IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図1
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図2
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図3
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図4
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図5
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図6
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図7
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図8
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図9
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図10
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図11
  • 特開-媒体処理装置及び画像形成システム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172533
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/04 20060101AFI20231129BHJP
   B42B 5/00 20060101ALI20231129BHJP
   B26F 1/14 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
B42B5/00
B26F1/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084420
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】枡 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 一貴
【テーマコード(参考)】
3C060
3F108
【Fターム(参考)】
3C060AA02
3C060BA01
3C060BB12
3C060BB13
3C060BC02
3C060BD01
3C060BE08
3C060BF02
3C060BF09
3F108GA01
3F108GB01
3F108GB07
3F108HA02
3F108HA11
3F108HA45
(57)【要約】
【課題】異なる引き剥がし方向に対する綴じ強度の均一化を図った媒体処理装置を提供する。
【解決手段】媒体処理装置は、シート状の媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された複数の媒体を支持可能なトレイと、トレイに支持されたN(Nは2以上の整数)枚の媒体を、綴じ位置で加圧変形させて圧着綴じする圧着綴じ処理部とを備え、圧着綴じ処理部は、トレイに支持されたN枚の媒体の綴じ位置において、厚み方向の一端側からM(M<N)枚の媒体に大穴をあける大穴あけ部材と、トレイに支持されたN枚の媒体の綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の媒体を、厚み方向の一端側からM枚の媒体にあけた大穴に押し込む押し込み部材と、トレイに支持されたN枚の媒体を、綴じ位置で厚み方向の両側から挟み込んで圧着綴じする挟み込み機構とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された複数の前記媒体を支持可能なトレイと、
前記トレイに支持されたN(Nは2以上の整数)枚の前記媒体を、綴じ位置で加圧変形させて圧着綴じする圧着綴じ処理部とを備え、
前記圧着綴じ処理部は、
前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の一端側からM(M<N)枚の前記媒体に大穴をあける大穴あけ部材と、
前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の前記媒体を、厚み方向の一端側からM枚の前記媒体にあけた前記大穴に押し込む押し込み部材と、
前記トレイに支持されたN枚の前記媒体を、前記綴じ位置で厚み方向の両側から挟み込んで圧着綴じする挟み込み機構とを備えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記圧着綴じ処理部は、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の前記媒体に、前記大穴より直径が小さい小穴をあける小穴あけ部材を備え、
前記押し込み部材は、(N-M)枚の前記媒体にあけた前記小穴の周縁部分を、M枚の前記媒体にあけた前記大穴に押し込むことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記押し込み部材は、前記トレイに支持された前記媒体に向けて突出する円筒であり、
前記小穴あけ部材は、前記押し込み部材の突出端から前記トレイに支持された前記媒体に向けて直径が減少する円錐であることを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記媒体の厚みまたは圧着綴じする前記媒体の綴じ枚数Nの入力を受け付ける操作部を備え、
前記圧着綴じ処理部は、前記操作部を通じて入力された前記媒体の厚みまたは前記綴じ枚数Nに基づいて、前記小穴をあける枚数(N-M)を増減させることを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記圧着綴じ処理部は、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の前記媒体に、前記大穴の直径より小さい切り込みを形成する切り込み部材を備え、
