するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
測定量を感知するためのシステムであって、
音波センサと、
処理手段、送信アンテナ及び受信アンテナを備え、前記送信アンテナによって質問無線周波数信号を前記音波センサに送信し、前記受信アンテナによって前記音波センサから応答無線周波数信号を受信するように構成されている質問器と、を備え、
前記質問器の前記処理手段は、前記受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域及び周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得することと、
前記時間領域と前記周波数領域の両方で、前記得られた同相及び直交成分の摂動を検出することと、
前記検出された摂動に基づいて測定量の値を決定することと、を行うように構成される、システム。
【請求項8】
前記処理手段は、前記周波数領域での前記摂動が第1の所定の閾値を超える場合、前記時間領域で前記測定量の前記値を決定し、前記時間領域での前記検出された摂動が第2の所定の閾値を超える場合、前記周波数領域で前記測定量の前記値を決定するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理手段は、前記受信された応答無線周波数信号をフレームで処理するように構成され、前記測定量の前記値を決定するときに、所定の閾値を超える摂動を含むフレームが削除される、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理手段は、前記受信された応答無線周波数信号の位相に少なくとも部分的に基づいて、前記時間領域及び/又は前記周波数領域で前記測定量の前記値を決定するように構成される、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理手段は、前記時間領域での前記摂動が前記第2の所定の閾値を超えず、前記周波数領域での前記摂動も前記第1の所定の閾値を超えない場合、前記時間領域及び前記周波数領域の両方で前記得られた同相及び直交成分に基づいて、前記質問器に対する前記音波センサの並進及び/又は回転運動を決定するように構成される、請求項7~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記処理手段は、それぞれのフレーム全体にわたって前記得られた同相及び直交成分の分散又は標準偏差を決定することによって前記摂動を決定するように構成される、請求項7~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記音波センサは、前記質問無線周波数信号を音波、特に表面音波、2つの共振空洞及びブラッグミラー構造に変換するように構成された1つの変換器を備える、請求項7~12のいずれか一項に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波タイプの受動センサ、特に、受動表面音波又はバルク音波センサ、及びそれらの質問に関する。
【背景技術】
【0002】
センサはますます重要になり、日常生活の中でますます遍在するようになっている。微小電気機械システム(MEMS)は、サイズとコストの削減に加えて、センサの性能向上の要求に応える魅力的な選択肢である。表面音波(SAW)センサ、及び程度は低いがバルク音波(BAW)センサ又はラム(Lamb)波又はラブ(Love)波音響センサは、例えば、温度、圧力、ひずみ及びトルクなどを含むさまざまな測定可能な周囲パラメータにより、特に有利な選択肢を提供する。
【0003】
音波センサは、圧電効果を利用して電気信号を機械的/音波に変換する。SAWベースのセンサは、石英(SiO2)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ランガサイト(LGS)などの単結晶圧電材料、又は窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)などの多結晶圧電材料上に構築され、特に、ケイ素上、又はさらには圧電材料、特に、例えば、タンタル酸リチウム又はニオブ酸リチウムなどの単結晶材料の層を含むピエゾオンインシュレータ(POI)複合材料上に堆積され、必要に応じて、例えば酸化ケイ素層などの結合層によって、例えばケイ素のように支持基板に結合される(一般に、単結晶圧電材料と非圧電基板の任意の組み合わせは、熱安定性や音響品質などの特定の特性のために使用される)。変換器は、表面音波の場合、インターデジタル変換器(IDT)であり、電気信号の電気エネルギーを音波エネルギーに変換する。音波は、いわゆる遅延線を介してデバイス基板の表面(又はバルク)を横切って別の変換器、特にIDTに伝わり、IDTは音波を検出可能な電気信号に変換する。一部のデバイスでは、干渉パターンを防止し、挿入損失を低減するために、機械的吸収体及び/又は反射器が提供される。一部のデバイスでは、他の(出力)IDTが、生成された音波を反射して(入力)IDTに戻す反射器に置き換えられる。この反射器は、センサデバイスのリモート質問用にアンテナに結合できる。測定は完全に受動的に実行することができ、すなわち、センサは電源によって電力を供給される必要がないことが有利である。
