IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京応化工業株式会社の特許一覧

特開2023-172292分離層形成用組成物、分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172292
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】分離層形成用組成物、分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20231129BHJP
【FI】
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083989
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 有希
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 和英
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB11C
4F100AG00A
4F100AH04B
4F100AH08B
4F100AK01B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00C
4F100EH46A
4F100EJ42B
4F100GB43
4F100JL14B
4F100JN01A
(57)【要約】
【課題】支持基体と基板との間に分離層を備えた積層体において、光反応性及び密着性の高い分離層を形成可能な分離層形成用組成物等を提供する。
【解決手段】光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するための分離層形成用組成物であって、樹脂成分(P)と、
スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)と、を含有する、分離層形成用組成物。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するための分離層形成用組成物であって、
樹脂成分(P)と、
スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)と、
を含有する、分離層形成用組成物。
【請求項2】
前記スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)が、スルホン酸金属塩又はスルホンイミド金属塩である、請求項1に記載の分離層形成用組成物。
【請求項3】
前記スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)が、下記一般式(m1)又は(m2)で表される化合物である、請求項2に記載の分離層形成用組成物。
【化1】
[式中、Rf~Rfは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基であり;Mm+は、m価の金属カチオンである。]
【請求項4】
前記樹脂成分(P)が芳香環を含む、請求項1に記載の分離層形成用組成物。
【請求項5】
支持基体と、
請求項1~4のいずれか一項に記載の分離層形成用組成物を用いて前記支持基体上に形成された分離層と、
を備えた、分離層付き支持基体。
【請求項6】
光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体であって、
前記分離層は、請求項1~4のいずれか一項に記載の分離層形成用組成物の焼成体である、積層体。
【請求項7】
光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体の製造方法であって、
前記基板上又は前記支持基体上の少なくとも一方に、請求項1~4のいずれか一項に記載の分離層形成用組成物を塗布し、その後に焼成することにより前記分離層を形成する分離層形成工程と、
前記基板と前記支持基体とを、前記分離層を介して積層する積層工程と、
を有する、積層体の製造方法。
【請求項8】
前記積層工程の後、前記分離層を介して前記支持基体に貼り合わされた前記基板を、封止材により封止して封止体を作製する封止工程をさらに有する、請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記封止工程の後、前記封止体における封止材部分を、前記基板の一部が露出するように研削する研削工程と、
前記研削工程の後、前記の露出した基板上に再配線を形成する再配線形成工程と、
をさらに有する、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の積層体の製造方法により積層体を得た後、前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する分離工程と、
前記分離工程の後、前記基板に付着する前記分離層を除去する除去工程と、
を有する、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離層形成用組成物、分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を含む半導体パッケージ(電子部品)には、対応サイズに応じて様々な形態が存在し、例えばWLP(Wafer Level Package)、PLP(Panel Level Package)等がある。
半導体パッケージの技術としては、ファンイン型技術、ファンアウト型技術が挙げられる。ファンイン型技術による半導体パッケージとしては、ベアチップ端部にある端子をチップエリア内に再配置する、ファンイン型WLP(Fan-in Wafer Level Package)等が知られている。ファンアウト型技術による半導体パッケージとしては、該端子をチップエリア外に再配置する、ファンアウト型WLP(Fan-out Wafer Level Package)等が知られている。
【0003】
近年、特にファンアウト型技術は、パネル上に半導体素子を配置してパッケージ化するファンアウト型PLP(Fan-out Panel Level Package)に応用される等、半導体パッケージにおける、よりいっそうの高集積化、薄型化及び小型化等を実現し得る方法として注目を集めている。
【0004】
半導体パッケージの小型化を図るためには、組み込まれる素子における基板の厚さを薄くすることが重要となる。しかしながら、基板の厚さを薄くすると、その強度が低下し、半導体パッケージ製造の際に基板の破損を生じやすくなる。これに対し、基板に支持基体を貼り合わせた積層体が採用されている。
特許文献1には、光透過性の支持基体と、基板とを、支持基体側に設けられた光熱変換層(分離層)及び接着層を介して貼り合わせ、基板を加工処理した後、支持基体側から分離層に放射エネルギー(光)を照射して分離層を変質させて分解することにより、加工処理後の基板と、支持基体とを分離して積層体を製造する方法が開示されている。また、分離層形成用組成物として、フェノール骨格を有する樹脂成分と、熱酸発生剤を含有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-34541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような分離層形成用組成物では、高温で焼成することにより、樹脂骨格を変性させて、光吸収性を発現させている。分離層形成用組成物は、光吸収性が高いと支持基体からの基板の分離性が良好となる。より低い温度での焼成により、優れた光吸収性を発現できれば、プロセスの効率化を図ることができる。また、基板の加工の際には、基板と支持基体との密着性が求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、支持基体と基板との間に分離層を備えた積層体において、光反応性及び密着性の高い分離層を形成可能な分離層形成用組成物、これを用いた分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するための分離層形成用組成物であって、樹脂成分(P)と、スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)と、を含有する、分離層形成用組成物である。
【0008】
本発明の第2の態様は、支持基体と、前記第1の態様に係る分離層形成用組成物を用いて前記支持基体上に形成された分離層と、を備えたことを特徴とする、分離層付き支持基体である。
【0009】
本発明の第3の態様は、光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体であって、前記分離層は、前記第1の態様に係る分離層形成用組成物の焼成体であることを特徴とする、積層体である。
【0010】
本発明の第4の態様は、光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体の製造方法であって、前記基板上又は前記支持基体上の少なくとも一方に、前記第1の態様に係る分離層形成用組成物を塗布し、その後に焼成することにより前記分離層を形成する分離層形成工程と、前記基板と前記支持基体とを、前記分離層を介して積層する積層工程と、を有することを特徴とする、積層体の製造方法である。
【0011】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様に係る積層体の製造方法により積層体を得た後、前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する分離工程と、前記分離工程の後、前記基板に付着する前記分離層を除去する除去工程と、を有することを特徴とする、電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支持基体と基板との間に分離層を備えた積層体において、光反応性及び密着性の高い分離層を形成可能な分離層形成用組成物、これを用いた分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】分離層形成工程を説明する図である。一実施形態の分離層付き支持基体の模式図である。
図1B】積層工程を説明する図である。基板、接着層、分離層、及び支持基体がこの順に積層された、一実施形態の積層体の模式図である。
図2】封止工程を説明する図である。封止材層、基板、接着層、分離層、及び支持基体がこの順に積層された、一実施形態の積層体の模式図である。
図3A】研削工程を説明する図である。封止材層、基板、接着層、分離層、及び支持基体がこの順に積層された、一実施形態の積層体の模式図である。
図3B】再配線形成工程を説明する図である。再配線層、封止材層、基板、接着層、分離層、及び支持基体がこの順に積層された、一実施形態の積層体の模式図である。
図4A】第3実施形態の製造方法により製造された積層体に、光を照射する様子を示す図である。
図4B】分離工程を説明する図である。
図4C】除去工程を説明する図である。一実施形態の電子部品の模式図である。
図5A】本発明を適用した積層体の他の実施形態を示す模式図である。
図5B】他の実施形態における、分離工程を説明する図である。
図5C】他の実施形態における、除去工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「繰り返し単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
【0015】
