(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172169
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】研削ウェーハの製造方法及びウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20231129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231129BHJP
B24B 7/22 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B24B41/06 L
H01L21/304 631
H01L21/304 622J
B24B7/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083790
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】多賀 稜
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034DD10
3C034DD20
3C043CC04
3C043DD05
3C043EE04
5F057AA02
5F057AA03
5F057AA11
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA11
5F057CA18
5F057DA08
5F057DA11
5F057EB16
5F057EC03
5F057EC13
5F057FA13
5F057FA15
5F057FA30
5F057GA02
5F057GA22
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】
ナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にするための研削ウェーハの製造方法、並びに、平坦度等の品質に優れたウェーハを製造することが可能なウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】
第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハを研削して研削ウェーハを製造する研削ウェーハの製造方法であって、前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第1主面に第1樹脂層を形成する第1樹脂貼り工程と、前記第1樹脂層の無い前記第2主面を片面研削する工程と、前記第1樹脂層を剥離する第1樹脂層除去工程と、前記第1主面を片面研削する工程と、前記第2主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面に第2樹脂層を形成する第2樹脂貼り工程と、前記第2樹脂層の無い前記第1主面を片面研削する工程と、前記第2樹脂層を剥離する第2樹脂層除去工程と、前記第2主面を片面研削する工程とを含む研削ウェーハの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハを研削して研削ウェーハを製造する研削ウェーハの製造方法であって、
前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第1主面に第1樹脂層を形成する第1樹脂貼り工程と、
前記第1樹脂層の無い前記第2主面を片面研削する工程と、
前記第1樹脂層を剥離する第1樹脂層除去工程と、
前記第1主面を片面研削する工程と、
前記第2主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面に第2樹脂層を形成する第2樹脂貼り工程と、
前記第2樹脂層の無い前記第1主面を片面研削する工程と、
前記第2樹脂層を剥離する第2樹脂層除去工程と、
前記第2主面を片面研削する工程とを含むことを特徴とする研削ウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記原料ウェーハとしてインゴットをスライスした後のウェーハを用いることを特徴とする請求項1に記載の研削ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記第1樹脂貼り工程及び前記第2樹脂貼り工程を行う際には、前記第1主面及び前記第2主面の面状態が、同一の加工工程後の状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の研削ウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記第1樹脂貼り工程及び前記第2樹脂貼り工程を行う際には、前記第1主面及び前記第2主面の面状態が、同一の加工工程後の状態で行うことを特徴とする請求項2に記載の研削ウェーハの製造方法。
