(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171993
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報分析システム及び計測方法
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20231129BHJP
G08C 17/04 20060101ALI20231129BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20231129BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01D21/00 M
G08C17/04
G08C19/00 C
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083509
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】522485073
【氏名又は名称】株式会社Premo
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】入江 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】門本 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀典
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳太
【テーマコード(参考)】
2F073
2F076
5K012
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA35
2F073AB01
2F073AB07
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC02
2F073CC03
2F073CD02
2F073CD03
2F073CD11
2F073DD01
2F073DD07
2F073EE13
2F073FF01
2F073FF03
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG07
2F073GG08
2F076BA01
2F076BD04
2F076BD07
2F076BD11
2F076BD12
2F076BD17
2F076BE05
2F076BE18
2F076BE19
5K012AA01
5K012AA03
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC07
5K012AC08
5K012AC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】状態量を検出するためには、情報処理装置に加えてセンシングデバイスを接続する必要があった。
【解決手段】情報処理装置であって、少なくとも第1のチップと第2のチップを有し、第1のチップは、送信信号を生成する第一の送信制御部と第一の送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する第一の送信コイルを備え、第2のチップは、第1の送信コイルと誘導結合を行うことで前記送信信号を受信可能な第2の受信コイルと、第2の受信コイルに印加される電圧又は電流を検出する第2の検出部と、を備え、第1のチップと第2のチップは、互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置され、前記第2の受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を、第2の検出部で検出する、情報処理装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
少なくとも第1のチップと第2のチップを有し、
前記第1のチップは、送信信号を生成する第一の送信制御部と前記第一の送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する第一の送信コイルを備え、
前記第2のチップは、前記第1の送信コイルと誘導結合を行うことで前記送信信号を受信可能な第2の受信コイルと、前記第2の受信コイルに印加される電圧又は電流を検出する第2の検出部と、を備え、
前記第1のチップと第2のチップは、互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置され、前記第2の受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を、前記第2の検出部で検出する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第2の検出部は、前記第2の受信コイルで前記送信信号を受信した際に生じる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少する場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、請求項1に記載の情報制御装置。
【請求項3】
前記第2のチップは、第2の送信コイルと、前記第2の検出部で検出された電圧又は電流の検出情報を記録するメモリと更に備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のチップに加えて、第3の送信アンテナと第3の受信アンテナと外部通信機器との通信を行う外部通信制御部とを備えた第3のチップを備え、
当該第3のチップは、前記検出情報を前記第3の受信アンテナを介して受信して、当該検出情報を前記外部通信制御部により前記外部通信機器に出力する、ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検出部は、CPUで構成される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
