(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172147
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】静電チャック装置、および静電チャック装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231129BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20231129BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20231129BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20231129BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C16/458
C23C14/50 A
H02N13/00 D
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083758
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】文倉 篤志
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029BD01
4K029JA01
4K029JA05
4K030CA04
4K030CA12
4K030GA02
4K030KA26
4K030KA47
4K030LA15
5F004AA01
5F004BB22
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB17
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】接着層の厚さを均一にしつつ基台と接着層との間に隙間が生じ難い静電チャック装置を提供する。
【解決手段】支持面、および支持面に開口する孔部が設けられる基台と、孔部に挿入される挿入部品と、積層方向一方側から支持面に積層される静電チャック部材と、積層方向において静電チャック部材と基台との間に位置する接着層と、を備え、接着層は、静電チャック部材と基台とを接着する接着シートと、挿入部品の積層方向一方側の端面と静電チャック部材との間の隙間に充填される充填部と、を有する、静電チャック装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面、および前記支持面に開口する孔部が設けられる基台と、
前記孔部に挿入される挿入部品と、
積層方向一方側から前記支持面に積層される静電チャック部材と、
前記積層方向において前記静電チャック部材と前記基台との間に位置する接着層と、を備え、
前記接着層は、
前記静電チャック部材と前記基台とを接着する接着シートと、
前記挿入部品の前記積層方向一方側の端面と前記静電チャック部材との間の隙間に充填される充填部と、を有する、
静電チャック装置。
【請求項2】
前記接着シートには、前記積層方向から見て前記孔部の開口を包含する貫通孔が設けられ、
前記充填部は、前記貫通孔の内部に配置される、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記挿入部品の前記端面は、前記支持面よりも前記積層方向他方側に位置し、
前記充填部は、前記端面の前記積層方向一方側、かつ前記孔部の内部に配置され、
前記接着シートは、前記充填部を前記積層方向一方側から覆う、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項4】
前記充填部は、流動性接着剤である、
請求項1~3の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【請求項5】
前記接着シートと前記充填部とは、互いに異なる元素で構成される主鎖を有する高分子化合物である、
請求項4に記載の静電チャック装置。
【請求項6】
前記接着シートの外周面を覆う保護樹脂部を備え、
前記保護樹脂部は、前記接着シートの構成材料とは異なる材料からなる、
請求項1~3の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【請求項7】
前記挿入部品は、前記積層方向に延びる筒状の碍子である、
請求項1~3の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【請求項8】
静電チャック部材、および基台を有する静電チャック装置の製造方法であって、
前記基台の支持面に開口する孔部に、挿入部品を挿入する挿入工程と、
前記支持面に接着シート、および前記静電チャック部材を積層し前記接着シートによって前記静電チャック部材と前記基台とを互いに固定する接着工程と、を有し、
前記接着工程は、
前記接着シートに、積層方向から見て前記孔部の開口を包含する貫通孔を形成する開口工程と、
前記貫通孔の内部に未硬化の樹脂を充填する充填工程と、
未硬化の前記樹脂を硬化させて充填部を形成する硬化工程と、を含む、
静電チャック装置の製造方法。
【請求項9】
前記接着工程は、前記支持面に前記接着シートを積層した後に前記開口工程を行う工程である、
請求項8に記載の静電チャック装置の製造方法。
【請求項10】
前記接着工程は、前記開口工程を行った後に、前記支持面に前記接着シートを積層する工程である、
請求項8に記載の静電チャック装置の製造方法。
【請求項11】
静電チャック部材、および基台を有する静電チャック装置の製造方法であって、
前記基台の支持面に接着シート、および前記静電チャック部材を積層し前記接着シートによって前記静電チャック部材と前記基台とを互いに固定する接着工程と、
前記支持面に開口する孔部に、挿入部品を挿入する挿入工程と、
硬化工程と、を有し、
前記接着工程は、
前記接着シートに、積層方向から見て前記孔部の開口を包含する貫通孔を形成する開口工程と、
前記貫通孔の内部に未硬化の樹脂を充填する充填工程と、を含み、
前記挿入工程は、前記充填工程が行われた後に行われ、
前記硬化工程は、前記挿入工程の後に行われ、未硬化の前記樹脂を硬化させて充填部を形成する、
静電チャック装置の製造方法。
【請求項12】
静電チャック部材、および基台を有する静電チャック装置の製造方法であって、
前記基台の支持面に開口する孔部に、挿入部品を挿入する挿入工程と、
前記支持面に接着シート、および前記静電チャック部材を積層し、前記接着シートによって前記静電チャック部材と前記基台とを互いに固定する接着工程と、を有し、
前記挿入工程において、前記孔部の内周面と前記挿入部品の端面とによって構成される凹部が形成され、
前記接着工程は、
前記凹部の内部に未硬化の樹脂を充填する充填工程と、
