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特開2023-172297分離層形成用組成物、分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172297
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】分離層形成用組成物、分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20231129BHJP
【FI】
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083995
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 有希
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 和英
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB11C
4F100AG00A
4F100AH03B
4F100AK01B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00C
4F100EH46B
4F100EJ08B
4F100GB43
4F100JL14B
4F100JN01A
(57)【要約】      (修正有)
【課題】支持基体と基板との間に分離層を備えた積層体において、短波長の光で分離可能な分離層を形成できる分離層形成用組成物等を提供する。
【解決手段】光を透過する支持基体と、仮固定対象物との間に分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するための分離層形成用組成物であって、一般式(p1)で表される化合物(P1)を含有する、分離層形成用組成物。Lbは炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し;Rb及びRbは、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表し;Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する支持基体と、仮固定対象物との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するための分離層形成用組成物であって、
下記一般式(p1)で表される化合物(P1)を含有する、分離層形成用組成物。
【化1】
[式中、Lbは炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し;Rb及びRbは、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表し;Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。]
【請求項2】
光を透過する支持基体と、
前記支持基体上に形成された分離層と、を含み、
前記分離層が、請求項1に記載の分離層形成用組成物の硬化物である、
分離層付き支持基体。
【請求項3】
光を透過する支持基体と、
前記支持基体上に形成された分離層と、
前記分離層上に仮固定された仮固定対象物と、を含み、
前記分離層が、請求項1に記載の分離層形成用組成物の硬化物である、
積層体。
【請求項4】
前記仮固定対象物が、配線層を含む、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記仮固定対象物が、配線層及び半導体素子を含み、
前記支持基体、前記分離層、前記配線層、及び前記半導体素子が、この順で積層されている、
請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
光を透過する支持基体の一方の面に、請求項1に記載の分離層形成用組成物を塗布し、前記分離層形成用組成物を硬化させることにより、分離層を形成する工程と、
前記分離層上に仮固定対象物を仮固定する工程と、
前記仮固定対象物を処理する工程と、
前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記処理後の仮固定対象物から前記支持基体を分離する工程と、
を含む、仮固定対象物の処理方法。
【請求項7】
光を透過する支持基体の一方の面に、請求項1に記載の分離層形成用組成物を塗布し、前記分離層形成用組成物を硬化させることにより、分離層を形成する工程と、
前記分離層上に、配線層を形成する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項8】
前記配線層上に、半導体素子を搭載する工程をさらに含む、請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記半導体素子を、封止材により封止して封止層を形成する工程をさらに含む、
請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の積層体の製造方法により、積層体を製造する工程と、
前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する工程と、
を含む、電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記光が、400nm以下の波長の光である、請求項10に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離層形成用組成物、分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を含む半導体パッケージ(電子部品)には、対応サイズに応じて様々な形態が存在し、例えばWLP(Wafer Level Package)、PLP(Panel Level Package)等がある。
半導体パッケージの技術としては、ファンイン型技術、ファンアウト型技術が挙げられる。ファンイン型技術による半導体パッケージとしては、ベアチップ端部にある端子をチップエリア内に再配置する、ファンイン型WLP(Fan-in Wafer Level Package)等が知られている。ファンアウト型技術による半導体パッケージとしては、該端子をチップエリア外に再配置する、ファンアウト型WLP(Fan-out Wafer Level Package)等が知られている。
【0003】
ファンアウト型の半導体パッケージの製造方法として、ウェハレベルパッケージングにおいては、モールド・ファーストと呼ばれる方法と、RDLファーストと呼ばれる方法とがある。モールド・ファーストでは、支持基体上で半導体チップを封止する封止層を形成した後で、再配線層を形成する。RDLファーストでは、支持基体上で再配線層を形成した後で、再配線層上に半導体チップを搭載し、封止層を形成する(例えば、特許文献1)。半導体パッケージの製造後、支持基体は、封止層又は再配線層から剥離される。
RDLファーストは、微細な再配線層の形成が容易である点、高価な半導体チップを正常に形成された再配線層上にのみ搭載できる点等の利点がある。
【0004】
半導体パッケージ製造後に支持基体を剥離するために、支持基体上に分離層を形成する方法が採用されている。例えば、特許文献2には、光透過性の支持基体と、基板とを、支持基体側に設けられた光熱変換層(分離層)及び接着層を介して貼り合わせ、基板を加工処理した後、支持基体側から分離層に放射エネルギー(光)を照射して分離層を変質させて分解することにより、加工処理後の基板と、支持基体とを分離して積層体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-025328号公報
【特許文献2】特開2004-64040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、支持基体の剥離には、波長532nmのレーザ光が用いられることが多い。しかし、長波長のレーザ光は、光熱反応により熱分解反応が起こりやすく、加工後の電子部品に熱ダメージを与えるリスクが指摘されている。RDLファーストでは、分離層と電子部品との間に接着層が存在しないため、電子部品が、支持基体分離の際に用いるレーザ光によるダメージをより受けやすい。レーザ光による電子部品のダメージリスクを回避するためには、より短波長のレーザ光を用いることが望ましい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、支持基体と仮固定対象物との間に分離層を備えた積層体において、短波長の光で分離可能な分離層を形成できる分離層形成用組成物、これを用いた分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、光を透過する支持基体と、仮固定対象物との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するための分離層形成用組成物であって、下記一般式(p1)で表される化合物(P1)を含有する、分離層形成用組成物。
