(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172417
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】延伸フィルムの破断張力の評価方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231129BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20231129BHJP
B29C 55/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G02B5/30
G01N3/08
B29C55/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084198
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】大橋 亘
(72)【発明者】
【氏名】田邊 裕史
【テーマコード(参考)】
2G061
2H149
4F210
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061BA01
2G061CA09
2G061CA16
2G061CB01
2G061CB07
2G061EA02
2G061EA03
2G061EB05
2H149AB13
2H149BA02
2H149FA03W
2H149FB08
2H149FD47
2H149FD48
4F210AA19
4F210AH73
4F210AR12
4F210QA03
4F210QC02
4F210QD01
4F210QD08
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG18
4F210QM15
(57)【要約】
【課題】偏光板を作製することなく、簡易な操作で、高い信頼性を伴って、偏光板や偏光フィルムの耐ヒートサイクル性の評価方法を提供すること。
【解決手段】下記A~Cの操作を順に行う、偏光板の耐ヒートサイクル性の評価方法。
操作A 延伸フィルムから延伸方向に5cm、垂直方向3cmの寸法の試験片を得る(これを試験片1とする)
操作B 前記試験片1の中央部に延伸方向に1~20mmの切れ込みを入れる(これを試験片2とする)
操作C 引張試験機のチャック間距離を10mmに設定して、引張速度1~15mm/分で前記試験片2を延伸フィルムの延伸方向に対して垂直方向に引っ張る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A~Cの操作を順に行う、偏光板の耐ヒートサイクル性の評価方法。
操作A 延伸フィルムから延伸方向に5cm、垂直方向3cmの寸法の試験片を得る(これを試験片1とする)
操作B 前記試験片1の中央部に延伸方向に1~20mmの切れ込みを入れる(これを試験片2とする)
操作C 引張試験機のチャック間距離を10mmに設定して、引張速度1~15mm/分で前記試験片2を延伸フィルムの延伸方向に対して垂直方向に引っ張る
【請求項2】
前記延伸フィルムの厚みが10~40μmである、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記延伸フィルムが偏光フィルムである請求項1又は2に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸フィルムの破断張力の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは延伸されることで様々な機能を持った延伸フィルムに加工され、延伸フィルムは光学用途や食品包装用途など幅広い分野で使用される。
【0003】
光学用途の代表例としては偏光フィルムが挙げられる。偏光フィルムはその表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護フィルムが貼り合わされることで偏光板へと加工され、光の透過及び遮蔽機能を有することから、液晶表示装置(LCD)の基本的な構成要素として用いられている。LCDは、電卓及び腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、スマートフォンなど屋内外で用いられる計測機器などの広い分野で用いられている。
【0004】
偏光フィルムとしてはポリビニルアルコール(以下、PVAと称すことがある)フィルムを一軸延伸してなるマトリックス(一軸延伸して配向させた延伸フィルム)にヨウ素系色素(I3
-やI5
-等)等の二色性色素が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸する、PVAフィルムの一軸延伸と同時に二色性色素を吸着させる、PVAフィルムを一軸延伸した後に二色性色素を吸着させるなどして製造される。
【0005】
過酷な環境下でLCDを使用した場合、LCDに含まれる偏光板に急激な温度変化が負荷され、保護フィルムの寸法変化に偏光フィルムが追随できず、偏光フィルムが割れてしまい、偏光板から光漏れが生じてしまうことが問題となっている。このため、近年では偏光板や偏光フィルムに対する耐ヒートサイクル性(急激な温度変化に対する耐久性)への要求が高度化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-71314号公報
