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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172517
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】錠剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/18 20060101AFI20231129BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K36/18
A61K9/20
A61P3/04
A61K36/9068
A61K47/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084377
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 美咲
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC16
4C076CC21
4C076EE58
4C076EE58Q
4C076FF01
4C076FF06
4C076FF36
4C088AB11
4C088AB81
4C088AC01
4C088MA07
4C088MA35
4C088NA03
4C088NA20
4C088ZA70
(57)【要約】
【課題】本発明は、防風通聖散エキスを含有する錠剤の硬度、崩壊性、及び耐摩損性を向上できる新たな製剤技術を提供することを目的とする。
【解決手段】防風通聖散エキスを含む錠剤組成物であって、前記防風通聖散エキスの抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たり生ショウキョウを3~22重量部含む錠剤組成物によれば、製錠後における硬度、崩壊性及び耐摩損性を向上できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防風通聖散エキスを含む錠剤組成物であって、
前記防風通聖散エキスの抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たり生ショウキョウを3~22重量部含む、錠剤組成物。
【請求項2】
前記防風通聖散エキスを65重量%以上含む、請求項1に記載の錠剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の錠剤組成物を含む錠剤。
【請求項4】
素錠である、請求項3に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風通聖散エキスを含む錠剤組成物に関する。より具体的には、本発明は、防風通聖散エキスを含み、製錠後における硬度、崩壊性及び耐摩損性を向上できる錠剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
防風通聖散は、肥満症やメタボリックシンドロームの改善を目的に服用される漢方薬である。防風通聖散のエキス製剤は、病院処方されるだけでなく、市販もされているため、その入手容易性から、市販薬が特に広く使用されている。
【0003】
防風通聖散エキス製剤は、服用をより容易にする観点から、錠剤で提供されることも多い。このため、防風通聖散エキスを含む錠剤については、硬度、崩壊性などの錠剤特性を改良する処方が様々に検討されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、機械的強度および崩壊性の点で優れた効果を有する漢方薬を含有する錠剤を提供する目的において、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2.0及びカッセキ3.0からなる防風通聖散から得られるエキスにパンテチンを配合することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、実用的な硬度および摩損度で、べたつかず、優れた崩壊性を有する固形製剤を提供する目的において、アルプス薬品工業製の防風通聖散料エキス-Fに、糖類、結晶セルロース及び崩壊剤を、それぞれの成分が所定の比率となるように配合することが記載されている。
【0006】
特許文献3には、高濃度の生薬乾燥エキス配合の製剤であっても、打錠性に優れ、充分な製剤硬度を確保し、崩壊時間が遅延しない生薬含有製剤を提供する目的において、防風通聖散料乾燥エキス(アルプス薬品工業株式会社製、原生薬比率:キキョウ2部、ビャクジツ2部、カンゾウ2部、オウゴン2部、セッコウ2部、ダイオウ2部、トウキ1.2部、シャクヤク1.2部、センキュウ1.2部、サンシシ1.2部、レンギョウ1.2部、ハッカ1.2部、ケイガイ1.2部、ボウフウ1.2部、マオウ1.2部、ショウキョウ0.4部、カッセキ3部、ボウショウ1.5部)に、植物性のハードワックス、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びセルロースの多価カルボキシメチルエーテル架橋物のナトリウム塩を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/093736号
【特許文献2】特開2012-001473号公報
【特許文献3】特開2012-87055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまで、防風通聖散エキスを含有する錠剤の硬度、崩壊性、及び/又は耐摩損性といった特性の向上は、特定の添加物及びその組み合わせの選択、並びに錠剤組成物成分の比率の最適化に着眼して行われてきた。しかしながら、これまでの方法による錠剤特性の向上は限定的であるため、当該特性をより一層向上させるためには、新たな観点からの手段が求められる。