前記樹脂を前記接着シートで覆う積層工程と、
未硬化の前記樹脂を硬化させて充填部を形成する硬化工程と、を含む、
静電チャック装置の製造方法。
【請求項13】
前記挿入部品は、筒状の碍子であり、
前記充填工程の前に前記挿入部品の内部に詰め物を配置し、
前記硬化工程の後に前記詰め物を除去する、
請求項8~12の何れか一項に記載の静電チャック装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置、および静電チャック装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置においては、ウエハなどの板状試料をチャック面に固定する静電チャック装置が使用される。特許文献1には、静電チャックとアルミニウム製の冷却板とを有する半導体製造装置用部材が開示されている。この装置において、静電チャックと冷却板とは、熱硬化シートを介して接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電チャック部材とアルミニウム製の基台とを接着する接着層として接着シートを用いることで、接着層の厚さを均一にできる。これにより、静電チャック部材と基台との間の熱伝導を接合面において均一に近づけることができる。しかしながら、シート状の接着層は、基台側の凹凸に追従し難い。このため、基台に他部品を組み付ける場合の段差に起因して接着層との間に隙間が生じるという問題がある。接着層と基台との間に隙間が生じると、当該隙間を起点とする放電が生じる虞がある。
【0005】
本発明は、接着層の厚さを均一にしつつ基台と接着層との間に隙間が生じ難い静電チャック装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。以下の発明は2つ以上を互いに組み合わせてもよい。
【0007】
[1] 支持面、および前記支持面に開口する孔部が設けられる基台と、前記孔部に挿入される挿入部品と、積層方向一方側から前記支持面に積層される静電チャック部材と、前記積層方向において前記静電チャック部材と前記基台との間に位置する接着層と、を備え、前記接着層は、前記静電チャック部材と前記基台とを接着する接着シートと、前記挿入部品の前記積層方向一方側の端面と前記静電チャック部材との間の隙間に充填される充填部と、を有する、静電チャック装置。
【0008】
[2] 前記接着シートには、前記積層方向から見て前記孔部の開口を包含する貫通孔が設けられ、前記充填部は、前記貫通孔の内部に配置される、[1]に記載の静電チャック装置。
【0009】
[3] 前記挿入部品の前記端面は、前記支持面よりも前記積層方向他方側に位置し、前記充填部は、前記端面の前記積層方向一方側、かつ前記孔部の内部に配置され、前記接着シートは、前記充填部を前記積層方向一方側から覆う、[1]に記載の静電チャック装置。
【0010】
[4] 前記充填部は、流動性接着剤である、[1]~[3]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【0011】
[5] 前記接着シートと前記充填部とは、互いに異なる元素で構成される主鎖を有する高分子化合物である、[4]に記載の静電チャック装置。
【0012】
[6] 前記接着シートの外周面を覆う保護樹脂部を備え、前記保護樹脂部は、前記接着シートの構成材料とは異なる材料からなる、[1]~[5]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【0013】
[7] 前記挿入部品は、前記積層方向に延びる筒状の碍子である、[1]~[6]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【0014】
[8] 静電チャック部材、および基台を有する静電チャック装置の製造方法であって、前記基台の支持面に開口する孔部に、挿入部品を挿入する挿入工程と、前記支持面に接着シート、および前記静電チャック部材を積層し前記接着シートによって前記静電チャック部材と前記基台とを互いに固定する接着工程と、を有し、前記接着工程は、前記接着シートに、積層方向から見て前記孔部の開口を包含する貫通孔を形成する開口工程と、前記貫通孔の内部に未硬化の樹脂を充填する充填工程と、未硬化の前記樹脂を硬化させて充填部を形成する硬化工程と、を含む、静電チャック装置の製造方法。
【0015】
[9] 前記接着工程は、前記支持面に前記接着シートを積層した後に前記開口工程を行う工程である、[8]に記載の静電チャック装置の製造方法。
【0016】
[10] 前記接着工程は、前記開口工程を行った後に、前記支持面に前記接着シートを積層する工程である、[8]に記載の静電チャック装置の製造方法。
【0017】
[11] 静電チャック部材、および基台を有する静電チャック装置の製造方法であって、前記基台の支持面に接着シート、および前記静電チャック部材を積層し前記接着シートによって前記静電チャック部材と前記基台とを互いに固定する接着工程と、前記支持面に開口する孔部に、挿入部品を挿入する挿入工程と、硬化工程と、を有し、前記接着工程は、前記接着シートに、積層方向から見て前記孔部の開口を包含する貫通孔を形成する開口工程と、前記貫通孔の内部に未硬化の樹脂を充填する充填工程と、を含み、前記挿入工程は、前記充填工程が行われた後に行われ、前記硬化工程は、前記挿入工程の後に行われ、未硬化の前記樹脂を硬化させて充填部を形成する、静電チャック装置の製造方法。
【0018】
[12] 静電チャック部材、および基台を有する静電チャック装置の製造方法であって、前記基台の支持面に開口する孔部に、挿入部品を挿入する挿入工程と、前記支持面に前記接着シート、および前記静電チャック部材を積層し、前記接着シートによって前記静電チャック部材と前記基台とを互いに固定する接着工程と、を有し、前記挿入工程において、前記孔部の内周面と前記挿入部品の端面とによって構成される凹部が形成され、前記接着工程は、前記凹部の内部に未硬化の樹脂を充填する充填工程と、前記樹脂を前記接着シートで覆う積層工程と、未硬化の前記樹脂を硬化させて充填部を形成する硬化工程と、を含む、静電チャック装置の製造方法。
【0019】
[13] 前記挿入部品は、筒状の碍子であり、前記充填工程の前に前記挿入部品の内部に詰め物を配置し、前記硬化工程の後に前記詰め物を除去する、[8]~[12]の何れか一項に記載の静電チャック装置の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の1つの態様によれば、接着層の厚さを均一にしつつ基台との間に隙間が生じ難い静電チャック装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態の静電チャック装置を示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の静電チャック装置の部分断面模式図であり、碍子の上端面が支持面よりも下側に位置する場合の構造を示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態の静電チャック装置の部分断面模式図であり、碍子の上端面が支持面よりも上側に位置する場合の構造を示す。
