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特開2023-172513円形振動篩機、および粉体の篩別方法
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  • 特開-円形振動篩機、および粉体の篩別方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172513
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】円形振動篩機、および粉体の篩別方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 1/36 20060101AFI20231129BHJP
   B07B 1/00 20060101ALI20231129BHJP
   B07B 1/46 20060101ALI20231129BHJP
   B07B 1/42 20060101ALI20231129BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20231129BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20231129BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B07B1/36
B07B1/00 B
B07B1/46 K
B07B1/42 A
B24C11/00 C
B24C1/00 C
B24C9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084367
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 和樹
【テーマコード(参考)】
4D021
【Fターム(参考)】
4D021AA02
4D021AB01
4D021AB02
4D021CA04
4D021CA07
4D021CB12
4D021DA01
4D021DA13
4D021EA10
(57)【要約】
【課題】篩網の目開きよりも小さい粒子が粗粉として排出されることを抑制できる円形振動篩機、および粉体の篩別方法を提供する。
【解決手段】粉体の篩別方法は、円形振動篩機を用いて粉体を篩別する工程を有する。円形振動篩機は、円形の篩網40と、篩網40の上面に粉体を供給する粉体供給口と、篩網の上面に設けられた排出ガイド41と、篩網40の外周を囲う篩枠30と、篩枠30の上部に形成された粗粉排出口53と、篩網40を振動させる振動体とを有する。粉体供給口は、粉体の落下点の最頻位置が篩網40の中心Oから外方に0.4r~0.6rの範囲内であり、かつ、角度θが0~45°の範囲内となるよう構成されている。排出ガイド41は、長さが0.17r~0.38rの棒材であり、基端が粗粉排出口53の縁部に設けられ、全体が20~50°傾いている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の篩網と、
前記篩網の上面に粉体を供給する粉体供給口と、
前記篩網の上面に設けられた排出ガイドと、
前記篩網の外周を囲う篩枠と、
前記篩枠の前記篩網より上部に形成された粗粉排出口と、
前記篩枠の前記篩網より下部に形成された微粉排出口と、
前記篩網を振動させる振動体と、を備え、
前記篩網の半径をrとし、前記篩網の中心を基準とした第1方向周りの角度であって前記篩網の中心から前記粗粉排出口の前記第1方向側の縁部に向かう角度を0°とした角度をθとしたときに、
前記粉体供給口は、前記粉体の落下点の最頻位置が前記篩網の中心から外方に0.4r~0.6rの範囲内であり、かつ、θが0~45°の範囲内となるよう構成されており、
前記排出ガイドは、長さが0.17r~0.38rの棒材であり、基端が前記粗粉排出口の前記第1方向側の縁部に設けられ、全体が前記篩網の半径方向を基準として前記第1方向とは逆の第2方向に20~50°傾いている
ことを特徴とする円形振動篩機。
【請求項2】
請求項1記載の円形振動篩機を用いて前記粉体を篩別する工程を備え、
