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特開2023-17200液体吐出ヘッド、液体吐出装置および駆動制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017200
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出装置および駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20230131BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121298
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】大戸井 慶人
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB39
2C056EC03
2C056EC07
2C056EC38
2C056FA15
2C056FB09
2C057AF71
2C057AG44
2C057AL03
2C057AL13
2C057AM03
2C057AM16
2C057AN07
2C057AR04
2C057AR08
2C057BF04
(57)【要約】
【課題】ノズルの吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】
液体を吐出するノズルを開閉する弁体と、前記弁体を駆動する駆動体と、前記駆動体を駆動するための駆動波形を出力する制御部とを備える液体吐出ヘッドにおいて、前記制御部は、前記駆動波形と基準駆動波形とを比較し、この比較結果に基づいて補正値を算出し、前記補正値に基づき前記駆動体に印加する電流値を可変して、前記駆動波形を前記基準駆動波形に近づくように補正する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを開閉する弁体と、
前記弁体を駆動する駆動体と、
前記駆動体を駆動するための駆動波形を出力する制御部と
を備える液体吐出ヘッドにおいて、
前記制御部は、
前記駆動波形と基準駆動波形とを比較し、この比較結果に基づいて補正値を算出し、前記補正値に基づき前記駆動体に印加する電流値を可変して、前記駆動波形を前記基準駆動波形に近づくように補正する
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記電流値の可変により前記駆動波形の傾きを補正することを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記駆動体は、前記弁体の開閉方向と同方向に伸縮が可能な圧電素子であり、前記駆動波形に基づき前記伸縮を行うことを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズルを複数備え、それぞれの前記ノズルに対して前記弁体および前記駆動体を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
液体を吐出するノズルを開閉する弁体と前記弁体を駆動する駆動対象とを備える液体吐出ヘッドの前記駆動対象に印加する駆動波形と基準駆動波形とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて補正値を算出する補正値算出部と、
前記補正値に基づき前記駆動対象に印加する電流値を可変し、前記駆動波形を前記基準駆動波形に近づくように補正する駆動波形生成部と
を備えることを特徴とする駆動制御装置。
【請求項7】
前記電流値の可変により前記駆動波形の傾きを補正することを特徴とする請求項6記載の駆動制御装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の駆動制御装置を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出装置および駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズルに連通するキャビティに吐出液体を加圧供給するとともに、ピンでノズルを閉塞可能とし、このピンをアクチュエータでノズルに対して離接可能とし、このアクチュエータを制御装置で制御する構成とすることで、ピンがノズルから離間している間だけ、加圧供給されている吐出液体がノズルから液滴として吐出される液滴吐出ヘッドを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ノズルの吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、液体を吐出するノズルを開閉する弁体と、前記弁体を駆動する駆動体と、前記駆動体を駆動するための駆動波形を出力する制御部とを備える液体吐出ヘッドにおいて、前記制御部は、前記駆動波形と基準駆動波形とを比較し、この比較結果に基づいて補正値を算出し、前記補正値に基づき前記駆動体に印加する電流値を可変して、前記駆動波形を前記基準駆動波形に近づくように補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ノズルの吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの内部構成図。