【化1】
[式中、Lbは炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し;Rb及びRbは、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表し;Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。]
である。
【0008】
本発明の第2の態様は、光を透過する支持基体と、前記支持基体上に形成された分離層と、を含み、前記分離層が、前記第1の態様の分離層形成用組成物の硬化物である、分離層付き支持基体である。
【0009】
本発明の第3の態様は、光を透過する支持基体と、前記支持基体上に形成された分離層と、前記分離層上に仮固定された仮固定対象物と、を含み、前記分離層が、前記第1の態様の分離層形成用組成物の硬化物である、積層体である。
【0010】
本発明の第4の態様は、光を透過する支持基体の一方の面に、前記第1の態様の分離層形成用組成物を塗布し、前記分離層形成用組成物を硬化させることにより、分離層を形成する工程と、前記分離層上に仮固定対象物を仮固定する工程と、前記仮固定対象物を処理する工程と、前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記処理後の仮固定対象物から前記支持基体を分離する工程と、を含む、仮固定対象物の処理方法である。
【0011】
本発明の第5の態様は、光を透過する支持基体の一方の面に、前記第1の態様の分離層形成用組成物を塗布し、前記分離層形成用組成物を硬化させることにより、分離層を形成する工程と、前記分離層上に、配線層を形成する工程と、を含む、積層体の製造方法である。
【0012】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様の積層体の製造方法により、積層体を製造する工程と、前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する工程と、を含む、電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持基体と仮固定対象物との間に分離層を備えた積層体において、短波長の光で分離可能な分離層を形成できる分離層形成用組成物、これを用いた分離層付き支持基体、積層体及びその製造方法、並びに電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の分離層付き支持基体を示す模式図である。
図2】一実施形態の積層体を示す模式図である。
図3】一実施形態の積層体を示す模式図である。
図4】一実施形態の積層体を示す模式図である。
図5】一実施形態の電子部品の製造方法における分離工程を説明する模式図である。
図6】一実施形態の電子部品の製造方法で得られる電子部品(半導体パッケージ)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「繰り返し単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
【0016】
「スチレン」とは、スチレンおよびスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
【0017】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素原子数1~5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
【0018】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0019】
(分離層形成用組成物)
本発明の第1の態様に係る分離層形成用組成物は、光を透過する支持基体と、仮固定対象物との間に、分離層を備えた積層体において、前記支持基体側からの光の照射により変質して、前記積層体から前記支持基体を分離可能とする前記分離層を形成するためのものである。本実施形態の分離層形成用組成物は、下記一般式(p1)で表される化合物(P1)を含有する。
【0020】
図2は、本発明を適用した積層体の一実施形態を示している。
図2に示す積層体20は、支持基体1と仮固定対象物である配線層3との間に、分離層2を備えたものであり、支持基体1、分離層2、及び仮固定対象物(配線層3)がこの順に積層している。
支持基体1は、光を透過する材料からなる。積層体20においては、分離層2に対し、支持基体1側から光を照射することによって、分離層2が変質して分解するため、積層体20から支持基体1が分離する。
この積層体20における分離層2は、本実施形態の分離層形成用組成物を用いて形成することができる。
【0021】
<樹脂成分(P)>
本実施形態の分離層形成用組成物は、樹脂成分(P)(以下「(P)成分」ともいう)を含有する。
【0022】
≪(P1)成分≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、(P)成分として、下記一般式(p1)で表される化合物(P1)(以下、「(P1)成分」ともいう)を含む。
【0023】
【化2】
[式中、Lbは炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し;Rb及びRbは、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表し;Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。]
【0024】
前記一般式(p1)中、Lbは、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表す。Lbにおける脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状構造を有してもよい。Lbにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0025】
直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数1~8が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1、2、又は3が特に好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基は、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数2~8が好ましく、炭素原子数2~6がより好ましく、炭素原子数2~4がさらに好ましく、炭素原子数2又は3が特に好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0026】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、上述の直鎖状の脂肪族炭化水素基または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数3~10が好ましく、炭素原子数3~8がより好ましく、炭素原子数3~6がさらに好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式でもよく、単環式でもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素原子数3~6が好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素原子数7~10が好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン等が挙げられる。
【0027】
Lbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~8が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1、2又は3が特に好ましい。
【0028】
一般式(p1)中、Rb及びRbは、それぞれ独立に、炭素原子数12~24の炭化水素基を表す。Rb及びRbにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよい。
【0029】
Rb及びRbにおける脂肪族炭化水素基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよく、環状構造を有してもよい。Rb及びRbにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよい。Rb及びRbにおける脂肪族炭化水素基は、炭素原子数12~20が好ましく、炭素原子数12~18がより好ましく、炭素原子数14~16がさらに好ましい。