【0009】
そこで本発明の目的は、防風通聖散エキスを含有する錠剤の硬度、崩壊性、及び耐摩損性を向上できる新たな製剤技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討の結果、防風通聖散の構成生薬の1つに生ショウキョウを用い、且つ、防風通聖散の全構成生薬の混合物(生薬調合物)100重量部当たりに使用する生ショウキョウの量を3~22重量部とすることによって得られる防風通聖散エキスが、製錠後における硬度、崩壊性及び耐摩損性を向上できることを予期せず見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 防風通聖散エキスを含む錠剤組成物であって、
前記防風通聖散エキスの抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たり生ショウキョウを3~22重量部含む、錠剤組成物。
項2. 前記防風通聖散エキスを65重量%以上含む、項1に記載の錠剤組成物。
項3. 項1又は2に記載の錠剤組成物を含む錠剤。
項4. 素錠である、項3に記載の錠剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防風通聖散エキスを含有する錠剤の硬度、崩壊性、及び耐摩損性を向上できる新たな製剤技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の錠剤組成物は、防風通聖散エキスを含む錠剤組成物であって、前記防風通聖散エキスの抽出に使用された生薬調合物が、前記生薬調合物の100重量部当たり生ショウキョウを3~22重量部含むことを特徴とする。これによって、製錠後における硬度、崩壊性及び耐摩損性を向上できる。以下、本発明の錠剤組成物について詳述する。
【0014】
本発明の錠剤組成物は、所定の防風通聖散エキスを含む。本発明で用いられる所定の防風通聖散を構成する生薬調合物は、少なくとも生ショウキョウを上記所定比率で含む。本発明において、「生ショウキョウ」とは、生のヒネショウガを指し、日本薬局方に乾生姜として規定されている「ショウキョウ」とは異なる。つまり、本発明で用いられる所定の防風通聖散を構成する生薬調合物は、上記所定比率の「生ショウキョウ」を含む点で、「ショウキョウ」を含み「生ショウキョウ」を含まない通常の防風通聖散を構成する生薬調合物とは異なる。
【0015】
本発明における防風通聖散を構成する生薬調合物は、上記所定比率の生ショウキョウを含むこと以外については、通常の防風通聖散を構成する生薬調合物に準じることができる。当該通常の防風通聖散については、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)によれば、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ハッカ、ショウキョウ、ケイガイ、ボウフウ、マオウ、ダイオウ、ボウショウ、ビャクジュツ、キキョウ、オウゴン、カンゾウ、セッコウ、及びカッセキである。書簡によっては、前記生薬の内、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行)や、オウゴンを含まないもの(例えば「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行)がある。本発明で使用される防風通聖散エキスは、これらのいずれの防風通聖散に準じてよく、「ショウキョウ」の一部又は全部が、上記所定比率の「生ショウキョウ」に置き換えられる。
【0016】
本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物は、当該生薬調合物の全量100重量部当たり、生ショウキョウを3~22重量部含み、製錠後における硬度、崩壊性及び/又は耐摩損性をより一層向上させる観点から、生ショウキョウの比率としては、好ましくは10~22重量部、より好ましくは15~22重量部、さらに好ましくは18~22重量部、一層好ましくは20~22重量部が挙げられる。
【0017】
また、本発明において防風通聖散を構成する各生薬の具体的な分量としては、生ショウキョウ量が上記範囲内である限りにおいて限定されるものではないが、例えば、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)、「第十七改正日本薬局方」等に準じ、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、生ショウキョウ3~22重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部またはハマボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ又は無水ボウショウ0.6~1.5重量部、ビャクジュツ2重量部、キキョウ2重量部、オウゴン2重量部、カンゾウ2重量部、セッコウ2~3重量部、及びカッセキ3~5重量部が挙げられる。また、別の書簡(例えば「明解漢方処方」、西岡一夫、高橋真太郎共著、浪速社発行)に準じ、前記分量中、1.2重量部を全て1.5重量部としてもよい。
【0018】