図3】液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図。
図4】圧電素子に印加する駆動波形の説明図。
図5】駆動波形の補正例を示す説明図。
図6】本発明の実施形態に係る駆動制御装置の一例を示すブロック図。
図7】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例を示すブロック図。
図8】駆動波形の生成から印加までのフロー図。
図9】駆動波形補正処理の一例を示すフロー図。
図10】本発明に係る液体吐出装置の一例を示す全体斜視図。
図11】印刷装置のキャリッジの全体斜視図。
図12】印刷装置の制御系の一例を示したブロック図。
図13】本発明の変形例に係る液体吐出装置の説明図。
図14】同変形例における液体吐出装置の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体斜視図である。
【0009】
液体吐出ヘッド300(以下、ヘッドと称する)は、ハウジング310およびコネクタ350などを備える。ハウジング310は金属または樹脂からなり、ハウジング310の左右には、液体をヘッド内に供給するための液体供給ポート311と、液体をヘッドから排出するための液体回収ポート313を備えている。また、コネクタ350は、ヘッド300の制御信号を通信するための端子であり、本実施形態ではハウジング310の上部に設けている。
【0010】
図2は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの内部構成図であり、図1のA-A線矢視断面図である。
【0011】
ヘッド300において、ハウジング310は液体を吐出するノズル302を備えたノズル板301を保持している。また、ハウジング310は、液体供給ポート311側からの液体を、ノズル板301上を経て液体回収ポート313側へ送る流路を兼ねた液室312を備える。
【0012】
液体供給ポート311と液体回収ポート313との間には、液室312内の液体をノズル302から吐出するための液体吐出モジュール330を配置している。液体吐出モジュール330の数はノズル302の数に対応しており、本実施形態では1列に並べた8個のノズル302に対応する8個の液体吐出モジュール330を備えた構成を示している。
【0013】
上記の構成において、液体供給ポート311は、加圧した状態の液体を外部から取り込み、液体を矢印a1の方向へ送り、液室312へ供給する。液室312は、液体供給ポート311からの液体をノズル板301に沿って矢印a2方向へ送る。そして、液体回収ポート313は、液室312に沿って配置したノズル302から吐出しなかった液体を矢印a3方向へ排出する。
【0014】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332を備える。ハウジング310は、圧電素子332の上端部と対向する位置に規制部材314を備える。この規制部材314が圧電素子332の上端部に当接していることで、圧電素子332の固定点、すなわち圧電素子332が変位(伸縮動作)する際の基点をなす。
【0015】
上記の構成において、圧電素子332を駆動してニードル弁331を上方向へ動かした場合は、ニードル弁331によって閉じていたノズル302が開いた状態になり、ノズル302から液体を吐出する。また、圧電素子332を駆動してニードル弁331を下方向へ動かした場合は、ニードル弁331の先端部がノズル302に当接してノズル302が閉じた状態になり、ノズル302から液体は吐出しなくなる。
【0016】
なお、被液体付与物に対して液体を吐出している期間中は、ノズル302からの液体の吐出効率が低下しないようにするため、液体回収ポート313からの液体の排出を一時的に行わないようにしてもよい。
【0017】
また、図2ではノズル302および液体吐出モジュール330を8個備えたヘッド構成に基づき説明したが、ノズル302および液体吐出モジュール330の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル302および液体吐出モジュール330の数は、9個以上であってもよく、また複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル302および液体吐出モジュール330の配列は、1列ではなく、複数列で配置してもよい。
【0018】
上述のように本実施形態において、ノズル板301は、ノズル302を複数備え、それぞれのノズル302に対してニードル弁331および圧電素子332を設ける。これにより、被液体付与物への液体付与を高速で行うことができる。ここで、ニードル弁331は弁体の一例であり、圧電素子332は駆動体(または駆動対象)の一例である。
【0019】
図3は、液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図である。図3(a)は液体吐出モジュールの全体断面図、図3(b)は図3(a)のB部の拡大図である。
