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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172448
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】無線受電装置、無線受電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20231129BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20231129BHJP
   H02J 50/05 20160101ALI20231129BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/80
H02J50/05
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084258
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木下 岳
(72)【発明者】
【氏名】内野 直孝
(57)【要約】
【課題】容易なインピーダンス制御により複数の無線受電装置の内の特定の無線受電装置への電力伝送効率を向上させる無線受電装置を提供すること。
【解決手段】無線受電装置3は、無線で交流電力を受電する受電部30と、受電部30から電力供給対象である負荷5の手前までの回路のインピーダンスを調整するインピーダンス調整回路34と、受電部30とインピーダンス調整回路34との間に設けられ受電部30からインピーダンス調整回路34への電力の供給と非供給とを切り替えるスイッチ部36と、を有する。受電部30が容量結合型の無線受電カプラであり、インピーダンス調整回路34のインダクタンスが調整可能であり、スイッチ部36は、受電部30とインピーダンス調整回路34との間に直列に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線で電力を受電する受電部と、
前記受電部と電力供給対象である負荷との間に設けられ、回路のインピーダンスを調整するインピーダンス調整回路と、
前記受電部と前記インピーダンス調整回路との間に設けられ、前記受電部から前記インピーダンス調整回路への前記電力の供給と非供給とを切り替えるスイッチ部と、
を有する無線受電装置。
【請求項2】
前記受電部が容量結合型の無線受電カプラであり、
前記インピーダンス調整回路のリアクタンスが調整可能であり、前記リアクタンスを調整することで、前記受電部と前記インピーダンス調整回路とで構成される共振回路の共振周波数を調整することが可能であり、
前記スイッチ部は、前記受電部と前記インピーダンス調整回路との間に直列に設けられている、
請求項1に記載の無線受電装置。
【請求項3】
前記電力の供給が行われる場合には前記スイッチ部が短絡され、前記電力の供給が行われない場合には前記スイッチ部が開放される、
請求項2に記載の無線受電装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の無線受電装置が複数配置され、
複数の前記無線受電装置の前記受電部間で発生する電界結合を利用して、特定の前記無線受電装置への電力伝送効率を向上させる、
無線受電システム。
【請求項5】
各前記無線受電装置が、複数の前記無線受電装置の前記受電部間における電界結合に対して並列に電界結合するように設けられた中継部を備えている、
請求項4に記載の無線受電システム。
【請求項6】
前記受電を行う前記無線受電装置について、前記インピーダンス調整回路に前記電力の供給を行うように前記スイッチ部を切り替え、
前記受電を行わない前記無線受電装置について、前記インピーダンス調整回路に前記電力の供給を行わないように前記スイッチ部を切り替える、
請求項4に記載の無線受電システム。
【請求項7】
前記受電を行う前記無線受電装置の有する前記インピーダンス調整回路の前記リアクタンスが調整される、
請求項4に記載の無線受電システム。
【請求項8】
前記インピーダンス調整回路がインダクタを構成するコイルを備え、前記コイルに設けた複数の中間端子の何れかを選択することによりインピーダンスが調整される、
請求項7に記載の無線受電システム。
【請求項9】
前記受電を行う前記無線受電装置及び前記受電を行わない前記無線受電装置についての情報を取得する受電情報取得部と、
前記受電情報取得部が得た情報に基づいて前記スイッチ部を切り替えるスイッチ部制御部と、
前記受電情報取得部が得た情報に基づいて前記インピーダンス調整回路を制御するインピーダンス制御部と、
を有する情報処理装置と、を有する、
請求項4に記載の無線受電システム。
【請求項10】
前記受電部が磁界結合型の無線受電カプラであり、
前記インピーダンス調整回路のリアクタンスが調整可能であり、前記リアクタンスを調整することで、前記受電部と前記インピーダンス調整回路とで構成される共振回路の共振周波数を調整することが可能であり、
前記スイッチ部は、前記受電部と前記インピーダンス調整回路との間に前記受電部と並列に設けられている、
請求項1に記載の無線受電装置。
【請求項11】
前記電力の供給が行われる場合には前記スイッチ部が開放され、前記電力の供給が行われない場合には前記スイッチ部が短絡される、
請求項10に記載の無線受電装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の無線受電装置が複数配置され、
複数の前記無線受電装置の前記受電部間で発生する磁界結合を利用して、特定の前記無線受電装置への電力伝送効率を向上させる、
無線受電システム。
【請求項13】
各前記無線受電装置が、複数の前記無線受電装置の前記受電部間における磁界結合に対して並列に磁界結合する中継部を備えている、
請求項12に記載の無線受電システム。
【請求項14】
前記受電を行う前記無線受電装置について前記電力の供給を行うように前記スイッチ部を切り替え、
前記受電を行わない前記無線受電装置について前記電力の供給を行わないように前記スイッチ部を切り替える、
請求項12に記載の無線受電システム。
【請求項15】
前記受電を行う前記無線受電装置の有する前記インピーダンス調整回路の前記リアクタンスが調整される、
請求項12に記載の無線受電システム。
【請求項16】
前記インピーダンス調整回路において、前記インピーダンス調整回路が有する複数のキャパシタから所定のキャパシタが選択されることによりキャパシタンスが調整される、