【
図4】
図4は、比較例の静電チャック装置の断面の撮像写真である。
【
図5】
図5は、実施例の静電チャック装置の断面の撮像写真である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の静電チャック装置の製造方法のフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第1積層工程を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の開口工程を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の充填工程を示す模式図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に採用可能な変形例1の接着工程を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1実施形態に採用可能な変形例2の製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1実施形態に採用可能な変形例2の第1積層工程を示す模式図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に採用可能な変形例2の開口工程を示す模式図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に採用可能な変形例2の第2積層工程を示す模式図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に採用可能な変形例2の充填工程、および挿入工程を示す模式図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の静電チャック装置の部分断面模式図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の静電チャック装置の接着工程のフローチャートである。
【
図18】
図18は、第2実施形態の充填工程を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態の第1積層工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の静電チャック装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせて表示する場合がある。
【0023】
<第1実施形態>
(静電チャック装置)
図1は、第1実施形態の静電チャック装置1を示す断面模式図である。
静電チャック装置1は、静電チャック部材2と、基台3と、接着層55と、保護樹脂部60と、碍子(挿入部品)23と、給電端子16と、を備える。静電チャック部材2と基台3とは、接着層55を介して互いに積層されている。
【0024】
本明細書において、静電チャック部材2および基台3が積層される方向を積層方向と呼ぶ。さらに、基台3に対し静電チャック部材2が配置される側を積層方向一方側と呼び、その反対側と呼ぶ。また、以下の説明において、上下方向を積層方向として静電チャック装置1の各部を説明する。ただし、ここでの上下方向は、あくまで説明の簡素化のために用いる方向であって、静電チャック装置1の使用時の姿勢を限定するものではない。なお、上側が積層方向一方側に相当し、下側が積層方向他方側に相当する。
【0025】
静電チャック部材2は、誘電体基板11と、誘電体基板11の内部に位置する吸着電極13と、を有する。静電チャック部材2の上面には、ウエハWを吸着する載置面2aが設けられる。静電チャック部材2の載置面2aの外側には、ウエハWを囲むフォーカスリングが配置されていてもよい。
【0026】
誘電体基板11は、機械的に十分な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する複合焼結体からなる。誘電体基板11を構成する誘電体材料としては、機械的な強度を有し、しかも腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有するセラミックスが好適に用いられる。誘電体基板11を構成するセラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化アルミニウム(Al2O3)-炭化ケイ素(SiC)複合焼結体などが好適に用いられる。特に、高温での誘電特性、高耐食性、耐プラズマ性、耐熱性の観点から、誘電体基板11を構成する材料は、酸化アルミニウム(Al2O3)-炭化ケイ素(SiC)複合焼結体が好ましい。
【0027】
誘電体基板11は、平面視で円形の板状である。誘電体基板11は、ウエハWが載置される載置面2aと、載置面2aの反対側を向く裏面2bと、を有する。載置面2aには、例えば複数の突起部(図示略)が所定の間隔で形成されていてもよい。この場合、載置面2aは、複数の突起部の先端部でウエハWを支持する。
【0028】
吸着電極13は、誘電体基板11の内部に配置される。吸着電極13は、誘電体基板11の載置面2aに沿って板状に延びる。吸着電極13は、電圧を印加されることで、誘電体基板11の載置面2aにウエハWを保持する静電吸着力を生じさせる。吸着電極13には、吸着電極13に直流電圧を印加するための給電端子16が接続されている。
【0029】
吸着電極13は、絶縁性物質と導電性物質の複合体から構成される。吸着電極13に含まれる絶縁性物質は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化イットリウム(III)(Y2O3)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)およびSmAlO3からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。吸着電極13に含まれる導電性物質は、炭化モリブデン(Mo2C)、モリブデン(Mo)、炭化タングステン(WC)、タングステン(W)、炭化タンタル(TaC)、タンタル(Ta)、炭化ケイ素(SiC)、カーボンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