第1のチップと前記第のチップは母材上に隣接して配置されており、前記第1の送信コイルと前記第2の受信コイルは、略水平方向に並んで配置される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
第1のチップと前記第のチップは母材を介して正対する位置に隣接して配置されており、前記第1の送信コイルと前記第2の受信コイルは、互いに正対する位置に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1のチップと前記第2のチップの一方が回転体の回転子側に備えられ、
前記第1のチップと前記第2のチップの他方が回転体の固定子側に備えられ、
前記回転子が前記固定子に対して回転移動を行うことにより、前記第1の送信コイルと前記第2の受信コイルが互いに正対する相対位置の状態と、正対しない相対位置の状態とを繰り返す、ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
互いに無線通信可能な複数のチップで構成される情報処理装置であって、
前記チップは、
送信信号を生成する送信制御部と、
前記送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する送信コイルと、
他のチップから前記送信信号を受信する受信コイルと、
前記受信コイルの電圧又は電流を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、自チップが他チップと互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置され、前記受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、自チップと他チップとの相対位置の変化、又は自チップに加わる振動、又は温度変化、又は圧力変化、又は電磁波を検出する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記受信コイルで前記送信信号を受信した際に生じる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少する場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、請求項9に記載の情報制御装置。
【請求項11】
互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置される第1及び第2のチップとを有する情報処理装置と、当該情報処理装置から取得した情報を分析する分析装置と、を備える情報分析システムであって、
前記第1のチップは、送信信号を生成する第一の送信制御部と前記第一の送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する第一の送信コイルを備え、
前記第2のチップは、前記第1の送信コイルと誘導結合を行うことで前記送信信号を受信可能な第2の受信コイルと、前記第2の受信コイルに印加される電圧又は電流を検出する第2の検出部と、を備え、
前記分析装置は、前記第の検出部で検出された電圧又は電流の情報を取得し、当該情報に含まれる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、ことを特徴とする情報分析システム。
【請求項12】
前記分析装置は、前記情報に含まれる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少する場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、請求項11に記載の情報分析システム。
【請求項13】
互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置される第1のチップと第2のチップを利用した計測方法であって、
前記第1のチップで送信信号を生成するステップと、
前記送信信号を前記第1のチップに設けられた送信コイルから送信するステップと、
前記第2のチップに設けられた受信コイルで前記送信信号を受信するステップと、
前記受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出するステップと、を有することを特徴とする計測方法。
【請求項14】
前記所定条件とは、前記受信コイルで前記送信信号を受信した際に生じる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少することである、請求項13に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報分析システム及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルを有する複数のチップを水平方向に集積し、コイル間に生じる誘導結合を利用してチップ間で無線通信を行うことにより実装形状及び形状の変化により柔軟に対応可能な情報処理装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
状態量を検出するためには、センシングデバイスと、当該センシングデバイスによる検出信号をデジタルデータとして取得する情報処理装置が必要となる。
【0005】
特許文献1では、コイル間に生じる誘導結合を利用してチップ間で無線通信を行うことにより、実装形状及び形状の変化により柔軟に対応可能な情報処理装置が開示されているものの、当該情報処理装置にはセンシング機能が無く、状態量を検出するためには、情報処理装置に加えてセンシングデバイスを接続する必要があった。