【0004】
特定のクラスの音響センサは、さまざまな周囲条件に応じて変化する共振周波数を示す共振器を備えている。例えば、従来の表面波共振器は、ブラッグ(Bragg)ミラーの間に配置されたインターデジタル櫛を備えた電気音響変換器を備えている。共振周波数では、反射器間の同期条件が満たされ、反射器の下で発生するさまざまな反射のコヒーレントな加算を得ることができる。次に、最大の音響エネルギーが共振空洞内で観察され、電気的な観点から、変換器によって許容される電流の最大振幅が観察される。差動音波センサは、異なる共振周波数を示す2つ以上の共振器、又はマルチモード(いくつかの共振周波数)で動作する共振器を備え得、測定された周波数の差は、例えば温度又はひずみなどの周囲パラメータの変動を反映する。
【0005】
しかし、最近のエンジニアリングプロセスにもかかわらず、質問器が受信アンテナを介して音波センサによって受信され、変換器によって表面音波(又はバルク波、バルク音波センサタイプのデバイスの場合)に変換され、放射アンテナを介して再送信され、質問器によって受信及び分析される無線周波数信号に変換される適切な無線周波数信号を送信する質問プロセス全体は、依然として厳しい技術的問題を提起する。特に、一般的に使用されるISM(産業、科学、医療)帯域、例えば中心周波数が434MHz又は2.45GHzの帯域に存在する無線周波数ノイズは、センサデバイスによって提供される応答スペクトルの生成と分析の品質に影響を与える読み取り/解釈エラーを引き起こす。特に、WiFi、Bluetooth、GSM放射などの断続的なパラサイト/スプリアスエコーは、スペクトル応答の品質に悪影響を及ぼし、必要な信号の読み取りエラーや妨害につながる可能性がある。永続的なバックグラウンドホワイトノイズは、時間領域の測定に悪影響を与える可能性がある。別の問題は、パラサイトを引き起こし、共振器タイプの音波センサの共振周波数に影響を与える、センサデバイスと質問器との間の相対運動に関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、当技術分野と比較して、信号品質が向上した、例えば、信号対ノイズ比が向上した音波センサに質問するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、質問器によって、送信アンテナによって質問無線周波数信号を質問される音波センサ(それ自体のアンテナによって質問無線周波数信号を受信する音波センサ)に送信するステップと、質問器によって、受信アンテナ(送信アンテナと同じである場合もそうでない場合もある)によって音波センサからの応答無線周波数信号を受信する(音響センサデバイスに含まれるアンテナによって送信され、それは、質問無線周波数信号を受信するために使用されるアンテナと同一である場合もそうでない場合もある)ステップと、質問器の処理手段(例えば、CPU又はマイクロコントローラであるか、又はそれを含む)により、受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域及び周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得するステップと、処理手段によって、時間領域と周波数領域の両方で、得られた同相及び直交成分の摂動を検出するステップと、処理手段によって検出された摂動に基づいて、例えば、温度、ひずみ、圧力、又は回転軸線のトルクなどの周囲パラメータである測定量の値を決定するステップと、を含む、音波センサに質問する(及び音波センサによって測定量を感知する)方法を提供することによって、上記の目的に取り組む。
【0008】
音波センサは、表面音波センサ又はバルク音波センサであり得、遅延線構造並びに単一又は複数の共振器構造を含み得る。
【0009】
したがって、受信された応答無線周波数信号の処理/分析は、時間領域と周波数領域の両方で同相及び直交成分を決定することによって実行され、領域の少なくとも1つに存在する可能性のあるノイズ/摂動に応じて、さらなる処理が、時間領域又は周波数領域、或いは言及された両方の領域で実行される。
【0010】
実施形態によれば、周波数領域での摂動が第1の所定の閾値を超える場合、測定量の値は時間領域で決定され、逆に、時間領域での摂動が第2の所定の閾値を超える場合、測定量の値は周波数領域で決定される(例えば、第2の閾値は第1の閾値と同じである)。