「スチレン」とは、スチレンおよびスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
【0016】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素原子数1~5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
【0017】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0018】
(分離層形成用組成物)
本発明の第1の態様に係る分離層形成用組成物は、光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するためのものである。本実施形態の分離層形成用組成物は、樹脂成分(P)と、スルホン酸誘導体の金属塩(M)とを含有する。
【0019】
図1Bは、本発明を適用した積層体の一実施形態を示している。
図1Bに示す積層体10は、支持基体1と基板4との間に、分離層2及び接着層3を備えたものであり、支持基体1上に分離層2、接着層3、基板4がこの順に積層している。
支持基体1は、光を透過する材料からなる。積層体10においては、分離層2に対し、支持基体1側から光を照射することによって、分離層2が変質して分解するため、積層体10から支持基体1が分離する。
この積層体10における分離層2は、本実施形態の分離層形成用組成物を用いて形成することができる。
【0020】
<樹脂成分(P)>
樹脂成分(P)(以下「(P)成分」ともいう。)は、分離層形成用組成物の樹脂成分として、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。(P)成分としては、焼成により、光吸収性を有する構造に変化するものが好ましい。(P)成分は、例えば、本実施形態の分離層形成用組成物を焼成(例えば、200~300℃)したときに、波長532nmの光に対して吸収性を有する構造に変化するものが好ましい。
【0021】
≪(P1)成分≫
(P)成分としては、下記一般式(p1)で表される繰り返し単位を有する樹脂成分(以下、「(P1)成分」ともいう)が挙げられる。
【0022】
【化1】
[式中、LP1は、2価の連結基を表す。RP1は有機基を表す。]
【0023】
前記式(p1)中、LP1における2価の連結基は、芳香環を含んでいてもよく、複数種類の芳香環を含んでいてもよいし、芳香環と脂肪環とが縮合した環構造を含んでいてもよい。
P1における2価の連結基が芳香環を含む場合、この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は、5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
2価の連結基が含む芳香環は、1つでもよいし、2つ以上でもよく、光反応性により優れることから、2つ以上が好ましい。
【0024】
あるいは、前記式(p1)中、LP1における2価の連結基は、ヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。Lp1としては、所望の特性を付与するため、種々の骨格を導入した連結基が挙げられる。
前記「種々の骨格を導入した連結基」における骨格としては、例えば、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、キサンテン骨格、フルオレン骨格、ビスフェノールA骨格などが挙げられる。
【0025】
p1としては、例えば、ビスフェノール類のエーテル結合基、ジオール類のエーテル結合基、ジカルボン酸類のエステル結合基、Si-O結合基又はこれら結合基の繰り返し構造などが挙げられる。
【0026】
当該ビスフェノール類としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビフェノール又はこれらの重合体などが挙げられる。
当該ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ナフタレンジオール(ジヒドロキシナフタレン)、アントラセンジオール(ジヒドロキシアントラセン)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又はこれらの重合体などが挙げられる。
当該ジカルボン酸類としては、マレイン酸、フタル酸、水添型フタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
【0027】
p1として、ビスフェノール類のエーテル結合基を選択した場合、(P)成分製フィルムの屈曲性を高められやすくなる。
p1として、ジオール類のエーテル結合基を選択した場合、(P)成分のアルカリ溶解性を容易に調整できる。ジオール類のエーテル結合基としては、グリコール骨格を導入した連結基が好ましい。グリコール骨格としては、例えば、プロピレングリコール骨格が挙げられる。
p1として、Si-O結合基を選択した場合、(P)成分成形体の低誘電化を図りやすくなる。
【0028】
以下に、前記式(p1)中のLP1(2価の連結基)についての好適な具体例を示す。
以下の式中、*は、メチレン基(CH)と結合する結合手であることを示す。化学式(LP1-9)のnは、オキシプロピレン基の繰り返し数を表す。
【0029】
【化2】
【0030】
前記式(p1)中、RP1における有機基は、特に限定されず、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。
P1における炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、鎖状もしくは環状のアルケニル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0031】
P1における、直鎖状のアルキル基は、炭素原子数1~5が好ましい。RP1として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
P1における、分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数3~10が好ましく、炭素原子数3~5がより好ましい。RP1として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0032】
P1における、鎖状もしくは環状のアルケニル基は、炭素原子数2~10のアルケニル基が好ましい。
【0033】
P1における、環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよいし、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0034】
P1における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0035】
P1における芳香族炭化水素基は、縮合多環芳香族基でもよい。縮合多環芳香族基は、縮合多環芳香族環から水素原子1個を除いた基である。この縮合多環芳香族環は、複数の芳香環が縮合した環構造でもよいし、芳香環と脂肪環とが縮合した環構造でもよい。芳香環と脂肪環とが縮合した環構造においては、芳香環の個数が複数でもよいし、脂肪環の個数が複数でもよいし、芳香環と脂肪環とが1つずつでもよい。
この縮合多環芳香族環を構成する環数は、好ましくは2~5個、より好ましくは2~3個、さらに好ましくは3個である。
【0036】
P1における縮合多環芳香族基としては、例えば、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、ペリレン環、アントラキノン環、又はナフトキノン環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
これらの中でも、アントラキノン環又はナフトキノン環から水素原子1個を除いた基が好ましく、アントラキノン環から水素原子1個を除いた基がより好ましい。
【0037】
上記のRP1で表される炭化水素基が置換されている場合、その置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
P1で表される炭化水素基は、その炭化水素鎖の途中にエーテル結合を有していてもよい。
【0038】
以下に、一般式(p1)で表される繰り返し単位についての具体例を示すが、これらに限定されない。n1及びn2は、オキシプロピレン基の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
(P1)成分は、膜形成能を有し、好ましくは分子量が1000以上である。(P1)成分の分子量が1000以上であることにより、膜形成能が向上する。(P1)成分の分子量は、1000~30000がより好ましく、1500~25000がさらに好ましく、1500~20000が特に好ましく、2000~15000が最も好ましい。
(P1)成分の分子量が、前記の好ましい範囲の上限値以下であることにより、分離層形成用組成物の溶媒に対する溶解性が高められる。
尚、樹脂成分の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を用いるものとする。
【0044】
(P1)成分としては、例えば、商品名がGSP-01、GSP-02、GSP-03、GSP-106、GSP-112、GSP-113、GSP-117のGSPシリーズ(群栄化学工業株式会社製)等を用いることができる。
【0045】
また、(P1)成分として、アミノフェノール類、アミノナフトール類又はアニリン類と、1分子中にエポキシ基を2つ有する化合物と、を反応させて生成する樹脂を用いることもできる。
アミノフェノール類としては、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、4-アミノ-3-メチルフェノール、2-アミノ-4-メチルフェノール、3-アミノ-2-メチルフェノール、5-アミノ-2-メチルフェノール等が挙げられる。アミノナフトール類としては、1-アミノ-2-ナフトール、3-アミノ-2-ナフトール、5-アミノ-1-ナフトール等が挙げられる。
1分子中にエポキシ基を2つ有する化合物としては、例えば商品名がEPICLON850、EPICLON830(DIC株式会社製)、jERYX-4000(三菱化学株式会社製)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;DENACOL EX-211、DENACOL EX-212、DENACOL EX-810、DENACOL EX-830、DENACOL EX-911、DENACOL EX-920、DENACOL EX-930(ナガセケムテックス株式会社製)などのジオール型エポキシ樹脂;DENACOL EX-711、DENACOL EX-721(ナガセケムテックス株式会社製)、jER191P(三菱化学株式会社製)などのジカルボン酸エステル型エポキシ樹脂; X-22-163、KF-105(信越化学工業株式会社製)などのシリコーン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
かかる反応の際の加熱処理温度は、60℃以上250℃以下とすることが好ましく、80℃以上180℃以下とすることがより好ましい。
【0046】
(P1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
≪(P2)成分≫