基台3には、静電チャック部材2を下側から支持する。基台3には、上側を向く支持面3aと下側を向く下面3bとが設けられる。支持面3aは、誘電体基板11の裏面2bと、接着層55を介して上下方向に対向する。基台3は、支持面3aにおいて静電チャック部材2を支持する。
【0031】
基台3の内部には、冷媒を循環させる流路3fが設けられる。流路3fに流れる冷媒としては、水、Heガス、N2ガス等などが採用される。流路3fは、支持面3aに沿って延びる。流路3f内の冷媒は、基台3全体を冷却するとともに、支持面3aを介して静電チャック部材2を冷却する。
【0032】
基台3は、平面視で円板状の金属部材である。基台3を構成する材料は、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限されるものではない。基台3を構成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)等の合金が好適に用いられる。基台3を構成する材料は、熱伝導性、導電性、加工性の観点からアルミニウム合金が好ましい。基台3における少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理またはポリイミド系樹脂による樹脂コーティングが施されていることが好ましい。また、基台3の全面が、前記のアルマイト処理または樹脂コーティングが施されていることがより好ましい。基台3にアルマイト処理または樹脂コーティングを施すことにより、基台3の耐プラズマ性が向上するとともに、異常放電が防止される。したがって、基台3の耐プラズマ安定性が向上し、また、基台3の表面傷の発生も防止することができる。基台3の躯体は、プラズマ発生用内部電極としても機能をも有する。基台3の躯体は、図示略の整合器を介して外部の高周波電源22に接続されている。
【0033】
基台3には、孔部17が設けられる。孔部17は、上下方向に沿って延びる。孔部17は、基台3を上下方向に貫通しており、基台3の支持面3aと下面3bとにそれぞれ開口する。孔部17は、例えば平面視で円形である。孔部17には、碍子23が挿入される。本実施形態の孔部17は、基台3を上下方向に貫通するが、孔部17は、少なくとも支持面3aに開口し、内部に碍子23が挿入されるものであれば、必ずしも基台3を貫通していなくてもよい。
【0034】
碍子23は、孔部17に挿入されて基台3に組み付けられる。すなわち、碍子23は、孔部17に挿入される挿入部品として機能する。碍子23は、上下方向(積層方向)に延びる筒状である。碍子23の内部には、給電端子16が配置される。碍子23の外周面は、孔部17の内側面に接着などの接合手段を用いて接合される。碍子23は、金属製の基台3と給電端子16とを絶縁する。
【0035】
碍子23は、例えばセラミックを形成材料とする。すなわち、碍子23は、絶縁性部材から構成される。これにより、碍子23は、ガス導入孔が異常放電の起点となることを抑制することができる。碍子23は、プラズマに対する耐久性を有する。碍子23を構成するセラミックスとしては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、サイアロン、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)から選択された1種または2種以上を含むセラミックスを採用できる。
【0036】
碍子23の上側(積層方向一方側)の端面(以下、上端面23a)は、基台3の支持面3aと略同一面上に配置される。しかしながら、上端面23aは、碍子23および基台3の寸法誤差、および組立誤差などに起因して、支持面3aに対し上下方向にずれ得る。上端面23aは、支持面3aよりも上側(積層方向一方側)に位置する場合と、支持面3aよりも下側(積層方向他方側)に位置する場合と、がある。
【0037】
給電端子16は、吸着電極13から下側に向かって延びる。給電端子16は、外部の電源21に接続されている。電源21は、吸着電極13に電圧を付与する。給電端子16の数、形状等は、吸着電極13の形態、すなわち単極型か、双極型かにより決定される。
【0038】
給電端子16は、誘電体基板11の第1孔17a、および接着層55の第2孔17bに通される。第1孔17aは、誘電体基板11の吸着電極13よりも下側の部分に設けられる。第1孔17aは、積層方向から見て円形である。第2孔17bは、第1孔17aに連なる。第2孔17bは、積層方向から見て円形である。また、第1孔17aおよび第2孔17bの内周面は、積層方向から見て碍子23の内周面に連なる。第1孔17aおよび第2孔17bの内径は、碍子23の内径と略等しく、給電端子16の外径よりも若干大きい。
【0039】
接着層55は、積層方向(上下方向)において静電チャック部材2と基台3との間に位置する。接着層55の厚さは、例えば20μm以上300μm以下、さらに好ましくは30μm以上200μm以下である。接着層55は、静電チャック部材2の裏面2b、および基台3の支持面3aに接着する。これにより、接着層55は、静電チャック部材2と基台3とを互いに固定する。なお、接着層55と静電チャック部材2との間、又は接着層55と基台3との間には、静電チャック部材2を加熱するヒータが配置されていてもよい。
【0040】
図2は、本実施形態の静電チャック装置1の部分断面模式図である。
接着層55は、接着シート51と充填部52とを有する。接着シート51、および充填部52は、耐熱性、および絶縁性を有する。接着シート51は、一様な厚さのシート状またはフィルム状の接着性樹脂からなる。一方で、充填部52は、未硬化の状態で流動性の接着性樹脂からなる。硬化後の充填部52は、接着シート51と同等の弾性を有する。
【0041】
接着シート51は、-20℃~150℃の温度範囲で耐熱性を有することが好ましい。本実施形態の接着シート51は、可塑性樹脂とエポキシ系の熱硬化性樹脂とを混合したポリマーアロイ材料である。本実施形態の接着シート51は、静電チャック部材2と基台3との間に挟み込んだ後に熱を付与して硬化させる。接着シート51の硬化後の貯蔵弾性率は、-70℃で3000MPa以上、150℃で0.1MPa以上であることが好ましい。
【0042】
接着シート51には、貫通孔51hが設けられる。貫通孔51hは、接着シート51を積層方向に貫通する。貫通孔51hは、積層方向から見て基台3の孔部17の開口を包含する。すなわち、貫通孔51hを積層方向から見て、孔部17の上側の開口の全体は、貫通孔51hの内側に配置される。本実施形態において、貫通孔51hの内径は、孔部17の内径と等しく、貫通孔51hの内周面は、孔部17の内周面に連なる。しかしながら、貫通孔51hの内径は、孔部17の内径よりも大きくてもよい。
【0043】