本発明で使用される防風通聖散エキスの製造に供される生薬調合物を構成する各生薬の分量の好適な例として、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ又は無水ボウショウ0.6~1.5重量部、ビャクジュツ2重量部、キキョウ2重量部、オウゴン2重量部、カンゾウ2重量部、セッコウ2重量部、及びカッセキ3重量部であり、且つショウキョウが3~22重量部、好ましくは10~22重量部、より好ましくは15~22重量部、さらに好ましくは18~22重量部、一層好ましくは20~22重量部であるものが挙げられる。
【0019】
本発明で使用される防風通聖散エキスは、前記生薬調合物を公知の手法で抽出することによって得ることができる。前記生薬調合物を抽出する方法については、従来の防風通聖散エキスの抽出法と同様の方法で行えばよく、例えば、前記生薬調合物に対して、約10~20倍量の水を加え、80~100℃程度で1~3時間程度撹拌して抽出する方法が挙げられる。抽出後に、遠心分離、濾過等の固液分離に供して固形分を除去し、必要に応じて、濃縮処理や乾燥処理に供することによって防風通聖散エキスが得られる。
【0020】
防風通聖散エキスをエキス末として得るには、固形分を除去した抽出液を、必要に応じて濃縮した後に、スプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理に供すればよい。また、乾燥処理(特に、スプレードライによる乾燥処理)に供する際に、必要に応じて抽出液に、賦形剤を添加してもよい。このように賦形剤を添加することにより、乾燥時間を短縮することが可能になる。添加される賦形剤の種類や添加量については、一般的な漢方エキス末を製造する場合と同様である。
【0021】
本発明の錠剤組成物に含まれる防風通聖散エキスの含有量(乾燥重量換算量)としては、例えば65重量%以上が挙げられる。本発明の錠剤組成物は、硬度、崩壊性、及び耐摩損性といった錠剤特性の向上効果に優れているため、添加剤が比較的少なくても、つまり防風通聖散エキス量が比較的多くても、効果的に当該錠剤特性を向上できる。このような観点から、本発明の錠剤組成物に含まれる防風通聖散エキスの含有量の好適な例として、好ましくは68重量%以上、より好ましくは69重量%以上が挙げられる。本発明の錠剤組成物に含まれる防風通聖散エキスの含有量の上限としては特に制限されず、例えば90重量%以下が挙げられ、硬度、崩壊性、及び/又は耐摩損性をより一層高める観点から、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、さらに好ましくは72重量%以下が挙げられる。
【0022】
その他の成分
本発明の錠剤組成物は、上記の所定の防風通聖散エキスに加え、錠剤への成形に適した他の添加剤及び/又は基剤を含んでいてもよい。
【0023】
添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、錠剤として成形できることを限度として、使用する添加剤及び基剤の種類等に応じて適宜設定される。
【0024】
添加剤及び基剤の具体例としては、デンプン(バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等)、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸化合物(二酸化ケイ素(軽質無水ケイ酸等)、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等)、合成ハイドロタルサイト、無水リン酸水素カルシウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドン等が挙げられ、製錠後における硬度、崩壊性及び/又は耐摩損性をより一層向上させる観点から、好ましくはデンプン(より好ましくはトウモロコシデンプン)、ステアリン酸マグネシウム、及びケイ酸化合物(好ましくは二酸化ケイ素、より好ましくは軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素)が挙げられる。
【0025】
本発明の錠剤組成物がデンプンを含む場合のデンプンの含有量としては、例えば10~25重量%、好ましくは15~23重量%、より好ましくは18~21重量%が挙げられる。発明の錠剤組成物がステアリン酸マグネシウムを含む場合のステアリン酸マグネシウムの含有量としては、例えば0.2~2重量%、好ましくは0.5~1.5重量%、より好ましくは0.8~1.2重量%が挙げられる。本発明の錠剤組成物がケイ酸化合物を含む場合のケイ酸化合物の含有量としては、例えば2~20重量%、好ましくは4~17重量%、より好ましくは7~13重量%が挙げられる。他の添加剤及び基材も、使用する添加剤及び基剤の種類に応じて適宜設定される。
【0026】
また、本発明の錠剤組成物は、防風通聖散エキスの他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0027】
製剤形態
本発明の錠剤組成物の製剤形態は、それ自体任意であり、通常、固形組成物として調製される。より具体的には、本発明の錠剤組成物の製剤形態としては、粉末及び造粒物(例えば顆粒等)が挙げられる。
【0028】
製造方法
本発明の錠剤組成物は、防風通聖散エキス、並びに必要に応じて添加される添加剤、基剤、及び/又は薬理成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製造することができる。
【0029】
用途
本発明の錠剤組成物は、錠剤に成形される用途で用いられる。本発明の錠剤組成物から製造される錠剤(本発明の錠剤組成物を含む錠剤)の形状及び大きさ等は特に限定されない。錠剤の形状としては、円型、楕円型、三角型、四角型等が挙げられる。丸型錠の場合にあっては、直径6~12mm、好ましくは8~10mmが挙げられる。錠剤の厚みとしては、3~8mm、好ましくは4~7mmが挙げられる。一錠当たりの重量としては、200~800mg、好ましくは300~600mgが挙げられる。本発明の錠剤組成物は、錠剤の硬度、崩壊性、及び耐摩損性に優れているため、一錠当たりの重量の割に厚みを薄くすることが可能である。