前記工程における前記円形振動篩機への前記粉体の供給量は、前記篩網の単位面積当たり1,000~5,000kg/h・mである
ことを特徴とする粉体の篩別方法。
【請求項3】
前記粉体は、前記篩網の目開き未満の粒径を有する粒子の割合が10~80重量%である
ことを特徴とする請求項2記載の粉体の篩別方法。
【請求項4】
前記粉体は、ブラスト処理に用いられる研削材である
ことを特徴とする請求項3記載の粉体の篩別方法。
【請求項5】
前記粉体は、フェロニッケルスラグである
ことを特徴とする請求項2記載の粉体の篩別方法。
【請求項6】
前記フェロニッケルスラグは、母板にマスキングされた絶縁層を除去するブラスト処理に用いられる研削材である
ことを特徴とする請求項5記載の粉体の篩別方法。
【請求項7】
前記振動体は、上部ウエイトと、下部ウエイトとを有し、
前記上部ウエイトと前記下部ウエイトとの位相角度は0~30°である
ことを特徴とする請求項2~6のいずかに記載の粉体の篩別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形振動篩機、および粉体の篩別方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、円形振動篩機、およびその円形振動篩機を用いた粉体の篩別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルなどの電解採取では、目的金属とは別種の金属であって繰り返し使用できる材質の金属板をカソードとして使用し、所定時間の電解を行った後、電着物を金属板から引き剥がして回収する方法が一般的に行われている。このとき、金属板の表面を電着部を残して絶縁樹脂でマスキングしておくことにより、任意の特殊形状の電着物を得ることができる。
【0003】
金属板を絶縁樹脂でマスキングしたカソード(母板)は、電解採取に繰り返し使用される。母板の使用を繰り返すと、絶縁樹脂で形成された絶縁層が徐々に剥がれるため、電着物の不良率が高くなる。不良率が基準値を超えると、絶縁層の寿命が到来したと判断され、母板の再整備が行われる。母板の再整備は、母板表面の絶縁層をブラスト処理により全て除去した後、新たに絶縁樹脂でマスキングすることにより行われる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-178212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラスト処理に用いられた後の研削材は、回収され、セパレーターにより異物が除去される。異物が除去された研削材は篩機に送られ、微粉と粗粉とに分離される。微粉は廃棄される。一方、粗粉は再度ブラスト処理に用いられる。これにより、研削材の再利用を図り、新規研削材のコストを抑えることができる。
【0006】
ブラスト処理により金属板の表面を所定の粗さに調整することで、絶縁層の剥離を抑えることができる。金属板の表面粗さはブラスト処理に用いられる研削材の粒径により調整できる。そこで、篩機に設けられる篩網の目開きは、適切な粒径の研削材が得られるように設定される。
【0007】
しかし、篩網上に目開きよりも小さい粒子が残ることがあり、粗粉として回収された研削材の平均粒径が目標値よりも小さくなることがある。そうすると、金属板の表面を目標とする粗さに調整できなくなる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、篩網の目開きよりも小さい粒子が粗粉として排出されることを抑制できる円形振動篩機、および粉体の篩別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の円形振動篩機は、円形の篩網と、前記篩網の上面に粉体を供給する粉体供給口と、前記篩網の上面に設けられた排出ガイドと、前記篩網の外周を囲う篩枠と、前記篩枠の前記篩網より上部に形成された粗粉排出口と、前記篩枠の前記篩網より下部に形成された微粉排出口と、前記篩網を振動させる振動体と、を備え、前記篩網の半径をrとし、前記篩網の中心を基準とした第1方向周りの角度であって前記篩網の中心から前記粗粉排出口の前記第1方向側の縁部に向かう角度を0°とした角度をθとしたときに、前記粉体供給口は、前記粉体の落下点の最頻位置が前記篩網の中心から外方に0.4r~0.6rの範囲内であり、かつ、θが0~45°の範囲内となるよう構成されており、前記排出ガイドは、長さが0.17r~0.38rの棒材であり、基端が前記粗粉排出口の前記第1方向側の縁部に設けられ、全体が前記篩網の半径方向を基準として前記第1方向とは逆の第2方向に20~50°傾いていることを特徴とする。