請求項15に記載の無線受電システム。
【請求項17】
前記受電を行う前記無線受電装置及び前記受電を行わない前記無線受電装置についての情報を取得する受電情報取得部と、
前記受電情報取得部の得た情報に基づいて前記スイッチ部を切り替えるスイッチ部制御部と、
前記受電情報取得部の得た情報に基づいて前記インピーダンス調整回路を制御するインピーダンス制御部と、
を有する情報処理装置を有する、
請求項12に記載の無線受電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受電装置、無線受電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電気自動車等の普及に伴い、無線で電力を供給する、電界共鳴型無線電力伝送システムの開発が積極的になされている。例えば、送電側の2枚の電極と受電側の2枚の電極とからなるカプラにて電界共鳴を生起させ無線で電力伝送する技術、及び、送電側のコイルからなるカプラと受電側のコイルからなるカプラにて磁気共鳴を生起させ無線で電力伝送する技術が提案されている。
【0003】
そして、無線電力伝送システムにおいて、無線受電装置が複数配置された際に、特定装置だけ優先的に電力伝送する技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1は、複数の無線受電装置を中継して、特定の無線受電装置に電力が供給される技術が開示されている。無線受電装置は、受電部、インピーダンス調整装置、整流器、負荷の順に電力を伝送するための構成要素を有する。一つの無線受電装置から他の無線受電装置に電力を中継するに際し、一つの無線受電装置の受電部と他の無線受電装置の受電部とがカップリングし、電力が中継される。スイッチ部がインピーダンス調整装置と整流器との間に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-30293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、中継器がインピーダンス調整機能を保持するため、それぞれが共振周波数を有し、それぞれの無線受電装置で共振条件を調整せざるを得ない。このため、共振周波数のずれを補正するためには全ての無線受電装置でインピーダンス調整が必要となる。そして、無線受電装置の台数が増えると上記のインピーダンス調整が困難となる。
【0007】
本発明は、複数の無線受電装置が送電装置から所定の距離に配置されている場合において、容易なインピーダンス制御により複数の無線受電装置の内の特定の無線受電装置への電力伝送効率を向上させることができる無線受電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)無線受電装置は、無線で電力を受電する受電部と、受電部と電力供給対象である負荷との間に設けられ、回路のインピーダンスを調整するインピーダンス調整回路と、受電部とインピーダンス調整回路との間に設けられ、受電部からインピーダンス調整回路への電力の供給と非供給とを切り替えるスイッチ部と、を有する。
【0009】
(2)(1)の無線受電装置において、受電部が容量結合型の無線受電カプラであり、インピーダンス調整回路のリアクタンスが調整可能であり、リアクタンスを調整することで、受電部とインピーダンス調整回路とで構成される共振回路の共振周波数を調整することが可能であり、スイッチ部は、受電部とインピーダンス調整回路との間に直列に設けられている。
【0010】
(3)(2)の無線受電装置において、電力の供給が行われる場合にはスイッチ部が短絡され、電力の供給が行われない場合にはスイッチ部が開放される。
【0011】
(4)無線受電システムは、(2)又は(3)の無線受電装置が複数配置され、複数の無線受電装置の受電部間で発生する電界結合を利用して、特定の無線受電装置への電力伝送効率を向上させている。
【0012】
(5)(4)の無線受電システムにおいて、複数の無線受電装置の受電部間における電界結合に対して並列に電界結合するように設けられた中継部を備えている。
【0013】
(6)(4)又は(5)の無線受電システムは、受電を行う無線受電装置について、インピーダンス調整回路に電力の供給を行うようにスイッチ部を切り替え、受電を行わない無線受電装置について、インピーダンス調整回路に電力の供給を行わないようにスイッチ部を切り替える。
【0014】
(7)(4)から(6)の何れかの無線受電システムにおいて、受電を行う無線受電装置の有するインピーダンス調整回路のリアクタンスが調整される。
【0015】
(8)(7)の無線受電システムにおいて、インピーダンス調整回路がインダクタを構成するコイルを備え、コイルに設けた複数の中間端子の何れかを選択することによりインピーダンスが調整される。
【0016】
(9)(4)から(8)の何れかの無線受電システムは、受電を行う無線受電装置及び受電を行わない無線受電装置についての情報を取得する受電情報取得部と、受電情報取得部が得た情報に基づいてスイッチ部を切り替えるスイッチ部制御部と、受電情報取得部が得た情報に基づいてインピーダンス調整回路を制御するインピーダンス制御部と、を有する情報処理装置と、を有する。
【0017】
(10)(1)の無線受電装置において、受電部が磁界結合型の無線受電カプラであり、インピーダンス調整回路のリアクタンスが調整可能であり、リアクタンスを調整することで、受電部とインピーダンス調整回路とで構成される共振回路の共振周波数を調整することが可能であり、スイッチ部は、受電部とインピーダンス調整回路との間に受電部と並列に設けられている。
【0018】
(11)(10)の無線受電装置において、電力の供給が行われる場合にはスイッチ部が開放され、電力の供給が行われない場合にはスイッチ部が短絡される。
【0019】
(12)無線受電システムは、(10)又は(11)の無線受電装置が複数配置され、
複数の無線受電装置の受電部間で発生する磁界結合を利用して、特定の無線受電装置への電力伝送効率を向上させている。
【0020】
(13)(12)の無線受電システムにおいて、無線受電装置が、複数の無線受電装置の受電部間における磁界結合に対して並列に磁界結合する中継部を備えている。
【0021】
(14)(12)又は(13)の無線受電システムは、受電を行う無線受電装置について電力の供給を行うようにスイッチ部を切り替え、受電を行わない無線受電装置について電力の供給を行わないようにスイッチ部を切り替える。
【0022】
(15)(12)から(14)の何れかの無線受電システムにおいて、受電を行う無線受電装置の有するインピーダンス調整回路のリアクタンスが調整される。