接着シート51は、静電チャック部材2と基台3とを接着する。接着シート51の上面51aは、積層方向から見て貫通孔51hが設けられる部分を除き、静電チャック部材2の裏面2bの全体に密着する。同様に、接着シート51の下面51bは、積層方向から見て貫通孔51hが設けられる部分を除き、基台3の支持面3aの全体に密着する。これにより、接着シート51は、静電チャック部材2と基台3とを互いに固定する。さらに、接着シート51は、静電チャック部材2および基台3と密着することで、静電チャック部材2と基台3との間の熱の伝達を円滑に行うことができる。
【0044】
本実施形態の充填部52は、流動性接着剤である。充填部52は、-20℃~150℃の温度範囲で耐熱性を有することが好ましい。充填部52としては、例えば、シリコン系樹脂が好適に採用できる。本実施形態において、充填部52は、熱硬化性の樹脂である。充填部52は、対象部分に充填された後に熱を付与して硬化させる。充填部52の硬化後の貯蔵弾性率は、-70℃で100MPa以上、150℃で0.1MPa以上であることが好ましい。接着シート51の熱伝導率に合わせるため、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素等のフィラーを適宜添加し、調整することもできる。
【0045】
充填部52は、接着シート51の貫通孔51hの内部であって、静電チャック部材2の裏面2bと碍子23の上端面23aとの間に配置される。本実施形態の碍子23の上端面23aは、基台3の支持面3aよりも下側に位置する。このため、碍子23を孔部17に挿入することで、孔部17の内周面と碍子23の上端面23aとによって構成される凹部が形成される。充填部52の一部は、この凹部の内部に侵入する。すなわち、本実施形態の充填部52の一部は、孔部17の内部に配置される。
【0046】
図3は、碍子23の上端面23aが、基台3の支持面3aよりも上側に位置する場合の静電チャック装置1Aの部分断面模式図である。この場合、碍子23の上端部は、貫通孔51hの内部に配置される。また、充填部52は、接着シート51の貫通孔51hの内部であって、静電チャック部材2の裏面2bと碍子23の上端面23aとの間に配置される。
【0047】
本実施形態において、充填部52は、未硬化において流動可能である。このため、充填部52は、碍子23の上端面23aと支持面3aとの積層方向の位置関係に関わらず、静電チャック部材2の裏面2bと碍子23の上端面23aとの間に隙間なく充填される。なお、硬化後の充填部52には、給電端子16が通される第2孔17bが設けられる。
【0048】
本実施形態において、充填部52は、外周面において接着シート51に密着し、上面52aにおいて静電チャック部材2の裏面2bに密着し、下面52bにおいて基台3の支持面3aに密着する。これにより、充填部52は、静電チャック部材2と基台3および碍子23との間の熱の伝達を円滑に行うことができる。
【0049】
本実施形態の充填部52は、流動性接着剤である。このため、充填部52は、接着シート51、静電チャック部材2の裏面2b、および基台3の支持面3aに接着する。本実施形態によれば、充填部52は、温度変化によって各部が膨張、又は収縮した場合であっても、静電チャック部材2、および碍子23から離間し難く密着を維持でき、各部の間の熱の伝達を行うことができる。また、充填部52が、接着剤であることで、碍子23を基台3、および静電チャック部材2に固定することができる。これにより、碍子23が、基台3から離脱することを抑制できる。
【0050】
本実施形態の接着層55は、接着シート51を有する。本実施形態によれば、一様な厚さのシート状の接着シート51によって、静電チャック部材2と基台3との間の熱の伝達を均一にすることができる。本実施形態の静電チャック装置1によれば、静電チャック部材2の載置面2aに搭載されるウエハWの面内の温度分布を均一に制御し易い。
【0051】
本実施形態の基台3の孔部17には、挿入部品としての碍子23が挿入される。碍子23の上端面23aは、基台3の支持面3aと積層方向にずれて位置されやすく、基台3の上端側には、碍子23と基台3との境界部に段差が生じやすい。このため、接着シート51によって碍子23の上端面23aを覆うと、接着シート51が段差形状に追随せずに接着層55と基台3、碍子23、又は静電チャック部材2との間に隙間が生じる虞がある。接着層と基台3、碍子23、又は静電チャック部材2との間に生じる隙間は、放電の起点となり得る。
【0052】
本実施形態によれば、充填部52が、碍子23の上端面23aと静電チャック部材2との間の隙間に充填される。これにより、接着層55に放電の起点となり得る隙間が設けられることを抑制することができ、静電チャック装置1の信頼性を高めることができる。
【0053】
本実施形態では、接着シート51に貫通孔51hが設けられる。このため、碍子23が基台3の支持面3aから上側に突出する場合であっても、接着シート51が碍子に乗り上げることがない。すなわち、碍子23の上端面23aが、支持面3aより上側に位置する場合であっても、下側に位置する場合であっても、充填部52を充填するための隙間を、碍子23の上側に限定することができる。このため、充填部52によって、隙間を確実に埋め込むことができ、静電チャック装置1の信頼性を高めることができる。
【0054】
図4は、本実施形態の静電チャック装置に対して上述の充填部52を設けない場合の比較例の断面の撮像写真である。
図5は、本実施形態の静電チャック装置の実施例の断面の撮像写真である。
【0055】
図4に示す比較例の静電チャック装置では、碍子23の上端面23aが基台3の支持面3aよりも下側に配置されることで上端面23aと支持面3aとの境界部に段差が設けられる。接着シート51は、この段差に沿って湾曲しており、これに伴い接着シート51の上面側で、接着シート51と静電チャック部材2との間に隙間Gが生じている。
【0056】
図5に示す実施例の静電チャック装置では、比較例と同様に上端面23aと支持面3aとの境界部に段差が設けられる。しかしながら、実施例の静電チャック装置では、碍子23と静電チャック部材2との間に、充填部52が配置されることで、接着層55に隙間が生じることが抑制されている。実施例と比較例とを比較することで、充填部52を有する接着層55では、隙間の形成を抑制できることが確認された。
【0057】
本実施形態の接着シート51の主成分は、例えば、エポキシ系樹脂である。また、本実施形態の充填部52の主成分は、シリコン系樹脂である。このため、接着シート51と充填部52とは、互いに異なる元素で構成される主鎖を有する高分子化合物である。接着シート51と充填部52とで、異なる元素で構成される主鎖の高分子化合部を採用することで、碍子23部分の耐電圧性が向上する上、長時間の使用においても、プラズマ等による浸食により、カーボン等の不純物の発生を抑えることができる。さらには、洗浄工程(S50)において、洗浄に用いた溶剤や、溶剤の蒸気から、接着シート51を保護することができる。