第2発明の粉体の篩別方法は、第1発明の円形振動篩機を用いて前記粉体を篩別する工程を備え、前記工程における前記円形振動篩機への前記粉体の供給量は、前記篩網の単位面積当たり1,000~5,000kg/h・mであることを特徴とする。
第3発明の粉体の篩別方法は、第2発明において、前記粉体は、前記篩網の目開き未満の粒径を有する粒子の割合が10~80重量%であることを特徴とする。
第4発明の粉体の篩別方法は、第3発明において、前記粉体は、ブラスト処理に用いられる研削材であることを特徴とする。
第5発明の粉体の篩別方法は、第2発明において、前記粉体は、フェロニッケルスラグであることを特徴とする。
第6発明の粉体の篩別方法は、第5発明において、前記フェロニッケルスラグは、母板にマスキングされた絶縁層を除去するブラスト処理に用いられる研削材であることを特徴とする。
第7発明の粉体の篩別方法は、第2~第6発明のいずかにおいて、前記振動体は、上部ウエイトと、下部ウエイトとを有し、前記上部ウエイトと前記下部ウエイトとの位相角度は0~30°であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、篩網の偏心位置であって排出ガイドにより粗粉排出口と隔てられた位置に粉体が供給されるため、粉体が篩網に供給されてすぐに粗粉排出口から排出されることを抑制できる。また、粉体は篩網上を少なくとも一周してから粗粉排出口に導かれるので、篩網上で処理される時間を十分に確保できる。そのため、篩網の目開きよりも小さい粒子が粗粉として排出されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態における円形振動篩機の縦断面図である。
図2】同円形振動篩機の篩網の平面図である。
図3】図(A)は位相角度を60°とした場合の上下ウエイトの位置関係および篩網上の粉体の移動状態を示す図である。図(B)は位相角度を0°とした場合の上下ウエイトの位置関係および篩網上の粉体の移動状態を示す図である。
図4】母板の正面図である。
図5】実施例1および比較例1で得られた粗粉の粒径割合を示すグラフである。
図6】実施例1および比較例1で得られた金属板の表面粗さRaの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(円形振動篩機)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る円形振動篩機1は有底円筒形の架台10を有する。架台10の上部には複数の枠受スプリング11を介してベース21が支持されている。ベース21の中心部の下面にはハウジング22が固定されている。ハウジング22には回転軸23が回転可能に支持されている。回転軸23のうちハウジング22の上方に突出した上端部には上部ウエイト24が取り付けられている。回転軸23のうちハウジング22の下方に突出した下端部には下部ウエイト25が取り付けられている。上部ウエイト24および下部ウエイト25は回転軸23とともに回転する。
【0013】
回転軸23の下端には駆動スプリング12を介して第1プーリ13が設けられている。第1プーリ13は架台10の底面に回転可能に支持されている。架台10の内部にはモータ14が設けられている。モータ14の回転軸には第2プーリ15が設けられている。第1プーリ13と第2プーリ15との間には無端ベルト16が掛け渡されている。モータ14を駆動させると、回転軸23が回転する。
【0014】
ベース21、ハウジング22、回転軸23、上部ウエイト24、および下部ウエイト25により振動体20が構成されている。モータ14を駆動させると、振動体20が振動する。
【0015】
ベース21の上部には篩枠30が固定されている。篩枠30は、下円筒枠31、中円筒枠32、および上円筒枠33を積み上げた構成である。上円筒枠33の上部はテーパ状の蓋34で閉塞されている。蓋34の中央には粉体の投入口35が設けられている。