【請求項5】
第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハに対して同じ加工工程を複数回実施するウェーハの製造方法において、前記加工工程を行う際の前記第1主面及び前記第2主面の面状態を同一の加工工程後の状態とし、奇数回目の前記加工工程と、偶数回目の前記加工工程で、前記原料ウェーハの前記第1主面と前記第2主面とを入れ替えて加工を行うことを特徴とするウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記加工工程が、前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面を片面研削し、その後樹脂を剥離し、前記第1主面を片面研削する工程であることを特徴とする請求項5に記載のウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削ウェーハの製造方法及びウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハは、微細なパターンを写真製版により作製するために、ウェーハの表面の平坦化が求められていた。特にナノトポグラフィーと呼ばれる表面うねりを低減することで半導体ウェーハの平坦度を向上させるための技術が提案されている。
【0003】
このようなウェーハの平坦化加工方法として、例えば特許文献1には、インゴットからスライスされたウェーハの一の面の面全面を樹脂で覆う樹脂塗布工程と、ウェーハの一の面を保持し、ウェーハの二の面を研削した後、ウェーハの二の面を保持し、ウェーハの一の面を研削する工程とを含む加工プロセス(
図2参照)が開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、インゴットからスライスされたウェーハの一の面を保持し、ウェーハの二の面を研削した後、ウェーハの二の面を保持し、ウェーハの一の面を研削する一次研削工程と、一次研削工程に続いてウェーハの二の面全面を樹脂で覆う樹脂塗布工程と、この樹脂塗布工程に続いてウェーハの二の面を基準面として保持し、ウェーハの一の面を研削し、樹脂を取り除いた後にウェーハの一の面を基準面としてウェーハの二の面を研削する工程とを含む加工プロセスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08-066850号公報
【特許文献2】特開2011-249652号公報
【特許文献3】特開2009-148866号公報
【特許文献4】国際公開第2019/163017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スライス工程において、切断後のウェーハ表面に発生するうねりが大きい場合、ナノトポグラフィーが悪化する問題があった。
【0007】
対策として、特許文献3にあるように、ウェーハの片面に樹脂を被覆して研削する加工方法で、樹脂貼り→研削を2回繰り返すことで改善する技術が提案されている。
【0008】
特許文献1に示される従来方法では、樹脂貼り条件(樹脂種類や樹脂滴下量、プレス荷重、プレス速度、プレス荷重分布等)が適切でない場合、樹脂厚さ分布が不均一になり、研削加工後のウェーハの反り(Warp)が悪化する問題があった(
図3参照)。
【0009】
特に、特許文献3の技術では、同じ面に樹脂貼りを行っているため、樹脂厚さ分布が不均一である場合、Warpを悪化させてしまうという問題があった(
図4参照)。
【0010】
また、上記樹脂貼り研削を2回連続で繰り返すことで、さらにうねりの少ないウェーハを作製する技術(例えば特許文献4)もある。この文献では、樹脂貼り→表面研削→樹脂貼り→裏面研削→表面研削が示されている。しかし、1回目の樹脂貼り研削後は加工ダメージの表裏差に起因してウェーハが大きく反るため、樹脂貼り2回目の樹脂厚さ分布は不均一となりやすく、このため、最終的な研削後Warpは悪化してしまうことが分かった(
図5参照)。
【0011】
