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特開2023-172162チャックテーブル及びドライ研磨装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172162
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】チャックテーブル及びドライ研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20231129BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20231129BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20231129BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20231129BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B37/10
B24B37/12 D
B24B55/06
B23Q11/00 M
B23Q11/00 N
H01L21/304 621Z
H01L21/304 622P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083780
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】禹 俊洙
【テーマコード(参考)】
3C011
3C034
3C047
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C011BB03
3C011BB04
3C011BB12
3C034AA07
3C034BB73
3C034BB87
3C034BB93
3C034CA01
3C034CB11
3C034DD10
3C047FF08
3C047FF19
3C047HH15
3C158AA09
3C158AB04
3C158AC02
3C158AC05
3C158BB02
3C158BB06
3C158BB09
3C158CB01
3C158CB03
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB09
5F057AA21
5F057CA14
5F057DA02
5F057DA11
5F057DA38
5F057FA13
5F057FA36
5F057GB02
(57)【要約】
【課題】ドライ研磨を継続的に長時間行っても、研磨屑によるウェーハの傷つきを確実に防ぐこと。
【解決手段】チャックテーブル10の枠体10Aの上面に複数の吸引口12aを環状に配置するとともに、該吸引口12aを吸引源9に連通させる。また、チャックテーブル10の保持面11aに保持されたウェーハWの上面に接触して該ウェーハWから径方向外方にはみ出した研磨面を有して回転する研磨パッド45によってウェーハWをドライ研磨する研磨ユニット40と、制御部80を備えるドライ研磨装置1において、チャックテーブル10の吸引口12aを吸引源9に連通させる吸引路15~17と、該吸引路15~17に配置されて当該吸引路15~17を開閉するバルブV4とを設け、制御部80は、バルブV4を開いて吸引口12aを吸引源9に連通させた状態で、保持面11aに保持されたウェーハWの上面を研磨パッド45でドライ研磨する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持する保持面を有するポーラス部材と、該保持面を露出させた状態で該ポーラス部材を収容する枠体を備えるチャックテーブルであって、
該枠体の上面に複数の吸引口を該保持面の外周を囲むように環状に配置するとともに、該吸引口を吸引源に連通させた、チャックテーブル。
【請求項2】
該枠体の上面に環状溝を該保持面の外周を囲むように形成し、該環状溝に該吸引口を配置した、請求項1記載のチャックテーブル。
【請求項3】
請求項1または2記載のチャックテーブルを配置し回転する保持手段と、該保持面に保持されたウェーハの上面に接触して該ウェーハから径方向外方にはみ出した研磨面を有して回転する研磨パッドによってウェーハをドライ研磨する研磨ユニットと、制御部とを備えるドライ研磨装置であって、
該チャックテーブルの該吸引口を該吸引源に連通させる吸引路と、該吸引路に配置されて該吸引路を開閉するバルブと、を備え、