【0020】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332とを備える。ノズル板301はハウジング310に接合している。また、液室312はハウジング310に設けた複数の液体吐出モジュール330に共通の流路である。
【0021】
ニードル弁331の先端には弾性部材331aを備えており、ニードル弁331の先端をノズル板301に押し付けた際に、弾性部材331aがノズル302を確実に閉塞するようにしている。また、ニードル弁331とハウジング310との間には軸受部321を設けるとともに、軸受部321とニードル弁331との間にはOリングなどのシール部材315を設けている。
【0022】
ハウジング310の空間322内には圧電素子332を収容している。保持部材333の中央空間333aが圧電素子332を保持しており、圧電素子332とニードル弁331とは同軸上に保持部材333の先端部333bを介して連結している。すなわち、保持部材333は、圧電素子332を収容する中央空間333aを有し、先端部333b側はニードル弁331と連結し、後端部333c側はハウジング310に取り付けた規制部材314により固定してある。
【0023】
ここで、圧電素子332は、電圧印加手段200によって電圧を印加したときに、ノズル302が開く方向にニードル弁331を駆動する。したがって、圧電素子332に電圧を印加していないときは、ニードル弁331がノズル302を閉塞しているので、液室312に液体が加圧供給されていても、ノズル302から液体が吐出することはない。そして、圧電素子332に電圧を印加することで、圧電素子332が収縮し、保持部材333を介してニードル弁331を引っ張るので、ニードル弁331がノズル302から離間してノズル302を開放する。これにより、液室312に加圧供給した液体をノズル302から吐出する。
【0024】
上記構成のヘッドにおいては、圧電素子332の変位量(伸縮量)が大きいほど大液滴、高粘度の液体の吐出が可能になる。圧電素子332の大きな変位量を得るためには、長さの長い圧電素子を用いればよい。しかし、そのような圧電素子は一般的なマイクロピエゾ駆動方式を採用した圧電素子に比べて、静電容量が非常に大きくなり、それに伴い圧電素子の静電容量の絶対値のばらつきも大きくなる。
【0025】
図4は、圧電素子に印加する駆動波形の説明図である。
【0026】
上記構成のヘッド300においては、図示のように液体吐出で用いる実際の駆動波形(破線)が狙いの駆動波形(実線)と一致しない場合がある。このような駆動波形のずれは、圧電素子332の個体差(静電容量ばらつき等)、ニードル弁331および圧電素子332周りのメカ構成のばらつき、液体の乾燥、ノズル302部分での流体クロストーク等が要因となり発生する。特に液体の乾燥および流体クロストークに起因する駆動波形のずれに対しては、リアルタイムによる補正が必要である。
【0027】
そこで本発明は、実際の駆動波形と狙いの駆動波形とを比較し、両者の立ち下がりの電位差Vtf(n)および立ち上がりの電位差Vtr(n)を監視する。そして、電位差Vtf(n)または電位差Vtr(n)が一定の閾値Vthを超えた場合は、実際の駆動波形を狙いの駆動波形に近づくように補正する。
【0028】
図5は、駆動波形の補正例を示す説明図である。
【0029】
後述する制御部は、狙いの駆動波形(実線)と実際(補正なし)の駆動波形(破線)とを比較し、両者の電位差Vtf(n)または電位差Vtr(n)が一定の閾値Vthを超えた場合は、その電位差に基づき補正値を算出する。そして、制御部が算出した補正値を、例えばVtf(n+1)の電圧値にフィードバックして補正ありの駆動波形(一点鎖線)を生成し、駆動波形を狙いの駆動波形に近づける。
【0030】
駆動波形の傾きを破線状態から一点鎖線状態に変える場合は、圧電素子332に印加する電流値を可変して、圧電素子332に充電/放電する電流値を制御する。これにより、駆動波形の傾きを補正する。なお、駆動波形の傾き補正は、プロットしている狙いの点に1度で補正できない場合は、任意の回数で補正するようにしてもよい。
【0031】
図6は、本発明の実施形態に係る駆動制御装置の一例を示すブロック図である。
【0032】
上述の駆動波形の補正は、図6に示した駆動制御装置902を用いて行う。駆動制御装置902に接続する駆動対象3000は、上述の実施形態においては圧電素子332に相当するが、駆動対象3000は圧電素子332以外のものとしてもよい。
【0033】
駆動制御装置902は、駆動波形生成部9021、駆動波形増幅部9022、フィルタ/インピーダンス変換部9023、AD変換部9024、比較部9025および補正値算出部9026を備える。
【0034】
駆動波形生成部9021は、駆動波形を生成し、生成した駆動波形信号を駆動波形増幅部9022および比較部9025へ送信する。また、駆動波形生成部9021は、補正値算出部9026から補正値情報を受信した場合は、補正値情報に基づき駆動波形を補正する。
【0035】
駆動波形増幅部9022は、駆動波形生成部9021から受信した駆動波形信号の電圧および電流を増幅し、駆動対象3000およびフィルタ/インピーダンス変換部9023に対して駆動信号を出力する。
【0036】
フィルタ/インピーダンス変換部9023は、駆動波形増幅部9022から受信した駆動信号に対してフィルタ/インピーダンス変換を行い、変換後の信号をAD変換部9024に出力する。