【特許文献2】特開2009-104062号公報
【特許文献3】特開2011-248293号公報
【特許文献4】特開2016-4218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、偏光板の耐ヒートサイクル性の評価については、簡易な評価系や代替指標がなく、パネルやガラス板に偏光板を貼り付けて試験をしていた。このため、試験に時間が掛かる、材料費が掛かる、大量のサンプルを評価できないなどの問題点があった(特許文献1、2)。
【0008】
また、プラスチックフィルムの引裂強度に関する評価方法が知られている。例えば、プラスチックフィルムの裂けやすさを評価する尺度として引き裂き強度が知られており、延伸フィルムの延伸方向と平行に切れ目を入れ、この切れ目の基点から延伸フィルムを引き裂き、そのときの引き裂き強度を、引張試験機を用いて測定する方法が知られている(特許文献3)。また、特定の形状の突き刺し具を使用して、延伸フィルムの突き刺し強度を測定する方法が知られている(特許文献4)。しかしながら、これらは偏光板や偏光フィルムの耐ヒートサイクル性を評価する方法ではない。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の問題点を鑑みなされたものであって、偏光板を作製することなく、簡易な操作で、高い信頼性を伴って、偏光板や偏光フィルムの耐ヒートサイクル性の評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の操作で延伸フィルムの引張試験を行った結果と偏光フィルムの耐ヒートサイクル性が相関していることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0011】
本発明は[1]~[3]を提供する。
[1]下記A~Cの操作を順に行う、偏光板の耐ヒートサイクル性の評価方法。
操作A 延伸フィルムから延伸方向に5cm、垂直方向3cmの寸法の試験片を得る(これを試験片1とする)
操作B 前記試験片1の中央部に延伸方向に1~20mmの切れ込みを入れる(これを試験片2とする)
操作C 引張試験機のチャック間距離を10mmに設定して、引張速度1~15mm/分で前記試験片2を延伸フィルムの延伸方向に対して垂直方向に引っ張る
[2]前記延伸フィルムの厚みが10~40μmである、[1]に記載の評価方法。
[3]前記延伸フィルムが偏光フィルムである[1]又は[2]に記載の評価方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、偏光板を作製することなく、簡易な操作で、高い信頼性で偏光板や偏光フィルムの耐ヒートサイクル性を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の偏光板及び偏光フィルムの耐ヒートサイクル性の評価方法は、下記の操作を順に行う。
操作A 延伸フィルムから延伸方向に5cm、垂直方向3cmの寸法の試験片を得る(これを試験片1とする)
操作B 前記試験片1の中央部に延伸方向に1~20mmの切れ込みを入れる(これを試験片2とする)
操作C 引張試験機のチャック間距離を10mmに設定して、引張速度1~15mm/分で前記試験片2を延伸フィルムの延伸方向に対して垂直方向に引っ張る
なお、本発明において、垂直方向とは延伸フィルムの延伸方向に対する垂直方向の意味であり、単に垂直方向と略記することがある。
また、本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
【0015】
本発明の効果が得られる理由は必ずしも定かではないが、次のように考えらえる。偏光フィルム、粘着剤、保護フィルムでそれぞれヒートサイクル試験時の寸法変化量が異なる。これらの部材はヒートサイクル試験中に互いに追随しながら寸法変化を繰り返し、結果、偏光フィルムの延伸方向と、その垂直方向に繰り返しの応力が負荷されることになる。一方、一般的に偏光フィルムは延伸方向にPVAが高度に配向し、延伸方向よりもその垂直方向の応力に対して著しく弱いことが知られており、ヒートサイクル試験後のクラックの要因は延伸方向よりも、その垂直方向の影響が大きいと考えられる。したがって、特定の切れ込みを有する試験片を延伸方向と垂直方向に引っ張り、その破断特性を評価することで、偏光フィルムの、ひいては偏光板の耐ヒートサイクル性を評価することができると考えられる。
【0016】
本発明において用いる延伸フィルムは、特に制限は無く、公知の延伸フィルムを用いることができる。延伸フィルムとしては、例えば、延伸PETフィルム、延伸PCフィルム、延伸COPフィルム、延伸EVOHフィルム、延伸アクリルフィルム、延伸PVAフィルムなどが挙げられる。延伸フィルムとしては延伸PVAフィルムであることが好ましい。
【0017】