該制御部は、
該バルブを開いて該吸引口を該吸引源に連通させた状態で、該保持面に保持されたウェーハの上面を該研磨パッドで研磨する、ドライ研磨装置。
【請求項4】
該研磨パッドのウェーハから径方向外方にはみ出した研磨面に向かってエアを噴射するエアノズルを備える、請求項3記載のドライ研磨装置。
【請求項5】
該研磨ユニットによってウェーハをドライ研磨する研磨位置と該保持面に対してウェーハを搬入及び搬出する搬送位置とに該チャックテーブルを移動させる移動機構と、
該移動機構によって該搬送位置に移動した該チャックテーブルに洗浄水を供給する洗浄水ノズルと、を備え、
該制御部は、
該搬送位置に移動した該チャックテーブルを回転させることと、該吸引口に該洗浄水ノズルから洗浄水を供給することと、該バルブを開いて該吸引口を該吸引源に連通させることとを制御し、洗浄水を該吸引口から吸引して該吸引口及び該吸引路を洗浄する、請求項3または4記載のドライ研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを保持するチャックテーブルと該チャックテーブルに保持されたウェーハをドライ研磨するためのドライ研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSIなどの半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイスの小型化と軽量化のために、ウェーハの裏面が研削されて該ウェーハが所定の厚さまで薄肉化されている。このウェーハの研削は、研削砥石を高速で回転させながらウェーハの裏面(加工状態においては、上面)に押圧することによって行われている。このような研削方式によってウェーハの裏面を研削すると、該ウェーハの裏面(研削面)に研削痕が残存し、この研削痕がウェーハの抗折強度を低下させる原因となる。
【0003】
そこで、研磨装置によってウェーハの裏面(研削面)を研磨して研削痕を除去することが行われている。ここで、研磨装置としては、研磨液(スラリー)を用いないでウェーハを研磨(ドライポリッシュ)するドライ研磨装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなドライ研磨装置においては、砥粒を含んで乾燥した研磨パッドをウェーハに押し付けることによって該ウェーハが研磨される。
【0004】
このようなドライ研磨装置によるウェーハのドライ研磨においては、研磨パッドの研磨面には、ウェーハに接触する部分とウェーハから径方向外方にはみ出している部分とがあり、この研磨面のウェーハからはみ出した部分にエアを噴射することによって、該研磨面のはみ出し部分に付着している研磨屑を除去するようにしている。このため、ウェーハをドライ研磨する加工室内には、研磨屑が飛散しており、この飛散した研磨屑がチャックテーブルに付着して塊となる。そして、塊となった研磨屑は、チャックテーブルの回転による遠心力によって該チャックテーブルから離脱し、ウェーハの上面と研磨パッドの研磨面との間に進入してウェーハの上面を傷つけることがある。
【0005】
そこで、特許文献1には、加工室内を集塵機によって吸引して該加工室内に気流を発生させ、この気流によって研磨屑のチャックテーブルへの付着を防ぐようにしたドライ研磨装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-048339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案されているように、加工室内を集塵機によって吸引して該加工室内に気流を発生させても、研磨加工を継続的に長時間行うと、チャックテーブルや加工室内壁に研磨屑が付着し、付着した研磨屑が離脱してウェーハの上面を傷つけることがある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ドライ研磨を継続的に長時間行っても、研磨屑によるウェーハの傷つきを確実に防ぐことができるチャックテーブル及びドライ研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1発明は、ウェーハを保持する保持面を有するポーラス部材と、該保持面を露出させた状態で該ポーラス部材を収容する枠体を備えるチャックテーブルであって、該枠体の上面に複数の吸引口を該保持面の外周を囲むように環状に配置するとともに、該吸引口を吸引源に連通させたことを特徴とする。
【0010】
