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特開2023-172359液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法、液晶性樹脂、樹脂組成物又は成形品の製造方法、及び洗浄液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172359
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法、液晶性樹脂、樹脂組成物又は成形品の製造方法、及び洗浄液
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/26 20060101AFI20231129BHJP
   C08G 63/02 20060101ALI20231129BHJP
   C08G 69/44 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C11D7/26
C08G63/02
C08G69/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084095
(22)【出願日】2022-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松崎 流成
(72)【発明者】
【氏名】川原 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 惠亮
(72)【発明者】
【氏名】福手 恭之
【テーマコード(参考)】
4H003
4J001
4J029
【Fターム(参考)】
4H003DB03
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB07
4H003FA04
4J001DA03
4J001DC03
4J001DC14
4J001EB36
4J001EB37
4J001EB44
4J001EB46
4J001EC46
4J001ED24
4J001ED34
4J001ED36
4J001EE29A
4J001EE43A
4J001JB11
4J029AA02
4J029AA05
4J029AB05
4J029AD09
4J029EB05A
4J029EC06A
4J029JB171
4J029JF041
(57)【要約】
【課題】液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法を提供する。液晶性樹脂の製造方法及び液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造方法を提供する。液晶性樹脂が付着した物品を洗浄するための洗浄液を提供する。
【解決手段】洗浄液を用いて液晶性樹脂が付着した物品を洗浄することを含み、洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を用いて液晶性樹脂が付着した物品を洗浄することを含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法。
【請求項2】
洗浄温度が180~350℃である、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記金属原子が、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛及び鉛からなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記金属原子が、コバルト及び亜鉛からなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記金属化合物が、前記金属原子の、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物及びアルコキシドからなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記金属化合物が、前記金属原子の、酢酸塩、ステアリン酸塩及びtert-ブトキシドからなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記グリコール類が、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項8】
液晶性樹脂の製造方法であり、
原料モノマー及び/又は原料モノマーのアシル化物を反応容器中で重縮合反応させること、及び
重縮合反応させることの前及び/又は後に、洗浄液を用いて反応容器を洗浄すること、を含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、液晶性樹脂の製造方法。
【請求項9】
洗浄することにおける洗浄温度が180~350℃である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記金属原子が、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛及び鉛からなる群より選択される1以上を含む、請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記金属化合物が、前記金属原子の、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物及びアルコキシドからなる群より選択される1以上を含む、請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記グリコール類が、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1以上を含む、請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項13】
液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造方法であり、
液晶性樹脂を混合容器中で混合すること、及び
混合することの前及び/又は後に、洗浄液を用いて混合容器を洗浄すること、を含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
液晶性樹脂を含む成形品の製造方法であり、