【0058】
図1に示すように、保護樹脂部60は、静電チャック装置1の外周面に設けられる。保護樹脂部60は、静電チャック部材2の外周面の全周に亘って設けられる。保護樹脂部60は、接着シート51の外周面に加えて、静電チャック部材2の外周面の下端部と、基台3の上端部と、を覆う。保護樹脂部60は、接着シート51の構成材料とは異なる材料からなる。
【0059】
保護樹脂部60は、-20℃~150℃の温度範囲で耐熱性を有することが好ましく、例えば、シリコン系樹脂が好適である。保護樹脂部60は、充填部52と同種の材料から構成されていてもよい。
【0060】
静電チャック装置1の製造方法では、機械加工によって生じるパーティクルなどを除去するために、仕上げ工程として洗浄工程が行われる。洗浄工程は、溶剤を用いて行われるが、溶剤の種類によっては、接着シート51を膨潤させる虞がある。本実施形態の静電チャック装置1は、接着シート51の外周面を覆う保護樹脂部60を備える。このため、保護樹脂部60の材料として、接着シート51と異なる材料からなる耐溶剤性の高い材料を選択することで、保護樹脂部60によって接着シート51を溶剤から保護することができる。
【0061】
なお、本実施形態において図示を省略するが、静電チャック部材2、基台3および接着層55には、これらを上下に貫通するガス導入孔が複数設けられていてもよい。ガス導入孔は、載置面2aに開口する。ガス導入孔は、ガス供給装置に繋がり、静電チャック部材2に載置されたウエハWに向かってヘリウム(He)などの冷却用のガスを供給する。ガス導入孔の基台3を貫通する部分には、筒状の碍子が挿入される。碍子の内部は、ガスの通過経路として機能する。上述した碍子23の上側の接着シート51の貫通孔51h、および充填部52の構成は、ガス導入孔に配置される碍子についても、同様に適用できる。
【0062】
さらに、本実施形態において図示を省略するが、静電チャック装置1は、プレッシャーピンを有していてもよい。プレッシャーピンは、載置面2aから上側に延び出てウエハWを持ち上げるために設けられる。静電チャック装置1がプレッシャーピンを有する場合、静電チャック部材2、基台3および接着層55には、プレッシャーピンが挿入されるピン挿入孔が設けられる。ピン挿入孔の基台3を貫通する部分には、筒状の碍子が挿入される。上述した碍子23の上側の接着シート51の貫通孔51h、および充填部52の構成は、ピン挿入孔に配置される碍子についても、同様に適用できる。
【0063】
(静電チャック装置の製造方法)
図6は、本実施形態の静電チャック装置1の製造方法のフローチャートである。
本実施形態の静電チャック装置1の製造方法は、主に、予備工程S10と、挿入工程S20と、接着工程S30と、保護樹脂部成形工程S40と、洗浄工程S50と、を有する。
【0064】
予備工程S10は、静電チャック部材2と基台3と碍子23とをそれぞれ用意する工程である。静電チャック部材2は、焼結によって一対のセラミック板を形成し、導電性の塗膜を挟んで重ね合わせてホットプレスすることで製造される。また、予備工程S10において、静電チャック部材2には、機械加工によって孔部17が設けられる。予備工程S10において、碍子23の内部には、詰め物23s(
図7参照)が詰め込まれる。
【0065】
挿入工程S20は、基台3の孔部17に碍子23を挿入する工程である。本実施形態において碍子23の外周面には、予め接着剤が塗布される。また、この接着剤は、碍子23を孔部17に挿入した後に硬化される。
【0066】
接着工程S30は、支持面3aに接着シート51、および静電チャック部材2を積層し接着シート51によって静電チャック部材2と基台3とを互いに固定する工程である。接着工程S30は、第1積層工程S31と、開口工程S32と、充填工程S33と、第2積層工程S34と、硬化工程S35と、後処理工程S36と、を有する。
【0067】
図7は、本実施形態の第1積層工程S31を示す模式図である。
図7に示すように、第1積層工程S31は、基台3の支持面3aに接着シート51を積層する工程である。接着シート51の外形は、予め基台3の支持面3aの形状に合わせてカットされている。第1積層工程S31において、作業者は、接着シート51と支持面3aとの間に空隙を生じさせることがないように支持面3aとの間の空気を除去しながら接着シート51を積層する。
【0068】
図8は、本実施形態の開口工程S32を示す模式図である。
図8に示すように、開口工程S32は、支持面3aに搭載された接着シート51に、積層方向から見て孔部17の開口を包含する貫通孔51hを形成する工程である。開口工程S32において、作業者は、例えばカッターのような先端に切刃が設けられた工具によって接着シート51の一部を円形に切り取る。作業者は、基台3の孔部17の縁部に沿って切刃を当てることで積層方向から見て孔部17と略同形状の貫通孔51hを接着シート51に形成できる。
【0069】
図9は、本実施形態の充填工程S33を示す模式図である。
図9に示すように、充填工程S33は、貫通孔51hの内部に未硬化の樹脂52pを充填する工程である。充填工程S33は、例えば未硬化の樹脂52pを吐出可能なディスペンサによって行われる。充填工程S33において未硬化の樹脂52pは、孔部17の上側の開口から充填される。充填工程S33を行う時点で、碍子23の内部には詰め物23sが配置されている。このため、未硬化の樹脂52pが、碍子23の内部に流入することを抑制する。
【0070】
充填工程S33において未硬化の樹脂52pの充填量は、孔部17の体積に対し若干過剰な量であることが好ましい。この場合、充填が完了した状態で、未硬化の樹脂52pは、孔部17の開口の上縁から若干溢れた状態なる。これにより、次工程の第2積層工程S34後に、孔部17内にボイドが残留することを確実に抑制することができる。
【0071】
第2積層工程S34は、接着シート51に静電チャック部材2を積層する工程である。第2積層工程S34において、作業者は、接着シート51と静電チャック部材2との間に空隙を生じさせることがないように静電チャック部材2を積層する。
【0072】
硬化工程S35は、接着シート51、および未硬化の樹脂52pを硬化させる工程である。本実施形態において、接着シート51、および樹脂52pは、熱硬化性の樹脂である。このため、硬化工程S35では、静電チャック装置1が加熱される。硬化工程S35によって未硬化の樹脂52pが硬化して充填部52が形成される。硬化工程S35を経ることで、静電チャック部材2と基台3とは、互いに固定される。
【0073】
後処理工程S36は、接着工程S30の仕上げを行う工程であり、主に給電端子16を通すための孔を形成する工程である。
図2に示すように、後処理工程S36において作業者は、碍子23の内部の詰め物23sを除去し、さらに充填部52に第2孔17b、誘電体基板11に第1孔17aを形成する。後処理工程S36を行うことで、接着工程S30が完了する。