【0037】
AD変換部9024は、フィルタ/インピーダンス変換部9023から受信した信号に対してAD変換を行い、変換後の信号を比較部9025に出力する。
【0038】
比較部9025は、駆動波形生成部9021から受信した駆動波形信号と、AD変換部9024から受信した信号とを比較する。具体的には、駆動波形生成部9021から受信した駆動波形信号が、比較の基準駆動波形(狙いの駆動波形)となり、AD変換部9024から受信した信号が、駆動対象3000に印加した実際の駆動波形となる。比較部9025は、駆動波形生成部9021から受信した基準駆動波形の電圧と、AD変換部9024から受信した駆動波形の電圧とを比較する。そして、比較部9025は、比較結果を補正値算出部9026に送信する。
【0039】
補正値算出部9026は、比較部9025から受信した比較結果に基づいて補正値を算出し、算出した補正値情報を駆動波形生成部9021へ送信する。
【0040】
図7は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例を示すブロック図である。
【0041】
図7において、駆動制御装置902は図6と同じであるため、同一符号を付しその説明は省略する。本図では、図6に示した駆動対象3000をヘッド300としている点が異なる。図示のように、駆動制御装置902は駆動波形に基づく出力信号をヘッド300の圧電素子332に印加する。
【0042】
上記構成の駆動制御装置902を、図2に示した液体吐出ヘッド300の圧電素子332それぞれに備えることで、ノズル毎に吐出特性を補正することが可能になり、液体の吐出量、液滴のサイズ等をノズル毎で調整することが可能になる。ここで、駆動制御装置902は、本発明における制御部の一例でもある。
【0043】
図8は、駆動波形の生成から印加までのフロー図である。
【0044】
駆動制御装置902の動作が開始すると、まず駆動波形を生成する(ステップS1)。駆動波形の生成は、駆動制御装置902を構成する駆動波形生成部9021が行う。次にステップS1で生成した駆動波形を増幅する(ステップS2)。駆動波形の増幅は、駆動制御装置902を構成する駆動波形増幅部9022が行う。そして、ステップS2で増幅した駆動波形を駆動対象に印加し、駆動対象の動作を制御する(ステップS3)。以下、ステップS3の詳細をさらに説明する。
【0045】
図9は、駆動波形補正処理の一例を示すフロー図であり、本実施形態においては、駆動波形補正処理を図8のステップS3(駆動波形印加)の中で実行する場合の一例として説明する。
【0046】
駆動対象3000に対する駆動波形の印加が開始すると、駆動波形の補正ループに入る(ステップS31)。駆動波形補正処理フローは、図4に示すような駆動波形の立ち下がりの電位差Vtf(i)および立ち上がりの電位差Vtr(i)について、iが0からn-1となるまで、所定の時間間隔で合計n回だけステップS32からS37の処理を繰り返す。次に、上述のステップS2(駆動波形増幅)で得た駆動波形に対してAD変換処理を実行する(ステップS32)。ここでのAD変換処理は、駆動制御装置902を構成するAD変換部9024が行う。
【0047】
次に、AD変換処理後の駆動波形と、比較の基準として使用する駆動波形(以下、基準駆動波形と称する)との比較処理を行う(ステップS33)。駆動波形の比較処理は、駆動制御装置902を構成する比較部9025が行う。
【0048】
比較処理では、比較対象の駆動波形と基準駆動波形との電位差Vtf(i)またはVtr(i)が閾値Vthを超えていないかを判断する(ステップS34)。ここでVtf(i)またはVtr(i)が閾値Vthを超えている(Yes)と判断した場合は、補正値の算出を行う(ステップS35)。補正値算出は、駆動制御装置902を構成する補正値算出部9026が行う。
【0049】
次に、ステップS35で算出した補正値に基づきVtf(i)をVtf(i+1)(またはVtr(i)をVtr(i+1))に補正し、駆動波形を生成しなおす(ステップS36)。補正値に基づく駆動波形の生成は、駆動制御装置902を構成する駆動波形生成部9021が行う。
【0050】
そして、補正後の駆動波形を駆動対象に対して出力する(ステップS37)。その後、i<nの場合はステップS32に戻り、iの値に1を加算し、再びステップS37までのフローを繰り返す。そして、所定の時間間隔で合計n回だけステップS32からS37の処理を繰り返したら、すなわちi=nとなったら、駆動波形の補正ループを出る(ステップ38)。なお、ステップS34において、Vtf(i)またはVtr(i)が閾値Vthを超えていない(No)と判断した場合は、駆動波形の補正を行わずにステップS37(駆動波形出力)へ進み、駆動波形を駆動対象に対して出力する。
【0051】
上述のように、本実施形態は、液体を吐出するノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332と、圧電素子332を駆動するための駆動波形を出力する制御部(駆動制御装置)902とを備える液体吐出ヘッド300において、制御部500は、上述の駆動波形と基準駆動波形とを比較し、この比較結果に基づいて補正値を算出し、この補正値に基づき圧電素子332に印加する電流値を可変して、駆動波形を基準駆動波形に近づくように補正する。