【0011】
受信された応答無線周波数信号は、典型的にはフレームで処理され得、測定量の値を決定するときに、所定の閾値を超える摂動を含むフレームは、欠陥のあるフレームとして削除され得る。欠陥のあるフレームを削除することにより、全体的な処理がより堅牢になり、測定量の測定値に対してより信頼性の高い結果が得られる。
【0012】
特に、測定量の値は、受信された応答無線周波数信号の位相に少なくとも部分的に基づいて、時間領域及び/又は周波数領域で決定することができる。位相は測定量の変動に非常に敏感であるため、時間領域と周波数領域の両方で測定量を測定するために有利に使用できる。しかし、共振周波数をスペクトル係数の極大値として検出する場合、共振の定義に従って、共振周波数に対応する位相が必然的にゼロであることを示すことができる(共振器内のすべての寄与は、共振周波数で同相で合計される)。時間領域では、センサが、例えば遅延線や空洞共振器内を移動する自由空間を示す場合、最大振幅に対応する時間領域信号の位相は、環境パラメータの変動又はセンサ位置によって変化する。
【0013】
a)時間領域での摂動が第2の所定の閾値を超えない場合、及びb)周波数領域での摂動が第1の所定の閾値を超えない場合の両方の場合、質問器に対する音波センサの並進及び/又は回転運動は、得られた同相及び直交成分に基づいて、時間領域と周波数領域の両方で決定することができる。質問器に対する音波センサの動きによって引き起こされる影響を考慮に入れることができ、及び/又は音響センサの初期位置を確実に決定することができる。
【0014】
上記の実施形態のすべてにおける摂動の決定は、それぞれのフレーム全体にわたって得られた同相及び直交成分の分散又は標準偏差を動的に決定することを含み得る。N個の連続してサンプリングされたフレームの特定のフレーム全体、例えば第1のフレームにわたる同相成分I及び直交成分Qの分散又は標準偏差が計算され、初期閾値を表す。次のフレーム(N+1、N+2など)についても、それぞれのフレーム全体(時間領域と周波数領域の両方)での同相成分及び直交成分の分散又は標準偏差が計算される。次のフレームの分散又は標準偏差が減少している場合、閾値は次のフレームの分散又は標準偏差によって更新される。次のフレームの分散又は標準偏差が前のフレームの分散又は標準偏差よりも大きい場合、前のフレームの分散又は標準偏差が閾値として使用される。続いて実行される分析では、こうして得られた閾値を超えるフレームは拒否され、音波センサに質問する本発明の方法の決定された摂動に基づいて測定量の値を決定するプロセスステップでは考慮されない。
【0015】
上記の目的はまた、音波センサ(例えば、1つ又は複数のアンテナを有する表面音波又はバルク音波センサ)と、処理手段、送信アンテナ及び受信アンテナ(1つの同じアンテナで実現される場合とされない場合がある)を含み、送信アンテナによって質問無線周波数信号を音波センサに送信し、受信アンテナによって音波センサから応答無線周波数信号を受信するように構成されている質問器と、を含み、質問器の処理手段は、受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域及び周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得することと、時間領域と周波数領域の両方で、得られた同相及び直交成分の摂動を検出することと、検出された摂動に基づいて測定量(周囲パラメータ)の値を決定することと、を行うように構成される、測定量を感知するためのシステムを提供することによって取り組まれる。
【0016】
実施形態によれば、処理手段は、周波数領域での摂動が所定の第1の閾値を超える場合、時間領域で測定量の値を決定するように構成され、時間領域での摂動が所定の第2の閾値(例えば、第1の所定の閾値と同じである)を超える場合、測定量の値は周波数領域で決定される。さらに、処理手段は、受信された応答無線周波数信号をフレームで処理するように構成され得、ここで、測定量の値を決定するときに、所定の閾値を超える摂動を含むフレームは削除される。さらに、処理手段は、受信された応答無線周波数信号の位相(及び監視プロセス中のその時間的変化)に少なくとも部分的に基づいて、時間領域及び/又は周波数領域で測定量の値を決定するように構成され得る。共振周波数をスペクトル係数の極大値として検出する場合、共振の定義に従って、共振周波数に対応する位相が必然的にゼロであることを示すことができる(共振器内のすべての寄与は、共振周波数で同相で合計される)。時間領域で、センサが、例えば遅延線や空洞共振器内を移動する自由空間を示す場合、最大振幅に対応する時間領域信号の位相は、環境パラメータの変動又はセンサの位置によって変化している。
【0017】