【0030】
本発明の錠剤組成物から製造される錠剤は、素錠(裸錠)であってもよいし、薬剤の安定化、及び矯味や矯臭等の目的で表面にコーティングを施したコーティング錠であってもよい。コーティング錠としては、糖衣錠や、水溶性、腸溶性または胃溶性の高分子基剤を含むフィルムで被覆したフィルムコーティング剤(胃溶錠、腸溶錠)が挙げられる。本発明の錠剤組成物は、錠剤の硬度及び耐摩損性に優れているため、素錠であっても物理的に安定である。本発明の錠剤組成物から製造される素錠の硬度としては、例えば90N以上、好ましくは95N以上、より好ましくは100N以上、さらに好ましくは110N以上、一層好ましくは120N以上、より一層好ましくは125N以上、特に好ましくは130N以上が挙げられる。
【0031】
本発明の錠剤組成物を用いて錠剤を製造する方法は、例えば、本発明の錠剤組成物を用いて打錠する打錠工程を含み、必要に応じて、打錠工程に先立って、任意の成分を混合する混合工程、及び/又は(錠剤組成物が造粒物でない場合は)造粒工程を含むこともできる。打錠工程における打錠圧としては、例えば200~490mg/錠の錠剤を製造する場合、4~20kN、好ましくは5~15kNが挙げられる。本発明の錠剤組成物は硬度に優れているため、低い打錠圧で製造しても優れた硬度を達成することができる、従って、打錠装置への負荷を少なくすることで、打錠装置の長寿命化を図ることもできる。打錠装置への負荷を少なくする観点から、打錠圧は、より低い4~12kNとしてもよい。
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
試験例
(1)防風通聖散エキス末の調製
表1に示す組成の原料生薬調合物を調製し、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、各防風通聖散エキス末(エキスa~d、エキスA~D)を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0034】
(2)防風通聖散エキスの錠剤組成物の調製
上記(1)で調製した防風通聖散エキス末(エキスa~d、エキスA~D)と、表2に示す添加物とを、表示の比率で配合し、造粒することで、顆粒状の錠剤組成物を得た。
(3)防風通聖散エキスを含む錠剤の作製
上記(2)で調製した錠剤組成物を、12kNの打圧で打錠することにより、素錠(1錠当たり重さ300mg)を作製した。
【0035】
(4)錠剤特性評価
上記(3)で製造した錠剤について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0036】
(4-1)硬度
ロードセル式錠剤硬度計を用いて、破断動作速度0.5mm/分で硬度(N)を測定した。
(4-2)崩壊性
日本薬局方(第十七改正)記載の崩壊試験法に従って崩壊性の評価を行った。崩壊性(分)は、錠剤6個について得られた崩壊時間(分)の平均値として導出した。
(4-3)摩損度
錠剤6個を15mLチューブ(外径17mm)に入れ、30分振とう(振とう幅40mm、振とう速度150rpm)した。その後、錠剤を取り出し、チューブ内壁に付着した粉体の重量を測定し、以下の式に基づいて摩損度(%)を導出した。
摩損度(%)=チューブ内壁に付着した粉体重量(g)/振とう前の錠剤6個分の重量(g)×100
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1及び表2から明らかな通り、100重量部当たり生ショウキョウを3~22重量部含む防風通聖散の生薬調合物から得られたエキスを含む錠剤組成物は、製錠後における硬度、崩壊性及び耐摩損性を顕著に向上できることが認められた(実施例1~4)。一方で、防風通聖散の生薬調合物100重量部当たりの生ショウキョウの量が1.1重量部である場合(比較例3)及び生ショウキョウの量が30.9重量部である場合(比較例4)では、実施例1~4で認められたような錠剤特性の顕著な向上効果は認められなかった。
【0040】
さらに、防風通聖散の生薬調合物100重量部当たりの生ショウキョウの量が1.1重量部である場合(比較例3)に対して生ショウキョウの量が4.3重量部である場合(実施例2)に錠剤特性の顕著な向上効果が認められた一方で、防風通聖散の生薬調合物100重量部当たりのショウキョウの量が1.1重量部である場合(比較例1)に対してショウキョウの量が4.3重量部である場合(比較例2)には錠剤特性の向上が全く認められなかったことに鑑みると、実施例1~4で認められる錠剤特性の顕著な向上効果は、防風通聖散の生薬調合物において生ショウキョウを用い且つその量を100重量部当たり3~22重量部としたことによる特有の効果であることが判った。
【0041】
処方例
試験例1で調製した防風通聖散エキス末(エキスC)を用い、上記試験例と同じ方法で、表3~6に示す処方の錠剤組成物の調製及び錠剤の作製を行った。いずれの錠剤も、100重量部当たりの生ショウキョウ量が3~22重量部でない防風通聖散の生薬調合物から得られたエキスを含む場合に比べて、硬度、崩壊性及び耐摩損性が向上していた。また、防風通聖散エキス末をエキスA、B、Dに変更したいずれの場合も、100重量部当たりの生ショウキョウ量が3~22重量部でない防風通聖散の生薬調合物から得られたエキスを含む場合に比べて、硬度、崩壊性及び耐摩損性が向上していた。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】