【0030】
Rb及びRbにおける構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
【0031】
Rb及びRbにおける芳香族炭化水素基は、単環式でもよく、多環式でもよい。芳香族炭化水素基が含む芳香環は、炭素原子数5~20が好ましく、炭素原子数6~15がより好ましく、炭素原子数6~12がさらに好ましい。芳香環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環に結合するアルキレン基は、炭素原子数1~12が好ましく、炭素原子数1~10がより好ましい。
【0032】
Rb及びRbは、直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。Rb及びRbが不飽和脂肪族炭化水素基である場合、不飽和結合の数は、特に限定されないが、例えば、1~5個、1~4個、1~3個、又は1個若しくは2個が挙げられる。中でも、Rb及びRbは、直鎖状のアルキル基、直鎖状のアルケニル基、直鎖状のアルカジエン基、又は直鎖状のアルカトリエン基が好ましい。
【0033】
Rb及びRbの具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0034】
【化3】
【0035】
前記式(p1)中、Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rb~Rbにおける置換基は、特に限定されない。Rb~Rbにおける置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、及びアミノ基、並びこれらの基を置換基として有してもよいアルキル基等が挙げられる。
Rb~Rbにおけるアルキル基としては、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~4がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましく、炭素原子数1又は2が特に好ましい。アルキル基は、置換基を有してもよく、有しなくてもよいが、有しないことが好ましい。
Rb~Rbにおけるアルコキシ基としては、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~4がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましく、炭素原子数1又は2が特に好ましい。
Rb~Rbにおけるアルキル基又はアルコキシ基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。
【0036】
Rb~Rbは、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0037】
(P1)成分の具体例を以下に示すが、これに限定されない。
【0038】
【化4】
[式中、Rは、前記式(Rb1-1)~(Rb1-4)のいずれかで表される基を表す。複数のRは、相互に同じでもよく、異なってもよい。]
【0039】
(P1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(P1)成分は、前記式(p1-1)中のRが互いに異なる化合物の混合物であってもよい。
(P)成分における(P1)成分の割合は、(P)成分の全質量(100質量%)に対し、50~100質量%が好ましく、60~100質量%が好ましく、70~100質量%がさらに好ましく、80~100質量%又は90~100質量%が特に好ましい。
(P1)成分の含有量が、前記の好ましい範囲内であると、短波長の光(例えば、400nm以下)に対する分離層の光反応性をより高められやすくなる。
【0040】
≪(P2)成分≫
(P)成分は、上記(P1)成分に加えて、上記(P1)成分以外の樹脂成分(以下、「(P2)成分」ともいう)を含んでもよい。(P2)成分としては、フェノール誘導体樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ヒドロキシフェニルシルセスキオキサン樹脂、ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン樹脂、フェノール骨格含有アクリル樹脂等が挙げられる。
【0041】
(P2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(P)成分における(P2)成分の割合は、(P)成分の全質量(100質量%)に対し、0~50質量%が好ましく、0~40質量%が好ましく、0~30質量%がさらに好ましく、0~20質量%又は0~10質量%が特に好ましい。
(P2)成分の含有量が、前記の好ましい範囲内であると、短波長の光(例えば、400nm以下)に対する分離層の光反応性をより高められやすくなる。
【0042】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(P)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物中の(P)成分の含有量は、形成しようとする分離層の厚さ等に応じて調整すればよい。分離層形成用組成物中の(P)成分の含有量は、例えば、当該組成物の全質量(100質量%)に対して、1~100質量%が挙げられる。(P)成分の含有量は、1~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましく、10~30質量%が特に好ましい。
(P)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、分離層の光反応性をより高められやすくなる。加えて、密着性も高められやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
【0043】
<その他成分>
本実施形態の分離層形成用組成物は、上述した(P)成分に加えて、他の成分(任意成分)を含有してもよい。
かかる任意成分としては、熱酸発生剤成分、光酸発生剤成分、感光剤成分、有機溶剤成分、界面活性剤、増感剤などが挙げられる。
【0044】
≪熱酸発生剤≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、熱酸発生剤(以下「(T)成分」ともいう。)を含有してもよい。
【0045】
(T)成分には、公知のものから適宜選択して用いることができる。(T)成分は、酸を発生させるための温度が、分離層形成用組成物を塗布した支持基体をプリベークする際の温度以上であるものが好ましく、110℃以上であるものがより好ましく、130℃以上であるものがさらに好ましい。
かかる(T)成分としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸塩、六フッ化リン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩、三フッ化ホウ素塩、三フッ化ホウ素エーテル錯化合物等が挙げられる。好ましい(T)成分として、以下に示すカチオン部とアニオン部とからなる化合物が挙げられる。
【0046】
【化5】
[式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基及びアリール基からなる群より選択される基であり、Rh01~Rh04のうちの少なくとも1つは、アリール基である。前記のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基及びアリール基からなる群より選択される基であり、Rh05~Rh07のうちの少なくとも1つは、アリール基である。前記のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。]
【0047】
・(T)成分のカチオン部について
前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04におけるアルキル基は、炭素原子数が1~20であり、炭素原子数1~10が好ましく、炭素原子数1~5がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0048】
h01~Rh04におけるアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、環式基等が挙げられる。
【0049】
アルキル基の置換基としてのアルコキシ基は、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
アルキル基の置換基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルキル基の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、炭素原子数1~5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