【0052】
また、上述のように、電流値の可変により駆動波形の傾きを補正する。また、本実施形態では、駆動波形の電圧の立ち下がり部分と立ち上がり部分でリアルタイムに駆動波形を基準駆動波形に近づくように補正する。
【0053】
また、上述のように、圧電素子332は、ニードル弁331の開閉方向と同方向に伸縮が可能な圧電素子332であり、駆動波形に基づき伸縮を行う。
【0054】
これにより、圧電素子332の伸縮の量やタイミングを狙いの量やタイミングに近づけることができき、ノズル302からの液体の吐出特性を狙いの特性に近づけることができる。そして、ノズル302の吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッド300を提供することができる。
【0055】
また、上述のように、ノズル302を複数備え、それぞれのノズル302に対してニードル弁331および圧電素子332を設ける。
【0056】
これにより、ノズル302毎に吐出特性を補正することが可能になり、液体の吐出量、液滴の大きさ等をノズル302毎で調整することができる。
【0057】
図10は、本発明に係る液体吐出装置の一例を示す全体斜視図である。
【0058】
印刷装置1000は、被液体付与物の一例である被描画物100に対向して設置している。印刷装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0059】
Y軸レール102は、X軸レール101がY方向(正側および負側)に移動可能なように、X軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX方向(正側および負側)に移動可能なように、Z軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向(正側および負側)に移動可能なように、キャリッジ1を保持する。
【0060】
印刷装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向へ動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向へ動かすX方向駆動部72とを備える。また、印刷装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向へ動かすY方向駆動部82を備える。さらに、印刷装置1000は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向へ動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0061】
上記構成の印刷装置1000は、キャリッジ1をX方向、Y方向およびZ方向に動かしながら、ヘッド保持体70に設けた液体吐出ヘッドから液体の一例であるインクを吐出し、被描画物100に描画を行う。なお、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。
【0062】
なお、図において被描画物100の表面形状は平面としているが、被描画物100の表面形状は、車やトラックの車体、航空機の機体などのように鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、もしくは多少の凹凸を有する面であってもよい。
【0063】
図11は、図10に示した印刷装置のキャリッジの全体斜視図であり、キャリッジ1を被描画物100側から見たものである。
【0064】
キャリッジ1はヘッド保持体70を備えている。また、キャリッジ1は、図10に示した第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向(正側および負側)へ移動可能である。
【0065】
ヘッド保持体70は、図10に示した第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向(正側および負側)へ移動可能である。また、ヘッド保持体70は液体吐出ヘッド300を取り付けるためのヘッド固定板70aを備えている。
【0066】
本実施形態では、図1乃至図3で説明したヘッド300を、ヘッド固定板70aに6個取り付けた構成を例示しており、6個のヘッド300a~300fを積層状に並べて設けている。
【0067】
ヘッド300a~300fは、それぞれ複数のノズル302を備えている。なお、ヘッド300a~300fで用いるインクの色の種類や数は、ヘッド毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば、印刷装置1000が、単色を用いる塗装装置である場合は、ヘッド300a~300fで用いるインクは同色でよい。また、ヘッド300を構成するヘッドの数は6つに限るものではない。6つより多くてもよく、また、6つより少なくてもよい。
【0068】
液体吐出ヘッド300は、図示のように各ヘッドのノズル列が水平面(X-Z面)と交差し、かつ複数のノズル302の配列方向をX軸に対して傾けた状態でヘッド固定板70aに固定する。この状態でノズル302は、重力方向と交差する方向(Z方向正側)にインクを吐出する。