さらなる実施形態によれば、質問器の処理手段は、a)時間領域での摂動が第2の所定の閾値を超えない場合、及びb)周波数領域での摂動が第1の所定の閾値を超えない場合の両方の場合、時間領域及び周波数領域の両方で得られた同相及び直交成分に基づいて、質問器に対する音波センサの並進及び/又は回転運動を決定するように構成される。さらに、処理手段は、それぞれのフレーム全体にわたって得られた同相及び直交成分の分散又は標準偏差を決定することによって、摂動を(動的に)決定するように構成することができる。
【0018】
上記の実施形態のすべてにおいて、音波センサは、質問無線周波数信号を音波、特に表面音波、2つの共振空洞、及びブラッグミラー構造に変換するように構成された1つの変換器を備え得る。以て、遅延線アーキテクチャと共振アーキテクチャを組み合わせることを可能にし、時間領域と周波数領域の両方で処理できる検出データを容易に提供するハイブリッド音波センサを提供することができる。上記の実施形態のすべてにおいて、システムは、上記の音波センサに質問する本発明の方法の実施形態のステップを実行するように構成され得る。
【0019】
本発明の追加の特徴及び利点は、図面を参照して説明される。説明では、本発明の好ましい実施形態を説明することを意図した添付の図を参照する。そのような実施形態は、本発明の全範囲を表すものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に従って本発明を実装することができる音波センサデバイスを示す。
図2】例によると、時間及び周波数領域におけるノイズに対する音波センサによって提供される応答無線周波数信号の異なる感受性を示す。
図3】共振器音波センサデバイスの決定された共振周波数に対するセンサの動きの影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、受動音波センサ、特に表面音波センサデバイスのリモート質問のための技術を提供し、この技術は、高い信号対ノイズ比によって特徴付けられる。この技術は、質問音波センサからのスペクトル応答とインパルス応答を決定するように構成されている任意の質問器に適用できる。当技術分野では、質問器によって受信された応答無線周波数信号は、時間又は周波数(スペクトル)領域のいずれかで処理されるが、本明細書では、原則として、実際の質問条件、例えば、ノイズの摂動に応じて両方の領域で処理を提供する技術が提供される。特に、領域の1つに重いパラサイトが存在すると判断された場合、領域のもう1つを使用して、必要な信号を処理/分析できる。
【0022】
図1は、例示的なハイブリッド音波センサデバイスを示し、a)測定量が伝播する音波の速度及び/又は伝播経路の幾何学的長さに影響を与える遅延線構造及びb)共振周波数/周波数が測定値によって影響を受ける共振アプローチのそれぞれが当技術分野においてそれ自体で知られ、互いに組み合わせて実装される。ハイブリッド音波センサデバイスは、受信した無線周波数信号を音波、この場合は表面音波(SAW)に変換するための1つの変換器を備える。しかしながら、本発明は、SAWセンサに限定されず、例えば、バルク音波センサにも適用することができる。さらに、ハイブリッド音波センサデバイスは、2つの空洞及びミラーを含む。センサデバイスは、中心周波数と、質問プロセスで使用される帯域パスの半値全幅との比率に対応する高品質係数Qfを提供する。高品質係数Qfは、検出されたデータサンプルの十分に高い解像度を保証する。時間領域と周波数領域の両方で、応答無線周波数信号で櫛形の応答を得ることができる。差動動作モードでは、遅延線構造から得られた信号を共振器構造から得られた信号と比較することができる。
【0023】
質問器によって送信される質問信号は、例えば、周波数ステップ連続波信号又は線形周波数変調連続波信号を表すことができる。センサデバイスによって送信された応答無線周波数信号は、質問器によって受信され、時間領域又は周波数領域で質問器によって処理することができ、処理は、応答無線周波数信号の同相及び直交成分(実数部及び虚数部)の決定を含む。受信された応答無線周波数信号は、当技術分野で知られているいわゆるIQプロトコルに従って、処理手段によって質問無線周波数信号と混合されて、次に、係数及び位相を導出できる同相I及び直交Qを抽出することができる。
【0024】
したがって、検出された周囲パラメータ(測定量)の変化、例えば、温度、ひずみ、圧力、又は回転軸線のトルクは、周波数シフトのいずれかによって検出でき、ピークごとに異なる可能性があり、したがって、検出は、絶対周波数値又は相対周波数値に対して、又は飛行時間の変更によって、又は1つのエコーから別のエコーへの差動位相変化によって、又はその両方によって、時間領域で行うことができる。
【0025】