【0006】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、センシング機能と情報処理機能を有する情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、情報処理装置であって、少なくとも第1のチップと第2のチップを有し、前記第1のチップは、送信信号を生成する第一の送信制御部と前記第一の送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する第一の送信コイルを備え、前記第2のチップは、前記第1の送信コイルと誘導結合を行うことで前記送信信号を受信可能な第2の受信コイルと、前記第2の受信コイルに印加される電圧又は電流を検出する第2の検出部と、を備え、前記第1のチップと第2のチップは、互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置され、前記第2の受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を、前記第2の検出部で検出する、ことを特徴とする情報処理装置を提供する。
【0008】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センシング機能と情報処理機能を有する情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の情報処理装置100の機能構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の情報処理装置100のチップ間で無線通信を行う原理を説明するためのハード構成図を示す図である。
【
図3-1】本実施形態の2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図3-2】本実施形態の2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図3-3】本実施形態の2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図3-4】本実施形態の2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図4】本実施形態の情報処理装置100の詳細な実装回路の一例を示した図である。
【
図5】本実施形態の送信側チップの送信信号、受信コイルの誘起電圧V、及び受信側チップの受信信号の時間変化をそれぞれ示す図である。
【
図6】本実施形態のチップの位置関係の変化が発生した場合の受信コイルに発生する誘起電圧Vの時間変化の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態において情報処理装置が振動等の状態量を検出する動作フローチャートを示す図である。
【
図8】実施例2における情報処理装置100の機能構成の一例を示す図である。
【
図9】実施例2におけるチップ110、120、130が無線通信を行う原理を説明するためのハード構成図を示す図である。
【
図10】実施例2における多数のチップを互いに通信可能に配置した例を示している。
【
図11】実施例3におけるチップ110とチップ120が無線通信を行う原理を説明するためのハード構成図を示す図である。
【
図12-1】実施例3における2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図12-2】実施例3における2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図12-3】実施例3における2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図12-4】実施例3における2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
【
図13】実施例4におけるチップ500の有する機能を示す図である。
【
図14】実施例4におけるチップを材料に混ぜた場合の複数チップ間における無線通信の状態を示す図である。
【
図15】複数の情報処理装置100を用いた情報分析システムの構成図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば以下のような構成を備える。
【0012】
[項目1]
情報処理装置であって、
少なくとも第1のチップと第2のチップを有し、
前記第1のチップは、送信信号を生成する第一の送信制御部と前記第一の送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する第一の送信コイルを備え、
前記第2のチップは、前記第1の送信コイルと誘導結合を行うことで前記送信信号を受信可能な第2の受信コイルと、前記第2の受信コイルに印加される電圧又は電流を検出する第2の検出部と、を備え、
前記第1のチップと第2のチップは、互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置され、前記第2の受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を、前記第2の検出部で検出する、ことを特徴とする情報処理装置。
[項目2]
前記第2の検出部は、前記第2の受信コイルで前記送信信号を受信した際に生じる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少する場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、項目1に記載の情報制御装置。
[項目3]
前記第2のチップは、第2の送信コイルと、前記第2の検出部で検出された電圧又は電流の検出情報を記録するメモリと更に備える、ことを特徴とする項目1又は2に記載の情報処理装置。
[項目4]
前記第1及び第2のチップに加えて、第3の送信アンテナと第3の受信アンテナと外部通信機器との通信を行う外部通信制御部とを備えた第3のチップを備え、
当該第3のチップは、前記検出情報を前記第3の受信アンテナを介して受信して、当該検出情報を前記外部通信制御部により前記外部通信機器に出力する、ことを特徴とする項目3に記載の情報処理装置。
[項目5]
前記検出部は、CPUで構成される、項目1に記載の情報処理装置。
[項目6]