【0069】
図12は、印刷装置の制御系の一例を示したブロック図である。
【0070】
印刷装置1000は、コントローラ901、ヘッド駆動制御部902等を備える。また、コントローラ901には、コンピュータ903を接続している。コンピュータ903は、カラープロファイルやユーザの設定に応じて画像処理を行うRIP(Routing Information Protocol)部9031、被描画物100(図1参照)に描画する画像データをスキャン(キャリッジ1のX軸方向の移動)毎の画像データに分解するレンダリング部9032等を備える。また、コンピュータ903には、被描画物100に描画する画像データや座標データの設定や、描画モードの選択等を行う入力装置9033を接続している。入力装置9033は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなり、ユーザからの入力を受け付ける。
【0071】
コントローラ901は、システム制御部9011、画像データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014およびキャリッジ制御部9015等を備える。システム制御部9011は、コンピュータ903から画像データや指令を受信し、液体吐出装置1000の全体動作を制御する。
【0072】
画像データ格納部9012は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等のメモリを備え、コンピュータ903から受信した画像データ等を格納する。メモリ制御部9013は、画像データ格納部9012を制御する。
【0073】
液体吐出装置1000は、X軸に沿って設置したリニアエンコーダの各スリットを光学的に検出するエンコーダセンサ109を備えている。吐出周期信号生成部9014は、このエンコーダセンサ109の出力信号と、コンピュータ903から受信した画像データの解像度を示す情報とから、液体の吐出周期信号を生成する。
【0074】
キャリッジ制御部9015は、エンコーダセンサ109の出力信号に基づきキャリッジ1の位置情報を算出して、X方向駆動部72の速度を制御する。なお、本例においては、システム制御部9011にてキャリッジ1の移動速度の変化量を算出している。そしてシステム制御部9011は、この移動速度変化量に基づきキャリッジ1の速度制御を行う。
【0075】
以上のようにコントローラ901は、システム制御部9011、画像データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014およびキャリッジ制御部9015等を備えている。コントローラ901は、演算処理装置および記憶装置を有し、記憶装置内に事前に記録されているプログラムを演算処理装置が実行することで、これら各機能部を実現する。
【0076】
次にヘッド駆動制御部902を説明する。液体吐出ヘッド300の駆動を制御するヘッド駆動制御部902は、図7で説明した駆動制御装置であるため、詳細は省略する。ヘッド駆動制御部902は、コントローラ901の吐出周期信号生成部9014からの吐出周期信号を、図7に示した駆動波形生成部9021が受信する構成となっており、吐出周期信号に基づきヘッド駆動制御部902は動作する。
【0077】
なお、図12に示したシステム構成は一例であり、これに限るものではない。例えば、RIP部9031とレンダリング部9032は、コンピュータ903に設けるのではなく、コントローラ901のシステム制御部9011に設ける構成としてもよい。
【0078】
以降は、本発明に基づく変形例を説明する。
【0079】
図13は、本発明の変形例に係る液体吐出装置の説明図、図14は、同変形例における液体吐出装置の拡大斜視図である。
【0080】
液体吐出装置1000は、キャリッジ1を往復直線移動させるリニアレール404と、リニアレール404を適宜所定の位置へ移動させ、その位置で保持する多関節ロボット405とを備えている。
【0081】
多関節ロボット405は、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能としたロボットアーム405aを備えており、ロボットアーム405aの先端を自由に移動させ、且つ、正確な位置に配置することができる。
【0082】
多関節ロボット405としては、例えば、6つの軸、すなわち6つの関節を備えた6軸制御型の産業用ロボットを用いることができる。6軸型の多関節ロボットによれば予め動作に関する情報をティーチングしておくことで、きわめて正確、且つ、迅速にリニアレール404を被描画物702(航空機)の所定位置に対峙させることができる。ロボット405は、6軸に限定されるものではなく、5軸、7軸など適宜の軸数を備えた多関節ロボットを用いることができる。
【0083】
ロボット405のロボットアーム405aはフォーク状の支持部材424を備えている。この支持部材424の左側の枝部424aの先端には垂直リニアレール423aを、右側の枝部424bの先端には垂直リニアレール423bを平行になるようにして取り付けている。
【0084】
そして、キャリッジ1を移動可能に保持したリニアレール404の両端を、2つの垂直リニアレール423a、423bにそれぞれ架け渡すようにして支持させている。