【0016】
篩枠30の内部には篩網40が張り渡されている。篩網40は多数の線材を編み込んで形成された網状の部材である。篩網40は多数の孔を有する板材でもよい。篩網40は円形であり、周縁部が中円筒枠32と上円筒枠33との間に挟み込まれて固定されている。篩枠30は篩網40に適度な張力を付与している。また、篩枠30は円形の篩網40の外周を囲っている。篩網40は篩枠30の内部空間を上下に区画している。
【0017】
蓋34の内部にはクランク状の粉体供給管51が設けられている。粉体供給管51の一端は投入口35に接続されている。粉体供給管51の他端(粉体供給口52)は篩網40の上面に向かって開口している。投入口35に投入された粉体は、粉体供給口52から落下し、篩網40の上面に供給される。ここで、粉体は篩網40の中心からずれた位置に供給される。
【0018】
粉体供給管51は、粉体を篩網40の中心からずれた位置に供給できればよく、その構造は特に限定されない。例えば、粉体供給管51は、クランク状の管ではなく、真っ直ぐな有底円筒管でもよい。有底円筒管の側面のうち底面近傍の一部分に開口(粉体供給口52)を設ければ、粉体を篩網40の中心からずれた位置に供給できる。また、粉体が粉体供給口52から鉛直下向きに真っ直ぐ落下する構成でもよいし、放物線を描きながら落下する構成でもよい。したがって、平面視において、粉体供給口52の位置と篩網40における粉体の落下点とが一致しなくてもよい。
【0019】
振動体20が振動することにより篩網40が振動する。これにより、粉体の篩別が行われる。篩網40の目開きより大きい粉体は篩網40の上面に残留する。篩枠30の篩網40より上部、すなわち、上円筒枠33には粗粉排出口53が形成されている。粗粉排出口53には粗粉排出路54が接続されている。篩網40の上面に残留した粗粉は粗粉排出口53および粗粉排出路54を介して円形振動篩機1の外部に排出される。
【0020】
篩網40の目開きより小さい粉体は篩網40を通って下方に落下する。篩枠30の篩網40より下部、具体的には下円筒枠31には、微粉排出口55が形成されている。微粉排出口55には微粉排出路56が接続されている。また、下円筒枠31の内部には円錐状の受け部57が設けられている。篩網40から落下した微粉は微粉排出口55および微粉排出路56を介して円形振動篩機1の外部に排出される。
【0021】
図2に示すように、円形の篩網40の中心をO、半径をr、中心O周りの角度をθとする。角度θは第1方向D1を正とする。また、角度θは中心Oから粗粉排出口53の第1方向D1側の縁部に向かう角度を0°とする。なお、図2に示す例では、時計回りを第1方向D1としているが、反時計回りを第1方向D1としてもよい。また、第1方向D1とは逆の方向を第2方向D2とする。
【0022】
前述のごとく、粉体供給口52は、篩網40の中心Oからずれた位置に粉体が落下する構成である。ここで、粉体供給口52は、粉体の落下点の最頻位置が篩網40の中心Oから外方に0.4r~0.6rの範囲内であり、かつ、θが0~45°の範囲内となるよう構成されることが好ましい。以下、この範囲の領域をAとする。なお、粉体の落下点とは、粉体が落ちた篩網40上の地点を意味する。粉体はある程度の広がりをもって落下するため、落下点はある分布に従って広がる。落下点の最頻位置とは、落下点の分布において最も頻度の高い地点を意味する。
【0023】
篩網40の上面には排出ガイド41が設けられている。排出ガイド41は、長さが0.17r~0.38rの棒材である。排出ガイド41の基端は粗粉排出口53の第1方向D1側の縁部に設けられている。また、排出ガイド41は、その全体が、篩網40の半径方向を基準として第2方向D2に傾斜している。篩網40の半径方向と排出ガイド41とのなす角をαとする。αは20~50°であることが好ましい。
【0024】
以上のとおり、粉体は篩網40の偏心位置に供給される。また、粉体の落下点は排出ガイド41により粗粉排出口53と隔てられている。そのため、粉体が篩網40に供給されてすぐに粗粉排出口53から排出されることを抑制できる。
【0025】