第1のチップと前記第のチップは母材上に隣接して配置されており、前記第1の送信コイルと前記第2の受信コイルは、略水平方向に並んで配置される、項目1に記載の情報処理装置。
[項目7]
第1のチップと前記第のチップは母材を介して正対する位置に隣接して配置されており、前記第1の送信コイルと前記第2の受信コイルは、互いに正対する位置に配置される、ことを特徴とする項目1に記載の情報処理装置。
[項目8]
前記第1のチップと前記第2のチップの一方が回転体の回転子側に備えられ、
前記第1のチップと前記第2のチップの他方が回転体の固定子側に備えられ、
前記回転子が前記固定子に対して回転移動を行うことにより、前記第1の送信コイルと前記第2の受信コイルが互いに正対する相対位置の状態と、正対しない相対位置の状態とを繰り返す、ことを特徴とする項目7に記載の情報処理装置。
[項目9]
互いに無線通信可能な複数のチップで構成される情報処理装置であって、
前記チップは、
送信信号を生成する送信制御部と、
前記送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する送信コイルと、
他のチップから前記送信信号を受信する受信コイルと、
前記受信コイルの電圧又は電流を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、自チップが他チップと互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置され、前記受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、自チップと他チップとの相対位置の変化、又は自チップに加わる振動、又は温度変化、又は圧力変化、又は電磁波を検出する、ことを特徴とする情報処理装置。
[項目10]
前記検出部は、前記受信コイルで前記送信信号を受信した際に生じる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少する場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、項目9に記載の情報制御装置。
[項目11]
互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置される第1及び第2のチップとを有する情報処理装置と、当該情報処理装置から取得した情報を分析する分析装置と、を備える情報分析システムであって、
前記第1のチップは、送信信号を生成する第一の送信制御部と前記第一の送信制御部に接続されて前記送信信号を送信する第一の送信コイルを備え、
前記第2のチップは、前記第1の送信コイルと誘導結合を行うことで前記送信信号を受信可能な第2の受信コイルと、前記第2の受信コイルに印加される電圧又は電流を検出する第2の検出部と、を備え、
前記分析装置は、前記第の検出部で検出された電圧又は電流の情報を取得し、当該情報に含まれる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、ことを特徴とする情報分析システム。
[項目12]
前記分析装置は、前記情報に含まれる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少する場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出する、項目11に記載の情報分析システム。
[項目13]
互いに誘導結合による無線通信可能な近接位置に配置される第1のチップと第2のチップを利用した計測方法であって、
前記第1のチップで送信信号を生成するステップと、
前記送信信号を前記第1のチップに設けられた送信コイルから送信するステップと、
前記第2のチップに設けられた受信コイルで前記送信信号を受信するステップと、
前記受信コイルに生じる電圧又は電流の変化が所定条件を満たす場合に、前記第1のチップと第2のチップの相対位置の変化、又は前記第1及び第2のチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化、又は電磁波を検出するステップと、を有することを特徴とする計測方法。
[項目14]
前記所定条件とは、前記受信コイルで前記送信信号を受信した際に生じる電圧又は電流の振幅が所定値から増加又は減少することである、項目13に記載の計測方法。
【0013】
<実施の形態の詳細>
本発明の一実施形態に係る情報処理装置100の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号及び名称が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0014】
<実施例1>
図1は、本実施形態の情報処理装置100の機能構成の一例を示す図である。
図1に示されるように、本実施形態の情報処理装置100は、少なくとも2つのチップ110、120を有する。チップ120は、送信コイル122と、当該送信コイルに送信信号を供給する送信制御部128と、送信制御部に電力を供給する電源部126を備える。チップ110は、前記送信コイル122と誘導結合することにより電圧(または電流)が発生する受信コイル111と、当該受信コイルに発生する電圧または電流(アナログ信号)をデジタル信号として検出する検出部117と、検出部117に電力を供給する電源部116を備える。検出部は、受信コイルに発生する電圧または電流を検出して、当該検出値に基づいて、送信コイルから送信される信号と共に、チップ110とチップ120の位置関係の変化に起因する電圧または電流の変化を検出する。ここで、電源部116,126は、チップ外部から給電を受ける受電機能、又はチップ内部に電力を蓄える蓄電機能、又はチップ内部で発電を行う発電機能のすくなくともいずれかで構成されている。また、チップ120の送信制御部128はCPUで構成することができ、チップ110の検出117も同様にCPUで構成することができる。
【0015】
図2は、チップ間で無線通信を行う原理を説明するためのハード構成図を示す図である。チップ120は電源部と接続された送信コイル122がチップの外周部分に設けられており、チップ110には受信コイル111がチップの外周部分に設けられている。