【0023】
(16)(15)の無線受電システムにおいて、インピーダンス調整回路が有する複数のキャパシタから所定のキャパシタが選択されることによりキャパシタンスが調整される。
【0024】
(17)(12)から(16)の何れかの無線受電システムは、受電を行う無線受電装置及び受電を行わない無線受電装置についての情報を取得する受電情報取得部と、受電情報取得部の得た情報に基づいてスイッチ部を切り替えるスイッチ部制御部と、受電情報取得部の得た情報に基づいてインピーダンス調整回路を制御するインピーダンス制御部と、を有する情報処理装置を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、容易なインピーダンス制御により複数の無線受電装置の内の特定の無線受電装置への電力伝送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る無線受電システムの適用形態の概念図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る無線受電システムで電力の転送が行われる様子を示す概念図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る無線受電システムが有する無線受電装置の構成を示す模式図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る無線受電装置が2つ並べて構成されている様子を示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る無線受電システムの等価回路図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る無線受電システムの伝送効率の計算結果を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る無線受電システムで電力の転送が行われる様子を示す模式図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る無線受電システムで3つの無線受電装置において電力の転送が行われる様子を示す模式図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る磁界結合無線受電システムで電力の転送が行われる様子を示す模式図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る中継部が電界結合による場合を示す模式図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る中継部が磁界結合による場合を示す模式図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る電界結合に基づく中継部が電力を転送する様子を示す模式図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る変形例2を示す模式図である。
図14】本発明の第2実施形態に係る磁界結合に基づく中継部が電力を転送する変形例3の模式図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る変形例4を示す模式図である。
図16】本発明の第2実施形態に係る電界結合に基づく中継部が隣りの無線受電装置を超えて離れた無線受電装置に電力を転送する変形例5を示す模式図である。
図17】本発明の第2実施形態に係る磁界界結合に基づく中継部が隣りの無線受電装置を超えて離れた無線受電装置に電力を転送する変形例6を示す模式図である。
図18】本発明の第3実施形態に係るインダクタンスを調整するインピーダンス調整回路の模式図である。
図19】本発明の第3実施形態に係るキャパシタンスを調整するインピーダンス調整回路の模式図である。
図20】本発明の第4実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について、その実施形態に係る無線受電装置3、及び、無線受電システム1に即して、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。図に示す直交座標系XYZにおいて、電界共鳴型においては、電極平面に平行な一方向をX軸方向、X軸方向に直交する電極平面内の方向をY軸方向、電極平面と直交する方向をZ軸方向とする。磁界共鳴型においては、電磁コイルの軸方向をZ軸方向、電磁コイルの軸方向に垂直な一方向をX軸方向、X軸とZ軸とに垂直な一方向をY軸方向とする。以下、適宜この座標系を利用して説明する。
【0028】
本実施形態の説明においては、特に区別する必要のない場合には、負荷5のように記載して、区別する必要のある場合には、第1負荷5aのように区別して表記される。
【0029】
(第1実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係る無線受電システム1の適用形態の概念図である。図1の例では、本実施形態に係る無線受電システム1が、例えば電動自転車200の負荷5である充電池に充電する駐輪場に適用されている。電源4である送電部20から電動自転車200の有する負荷5に適宜充電がなされる。図1の無線受電システム1では、複数の負荷5の内の特定の負荷5に優先的に電力が供給され得る。電源4は高周波電源であり、電動自転車200の4台の内、例えば、第1電動自転車200aの有する第1負荷5aに優先的に充電が行なわれる。充電の制御は、情報処理装置10が使用されてもよい。情報処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)や、タブレット端末等で構成することができる。
【0030】
図2は、図1の無線受電システム1で電力の伝送が行われる様子を示す模式図である。電源4からは、図2には図示されない無線送電装置2及び無線受電装置3を通して、負荷5に対して電力が供給され得る。図2の例では、第1負荷5aを対象として電力が伝送される。その際、第2負荷5b、第3負荷5c、第4負荷5dに向けて伝送される電力が、図2には図示されない電界結合或いは磁気結合を通して、二重矢印で示されるように、各無線受電装置3から伝送されて第1無線受電装置3aを通して第1負荷5aに伝送される。図2においては、電力伝送対象である第1負荷5aに伸びる矢印が太線で表記される。この場合、第2電動自転車200b、第3電動自転車200cおよび第4電動自転車200dは、中継器として機能するので、第2電動自転車200bの第2負荷5b、第3電動自転車200cの第3負荷5c、及び、第4電動自転車200dの第4負荷5dには電力は供給されない。電力が供給されないことは、図2では点線矢印で示される。