液晶性樹脂を含む樹脂組成物を、成形機を用いて成形すること、及び
成形することの前及び/又は後に、洗浄液を用いて成形機を洗浄すること、を含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、成形品の製造方法。
【請求項15】
液晶性樹脂が付着した物品を洗浄するための洗浄液であり、
グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、洗浄液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法、液晶性樹脂、樹脂組成物又は成形品の製造方法、及び洗浄液に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性樹脂は、優れた流動性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有するため、高機能エンジニアリングプラスチックスとして好適に広く利用されている。液晶性樹脂又は液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造過程で用いる容器や成形過程で用いる成形機等に液晶性樹脂が付着したままであると、異物混入の原因となり得る。従来、液晶性樹脂の製造時に用いる反応容器等の洗浄には、グリコール類やアルカリ性溶液を含む洗浄液が用いられている。特許文献1には、液晶ポリマーの溶融重合装置の洗浄方法において、グリコール類に所定量のカリウム塩およびナトリウム塩を特定の比率で配合した洗浄液を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-251009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、液晶性樹脂が付着した物品をより短時間で洗浄する方法について鋭意研究を進めた。その結果、グリコール類と所定の金属原子を含む金属化合物とを含む洗浄液を用いることで、液晶性樹脂がモノマーやオリゴマーに分解され、洗浄液中に溶解する速度が向上することを見出した。
【0005】
本発明の一つの課題は、液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法を提供することにある。本発明の別の課題は、液晶性樹脂の製造方法及び液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造方法を提供することにある。本発明のさらに別の課題は、液晶性樹脂が付着した物品を洗浄するための洗浄液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]洗浄液を用いて液晶性樹脂が付着した物品を洗浄することを含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法。
[2]洗浄温度が180~350℃である、[1]に記載の洗浄方法。
[3]前記金属原子が、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛及び鉛からなる群より選択される1以上を含む、[1]又は[2]に記載の洗浄方法。
[4]前記金属原子が、コバルト及び亜鉛からなる群より選択される1以上を含む、[1]から[3]のいずれかに記載の洗浄方法。
[5]前記金属化合物が、前記金属原子の、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物及びアルコキシドからなる群より選択される1以上を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の洗浄方法。
[6]前記金属化合物が、前記金属原子の、酢酸塩、ステアリン酸塩及びtert-ブトキシドからなる群より選択される1以上を含む、[1]から[5]のいずれかに記載の洗浄方法。
[7]前記グリコール類が、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1以上を含む、[1]から[6]のいずれかに記載の洗浄方法。
[8]液晶性樹脂の製造方法であり、
原料モノマー及び/又は原料モノマーのアシル化物を反応容器中で重縮合反応させること、及び
重縮合反応させることの前及び/又は後に、洗浄液を用いて反応容器を洗浄すること、を含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、液晶性樹脂の製造方法。
[9]洗浄することにおける洗浄温度が180~350℃である、[8]に記載の製造方法。
[10]前記金属原子が、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛及び鉛からなる群より選択される1以上を含む、[8]又は[9]に記載の製造方法。
[11]前記金属化合物が、前記金属原子の、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物及びアルコキシドからなる群より選択される1以上を含む、[8]から[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]前記グリコール類が、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1以上を含む、[8]から[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造方法であり、
液晶性樹脂を混合容器中で混合すること、及び
混合することの前及び/又は後に、洗浄液を用いて混合容器を洗浄すること、を含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、樹脂組成物の製造方法。
[14]液晶性樹脂を含む成形品の製造方法であり、
液晶性樹脂を含む樹脂組成物を、成形機を用いて成形すること、及び
成形することの前及び/又は後に、洗浄液を用いて成形機を洗浄すること、を含み、
洗浄液が、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、成形品の製造方法。
[15]液晶性樹脂が付着した物品を洗浄するための洗浄液であり、
グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、