図2に示す通り、チップ110と120は、互いに近接した位置に配置されることにより、各コイル間で誘導結合を利用した無線通信が可能となる。また、各チップのコイル径は約300μm程度、隣接チップとのコイル間距離は約40μm程度まで小型化することが可能である。
【0016】
図2に示す例では、チップ110とチップ120が同一の母材200上に固定されることにより、誘導結合が可能な距離に両チップが配置される例を示している。ここで母材は、衣服等に利用されるやわらかい布や変形する弾性体の部材などで構成することができ、そのような場合には、母材が変形することによりチップ110とチップ120の位置関係が変化するため、受信コイルには、送信コイルに流れる電流の変化だけではなく、チップ110とチップ120の位置関係の変化に起因して電圧または電流の変化が発生する。そのため、検出部において、上述したチップの位置関係の変化に起因して受信コイルに発生する電圧または電流の変化を検出することにより、チップの位置関係の変化を検出することができる。
【0017】
<位置関係変化の検出原理>
図3-1~
図3-4は、2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
図3-1は、チップ110とチップ120とが敷設平面上で互いに離れる方向(X軸方向で離れる方向)に相対移動した場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、受信コイル111と送信コイル122のコイル間距離は大きくなるため、両コイル間に発生する誘導結合は小さくなり、送信コイル122に生じる電流の変化に起因して受信コイルに発生する電圧又は電流の振幅(電圧又は電流検出値の絶対値の最大値)は小さくなる。センシングの一例として、母材200が熱膨張することにより上記したようにチップ110と120の距離が緩やかに増加するため、検出部で検出した受信コイルの電圧又は電流の振幅が、所定値よりも低い速度(周期)で変化した場合に、環境温度の変化を検出することができる。また、母材に加わるX軸方向の圧力が変化することによっても、母材が変形して、コイル間距離が変化するため、上記した通り、所定値よりも低い速度(周期)の電圧又は電流の振幅の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わるX軸方向の圧力変化を検出することができる。
【0018】
また、母材200に図中のX軸方向に振動が加わることにより、上記したコイル間距離が高い周期で変化するため、所定値よりも高い周期の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わる振動(脈拍、音、その他の振動など)を検出することができる。
【0019】
図3-2は、チップ110とチップ120が、各コイルの巻線軸の方向(Y軸方向)沿って互いに逆方向に相対移動した場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、上記した移動に伴って、受信コイル111と送信コイル122のコイル間距離は大きくなるため、両コイル間に発生する誘導結合は小さくなり、送信コイル122に生じる電流の変化に起因して受信コイル側に発生する電圧又は電流の変化量は小さくなる。そのため、母材200に図中のY軸方向に振動が加わることにより、上記したコイル間距離が高い周期で変化するため、所定値よりも高い周期の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わる振動(脈拍、音、その他の振動など)を検出することができる。
【0020】
図3-3は、チップ110とチップ120が、敷設平面上を互いに前後方向(Z軸方向)にスライドするように相対移動した場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、上記した移動に伴って、受信コイル111と送信コイル122の相対する面のコイルのオーバーラップ距離は小さくなるため、両コイル間に発生する誘導結合は小さくなり、送信コイル122に生じる電流の変化に起因して受信コイルに発生する電圧又は電流の振幅は小さくなる。そのため、母材200に図中のZ軸方向に振動が加わることにより、上記したコイル間距離が高い周期で変化するため、所定値よりも高い速度(周期)の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わる振動(脈拍、音、その他の振動など)を検出することができる。
【0021】
図3-4は、チップ110とチップ120が、チップ間の対抗する辺の方向(Z軸)を回転軸として、チップの相対角度が小さくなる方向に回転することで、チップ間の相対角度が180度よりも小さい所定角度θとなるように、相対位置が変化した場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、引用文献1にも開示されている通り、上記したコイルの相対角度θが減少するにしたがって、受信コイル111と送信コイル122の結合係数が単調に増加し、送信コイル122に生じる電流の変化に起因して受信コイルに発生する電圧又は電流の振幅は大きくなることが知られている。そのため、母材200に図中のZ軸周りに振動が加わることにより、上記したコイル間の相対角度が高い周期で変化するため、所定値よりも高い速度(周期)の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わる振動(脈拍、音、その他の振動など)を検出することができる。
【0022】
図4は、
図1及び
図2で示した情報処理装置100の詳細な実装回路の一例を示した図である。図に示す通り、チップ120には、チップの周辺部に配置された送信コイル122と、送信コイルへ電流信号を出力する送信回路123と、電流信号を生成するコア回路125(送信制御部128)と、コア回路へ電力を供給する電源部126とが実装されている。また、チップ110には、チップ周辺部に配置された受信コイル111と、受信コイルに印加された電圧又は電流を受信する受信回路113と、受信回路113で受信した電圧又は電流を検出するコア回路115(検出部117)と、コア回路115へ電力を供給する電源部116とを備えている。コア回路115、125は例えばCPUで構成されている。送信側のコア回路125は送信制御部128の機能を有し、後述する