前記押し込み部材は、(N-M)枚の前記媒体の前記切り込みが形成された部分を、M枚の前記媒体にあけた前記大穴に押し込むことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記押し込み部材は、
前記トレイに支持された前記媒体に向けて突出すると共に、中心から放射状に拡がり且つ各々が突出方向に延びる複数のスリットが形成された円筒部と、
複数の前記スリットの交点において、前記円筒部に挿抜されるブッシュガイドとを備え、
前記圧着綴じ処理部は、
前記ブッシュガイドを抜去した状態の前記円筒部を、厚み方向の他端側から前記大穴に進入させ、
前記大穴に進入した前記円筒部の複数の前記スリットの交点に前記ブッシュガイドを挿入して、前記円筒部を拡径させることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記媒体の厚みまたは圧着綴じする前記媒体の綴じ枚数Nの入力を受け付ける操作部を備え、
前記押し込み部材は、前記トレイに支持された前記媒体に向けて突出すると共に、突出端に向けて直径が減少する円錐台形状であって、
前記圧着綴じ処理部は、前記操作部を通じて入力された前記媒体の厚みまたは前記綴じ枚数Nに基づいて、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体に対する前記押し込み部材の挿入量を増減させることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記トレイより前記搬送方向の上流側において、前記搬送部によって搬送される前記媒体の前記綴じ位置に加水する加水処理部を備えることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記圧着綴じ処理部は、前記トレイに支持された前記媒体上において、前記綴じ位置の位置及び数を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を圧着綴じする請求項1に記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置によって画像が形成されたシート状の媒体を束にして綴じる処理を行う媒体処理装置が知られている。なお、シート状の媒体の例として用紙が広く知られているので、本明細書では、シート状の媒体の束に関しては複数の用紙を積層した「用紙束」を例に用いることとする。
【0003】
また、媒体処理装置には、省資源化や環境負荷の低減に鑑みる観点から、金属製の綴じ針(ステープル針)を用いずに、凹凸状の綴じ歯で用紙束を挟持して加圧変形させる所謂「圧着綴じ」が可能な圧着処理部を備えるものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、凹凸状の綴じ歯で用紙を加圧変形させる方法では、用紙束を構成する用紙を引き剥がそうとする力の向き(以下、「引き剥がし方向」と表記する。)によって、綴じ強度が不均一になる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、複数の媒体を圧着綴じする媒体処理装置において、異なる引き剥がし方向に対する綴じ強度の均一化を図る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、シート状の媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された複数の前記媒体を支持可能なトレイと、前記トレイに支持されたN(Nは2以上の整数)枚の前記媒体を、綴じ位置で加圧変形させて圧着綴じする圧着綴じ処理部とを備え、前記圧着綴じ処理部は、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の一端側からM(M<N)枚の前記媒体に大穴をあける大穴あけ部材と、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の前記媒体を、厚み方向の一端側からM枚の前記媒体にあけた前記大穴に押し込む押し込み部材と、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体を、前記綴じ位置で厚み方向の両側から挟み込んで圧着綴じする挟み込み機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の媒体を圧着綴じする媒体処理装置において、異なる引き剥がし方向に対する綴じ強度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像形成システムの全体構成を示す図。
図2】後処理装置の内部構造を示す図。
図3】圧着綴じ処理部の概略図。
図4】大穴あけ部材、小穴あけ部材、及び押し込み部材の動作を示す模式図。
図5】挟み込み機構の動作を示す模式図。
図6】加水処理部の動作を示す模式図。
図7】後処理装置のハードウェア構成図。
図8】ステープル処理のフローチャート。
図9】小穴あけ部材の先端形状のバリエーションを示す図。
図10】変形例1に係る小穴あけ部材及び押し込み部材の形状及び動作を示す図。
図11】変形例2に係る押し込み部材の形状及び動作を示す図。
図12】変形例3に係る押し込み部材の形状及び動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る画像形成システム1について、図面を参照しながら説明する。図1は、画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、用紙P(シート状の媒体)に画像を形成し、画像が形成された用紙Pに対して後処理を施す機能を有する。シート状の媒体の具体例は、用紙Pに限定されず、OHPシート、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチックなどでもよい。図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置2と、後処理装置3(媒体処理装置)とで構成される。
【0010】