また、第2発明は、上記チャックテーブルを配置し回転する保持手段と、該保持面に保持されたウェーハの上面に接触して該ウェーハから径方向外方にはみ出した研磨面を有して回転する研磨パッドによってウェーハをドライ研磨する研磨ユニットと、制御部とを備えるドライ研磨装置であって、該チャックテーブルの該吸引口を該吸引源に連通させる吸引路と、該吸引路に配置されて該吸引路を開閉するバルブと、を備え、該制御部は、該バルブを開いて該吸引口を該吸引源に連通させた状態で、該保持面に保持されたウェーハの上面を該研磨パッドでドライ研磨することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、研磨パッドによるウェーハのドライ研磨が行われている際には、制御部は、バルブを開いてチャックテーブルの上面に開口する複数の吸引口を吸引源に連通させるため、ドライ研磨によって発生する研磨屑が複数の吸引口からエアと共に吸引される。このため、ウェーハのドライ研磨によって発生した研磨屑の加工室内での飛散を抑制することができるとともに、チャックテーブルへの研磨屑の付着を防ぐことができる。したがって、ウェーハに対するドライ研磨を継続して長時間行っても、チャックテーブルに研磨屑が付着して塊となることがなく、塊となった研磨屑が研磨パッドとウェーハとの間に入り込んでウェーハの研磨面を傷つけるという問題の発生が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るドライ研磨装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2】本発明に係るチャックテーブルの枠体を上面側から見た斜視図である。
図3】本発明に係るチャックテーブルの枠体を下面側から見た斜視図である。
図4】本発明に係るドライ研磨装置の研磨加工中の状態を示す破断部分側面図である。
図5】本発明に係るドライ研磨装置の研磨加工中におけるウェーハとチャックテーブル及び研磨パッドの位置関係を示す平面図である。
図6】本発明に係るドライ研磨装置の洗浄中の状態を示す破断部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
[ドライ研磨装置の構成]
まず、本発明に係るドライ研磨装置1の構成について説明する。なお、以下の説明においては、図1に矢印にて示す方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0015】
図1に示すドライ研磨装置1は、被研磨物である薄い円板状のウェーハW(図4及び図5参照)をドライ研磨する装置であって、ウェーハWを保持するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10とこれを回転駆動する回転機構21を備える保持手段20と、チャックテーブル10をY軸方向(前後方向)に移動させる移動機構30と、チャックテーブル10に保持されたウェーハWをドライ研磨する研磨ユニット40と、該研磨ユニット40をZ軸方向(上下方向)に昇降動させる昇降機構50と、研磨ユニット40の研磨パッド45に向けてエアを噴射するエアノズル60と、ドライ研磨後にウェーハWが取り除かれたチャックテーブル10の上面に向けて洗浄水を噴射する洗浄水ノズル70と、制御部80を主要な構成要素として備えている。
【0016】
ここで、ウェーハWは、単結晶のシリコン母材で構成されており、図4に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された不図示の保護テープによって保護ざれている。そして、ウェーハWは、その表面(図4においては下面)がチャックテーブル10に保持され、裏面(図1においては上面)が研磨ユニット40によってドライ研磨される。
【0017】
次に、ドライ研削装置1を構成する主要な構成要素であるチャックテーブル10と、保持手段20と、移動機構30と、研磨ユニット40と、昇降機構50と、エアノズル60と、洗浄水ノズル70及び制御部80の構成を以下に順次説明する。
【0018】
(チャックテーブル)
本発明に係るチャックテーブル10は、図4に示すように、円板状の上下の枠体10Aと基体10Bとを連結一体化するとともに、枠体10Aの中央部に形成された円形の凹部10a(図2参照)に円板状のポーラス部材11を組み込んで構成されている。ここで、ポーラス部材11は、多孔質のセラミックなどで構成されており、その枠体10Aに露出する上面が円板状のウェーハWを吸引保持する保持面11aを構成している。