図5に示す送信信号を生成して、送信回路123は当該送信信号に応じた電流を送信コイルへ出力する。
【0023】
図5は、送信側チップのコア回路125で生成される送信信号、受信側チップの受信コイル111に発生する電圧V、及び受信側チップのコア回路115(検出部)で生成される受信信号の時間変化をそれぞれ示している。送信信号はHigh又はLowの二値信号(パルス信号)であり、送信信号のパルスがLowからHighに立ち上がったタイミングから遅れ時間経過後に、受信コイルに正側の電圧Vが発生する。検出部(コア回路115)では、この電圧が正の所定しきい値を超えた場合に、受信信号をLowからHighに立ち上げる。送信信号がHighからLowに変化した場合も同様に、遅れ時間経過後に、受信コイルに負側の電圧Vが発生し、検出部(コア回路115)で、この電圧Vが負の所定しきい値を下回った場合に、受信信号をHighからLowに変化させる。
【0024】
図6は、チップの位置関係の変化が発生した場合の受信コイルに発生する電圧Vの時間変化の一例を示す図である。チップ間の位置関係が変化する前の定常状態における電圧V(点線)に比べて、
図3-1から3-3に示すように各チップのコイル間の位置関係が変化して、誘導結合の結合係数が低くなった場合には、受信信号の信号変化時(HighからLow,又はLowからHigh)に受信コイルに発生する電圧Vの振幅は、チップの位置関係が変化していない定常状態における所定振幅値よりも小さくなる。(逆に、チップのコイル間の位置関係が変化して、誘導結合の結合係数が高くなった場合には、受信信号の信号変化時(HighからLow,又はLowからHigh)に受信コイルに発生する電圧Vの振幅は定常時よりも大きくなる。)また、送信信号のパルス周期は例えば0.2nsであり、チップのコイル間の位置関係が変化する周期よりも十分に短いため、電圧Vの振幅の変化に基づいて、誘導結合の結合係数の変化を検出することが可能であり、当該結合係数の変化に基づいて、チップ間の位置関係の変化を推定することができる。つまり、チップ間の位置関係を変化させる要因となる、振動、圧力変化又は温度変化などの状態量を検出することが可能となる。なお、定常状態における電圧Vの振幅と、前記状態量が変化した場合の電圧Vの振幅の値は、通信を行うチップ間の位置関係に応じて決まる値であるため、チップの位置関係が決まった後の例えばセンサー利用の運用時に情報処理装置において適宜設定することが可能である。
【0025】
図6に示す例では、受信コイルに発生する誘起電圧の振幅が定常状態における所定値に比べて増加した状態又は減少した状態に基づいて、チップ間の位置関係の変化、振動、圧力変化又は温度変化を検出する例を説明したが、本発明はこれに限られず、受信コイルに発生する電流値の振幅に基づいて、チップ間の位置関係の変化、振動、圧力変化又は温度変化を検出することも可能である。また、受信コイルに発生する電圧や電流ではなく、検出部で検出された受信信号(
図5に記載)の波形歪みの振幅に基づいて、上記した各状態量を検出することも可能である。
【0026】
図7は、本実施形態において情報処理装置が振動等の状態量を検出する動作フローチャートを示す図である。まず、送信側チップのコア回路125が、無線通信により受信側チップに伝送される送信信号(電流)を送信コイルに流す(ステップ101)。次に、受信側チップのコア回路115が、受信コイルに発生する電圧を検出する(ステップ102)。次に、ステップ102で検出された電圧の振幅が、予め定められた所定の振幅値から変化しているか否かを判断し、変化している場合はステップ104の処理に遷移し、変化していない場合はステップ106の処理に遷移する(ステップ103)。次に、ステップ103の判断において、検出した電圧の振幅が、予め定められた所定の振幅値から変化していると判断した場合には、振動、圧力変化又は温度変化が発生していると判断する(ステップ104)。ここで、検出した電圧の振幅の変化周期に基づいて、振動、圧力変化、温度変化を切り分けて検出することも可能である。この一例としては、電圧振幅の変化周期が~1秒程度である場合には、振動の発生と判断し、電圧振幅の変化周期が1秒~10秒程度であれば、圧力変化と判断し、電圧振幅の変化周期が10秒以上であれば、温度変化と判断することができる。次に、ステップ103の判断において、検出した電圧の振幅が、予め定められた所定の振幅値から変化していないと判断した場合には、振動、電圧変化又は温度変化が発生していないと判断する(ステップ105)。
【0027】
ここで、実施例1では、送信信号を送信するチップ120がCPUなどで構成される送信制御部128を有する実施形態を説明したが、本発明はこれに限られず、送信制御部128は、CPUではなく、所定の送信信号を送信する回路で構成することも可能である。
【0028】
<実施例2>
上述した実施例1では、誘導結合による無線通信を行う二つのコイルの相対位置関係の変化を検出する例を示したが、本実施例では、3つ以上のチップの間で無線通信を行い、相対位置関係の変化を検出する実施形態を説明する。なお、実施例1で説明したものと同じ符号が付された部分は、実施例1と同様の機能を有するものとして、説明を省略する。
【0029】
図8は、実施例2における情報処理装置100の機能構成の一例を示す図である。
図2に示されるように、本実施形態の情報処理装置100は、少なくとも3つ以上のチップ110、120、130を有する。チップ110は、受信コイル111,検出部117、電源部116に加えて、送信コイル112と、送信コイル112から送信する送信信号を生成する送信制御部118と、検出部117で検出した状態量の検出情報を記録するメモリと119、を備えている。ここで、検出部117と送信制御部118とメモリ119は例えばCPUで構成される。
【0030】