【0031】
図3は、図2に示した無線受電装置3の内の1つについての構成を示す模式図である。図3の左下に示すように、紙面上方向がY軸方向、紙面奥方向がX軸方向、紙面左方向がZ軸方向である。これらの軸方向は以降の図面で共通であり、後述する複数の無線受電装置3を結合する方位にX軸が採られている。
【0032】
図3に示す無線受電システム1は例として、容量結合型の無線受電システム1を表している。電源4に無線送電装置2が接続されている。無線送電装置2に対して無線で、交流電力を無線受電装置3が受電部30を通して受電する。無線受電装置3は、受電部30と受電部30から整流部35まで、即ち受電部30と電力供給対象である負荷5との間の回路のインピーダンスを調整するインピーダンス調整回路34と、受電部30とインピーダンス調整回路34との間に直列に設けられ受電部30からインピーダンス調整回路34への電力の供給と非供給とを切り替えるスイッチ部36とを有する。
【0033】
電源4は一対の平板電極からなる送電部20に接続される。送電部20は、第1送電電極21及び第2送電電極22を有する。図3において、第1受電電極31と第2受電電極32との側面が表示されている。無線受電装置3は、第1送電電極21の表面と対向する第1受電電極31、第2送電電極22の表面と対向する第2受電電極32、及び、受電回路33を有する。送電部20と受電部30とで、容量結合型の無線送受電カプラが構成されている。受電部30は、容量結合型の無線受電カプラである。受電回路33は、スイッチ部36、インピーダンス調整回路34、整流部35を有する。無線受電装置3は、負荷5に接続され、負荷5に電力が供給される。受電回路33は、制御部37を有してもよく、制御部37は更に、情報処理装置10により制御されてもよい。制御部37は、スイッチ部36及びインピーダンス調整回路34を制御する。
【0034】
電源4から交流電力が供給されると、容量結合により、無線受電装置3の有する第1受電電極31と第2受電電極32とを通して電力が伝送される。スイッチ部36は第1受電電極31とインピーダンス調整回路34との間に直列に配置されている。スイッチが接続状態の場合には、受電部30から電力がインピーダンス調整回路34に送られる。インピーダンス調整回路34は例えばインダクタで構成され、そのインダクタンスが調整されて共振周波数が調整可能であり、入力する交流電力の周波数に共振するように回路が調整されて、電力の伝送効率の向上が図られる。整流部35にて交流が整流されて、例えば図1に記載された負荷5である充電池が充電される。
【0035】
スイッチ部36のスイッチが開放されている場合には、電力は無線受電装置3の有するインピーダンス調整回路34には供給されない。
【0036】
図4は、図3に示した1つの無線受電装置3が2つ並べて構成されている様子を示す。例えば、図4では、第1電動自転車200aと第2電動自転車200bとが電源4から所定の距離に配置(駐輪)されている場合を模式的に示している。また、例えば、第1受電電極31aと第2受電電極32aとが第1電動自転車200aに備えられている。第1受電電極31bと第2受電電極32bとが第2電動自転車200bに備えられている。図4の左下に示すXYZ軸の方位は図3に記載したXYZ軸方位と合わせてある。一方の無線受電装置3は符号3aで、他方の無線受電装置3は符号3bで示す。他方の無線受電装置3bは、一方の無線受電装置3aと同様に図3に示した構成を有する。他方の無線受電装置3bにおいては受電部30として、第1受電電極31bと第2受電電極32bとが設けられる。ここで、他方の無線受電装置3bにおいては、図3に示したスイッチ部36が開放されており、受電回路33とは切り離されている。このため、図4においては、一方の受電回路33aのみが記載されている。第1送電電極21は、一方の無線受電装置3aが有する第1受電電極31aと他方の無線受電装置3bが有する第1受電電極31bとの双方に対向する。第2送電電極22の面積は、一方の無線受電装置3aが有する第2受電電極32aの面積と他方の無線受電装置3bが有する第2受電電極32bの面積との和よりも広い。第2送電電極22は、一方の無線受電装置3aが有する第2受電電極32aと他方の無線受電装置3bが有する第2受電電極32bとの双方に対向する。
【0037】
図5図4に記載した無線電力伝送構成の等価回路である。電源4から出力された高周波電力が負荷5に伝送される。図5においては、無線送電装置2の有する送電側インピーダンス調整回路24(図4では省略)も記載されている。容量Cm1は、第1送電電極21と一方の受電部30の第1受電電極31aとの間の容量である。容量Cm2は、第2送電電極22と一方の受電部30の第2受電電極32aとの間の容量である。容量C1は第1送電電極21と第2送電電極22との間の寄生容量である。容量C2は、第1送電電極21と他方の無線受電装置3bの第1受電電極31bとの間の容量、容量C3は、第2送電電極22と他方の無線受電装置3bの第2受電電極32bとの間の容量、容量C4は、他方の受電部30の第1受電電極31bと他方の無線受電装置3bの第2受電電極32bとの間の寄生容量、C5は、一方の無線受電装置3aの第1受電電極31aと他方の無線受電装置3bの第1受電電極31bとの間の寄生容量、C6は、一方の無線受電装置3aの第1受電電極31aと一方の無線受電装置3aの第2受電電極32aとの間の寄生容量、C7は、一方の無線受電装置3aの第2受電電極32aと他方の無線受電装置3bの第2受電電極32bとの間の寄生容量である。スイッチ部36とインピーダンス調整回路34としてインダクタが接続される。
【0038】
図4の構成にて無線電力伝送を行った時における電力伝送効率を図5の等価回路に基づいて計算した結果を図6に示す。横軸は受電部30の電極の容量CRRに対する、図5の第1受電電極31a及び第2受電電極32aに基づく容量Cmの割合(Cm/CRR)を示す。ここでCRRは受電部30が周囲と容量結合せず単独で存在する時の容量である。またCmは図5のCm1とCm2との和の2分の1である。送受電が行われる電源4の送電ポートと負荷5の受電ポートとの間のSパラメータの解析計算を行い、伝送効率としてSパラメータS21の二乗が縦軸の値として採用されている。図6では、図4に示した第2受電電極32の表示は省略している。図4に示した他方の無線受電装置3bが設置されている場合と、他方の無線受電装置3bが設置されていない場合とを示す。簡単のため受電電極31aと受電電極31bの面積は第1送電電極21の半分としている。無線受電装置3b或いは図6における第1受電電極31bが設置されていない場合には、伝送効率の最大値は0.15程度である。これに対して、他方の無線受電装置3bの第1受電電極31bが設置されている場合には、Cm/CRRが約0.5において伝送効率が0.15を超え、さらにCm/CRRを大きくしていくと伝送効率の最大値は1に近い値まで向上する。