【0019】
そして、チャックテーブル10の枠体10Aの上面の外周部分には、図2に示すように、円環状の環状溝10bが保持面11aの外周を囲むように形成されており、この環状溝11bには、複数(図示例では、12)の円形の吸引口12aが周方向に等角度ピッチ(図示例では、30°ピッチ)で開口している。ここで、図4に示すように、チャックテーブル10の外周部の複数箇所(吸引口12aが開口する箇所)には、複数(図示例では、12)の円孔状の吸引路12が上下方向に形成されており、各吸引路12の上端は、枠体12Aに形成された環状溝10bに吸引口12aとしてそれぞれ開口している。したがって、枠体10Aの下面の外周部には、図3に示すように、複数(図示例では、12)の吸引路12が円孔状に開口している。なお、吸引口12aと吸引路12の数は、複数であれば任意であるが、10以上であることが望ましい。
【0020】
また、図2及び図3に示すように、チャックテーブル10の枠体10Aの外周部に形成されたフランジ部12A1には、複数(図示例では、8個)の円孔状のボルト孔13が周方向に等角度ピッチ(図示例では、45°ピッチ)で上下方向に貫設されており、図4に示すように、枠体10Aは、これに形成された複数のボルト孔13(図2及び図3参照)に挿通するボルト14を基体10Bに形成された不図示のネジ孔にねじ込むことによって基体10Bに締結されて両者が一体化されてチャックテーブル10が構成されている。
【0021】
(保持手段)
図4に示す保持手段20は、前記チャックテーブル10と、該チャックテーブル10をその垂直な中心軸回りに所定の速度で回転駆動する回転機構21を含んで構成されている。
【0022】
図4に示すように、チャックテーブル10は、ロータリジョイント22から垂直上方に延びる回転軸23の上端に水平に取り付けられており、この回転軸23は、軸受(ボールベアリング)29によって支持フランジ39に回転可能に支持されている。そして、この回転軸23には、大径の従動プーリ24が結着されている。また、移動機構30に設けられた後述のスライダ31には、駆動源である電動モータ25がステー28によって縦置き状態で固定されており、該電動モータ25から垂直上方に延びる出力軸(モータ軸)25aの上端には、従動プーリ24よりも小径の駆動プーリ26が結着されており、この駆動プーリ26と従動プーリ24には、無端状のタイミングベルト27が巻装されている。そして、電動モータ25と駆動プーリ26、従動プーリ24及びタイミングベルト27によって回転機構21が構成されている。
【0023】
ところで、図4に示すように、チャックテーブル10と回転軸23及びロータリジョイント22の軸中心には、円孔状の垂直な連通路2が形成されており、この連通路2の上端は、チャックテーブル10のポーラス部材11の下面中心部に開口している。また、連通路2の下端は、ロータリジョイント22に横方向(水平方向)に形成された連通路3に接続されており、連通路3には配管4が連結されている。
【0024】
そして、配管4からは3本の分岐管4a,4b,4cがそれぞれ分岐しており、分岐管4aは、バルブV1を介して真空ポンプなどの吸引源5に接続されている。また、分岐管4bは、バルブV2を介してエアコンプレッサなどのエア供給源6に接続されており、分岐管4cは、バルブV3を介してウォータポンプなどの水供給源7に接続されている。ここで、各バルブV1~V3は、制御部80に電気的に接続されており、その開閉動作が制御部80によって制御される。なお、配管4の途中には、圧力計8が取り付けられている。
【0025】
また、チャックテーブル10と回転軸23及びロータリジョイント22には、吸引路15が垂直に形成されており、該吸引路15の上端は、チャックテーブル10(基体10B)に径方向に沿って放射状に延びる複数(本実施の形態では、12)の吸引路16にそれぞれ接続されており、各吸引路16は、チャックテーブル10の外周部に垂直に形成された複数(本実施の形態では、12)の前記吸引路12にそれぞれ接続されている。
【0026】
他方、吸引路15の下端は、ロータリジョイント22に横方向(水平方向)に形成された吸引路17に接続されており、吸引路17には配管18が連結されている。そして、配管18は、バルブV4を介して吸引源9に接続されている。なお、バルブV4は、制御部80に電気的に接続されている。したがって、制御部80によってバルブV4の開閉動作が制御されると、チャックテーブル10の環状溝10bに開口する複数の吸引口12aが吸引源9に選択的に連通して真空引きされる。なお、吸引源9は、水と気体とを吸引できる真空ポンプ、エアを供給して負圧を生成するエジェクタ、または、気体を吸引する排気ポンプでもよい。ここで、排気ポンプを用いる際は、チャックテーブルと排気ポンプとの間に、気体と液体とを分離するための気液分離ユニットを配置するとよい。