篩網40の振動は、上下に取り付けられた上部ウエイト24および下部ウエイト25の回転により発生する。原理的には、上部ウエイト24の回転は、篩網40に水平方向の振動を発生させて、篩網40上の粉体を周方向に移動させる。下部ウエイト25の回転は垂直方向の振動を発生させて、篩網40上の粉体を半径方向に移動させる。これらの振動が合成された振動モードは上部ウエイト24と下部ウエイト25との間の角度(以下、「位相角度」と称する。)により変化する。
【0026】
図3(A)に示すように、下部ウエイト25が上部ウエイト24の第2方向D2側に約60°の角度を有して位置する状態では、篩網40上の粉体は、中心に向かって第1方向D1に渦巻くように移動する。位相角度が小さくなるにつれ、篩網40上の粉体が中心に向かって移動する傾向は薄れ、逆に外周に向かって移動する傾向をみせる。
【0027】
図3(B)に示すように、下部ウエイト25と上部ウエイト24との位置が一致する状態(位相角度が0°)では、篩網40上の粉体は、中心から外周に向かって第1方向D1に渦巻くように移動する。
【0028】
上部ウエイト24と下部ウエイト25との位相角度は0~30°が好ましい。そうすれば、篩網40上の粉体が中心から外周に向かって広がるため、篩網40の全体を使って効率よく篩別できる。また、篩網40上の粉体が第1方向D1に移動する。したがって、領域Aに供給された粉体は、篩網40上を少なくとも一周した後に、粗粉排出口53に導かれる。そのため、粉体が篩網40上で処理される時間を十分に確保でき、篩網40の目開きよりも小さい粒子が粗粉として排出されることを抑制できる。
【0029】
(粉体の篩別方法)
本発明の一実施形態に係る粉体の篩別方法は、以上の構成を有する円形振動篩機1を用いて粉体を篩別する工程を有する。この工程では、粉体を円形振動篩機1に供給し、篩別された粗粉と微粉とを得る。
【0030】
円形振動篩機1において、篩網40の目開きよりも小さい粒子が粗粉として排出されることを抑制するという効果を得るには、円形振動篩機1への粉体の供給量は、篩網40の単位面積当たり1,000~5,000kg/h・mであることが好ましい。
【0031】
また、篩別前の粉体は、篩網40の目開き未満の粒径を有する粒子の割合が10~80重量%であることが好ましい。例えば、篩網40の目開きは300μmに設定される。この場合、篩別前の粉体は、粒径が300μm未満の粒子の割合が10~80重量%であることが好ましい。
【0032】
粉体はブラスト処理に用いられる研削材でもよい。粉体はフェロニッケルスラグでもよい。フェロニッケルスラグは、母板にマスキングされた絶縁層を除去するブラスト処理に研削材として用いられる。
【0033】
ところで、半球状または円盤状のニッケル電着物(一般に、「ボタン型電気ニッケル」と称される。)は以下の手順で製造される。
【0034】
まず、母板を製造する。図4に示すように、母板2は、ステンレス製またはチタン製の金属板61の表面を、複数の電着部62を残して絶縁層63で覆ったものである。金属板61の上縁には吊り手64を介して銅製またはニッケルと銅のクラッド材製のビーム65が設けられている。
【0035】
つぎに、母板2をカソードとして用いて電解採取を行う。具体的には、電解液で満たされた電解槽に、複数のカソードと複数のアノードとを交互に挿入し、通電することで電解を行う。ニッケルの電解採取の場合、アノードとしてアノードボックスを備えた不溶性電極を用いる。また、電解液として塩化ニッケル水溶液を用い、これを電解槽に連続供給する。所定時間(例えば、4~10日)の通電により、母板2の電着部62に電気ニッケルが電着する。
【0036】
所定時間の通電の後、電解槽から母板2を抜き取る。ハンマリングなどの方法により母板2に振動を与えて、母板2に電着した電着物を剥ぎ取る。母板2から剥ぎ取られた電着物は研磨、洗浄、乾燥を経て製品となる。
【0037】
電着物が剥ぎ取られた母板2はカソードとして再び電解槽に挿入され、電解採取に供される。すなわち、母板2は電解採取に繰り返し使用される。母板2を繰り返し使用すると、絶縁層63が劣化し、剥離するため、電着物の不良率が高くなる。不良率が基準値を超えると、絶縁層63の寿命が到来したと判断され、母板2の再整備が行われる。
【0038】