【0039】
図7は、図3から図5に示した構成を有する無線受電システム1の模式図である。電力の伝送の状態が模式的に示される。第1無線受電装置3aと第2無線受電装置3bとは同様の構造を有している。電力の供給が行われる第1無線受電装置3aの有する第1スイッチ部36aが短絡(ON)され、電力の供給が行われない第2無線受電装置3bの第2スイッチ部36bが開放(OFF)される。第2スイッチ部36bが開放されることで、第2インピーダンス調整回路34bへの電力供給が停止される
【0040】
第1無線受電装置3aの有する第1受電電極31aと第2無線受電装置3bの有する第1受電電極31bとが電界結合しており、これらの電極の間の容量C5(図5参照)を通して電力が転送される。図7においてC5の電極を破線で示しているが、これは、第1受電電極31a及び第1受電電極31bとの間の寄生容量であることを考慮した。後述するが、意図的にこのC5に相当する容量を形成する第2実施形態においては、容量部は実線で表記される。
【0041】
第1無線受電装置3aの第1受電電極31aと第2無線受電装置3bの第1受電電極31bとの間の容量(図5のC5)と、第1無線受電装置3aの第2受電電極32aと第2無線受電装置3bの第2受電電極32bとの間の容量(図5のC7、図7では表記が省略されている)と、を経由して電力が転送される。第1スイッチ部36aを閉じた第1無線受電装置3aに、第2スイッチ部36bを開いた第2無線受電装置3bから電力が転送される。
【0042】
複数の受電部30が併置され電気的に結合する構成では、無線受電装置3の共振周波数がずれてしまい、伝送効率が低下する。ところで、図7の例では、電力の転送はインピーダンス調整回路34を経る前に行われている。このため、電力の転送により共振周波数がずれる場合の補正には、伝送対象の無線受電装置3のみを考慮すればよい。伝送対象の第1無線受電装置3aが有する第1インピーダンス調整回路34aが調整されることにより共振がもたらされる。第2インピーダンス調整回路34bと切り離される第2無線受電装置3bでは共振条件から外れ、第1インピーダンス調整回路34aにて共振がもたらされる第1無線受電装置3aに優先的に電力が伝送されると考えることもできる。このように、電力の転送により伝送性能が向上する。無線受電装置3が複数配置され、複数の無線受電装置3の受電部30間で発生する電界結合を利用して、特定の無線受電装置3への電力伝送効率は向上させられる。
【0043】
図8は、無線電力伝送に、3つの無線受電装置3が関係する場合についての模式図である。無線受電装置3として、第1無線受電装置3a、第2無線受電装置3b、第3無線受電装置3cが設けられる。図8に示すように、第1無線受電装置3aの有する第1スイッチ部36aのみが閉じられ、第2無線受電装置3bの有する第2スイッチ部36bと第3無線受電装置3cの有する第3スイッチ部36cとは開放される。この例では、第2無線受電装置3bに加えて第3無線受電装置3cからも電力が転送され、電力供給対象である第1無線受電装置3aに優先的に電力が供給される。
【0044】
特定の無線受電装置3が受電対象となった場合に、その対象である無線受電装置3に関連する他の無線受電装置3の台数や配置、伝送特性の情報をもとに、対象である無線受電装置3に接続されているインピーダンス調整回路34の共振用インダクタ又は共振用キャパシタの素子定数が調整される。
【0045】
(変形例1)
上記においては、電界結合による無線電力伝送についての実施形態について説明した。変形例1においては、磁界結合による無線伝送について説明する。図9は、磁界結合による無線電力伝送を行う場合の構成を示す模式図である。電界結合におけるキャパシタに代えて、受電部30は受電インダクタ38を有する。複数の無線受電装置3において、受電インダクタ38は無線受電装置3の間にて磁界結合している。送電部20と受電部30とで、磁界結合型の無線送受電カプラが構成されている。受電部30は、磁界結合型の無線受電カプラである。
【0046】
電源4から無線送電装置2が有する送電インダクタ28に、高周波交流電力が供給される。これにより送電インダクタ28では磁界が発生する。無線受電装置3は、受電インダクタ38、スイッチ部36、インピーダンス調整回路34、及び、図9には図示されない整流部35を有する。受電インダクタ38からなる第1無線受電装置3aが、送電インダクタ28からの磁界を受け、電磁誘導により電力が伝送される。受電された電力は、キャパシタからなるインピーダンス調整回路34、及び、図9には図示されない整流部35を経て、図9には図示されない負荷5に出力される。
【0047】
第1無線受電装置3aと第2無線受電装置3bとは同様の構成を有する。ここで、インピーダンス調整回路34と無線受電装置3との間のスイッチ部36は、変形例1においては、インピーダンス調整回路34へのポートを短絡可能とする形で設けられる。すなわち、スイッチ部36は、受電部30とインピーダンス調整回路34との間に受電部30と並列に設けられる。
【0048】
電力の供給が行われる第1無線受電装置3aにおいて、第1スイッチ部36aが開放され、電力の供給が行われない第2無線受電装置3bにおいては、第2スイッチ部36bが短絡される。第2無線受電装置3bにおいては、電磁誘導により伝送された電力は、第2スイッチ部36bが短絡されているため、第2インピーダンス調整回路34bへは流れず、第2受電インダクタ38bを含んだ閉じた回路内を流れる。この電流が磁界を形成する。形成された磁界は、磁界結合している第1無線受電装置3aの第1受電インダクタ38aに対して電磁誘導を通して電力を伝送する。なお、上記したように、第2受電インダクタ38bには短絡電流が流れる。このため発熱が問題となることが考えられる。電力を他の無線受電装置3に転送する無線受電装置3においては、受電インダクタ38として、コイル抵抗を無視しうる超電導コイルを用いることが好ましい。
【0049】