【0027】
(移動機構)
本実施の形態に係るドライ研磨装置1は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100を備えており、このベース100の内部には、矩形ブロック状の内部ベース101が収容されている。そして、この内部ベース101上には、チャックテーブル10とこれの保持面11aに吸引保持されたウェーハWをY軸方向(前後方向)に沿って移動させるための移動機構30が設けられている。具体的には、移動機構30は、チャックテーブル10を図1に示す加工位置(研磨ユニット40によってウェーハWをドライ研磨する位置)P1と搬送位置(チャックテーブル10の保持面11aに対してウェーハWを搬入及び搬出する位置)P2との間で移動させる。
【0028】
上記移動機構30は、ブロック状のスライダ31を備えており、このスライダ31は、Y軸方向(前後方向)に沿って互いに平行に配置された左右一対のガイドレール32に沿ってY軸方向に摺動可能である。したがって、このスライダ31に支持されたチャックテーブル10と回転機構21を備える保持手段20(図4参照)は、スライダ31と共にY軸方向に沿って摺動可能である。
【0029】
そして、内部ベース101上の左右一対のガイドレール32の間には、Y軸方向(前後方向)に延びる回転可能なボールネジ軸33が配設されており、該ボールネジ軸33のY軸方向一端(図1の左端)は、駆動源である正逆転可能な電動モータ34に連結されている。また、ボールネジ軸33のY軸方向他端(図1の右端)は、内部ベース101上に立設された軸受35によって内部ベース101に回転可能に支持されている。なお、このボールネジ軸33には、スライダ31から下方に向かって突設された一対の不図示のナット部材がそれぞれ螺合している。
【0030】
したがって、電動モータ34によってボールネジ軸33を正逆転させると、このボールネジ軸33に螺合する不図示のナット部材がスライダ31と共にボールネジ軸33に沿ってY軸方向(前後方向)に摺動するため、このスライダ31と共にチャックテーブル10もY軸方向に沿って一体的に移動する。この結果、チャックテーブル10の保持面11a(図1及び図2参照)に保持された被研磨物であるウェーハWと図4に示す保持手段20もY軸方向に沿って一体に移動する。
【0031】
また、図1に示すように、ベース100の上面には、Y軸方向に長い矩形の開口部36が形成されており、この開口部36にはチャックテーブル10が臨んでいる。そして、ベース100の上面に開口する開口部36のチャックテーブル10の周囲は、矩形プレート状のカバー37によって覆われており、開口部36のカバー37の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー37と共に移動して伸縮する蛇腹状の一対の伸縮カバー38によってそれぞれ覆われている。したがって、チャックテーブル10がY軸方向のどの位置にあっても、開口部36が伸縮カバー38によって常に覆われており、開口部36からベース100の内部への異物の侵入が防がれる。
【0032】
(研磨ユニット)
研磨ユニット40は、ホルダ41に固定されたスピンドルモータ42と、該スピンドルモータ42によって回転駆動される垂直なスピンドル43と、該スピンドル43の下端に取り付けられた円板状のマウント44と、該マウント44の下面に着脱可能に装着されたル31の下端に接続されたマウント34と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された円板状の研磨パッド45とを備えている。ここで、研磨バッド45は、円板状の基台45aの下面に、砥粒を含んだ不織布やウレタンなどの円板状のパッド材45bを接着して構成されている。
【0033】
ここで、研磨パッド45は、図5に示すように、チャックテーブル10の保持面11a(図1及び図2参照)に保持されたウェーハWを上方から覆う面積を有している。具体的には、研磨パッド45の外径φDは、ウェーハWの外径φdよりも大きく設定されており(φD>φd)、該研磨パッド45は、ウェーハWの中心O1から図5に示すεだけ偏心した中心O2を軸として回転駆動される。したがって、研磨パッド45の研磨面には、チャックテーブル10の保持面11aに保持されたウェーハWからはみ出す平面視三日月状のはみ出し部(斜線を付した部分)45Aが形成される。