(P)成分は、上記(P1)成分以外の樹脂成分(以下、「(P2)成分」ともいう)でもよい。(P2)成分としては、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール誘導体、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ヒドロキシフェニルシルセスキオキサン樹脂、ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン樹脂、フェノール骨格含有アクリル樹脂等が挙げられる。
【0048】
ベンゾオキサジン樹脂:
ベンゾオキサジン樹脂は、ベンゾオキサジン骨格を含む樹脂である。ベンゾオキサジン樹脂としては、下記一般式(p2-1)で表される樹脂が挙げられる。
【0049】
【化7】
[式中、Lbは炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し;Rb及びRbは、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表し;Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。]
【0050】
前記一般式(p2-1)中、Lbは、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表す。Lbにおける脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状構造を有してもよい。Lbにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0051】
直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数1~8が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1、2、又は3が特に好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基は、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数2~8が好ましく、炭素原子数2~6がより好ましく、炭素原子数2~4がさらに好ましく、炭素原子数2又は3が特に好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0052】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、上述の直鎖状の脂肪族炭化水素基または前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数3~10が好ましく、炭素原子数3~8がより好ましく、炭素原子数3~6がさらに好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式でもよく、単環式でもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素原子数3~6が好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素原子数7~10が好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン等が挙げられる。
【0053】
Lbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~8が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1、2又は3が特に好ましい。
【0054】
一般式(p2-1)中、Rb及びRbは、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表す。Rb及びRbにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよい。
【0055】
Rb及びRbにおける脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状構造を有してもよい。Rb及びRbにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよい。Rb及びRbにおける脂肪族炭化水素基は、炭素原子数12~20が好ましく、炭素原子数12~18がより好ましく、炭素原子数14~16がさらに好ましい。
【0056】
Rb及びRbにおける構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
【0057】
Rb及びRbにおける芳香族炭化水素基は、単環式基でもよく、多環式基でもよい。前記芳香族炭化水素基が含む芳香環は、炭素原子数5~20が好ましく、炭素原子数6~15がより好ましく、炭素原子数6~12がさらに好ましい。芳香環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環に結合するアルキレン基は、炭素原子数1~12が好ましく、炭素原子数1~10がより好ましい。
【0058】
Rb及びRbは、直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。Rb及びRbが不飽和脂肪族炭化水素基である場合、不飽和結合の数は、特に限定されないが、例えば、1~5個、1~4個、1~3個、又は1個若しくは2個が挙げられる。中でも、Rb及びRbは、直鎖状のアルキル基、直鎖状のアルケニル基、直鎖状のアルカジエン基、又は直鎖状のアルカトリエン基が好ましい。
【0059】
Rb及びRbの具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0060】
【化8】
【0061】
前記式(p2-1)中、Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rb~Rbにおける置換基は、特に限定されない。Rb~Rbにおける置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、及びアミノ基、並びこれらの基を置換基として有してもよいアルキル基等が挙げられる。
Rb~Rbにおけるアルキル基としては、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~4がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましく、炭素原子数1又は2が特に好ましい。アルキル基は、置換基を有してもよく、有しなくてもよいが、有しないことが好ましい。
Rb~Rbにおけるアルコキシ基としては、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~4がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましく、炭素原子数1又は2が特に好ましい。
Rb~Rbにおけるアルキル基又はアルコキシ基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。
【0062】
Rb~Rbは、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0063】
ベンゾオキサジン樹脂の具体例を以下に示すが、これに限定されない。
【0064】
【化9】
[式中、Rは、前記式(Rb1-1)~(Rb1-4)のいずれかで表される基を表す。複数のRは、相互に同じでもよく、異なってもよい。]
【0065】
ベンゾオキサジン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ベンゾオキサジン樹脂は、前記式(p2-1-1)中のRが互いに異なる化合物の混合物であってもよい。
【0066】
ベンゾオキサジン樹脂以外の(P2)成分の具体例を以下に示すが、これに限定されない。
【0067】
【化10】
【0068】
(P)成分は、芳香環を含む樹脂が好ましい。前記芳香環は、芳香族炭化水素環でもよく、芳香族複素環でもよい。前記芳香環は、単環でもよく、多環でもよい。前記芳香環は、芳香環と脂肪族環との縮合環でもよい。芳香環と縮合環を形成する脂肪族環は、脂肪族炭化水素環でもよく、脂肪族複素環でもよい。(P)成分としては、(P1)成分、ベンゾオキサジン樹脂、又は前記式(p2-2)で表される樹脂が好ましい。
【0069】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(P)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物中の(P)成分の含有量は、形成しようとする分離層の厚さ等に応じて調整すればよい。分離層形成用組成物中の(P)成分の含有量は、例えば、当該組成物(100質量%)に対して、1~100質量%が挙げられる。(P)成分の含有量は、1~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましく、10~30質量%が特に好ましい。
(P)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、分離層の光反応性をより高められやすくなる。加えて、密着性も高められやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
【0070】
<スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)>
スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)(以下、「(M)成分」ともいう)は、スルホン酸金属塩又はスルホン酸誘導体金属塩であれば、特に限定されない。前記スルホン酸誘導体としては、例えば、スルホンイミドが挙げられる。(M)成分の具体例としては、スルホン酸金属塩、及びスルホンイミドの金属塩が挙げられる。スルホン酸金属塩としては、下記一般式(m1)で表される化合物が挙げられる。スルホンイミドの金属塩としては、下記一般式(m2)で表される化合物が挙げられる。
【0071】
【化11】
[式中、Rf~Rfは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基であり;Mm+は、m価の金属カチオンである。]
【0072】
前記式(m1)又は(m2)中、Rf~Rfは、それぞれ独立に、フッ素化アルキル基である。Rf~Rfにおけるフッ素化アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。直鎖状のフッ素化アルキル基は、炭素原子数1~12が好ましく、炭素原子数1~10がより好ましく、炭素原子数1~8がさらに好ましく、炭素原子数1~6、又は炭素原子数1~4が特に好ましい。分岐鎖状のフッ素化アルキル基は、炭素原子数3~12が好ましく、炭素原子数3~10がより好ましく、炭素原子数3~8がさらに好ましく、炭素原子数3~6、又は炭素原子数3~4が特に好ましい。
【0073】
Rf~Rfにおけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基である。置換される水素原子の割合は特に限定されないが、パーフルオロアルキル基が好ましい。
【0074】
前記式(m1)又は(m2)のアニオン部の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0075】
【化12】
【0076】
前記式(m1)又は(m2)中、Mm+は、m価の金属カチオンである。mは、1以上の整数であり、1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0077】