【0074】
本実施形態の接着工程S30は、基台3の支持面3aに接着シート51を積層した後に開口工程S32を行う工程である。本実施形態の接着工程S30では、基台3の孔部17に合わせて接着シート51に貫通孔51hを形成することができる。このため、予め貫通孔51hを設けた接着シート51を支持面3aに積層する場合と比較して、貫通孔51hを位置合わせする必要がない。また、本実施形態によれば、積層時の組み立て誤差等を考慮して貫通孔51hを大きめに形成する必要がない。このため、貫通孔51hを最小の大きさとすることができ、接着シート51と静電チャック部材2および基台3との接触面積を広く確保することができる。結果的に、静電チャック部材2と基台3との間の熱伝達の均一性を高めることができる。
【0075】
図6に示す本実施形態の静電チャック装置1の製造方法において、保護樹脂部成形工程S40は、保護樹脂部60(
図1参照)を形成する工程である。保護樹脂部60として熱硬化性の樹脂を採用する場合、保護樹脂部成形工程S40において作業者は、静電チャック装置1の外周面に沿って未硬化の樹脂を塗布した後に温度を高めて樹脂を硬化させる。また、保護樹脂部60の硬化は、接着シート51、および充填部52の硬化と同時に行ってもよい。
【0076】
洗浄工程S50は、溶剤を用いて静電チャック部材2を洗浄する工程である。洗浄工程S50を経ることで、静電チャック装置1の表面に付着するパーティクルを除去することができる。以上の工程を経ることで、静電チャック装置1を製造することができる。
【0077】
本実施形態の静電チャック部材2の製造方法では、充填工程の前に碍子23の内部に詰め物23sを配置し、硬化工程の後に詰め物23sを除去する。これにより、碍子23の内部に、充填部52が流入し充填部の一部が碍子23の内部に残留ことを抑制できる。
【0078】
(静電チャック装置の製造方法の変形例1)
図10は、本実施形態に採用可能な変形例1の接着工程S30Aを示すフローチャートである。
図10に示すように、本変形例の接着工程S30Aは、開口工程S32Aを行った後に、支持面3aに接着シート51を積層する第1積層工程S31Aを行う工程である。本変形例によれば、開口工程において、金型を用いて複数の貫通孔51hを同時に形成することができる。これにより、開口工程S32Aを容易、かつ高速に行うことができる。なお、本変形例の接着工程S30Aを採用する場合であっても、上述の実施形態と同構造の静電チャック装置1が製造できる。
【0079】
(静電チャック装置の製造方法の変形例2)
図11は、本実施形態に採用可能な変形例2の静電チャック装置1の製造方法のフローチャートである。
本変形例の静電チャック装置1の製造方法は、主に、予備工程S10Bと、接着工程S30Bと、挿入工程S20Bと、硬化工程S21Bと、保護樹脂部成形工程S40と、洗浄工程S50と、を有する。本変形例の製造方法を採用する場合であっても、上述の実施形態と同構造の静電チャック装置1が製造できる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
予備工程S10Bは、静電チャック部材2と基台3と碍子23とをそれぞれ用意する工程である。本変形例の予備工程S10Bにおいて、碍子23の内部に詰め物を詰め込む工程は必ずしも必要ではない。
【0081】
接着工程S30Bは、支持面3aに接着シート51、および静電チャック部材2を積層し接着シート51によって静電チャック部材2と基台3とを互いに固定する工程である。本変形例の接着工程S30Bは、第1積層工程S31Bと、開口工程S32Bと、第2積層工程S33Bと、充填工程S34Bと、を有する。
【0082】
図12は、本変形例の第1積層工程S31Bを示す模式図である。
図12に示すように、第1積層工程S31Bは、基台3の支持面3aに接着シート51を積層する工程である。第1積層工程S31Bにおいて、作業者は、接着シート51と支持面3aとの間に空隙を生じさせることがないように支持面3aとの間の空気を除去しながら接着シート51を積層する。本変形例の接着工程S30Bは、基台3に設けられる孔部17に碍子23を挿入する前に行う。第1積層工程S31Bにおいて接着シート51は、孔部17の開口全体を上側から覆う。
【0083】
図13は、本変形例の開口工程S32Bを示す模式図である。
図13に示すように、開口工程S32Bは、支持面3aに搭載された接着シート51に、積層方向から見て孔部17の開口を包含する貫通孔51hを形成する工程である。なお、本変形例においても、開口工程S32Bを第1積層工程S31Bの前に行ってもよい。
【0084】
図14は、本変形例の第2積層工程S33Bを示す模式図である。
第2積層工程S33Bは、接着シート51に静電チャック部材2を積層する工程である。第2積層工程S33Bにおいて、作業者は、接着シート51と静電チャック部材2との間に空隙を生じさせることがないように静電チャック部材2を積層する。このとき、静電チャック部材2と接着シート51および基台3の保持力を高めるために、温度をかけながらプレスを行ってもよい。温度とプレス圧力は所望の保持力を得られる程度かければよい。例えば、70℃以上170℃以下の温度で、0.1MPa以上2.0MPa以下の圧力であれば好ましい。ただし、温度と圧力をかけすぎると接着シート51が変質するため、好ましくない。第2積層工程S33Bにおいて、静電チャック部材2は、接着シート51の貫通孔51hを覆う。
【0085】
図15は、本変形例の充填工程S34B、および挿入工程S20Bを示す模式図である。
充填工程S34Bは、貫通孔51hの内部に未硬化の樹脂52pを充填する工程である。また、挿入工程S20Bは、基台3の孔部17に碍子23を挿入する工程である。本変形例において碍子23の外周面には、予め接着剤が塗布される。
【0086】
硬化工程S21Bは、挿入工程S20Bの後に行われる。硬化工程S21Bは、接着シート51、および未硬化の樹脂52pに加えて碍子23の周囲に設けられる接着剤を硬化させる工程である。硬化工程S21Bでは、例えば、静電チャック装置1を加熱することで接着シート51、樹脂52p、および接着剤を硬化する。硬化工程S21Bによって未硬化の樹脂52pが硬化して充填部52が形成される。なお、硬化工程Sの後に、碍子23の内部に流入した樹脂52pを除去してもよい。硬化工程S21Bの後には、上述の実施形態と同様に、保護樹脂部成形工程S40、および洗浄工程S55が行われ、静電チャック装置1が完成する。
【0087】
本変形例の製造方法によれば、挿入工程S20Bを接着工程S30Bの後に行うことで、碍子23の内部に詰め物をすることなく、碍子23を取り付けることができる。なお、本変形例の製造方法を採用する場合であっても、碍子23に詰め物をしていてもよい。この場合、硬化工程S21Bの後に碍子23の内部に流入した樹脂52pを除去する必要がない一方で、碍子23の内部の詰め物を後工程で除去する必要が生じる。