【0034】
また、図1に示すように、スピンドルモータ42の上部には、ドライ研磨中のウェーハWの厚みを光学的に測定するための厚み測定器46が設けられている。
【0035】
ところで、図1に示すように、ベース100上の加工位置P1には、矩形ボックス状のケース90が設置されており、図4に示すように、このケース90内の加工室S内にドライ研磨中のウェーハWとこれを保持するチャックテーブル10及び研磨パッド45が収容されている。
【0036】
(昇降機構)
図1に示すように、ベース100の上面の+Y軸方向端部(後端部)上には、矩形ボックス状のコラム102が垂直に立設されており、このコラム102の-Y軸方向端面(前面)に昇降機構50が設けられている。この昇降機構50は、研磨ユニット40をチャックテーブル10の保持面11aに対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降動させるものであって、ホルダ41の背面に取り付けられた矩形プレート状の昇降板51を、ホルダ41及び該ホルダ41に保持されたスピンドルモータ42やスピンドル43、研磨パッド45などと共に左右一対のガイドレール52に沿ってZ軸方向(上下方向)に昇降動させる。ここで、左右一対のガイドレール52は、コラム102の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0037】
そして、図1に示すように、左右一対のガイドレール52の間には、回転可能なボールネジ軸53がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ軸53の上端は、駆動源である正逆転可能な電動モータ54に連結されている。また、ボールネジ軸53の下端は、不図示の軸受によってコラム102に回転可能に支持されており、このボールネジ軸53には、昇降板51の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0038】
(エアノズル)
エアノズル60は、研磨ユニット40によるウェーハWのドライ研磨中において、研磨パッド45の研磨面のウェーハWの外周から径方向外方へとはみ出す平面視三日月状のはみ出し部45A(図5参照)に向けてエアを噴射するためのものであって、チャックテーブル10の後方(+Y軸側)に垂直に立設されている。このエアノズル60は、チャックテーブル10と共に前後方向(Y軸方向)に沿って移動可能である。
【0039】
上記エアノズル60の上面には、図5に示すように、円孔状の3つの噴射口60aがウェーハW(研磨パッド45)の径方向(図5の左右方向)に沿って開口している。そして、図4に示すように、エアノズル60は、配管61によってエアコンプレッサなどのエア供給源62に接続されており、配管61の途中にはバルブV5が設けられている。なお、バルブV5は、制御部80に電気的に接続されており、その開閉動作が制御部80によって制御される。
【0040】
(洗浄水ノズル)
洗浄水ノズル70は、研磨ユニット40によるドライ研磨が終了して図1に示す搬送位置P2へと搬送されたウェーハWとチャックテーブル10に対して純水などの洗浄水を噴射してこれらに付着している研磨屑を除去するものであって、逆L字状に屈曲するパイプ材で構成されている。この洗浄水ノズル70は、図1に示すように、ベース100の上面の開口部36の横(-X軸側)に立設されており、その噴射口70aが右方(+X軸方向)に向かって開口している。
【0041】
そして、図6に示すように、水噴射ノズル70は、配管71によってウォータポンプなどの水供給源72に接続されており、配管71の途中にはバルブV6が接続されている。ここで、バルブV6は、制御部80に電気的に接続されており、その開閉動作が制御部80によって制御される。
【0042】
(制御部)
制御部80は、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリなどを備えている。この制御部80は、複数のバルブV1~V6の開閉動作の他、回転機構21の電動モータ25、移動機構30の電動モータ34、研磨ユニット40のスピンドルモータ42、昇降機構50の電動モータ54などの駆動を制御する機能を果たす。
【0043】
[ドライ研磨装置の作用]