第1無線受電装置3aにおいては、上記したように第1スイッチ部36aは開放されている。このため、第1受電インダクタ38aに誘起された電力は第1インピーダンス調整回路34aに伝送され、図9には表示されない負荷5に出力される。電源4から投入された電力は、電力供給対象である第1無線受電装置3aにのみ伝送されることとなる。この際、第1インピーダンス調整回路34aのキャパシタのキャパシタンスが調整され、結果共振周波数が調整され、共振条件が整えられることで、伝送効率の最大化が図られる。無線受電システム1において無線受電装置3が複数配置され、複数の無線受電装置3の受電部30間で発生する磁界結合を利用して、特定の無線受電装置3への電力伝送効率が向上させられる。
【0050】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、電力供給対象である1つの無線受電装置3の受電部30が、他の無線受電装置3の受電部30と電界結合或いは磁界結合する構成であった。第2実施形態では、受電部30とは別に、他の無線受電装置3との間で電界結合或いは磁界結合にて電力を伝送する中継部6が設けられる。中継部6は共振周波数を持たない、或いは、意図的に非共振となるように構成される。中継部6は、無線受電装置3の間における受電部30の電界結合或いは磁界結合に対して並列に設けられる。
【0051】
図10は、電界結合により電力を伝送する中継部6の例を示す模式図である。無線受電システム1において、無線受電装置3が複数の無線受電装置3の受電部30の間における電界結合に対して並列に電界結合するように設けられた中継部6を備えている。中継部6は、中継平板電極61とスイッチ部36とからなる。中継部6は、第1受電電極31a或いは第2受電電極32aからの電線に結線されて、図10には図示されない、図10の上下に設けられる他の無線受電装置3に向けて伸び、その先端に中継平板電極61を有する。また、別の中継部6は、図10の右端に記載されているように、第1受電電極31a或いは第2受電電極32aからの電線に結線されず、図10には図示されないが図10の上下に設けられる他の無線受電装置3に向けて伸び、その先端に中継平板電極61を有する。
【0052】
図11は、磁界結合により電力を伝送する中継部6の例を示す模式図である。中継部6は、電力の中継に用いられる中継インダクタ62と電線とスイッチ部36とからなる。中継部6は、受電インダクタ38からの電線に結線されて、図11には図示されない、図11の上下に設けられる他の無線受電装置3に向けて伸び、その先端に中継インダクタ62を有する。また、別の中継部6は、図11の右端に記載されているように、受電インダクタ38からの電線に結線されず、図10には図示されない、図10の上下に設けられる他の無線受電装置3に向けて伸び、その先端に中継インダクタ62を有する。
【0053】
以下、図12から図17を参照して、中継部6の動作について説明する。
【0054】
図12は、電界結合型の例であり、第2無線受電装置3bから第1無線受電装置3aに電力が転送される。無線受電システム1は、受電を行う無線受電装置3について、インピーダンス調整回路34に電力の供給を行うようにスイッチ部36を切り替え、受電を行わない無線受電装置3について、インピーダンス調整回路34に電力の供給を行わないようにスイッチ部36を切り替える。第1受電部の第1受電電極31aと第2無線受電装置3bの第1受電電極31bとは、電界結合しており、容量C5が形成されている。これと並列に、第1中継平板電極61aと第2中継平板電極61bとが対向して設けられ、容量を形成する。図12においては、スイッチ部36がこれら中継平板電極61に設けられる。第2スイッチ部36bは、電源4からの電力が第2インピーダンス調整回路34bには伝送されないように、設けられている。この時、第2無線受電装置3bに伝送される電力は、中継平板電極61に中継されて、第1無線受電装置3aに転送される。結果、第1無線受電装置3aを対象として、電源4から電力が伝送される。
【0055】
(変形例2)
図13は、図12に示した電力伝送の変形例であり、中継平板電極61は無線受電装置3にスイッチ部36を介さずに接続されている。スイッチ部36は、第1実施形態と同様に設定される。スイッチ部36は中継平板電極61とインピーダンス調整回路34との間に直列に設置される。電力が伝送されない第2無線受電装置3bにおいて第2スイッチ部36bは開放され、電力が伝送される第1無線受電装置3aにおいて第1スイッチ部36aは閉じられる。
【0056】
(変形例3)
図14は、磁界結合型の変形例3を示す模式図である。無線受電システム1において、無線受電装置3が、複数の無線受電装置3の受電部30の間における磁界結合に対して並列に磁界結合する中継部6を備えていてもよい。第1無線受電装置3aは第1中継インダクタ62aを有し、第2無線受電装置3bは第2中継インダクタ62bを有する。第1中継インダクタ62aと第2中継インダクタ62bとは、磁界結合する。無線受電装置3の間における中継部6の磁界結合は、無線受電装置3の間における受電部30の磁界結合に対して並列に設けられる。第1無線受電装置3aに対して電力が供給されるように第1スイッチ部36aが切り替えられ、第2無線受電装置3bに対しては電力の供給が行われないように第2スイッチ部36bは開放される。
【0057】
第2無線受電装置3bが受電した電力は、第2中継インダクタ62b及び第1中継インダクタ62aを介して、第1無線受電装置3aに転送される。第1無線受電装置3aが有する第1インピーダンス調整回路34aから電力が出力される。その結果、第1無線受電装置3aに、電源4からの電力が伝送される。
【0058】
電力供給対象である第1無線受電装置3aの有する第1インピーダンス調整回路34aは、共振周波数が入力電力の周波数に近づくように調整され、伝送効率の改善が図られる。
【0059】
(変形例4)
図15は、図14に示した変形例3とスイッチ部36の構成が異なる変形例4を示す。図15の例では、スイッチ部36は、インピーダンス調整回路34の入力ポートに直列に配置される。第1無線受電装置3aにおいてスイッチ部36は閉じられ、第2無線受電装置3bにおいてスイッチ部36は開放される。その結果、第1無線受電装置3aに、電源4からの電力が伝送される。
【0060】
(変形例5)