m+の具体例としては、例えば、アルカリ金属イオン(K、Li、Na、Rb等)、アルカリ土類金属イオン(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+等)、銀イオン(Ag)、銅(I)イオン(Cu)、水銀(I)イオン(Hg)、カドミウムイオン(Cd2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅(II)イオン(Cu2+)、水銀(II)イオン(Hg2+)、鉄(II)イオン(Fe2+)、コバルトイオン(Co2+)、スズイオン(Sn2+)、鉛イオン(Pb2+)、マンガン(II)イオン(Mn2+)、アルミニウムイオン(Al3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、クロム(III)イオン(Cr3+)等が挙げられる。
中でも、Mm+は、アルカリ金属イオンが好ましく、K又はLiがより好ましい。
【0078】
(M)成分の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0079】
【化13】
【0080】
【化14】
【0081】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(M)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物中の(M)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.1~40質量部が挙げられ、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がさらに好ましく、5~25質量部が特に好ましい。
(M)成分の含有量が、前記の好ましい範囲内であると、低温(例えば、280℃以下)で硬化させたときに、光反応性(例えば、波長532nmの光に対する光反応性)が高くなりやすく、密着性が良好となりやすい。加えて、保管安定性も向上する。
【0082】
<その他成分>
本実施形態の分離層形成用組成物は、上述した(P)成分及び(M)成分に加えて、他の成分(任意成分)を含有してもよい。
かかる任意成分としては、熱酸発生剤成分、光酸発生剤成分、感光剤成分、有機溶剤成分、界面活性剤、増感剤などが挙げられる。
【0083】
≪熱酸発生剤≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、熱酸発生剤(以下「(T)成分」ともいう。)を含有してもよい。
【0084】
(T)成分には、公知のものから適宜選択して用いることができる。(T)成分は、酸を発生させるための温度が、分離層形成用組成物を塗布した支持基体をプリベークする際の温度以上であるものが好ましく、110℃以上であるものがより好ましく、130℃以上であるものがさらに好ましい。
かかる(T)成分としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸塩、六フッ化リン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩、三フッ化ホウ素塩、三フッ化ホウ素エーテル錯化合物等が挙げられる。好ましい(T)成分として、以下に示すカチオン部とアニオン部とからなる化合物が挙げられる。
【0085】
【化15】
[式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基及びアリール基からなる群より選択される基であり、Rh01~Rh04のうちの少なくとも1つは、アリール基である。前記のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基及びアリール基からなる群より選択される基であり、Rh05~Rh07のうちの少なくとも1つは、アリール基である。前記のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。]
【0086】
・(T)成分のカチオン部について
前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04におけるアルキル基は、炭素原子数が1~20であり、炭素原子数1~10が好ましく、炭素原子数1~5がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0087】
h01~Rh04におけるアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、環式基等が挙げられる。
【0088】
アルキル基の置換基としてのアルコキシ基は、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
アルキル基の置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルキル基の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、炭素原子数1~5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
アルキル基の置換基としてのカルボニル基は、アルキル基を構成するメチレン基(-CH-)を置換する基(>C=O)である。
アルキル基の置換基としての環式基は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基(多環式であってもよく、単環式であってもよい)が挙げられる。ここでの芳香族炭化水素基は、後述のRh01~Rh04におけるアリール基と同様のものが挙げられる。ここでの脂環式炭化水素基において、単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0089】
前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04におけるアリール基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
h01~Rh04におけるアリール基として具体的には、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基;2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。これらの中でも、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基がより好ましく、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基、前記芳香族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基がさらに好ましい。
【0090】
h01~Rh04におけるアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、環式基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0091】
アリール基の置換基としてのアルキル基は、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが好ましい。
アリール基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、環式基についての説明は、上述したアルキル基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、環式基についての説明と同様である。
アリール基の置換基としてのアルキルカルボニルオキシ基において、アルキル部分の炭素原子数は1~5が好ましく、アルキル部分はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0092】
但し、前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよいアリール基である。
以下に、前記式(T-ca-1)で表されるカチオンの具体例を示す。
【0093】
【化16】
【0094】
前記式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07におけるアルキル基、アリール基についての説明は、それぞれ、上述したRh01~Rh04におけるアルキル基、アリール基についての説明と同様である。
【0095】
但し、前記式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよいアリール基である。
以下に、前記式(T-ca-2)で表されるカチオンの具体例を示す。
【0096】
【化17】
【0097】
・(T)成分のアニオン部について
(T)成分のアニオン部としては、例えば、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン等が挙げられる。
これらの中でも、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオンが好ましく、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンがより好ましい。
【0098】
本実施形態の分離層形成用組成物においては、(T)成分として、例えば商品名がサンエイドSI-45、SI-47、SI-60、SI-60L、SI-80、SI-80L、SI-100、SI-100L、SI-110、SI-110L、SI-145、I-150、SI-160、SI-180L、SI-B3、SI-B2A、SI-B3A、SI-B4、SI-300(以上、三新化学工業株式会社製);CI-2921、CI-2920、CI-2946、CI-3128、CI-2624、CI-2639、CI-2064(日本曹達株式会社製);CP-66、CP-77(株式会社ADEKA製);FC-520(3M社製);K―PURE TAG-2396、TAG-2713S、TAG-2713、TAG-2172、TAG-2179、TAG-2168E、TAG-2722、TAG-2507、TAG-2678、TAG-2681、TAG-2679、TAG-2689、TAG-2690、TAG-2700、TAG-2710、TAG-2100、CDX-3027、CXC-1615、CXC-1616、CXC-1750、CXC-1738、CXC-1614、CXC-1742、CXC-1743、CXC-1613、CXC-1739、CXC-1751、CXC-1766、CXC-1763、CXC-1736、CXC-1756、CXC-1821、CXC-1802-
60、CXC-2689(以上、KING INDUSTRY社製)等の市販品を用いることができる。
【0099】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(T)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物においては、上記の中でも、(T)成分として六フッ化リン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸塩がより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸の第4級アンモニウム塩がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物が(T)成分を含有する場合、(T)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、(T)成分を含有しないことが好ましい。