周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである、洗浄液。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法を提供することができる。本発明によれば、液晶性樹脂の製造方法及び液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造方法を提供することができる。本発明によれば、液晶性樹脂が付着した物品を洗浄するための洗浄液を提供することができる。
【0008】
本発明の一実施形態に係る洗浄方法によれば、従来よりも短時間で液晶性樹脂が付着した物品を洗浄することができる。本発明の別の実施形態に係る液晶性樹脂の製造方法及び液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造方法によれば、従来よりも効率的に液晶性樹脂又は液晶性樹脂を含む樹脂組成物を製造することができる。本発明のさらに別の実施形態に係る洗浄液によれば、従来よりも短時間で液晶性樹脂が付着した物品を洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。
【0010】
[物品の洗浄方法]
本実施形態に係る物品の洗浄方法は、液晶性樹脂が付着した物品を洗浄液を用いて洗浄すること(洗浄工程)を含む。
【0011】
(液晶性樹脂)
「液晶性」とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有することをいう。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性を有する樹脂は、直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0012】
液晶性樹脂としては、特に限定されないが、液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドとしては、特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましく、全芳香族ポリエステル及び全芳香族ポリエステルアミドから選択される少なくとも一種の樹脂を含むことがより好ましい。また、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルであってもよい。
【0013】
芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとしては、より具体的には、以下の構成単位を有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミド:
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
等が挙げられる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。上記液晶性樹脂は、2種以上の液晶性樹脂の混合物であってもよい。
【0014】
液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドを構成する化合物(モノマー)の好ましい具体例としては、
4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I):
(X:アルキレン(C~C)、アルキリデン、-O-、-SO-、-SO-、-S-、及び-CO-より選ばれる基である)
で表される化合物、及び、
下記一般式(II):
で表される化合物等の芳香族ジオール;
テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(III):
(Y:-(CH-(n=1~4)及び-O(CHO-(n=1~4)より選ばれる基である)
で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;
p-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン、N-アセチル-p-アミノフェノール等の芳香族アミン類;等が挙げられる。
【0015】
液晶性樹脂の融点は、特に限定されず、250~380℃とすることができる。
液晶性樹脂の溶融粘度は、特に限定されず、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1000sec-1で測定した溶融粘度が、5Pa・s以上150Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以上100Pa・s以下であることがより好ましい。溶融粘度は、ISO11443に準拠して測定した溶融粘度とする。液晶性樹脂の製造方法については、後述する。
【0016】
(洗浄液)
洗浄液は、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子(以下、単に「金属原子」ともいう)を含む金属化合物(以下、単に「金属化合物」ともいう)と、を含む。洗浄液が周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物を含むことで、液晶性樹脂がオリゴマーに分解され、洗浄液中に溶解する速度が向上する。その結果、従来よりも短時間で液晶性樹脂が付着した物品を洗浄することができる。その理由は、現段階では明らかではないが、上記金属化合物を含む洗浄液を用いることによって、物品に付着した液晶性樹脂が速やかにオリゴマーまで分解されるためであると考えられる。この洗浄液を用いることにより、グリコール類とアルカリ金属又はアルカリ土類金属とを含む従来の洗浄液を用いる場合よりも液晶性樹脂が付着した物品をより短時間で洗浄することができる。
【0017】
グリコール類としては、例えば、アルキレングリコール類、アルケニレングリコール類及びポリアルキレングリコール類等が挙げられ、炭素原子数2~12(好ましくは炭素原子数2~10)のアルキレングリコール類、及び/又は、ポリアルキレングリコール類を含むことが好ましい。アルキレングリコール類及び/又はポリアルキレングリコール類としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコール等が挙げられ、これらからなる群より選択される1以上を含むことが好ましい。一実施形態において、グリコール類は、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールからなる群より選択される1以上を含むことが好ましく、エチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールからなる群より選択される1以上を含むことがより好ましく、トリエチレングリコールを含むことがさらに好ましい。グリコール類は、1種を単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。