本発明において、延伸フィルムとして延伸PVAフィルムを用いる場合、その延伸フィルムから製造される偏光フィルムであってもよい。延伸PVAフィルムや偏光フィルムの製造方法については、例えば、特開2017-106969号公報、特開2012-47799号公報、特開平5-2109号公報などに記載されている。
【0018】
本発明に用いる延伸フィルムの厚みについては、特に制限はないが、再現性の観点から延伸フィルムの厚みが10~40μmであることが好ましい。
【0019】
操作Aは、延伸フィルムから延伸方向に5cm、垂直方向3cmの寸法の試験片を得る操作である(これを試験片1とする)。試験片1の取得箇所については、特に制限はないが評価の再現性の観点から、延伸フィルムの垂直方向の長さを100%としたとき、両端10%を除いて残る80%の中から取得することが好ましい。
【0020】
操作Aにおいて、試験片1を切り出す治具としては特に制限はなく、カッターなどを用いることができる。
【0021】
操作Bは、前記試験片1の中央部に延伸方向に1~20mmの切れ込みを入れる操作である(これを試験片2とする)。このとき中央部とは、試験片1の2組の対頂点を結ぶ対角線の交点である。中央部を定めた後、延伸方向に切れ込みを入れるが、切れ込みの中央に前記交点が重なるように延伸方向に切れ込みを入れる。例えば、切れ込みが5mmの場合、交点から延伸の進行方向に2.5mm、反対方向に2.5mmずつ合計5mmの切れ込みを入れる。後述する引張試験の再現性を高める観点から、1~15mmの切れ込みが好ましく、1~10mmの切れ込みがより好ましく、1~5mmの切れ込みがさらに好ましい。切れ込みの長さが1mmよりも小さい場合、切れ込みとしての機能が不足して破断開始位置が一定に定まらず、精度よく測定することが困難となる。一方で切れ込みの長さが20mmよりも大きい場合、破断張力が小さくなり、小さな衝撃でも試験片2が割れるようになるため、精度よく測定することが困難となる。また、試験片2の取り扱い性が低下するため測定効率も低下する。
【0022】
操作Bにおいて、試験片1に切れ込みを入れる治具としては特に制限はなく、カッターなどを用いることができる。
【0023】
操作Bで得られた試験片2は、そのまま操作Cで使用してもよいが、引張試験の再現性の観点から、20~30℃/20%RH~60%RHの範囲で16時間、調湿することが好ましい。20%RHよりも低い湿度で調湿することは経済的に不利なため好ましくなく、60%RHよりも高い湿度で調湿すると、試験片2が吸湿する水分が多くなり、試験片2の状態が変化することがあるため好ましくない。温度においては、20℃よりも低温にすることは経済的に不利なため好ましくなく、30℃を超える場合は作業性が低下するため好ましくない。
【0024】
操作Cは、引張試験機のチャック間距離を10mmに設定して、引張速度1~15mm/分で前記試験片2を延伸フィルムの延伸方向に対して垂直方向に引っ張る操作である。
【0025】
操作Cで使用する引張試験機は、応力-歪み曲線(S-S曲線)が測定できる装置であれば特に制限はないが、例えば、万能材料試験機(株式会社インストロン)、引張試験機(オートグラフ、株式会社島津製作所)などが挙げられる。
【0026】
操作Cにおいて、引張試験機で使用するロードセルは、1N以上の試験力を測定できるものであれば特に制限はないが、延伸フィルムの破断する張力が大きくないため、容量が10kN以上のものは不適切であり、1kN以下のものが好ましい。
【0027】
操作Cにおいて、引張試験機のチャック間距離は10mmである。試験片2の延伸フィルムの延伸方向に対して垂直方向と引張方向とが平行になるように、試験片2をチャックに取り付ける。
【0028】
操作Cにおいて、引張試験機の引張速度は1~15mm/分である。測定の再現性の高めるためには、引張速度は1~10mm/分が好ましく、1~6mm/分がより好ましい。
【0029】
操作Aから操作Cを5回繰り返して延伸フィルムが破断したときの張力(破断張力)を5回計測し、その平均値と標準偏差を算出した。次に、算出した標準偏差を平均値で除することで、破断張力の変動係数を算出した。また、破断張力を試験片2の断面積で除した値を破断応力(N/mm2)とし、破断応力についてもその平均値と変動係数を算出した。なお、測定結果としては、算出した破断張力及び破断応力の平均値とそれらの変動係数を採用した。
【0030】
本発明の評価方法によって得た偏光フィルムの破断応力と、実際にその偏光フィルムを用いて実施した偏光フィルムのヒートサイクル試験後のクラックの発生本数とが相関していた。すなわち、破断応力が大きいフィルムはヒートサイクル試験でのクラックの発生数が少ない。加えて、破断応力の変動係数が小さいことから、高い信頼性で再現性よく偏光フィルムおよび偏光板の耐ヒートサイクル性を評価することができる。
【実施例0031】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において採用された、各評価方法を以下に示す。
【0032】
(1)PVAフィルムの軟化点測定