母板2の再整備は、まず、金属板61から絶縁層63を除去することにより行われる。絶縁層63の除去はブラスト処理により行われる。ブラスト処理に用いられる研削材としてはフェロニッケルスラグが好適である。絶縁層63が除去された金属板61は再び絶縁樹脂でマスキングされ、絶縁層63が形成される。
【0039】
ブラスト処理に用いられた後の研削材は、回収され、セパレーターにより異物が除去される。異物が除去された研削材は円形振動篩機1に送られ、微粉と粗粉とに分離される。微粉は廃棄される。一方、粗粉は再度ブラスト処理に用いられる。これにより、研削材の再利用を図り、新規研削材のコストを抑えることができる。
【0040】
ブラスト処理により金属板61の表面を所定の粗さに調整することで、絶縁層63の剥離を抑えることができる。金属板61の表面粗さはブラスト処理に用いられる研削材の粒径により調整できる。そこで、篩網40の目開きは、適切な粒径の研削材が得られるように設定される。
【0041】
本実施形態の篩別方法によれば、篩網40の目開きよりも小さい粒子が粗粉として排出されることを抑制できる。したがって、粗粉として回収された研削材の平均粒径を大きくできる。そのため、金属板61の表面を目標とする粗さに調整できる。
【実施例0042】
(実施例1)
母板のブラスト処理に研削材として用いたフェロニッケルスラグを回収し、セパレーターにより異物を除去した後、円形振動篩機で篩別した。下部ウエイトと上部ウエイトとの位相角度を0°とした。円形振動篩機に設けられた篩網は半径40cmの円形である。また、篩網の目開きは300μmである。粉体の落下点の最頻位置は、篩網の中心から外方に20cm(0.5r)、θが30°の位置とした。排出ガイドの長さは14cm(0.35r)であり、αは35°である。フェロニッケルスラグの供給量を、篩網の単位面積当たり2,600kg/h・mとした。
【0043】
粗粉として回収された粒子の粒径割合を、篩別法で測定した。また、粗粉として回収されたフェロニッケルスラグを研削材として用いて母板をブラスト処理した。ブラスト処理した後の金属板の表面粗さRa(算術平均粗さ)を、株式会社ミツトヨ製小型表面粗さ測定器で測定した。ここで、ブラスト処理後の金属板40~50枚ごとに1枚をサンプリングし、1枚のサンプルについて片面につき(上中下)×(左中右)の9箇所(両面で合計18箇所)の表面粗さRaを測定した。実施例1ではサンプル数を約70枚とした。したがって、表面粗さRaのデータ数は約1,300である。
【0044】
(比較例1)
実施例1と同様の手順でフェロニッケルスラグを篩別した。ただし、下部ウエイトと上部ウエイトとの位相角度を60°とした。粉体の落下点の最頻位置は篩網の中心とした。また、排出ガイドの長さを20cm(0.5r)とし、αを35°とした。その他の条件は実施例1と同様である。
【0045】
粗粉として回収された粒子の粒径割合を測定した。また、粗粉として回収されたフェロニッケルスラグを研削材として用いて母板をブラスト処理した。ブラスト処理した後の金属板の表面粗さRaを測定した。比較例1では、表面粗さRaの測定のサンプル数を約140枚とした。したがって、表面粗さRaのデータ数は約2,500である。
【0046】
実施例1および比較例1で得られた粗粉の粒径割合を図5に示す。比較例1では粒径が300μm未満の粒子が約45%残留していた。これに対し、実施例1では粒径が300μm未満の粒子が約20%に低減している。これより、実施例1では、篩網の目開きよりも小さい粒子が粗粉として排出されることを抑制できることが確認された。
【0047】
ブラスト処理した後の金属板の表面粗さRaの分布を図6に示す。比較例1に比べて、実施例1は表面粗さRaが粗い方向にシフトしていることが分かる。金属板の表面粗さRaの目標値は5.9μm以上とされている。実施例1では表面粗さRaが5.9μm以上であるものが80%以上を占めており、目標値を満たすことが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 円形振動篩機
10 架台
20 振動体
21 ベース
22 ハウジング
23 回転軸
24 上部ウエイト
25 下部ウエイト
30 篩枠
40 篩網
41 排出ガイド
52 粉体供給口
53 粗粉排出口
55 微粉排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6