アルキル基の置換基としてのカルボニル基は、アルキル基を構成するメチレン基(-CH-)を置換する基(>C=O)である。
アルキル基の置換基としての環式基は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基(多環式であってもよく、単環式であってもよい)が挙げられる。ここでの芳香族炭化水素基は、後述のRh01~Rh04におけるアリール基と同様のものが挙げられる。ここでの脂環式炭化水素基において、単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0050】
前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04におけるアリール基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
h01~Rh04におけるアリール基として具体的には、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基;2つ以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。これらの中でも、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基、前記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基がより好ましく、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基、前記芳香族炭化水素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基がさらに好ましい。
【0051】
h01~Rh04におけるアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、環式基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0052】
アリール基の置換基としてのアルキル基は、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが好ましい。
アリール基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、環式基についての説明は、上述したアルキル基の置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、環式基についての説明と同様である。
アリール基の置換基としてのアルキルカルボニルオキシ基において、アルキル部分の炭素原子数は1~5が好ましく、アルキル部分はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0053】
但し、前記式(T-ca-1)中、Rh01~Rh04のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよいアリール基である。
以下に、前記式(T-ca-1)で表されるカチオンの具体例を示す。
【0054】
【化6】
【0055】
前記式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07におけるアルキル基、アリール基についての説明は、それぞれ、上述したRh01~Rh04におけるアルキル基、アリール基についての説明と同様である。
【0056】
但し、前記式(T-ca-2)中、Rh05~Rh07のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよいアリール基である。
以下に、前記式(T-ca-2)で表されるカチオンの具体例を示す。
【0057】
【化7】
【0058】
・(T)成分のアニオン部について
(T)成分のアニオン部としては、例えば、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン等が挙げられる。
これらの中でも、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオンが好ましく、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンがより好ましい。
【0059】
本実施形態の分離層形成用組成物においては、(T)成分として、例えば商品名がサンエイドSI-45、SI-47、SI-60、SI-60L、SI-80、SI-80L、SI-100、SI-100L、SI-110、SI-110L、SI-145、I-150、SI-160、SI-180L、SI-B3、SI-B2A、SI-B3A、SI-B4、SI-300(以上、三新化学工業株式会社製);CI-2921、CI-2920、CI-2946、CI-3128、CI-2624、CI-2639、CI-2064(日本曹達株式会社製);CP-66、CP-77(株式会社ADEKA製);FC-520(3M社製);K―PURE TAG-2396、TAG-2713S、TAG-2713、TAG-2172、TAG-2179、TAG-2168E、TAG-2722、TAG-2507、TAG-2678、TAG-2681、TAG-2679、TAG-2689、TAG-2690、TAG-2700、TAG-2710、TAG-2100、CDX-3027、CXC-1615、CXC-1616、CXC-1750、CXC-1738、CXC-1614、CXC-1742、CXC-1743、CXC-1613、CXC-1739、CXC-1751、CXC-1766、CXC-1763、CXC-1736、CXC-1756、CXC-1821、CXC-1802-
60、CXC-2689(以上、KING INDUSTRY社製)等の市販品を用いることができる。
【0060】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(T)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物においては、上記の中でも、(T)成分として六フッ化リン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸塩がより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸の第4級アンモニウム塩がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物が(T)成分を含有する場合、(T)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、(T)成分を含有しなくてもよい。
【0061】
≪光酸発生剤≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、光酸発生剤を含有してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤が好適に挙げられる。
【0062】
オニウム塩系酸発生剤における、好ましいカチオン部としては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0063】
オニウム塩系酸発生剤における、好ましいアニオン部としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C);テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(CCF);ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(CBF);トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C)BF);テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C)等が挙げられる。また、下記一般式(b0-2a)で表されるアニオンも好ましい。
【0064】
【化8】
[式中、Rbf05は、置換基を有していてもよいフッ素化アルキル基である。nbは、1~5の整数である。]
【0065】
前記式(b0-2a)中、Rbf05におけるフッ素化アルキル基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~8であることがより好ましく、炭素原子数1~5であることがさらに好ましい。なかでもRbf05としては、炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
前記式(b0-2a)中、nbは、1~4の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、3が最も好ましい。