周波数領域で処理する場合、センサの周波数帯域は、連続して実行されるいくつかのステップでサンプリングされ、センサ値は、送信された質問無線周波数信号と応答無線周波数信号の間の振幅及び位相/周波数差から決定される。時間領域で処理する場合、センサの周波数帯域は一度に1つの単一ステップでサンプリングされる。したがって、質問器でより高速なサンプリングを実行する必要があるが、プラス面では、より高い測定更新レートを取得できる。さらに、送信された質問無線周波数信号と応答無線周波数信号との間の時分割多重化により、高いダイナミックレンジを達成することができる。
【0026】
時間領域と周波数領域は(逆)フーリエ(Fourier)変換によって数学的に相互に接続されているが、摂動(ノイズのパラサイトとスプリアスバースト)は、他の領域が大きく影響を受けていない領域の1つにのみ著しく存在する可能性がある。例えば、WiFi、Bluetooth、又はGSM放射などの断続的なパラサイトは、周波数領域に存在する可能性があるが、時間領域で一部のバーストのみを生成する。これらのバーストは、すべてのスペクトルデータが取得されると(質問器/リーダーは、S11応答を検出するベクトルネットワークアナライザーのように動作し得る)、逆フーリエ変換によって再構築される時間領域情報に大きな影響を与えない。他の状況では、永続的なホワイトバックグラウンドノイズが、スペクトル情報を大幅に隠さない時間領域の測定に影響を与える可能性がある。本発明によれば、実際の質問条件に応じて、時間領域の情報又は周波数領域の情報、或いは両方の領域の情報のいずれかを取得して、測定量を監視するために使用することができる。
【0027】
測定の品質は、それぞれのサンプリングフレームでの同相値と直交値の分散又は標準偏差の計算と適切な閾値化に基づく統計処理によって決定できる。計算された分散又は標準偏差がある所定の閾値を超える場合、測定は、さらなる処理、すなわち、周囲パラメータの決定に関する分析のために拒否される。図2は、共振器信号の周波数領域と時間領域でのさまざまなシグニチャの発生を示す。上の行は、受信された応答無線周波数信号の直交成分と同相成分のスペクトル応答、これらの成分の係数、及びいくつかの後処理によって得られた増強された係数を示す。同相成分はI=Ycosφで与えられ、直交成分はQ=Ysinφで与えられる。ここで、Yは振幅を示し、φは位相を示し、係数は次の式で計算される。
【数1】
【0028】
共振ピークは明確に識別できる。図2の上の行に見られるように、最後の2つの共振に摂動バーストが存在する。閾値化後、対応するフレームを削除できる。中央の行は、時間領域の直交成分と同相成分を示す。これらのデータは、周波数領域に存在する摂動の影響を受けず、図2の下の行に示すように、周囲パラメータ(この場合は温度)を決定するために直接使用できる。
【0029】
欠陥のある(摂動された)フレームを削除するための閾値化は、次のように実行できる。N個のサンプリングされたフレームの特定のフレーム全体、例えば第1のフレームにわたる同相成分I及び直交成分Qの分散又は標準偏差が計算され、初期閾値を表す。次のフレームについても、それぞれのフレーム全体にわたる同相成分I及び直交成分Qの分散又は標準偏差が計算される。次のフレームの分散又は標準偏差が減少している場合、閾値は次のフレームの分散又は標準偏差によって更新される。次のフレームの分散又は標準偏差が前のフレームの分散又は標準偏差よりも大きい場合、前のフレームの分散又は標準偏差が閾値として使用される。続いて実行される分析では、このようにして取得された閾値を超えるフレームは拒否される(欠陥のあるフレーム)。
【0030】
周波数領域と時間領域の両方、及び遅延線アプローチと共振器アプローチの両方での検出感度は、通常、帯域幅が数MHzの場合は数kHzに制限され、数μsのクロノグラムの場合は約30又は50nsに制限されることに留意する必要がある。これに関連して、受信した応答無線周波数信号の位相を使用することにより、より良い感度を達成することができる。コヒーレントシステムでは、位相はφ=arctan(Q/I)で取得できる。例えば、2.45GHzでは、0.1nsの時間領域の変動はπ/2ラジアンに変換される。この拡大効果は、時間領域と周波数領域の両方に存在し、遅延線アプローチと共振器アプローチの両方で使用できる。後者の場合、許容ブラッグ帯域内又は許容ブラッグ帯域外で動作する単共振又は多重共振アーキテクチャでも同様である。例えば、スペクトル範囲内の分解されたピークに対して測定された位相変動に基づいて測定量を直接又は差分的に測定し、その後、複数のセンサの質問のコンテキストで時間内に分解されたピーク間の位相差の位相の時間的変化を監視できる。位相シフトが360°を超えると、あいまいさが発生することに留意されたい。このあいまいさの問題は、例えば、既知の位置に複数の反射器を提供し、あいまいさを解決するためにそれらの位相差を評価することによって解決できる。
【0031】