次に、以上のように構成されたドライ研磨装置1によるウェーハWのドライ研磨について説明する。
【0044】
ウェーハWをドライ研磨する際には、該ウェーハWを図1に示す搬送位置P2に位置するチャックテーブル10の保持面11a上にその表面を下にして載置する。すると、制御部80は、図4に示すバルブV1を開き、チャックテーブル10のポーラス部材11を真空引きする。すなわち、バルブV1を開くと、ポーラス部材11内のエアが連通路2,3と配管4及び分岐管4aを経て吸引源5によって吸引されるため、ポーラス部材11に負圧が発生し、該ポーラス部材11の上面(保持面11a)上に載置されているウェーハWが負圧によって保持面11a上に吸引保持される。なお、このとき、他のバルブV2~V6は、閉じられている。
【0045】
上記状態から図1に示す移動機構30を駆動してチャックテーブル10を搬送位置P2から+Y軸方向(後方)に移動させ、該チャックテーブル10とこれに吸引保持されているウェーハWを加工位置P1へと移動させて研磨ユニット40の研磨パッド45の下方に位置決めする。すなわち、電動モータ34が起動されてボールネジ軸33が回転すると、このボールネジ軸33に螺合する不図示のナット部材が取り付けられたスライダ31がチャックテーブル10などと共に左右一対のガイドレール32に沿って+Y軸方向に摺動するため、チャックテーブル10の保持面11aに保持されているウェーハWが加工位置P1において研磨ユニット40の研磨パッド45の下方に位置決めされる。
【0046】
また、図4に示す回転機構21の電動モータ25を駆動してチャックテーブル10を所定の回転速度(例えば、300rpm)で図示矢印方向(反時計方向)に回転させる。すなわち、電動モータ25が駆動されると、該電動モータ25の出力軸25aの回転は、駆動プーリ26とタイミングベルト27及び従動プーリ24を経て減速されながら回転軸23からチャックテーブル10へと伝達され、該チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWが所定の速度で回転駆動される。これと同時に、研磨ユニット40のスピンドルモータ42を起動して研磨パッド45を図示矢印方向(ウェーハWの回転方向と同じ反時計方向)に所定の速度(例えば、1000rpm)で回転させる。
【0047】
上述のように、ウェーハWと研磨パッド45がそれぞれ回転している状態で、昇降機構50を駆動して研磨パッド45を-Z軸方向に下降させる。すなわち、電動モータ54が駆動されてボールネジ軸53が回転すると、このボールネジ軸53に螺合する不図示のナット部材が設けられた昇降板51が研磨パッド45などと共に-Z軸方向に下降する。すると、図4及び図5に示すように、研磨パッド45の下面(研磨面)がウェーハWの上面(裏面)の全面に接触する。すると、この研磨パッド45によってウェーハWの上面がドライ研磨され、該ウェーハWの上面に残存する研削痕が除去されて該ウェーハWの抗折強度が高められる。
【0048】
ここで、本実施の形態においては、上述のように研磨パッド45によるウェーハWの上面のドライ研磨が行われている際には、制御部80は、バルブV4,V5を共に開く。すると、エア供給源62からの圧縮エアが配管61を通ってエアノズル60の噴射口60aから研磨パッド45のウェーハWの外周から径方向外方へとはみ出る平面視三日月状のはみ出し部45A(図5参照)の下面(研磨面)に向けて噴射される。すると、ウェーハWのドライ研磨によって発生して研磨パッド45の下面(研磨面)のはみ出し部45Aに付着した研磨屑が圧縮エアによって吹き飛ばされて研磨パッド45の下面(研磨面)から除去される。
【0049】
すると、上述のように研磨パッド45の下面(研磨面)から除去された研磨屑は、チャックテーブル10の上面に開口する複数(本実施の形態では、12)の吸引口12aからエアと共に吸引され、この吸引された研磨屑とエアは、吸引路12,16,15,17及び配管18を順次経て吸引源9に吸い込まれる。このため、ウェーハWのドライ研磨によって発生した研磨屑の加工室S内での飛散を抑制することができるとともに、チャックテーブル10への研磨屑の付着を防ぐことができる。したがって、ウェーハWに対するドライ研磨を継続して長時間行っても、チャックテーブル10に研磨屑が付着して塊となることがなく、塊となった研磨屑が研磨パッド45とウェーハWとの間に入り込んでウェーハWの研磨面を傷つけるという問題の発生が防がれる。
【0050】