また、チップ130は、受信コイル131、送信コイル132、外部通信制御部138、電源部136を備えており、外部通信制御部を介して外部通信機器300と通信を行う。外部通信制御部は、例えばCPUで構成されており、外部通信機器から検出情報の出力要求を受信した場合に、送信コイル132を介して検出情報の出力要求信号を送信する。この出力要求信号はチップ110の受信コイル111で受信される。送信制御部118は、この出力要求信号に基づいて、メモリ119に記録されている検出情報を読み出して、送信コイル112を介して読みだした検出情報を出力する。外部通信制御部は、受信コイル131を介して当該検出信号を受信し、外部通信機器300に当該検出信号を出力する。
【0031】
なお、各チップに設けられた送信コイルから送信される送信信号は、隣接するすべてのチップの受信コイルで受信される。つまり、隣接するチップに設けられた送信コイルと受信コイルは通信バスと同様の機能を有する。
【0032】
図9は、実施例2におけるチップ110、120、130が無線通信を行う原理を説明するためのハード構成図を示す図である。
図9に示す通り、チップ120は、チップ110及びチップ130と隣接しているため、送信コイル122から送信された送信信号は、受信コイル111及び131の両方で受信される。
【0033】
図10は、更に多くの7枚のチップを互いに通信可能に配置した例を示している。
図10に示す配置構成においては、チップ130から送信された送信信号は、隣接する他のチップ(140,150,160,170,180,190)で受信することができる。
【0034】
<実施例3>
上述した実施例1及び2では、複数のチップが平面上に隣接して配置される例を示したが、本実施例では、チップ面が正対する方向に複数のチップが積層配置され、チップの間で無線通信を行う場合において、相対位置関係の変化を検出する実施形態を説明する。なお、実施例1や2で説明したものと同じ符号が付された部分は、実施例1と同様の機能を有するものとして、説明を省略する。
【0035】
図11は、チップ110とチップ120が無線通信を行う原理を説明するためのハード構成図を示す図である。チップ110と120は、チップ110の受信コイル111とチップ120の送信コイル122とが互いに正対する位置に配置されることにより、両コイル間で誘導結合を利用した無線通信が可能となる。
【0036】
また、
図11に示す例では、チップ110とチップ120が母材210を挟んで近接する位置に固定されることにより、誘導結合が可能な距離に両チップが配置される例を示している。ここで母材は、変形する弾性体の部材などで構成することができ、そのような場合には、チップ110とチップ120の位置関係が変化するため、受信コイルには、送信コイルから送信された電気信号だけではなく、チップ110とチップ120の位置関係の変化に起因して電圧または電流の変化が発生する。そのため、チップ110の検出部117において、上述したチップの位置関係の変化に起因して受信コイルに発生する電圧または電流の変化を検出することにより、より具体的には、受信コイルに発生する電圧又は電流値の振幅に基づいて、振動、圧力変化又は温度変化を検出することが可能である。
【0037】
図12-1~
図12-4は、2つのチップに配置される送信コイル122と受信コイル111の位置関係の変化を示す図である。
図12-1は、チップ110とチップ120とが互いに離れる方向(Y軸方向で離れる方向)に相対移動した場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、受信コイル111と送信コイル122のコイル間距離は大きくなるため、両コイル間に発生する誘導結合は小さくなり、送信コイル122の生じる電流変化に起因して受信コイル側に発生する電圧又は電流の変化量は小さくなる。センシングの一例として、母材210が熱膨張することにより上記したようにチップ110と120の距離が緩やかに増加するため、所定値よりも低い周期の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、環境温度の変化を検出することができる。また、母材に加わるY軸方向の圧力が変化することによっても、母材が変形して、コイル間距離が変化するため、上記した通り、所定値よりも低い周期の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わるY軸方向の圧力変化を検出することができる。
【0038】
また、母材210に図中のY軸方向に振動が加わることにより、上記したコイル間距離が高い周期で変化するため、所定値よりも高い周期の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わる振動(脈拍、音、その他の振動など)を検出することができる。
【0039】
図12-2は、チップ110とチップ120が、各コイルがX軸方向に相対的にスライド移動した場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、上記した移動に伴って、受信コイル111と送信コイル122の相対する面のコイルのオーバーラップ距離は小さくなるため、両コイル間に発生する誘導結合は小さくなり、送信コイル122の生じる電流変化に起因して受信コイル側に発生する電圧又は電流の変化量は小さくなる。そのため、母材210に図中のX軸方向に振動が加わることにより、上記したコイル間距離が高い周期で変化するため、所定値よりも高い周期の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わる振動(脈拍、音、その他の振動など)を検出することができる。
【0040】
図12-3は、チップ110とチップ120が、各コイルがZ軸方向に相対的にスライド移動した場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、上記した移動に伴って、受信コイル111と送信コイル122の相対する面のコイルのオーバーラップ距離は小さくなるため、両コイル間に発生する誘導結合は小さくなり、送信コイル122の生じる電流変化に起因して受信コイル側に発生する電圧又は電流の変化量は小さくなる。そのため、母材210に図中のZ軸方向に振動が加わることにより、上記したコイル間距離が高い周期で変化するため、所定値よりも高い周期の電圧又は電流の変化を検出部で検出した場合に、母材に加わる振動(脈拍、音、その他の振動など)を検出することができる。