nbが2以上の場合、複数のRbf05は、同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0066】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する光酸発生剤は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物が光酸発生剤を含有する場合、光酸発生剤の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、光酸発生剤を含有しなくてもよい。
【0067】
≪感光剤成分≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、感光剤成分を含有してもよい。
感光剤成分(以下「(C)成分」ともいう。)としては、例えば、下記化学式(c1)で表されるフェノール性水酸基含有化合物と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物と、のエステル化反応生成物(以下「(C1)成分」ともいう。)が好適なものとして挙げられる。
【0068】
【化9】
【0069】
1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物としては、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル化合物等が挙げられ、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物が好ましい。
【0070】
以下に、(C1)成分の好適な具体例を示す。
【0071】
【化10】
[式(c1-1)中、D~Dは、それぞれ独立に水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を表す。D~Dのうち少なくとも1つは、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を表す。]
【0072】
前記(C1)成分のエステル化率は、50~70%であることが好ましく、55~65%であることがより好ましい。該エステル化率が50%以上であると、アルカリ現像後の膜減りがより抑制され、残膜率が高まる。該エステル化率が70%以下であれば、保存安定性がより向上する。
ここでいう「エステル化率」とは、前記式(c1-1)で表される化合物については、式(c1-1)中のD~Dが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基で置換されている割合を示す。
前記(C1)成分は、非常に安価でありながら、高感度化を図れる点からも好ましい。
【0073】
また、(C)成分としては、前記(C1)成分以外のその他感光剤成分(以下これを「(C2)成分」ともいう。)を用いることができる。
(C2)成分としては、例えば、下記のフェノール性水酸基含有化合物((c2-phe)成分)と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物(好ましくは、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル化合物、又は、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホニル化合物)と、のエステル化反応生成物が好適なものとして挙げられる。
【0074】
前記(c2-phe)成分としては、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、1-[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1-[1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-4-[1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-(3’-フルオロ-4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4-トリヒドロキシフェニル-4’-ヒドロキシフェニルメタン、1,1-ジ(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]-5-ヒドロキシフェノール等が挙げられる。
【0075】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態の分離層形成用組成物においては、上記の中でも、(C)成分として(C1)成分を用いることが好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、(P)成分100質量部に対して、95質量部以下であることが好ましく、50~95質量部がより好ましく、60~90質量部がさらに好ましい。
本実施形態の分離層形成用組成物は、(C)成分を含有しなくてもよい。
【0076】
≪有機溶剤成分≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、塗布作業性等を調整するため、有機溶剤成分(以下、「(S)成分」ともいう。)を含有してもよい。
(S)成分としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素;炭素原子数4から15の分岐鎖状の炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素;p-メンタン、o-メンタン、m-メンタン、ジフェニルメンタン、1,4-テルピン、1,8-テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、テルピネン-1-オール、テルピネン-4-オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する(S)成分は、1種でもよく2種以上でもよい。
【0077】
本実施形態の分離層形成用組成物において、(S)成分の使用量は、特に限定されず、支持基体等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚や塗布性に応じて適宜設定される。例えば、分離層形成用組成物中の上記(P)成分の含有量が、該組成物の全質量(100質量%)に対して、70質量%以下、好ましくは5~50質量%の範囲内、より好ましくは10~50質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0078】
≪界面活性剤≫
本実施形態の分離層形成用組成物は、塗布作業性等を調整するため、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。シリコーン系界面活性剤には、例えばBYK-077、BYK-085、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380、BYK-390(以上、BYK Chemie社製)等を用いることができる。フッ素系界面活性剤としては、例えばF-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF-1132、TF-1027SF、TF-1441、TF-1442(以上、DIC株式社製);ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、オムノバ社製)等を用いることができる。
【0079】
本実施形態の分離層形成用組成物が含有する界面活性剤は、1種でもよく2種以上でもよい。
本実施形態の分離層形成用組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、(P)成分100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.02~2質量部がより好ましく、0.03~1質量部がさらに好ましい。
界面活性剤の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、分離層形成用組成物を支持基体上に塗布した際に、平坦性の高い分離層を容易に形成することができる。
本実施形態の分離層形成用組成物は、界面活性剤を含有しなくてもよい。
【0080】
本実施形態の分離層形成用組成物によれば、樹脂成分として(P1)成分を含有することにより、短波長の光(例えば、400nm以下)に対して光応答性の高い分離層を形成することができる。そのため、本実施形態の分離層形成用組成物を用いて分離層を形成することにより、支持基体上で電子部品を製造後、短波長レーザの照射で、支持基体を容易に分離することができる。
長波長レーザ(例えば、532nm)では、光熱反応により、熱分解反応が起こることが知られている。そのため、図2に示すような積層体20において、支持基体1側から分離層2に対して長波長レーザを照射した場合、仮固定対象物(図2における配線層3)に対する熱ダメージが懸念される。