【0018】
洗浄液を構成する溶媒中のグリコール類の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95~100質量%であることがより好ましい。
一実施形態において、洗浄液は、グリコール類と周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子とのみからなるように構成することができる。
【0019】
周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子としては、例えば、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛等が挙げられ、これらからなる群より選択される1以上を含むことが好ましい。
一実施形態において、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子は、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛及び鉛からなる群より選択される1以上を含むことが好ましく、コバルト及び亜鉛からなる群より選択される1以上を含むことがより好ましい。
【0020】
周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物としては、当該金属原子の、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(ヨウ化物、臭化物、塩化物、フッ化物等)及びアルコキシド等が挙げられ、これらからなる群より選択される1以上を含むことが好ましい。
【0021】
一実施形態において、金属化合物は、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の、カルボン酸塩及び/又はアルコキシドを含むことが好ましい。
【0022】
カルボン酸塩としては、炭素原子数1~25のカルボン酸の塩が好ましく、炭素原子数10~25のカルボン酸の塩がより好ましく、炭素原子数15~20のカルボン酸の塩がさらに好ましい。カルボン酸塩は、一価カルボン酸であってもよく、多価カルボン酸であってもよい。一実施形態において、カルボン酸塩は、炭素原子数1~25の一価カルボン酸であってもよい。炭素原子数1~25の一価カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノ-ル酸等が挙げられる。
【0023】
アルコキシドとしては、炭素原子数1~10のアルコキシドが好ましく、炭素原子数1~8のアルコキシドがより好ましく、炭素原子数2~6のアルコキシドがさらに好ましい。炭素原子数1~10のアルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、n-ブトキシド、tert-ブトキシド等が挙げられる。
【0024】
一実施形態において、金属化合物は、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の、酢酸塩、ステアリン酸塩及びtert-ブトキシドからなる群より選択される1以上を含むことが好ましく、ステアリン酸塩及び/又はtert-ブトキシドを含むことがより好ましい。
【0025】
周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の酢酸塩としては、酢酸マンガン(II)、酢酸鉄(II)、酢酸コバルト(II)、酢酸銅(II)、酢酸亜鉛、及び酢酸鉛(II)等が挙げられる。周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子のステアリン酸塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸鉄(II)、ステアリン酸鉄(III)、ステアリン酸コバルト(II)、ステアリン酸銅(II)、及びステアリン酸鉛等が挙げられる。周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子のtert-ブトキシドとしては、亜鉛tert-ブトキシド等が挙げられる。
【0026】
洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量は、金属換算の重量比として、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmであり、100~2,500ppmであることが好ましく、200~2,000ppmであることがより好ましい。周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量は、仕込み量から算出することができる。また、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量の測定は、蛍光X線を用いてファンダメンタル・パラメータ法により行うことができる。周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量をグリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmとすることで、洗浄力の向上作用を十分に発揮して洗浄時間を短縮することができる。
【0027】
一実施形態において、金属化合物は、液晶性樹脂を分解する反応における触媒として作用し得る。洗浄液は、従来の洗浄液において触媒として用いられていたアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩(例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等)を含んでいてもよいが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を含んでいなくても、従来よりも短時間で、かつ液晶性樹脂の付着量を従来と同等又はそれ以上に減少させることができる。一実施形態において、洗浄液中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の総含有量は、グリコール類の総重量に対して1000ppm未満とすることができ、500ppm未満とすることができる。