【0100】
≪光酸発生剤≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、光酸発生剤を含有してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤が好適に挙げられる。
【0101】
オニウム塩系酸発生剤における、好ましいカチオン部としては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0102】
オニウム塩系酸発生剤における、好ましいアニオン部としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C);テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF);ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF);トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF);テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。また、下記一般式(b0-2a)で表されるアニオンも好ましい。
【0103】
【化18】
[式中、Rbf05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基である。nbは、1~5の整数である。]
【0104】
前記式(b0-2a)中、Rbf05におけるフッ素化アルキル基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~8であることがより好ましく、炭素原子数1~5であることがさらに好ましい。なかでもRbf05としては、炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
前記式(b0-2a)中、nbは、1~4の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、3が最も好ましい。
nbが2以上の場合、複数のRbf05は、同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0105】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する光酸発生剤は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物が光酸発生剤を含有する場合、光酸発生剤の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、光酸発生剤を含有しないことが好ましい。
【0106】
≪感光剤成分≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、感光剤成分を含有してもよい。
感光剤成分(以下「(C)成分」ともいう。)としては、例えば、下記化学式(c1)で表されるフェノール性水酸基含有化合物と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物と、のエステル化反応生成物(以下「(C1)成分」ともいう。)が好適なものとして挙げられる。
【0107】
【化19】
【0108】
1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物としては、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル化合物等が挙げられ、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物が好ましい。
【0109】
以下に、(C1)成分の好適な具体例を示す。
【0110】
【化20】
[式(c1-1)中、D~Dは、それぞれ独立に水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を表す。D~Dのうち少なくとも1つは、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を表す。]
【0111】
前記(C1)成分のエステル化率は、50~70%であることが好ましく、55~65%であることがより好ましい。該エステル化率が50%以上であると、アルカリ現像後の膜減りがより抑制され、残膜率が高まる。該エステル化率が70%以下であれば、保存安定性がより向上する。
ここでいう「エステル化率」とは、前記式(c1-1)で表される化合物については、式(c1-1)中のD~Dが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基で置換されている割合を示す。
前記(C1)成分は、非常に安価でありながら、高感度化を図れる点からも好ましい。
【0112】
また、(C)成分としては、前記(C1)成分以外のその他感光剤成分(以下これを「(C2)成分」ともいう。)を用いることができる。
(C2)成分としては、例えば、下記のフェノール性水酸基含有化合物((c2-phe)成分)と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物(好ましくは、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物、又は、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル化合物)と、のエステル化反応生成物が好適なものとして挙げられる。
【0113】
前記(c2-phe)成分としては、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、1-[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1-[1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(3’-フルオロ-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4-トリヒドロキシフェニル-4’-ヒドロキシフェニルメタン、1,1-ジ(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-5-ヒドロキシフェノール等が挙げられる。
【0114】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態の分離層形成用組成物においては、上記の中でも、(C)成分として(C1)成分を用いることが好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、95質量部以下であることが好ましく、50~95質量部がより好ましく、60~90質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、(C)成分を含有しないことが好ましい。
【0115】
≪有機溶剤成分≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、塗布作業性等を調整するため、有機溶剤成分(以下「(S)成分」ともいう。)を含有してもよい。
(S)成分としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素;炭素原子数4から15の分岐鎖状の炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-1-オール、テルピネン-4-オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(S)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
【0116】
本実施形態の分離層形成用組成物において、(S)成分の使用量は、特に限定されず、支持基体等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚や塗布性に応じて適宜設定される。好ましくは、分離層形成用組成物中の上記(P)成分の総量が、該組成物の全質量(100質量%)に対して、70質量%以下、好ましくは5~50質量%の範囲内、より好ましくは10~50質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0117】
≪界面活性剤≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、塗布作業性等を調整するため、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。シリコーン系界面活性剤には、例えばBYK-077、BYK-085、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380、BYK-390(以上、BYK Chemie社製)等を用いることができる。フッ素系界面活性剤としては、例えばF-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF-1132、TF-1027SF、TF-1441、TF-1442(以上、DIC株式会社製);ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、オムノバ社製)等を用いることができる。
【0118】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する界面活性剤は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.02~2質量部がより好ましく、0.03~1質量部がさらに好ましい。
界面活性剤の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、分離層形成用組成物を支持基体上に塗布した際に、平坦性の高い分離層を容易に形成することができる。
【0119】
本実施形態の分離層形成用組成物によれば、樹脂(P)と、スルホン酸若しくはスルホン酸誘導体の金属塩(M)と、を含有することにより、低温(例えば、280℃以下)で硬化させた場合にも、光応答性が高く、且つ密着性が高い分離層を形成することができる。そのため、本実施形態の分離層形成用組成物を用いて分離層を形成することにより、支持基体上で基板の加工を適切に行うことができ、加工後は基板を支持基体から容易に分離することができる。さらに、本実施形態の分離層形成用組成物は、保管安定性が高い。例えば、従来の分離層形成用組成物では、40℃で3ヶ月保管すると増粘が生じるが多いが、本実施形態の分離層形成用組成物は、増粘は生じない。
【0120】
(分離層付き支持基体)
本発明の第2の態様に係る分離層付き支持基体は、支持基体と、前記第1の態様に係る分離層形成用組成物を用いて前記支持基体上に形成された分離層と、を備えたものである。
本実施形態の分離層付き支持基体は、支持基体上に、上述した実施形態の分離層形成用組成物を用いて形成された分離層を備える。したがって、かかる分離層付き支持基体においては、光反応性、密着性が高められている。
【0121】
<支持基体>