測定対象となるPVAフィルムの幅方向中央部から、幅方向に3cm、長さ方向に3cmの正方形のサンプルを切り出し、第一理化株式会社製自動軟化点測定装置「EX-820」を使用して当該サンプルの軟化点温度を測定した。具体的には、上記のサンプルを、中央に直径1cmの円形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板と、中央に1cm×2cmの長方形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板に挟み、円形の穴のあいたステンレス板の方を上面にして架台に設置して、円形の穴の中央に位置するフィルム上にJIS B 1501:2009に定める鋼球(呼び:3/8(直径9.525mm)、等級:G60、質量:3.5g±0.05g)を載せた。続いて25℃の蒸留水を750mL入れ、毎分5℃で昇温し、サンプルが架台から25mmの位置まで降下したときの温度をフィルムの軟化点温度とした。
【0033】
(2)延伸張力の測定
以下の製造例において、延伸工程における延伸張力は、延伸工程において隣接するロール間にかかる張力を、その間に設置したテンションロールによって計測した。3本以上のロールを用いるときには、その中の最大の延伸張力を採用した。
【0034】
(3)偏光フィルムのヒートサイクル試験
製造した偏光フィルムを用いてヒートサイクル試験を行った。下記の製造例で製造した偏光フィルムを23℃/50%RHで16時間調湿したあと、幅方向(延伸方向と垂直方向)の中央部から、延伸方向に140mm、幅方向に80mmの大きさになるように切り出した。その後、長辺方向が160mm、短辺方向が90mm、厚さが1mmのガラス板(EAST JAPAN GLASS株式会社)の片側表面に、アクリル系粘着剤(株式会社美館イメージング製 MPD62 厚み25μm)とラミネート機(株式会社ユーボン製、ラミーマン IKO-360EII)を用いて、ガラス板の長辺方向と偏光フィルムの延伸方向が平行になるように、偏光フィルムの貼合を行った。偏光フィルムを貼り合わせたガラス板をヒートサイクル試験機(楠本化成株式会社製 冷熱衝撃試験機ETAC WINTECH NT530A)内に静置し、-35℃/30分から80℃/30分の冷熱衝撃試験を6サイクル行った。6サイクル後、偏光フィルムを貼合したガラス板を取り出し、偏光フィルムに生じたクラック(偏光フィルムに発生した延伸方向に平行な割れ)の本数を数え、クラックの本数が少ないほど耐ヒートサイクル性は良好と判断した。
【0035】
偏光フィルムの製造方法
[製造例1]
株式会社クラレ製のPVAフィルム「VF-PE#4500(軟化点温度68.1℃)」を650cm幅にスリットした。スリットしたPVAフィルムを、膨潤工程において、温度25℃の水中に90秒間浸漬している間に元の長さの2倍に長さ方向(MD)に一軸延伸(1段目延伸)した。引き続き染色工程において、ヨウ素を0.093質量%およびヨウ化カリウムを2.14質量%含む温度32℃の水溶液に163秒間浸漬している間に元の長さの2.4倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(2段目延伸)した。引き続き架橋工程において、ホウ酸を2.6質量%の濃度で含有する温度32℃の水溶液に135秒間浸漬している間に元の長さの3倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(3段目延伸)した。引き続き延伸工程において、ホウ酸を2.8質量%およびヨウ化カリウムを5質量%の濃度で含有する温度59.3℃の水溶液中に浸漬している間に元の長さの6.0倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(4段目延伸)した。延伸工程における最大延伸張力は294Nであった。引き続き洗浄工程において、ホウ酸を1.5質量%およびヨウ化カリウムを5.4質量%の濃度で含有する温度22℃の水溶液中に10秒間浸漬することによりフィルムを洗浄した。引き続き乾燥工程において、80℃の乾燥機で90秒間乾燥することにより、厚み19.0μmの偏光フィルムを製造した。なお、偏光フィルムの厚みの測定は、小野測器社の「デジタルゲージカウンターDG-5100」、小野測器社の「リニアゲージセンサーGS-3813」、及び小野測器社の「ゲージスタンドST-0230」を用いて行った。
【0036】
[製造例2]
株式会社クラレ製のPVAフィルム「VF-PE#4500(軟化点温度67.4℃)」を用いたこと以外は製造例2と同様の方法で偏光フィルムを製造した。製造時の最大延伸張力は237Nであり、製造した偏光フィルムの厚みは18.0μmであった。
【0037】
[製造例3]
株式会社クラレ製のPVAフィルム「VF-PE#4500(軟化点温度67.1℃)」を用いたこと以外は製造例2と同様の方法で偏光フィルムを製造した。製造時の最大延伸張力は197Nであり、製造した偏光フィルムの厚みは17.8μmであった。
【0038】
[製造例4]