【0028】
一実施形態において、洗浄液は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を含まないように構成することができる。別の実施形態において、洗浄液中の触媒は、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物のみからなるように構成することができる。
なお、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩は、液晶性樹脂の製造時の触媒として用いられることがあるが、ここで述べたアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の総含有量は洗浄液中の含有量であり、物品に付着している液晶性樹脂中に含まれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩は含まない。
【0029】
(洗浄)
洗浄液を用いた液晶性樹脂が付着した物品の洗浄は、物品に付着した液晶性樹脂と洗浄液とを接触させることにより行う。
【0030】
液晶性樹脂が付着した物品としては、例えば、液晶性樹脂の製造に用いる装置部材(例えば反応容器、貯蔵タンク、配管、フィルター等);液晶性樹脂を含む樹脂組成物の製造に用いる押出機:液晶性樹脂又は液晶性樹脂を含む樹脂組成物の成形に用いる射出成形機、紡糸機、製膜機等)が挙げられる。
【0031】
例えば、液晶性樹脂が付着した物品が、液晶性樹脂の製造時に用いた反応容器又は貯蔵容器等の容器である場合は、当該容器中に洗浄液を投入することにより容器に付着した液晶性樹脂と洗浄液とを接触させて洗浄することができる。液晶性樹脂が付着した物品が、成形時に用いた射出成形機である場合は、例えば、キャビティ内に洗浄液を投入することによりキャビティ内に付着した液晶性樹脂と洗浄液とを接触させて洗浄することができる。液晶性樹脂が付着した物品がフィルター等の取り外し可能な部材である場合は、当該部材と洗浄液とを別の容器中に入れて当該部材に付着した液晶性樹脂と洗浄液とを接触させて洗浄することができる。洗浄は、洗浄時間をより短縮するために、撹拌下で洗浄を行うのが好ましい。
【0032】
洗浄液の使用量は、容器内部を洗浄する場合は、洗浄温度における体積比率として、洗浄する部材内部の空間容積の50~95体積%であることが好ましく、90~100体積%であることがより好ましい。取り外し可能な部材を別の容器中で洗浄液と接触させることにより洗浄する場合は、当該部材の液晶性樹脂が付着した部分全体を覆う量であり、例えば洗浄温度における体積比率として当該部材の全容積に対して150~500体積%とすることが好ましい。一実施形態において、洗浄液の使用量は、付着している液晶性樹脂の重さに対して2~100倍となる量とすることが好ましい。
【0033】
洗浄温度は、洗浄効率をより高める観点から、180~350℃であることが好ましく、200~350℃であることがより好ましく、250~350℃であることがさらに好ましい。
【0034】
洗浄時間は、特に限定されず、容器等の容量や汚れ具合に応じて適宜設定すればよいが、典型的には120~600分であることが好ましく、180~540分であることがより好ましく、240~480分であることがさらに好ましい。一実施形態において、洗浄時間は、90~150分であり得る。洗浄時間は、任意に定めた所定の洗浄温度に到達してからの時間を意味する。
【0035】
一実施形態において、洗浄方法は、液晶性樹脂が洗浄液中に溶解する速度を高めることができる。その結果、液晶性樹脂が付着した物品を短時間で洗浄することができる。
一実施形態において、洗浄方法は、以下の式(1):
ln([A]/[A])=-kt (1)
により算出される反応速度定数k(h-1)が、グリコール類のみを洗浄液として用いた場合よりも大きい。
【0036】
式(1)において、
[A]は、洗浄液中に液晶性樹脂ペレットを投入した時の、洗浄液の重さ(g)に対する液晶性樹脂ペレットの重さ(g)の割合により表される初期濃度(g/g)であり;
[A]は、液晶性樹脂ペレットを投入した洗浄液を250~300℃で所定時間t(h)撹拌した後の、洗浄液の重さ(g)に対する残存する液晶性樹脂ペレットの重さ(g)の割合により表される撹拌後の濃度(g/g)であり;
tは洗浄時間(h)である。
なお、洗浄時間は、所定の温度に達してから撹拌を終了するまでの時間とする。
【0037】
一実施形態において、液晶性樹脂が液晶性ポリエステルを含む場合、上記式(1)により算出される反応速度定数k(h-1)が、0.35以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましい。
【0038】
一実施形態において、液晶性樹脂が液晶性ポリエステルアミドを含む場合、上記式(1)により算出される反応速度定数k(h-1)が、0.15以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態に係る洗浄方法は、上記洗浄工程の前又は後に、別の洗浄工程や乾燥工程等を有していてもよい。例えば、上記洗浄工程の後に、水、温水及び/又はスチーム等で残存液を洗い流す工程や、その後に乾燥させる工程等を有していてもよい。
【0040】
[液晶性樹脂の製造方法]
本実施形態に係る液晶性樹脂の製造方法は、原料モノマー及び/又は原料モノマーのアシル化物を反応容器中で重縮合反応させること、及び重縮合反応させることの前及び/又は後に、洗浄液を用いて反応容器を洗浄すること、を含む。
【0041】
(重縮合反応工程)
重縮合反応工程では、原料モノマー及び/又は原料モノマーのアシル化物を反応容器中で重縮合反応させることにより液晶性樹脂を得る。原料モノマーとしては、上記した芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドの構成単位(又はモノマー)として記載した化合物を好ましく用いることができるからここでは記載を省略する。原料モノマーのアシル化物は、アシル化剤等を用いて原料モノマーをアシル化して得られる。アシル化剤としては、無水酢酸等の無水カルボン酸等を挙げることができる。