上記の実施形態とその変形例である変形例1~4においては、主に、電力供給対象である無線受電装置3に対して隣の無線受電装置3から電力を転送する例について説明した。変形例5においては、2台以上離れた位置にある無線受電装置3に電力が転送される。図16は、無線受電装置3が3つあり、図16の下端の第3無線受電装置3cの電力が、上端の第1無線受電装置3aに転送される例の模式図である。第2無線受電装置3bに設けられる第2中継平板電極61bは、第2無線受電装置3bの回路とは結線されていない。そして、第2無線受電装置3bの有する第2中継平板電極61bは、一対の平板電極を有する。そして、一方の平板電極は第1無線受電装置3aの有する第1中継平板電極61aと電界結合し、他方の平板電極は、第3無線受電装置3cの有する第3中継平板電極61cと電界結合する。第3無線受電装置3cの受電した電力は、第1無線受電装置3aに転送される。その結果、第1無線受電装置3aに、電源4からの電力が優先的に伝送される。これにより、複数の無線受電装置3に対して、伝送する電力の割合を変えて電力が伝送され得る。
【0061】
(変形例6)
図17は、無線受電装置3が3つあり、図16の下端の第3無線受電装置3cの電力が、上端の第1無線受電装置3aに転送される例の模式図である。図16に例示した変形例5が電界結合による電力伝送であったのに対して、変形例6は磁界結合による電力伝送である。第2無線受電装置3bに設けられる第2中継インダクタ62bは、第2無線受電装置3bの回路とは結線されていない。そして、第2無線受電装置3bの有する第2中継インダクタ62bは、一対のインダクタを有する。そして、一方のインダクタは第1無線受電装置3aの有する第1中継インダクタ62aと磁界結合し、他方のインダクタは、第3無線受電装置3cの有する第3中継インダクタ62cと磁界結合する。第3無線受電装置3cの受電した電力は、第1無線受電装置3aに転送される。その結果、第1無線受電装置3aに、電源4からの電力が優先的に伝送される。
【0062】
(第3実施形態)
第1実施形態、第2実施形態の説明においては、インピーダンス調整回路34の構成内容については触れていない。ここでは、第3実施形態として、インピーダンス調整回路34の構成について説明する。図18は、電界結合型の無線受電システム1に採用することができるインダクタンス調整機構を例示する模式図である。無線受電システム1において、インピーダンス調整回路34がインダクタを構成するコイルを備え、コイルに設けた複数の中間端子の何れかを選択することによりインピーダンスが調整されてもよい。図18の例では、インピーダンス調整回路34がインダクタを構成するコイルへの複数の接続部を有し、何れかの接続部が選択されることによりインピーダンスが調整される。インピーダンス調整回路34はその一部にインダクタ341を有する。インダクタ341はコイルからなるが、コイルの途中にコイル中を流れる電流の長さを調整する複数の接点が形成されており、接点はスイッチの切換にて選択可能に構成されている。インダクタンスはコイルの長さに依存するため、スイッチの切換によりインダクタンスが変更可能であり、インピーダンスが調整される。
【0063】
(変形例7)
図19は、インピーダンス調整回路34を有する、キャパシタンス調整機構を説明する模式図である。インピーダンス調整回路34が複数の異なるキャパシタンスを有するキャパシタを備え、何れかのキャパシタが選択されることによりインピーダンスが調整される。インピーダンス調整回路34は、複数の容量の異なるキャパシタ343を有し、スイッチ342により、キャパシタ343は選択可能に構成されている。スイッチ342によりキャパシタンスが変更可能であり、インピーダンスが調整される。
【0064】
(情報処理装置)
次に、上記した実施形態において、受電を優先的に行う無線受電装置3の選択、スイッチ部36の制御、及び、インピーダンス調整回路34の調整等を行うための構成について説明する。ここでは、上記の制御を情報処理装置10によって行うものとしている。ただし、情報処理装置10を用いることなく手動で制御することも可能である。
【0065】
情報処理装置10は、例えば、図20に示すように、機能的構成として、受電情報取得部101、スイッチ部制御部102、インピーダンス制御部103、ハードウェア構成として、入出力部104、通信手段105、記憶部106を有する。情報処理装置10の機能的構成は、情報処理装置10に設けるCPU等のプロセッサにより実現することができるが、ハードウェアロジックとして構成しても差し支えない。
【0066】
受電情報取得部101は、受電を行う無線受電装置3及び受電を行わない無線受電装置3についての情報を取得する。スイッチ部制御部102は、受電情報取得部101の得た情報に基づいてスイッチ部36を切り替える。インピーダンス制御部103は、受電情報取得部101の得た情報に基づいてインピーダンス調整回路34を制御する。入出力部104は、設定状態を出力するディスプレイや、設定情報を入力するキーボード等を有する。通信手段105を通して、情報処理装置10は、各無線受電装置3への指令を発信し、また、受電状態などの情報を取得する。記憶部106には、無線受電装置3に関する情報、制御プログラム、制御パラメータ等が記憶されている。
【0067】
例えば、受電情報取得部101は、無線受電装置全体の構成、無線受電装置3の何れを優先的に受電するかの情報等を記憶部106から取得し、例えば、4つある充電器の内の2番の充電器に優先的に充電するとの情報を得る。スイッチ部制御部102はこの情報を基に、例えば、2番の充電器に設けられたスイッチ部36の制御部37を制御し(図3参照)2番の充電器に充電が行われるようにするとともに、他の1番、3番、及び、4番のスイッチ部36を制御し、2番の充電器に電力を転送せしめる。インピーダンス制御部103は、電源4からの交流周波数に共振周波数が合うように、制御部37に指令を送り(図3参照)、2番の充電器の手前に設けられるインピーダンス調整回路34のインダクタ或いはキャパシタを選択する。
【0068】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0069】
以上説明した実施形態に係る無線受電装置3、無線受電システム1によれば以下のような効果が奏される。
【0070】
(1)無線受電装置3は、無線で交流電力を受電する受電部30と、受電部30と電力供給対象である負荷5との間に設けられ、回路のインピーダンスを調整するインピーダンス調整回路34と、受電部30とインピーダンス調整回路34との間に設けられ受電部30からインピーダンス調整回路34への電力の供給と非供給とを切り替えるスイッチ部36と、を有する。
【0071】
これにより、容易なインピーダンス制御により複数の無線受電装置3の内の特定の無線受電装置3に電力を供給することができる。
【0072】