【0088】
<第2実施形態>
(静電チャック装置)
図16は、第2実施形態の静電チャック装置101の部分断面模式図である。第2実施形態の静電チャック装置101は、第1実施形態と比較して主に接着層155の構成が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
上述の実施形態と同様に、接着層155は、接着シート151と充填部152とを有する。接着シート151は、一様な厚さのシート状またはフィルム状の接着性樹脂からなる。一方で、充填部152は、未硬化の状態で流動性の接着性樹脂からなる。
【0090】
本実施形態において、碍子23の上端面23aは、基台3の支持面3aよりも下側(積層方向他方側)に位置する。このため、碍子23を孔部17に挿入することで、孔部17の内周面と碍子23の上端面23aとによって構成される凹部が形成される。充填部152は、この凹部の内部に形成される。すなわち、充填部152は、碍子23の上端面23aの上側(積層方向一方側)、かつ孔部17の内部に配置される。
【0091】
なお、本実施形態では、例えば、碍子23の上下方向の寸法を基台3の上下方向の寸法より十分に小さくする。これにより、組立誤差や各部の寸法公差によらず、碍子23の上端面23aを支持面3aよりも下側とすることができる。
【0092】
接着シート151は、静電チャック部材2と基台3とを接着する。接着シート151は、充填部152を上側(積層方向一方側)から覆う。なお、硬化後の接着シート151には、給電端子16が通される第2孔17bが設けられる。
【0093】
本実施形態によれば、充填部152が、碍子23の上端面23aと静電チャック部材2との間の隙間に充填される。より具体的には、充填部152は、碍子23の上端面23aと接着シート151の下端面との間の隙間に充填される。このため、接着層155の隙間を確実に埋め込むことができ、接着層155からの放電を抑制して静電チャック装置101の信頼性を高めることができる。
【0094】
本実施形態によれば、接着シート151に貫通孔を設けることなく、接着層155の隙間を充填部152によって埋め込むことができる。このため、接着シート151への加工が不要となり静電チャック装置101の製造工程を簡素化することができる。
【0095】
(静電チャック装置の製造方法)
図17は、本実施形態の静電チャック装置101の製造方法における接着工程S130のフローチャートである。また、
図18は、本実施形態の充填工程S131を示す模式図であり、
図19は、本実施形態の第1積層工程S132を示す模式図である。
なお、第1実施形態と同様に、本実施形態の接着工程S130の前には、予備工程と挿入工程とが行われる。また、接着工程の後には、保護樹脂部成形工程と洗浄工程とが行われる。
【0096】
接着工程S130は、支持面3aに接着シート151、および静電チャック部材2を積層し接着シート151によって静電チャック部材2と基台3とを互いに固定する工程である。接着工程S130は、充填工程S131と、第1積層工程(積層工程)S132と、第2積層工程S133と、硬化工程S134と、後処理工程S135と、を有する。
【0097】
図18に示すように、接着工程S130に先立って行われる挿入工程において、孔部17の内周面と碍子23の上端面23aとによって構成される凹部101aが形成される。
【0098】
充填工程S131において未硬化の樹脂152pは、凹部101aの上側の開口から充填される。充填工程S131を行う時点で、碍子23の内部には詰め物23sが配置されている。このため、未硬化の樹脂152pが、碍子23の内部に流入することを抑制できる。
【0099】
充填工程S131において未硬化の樹脂152pの充填量は、凹部101aの体積に対し若干過剰な量であることが好ましい。この場合、充填が完了した状態で、未硬化の樹脂152pは、凹部101aの開口の上縁から若干溢れた状態とされる。これにより、次工程の第1積層工程S132後に、凹部101a内にボイドが残留することを確実に抑制することができる。
【0100】
図19に示すように、第1積層工程S132は、基台3の支持面3aに接着シート151を積層する工程である。これにより、第1積層工程S132では、樹脂152pを接着シート151で覆う。第1積層工程S132において、作業者は、接着シート151と支持面3aとの間に空隙を生じさせることがないように支持面3aとの間の空気を除去しながら接着シート151を積層する。
【0101】
第2積層工程S133は、接着シート151に静電チャック部材2を積層する工程である。第2積層工程S133において、作業者は、接着シート151と静電チャック部材2との間に空隙を生じさせることがないように静電チャック部材2を積層する。
【0102】
硬化工程S134は、接着シート151、および未硬化の樹脂152pを硬化させる工程である。硬化工程S134によって未硬化の樹脂152pが硬化して充填部152が形成される。硬化工程S134を経ることで、静電チャック部材2と基台3とは、互いに固定される。
【0103】
後処理工程S135は、接着工程S130の仕上げを行う工程であり、主に給電端子16を通すための孔を形成する工程である。後処理工程S135を行うことで、接着工程S130が完了する。後処理工程S135において作業者は、碍子23の内部の詰め物23sを除去し、さらに充填部152、および接着シート151に、給電端子16を通すための孔を形成する。
【0104】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0105】
例えば、上述の実施形態において、充填部を構成する樹脂材料が接着剤である場合について説明した。しかしながら、充填部は、必ずしも接着作用を有するものでなくてもよい。また、上述の実施形態において、接着シートが熱硬化性である場合について説明したが、接着シートはその他の構成であってもよい。加えて、上述の実施形態において、基台の孔部に挿入される挿入部品が碍子である場合について説明したが、挿入部品の構成は本実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0106】
1,1A,101…静電チャック装置、2…静電チャック部材、3…基台、3a…支持面、17…孔部、23…碍子(挿入部品)、23s…詰め物、51,151…接着シート、51h…貫通孔、52,152…充填部、52p,152p…樹脂、55,155…接着層、60…保護樹脂部、101a…凹部、G…隙間、S20…挿入工程、S30,S130,S30A…接着工程、S32,S32A…開口工程、S33,S131…充填工程、S35,S134…硬化工程、S132…第1積層工程(積層工程)