【0042】
重縮合反応は、原料モノマー(又はモノマーの混合物)を用いて、直接重合法やエステル交換法を用いて、公知の方法で製造することができる。通常は、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
【0043】
重合に際しては、種々の触媒の使用が可能である。使用可能な触媒の代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、N-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。触媒の使用量は、一般にはモノマーの全重量に対して、約0.001~1質量%であり、特に、約0.01~0.2質量%が好ましい。
【0044】
本実施形態に係る液晶性樹脂の製造方法は、後述する洗浄工程を有するので、バッチ式重合装置で繰り返し溶融重合を行う場合でも洗浄時間が短く済み、効率的に液晶性樹脂を製造することができる。
【0045】
(洗浄工程)
本実施形態に係る液晶性樹脂の製造方法は、上記した重縮合反応工程の前(原料モノマー等を反応容器に投入する前)、及び/又は、上記した重縮合反応工程の後(得られた液晶性樹脂を反応容器から排出した後)に、上記した洗浄液を用いて反応容器を洗浄することを有する。上記した洗浄液を用いるので、反応容器中に付着した液晶性樹脂が洗浄液中に溶解する速度が向上する。その結果、短時間で反応容器を洗浄することができる。これにより、バッチ式重合装置で繰り返し重縮合反応を行う場合や、モノマー組成が異なる液晶性樹脂を連続的に製造する場合において、途中の反応容器の洗浄時間を短くすることができ、効率的に液晶性樹脂を製造することができる。
【0046】
洗浄液は、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、金属換算の重量比として、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである。グリコール類及び周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物の種類及び含有量の詳細については、上記のとおりである。上記した液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法において述べた洗浄液及び洗浄方法についてのその他の記載についても同様にここでも当てはまる。
【0047】
洗浄は、反応容器内に洗浄液を投入することにより反応容器に付着した液晶性樹脂と洗浄液とを接触させて行うことができる。
【0048】
洗浄液の使用量は、洗浄温度における体積比率として、反応容器の空間容積の50~95体積%であることが好ましく、90~100体積%であることがより好ましい。
【0049】
洗浄温度は、洗浄効率をより高める観点から、180~350℃であることが好ましく、200~350℃であることがより好ましく、250~350℃であることがさらに好ましい。
【0050】
洗浄時間は、特に限定されず、容器等の容量や汚れ具合に応じて適宜設定すればよいが、典型的には120~600分であることが好ましく、180~540分であることがより好ましく、240~480分であることがさらに好ましい。一実施形態において、洗浄時間は、90~150分であり得る。洗浄時間は、任意に定めた所定の洗浄温度に到達してからの時間を意味する。
【0051】
バッチ式重合装置で繰り返し溶融重合を行う場合においては、所定のバッチ数毎に洗浄工程を有することが好ましい。洗浄工程を行うまでのバッチ数としては、液晶性樹脂の生産性と洗浄時間の短縮のバランスを考慮して決定することが望ましい。
【0052】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、液晶性樹脂を含む樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)の製造方法であり、液晶性樹脂を混合容器中で混合すること、及び混合することの前及び/又は後に、洗浄液を用いて混合容器を洗浄すること、を含む。
【0053】
(混合工程)
混合工程では、液晶性樹脂と液晶性樹脂以外の成分とを混合する。液晶性樹脂については、上記のとおりである。液晶性樹脂以外の成分としては、無機充填剤及び有機充填剤;液晶性樹脂以外の熱可塑性樹脂;エラストマー;酸化防止剤、安定剤、顔料、結晶核剤等の添加剤;等が挙げられる。
無機充填剤及び有機充填剤としては、公知の繊維状、粉粒状、板状の無機又は有機充填剤を用いることができる。無機充填剤及び有機充填剤の一例として、ガラス繊維、カーボン繊維、マイカ、ガラスフレーク、カーボンブラック、シリカ、ガラスビーズ等が挙げられる。液晶性樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0054】
混合方法はこれらの成分が十分に分散する方法であれば特に限定されない。例えば、ミキサーや二軸混練機、ロール、ブラベンダー、一軸もしくは二軸押出機等の混合容器中で溶融状態で混練する方法等がある。
特に押出機を用いて溶融状態で混練したのち押出し、これを適当な長さに切ってペレットとするのが、生産性が高く、好適である。
溶融混練時の温度は、樹脂成分が溶融する温度より0~50℃高い温度であることが好ましく、10~30℃であることがより好ましい。
【0055】
(洗浄工程)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、上記した混合工程の前(液晶性樹脂及びその他の成分を混合容器に投入する前)、及び/又は、上記した混合工程の後(樹脂組成物を混合容器から排出した後)に、上記した洗浄液を用いて混合容器を洗浄することを有する。上記した洗浄液を用いるので、短時間で混合容器を洗浄することができる。その結果、組成が異なる樹脂組成物を連続的に製造する場合において、途中の混合容器の洗浄時間を短くすることができる。それにより、効率的に樹脂組成物を製造することができる。
【0056】