研削ウェーハや鏡面研磨ウェーハは、ナノトポグラフィーが良好であることだけでなく、Warpに代表される長波長のうねりも良好であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、半導体ウェーハの加工プロセス、特に、原料ウェーハの表面を高平坦化する加工プロセスに関し、ナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にするための研削ウェーハの製造方法、並びに、平坦度等の品質に優れたウェーハを製造することが可能なウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハを研削して研削ウェーハを製造する研削ウェーハの製造方法であって、前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第1主面に第1樹脂層を形成する第1樹脂貼り工程と、前記第1樹脂層の無い前記第2主面を片面研削する工程と、前記第1樹脂層を剥離する第1樹脂層除去工程と、前記第1主面を片面研削する工程と、前記第2主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面に第2樹脂層を形成する第2樹脂貼り工程と、前記第2樹脂層の無い前記第1主面を片面研削する工程と、前記第2樹脂層を剥離する第2樹脂層除去工程と、前記第2主面を片面研削する工程とを含む研削ウェーハの製造方法を提供する。
【0014】
このような研削ウェーハの製造方法によれば、ナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にすることができる。
【0015】
このとき、前記原料ウェーハとしてインゴットをスライスした後のウェーハを用いる研削ウェーハの製造方法とすることができる。
【0016】
本発明に係る研削ウェーハの製造方法は、特にこのような原料ウェーハを用いる場合に好適である。
【0017】
このとき、前記第1樹脂貼り工程及び前記第2樹脂貼り工程を行う際には、前記第1主面及び前記第2主面の面状態が、同一の加工工程後の状態で行う研削ウェーハの製造方法とすることができる。
【0018】
これにより、より効果的にナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にすることができる。
【0019】
本発明は、また、第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハに対して同じ加工工程を複数回実施するウェーハの製造方法において、前記加工工程を行う際の前記第1主面及び前記第2主面の面状態を同一の加工工程後の状態とし、奇数回目の前記加工工程と、偶数回目の前記加工工程で、前記原料ウェーハの前記第1主面と前記第2主面とを入れ替えて加工を行うウェーハの製造方法を提供する。
【0020】
このようなウェーハの製造方法によれば、平坦度等の品質に優れたウェーハを製造することができる。
【0021】
このとき、前記加工工程が、前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面を片面研削し、その後樹脂を剥離し、前記第1主面を片面研削する工程であるウェーハの製造方法とすることができる。
【0022】
これにより、ナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の研削ウェーハの製造方法によれば、ナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にすることが可能となる。また、本発明のウェーハの製造方法によれば、平坦度等の品質に優れたウェーハを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る研削ウェーハの製造方法の一例を示す。
【
図2】特許文献1に記載の従来例に係る研削ウェーハの製造方法を示し、樹脂貼りで形成した樹脂層の厚さ分布が均一な場合について説明する図面である。
【
図3】特許文献1に記載の従来例及び比較例2に係る研削ウェーハの製造方法を示し、樹脂貼りで形成した樹脂層の厚さ分布が不均一な場合について説明する図面である。
【
図4】特許文献3に記載の従来例及び比較例3に係る研削ウェーハの製造方法を示し、樹脂貼りで形成した樹脂層の厚さ分布が不均一な場合について説明する図面である。
【
図5】特許文献4に記載の従来例及び比較例4に係る研削ウェーハの製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
上述のように、ナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にするための研削ウェーハの製造方法、並びに、平坦度等の品質に優れたウェーハを製造することが可能なウェーハの製造方法が求められていた。