これに対し、本実施形態の分離層形成用組成物を用いて分離層を形成することにより、短波長レーザ(例えば、308nm)の照射で、支持基体1の分離を行うことができる。そのため、長波長レーザを用いた場合と比較して、仮固定対象物に対する熱ダメージを低減することができる。本実施形態の分離層形成用組成物は、図2に示すようなRDLファーストのプロセスに好適に適用することができる。
【0081】
(分離層付き支持基体)
本発明の第2の態様に係る分離層付き支持基体は、光を透過する支持基体と、前記支持基体上に形成された分離層と、を含む。前記分離層は、前記第1の態様に係る分離層形成用組成物の硬化物である。
【0082】
図1は、本実施形態の分離層付き支持基体の一例を示す。分離層付き支持基体10は、支持基体1上に、分離層2を備える。分離層2は、第1の態様に係る分離層形成用組成物の硬化物から構成されており、短波長の光(例えば、400nm以下)に対して、高い光反応性を有する。
【0083】
<支持基体>
支持基体は、光を透過する特性を有する。支持基体は、仮固定対象物を仮固定するための部材であり、分離層を介して仮固定対象物を支持し、支持基体上で仮固定対象物に各種処理が施される。そのため、支持基体としては、仮固定対象物(例えば、半導体パッケージ)の各種処理に耐え得るために必要な強度を有していることが好ましい。また、支持基体は、分離層を変質させることができる波長の光を透過するものが好ましい。
支持基体の材料としては、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂等が用いられる。支持基体の形状としては、例えば矩形、円形等が挙げられるが、これに限定されない。
また、支持基体としては、さらなる高密度集積化や生産効率の向上のために、円形である支持基体のサイズを大型化したもの、上面視における形状が四角形である大型パネルを用いることもできる。
【0084】
<分離層>
分離層は、第1の態様に係る分離層形成用組成物を用いて形成することができる。分離層は、第1の態様に係る分離層形成用組成物の硬化物から構成される。分離層は、第1の態様に係る分離層形成用組成物を用いて分離層形成用組成物層を形成した後、前記分離層形成用組成物層を焼成することにより得ることができる。この分離層は、支持基体を透過して照射される光を吸収することで変質する。
分離層は、本発明における本質的な特性を損なわない範囲で、光を吸収する構造を有していない材料が配合された層であってもよいが、光反応性、分離性の観点から、光を吸収する材料のみから形成されていることが好ましい。
【0085】
分離層形成用組成物の硬化物とは、第1の態様に係る分離層形成用組成物を焼成して、硬化させたものをいう。この硬化物は、大気環境下、つまり、酸素が存在する環境下、第1の態様に係る分離層形成用組成物を焼成することで形成することができる。分離層形成用組成物を焼成(加熱)すると、分離層形成用組成物中の(P1)成分の架橋反応が進行し、(P1)成分の架橋体が形成される。これにより、分離層形成用組成物が硬化して、分離層形成用組成物の硬化物である分離層が形成される。当該分離層は、400nm以下の波長の光(例えば、308nm)の吸収率が高く、400nm以下の波長の光の照射により変質させることができる。
【0086】
分離層が「変質する」とは、分離層が外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層と接する層との接着力が低下した状態になる現象をいう。分離層は、光を吸収することによって脆くなり、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。かかる分離層の変質は、吸収した光のエネルギーによる分解、立体配置の変化又は官能基の解離等を生じることで起こる。
【0087】
分離層の厚さは、例えば、0.05μm以上、50μm以下の範囲内が好ましく、0.1μm以上、10μm以下の範囲内がより好ましく、0.2μm以上、1μm以下の範囲がさらに好ましい。
分離層の厚さが、前記好ましい範囲内であれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層に所望の変質を生じさせることができる。分離層の厚さは、生産性の観点から、1μm以下が特に好ましい。
【0088】
図1に示す分離層付き支持基体10において、分離層2は、支持基体1に接する反対側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましい。これにより、分離層2の当該面に対する仮固定対象物の仮固定が容易となる。
【0089】
本実施形態の分離層付き支持基体は、後述の[分離層形成工程]に記載の方法と同様にの方法で製造することができる。
【0090】
本実施形態の分離層付き支持基体は、第1の態様にかかる分離層形成用組成物を用いて形成した分離層を含む。当該分離層は、短波長の光(例えば、400nm以下)に対する光反応性が高いため、分離層上に仮固定された仮固定対象物を加工後、短波長の光を用いて、支持基体分離することができる。そのため、長波長の光を用いる場合と比較して、光照射による仮固定対象物への熱ダメージを低減することができる。
【0091】
(積層体)
本発明の第3の態様に係る積層体は、光を透過する支持基体と、前記支持基体上に形成された分離層と、前記分離層上に仮固定された仮固定対象物と、を含む。前記分離層は、前記第1の態様にかかる分離層形成用組成物の硬化物である。
【0092】
図2は、本実施形態の積層体の一例を示す。積層体20は、支持基体1、分離層2、及び仮固定対象物としての配線層3が、この順に積層されたものである。
【0093】
支持基体についての説明は、上記<支持基体>における説明と同様である。
分離層についての説明は、上記<分離層>における説明と同様である。
【0094】
<仮固定対象物>
仮固定対象物は、支持基体に対して分離層を介して仮固定されるものである。仮固定対象物は、特に限定されない。仮固定対象物は、支持基体上で処理が実施される前の未加工物であってもよい。あるいは、仮固定対象物は、支持基体上で処理が実施された後の加工物であってもよい。
【0095】
仮固定対象物は、配線層を含んでもよい。あるいは、仮固定対象物は、配線層に加えて、半導体素子を含んでもよい。前記半導体素子は、封止材に封止されていてもよい。この場合、半導体素子は、封止材とともに封止層を構成する。
【0096】
≪配線層≫
図2は、仮固定対象物が配線層である積層体の一例を示す。図2に示す積層体20は、支持基体1、分離層2、及び配線層3が、この順で積層された積層体である。
【0097】
配線層は、RDL(Redistribution Layer:再配線層)とも呼ばれ、半導体素子に接続する配線を構成する薄膜の配線体である。配線層は、単層又は複数層の構造を有し得る。
【0098】
配線層は、誘電体に、導電体によって配線が形成されたものであり得る。
誘電体を構成する材料としては、酸化シリコン(SiOx)等の無機材料、感光性エポキシ等の感光性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
導電体を構成する材料としては、金属の単、や合金、金属化合物が挙げられる。導電体を構成する材料の具体例としては、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、モリブデン、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、等の金属;これらの金属を含む合金;及び酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの金属酸化物などを含む金属化合物等が挙げられる。
【0099】
配線層は、後述の[配線層形成工程]に記載の方法で形成することができる。
分離層と配線層との間には、他の層が設けられてもよく、設けられていなくてもよい。
【0100】
≪半導体素子≫
図3は、仮固定対象物が、配線層及び半導体素子を含む積層体の一例を示す。図3に示す積層体30は、支持基体1、分離層2、配線層3、及び半導体素子4が、この順で積層された積層体である。
【0101】
半導体素子の種類は特に限定されず、能動素子でもよく、受動素子でもよく、複数種類の素子が実装されてもよい。能動素子としては、例えば、トランジスタ、IC、LSI(Large-Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、リレー、LED表示装置、LED照明、OLED等の発光素子、センサ等が挙げられる。受動素子としては、例えば、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バッテリー等が挙げられる。
【0102】
配線層上に搭載される半導体素子の数は、特に限定されず、任意の数の半導体素子を搭載することができる。配線層上に搭載された半導体素子は、配線層中の配線と電気的に接続されている。配線層と半導体素子との間に絶縁性接着剤層が介在してもよい。
【0103】