支持基体は、光を透過する特性を有する。支持基体は、基板を支持する部材であり、分離層を介して基板に貼り合わされる。そのため、支持基体としては、封止体の薄化、基板の搬送、基板への実装等の際に、基板の破損又は変形を防ぐために必要な強度を有していることが好ましい。また、支持基体は、分離層を変質させることができる波長の光を透過するものが好ましい。
支持基体の材料としては、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂等が用いられる。支持基体の形状としては、例えば矩形、円形等が挙げられるが、これに限定されない。
また、支持基体としては、さらなる高密度集積化や生産効率の向上のために、円形である支持基体のサイズを大型化したもの、上面視における形状が四角形である大型パネルを用いることもできる。
【0122】
<分離層>
分離層は、第1の態様に係る分離層形成用組成物を用いて形成することができる。分離層は、分離層形成用組成物により形成された分離層形成用組成物層を焼成することにより得られる焼成体からなる層である。この分離層は、支持基体を透過して照射される光を吸収することによって好適に変質する。
尚、分離層は、本発明における本質的な特性を損なわない範囲で、光を吸収する構造を有していない材料が配合された層であってもよいが、光反応性、分離性の観点から、光を吸収する材料のみから形成されていることが好ましい。
【0123】
ここでいう焼成体とは、第1の態様に係る分離層形成用組成物を焼成したものをいう。この焼成体は、大気環境下、つまり、酸素が存在する環境下、第1の態様に係る分離層形成用組成物を焼成することで形成されている。本実施形態における分離層を構成する焼成体は、波長600nm以下の範囲の光(例えば、532nm)を好適に吸収することができ、好ましくは高い密着性を備える。本実施形態における分離層を構成する焼成体は、第1の態様に係る分離層形成用組成物を280℃以下の温度(例えば、260℃)で焼成して得られたものが好ましい。
【0124】
分離層が「変質する」とは、分離層が外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層と接する層との接着力が低下した状態になる現象をいう。分離層は、光を吸収することによって脆くなり、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。かかる分離層の変質は、吸収した光のエネルギーによる分解、立体配置の変化又は官能基の解離等を生じることで起こる。
【0125】
分離層の厚さは、例えば0.05μm以上、50μm以下の範囲内であることが好ましく、0.3μm以上、10μm以下の範囲内であることがより好ましい。
分離層の厚さが0.05μm以上、50μm以下の範囲内であれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0126】
例えば図1Bに示す積層体10において、分離層は、接着層に接する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、接着層の形成が容易に行え、かつ、支持基体と基板とを均一に貼り付けることが容易となる。
【0127】
本実施形態の分離層付き支持基体は、後述の[分離層形成工程]の操作を同様にして行うことにより製造することができる。
【0128】
本実施形態の分離層付き支持基体は、上述した実施形態の分離層形成用組成物を適用した分離層が設けられているため、光反応性が高められており、好ましくは密着性も高められている。
【0129】
(積層体)
本発明の第3の態様に係る積層体は、光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えたものである。この分離層は、上述した実施形態の分離層形成用組成物の焼成体である。
図1Bに示した通り、本実施形態の積層体10は、支持基体1上に分離層2、接着層3、基板4がこの順に積層したものである。
【0130】
支持基体1についての説明は、上記<支持基体>における説明と同様である。
分離層2についての説明は、上記<分離層>における説明と同様である。
【0131】
<接着層>
接着層3は、支持基体1と基板4とを貼り合わせるための層であり、接着層形成用組成物を用いて形成することができる。
かかる接着層形成用組成物は、例えば熱可塑性樹脂、希釈剤、及び、添加剤等のその他成分を含有しているものが挙げられる。この熱可塑性樹脂としては、接着力を発現するものであればよく、炭化水素樹脂(好ましくはシクロオレフィンポリマー等)、アクリル-スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂、ポリサルホン系樹脂等の1種又は2種以上がることができる。希釈剤としては、上記(S)成分と同様のものが挙げられる。その他成分としては、接着層の性能を改良するための付加的樹脂、硬化性モノマー、光重合開始剤、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、熱重合禁止剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0132】
接着層3の厚さは、例えば0.1μm以上、100μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上、50μm以下の範囲内であることがより好ましい。
接着層の厚さが0.1μm以上、100μm以下の範囲内であれば、支持基体1と基板4とをより良好に貼り合わせることができる。また、接着層の厚さが1μm以上であることにより、基板を支持基体上に充分に固定することができ、接着層の厚さが50μm以下であることにより、後の除去工程において接着層を容易に除去することができる。
【0133】
<基板>
基板4は、支持基体1に支持された状態で、薄化、実装等のプロセスに供される。基板4には、例えば集積回路や金属バンプ等の構造物が実装される。
基板4としては、典型的には、シリコンウェーハ基板が用いられるが、これに限定されず、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等を用いてもよい。
【0134】
本実施形態において、素子は、半導体素子又はその他素子であり、単層又は複数層の構造を有し得る。尚、素子が半導体素子である場合、封止基板をダイシングすることにより得られる電子部品は半導体装置となる。
【0135】
上述した実施形態の積層体は、上述した実施形態の分離層形成用組成物を適用した分離層が設けられているため、光反応性が高められて(光の照射により好適に変質して)積層体からの支持基体の分離性が良好である。
加えて、実施形態の積層体は、上述した実施形態の分離層形成用組成物を適用した分離層が設けられているため、耐薬品性が高められている。これにより、実施形態の積層体は、エッチング処理、リソグラフィー処理等で用いられる薬品等の影響によって破損しにくい。
【0136】
上述した実施形態の積層体においては、支持基体1と分離層2とが隣接しているが、これに限定されず、支持基体1と分離層2との間に他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は、光を透過する材料から構成されていればよい。これによれば、分離層2への光の入射を妨げることなく、積層体10に好ましい性質等を付与する層を適宜追加できる。分離層2を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、全ての波長の光を透過させる必要はなく、分離層2を構成する材料を変質させ得る波長の光(例えば、532nm)を透過する材料から適宜選択し得る。
【0137】
また、上述した実施形態の積層体は、支持基体1と基板4とを貼り合わせるための接着層3を備えているが、これに限定されず、支持基体1と基板4との間に分離層2のみを備えたものでもよい。この場合においては、例えば、接着層の機能も兼ね備えた分離層が用いられる。
【0138】
(積層体の製造方法)
本発明の第4の態様は、光を透過する支持基体と、基板との間に、分離層を備えた積層体の製造方法であって、分離層形成工程と、積層工程と、を有する。
【0139】
<第1実施形態>
図1A及び図1Bは、積層体の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。図1Aは、分離層形成工程を説明する図であり、図1Bは、積層工程を説明する図である。
本実施形態の積層体の製造方法においては、上記第1の態様に係る分離層形成用組成物が用いられている。
【0140】
[分離層形成工程]
実施形態における分離層形成工程は、支持基体上の一方に、第1の態様に係る分離層形成用組成物を塗布し、その後に焼成することにより分離層を形成する工程である。
図1Aでは、支持基体1上に、第1の態様に係る分離層形成用組成物を塗布し、その後に焼成することにより分離層2が形成されている(すなわち、分離層付き支持基体が作製されている)。
【0141】
支持基体1上への分離層形成用組成物の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法が挙げられる。
【0142】
分離層形成工程では、加熱環境下、又は減圧環境下、支持基体1上に塗布された分離層形成用組成物の塗工層から(S)成分を除去して成膜する。(S)成分の除去は、例えばベーク処理を、80~150℃の温度条件にて120~360秒間施して行うことができる。
その後、大気環境下、前記の塗工層から(S)成分が除去されて成る膜を焼成して、第1の態様に係る分離層形成用組成物の焼成体からなる分離層2を形成する。
【0143】
前記の塗工層から(S)成分が除去されて成る膜を焼成する際の温度は、例えば200℃以上とすることが好ましく、230℃以上とすることがより好ましく、250℃以上とすることがさらに好ましい。焼成する際の温度が、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、波長600nm以下の範囲の光(例えば、532nm)を吸収することができる分離層をより安定に形成することができる。
焼成する際の温度の上限値は、特に限定されないが、例えば300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、270℃以下がさらに好ましく、260℃以下が特に好ましい。
【0144】
焼成時間は、3分間以上、3時間以下とすることが好ましく、より好ましくは3分間以上、30分間以下である。これにより、波長600nm以下の範囲の光を吸収することができる分離層を確実に形成することができる。
【0145】
[積層工程]
実施形態における積層工程は、前記分離層を形成した前記支持基体と、前記分離層を形成していない前記基板とを、前記分離層と前記接着層とを介して積層する工程である。
図1Bでは、分離層2が形成された支持基体1と、分離層2を形成していない基板4とが、分離層2と接着層3とを介して積層され、支持基体1、分離層2、接着層3、基板4の順に積み重なった積層体10が得られている。
【0146】
積層工程の具体的な方法としては、分離層2上に、接着層形成用組成物を塗布し、加熱することにより接着層3を形成し、その後、支持基体1と基板4とを貼り合わせる方法が挙げられる。
【0147】
分離層2上への接着層形成用組成物の塗布方法は、特に限定されないが、上述した支持基体1上への分離層形成用組成物の塗布方法と同様にして行えばよい。
接着層3を形成する際のベーク処理は、例えば、温度を上昇させつつ段階的に加熱することにより行い、接着層形成用組成物から(S)成分を除去することで接着層3を形成する。
【0148】
支持基体1と基板4とを貼り合わせる方法は、接着層3上の所定位置に基板4を配置し、真空下で加熱(例えば100℃程度)しつつ、ダイボンダー等によって支持基体1と基板4とを圧着することにより行う。