上述のように、図1に示す加工位置P1でのウェーハWのドライ研磨が終了すると、制御部80は、移動機構30を駆動してチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWを搬送位置P2へと移動させる。そして、ドライ研磨が終了したウェーハWがチャックテーブル10から取り外されると、制御部80は、図6に示すバルブV6を開く。ずると、水供給源72からの洗浄水が配管71を経て洗浄水ノズル70へと供給され、該洗浄水ノズル70の噴射口70aから洗浄水がチャックテーブル10の上面に向けて噴射され、該チャックテーブル10の上面が洗浄水によって洗浄される。なお、このとき、バルブV4を開き、チャックテーブル10の洗浄に供された洗浄水をチャックテーブル10の上面に開口する複数の吸引口12aから吸引して吸引路12,16,15,17及び配管18を経て吸引源9へと流すようにすれば、吸引口12aと連通路12,16,15,17を洗浄水によって洗浄することができる。
【0051】
また、洗浄水ノズル70から噴射される洗浄水によってチャックテーブル10を洗浄しているときに、水供給源7からの水、或いは水供給源7からの水とエア供給源6からのエアとが混合された二流体をチャックテーブル10の保持面11aに噴出させ、この水または二流体を複数の吸引口12aから吸引して吸引口12aと吸引路12,16,15,14を洗浄するようにしても良い。
【0052】
すなわち、制御部80は、バルブV1,V2を閉じ、バルブV3,V4を開く。すると、水供給源7からの水が分岐管4cと配管4及び連通路3,2を経てチャックテーブル10の保持面11aに噴出し、この保持面11aに噴出した水は、チャックテーブル10の上面に開口する複数の吸引口12aから吸引路12,16,15,17と配管18を経て吸引源9に吸引される。或いは、制御部80は、バルブV1を閉じ、バルブV2,V3,V4を開く。すると、エア供給源6からのエアと水供給源7からの水とが混合された二流体が分岐管4b,4cと配管4及び連通路3,2を経てチャックテーブル10の保持面11aに噴出し、この保持面11aに噴出した二流体は、チャックテーブル10の上面に開口する複数の吸引口12aから吸引路12,16,15,17と配管18を経て吸引源9によって吸引される。この結果、前述のように、水または二流体を複数の吸引口12aから吸引して該吸引口12aと吸引路12,16,15,14を洗浄することができる。
【0053】
なお、以上は本発明に係るチャックテーブルとして、ウェーハをドライ研磨するドライ研磨装置に設けられたものを例として説明したが、本発明に係るチャックテーブルは、ウェーハの研削装置やバイト切削装置などの他の任意の加工装置に設けられるものであっても良い。
【0054】
また、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1:ドライ研削装置、2,3:連通路、4:配管、4a~4c:分岐管、5:吸引源、
6:エア供給源、7:水供給源、8:圧力計、9:吸引源、10:チャックテーブル、10A:枠体、10A1:フランジ部、10B:基体、10a:凹部、10b:環状溝、
11:ポーラス部材、11a:保持面、12:吸引路、12a吸引口、
13:ボルト孔、14:ボルト、15~17:吸引路、18:配管、20:保持手段、 21:回転機構、22:ロータリジョイント、23:回転軸、24:従動プーリ、
25:電動モータ、25a:電動モータの出力軸(モータ軸)、26:駆動プーリ、
27:タイミングベルト、28:ステー、29:軸受、30:移動機構、
31:スライダ、32:ガイドレール、33:ボールネジ軸、34:電動モータ、
35:軸受、36:開口部、37:カバー、38:伸縮カバー、39:支持フランジ、
40:研磨ユニット、41:ホルダ、42:スピンドルモータ、43:スピンドル、
44:マウント、45:研磨パッド、45A:研磨パッドのはみ出し部、
45a:基台、45b:パッド材、46:厚み測定器、50:昇降機構、
51:昇降板、52:ガイドレール、53:ボールネジ軸、54:電動モータ、
60:エアノズル、60a:噴射口、61:配管、62:エア供給源、
70:洗浄水ノズル、70a:噴射口、71:配管、72:水供給源、
80:制御部、90:ケース、
100:ベース、101:内部ベース、102:コラム、φD:研磨パッドの外径、
φd:ウェーハの外径、P1:加工位置、P2:搬送位置、S:加工室、
V1~V6:バルブ、W:ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6