≪封止層≫
図4は、仮固定対象物が、配線層及び封止層を含む積層体の一例を示す。図4に示す積層体40は、支持基体1、分離層2、配線層3、及び封止層6が、この順で積層された積層体である。封止層6は、半導体素子4及び封止材5を含む。封止層6は、半導体4を封止材5により封止することで形成することができる。
【0104】
封止材としては、例えば、樹脂組成物を用いることができる。封止材に用いられる樹脂は、半導体素子を封止可能なものであれば、特に限定されない。封止材は、絶縁性材料が好ましく、例えば、絶縁性樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、及びシリコーン系樹脂等が挙げられる。
封止材は、樹脂に加えて、フィラー等の他の成分を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、球状シリカ粒子等が挙げられる。
【0105】
本実施形態の積層体は、第1の態様に係る分離層形成用組成物の硬化体で構成される分離層を含む。当該分離層は、短波長(例えば、400nm以下)の光に対する光反応性が高く、短波長の光の照射により変質する。そのため、短波長の光の照射により、積層体から支持基体を分離することができる。これにより、本実施形態の積層体は、支持基体の分離操作において、仮固定物に対する熱ダメージを低減することができる。
【0106】
(仮固定対象物の処理方法)
本発明の第4の態様に係る仮固定対象物の処理方法は、光を透過する支持基体の一方の面に、第1の態様に係る分離層形成用組成物を塗布し、前記分離層形成用組成物を硬化させることにより、分離層を形成する工程(以下、「分離層形成工程」ともいう)と、前記分離層上に仮固定対象物を仮固定する工程(以下、「仮固定工程」ともいう)と、前記仮固定対象物を処理する工程(以下、「処理工程」ともいう)と、前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記処理後の仮固定対象物から前記支持基体を分離する工程(以下、「分離工程」ともいう)と、を含む。
【0107】
[分離層形成工程]
分離層形成工程は、支持基体の一方の面に、第1の態様に係る分離層形成用組成物を塗布し、前記分離層形成用組成物を硬化させることにより、分離層を形成する工程である。
例えば、図1に示すように、支持基体1上に分離層2を形成し、分離層付き支持基体10を得る。
【0108】
支持基体1の一方の面への分離層形成用組成物の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法が挙げられる。
【0109】
分離層形成工程では、まず、支持基体の一方の面に、分離層形成用組成物を塗布し、支持基体上に分離層形成用組成物層を形成する。支持基体に分離層形成用組成物を塗布後、加熱等により、分離層形成用組成物層から(S)成分を除去して成膜してもよい。(S)成分の除去は、例えばベーク処理を、80~150℃の温度条件にて120~360秒間施して行うことができる。
その後、大気環境下、支持基体上の分離層形成用組成物層を硬化させて、分離層を得る。分離層形成用組成物の硬化は、分離層形成用組成物層を焼成することにより、実施することができる。
【0110】
分離層形成用組成物層を焼成する際の温度は、180℃以上とすることが好ましく、200℃以上とすることがより好ましく、230℃以上とすることがさらに好ましい。焼成温度を前記好ましい下限値以上とすることにより、分離層形成用組成物中の(P1)成分の架橋反応を十分に進行させて、安定な硬化体を得ることができる。これにより、400nm以下の波長の光(例えば、308nm)に対する光反応性を高めることができる。
焼成温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、270℃以下がさらに好ましく、260℃以下が特に好ましい。
【0111】
焼成時間は、分離層形成用組成物層の硬化が十分に進む程度であればよく、特に限定されない。焼成時間としては、例えば、3分間以上、3時間以下とすることができる。焼成時間は、安定な硬化物を得る観点から、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましい。焼成時間の上限は、プロセスの効率化の観点から、例えば、1時間以下が好ましく、30分以下がより好ましい。
【0112】
[仮固定工程]
仮固定工程は、分離層上に仮固定対象物を仮固定する工程である。
【0113】
仮固定の方法は、仮固定対象物の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、仮固定対象物が基板又は半導体素子である場合、仮固定対象物は、公知の接着剤を用いて分離層に仮固定してもよい。仮固定対象物が、配線層である場合、後述の[配線層形成工程]に記載の方法等を用いて、分離層上に配線層を形成すればよい。図2は、分離層2上に、仮固定対象物として配線層3が形成された状態を示す。
【0114】
[処理工程]
処理工程は、仮固定対象物を処理する工程である。
【0115】
仮固定対象物の処理方法は、特に限定されず、仮固定対象物の種類及び目的に応じて、適宜選択することができる。仮固定対象物の処理は、例えば、バンプ、配線、スルーホール、スルーホールビア等の形成;半導体素子の搭載;半導体素子の封止;絶縁膜の形成:再配線層の形成等の各種処理を含み得る。
【0116】
[分離工程]
分離工程は、支持基体を介して分離層に光を照射して、分離層を変質させることにより、処理後の仮固定対象物から支持基体を分離する工程である。
【0117】
図5は、分離工程を説明する概略図である。図5に示す積層体40において、処理後の仮固定対象物は、配線層3及び封止層6から構成されている。分離工程では、支持基体1を介して、分離層2に光(矢印)を照射することにより、分離層2を変質させる。
図6は、支持基体1を分離した後の仮固定対象物(配線層3及び封止層6(電子部品50))を示す。
【0118】
分離層を変質させ得る光の波長としては、例えば400nm以下が挙げられる。分離工程で用いる光の波長としては、例えば、200~400nmが挙げられ、250~400nmが好ましく、250~360nmがより好ましく、300~360nmがさらに好ましい。具体例としては、波長308nmの光が挙げられる。
照射光はレーザ光が好ましく、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ;色素レーザ等の液体レーザ;COレーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザ等の気体レーザ;半導体レーザ;自由電子レーザ等を用いることができる。
中でも、光励起半導体レーザを用いた全固体レーザ(波長:355nm)、YAGレーザ(波長:355nm)、又はエキシマレーザが好ましい。
エキシマレーザとしては、例えば、F2エキシマレーザ(波長:157nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、XeClエキシマレーザ(波長:308nm)、XeFエキシマレーザ(波長:351nm)が挙げられる。中でも、XeClエキシマレーザ(波長:308nm)が好ましい。
【0119】
レーザ光照射条件は、レーザの種類に応じて適宜選択することができる。
レーザ光の平均出力値は、例えば、1.0W以上、5.0W以下が好ましく、3.0W以上、4.0W以下がより好ましい。レーザ光の繰り返し周波数は、30kHz以上、80kHz以下が好ましく、40kHz以上、70kHz以下がより好ましい。レーザ光の走査速度は、1mm/s以上、1000mm/s以下が好ましい。レーザ光の積算光量としては、例えば、50~1000mJ/cmが挙げられる。
【0120】
分離層に光を照射して分離層を変質させた後、仮固定対象物から支持基体を分離する。
例えば、支持基体と仮固定対象物とが互いに離れる方向に力を加えることにより、支持基体と仮固定対象物とを分離することができる。具体的な方法としては、例えば、支持基体及び仮固定対象物のいずれか一方をステージに固定した状態で、他方を、吸着パッド(例えば、ベローズパッド等)を備えた分離プレートにより吸着保持しつつ持ち上げる。これにより、支持基体と仮固定対象物とを分離することができる。
分離時に積層体に加える力は、積層体の大きさ等により適宜調整すればよく、限定されない。例えば、直径が300mm程度の積層体であれば、0.1~5kgf(0.98~49N)程度の力を加えることにより、支持基体と仮固定対象物とを分離することができる。
【0121】
本実施形態の仮固定対象物の処理方法は、第1の態様に係る分離層形成用組成物の硬化体で構成される分離層上に、仮固定対象物を仮固定する。そのため、仮固定対象物の処理後、短波長(例えば、400nm以下)の照射光により、分離層を変性させて、支持基体を分離することができる。これにより、照射光による仮固定対象物に対する熱ダメージを低減することができる。
【0122】
(積層体の製造方法)