【0085】
キャリッジ1は、図11等で説明した実施形態の構成を備えるものであり、被描画物702に向けて液体を吐出するヘッド(図示省略)を備えている。ヘッドとしては、図11等で説明したヘッド300や、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトなどの各色の液体を吐出する複数のヘッド300、または複数のノズル列を有するヘッド300を備えている。このキャリッジ1の各ヘッド300またはヘッド300の各ノズル列に対しては、インクタンク330から各色の液体が供給される。
【0086】
キャリッジ1は、リニアレール404上を移動することで第1の軸の方向へ動き、このリニアレール404が垂直リニアレール423a、423b上を移動することで第1の軸と交差する第2の軸の方向へ動くことが可能である。
【0087】
また、図示しないがキャリッジ1には、前述の第1の軸および第2の軸と交差する第3の軸の方向(本変形例では被描画物702に向けての液体吐出方向)にてキャリッジ1を移動させる第1の駆動手段を備えている。また、キャリッジ1は、前述のヘッドを、キャリッジ1に対して第3の軸の方向にて移動させる第2の駆動手段を備えている。
【0088】
この液体吐出装置1000は、ロボット405によりリニアレール404を被描画物702の描画領域に移動させ、描画データに応じてキャリッジ1をリニアレール404に沿って移動しながらヘッド300を駆動して、描画を行う。
【0089】
そして、1ライン分の描画が終了したときに、垂直リニアレール423a、423bを駆動することにより、キャリッジ1のヘッド300をあるラインから次のラインに移動させる。この動作を繰り返して、被描画物702の所要の描画領域に描画することが可能となる。
【0090】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。
【0091】
これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0092】
また、本発明に係る液体吐出装置は、上述の印刷装置の形態に限るものではない。例えば、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能とした多関節ロボットのロボットアームの先端に、本発明の液体吐出ヘッドを取り付けた形態でもよい。
【0093】
また、ドローンなどの無人航空機、または壁面を登ることが可能なロボットに本発明の液体吐出ヘッドを搭載して、塗装可能な無人航空機、あるいは塗装可能なクライミングロボットの形態としてもよい。
【0094】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0095】
第1の態様は、液体を吐出するノズル(例えばノズル302)を開閉する弁体(例えばニードル弁331)と、前記弁体を駆動する駆動体(例えば圧電素子332)と、前記駆動体を駆動するための駆動波形を出力する制御部(例えば駆動制御装置902)とを備える液体吐出ヘッド(例えばヘッド300)において、前記制御部は、前記駆動波形と基準駆動波形とを比較し、この比較結果に基づいて補正値を算出し、前記補正値に基づき前記駆動体に印加する電流値を可変して、前記駆動波形を前記基準駆動波形に近づくように補正することを特徴とするものである。
【0096】
また、第2の態様は、第1の態様において、前記電流値の可変により前記駆動波形の傾きを補正することを特徴とするものである。
【0097】
また、第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、前記駆動体(例えば圧電素子332)は、前記弁体(例えばニードル弁331)の開閉方向と同方向に伸縮が可能な圧電素子であり、前記駆動波形に基づき前記伸縮を行うことを特徴とするものである。
【0098】
第1の態様乃至第3の態様によれば、ノズルの吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0099】
また、第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記ノズル(例えばノズル302)を複数備え、それぞれの前記ノズルに対して前記弁体(例えばニードル弁331)および前記駆動体(例えば圧電素子332)を設けることを特徴とするものである。
【0100】
第4の態様によれば、ノズル毎に吐出特性を補正することが可能になり、液体の吐出量、液滴の大きさ等をノズル毎で調整することができる。
【符号の説明】
【0101】
300 液体吐出ヘッド
302 ノズル
331 ニードル弁(弁体)
332 圧電素子(駆動体)
902 ヘッド駆動制御部(駆動制御装置)
9021 駆動波形生成部
9022 駆動波形増幅部
9025 比較部
9026 補正値算出部
1000 印刷装置(液体吐出装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特開2010-241003号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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