(2)(1)の無線受電装置3において、受電部30が容量結合型の無線受電カプラであり、インピーダンス調整回路34のリアクタンスが調整可能であり、リアクタンスを調整することで、受電部30とインピーダンス調整回路34とで構成される共振回路の共振周波数を調整することが可能であり、スイッチ部36は、受電部30とインピーダンス調整回路34との間に直列に設けられていてもよい。
【0073】
これにより、同一構成の無線受電装置3から、受電を優先的に行わしめる無線受電装置3が特定される。
【0074】
(3)(2)の無線受電装置3において、電力の供給が行われる場合にはスイッチ部36が短絡され、電力の供給が行われない場合にはスイッチ部36が開放されてもよい。
【0075】
これによりスイッチ部36が短絡されている無線受電装置3に優先的に電力が供給される。
【0076】
(4)無線受電システム1は、(2)又は(3)の無線受電装置3が複数配置され、複数の無線受電装置3の受電部30間で発生する電界結合を利用して、特定の無線受電装置3への電力伝送効率を向上させてもよい。
【0077】
これにより、複数の無線受電装置3に優先順位をつけて送電を行うことができる。
【0078】
(5)(4)の無線受電システム1において、無線受電装置3が複数の無線受電装置3の受電部30の間における電界結合に対して並列に電界結合するように設けられた中継部6を備えていてもよい。
【0079】
これにより、無線受電装置3の間の電界結合が強くなり、電力が確実に転送される。
【0080】
(6)(4)又は(5)の無線受電システム1は、受電を行う無線受電装置3について、インピーダンス調整回路34に電力の供給を行うようにスイッチ部36を切り替え、受電を行わない無線受電装置3について、インピーダンス調整回路34に電力の供給を行わないようにスイッチ部36を切り替えてもよい。
【0081】
これにより、受電を行う無線受電装置3が選択されえる。
【0082】
(7)(4)の無線受電システム1において、受電を行う無線受電装置3の有するインピーダンス調整回路34のリアクタンスが調整されてもよい。
【0083】
これにより、受電を行う無線受電装置3のインピーダンス調整回路34を調整するのみで高い伝送率が実現され、インピーダンス制御が容易になる。
【0084】
(8)(7)の無線受電システム1において、インピーダンス調整回路34がインダクタを構成するコイルを備え、コイルに設けた複数の中間端子の何れかを選択することによりインピーダンスが調整されてもよい。
【0085】
これにより、インピーダンス調整が容易且つ確実になる。
【0086】
(9)(4)の無線受電システム1は、受電を行う無線受電装置3及び受電を行わない無線受電装置3についての情報を取得する受電情報取得部101と、受電情報取得部101が得た情報に基づいてスイッチ部36を切り替えるスイッチ部制御部102と、受電情報取得部101が得た情報に基づいてインピーダンス調整回路34を制御するインピーダンス制御部103と、を有する情報処理装置10を有してもよい。
【0087】
これにより、自動的に伝送率の高い無線電力伝送が実現される。
【0088】
(10)(1)の無線受電装置3において、受電部30が磁界結合型の無線受電カプラであり、インピーダンス調整回路34のリアクタンスが調整可能であり、リアクタンスを調整することで、受電部30とインピーダンス調整回路34とで構成される共振回路の共振周波数を調整することが可能であり、スイッチ部36は、受電部30とインピーダンス調整回路34との間に受電部30と並列に設けられていてもよい。
【0089】
これにより、同一構成の無線受電装置3から、受電を優先的に行わせる無線受電装置3が特定される。
【0090】
(11)(10)の無線受電装置3において、電力の供給が行われる場合にはスイッチ部36が開放され、電力の供給が行われない場合にはスイッチ部36が短絡されてもよい。
【0091】
これによりスイッチ部36が開放されている無線受電装置3に優先的に電力が供給される。
【0092】
(12)無線受電システム1は、(10)又は(11)の無線受電装置3が複数配置され、複数の無線受電装置3の受電部30間で発生する磁界結合を利用して、特定の無線受電装置3への電力伝送効率を向上させてもよい。
【0093】
これにより、複数の無線受電装置3に優先順位をつけて送電を行うことができる。
【0094】
(13)(12)の無線受電システム1において、無線受電装置3が、複数の無線受電装置3の受電部30の間における磁界結合に対して並列に磁界結合する中継部6を備えていてもよい。
【0095】
これにより、無線受電装置3の間の電界結合が強くなり、電力が確実に転送される。
【0096】
(14)(12)又は(13)の無線受電システム1は、受電を行う無線受電装置3について電力の供給を行うようにスイッチ部36を切り替え、受電を行わない無線受電装置3について電力の供給を行わないようにスイッチ部36を切り替えてもよい。
【0097】
これにより、受電を行う無線受電装置3が選択されえる。
【0098】
(15)(12)の無線受電システム1において、受電を行う無線受電装置3の有するインピーダンス調整回路34のリアクタンスが調整されてもよい。
【0099】
これにより、受電を行う無線受電装置3のインピーダンス調整回路34を調整するのみで高い伝送率が実現され、インピーダンス制御が容易になる。
【0100】
(16)(15)の無線受電システム1において、インピーダンス調整回路34において、インピーダンス調整回路34が有する複数のキャパシタから所定のキャパシタが選択されることによりキャパシタンスが調整されてもよい。
【0101】
これによりインピーダンス調整が容易に実行され得る。
【0102】
(17)(12)の無線受電システム1は、受電を行う無線受電装置3及び受電を行わない無線受電装置3についての情報を取得する受電情報取得部101と、受電情報取得部101の得た情報に基づいてスイッチ部36を切り替えるスイッチ部制御部102と、受電情報取得部101の得た情報に基づいてインピーダンス調整回路34を制御するインピーダンス制御部103と、を有する情報処理装置10を有してもよい。
【0103】
これにより、自動的に伝送率の高い無線電力伝送が実現される。
【符号の説明】
【0104】
1 無線受電システム
2 無線送電装置
3 無線受電装置
4 電源
5 負荷
6 中継部
10 情報処理装置
20 送電部
30 受電部
33 受電回路
34 インピーダンス調整回路
35 整流部
36 スイッチ部
37 制御部
38 受電インダクタ
101 受電情報取得部
102 スイッチ部制御部
103 インピーダンス制御部
図1
図2
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