洗浄液は、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである。グリコール類及び周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物の種類及び含有量の詳細については、上記のとおりである。上記した液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法において述べた洗浄液及び洗浄方法についてのその他の記載についても同様にここでも当てはまる。
【0057】
洗浄は、混合容器内に洗浄液を投入することにより混合容器に付着した液晶性樹脂と洗浄液とを接触させて行うことができる。
【0058】
洗浄液の使用量は、洗浄温度における体積比率として、混合容器の空間容積の50~95体積%であることが好ましく、90~100体積%であることがより好ましい。
【0059】
洗浄温度は、洗浄効率をより高める観点から、180~350℃であることが好ましく、200~350℃であることがより好ましく、250~350℃であることがさらに好ましい。
【0060】
洗浄時間は、特に限定されず、容器等の容量や汚れ具合に応じて適宜設定すればよいが、典型的には120~600分であることが好ましく、180~540分であることがより好ましく、240~480分であることがさらに好ましい。一実施形態において、洗浄時間は、90~150分であり得る。洗浄時間は、任意に定めた所定の洗浄温度に到達してからの時間を意味する。
【0061】
[成形品の製造方法]
本実施形態に係る成形品の製造方法は、液晶性樹脂を含む成形品の製造方法であり、液晶性樹脂を含む樹脂組成物を、成形機を用いて成形すること、及び成形することの前及び/又は後に、洗浄液を用いて成形機を洗浄すること、を含む。
【0062】
(成形工程)
成形工程では、液晶性樹脂を含む樹脂組成物を、成形機を用いて成形する。液晶性樹脂については、上記のとおりである。使用する成形機は、限定されず、射出成形機、射出圧縮成形機、圧縮成形機、ブロー成形機、押出成形機、紡糸機、製膜機等の公知の成形機を用いることができる。
【0063】
成形条件は、特に限定されず、液晶性樹脂のモノマー組成、得られる成形品に求められる形状及び性能等に応じて適宜設定することができる。
【0064】
(洗浄工程)
本実施形態に係る成形品の製造方法は、上記した成形工程の前(樹脂組成物を成形機に投入する前)、及び/又は、上記した成形工程の後(得られた成形品を成形機から排出した後)に、上記した洗浄液を用いて成形機を洗浄することを有する。上記した洗浄液を用いるので、成形機に付着した液晶性樹脂が洗浄液中に溶解する速度が向上する。その結果、短時間で成形機を洗浄することができる。
【0065】
洗浄液は、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、洗浄液中の周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、金属換算の重量比として、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである。グリコール類及び周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物の種類及び含有量の詳細については、上記のとおりである。上記した液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法において述べた洗浄液及び洗浄方法についてのその他の記載についても同様にここでも当てはまる。
【0066】
洗浄は、成形機において液晶性樹脂を含む樹脂組成物が付着した部材と洗浄液とを接触させることにより行う。例えば、成形機が射出成形機である場合は、キャビティ内に洗浄液を投入することによりキャビティ内に付着した液晶性樹脂と洗浄液とを接触させて洗浄することができる。
【0067】
洗浄液の使用量は、成形機の容器部材の内部を洗浄する場合は、洗浄温度における体積比率として、洗浄する部材内部の空間容積の50~95体積%であることが好ましく、90~100体積%であることがより好ましい。取り外し可能な部材を別の容器中で洗浄液と接触させることにより洗浄する場合は、当該部材の液晶性樹脂が付着した部分全体を覆う量であり、例えば洗浄温度における体積比率として当該部材の全容積に対して150~500体積%とすることが好ましい。
【0068】
洗浄温度は、洗浄効率をより高める観点から、180~350℃であることが好ましく、200~350℃であることがより好ましく、250~350℃であることがさらに好ましい。
【0069】
洗浄時間は、特に限定されず、容器等の容量や汚れ具合に応じて適宜設定すればよいが、典型的には120~600分であることが好ましく、180~540分であることがより好ましく、240~480分であることがさらに好ましい。一実施形態において、洗浄時間は、90~150分であり得る。洗浄時間は、任意に定めた所定の洗浄温度に到達してからの時間を意味する。
【0070】
[洗浄液]
本実施形態に係る洗浄液は、液晶性樹脂が付着した物品を洗浄するための洗浄液であり、グリコール類と、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物と、を含み、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子の総含有量が、金属換算の重量比として、グリコール類の総重量に対して、5~3,000ppmである。
液晶性樹脂、グリコール類、周期表第7族~第14族からなる群より選択される金属原子を含む金属化合物については、上記のとおりである。これまで述べた洗浄液及び洗浄方法についてのその他の記載はここでも当てはまる。
洗浄の対象とする物品は、液晶性樹脂が付着した物品であり、用途、種類、大きさ及び形状等は限定されない。洗浄による変形を防ぐ観点から、洗浄温度より10~50℃高い温度における耐熱性を有する材質であることが好ましい。
【実施例0071】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0072】
[製造例1]液晶性樹脂(A)の製造
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸 1380g(60モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 157g(5モル%)(HNA)
(III-a)1,4-フェニレンジカルボン酸 484g(17.5モル%)(TA)
(IV)4,4’-ジヒドロキシビフェニル 388g(12.5モル%)(BP)