音波センサデバイスによる検出の精度制限のもう1つの原因は、質問器に対するセンサの動きにある。図3は、共振周波数に対する共振センサの並進運動と回転運動の影響を示す。実際、センサの±xだけの線形変位は、共振周波数f0のシフトをもたらすため、測定によって得られた決定された共振周波数は波長であるλを備えたf=f0(1+a cos(2πx/λ))を与えられることが観察されている。パラメータaは、測定値から実験的に見つけることができ、アンテナが質問器側とセンサ側で結合される方法によって異なる。例えば、f0=2.45GHz付近の最大周波数変動のaは約18kHzである。同様に、音波センサをθだけ回転させると、共振周波数f0がシフトし、測定によって得られた決定された共振周波数がf=f0(1+a cos(θ))で与えられるようにする。この精度の問題は、原則として、センサデバイスのアンテナの位相シフト制御、180°デチューンされたセンサデバイス用の2つのアンテナの使用、及び/又はλ/2により初期化ステップで音波センサを移動し、及び共振周波数をf0=(f0(x)+f0(x+λ/2))/2に較正して、線形運動を補正することにより解決できる。
【0032】
実際、変動は周期的であるため、2つの周波数ポイントを逆位相と見なすと、対応する2つの周波数の平均値は自動的にf0に等しくなる。f(x)+f(x+λ/2)=f0(1+a cos(2πx/λ))+f0(1+a cos(2πx/λ+π))=2f0。
【0033】
一方、有効な(摂動が十分にない)信号が時間領域と周波数領域で取得された場合、2つの領域の結果を相互に比較し、取得した情報の一貫性をチェックできる。例えば、時間領域の測定データからいくつかの位相回転が決定され、周波数領域の測定データから共振周波数の有意な偏差が決定されない場合、質問器に対するセンサデバイスのいくつかの相対的な動きが発生したと結論付けられる。位相情報をアンラップすることにより、センサが並進及び/又は回転方式で移動した距離を決定できる。並進運動はアンラップされた位相に変化をもたらし、一方、回転は位相がアンラップされた場合でも回転位相動作をもたらす。
【0034】
実際、共振器センサデバイスが、検出される周囲パラメータの変動、例えば、熱変動の影響を受ける場合、線形に動作するセンサデバイスの場合、時間領域エコーの位相は線形に変動する、すなわち、共振周波数は、時間の経過とともに線形に減少するため、位相は下にシフトしている。真の位相(周期的な-π/+πラッピングなし)は、位相をアンラップして線形の位相変化をもたらすことで取得できる。センサを質問器に近づけたり遠ざけたりすると、RFリンクの位相回転が蓄積され、センサに同様の影響を与えるため、同様の効果が観察される。実験的測定では、センサが回転しているとき、位相は-π/+πの範囲にとどまるため、アンラップ後も位相は-π/+πの範囲にとどまることが示されている。これは、センサデバイスの位置がほぼ同じままである場合(有意な並進運動がない場合)、全体的な平均位相が実際には変化しないという事実によるものである。
【0035】
前述のすべての実施形態は、制限として意図されているのではなく、本発明の特徴及び利点を説明する例として役立つ。上記の機能の一部又はすべてを異なる方法で組み合わせることもできることを理解されたい。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波センサに質問する方法であって、
質問器によって、送信アンテナによって質問無線周波数信号を前記音波センサに送信するステップと、
前記質問器によって、受信アンテナによって前記音波センサからの応答無線周波数信号を受信するステップと、
前記質問器の処理手段により、前記受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域と周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得するステップと、
前記処理手段によって、前記時間領域と前記周波数領域の両方で、前記得られた同相及び直交成分の摂動を検出するステップと、
前記処理手段によって前記検出された摂動に基づいて測定量の値を決定するステップであって、前記測定量が、温度、ひずみ、圧力、又はトルクの測定量である、ステップと、を含み、
前記周波数領域での前記摂動が第1の所定の閾値を超える場合、前記測定量の前記値は前記時間領域で決定され、前記時間領域での前記摂動が第2の所定の閾値を超える場合、前記測定量の前記値は前記周波数領域で決定される、方法。
【請求項2】
音波センサに質問する方法であって、
質問器によって、送信アンテナによって質問無線周波数信号を前記音波センサに送信するステップと、
前記質問器によって、受信アンテナによって前記音波センサからの応答無線周波数信号を受信するステップと、
前記質問器の処理手段により、前記受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域と周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得するステップと、