【0027】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハを研削して研削ウェーハを製造する研削ウェーハの製造方法であって、前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第1主面に第1樹脂層を形成する第1樹脂貼り工程と、前記第1樹脂層の無い前記第2主面を片面研削する工程と、前記第1樹脂層を剥離する第1樹脂層除去工程と、前記第1主面を片面研削する工程と、前記第2主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面に第2樹脂層を形成する第2樹脂貼り工程と、前記第2樹脂層の無い前記第1主面を片面研削する工程と、前記第2樹脂層を剥離する第2樹脂層除去工程と、前記第2主面を片面研削する工程とを含む研削ウェーハの製造方法により、ナノトポグラフィー及びWarpレベルを同時に良好にすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0028】
本発明者らは、また、第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハに対して同じ加工工程を複数回実施するウェーハの製造方法において、前記加工工程を行う際の前記第1主面及び前記第2主面の面状態を同一の加工工程後の状態とし、奇数回目の前記加工工程と、偶数回目の前記加工工程で、前記原料ウェーハの前記第1主面と前記第2主面とを入れ替えて加工を行うウェーハの製造方法により、平坦度等の品質に優れたウェーハを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
以下、図面を参照して説明する。
【0030】
本発明では、同じ加工工程を複数回(偶数回)実施するウェーハの製造方法において、奇数回目の加工工程では一方の面を主面として扱い加工し、偶数回目の加工工程では、他方の面を主面として扱い加工することで加工による反りの作り込みをキャンセルできることを見出した。すなわち、本発明に係るウェーハの製造方法は、第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハに対して同じ加工工程を複数回実施するウェーハの製造方法において、加工工程を行う際の前記第1主面及び前記第2主面の面状態を同一の加工工程後の状態とし、奇数回目の加工工程と、偶数回目の加工工程で、原料ウェーハの第1主面と第2主面とを入れ替えて加工を行うウェーハの製造方法である。これにより、平坦度等の品質に優れたウェーハを製造することが可能となる。この加工工程は、例えば、研削工程、ラッピング工程、DSP(両面研磨)工程、研磨工程などで、同じ工程を複数回繰り返す場合に効果的である。
【0031】
特に本発明に係るウェーハの製造方法では、上記加工工程が、原料ウェーハの第1主面に樹脂貼りを行い、第2主面を片面研削し、その後樹脂を剥離し、第1主面を片面研削する工程であることが好ましい。
【0032】
より具体的には、本発明は、第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハを研削して研削ウェーハを製造する研削ウェーハの製造方法であって、原料ウェーハの第1主面に樹脂貼りを行い、第1主面に第1樹脂層を形成する第1樹脂貼り工程と、第1樹脂層の無い第2主面を片面研削する工程と、第1樹脂層を剥離する第1樹脂層除去工程と、第1主面を片面研削する工程と、第2主面に樹脂貼りを行い、第2主面に第2樹脂層を形成する第2樹脂貼り工程と、第2樹脂層の無い第1主面を片面研削する工程と、第2樹脂層を剥離する第2樹脂層除去工程と、第2主面を片面研削する工程とを含む研削ウェーハの製造方法を提供する。
【0033】
例えば、「表面樹脂貼り→裏面研削→表面研削の加工」を2回繰り返す場合、「表面樹脂貼り→裏面研削→表面研削の加工後に、ウェーハを反転させて、裏面樹脂貼り→表面研削→裏面研削の加工」を行う。これにより、樹脂貼り加工による反りの作り込みをキャンセルできることを見出した。
【0034】
なお、表面、裏面の表記は単に面の違いを示しており、第1主面、第2主面という表現で区別することができる。上記工程が、「裏面樹脂貼り→表面研削→裏面研削の加工後に、ウェーハを反転させて、表面樹脂貼り→裏面研削→表面研削」の加工でも同様である。どちらの面にデバイスを形成するか及びその後の工程でウェーハ反転などを行うかにより、加工初めの面(樹脂貼する面)を設定すれば良い。
【0035】
本発明では、例えば、ウェーハの表面を第1主面、ウェーハの裏面を第2主面とした場合に、奇数回目の加工では、第1主面又は第2主面を主面として扱い加工し、偶数回目の加工では、奇数回目とは反対の面(第2主面又は第1主面)を主面として扱い加工することで、加工方法による反りやうねりの作り込みを打ち消すことができる。
【0036】
より具体的には