【0149】
第1実施形態の積層体の製造方法によれば、上述した実施形態の分離層形成用組成物を適用して分離層が設けられるため、光反応性が高められて積層体からの支持基体の分離性が良好であり、好ましくは耐薬品性が高い積層体を製造することができる。
【0150】
上述した本実施形態の積層体の製造方法においては、分離層2が支持基体1上に形成されていたが、これに限定されず、分離層2が基板4上に形成されていてもよい。
上述した本実施形態の積層体の製造方法においては、接着層3が分離層2上に形成されていたが、これに限定されず、接着層3が基板4上に形成されていてもよい。
また、分離層2は、支持基体1上及び基板4上の両方に形成されていてもよく、この場合、支持基体1と基板4とは、分離層2、接着層3及び分離層2を介して貼り合わされる。
【0151】
<第2実施形態>
図2は、積層体の製造方法の他の実施形態を説明する概略工程図である。図2は、封止工程を説明する図である。
かかる他の実施形態の積層体の製造方法は、上記の分離層形成工程及び積層工程に加えて、さらに、封止工程を有する。
【0152】
[封止工程]
実施形態における封止工程は、前記積層工程の後、前記接着層を介して前記支持基体に貼り合わされた前記基板を、封止材により封止して封止体を作製する工程である。
図3では、接着層3上に配置された基板4の全体が、封止材により封止された封止体20(積層体)が得られている。
【0153】
封止工程においては、例えば130~170℃に加熱された封止材が、高粘度の状態を維持しつつ、基板4を覆うように、接着層3上に供給され、圧縮成形されることによって、接着層3上に封止材層5が設けられた封止体20(積層体)が作製される。
【0154】
封止材には、例えば、エポキシ系樹脂又はシリコーン系樹脂を含有する組成物を用いることができる。封止材層5は、個々の基板4毎に設けられているものではなく、接着層3上の基板4全部を覆うように設けられていることが好ましい。
【0155】
第2実施形態の積層体の製造方法によれば、上述した実施形態の分離層形成用組成物を適用して分離層及び接着層の上に基板(配線層)を備えた封止基板を好適に形成することが可能である。
【0156】
<第3実施形態>
図3A及び図3Bは、積層体の製造方法の他の実施形態を説明する概略工程図である。図3Aは、研削工程を説明する図であり、図3Bは、再配線形成工程を説明する図である。
かかる他の実施形態の積層体の製造方法は、上記の分離層形成工程、積層工程及び封止工程に加えて、さらに、研削工程と再配線形成工程とを有する。
【0157】
[研削工程]
実施形態における研削工程は、前記封止工程の後、封止体20における封止材部分(封止材層5)を、基板4の一部が露出するように研削する工程である。
封止材部分の研削は、例えば図4Aに示すように、封止材層5を、基板4とほぼ同等の厚さになるまで削ることにより行う。
【0158】
[再配線形成工程]
実施形態における再配線形成工程は、前記研削工程の後、前記の露出した基板4上に再配線層6を形成する工程である。
再配線層は、RDL(Redistribution Layer:再配線層)とも呼ばれ、素子に接続する配線を構成する薄膜の配線体であり、単層又は複数層の構造を有し得る。例えば、再配線層は、誘電体(酸化シリコン(SiO)、感光性エポキシ等の感光性樹脂など)に、導電体(アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、金、銀等の金属及び銀-錫合金等の合金)によって配線が形成されたものであり得るが、これに限定されない。
【0159】
再配線層6を形成する方法としては、まず、封止材層5上に、酸化シリコン(SiO)、感光性樹脂等の誘電体層を形成する。酸化シリコンからなる誘電体層は、例えばスパッタ法、真空蒸着法等により形成することができる。感光性樹脂からなる誘電体層は、例えばスピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により、封止材層5上に、感光性樹脂を塗布することで形成することができる。
【0160】
続いて、誘電体層に、金属等の導電体によって配線を形成する。
配線を形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィー(レジストリソグラフィー)等のリソグラフィー処理、エッチング処理等の公知の半導体プロセス手法を用いることができる。このような、リソグラフィー処理としては、例えば、ポジ型レジスト材料を用いたリソグラフィー処理、ネガ型レジスト材料を用いたリソグラフィー処理が挙げられる。
【0161】
このように、フォトリソグラフィー処理及びエッチング処理等を行う際、分離層2は、フッ化水素酸等の酸、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ、又はレジスト材料を溶解するためのレジスト溶剤に曝される。特に、ファンアウト型技術においては、レジスト溶剤として、PGMEA、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)又はシクロヘキサノン等が用いられる。
しかしながら、上述した実施形態の分離層形成用組成物を用いて分離層を形成することにより、分離層は高い耐薬品性を備えている。このため、分離層は、酸、アルカリのみならず、レジスト溶剤に曝されても、溶解又は剥離しにくい。
このように、封止材層5上に、再配線層6を好適に形成することができる。
【0162】
第3実施形態の積層体の製造方法によれば、支持基体1と、分離層2と、接着層3と、基板4を覆う封止材層5と、再配線層6と、がこの順に積層されてなる積層体30を安定に製造することができる。
かかる積層体30は、基板4に設けられた端子がチップエリア外に広がる再配線層6に実装される、ファンアウト型技術に基づく過程において作製される積層体である。
【0163】
本実施形態の積層体の製造方法においては、さらに、再配線層6上にバンプの形成、又は素子の実装を行うことができる。再配線層6上への素子の実装は、例えば、チップマウンター等を用いて行うことができる。
【0164】
(電子部品の製造方法)
本発明の第5の態様に係る電子部品の製造方法は、前記第4の態様に係る積層体の製造方法により積層体を得た後、分離工程と、除去工程と、を有する。
【0165】
図4A及び図4Bは、半導体パッケージ(電子部品)の製造方法の一実施形態を説明する概略工程図である。図4Aは、第3実施形態の製造方法により製造された積層体に光(矢印)を照射する様子を示す図であり、図4Bは、分離工程を説明する図であり、図4Cは、除去工程を説明する図である。
【0166】
[分離工程]
実施形態における分離工程は、支持基体1を介して分離層2に光(矢印)を照射して、分離層2を変質させることにより、積層体30から支持基体1を分離する工程である。
【0167】
図4Aに示すように、分離工程では、支持基体1を介して、分離層2に光(矢印)を照射することで、分離層2を変質させる。
分離層2を変質させ得る波長としては、例えば600nm以下の範囲(例えば、532nm)が挙げられる。
照射する光の種類及び波長は、支持基体1の透過性、及び分離層2の材質に応じて適宜選択すればよく、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、COレーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、非レーザ光を用いることができる。これにより、分離層2を変質させて、支持基体1と基板4とを容易に分離可能な状態とすることができる。
【0168】
レーザ光を照射する場合、レーザ光照射条件の一例として、以下の条件を挙げることができる。
レーザ光の平均出力値は、1.0W以上、5.0W以下が好ましく、3.0W以上、4.0W以下がより好ましい。レーザ光の繰り返し周波数は、20kHz以上、60kHz以下が好ましく、30kHz以上、50kHz以下がより好ましい。レーザ光の走査速度は、100mm/s以上、10000mm/s以下が好ましい。
【0169】
分離層2に光(矢印)を照射して分離層2を変質させた後、図4Bに示すように、積層体30から支持基体1を分離する。
例えば、支持基体1と基板4とが互いに離れる方向に力を加えることにより、支持基体1と基板4とを分離する。具体的には、支持基体1又は基板4側(再配線層6)の一方をステージに固定した状態で、他方をベローズパッド等の吸着パッドを備えた分離プレートにより吸着保持しつつ持ち上げることにより、支持基体1と基板4とを分離することができる。
積層体30に加える力は、積層体30の大きさ等により適宜調整すればよく、限定されるものではないが、例えば、直径が300mm程度の積層体であれば、0.1~5kgf(0.98~49N)程度の力を加えることによって、支持基体1と基板4とを好適に分離することができる。
【0170】
[除去工程]
実施形態における除去工程は、前記分離工程の後、基板4に付着する接着層3及び分離層2を除去する工程である。
図4Bでは、分離工程の後、基板4に接着層3及び分離層2が付着している。本実施形態では、除去工程において、基板4に付着する接着層3及び分離層2を除去することにより、図4Cに示す電子部品40が得られている。
【0171】
基板4に付着する接着層3等を除去する方法としては、例えば、洗浄液を用いて接着層3及び分離層2の残渣を除去する方法、又はプラズマを照射する方法が挙げられる。
洗浄液には、有機溶剤を含有する洗浄液が好適に用いられる。有機溶剤としては、分離層形成用組成物に配合の有機溶剤、接着層形成用組成物に配合の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0172】
<その他実施形態>
図5A~5Cは、半導体パッケージ(電子部品)の製造方法の他の実施形態を説明する概略工程図である。図5Aは、本発明を適用した積層体の他の実施形態を示す模式図であり、図5Bは、分離工程を説明する図であり、図5Cは、除去工程を説明する図である。
【0173】
図5Aに示す実施形態の積層体50は、最表面51s側から、支持基体51、分離層52、配線層57、基板54、封止材層55がこの順に積層したものである。
【0174】
支持基体51についての説明は、上記<支持基体>における説明と同様である。
分離層52についての説明は、上記<分離層>における説明と同様である。
【0175】
配線層57は、例えば、誘電体(酸化シリコン(SiO)、感光性エポキシ等の感光性樹脂など)に、導電体(アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、金、銀等の金属及び銀-錫合金等の合金)によって配線が形成されたものが挙げられる。
基板54についての説明は、上記<基板>における説明と同様である。
封止材層55は、例えば、エポキシ系樹脂又はシリコーン系樹脂を含有する組成物を用いて形成されたものが挙げられる。
【0176】
積層体50は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、支持基体51の最表面51sと反対側の面に、分離層52を形成する。かかる分離層52の形成は、上記[分離層形成工程]と同様にして行えばよい。
次いで、分離層52の支持基体51と反対側の面に、配線層57を形成する。かかる配線層57の形成は、上記[再配線形成工程]と同様にして行えばよい。
次いで、配線層57の分離層52と反対側の面に、例えばバンプを介して、基板54を貼り合わせる。