前記処理手段によって、前記時間領域と前記周波数領域の両方で、前記得られた同相及び直交成分の摂動を検出するステップと、
前記処理手段によって前記検出された摂動に基づいて測定量の値を決定するステップと、を含み、
前記時間領域での前記摂動が第2の所定の閾値を超えず、前記周波数領域での前記摂動も第1の所定の閾値を超えない場合、前記質問器に対する前記音波センサの並進及び/又は回転運動は、前記時間領域及び前記周波数領域の両方で前記得られた同相及び直交成分に基づいて決定される、方法。
【請求項3】
前記受信された応答無線周波数信号はフレームで処理され、前記測定量の前記値を決定するときに、所定の閾値を超える摂動を含むフレームが削除される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定量の前記値は、前記受信された応答無線周波数信号の位相に少なくとも部分的に基づいて、前記時間領域及び/又は前記周波数領域で決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記摂動の前記決定は、それぞれのフレーム全体にわたって前記得られた同相及び直交成分の分散又は標準偏差を決定するステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
測定量を感知するためのシステムであって、
音波センサと、
処理手段、送信アンテナ及び受信アンテナを備え、前記送信アンテナによって質問無線周波数信号を前記音波センサに送信し、前記受信アンテナによって前記音波センサから応答無線周波数信号を受信するように構成されている質問器と、を備え、
前記質問器の前記処理手段は、前記受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域及び周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得することと、
前記時間領域と前記周波数領域の両方で、前記得られた同相及び直交成分の摂動を検出することと、
前記検出された摂動に基づいて測定量の値を決定することと、を行うように構成され、
前記処理手段は、前記周波数領域での前記摂動が第1の所定の閾値を超える場合、前記時間領域で前記測定量の前記値を決定し、前記時間領域での前記検出された摂動が第2の所定の閾値を超える場合、前記周波数領域で前記測定量の前記値を決定するように構成される、システム。
【請求項7】
測定量を感知するためのシステムであって、
音波センサと、
処理手段、送信アンテナ及び受信アンテナを備え、前記送信アンテナによって質問無線周波数信号を前記音波センサに送信し、前記受信アンテナによって前記音波センサから応答無線周波数信号を受信するように構成されている質問器と、を備え、
前記質問器の前記処理手段は、前記受信された応答無線周波数信号を処理して、時間領域及び周波数領域の両方で同相及び直交成分を取得することと、
前記時間領域と前記周波数領域の両方で、前記得られた同相及び直交成分の摂動を検出することと、
前記検出された摂動に基づいて測定量の値を決定することであって、前記測定量が、温度、ひずみ、圧力、又はトルクの測定量である、ことと、を行うように構成され、
前記処理手段は、前記時間領域での前記摂動が第2の所定の閾値を超えず、前記周波数領域での前記摂動も第1の所定の閾値を超えない場合、前記時間領域及び前記周波数領域の両方で前記得られた同相及び直交成分に基づいて、前記質問器に対する前記音波センサの並進及び/又は回転運動を決定するように構成される、システム。
【請求項8】
前記処理手段は、前記受信された応答無線周波数信号をフレームで処理するように構成され、前記測定量の前記値を決定するときに、所定の閾値を超える摂動を含むフレームが削除される、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理手段は、前記受信された応答無線周波数信号の位相に少なくとも部分的に基づいて、前記時間領域及び/又は前記周波数領域で前記測定量の前記値を決定するように構成される、請求項6~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理手段は、それぞれのフレーム全体にわたって前記得られた同相及び直交成分の分散又は標準偏差を決定することによって前記摂動を決定するように構成される、請求項6~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記音波センサは、前記質問無線周波数信号を音波、特に表面音波、2つの共振空洞及びブラッグミラー構造に変換するように構成された1つの変換器を備える、請求項6~10のいずれか一項に記載のシステム。
【外国語明細書】