(V)N-アセチル-p-アミノフェノール 126g(5モル%)(APAP)
酢酸カリウム触媒 110mg
無水酢酸 1659g
【0073】
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(すなわち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から生成物を排出し、ペレタイズして目的とする液晶性樹脂(全芳香族ポリエステルアミド)を得た。得られた液晶性樹脂の融点は、336℃であった。なお、融点は、後述する方法で測定した。
【0074】
[製造例2]液晶性樹脂(B)の製造
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸 226.4g(73モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 114.1g(27モル%)(HNA)
酢酸カリウム触媒 22.5mg
無水酢酸 233.8g
【0075】
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に325℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(すなわち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から生成物を排出し、ペレタイズして目的とする液晶性樹脂(全芳香族ポリエステル)を得た。得られた液晶性樹脂の融点は、280℃であった。なお、融点は、後述する方法で測定した。
【0076】
(融点)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)にて、液晶性樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の測定後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピークの温度(Tm2)を測定した。
【0077】
実施例及び比較例で使用した他の材料は以下のとおりである。
グリコール類:テトラエチレングリコール(TEG)
金属化合物:酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、酢酸鉛、又はステアリン酸亜鉛
【0078】
[実施例1]
製造例2で得られた液晶性樹脂(B)ペレット40gを、パドルを有する撹拌翼、ヒーター、留出管及び温度計を備えたガラス製筒状容器に入れ、テトラエチレングリコール400gと、金属化合物として酢酸マンガンをテトラエチレングリコールの総重量に対して金属換算の重量比として200ppmとなる量で仕込み、300rpmの速度で撹拌した。その後、30分かけて280℃まで昇温し、撹拌しながら同温度にて保持し、280℃に達してから2時間後に容器内に残存する液晶性樹脂ペレットの重量(g)を測定した。
以下の式(1)により反応速度定数k(h-1)を算出した。反応速度定数k(h-1)を液晶性樹脂に対する金属化合物の洗浄性を表す指標として用いた。結果を表1に示す。
ln([A]/[A])=-kt (1)
[A]は、洗浄液の重さ(400g)に対する液晶性樹脂ペレットの重さ(40g)の割合により表される初期濃度(g/g)であり、ここでは0.1(g/g)と算出される。
[A]は、洗浄液の重さ(400g)に対する残存する液晶性樹脂ペレットの重さ(g)の割合により表される撹拌後の濃度(g/g)である。
tは、洗浄時間(2h)である。
【0079】
[実施例2~11]
表1に示す金属化合物を表1に示す量で使用した以外は実施例1と同じ方法で、反応速度定数k(h-1)を算出した。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
金属化合物を使用しないこと以外は、実施例1と同じ方法で、反応速度定数k(h-1)を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
[実施例12~22]
液晶性樹脂(B)に替えて製造例1で得られた液晶性樹脂(A)を用い、かつ表1に示す金属化合物を表1に示す量で使用した以外は実施例1と同じ方法で、反応速度定数k(h-1)を算出した。結果を表2に示す。
【0082】
[比較例2]
液晶性樹脂(B)に替えて製造例1で得られた液晶性樹脂(A)を用い、かつ金属化合物を使用しないこと以外は、実施例1と同じ方法で、反応速度定数k(h-1)を算出した。結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
なお、表1,2において、「不良」は反応速度定数kの値が小さく、液晶性樹脂が付着した物品の洗浄速度の向上効果が得られないことを意味しており、「良」は反応速度定数kの値が大きく液晶性樹脂が付着した物品の洗浄速度の向上効果が得られることを意味している。
【0086】
表1,2に示すように、実施例の洗浄液は、比較例の洗浄液よりも反応速度定数k(h-1)が大きい。その結果、液晶性樹脂が洗浄液中に溶解する速度が向上し、液晶性樹脂が付着した物品をより短時間で洗浄することができる。
比較例1の洗浄液の反応速度定数kに対する、実施例1~11の洗浄液の反応速度定数kの比の値(実施例の反応速度定数k/比較例の反応速度定数k)は、2.9~9.1である。比較例2の洗浄液の反応速度定数kに対する、実施例12~22の洗浄液の反応速度定数kの比の値(実施例の反応速度定数k/比較例の反応速度定数k)は、2.9~7.2である。よって、実施例の洗浄液は、いずれも、比較例の洗浄液よりも約3倍以上速く液晶性樹脂を溶解することができる。
また、実施例1と同じ方法において酢酸マンガンに替えて酢酸カリウムを同量用いて反応速度定数kを算出したところ0.47(h-1)であり実施例1の洗浄液の反応速度定数kよりも小さい値であった。すなわち、実施例の洗浄液はアルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いた場合よりも液晶性樹脂が付着した物品をより短時間で洗浄することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本実施形態に係る液晶性樹脂が付着した物品の洗浄方法及び洗浄液は、液晶性樹脂をより速く溶解することができるため、液晶性樹脂が付着した物品を短時間で洗浄することができ、産業上の利用可能性を有している。