【0041】
図12-4は、チップ110が回転体の回転子側、チップ120が回転体の固定子側にそれぞれ配置され、回転子が固定子に対して回転運動をする場合の各コイルの位置関係を示す図である。この場合、回転子が固定子に対して回転移動を行うことにより、送信コイル111と受信コイル122が互いに正対する相対位置の状態(
図12-4に示す状態)と、正対しない相対位置の状態(例えば、
図12-4に示す状態から回転子が180度回転した状態)とを繰り返す。そのため、上述した回転動作に伴って、受信コイル111と送信コイル122が正対する位置となる場合にはコイル間の誘導結合は大きくなり、受信コイル111と送信コイル122が正対する位置ではなくなった場合には、コイル間の誘導結合は小さくなる。そのため、回転子が回転することにより、上記したコイル間の距離が回転数の周期で変化するため、モーターなどの回転体の回転数(回転速度)を検出することができる。
【0042】
<実施例4>
上述した各実施例では、複数のチップを、母材を介して互いに近接する位置に配置して、センサーを構成する例を説明したが、母材上の所定位置に複数のチップを固定するのではなく、複数のチップを用いてより簡易にセンサーを製造する例を説明する。なお、実施例1や2で説明したものと同じ符号が付された部分は、実施例1と同様の機能を有するものとして、説明を省略する。
【0043】
図13は、本実施形態におけるチップ500の有する機能を示す図である。チップ500は、受信コイル501と、送信コイル502と、電源部506と、検出部507と、送信制御部508と、メモリ509とを備える。これらの各機能ブロックの機能は、前述した実施例と同様の機能を有する。そのため、複数のチップ500同士が通信可能な近接位置に配置された場合には、当該チップ間で無線通信を行うと共に、チップの相対位置の変化を検出することができる。ここで、検出部507、送信制御部508、メモリ509はCPUで構成することができる。
【0044】
そのため、例えば、2個以上の多数のチップ500をセメントやゴムなどの建設部材の材料に混ぜて利用する場合、各チップがどの位置に固定されるかはコントロールできないものの、近接する位置に固定されたチップ同士で無線通信を行うことが可能となる。
図14は、チップを材料に混ぜた場合の複数チップ間における無線通信の状態を示す図である。
図14に示す通り、近接する位置に位置するチップ間で無線通信を行うことができるため、当該チップの相対位置の変化を検出することができる。例えば、チップ500が混ぜ込まれたゴム製のシートを床材として利用する場合には、床材のあらゆる位置における圧力の変化を検出することができる。また、チップ500が混ぜ込まれた材料に加わる振動や温度変化も同様に検出することが可能となる。
【0045】
図15は、複数の情報処理装置100を用いた情報分析システムの構成図を示す図である。上述した各実施形態において、複数の情報処理装置100により検出された振動、圧力変化又は温度変化などの検出情報は、外部通信機器300により収集され、通信回線を通じてクラウドサーバー400に送信される。クラウドサーバーでは、大量の検出情報を分析して統計情報の生成などを行うことができる。ここで、上述した各実施形態では、チップ内の検出部にチップ間の相対位置の変化、又はチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化の検出機能を実装する例を説明したが、これに代えて、チップ内の検出部では電圧または電流の検出機能を実装し、チップから電圧または電流の検出情報を取得した外部通信機器300又はクラウドサーバー400が、検出情報の電圧値又は電流値の振幅が所定値から増加又は減少するという所定条件に基づいて、チップ間の相対位置の変化、又はチップに加わる振動、又は圧力変化、又は温度変化を検出する機能を有するようにしても良い。
【0046】
上述した実施形態により、センサシステムを構成するために必要な要素として付随するコンピューティングチップそのものがセンシングデバイスとなるため、コンピューティングチップとセンシングデバイスを別々に設ける必要が無く、チップサイズのセンサシステムを構築することができる。更に、チップ間の相対位置関係の変化を計測できるため、この相対位置関係の変化と結びつけることができれば、あらゆる物理量を計測することが可能となる。また、コンピューティングチップに実装するソフトウェアを入れ替えることにより、異なる種類のセンサとして動作させることが可能となるため、センサシステムの設計コストを削減することができ、一つのセンサデバイスにより複数の物理量を計測することも可能となる。
【0047】
上述した各実施例では、チップの相対位置の変化に起因して受信コイルに発生する電圧または電流の変化を検出することにより、振動、圧力変化又は温度変化などの状態量を推定することを説明したが、受信コイルに発生する電圧または電流は、電磁波が当たった場合に変化することが知られている。そのため、受信コイルに発生する電圧または電流の変化を検出することにより、情報処理装置に当たっている電磁波を計測することも可能である。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100 情報制御装置
110、120、130、500 チップ
111、121、131、501 受信コイル
112、122、132、502 送信コイル
113、123、133、503 受信回路
114、124、134、504 送信回路
115、125、135、505 コア回路
126、116、136、506 電源部
117、127、137、507 検出部
118、128、508 送信制御部
139、509 メモリ
200、210 母材
300 外部通信機器
400 クラウドサーバー