図1に示すように、原料ウェーハWの第1主面S1に第1樹脂層を形成する第1樹脂貼り工程→樹脂の無い第2主面S2を片面研削する工程→第1樹脂層を除去(剥離)する第1樹脂層除去工程→樹脂(第1樹脂層)が貼ってあった第1主面S1を片面研削する工程の後、1回目とは異なる面である第2主面S2に樹脂貼りをする第2樹脂貼り工程→樹脂の無い第1主面S1を片面研削する工程→第2樹脂層を除去(剥離)する第2樹脂層除去工程→樹脂(第2樹脂層)が貼ってあった第2主面S2を片面研削する工程を行えば、樹脂貼りなどによる加工のばらつきが相殺され、ナノトポグラフィーが良好であることだけでなく、Warpに代表される長波長のうねりも良好なウェーハが加工可能となる。
【0037】
このように「樹脂貼り→樹脂の無い面を片面研削→樹脂を除去(剥離)後、樹脂が貼ってあった面を片面研削」する一連の工程を2回実施する際に、2回目(偶数回目)は1回目(奇数回目)とは異なる面に樹脂貼りをすることで、樹脂貼り条件(樹脂種類や樹脂滴下量、プレス荷重、プレス速度、プレス荷重分布等)がばらつき、樹脂厚さ分布が不均一になった場合でも、研削加工後のウェーハの反り(Warp)が安定することが分かった。このように同じ加工プロセスを繰り返す場合に効果がある。
【0038】
特に、樹脂貼りする際には、第1主面S1及び第2主面S2の面状態を揃えておくことが好ましい。例えば、1回目は樹脂貼りする際に、第1主面及び第2主面ともスライス面、2回目は、樹脂貼りする際に、第1主面及び第2主面とも研削面などにする。表裏のダメージ差などをなくした状態で樹脂貼りすることが好ましい。
【0039】
つまり、スライス後のウェーハを加工する場合、1回目の「両面スライス面状態での樹脂貼り→樹脂の無い面を片面研削→樹脂を剥離後、樹脂が貼ってあった面を片面研削」することにより両面とも研削面にしておくことで、2回目は「両面研削面状態での樹脂貼り→樹脂の無い面を片面研削→樹脂を剥離後、樹脂が貼ってあった面を片面研削」する。これにより「両面スライス面状態での樹脂貼り→表面研削→一方がスライス面、他方が研削面の面状態での樹脂貼り→裏面研削→表面研削」と2回連続で樹脂貼りを行った時に生じる面状態の違いによる加工ダメージの表裏差に起因したウェーハの反りが発生することなく、樹脂貼り2回目の樹脂厚さ分布も安定しやすく最終的な研削後Warpは良好となる。
【0040】
樹脂貼り方法及び条件としては、特に限定するものではないが、例えば、下記のようなステップで実施される。
【0041】
(樹脂貼り工程)
図1を参照しながら説明する。初めに平坦な面を有する下定盤1を準備する。この下定盤1上に、例えば紫外光に透明な光透過性フィルム2を敷く。次いで、光透過性フィルム2上に、樹脂層(平坦化樹脂層ともいう)の前駆体である、可塑状態、例えば液状の樹脂を供給し、塗布する。樹脂としてUV硬化性樹脂を用いている。ただし、樹脂の材料は特に限定されない。
【0042】
次に、原料ウェーハWの第2主面S2を上定盤(不図示)に吸着保持させる。そして、この状態の原料ウェーハWを、第1主面S1が樹脂に接するようにこの樹脂上に載せる。これにより、ウェーハの第1主面S1上に、樹脂層の前駆体である樹脂が塗布される。
【0043】
次いで、樹脂の面が平坦となるように上定盤を用いて、所定荷重で押圧する。この際の押圧を調整することにより、樹脂の厚さのばらつきを調整することができる。適切な押圧をすることにより、樹脂を適切に押し広げることができ、適切な樹脂厚さ分布を有する樹脂層を得ることができる。
【0044】
次に、樹脂を硬化させる。硬化させる方法は特に限定されないが、例えば、
図1に示されるように光を透過可能な下定盤側からUV光を照射し、樹脂を硬化させることができる。また、上定盤及び下定盤から、樹脂層及び光透過性フィルム2が取り付けられたウェーハを取り外し、取り外したウェーハに対し、光透過性フィルム側からUV光を照射し、樹脂を硬化させることができる。なお、樹脂の硬化処理は、樹脂の材料に応じて変更する。光硬化処理を行わない場合は、光透過性フィルムの敷設を省略することができる。この硬化処理により、樹脂層3付きのウェーハが得られる。
【0045】
(片面研削工程)
次に、表裏面加工が実施される。つまり、以上のようにして得られた樹脂層3付きウェーハを、樹脂層3の平坦面を基準面として、研削装置のチャックテーブル5に吸着保持させる。このチャックテーブル5は、例えば多孔質セラミック製であり、ウェーハを真空吸着して保持することができる。また、チャックテーブル5は、研削手段に対するウェーハの軸角度を調整する機能が備わっている。ただし、本発明において、ウェーハ を吸着保持する手段は、特に限定されない。
【0046】
なお、光透過性フィルムがチャックテーブル5に接しているが、光透過性フィルムは、ウェーハ及び樹脂層の厚さに比べて小さな厚さを有しており、吸着保持を阻害することはない。
【0047】