本発明の第5の態様に係る積層体の製造方法は、光を透過する支持基体の一方の面に、第1の態様に係る分離層形成用組成物を塗布し、前記分離層形成用組成物を硬化させることにより、分離層を形成する工程(分離層形成工程)と、前記分離層上に、配線層を形成する工程(以下、「配線層形成工程」ともいう)と、を含む。
【0123】
[分離層形成工程]
分離層形成工程は、上記(仮固定対象物の処理方法)における[分離層形成工程]と同様に行うことができる。図1に示すように、支持基体1上に、分離層形成用組成物を用いて、分離層形成用組成物の硬化体である分離層2を形成し、分離層付き支持基体10を得る。
【0124】
[配線層形成工程]
配線層形成工程は、分離層上に、配線層を形成する工程である。
例えば、図2に示すように、分離層2上に配線層3を形成し、支持基体1、分離層2、及び配線層3が、この順で積層された、積層体20を得る。積層体20は、RDLファーストのプロセスに適用される積層体である。
【0125】
配線層の形成は、公知の方法により、行うことができる。例えば、分離層上に、誘電体層を形成する。誘電体層の形成材料としては、例えば、酸化シリコン(SiO)等の無機物、感光性樹脂等が挙げられる。酸化シリコンからなる誘電体層は、例えばスパッタ法、真空蒸着法等により形成することができる。感光性樹脂からなる誘電体層は、例えばスピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法で、感光性樹脂を分離層に塗布し、成膜することで形成することができる。
【0126】
続いて、誘電体層に、導電体によって配線を形成する。導電体としては、例えば、上記で挙げたものを用いることができる。配線の形成には、例えば、フォトリソグラフィー(レジストリソグラフィー)等のリソグラフィー処理、及びエッチング処理等の公知の半導体プロセス手法を用いることができる。リソグラフィー処理としては、例えば、ポジ型レジスト材料を用いたリソグラフィー処理、及びネガ型レジスト材料を用いたリソグラフィー処理が挙げられる。
【0127】
誘電体層の形成と配線の形成とを繰り返すことで、多層構造の配線層を形成することができる。
【0128】
[他の工程]
本実施形態の積層体の製造方法は、上記工程に加えて、他の工程を含んでもよい。他の工程としては、半導体素子搭載工程、封止層形成工程が挙げられる。
【0129】
≪半導体素子搭載工程≫
半導体素子搭載工程は、配線層上に、半導体素子を搭載する工程である。
例えば、図3に示すように、配線層3上に、半導体素子4を搭載し、支持基体1、分離層2、配線層3、及び半導体素子4が、この順で積層された、積層体30を得る。
【0130】
半導体素子は、一方の主面上に設けられた接続端子が、配線層側となる向きで、配線層上に搭載される。半導体素子の接続端子は、配線層中の配線と電気的に接続される。半導体素子は、絶縁性接着剤を用いて、配線層上に搭載されてもよい。半導体素子の搭載は、チップマウンター等を用いて行ってもよい。
【0131】
≪封止層形成工程≫
封止層形成工程は、配線層上に搭載された半導体素子を、封止材により封止して封止層を形成する工程である。
例えば、図4に示すように、配線層3上に搭載された半導体素子4を、封止材5を用いて封止し、封止層6を形成する。これにより、支持基体1、分離層2、配線層3、及び封止層6が、この順で積層された、積層体40を得る。
【0132】
封止層の形成は、例えば、加熱された封止材を、半導体素子を覆うように、配線層上に供給し、圧縮成形することにより行うことができる。封止材は、高粘度の状態を維持しつつ、配線層上に供給されることが好ましい。
封止材の加熱温度としては、例えば、130~170℃が挙げられる。
圧縮成形の際の圧力としては、例えば、50~500N/cmが挙げられる。
【0133】
封止層は、個々の半導体素子毎に設けられのではなく、配線層上に搭載された半導体素子全部を覆うように設けられることが好ましい。
【0134】
(電子部品の製造方法)
本発明の第6の態様に係る電子部品の製造方法は、第5の態様に係る積層体の製造方法により、積層体を製造する工程(以下、「積層体製造工程」ともいう)と、前記支持基体を介して前記分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する工程(以下、「分離工程」ともいう)と、を含む。
【0135】
[積層体製造工程]
積層体製造工程は、第5の態様に係る積層体の製造方法により、積層体を製造する工程である。積層体は、前記分離層形成工程、配線層形成工程、半導体素子搭載工程、及び封止層形成工程により、製造されることが好ましい。積層体製造工程で得られる積層体は、例えば、図4に示す積層体40のように、支持基体1、分離層2、配線層3、及び封止層6が、この順で積層されたものであることが好ましい。
【0136】
[分離工程]
分離工程は、支持基体を介して分離層に光を照射して、前記分離層を変質させることにより、前記積層体から前記支持基体を分離する工程である。
例えば、図5に示すように、支持基体1を介して、分離層2に光(矢印)を照射することにより、分離層2を変質させる。これにより、積層体40からの支持基体1の剥離が容易となる。そのため、積層体40から支持基体1を分離して、図6に示すような電子部品50(半導体パッケージ)を得ることができる。
【0137】
分離工程は、上述の(仮固定対象物の処理方法)における[分離工程]と同様に行うことができる。
【0138】
[他の工程]
本実施形態の電子部品の製造方法は、上記工程に加えて、他の工程を含んでもよい。他の工程としては、除去工程等が挙げられる。
【0139】
≪除去工程≫
除去工程は、分離工程の後、配線層に付着する分離層を除去する工程である。
分離工程後の電子部品には、配線層に、分離層が残存している場合がある。そのため、分離工程後、配線層に付着する分離層を除去する処理を行ってもよい。
配線層に付着する分離層を除去する方法としては、例えば、洗浄液を用いて分離層の残渣を除去する方法、及び配線層にプラズマを照射する方法が挙げられる。
洗浄液には、有機溶剤を含有する洗浄液が好適に用いられる。有機溶剤としては、分離層形成用組成物に配合の有機溶剤を用いることが好ましい。プラズマとしては、酸素プラズマが挙げられる。
【0140】
本実施形態の電子部品の製造方法は、さらに、電子部品に対してソルダーボール形成、ダイシング、酸化膜形成等の処理を行う工程を含んでもよい。
【実施例0141】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0142】
<分離層形成用組成物の調製>
(実施例1)
表1に示す各成分を混合して溶解し、分離層形成用組成物を調製した。
【0143】
【表1】
【0144】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
【0145】
(P)-1:カシューベンゾオキサジン樹脂(CR-276(商品名)、東北化工株式会社)。
【0146】
【化11】
【0147】
(S)-1:酢酸ブチル。
【0148】
<接着剤組成物の調製>
表2に示す各成分を混合して溶解し、接着剤組成物を調製した。
【0149】
【表2】
【0150】
(P)-2:SEBS樹脂 セプトン8004(株式会社クラレ)。重量平均分子量(Mw)100,000。
(Ad)-1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox 1010(商品名)、BASF社製)。
(S)-2:デカヒドロナフタレン。
【0151】
<積層体の製造>
ガラス支持基体(サイズ10cm×10cm、厚さ0.7mm、E-XG、CORNING社製)に、実施例1の分離層形成用組成物を塗布し、100℃で5分間、250℃で10分間加熱した。これにより、ガラス支持基体上に、厚さ0.2μmの分離層を形成した。
次に、シリコン基板(サイズ10cm×10cm)に接着剤組成物を塗布し、160℃で4分間加熱した。これにより、シリコン基板上に厚さ20μmの接着層を形成した。
次いで、ダイボンダー(TRESKY社製)を用いて、前記接着層つき基板に、前記分離層つきガラス支持基体を圧着した。圧着は、ダイボンダーのプレートを50℃に加熱し、350gの圧力で90秒間押圧することにより行った。
【0152】
[分離性の評価]
IPEX848(308nmXeCl、LightMachinery)を用いて、走査速度15.6mm/秒(オーバーラップ80%)、周波数60kHz、ビームサイズ2×14mmの条件にて、前記積層体のベアガラス支持体側から前記接着層に波長308nmのレーザ光(レーザ光照射量250mJ/cm)を照射した。その後、シリコン基板とガラス支持基体との分離を試みた。
その結果、シリコン基板とガラス支持基体とを良好に分離できることが確認された。
【符号の説明】
【0153】
1 支持基体
2 分離層
3 配線層
4 半導体素子
5 封止材
6 封止層
10 分離層付き支持基体
20、30、40 積層体
50 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6