次いで、配線層57に貼り合わされた基板54を覆うように封止材により封止して、封止材層55を形成する。かかる封止材層55の形成は、上記[封止工程]と同様にして行えばよい。これにより、積層体50が製造される。
【0177】
図5Aに示すように、実施形態における分離工程では、支持基体51を介して分離層52に光(矢印)を照射して、分離層52を変質させる。
分離層52に光(矢印)を照射して分離層52を変質させた後、図5Bに示すように、積層体50から支持基体51を分離する。かかる分離工程における操作は、上記[分離工程]における操作と同様にして行えばよい。
【0178】
図5Cに示すように、実施形態における除去工程では、前記分離工程の後、配線層57に付着する分離層52を除去することにより、電子部品60が得られている。
配線層57に付着する分離層52を除去する方法としては、例えば、プラズマを照射する方法、又は洗浄液を用いて分離層52の残渣を除去する方法が挙げられる。前記プラズマとしては、酸素プラズマが好適に用いられる。
【0179】
本実施形態の電子部品の製造方法は、上記の除去工程の後、さらに、電子部品に対してソルダーボール形成、ダイシング、又は酸化膜形成等の処理を行ってもよい。
【実施例0180】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0181】
<分離層形成用組成物の調製>
(実施例1~9、比較例1)
表1に示す各成分を混合して溶解し、各例の分離層形成用組成物をそれぞれ調製した。
【0182】
【表1】
【0183】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
【0184】
(P)-1:下記化学式(p1-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂、重量平均分子量11600、分子量分散度2.17。
(P)-2:下記化学式(p1-2)で表される繰り返し単位を有する樹脂、重量平均分子量2320、分子量分散度1.8。n2≒3。
(P)-3:下記化学式(p2-2)で表される樹脂。
(P)-4:カシューベンゾオキサジン樹脂(CR-276(商品名)、東北化工株式会社)。
【0185】
【化21】
【0186】
【化22】
【0187】
【化23】
【0188】
(M)-1:下記化学式(m1-1)で表されるスルホン酸金属塩。
(M)-2:下記化学式(m1-2)で表されるスルホン酸金属塩。
(M)-3:下記化学式(m1-3)で表されるスルホン酸金属塩。
(M)-4:下記化学式(m1-4)で表されるスルホン酸金属塩。
(M)-5:下記化学式(m2-1)で表されるスルホンイミド金属塩。
(M)-6:下記化学式(m2-2)で表されるスルホンイミド金属塩。
(M)-7:下記化学式(m2-3)で表されるスルホンイミド金属塩。
【0189】
【化24】
【0190】
【化25】
【0191】
(T)-1:CXC-1614(熱酸発生剤、KING INDUSTRY社製)。
【0192】
【化26】
【0193】
(Ad)-1:BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)。
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)。
【0194】
<分離層の形成>
ベアガラス支持基体(12インチ、厚さ0.7mm)上に、各例の分離層形成用組成物をそれぞれスピン塗布し、温度100℃で300秒間の条件で加熱し、続いて、温度150℃で300秒間の条件で加熱することにより溶剤を除去して、膜厚1.8μmの膜を形成した。
次いで、形成された膜を、大気環境下、温度300℃又は260℃で20分間の条件で焼成して、ベアガラス支持基体上に分離層を形成することにより、分離層付き支持基体を得た。
【0195】
[分離層における光の透過率の評価]
上述した<分離層の形成>において、各例の分離層形成用組成物を用いて形成した焼成前の状態の膜、及び焼成後の状態の膜(分離層)に対し、分光分析測定装置UV-3600(株式会社島津製作所製)を用いて、波長380~780nmの光を照射することにより、ベアガラス支持基体上に形成された各膜における波長532nmの光の透過率(%)を評価した。この評価結果を表2に示した。
【0196】
[分離層におけるレーザ反応性の評価]
各例の分離層形成用組成物を用いて形成した分離層に対し、走査速度7200mm/秒、周波数40kHz、出力(電流値)24A、照射ピッチ140μmの条件にて、波長532nmのレーザ光を照射することにより、レーザ反応性の評価を行った。
かかるレーザ反応性の評価は、顕微鏡VHX-600(Keyence社製)を用いて、分離層に照射されたレーザ光の痕跡の状態を観察し、分離層表面におけるレーザ光の痕跡の大きさ(レーザ打痕径/μm)を測定した。レーザ打痕径を下記評価基準に従って評価した。この評価結果を表2に示した。
評価基準
◎:レーザ打痕径160μm以上
〇:レーザ打痕径150μm以上160μm未満
×:レーザ打痕径150μm未満
[密着性の評価]
各例の分離層形成用組成物を用いて形成した分離層に対し、チタン/銅をスパッタリングして、分離層上にチタン/銅の薄膜を形成した。前記薄膜に対して、JIS規格(JIS K5400)を参考に、クロスカット試験を行った。前記薄膜に対して、カッターガイドを用いて直交する縦横11本ずつの平行線を1mmの間隔で引き、1cmの中に100個の正方形ができるように碁盤目状の切り傷を付けた。次に、碁盤目に対してセロハンテープを貼り付け、引き剥がした。その後、碁盤目の状態を確認し、密着性の評価を行った。その結果を、下記評価基準に従って評価した。この評価結果を表2に示した。
評価基準
〇:剥がれが観察されなかった。
×:剥がれが観察された。
【0197】
【表2】
【0198】
表2に示す結果から、実施例1~9の分離層形成用組成物を用いて形成された分離層は、いずれも、比較例1の分離層形成用組成物を用いて形成された分離層に比べて、低温(260℃)で硬化した際に、光の透過率が低くなり、レーザ反応性及び密着性が向上することが確認された。
【0199】
<積層体の製造>
上述した<分離層の形成>と同様の方法により、ベアガラス支持基体(12インチ、厚さ0.7mm)上に、各実施例の分離層形成用組成物をそれぞれスピン塗布し、温度100℃で300秒間の条件で加熱し、続いて、温度150℃で300秒間の条件で加熱することにより溶剤を除去して、膜を形成した。次いで、この形成された膜を、大気環境下、260℃で20分間の条件で焼成して、ベアガラス支持基体上に厚さ0.5μmの分離層を形成した(分離層形成工程)。
一方、半導体ウェーハ基板(12インチ、シリコン)に、接着剤組成物TZNR(登録商標)-A4012(東京応化工業株式会社製)をスピン塗布し、90℃、160℃、220℃の温度で各4分間ベークして、膜厚50μmの接着層を形成した。
次に、前記の、分離層を形成したベアガラス支持基体と、接着層を形成した半導体ウェーハ基板とを、半導体ウェーハ基板、接着層、分離層及びベアガラス支持基体がこの順になるように重ね合わせ、真空下(5Pa)、215℃の条件において、4000kgf(約39.2kN)の貼付圧力により2分間押圧した。これにより、ベアガラス支持基体と半導体ウェーハ基板とを、分離層と接着層とを介して積層して、積層体を得た(積層工程)。
【0200】
積層体を得た後、積層体の支持基体側から、分離層に対し、走査速度3000mm/秒、周波数40kHz、出力(電流値)24A、照射ピッチ140μmの条件にて、波長532nmのレーザ光を照射した(分離工程)。この後、p-メンタンを用いて接着層の洗浄除去を行った(除去工程)。
以上の操作により、積層体が備える半導体ウェーハ基板から、支持基体が分離することが確認された。
【0201】
<電子部品の製造例(1)>
上述した<分離層の形成>と同様の方法により、ベアガラス支持基体(12インチ、厚さ0.7mm)上に、各実施例の分離層形成用組成物をそれぞれスピン塗布し、温度100℃で300秒間の条件で加熱し、続いて、温度150℃で300秒間の条件で加熱することにより溶剤を除去して、膜を形成した。次いで、この形成された膜を、大気環境下、260℃で20分間の条件で焼成して、ベアガラス支持基体上に厚さ0.5μmの分離層を形成することにより、分離層付き支持基体を得た(分離層形成工程)。
その後、この分離層上に、接着剤組成物TZNR(登録商標)-A4012(東京応化工業株式会社製)をスピン塗布し、90℃、160℃、220℃の温度で各4分間ベークして、膜厚50μmの接着層を形成した。
次いで、ダイボンダー(TRESKY社製)を用い、ダイボンダーのプレートを150℃に加熱し、35Nの圧力で1秒間、前記接着層上に、2mm角のシリコン製のベアチップを圧着した。シリコン製のベアチップを配置後、窒素雰囲気下、200℃で1時間加熱して、積層体を得た(積層工程)。
【0202】
得られた積層体を、50℃に加熱したプレート上に載置し、エポキシ樹脂を含む封止材12gを、ベアチップを覆うように乗せて、10Paよりも低い減圧条件下、貼付装置を用い、130℃に加熱した押圧用プレートにて1トンの圧力を加え、5分間圧縮した。このようにして、接着層上に配置されたベアチップを封止材により封止して、封止体を作製した(封止工程)。
【0203】
封止体を作製した後、封止体の支持基体側から、分離層に対し、走査速度3000mm/秒、周波数40kHz、出力(電流値)24A、照射ピッチ140μmの条件にて、波長532nmのレーザ光を照射した(分離工程)。この後、p-メンタンを用いて接着層の洗浄除去を行った(除去工程)。
以上の操作により、封止体から、支持基体が分離することが確認された。上記のようにして電子部品を得た。
【0204】
<電子部品の製造例(2)>
上述した<分離層の形成>と同様の方法により、ベアガラス支持基体(12インチ、厚さ0.7mm)上に、各実施例の分離層形成用組成物をスピン塗布し、温度90℃で180秒間の条件で加熱することにより溶剤を除去して、膜を形成した。次いで、この形成された膜を、大気環境下、260℃で10分間の条件で焼成して、ベアガラス支持基体上に厚さ0.35μmの分離層を形成することにより、分離層付き支持基体を得た(分離層形成工程)。
次いで、前記分離層上に、配線層形成用材料(商品名TMMR S2000)を塗布し、大気環境下、90℃で3分間の条件で焼成することにより、分離層上に厚さ10μmの配線層を形成して、積層体を得た。
【0205】
配線層を形成した後、積層体のベアガラス支持基体側から、分離層に対し、照射量200mJ/cm、出力(電流値)22A、照射ピッチ80μmの条件にて、波長532nmのレーザ光を照射した。次いで、洗浄液としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に浸漬した後、90℃で5分間の条件でベークした。続けて、さらに、窒素雰囲気下、200℃で60分間の条件による焼成を3回繰り返して行うことにより、積層体から支持基体を分離させた(分離工程)。その後、配線層の分離層側の面に、酸素プラズマを照射(電力2000W、酸素の流量2000sccm、圧力75Pa、温度50℃、照射時間5分間)し、配線層に付着した分離層の除去を行った(除去工程)。
以上の操作により、積層体から、支持基体が分離することが確認された。上記のようにして電子部品を得た。
【符号の説明】
【0206】
1 支持基体
2 分離層
3 接着層
4 基板
5 封止材層
6 再配線層
10 積層体
20 封止体
30 積層体
40 電子部品
50 積層体
51 支持基体
52 分離層
54 基板
55 封止材層
57 配線層
60 電子部品
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C