次に、吸着保持された状態のウェーハの第2主面S2を、第一加工として、研削する。研削ホイール4を用いて研削する例を示すが、研削する手段は特に限定されない。
【0048】
(樹脂層除去工程)
次に、第一加工したウェーハWをチャックテーブル5から解放する。次いで、ウェーハから、樹脂層3及び光透過性フィルム2を除去する。これにより、片面が加工されたウェーハが得られる。得られたウェーハは、第一加工した第2主面S2、及び第2主面と反対側の第1主面S1を有する。
【0049】
(片面研削工程)
次に、先に得られたウェーハを、第1主面S1が上向きになるように反転させ、第一加工した第2主面S2をチャックテーブル5に吸着保持させる。この吸着で、ウェーハは弾性変形する。この際、第一加工した第2主面S2も、弾性変形して、チャックテーブル5の表面に追随した第2主面S2となる。一方、第1主面S1は、弾性変形して下方に変位し、第1主面S1となる。
【0050】
次に、このようにして吸着保持した状態のウェーハの第1主面S1を、第二加工として、研削する。研削手段として研削ホイール4を用いて、第1主面S1を研削する。
【0051】
以上、樹脂貼り工程から研削工程までを一連の加工プロセスとし、本発明ではこの加工プロセスを複数回(偶数回)実施する。その際、奇数回目の加工プロセスと偶数回目の加工プロセスでは、主面とする面を異なる面とする。
【0052】
つまり、上記の樹脂貼りは第1主面S1に対して実施しているが、初め(奇数回目)の加工プロセスで第1主面S1に樹脂貼りを実施した場合、2回目(偶数回目)の加工プロセスでは第2主面S2に樹脂貼りを実施する。このように同じプロセスを繰り返す場合に扱う面を逆にすることで加工プロセスによる反りの作り込みをキャンセルできる。
【実施例0053】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0054】
[実験内容]
(樹脂貼り加工条件)
原料ウェーハとしては、スライス後に面取り加工した直径300mmのP型Si単結晶ウェーハを用いた。被覆物としてUV硬化性樹脂、上記フィルムとしてPETフィルムを用いた。平坦なガラス定盤(下定盤)にPETフィルムを敷き、そのPETフィルム上にUV硬化性樹脂を10ml滴下した。
【0055】
ウェーハをセラミック定盤(上定盤)に吸着保持し、上記樹脂に押し当てて接着した。押圧制御は、セラミック定盤を保持するサーボモータで駆動させ、所定荷重を検出するまで加圧した。樹脂硬化用の光源としては波長365nmのUV-LEDを用いた。
【0056】
(研削加工条件)
研削加工には、研削ホイールとしてダイヤ砥粒が結合されたものを用いた。被覆物側を真空吸着し、研削加工を行った。チャックテーブルの軸角度を調整することで、ウェーハ厚さばらつきが1μm以下となるように調整を行った。
【0057】
比較例1は、樹脂貼りなしで、裏面研削及び表面研削を実施した。研削加工は、上記加工条件の通りである。
【0058】
比較例2は
図3に示すように、「表面樹脂貼り→裏面研削→表面研削」として樹脂貼り研削を1回のみ実施した。なお、裏面研削後に樹脂を剥離した後、表面研削を実施した。樹脂貼り加工及び研削加工は、上記加工条件の通りである。
【0059】
比較例3は
図4に示すように、「表面樹脂貼り→裏面研削→表面研削→表面樹脂貼り→裏面研削→表面研削」として、同じ工程を2回繰り返し実施した。なお、2回とも裏面研削後は樹脂を剥離した後、表面研削を行った(同じ面に樹脂貼りを実施)。樹脂貼り加工及び研削加工は、上記加工条件の通りである。
【0060】
比較例4は
図5に示すように、まずウェーハを反転させた後(この場合、最終研削面の裏面が上面(裏上)となる)、「表面樹脂貼り→裏面研削→裏面樹脂貼り→表面研削→裏面研削」として、樹脂貼り研削を連続して実施した。つまり、裏面研削後は樹脂を剥離した後、裏面樹脂貼りを行った。また、表面研削後は樹脂を剥離した後、裏面研削を実施した。樹脂貼り加工及び研削加工は、上記加工条件の通りである。
【0061】
実施例は
図1に示すように行った。まずウェーハを反転させた後(この場合、最終研削面の裏面が上面(裏上)となる)、「表面樹脂貼り→裏面研削→表面研削後、ウェーハを反転し裏面樹脂貼り→表面研削→裏面研削」として、同じ工程を2回繰り返しているが、2回目は1回目と異なる面に樹脂貼りした。樹脂貼り加工及び研削加工は、上記加工条件の通りである。
【0062】
なお、各比較例、実施例とも、その後の評価を行うため、得られたウェーハについて同条件にて両面研磨及び上面を片面研磨し鏡面研磨加工を行った。これらの鏡面研磨は一般的に行われる条件で実施した。
【0063】
(測定及び結果)