株式会社クラレ製のPVAフィルム「VF-PS#6000(軟化点温度68.5℃)」を膨潤工程において、温度25℃の水中に90秒間浸漬している間に元の長さの2倍に長さ方向(MD)に一軸延伸(1段目延伸)した。引き続き染色工程において、ヨウ素を0.093質量%およびヨウ化カリウムを2.14質量%含む温度32℃の水溶液に163秒間浸漬している間に元の長さの2.4倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(2段目延伸)した。引き続き架橋工程において、ホウ酸を2.6質量%の濃度で含有する温度32℃の水溶液に135秒間浸漬している間に元の長さの3倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(3段目延伸)した。引き続き延伸工程において、ホウ酸を2.8質量%およびヨウ化カリウムを5質量%の濃度で含有する温度55.4℃の水溶液中に浸漬している間に元の長さの6.0倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(4段目延伸)した。延伸工程における最大延伸張力は571Nであった。引き続き洗浄工程において、ホウ酸を1.5質量%およびヨウ化カリウムを5.4質量%の濃度で含有する温度22℃の水溶液中に10秒間浸漬することによりフィルムを洗浄した。引き続き乾燥工程において、80℃の乾燥機で90秒間乾燥することにより、厚み25.0μmの偏光フィルムを製造した。
【0039】
[実施例1]
製造例1で作製された厚み19.0umの偏光フィルムについて、幅方向の中央部から、延伸方向に50mm、幅方向に30mmの大きさに切り出した。次に切り出した偏光フィルムの中央部に延伸方向に5mmの切れ込みを作製した。こうして作製した試験片を23℃/53%RHで16時間調湿した。次に23℃/53%RHの環境下で、万能材料試験機5942(株式会社インストロン製)に調湿した試験片を、幅方向が引張方向と平行になるようにチャック(チャック間距離10mm)に取り付けた。その後、試験片を1mm/minの速さで破断するまで引っ張り、試験片が破断する張力を測定した。なお、ロードセルは株式会社インストロン製の容量が500Nのものを使用した。破断する張力の測定はN=5で行い、その平均値(破断張力)と変動係数を算出した。また、破断する張力を試験片の断面積で除した値を破断する応力(N/mm
2)とし、破断する応力についても、その平均値(破断応力)と変動係数を算出した。その結果を表1に示した。また、延伸張力と破断張力の関係を
図1に示した。
【0040】
[実施例2]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例2の偏光フィルムを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0041】
[実施例3]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例3の偏光フィルムを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0042】
[実施例4]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例4の偏光フィルムを用いた以外は、実施例1と同様である。
【0043】
[実施例5]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例4の偏光フィルムを用いたことと、引張速度を1mm/minから5mm/minに変更したこと以外は、実施例1と同様である。
【0044】
[比較例1]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例4の偏光フィルムを用いたことと、引張速度を1mm/minから20mm/minに変更したこと以外は、実施例1と同様である。
【0045】
[比較例2]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例4の偏光フィルムを用いたことと、引張速度を1mm/minから100mm/minに変更したこと以外は、実施例1と同様である。
【0046】
[比較例3]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例4の偏光フィルムを用いたこと、5mmの切れ込みを入れなかったこと以外は、実施例1と同様である。
【0047】
[比較例4]
製造例1の偏光フィルムの代わりに、製造例4の偏光フィルムを用いたこと、切れ込みの大きさを5mmから25mmに大きくしたこと以外は、実施例1と同様である。
【0048】
【0049】
表1において、偏光フィルム製造時の延伸張力が大きいほど、引張試験の破断張力及び破断応力(すなわち、延伸方向に対して垂直方向の破断張力及び破断応力)は小さくなる傾向にある。そして、引張試験の破断張力及び破断応力が小さくなるにつれて、ヒートサイクル試験におけるクラック発生数は増加する。言い換えれば、延伸方向に対して垂直方向に引っ張った際に割れやすいフィルムはヒートサイクル試験でも割れやすい。これらの結果から、偏光フィルム製造時の延伸張力、引張試験の破断張力及び破断応力、およびヒートサイクル試験における割れ発生数は相関関係にあることが分かる。
そして、特定の切れ込みを有する偏光フィルムを特定の試験速度で引張試験を行った場合、破断張力及び破断応力の変動係数が小さい、すなわち数値のバラつきが小さいことがわかる(実施例1-5)。
以上から、本発明の方法を用いることにより、偏光板を作製することなく、簡易な操作で、高い信頼性で偏光板や偏光フィルムの耐ヒートサイクル性を評価できる。