Warp及びナノトポグラフィーの測定には、光学干渉式の平坦度・ナノトポグラフィー測定装置(KLA社製:WaferSight2+)を用いた。ナノトポグラフィーの指標としては、SQMM10mm×10mmを使用した。実施例及び比較例で実施した工程と、評価結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
比較例1では、Warpは目標値に達したが、樹脂貼りなしで研削を実施したため、ナノトポグラフィーが不良となった。
【0066】
比較例2では、樹脂貼り研削によりナノトポグラフィーが改善したが、Warpが悪化した。これは、樹脂厚さ分布が不均一であったため、樹脂貼り研削により反りを作りこんだためである。
【0067】
比較例3では、比較例2よりもナノトポグラフィーがより改善したが、Warpは悪化した。Warpがさらに悪化した原因は、樹脂厚さ分布が不均一な状態で、樹脂貼り研削を2回繰り返したことで、反りをさらに作りこんだためである。
【0068】
比較例4では、比較例2よりもナノトポグラフィーがより改善したが、Warpは悪化した。
【0069】
1回目の樹脂貼り研削(表面樹脂貼り→裏面研削)後のウェーハの表面はスライス面、裏面は研削面であり、表裏面の加工ダメージが異なっている。このため、加工ダメージの表裏差起因で、ウェーハが大きく反った状態となる。
【0070】
この表面がスライス面、裏面が研削面で、大きく反ったウェーハに対し2回目の樹脂貼り加工を行うと、1回目の樹脂厚さ分布とは著しく異なった樹脂厚さ分布となる。このため、2回目の樹脂貼り研削(裏面樹脂貼り→表面研削→裏面研削)後のWarpが悪化した(原料ウェーハのWarpの10倍以上に悪化することがあった)。
【0071】
実施例では、Warp、ナノトポグラフィーともに目標値に達した。特に1回目の加工プロセスで、ウェーハ両面とも研削面に加工しているため、ダメージ起因のウェーハのソリはなく、また2回目は1回目とは異なる面に樹脂貼りをすることで、樹脂貼り研削によって作りこむ反りをキャンセルすることができた。
【0072】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、「樹脂貼り→樹脂の無い面を片面研削→樹脂を剥離→樹脂が貼ってあった面を片面研削」する工程を2回実施する際に、2回目は1回目とは異なる面に樹脂貼りをすることで、樹脂貼り条件(樹脂種類や樹脂滴下量、プレス荷重、プレス速度、プレス荷重分布等)がばらつき樹脂厚さ分布が不均一になった場合でも、研削加工後のウェーハの反り(Warp)が安定することが分かった。このように、Warpが良好でかつナノトポグラフィー(NT)も良好なウェーハを作製できる。
【0073】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]: 第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハを研削して研削ウェーハを製造する研削ウェーハの製造方法であって、
前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第1主面に第1樹脂層を形成する第1樹脂貼り工程と、
前記第1樹脂層の無い前記第2主面を片面研削する工程と、
前記第1樹脂層を剥離する第1樹脂層除去工程と、
前記第1主面を片面研削する工程と、
前記第2主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面に第2樹脂層を形成する第2樹脂貼り工程と、
前記第2樹脂層の無い前記第1主面を片面研削する工程と、
前記第2樹脂層を剥離する第2樹脂層除去工程と、
前記第2主面を片面研削する工程とを含むことを特徴とする研削ウェーハの製造方法。
[2]:前記原料ウェーハとしてインゴットをスライスした後のウェーハを用いることを特徴とする上記[1]の研削ウェーハの製造方法。
[3]:前記第1樹脂貼り工程及び前記第2樹脂貼り工程を行う際には、前記第1主面及び前記第2主面の面状態が、同一の加工工程後の状態で行うことを特徴とする上記[1]又は上記[2]の研削ウェーハの製造方法。
[4]: 第1主面と第2主面とを有する原料ウェーハに対して同じ加工工程を複数回実施するウェーハの製造方法において、前記加工工程を行う際の前記第1主面及び前記第2主面の面状態を同一の加工工程後の状態とし、奇数回目の前記加工工程と、偶数回目の前記加工工程で、前記原料ウェーハの前記第1主面と前記第2主面とを入れ替えて加工を行うことを特徴とするウェーハの製造方法。
[5]:前記加工工程が、前記原料ウェーハの前記第1主面に樹脂貼りを行い、前記第2主面を片面研削し、その後樹脂を剥離し、前記第1主面を片面研削する工程であることを特徴とする上記[4]のウェーハの製造方法。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。