画像形成装置2は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを後処理装置3に排出する。画像形成装置2は、用紙Pが収容されたトレイと、トレイに収容された用紙Pを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された用紙Pに画像を形成する画像形成部とを主に備える。画像形成部は、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成装置2の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0011】
図2は、後処理装置3の内部構造を示す図である。後処理装置3は、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pに後処理を施す。本実施形態に係る後処理は、画像が形成された複数の用紙Pの束(以下、「用紙束」と表記する。)を、綴じるステープル処理である。より詳細には、本実施形態に係るステープル処理は、綴じ針を用いずに用紙束を綴じる圧着綴じである。また、圧着綴じは、搬送方向における用紙束の端を綴じる端綴じ処理と、用紙束の中央を綴じる中綴じ処理と含む。
【0012】
後処理装置3は、搬送ローラ対10~19(搬送部)と、切替爪20とを備える。搬送ローラ対10~19は、後処理装置3の内部において、画像形成装置2から供給された用紙Pを搬送する。より詳細には、搬送ローラ対10~13は、第一搬送路Ph1に沿って用紙Pを搬送する。また、搬送ローラ対14~15は、第二搬送路Ph2に沿って用紙Pを搬送する。さらに、搬送ローラ対16~19は、第三搬送路Ph3に沿って用紙Pを搬送する。
【0013】
第一搬送路Ph1は、画像形成装置2からの用紙Pの供給口から排出トレイ21に至る経路である。第二搬送路Ph2は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、内部トレイ22を経由して排出トレイ26に至る経路である。第三搬送路Ph3は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、排出トレイ30に至る経路である。
【0014】
切替爪20は、第一搬送路Ph1及び第二搬送路Ph2の分岐位置に配置されている。切替爪20は、第一搬送路Ph1を通じて用紙Pを排出トレイ21に排出する第一位置と、第一搬送路Ph1を搬送される用紙Pを第二搬送路Ph2に導く第二位置とに切り替え可能に構成されている。また、第二搬送路Ph2に進入した用紙Pの後端が搬送ローラ対11を通過したタイミングで、搬送ローラ対14を逆回転させることによって、当該用紙Pが第三搬送路Ph3に導かれる。また、後処理装置3は、各搬送路Ph1、Ph2、Ph3上の用紙Pの位置を検知する複数のセンサを備える。なお、搬送時に用紙Pの位置を検知するセンサは、図2において、黒色で塗りつぶされた三角形(▲)で示している。
【0015】
後処理装置3は、排出トレイ21を備える。排出トレイ21は、第一搬送路Ph1を通じて排出された用紙Pを支持する。排出トレイ21には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、ステープル処理が施されない用紙Pが排出される。
【0016】
また、後処理装置3は、内部トレイ22(トレイ)と、エンドフェンス23と、サイドフェンス24L、24Rと、圧着綴じ処理部25と、排出トレイ26とを備える。内部トレイ22、エンドフェンス23、サイドフェンス24L、24R、及び圧着綴じ処理部25は、第二搬送路Ph2を搬送される用紙Pに端綴じ処理を施す。排出トレイ26には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、端綴じ処理が施された用紙束が排出される。以下、搬送ローラ対15からエンドフェンス23に向かう方向を、「用紙Pの搬送方向」と定義する。また、内部トレイ22に支持された用紙Pの厚み方向及び用紙Pの搬送方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。搬送方向、厚み方向、及び主走査方向は、互いに直交する方向である。
【0017】
内部トレイ22は、第二搬送路Ph2を順番に搬送される複数の用紙Pを一時的に支持する。エンドフェンス23は、内部トレイ22に支持された用紙束の搬送方向の位置を揃える。サイドフェンス24L、24Rは、内部トレイ22に支持された用紙束の主走査方向の位置を揃える。圧着綴じ処理部25は、エンドフェンス23及びサイドフェンス24L、24Rによって揃えられた用紙束の端部を圧着綴じする。そして、搬送ローラ対15は、端綴じ処理が施された用紙束を排出トレイ26に排出する。圧着綴じ処理部25の構成は、図3図5を参照して後述する。
【0018】
また、後処理装置3は、エンドフェンス27と、綴じ処理部28と、用紙折りブレード29と、排出トレイ30とをさらに備える。エンドフェンス27、綴じ処理部28、及び用紙折りブレード29は、第三搬送路Ph3を搬送される用紙Pに中綴じ処理を施す。排出トレイ30には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、中綴じ処理が施された用紙束が排出される。
【0019】
エンドフェンス27は、第三搬送路Ph3を順番に搬送される複数の用紙Pの搬送方向の位置を揃える。また、エンドフェンス27は、用紙束の中央を、綴じ処理部28に対面させる中綴じ位置と、用紙折りブレード29に対面させる折り位置とに移動可能に構成されている。綴じ処理部28は、中綴じ位置のエンドフェンス27によって揃えられた用紙束の中央を綴じる。用紙折りブレード29は、折り位置のエンドフェンス27に支持された用紙束を半分に折って、搬送ローラ対18に挟持させる。搬送ローラ対18、19は、中綴じ処理が施された用紙束を排出トレイ30に排出する。
【0020】
図3は、圧着綴じ処理部25の概略図である。圧着綴じ処理部25は、内部トレイ22に支持された複数の用紙P(以下、単に「用紙P」または「用紙束」と表記する。)を、綴じ位置で圧着綴じする。綴じ位置は、用紙Pの表面上の任意の位置である。図3に示すように、圧着綴じ処理部25は、アーム31と、ホルダ32と、大穴あけ部材33と、小穴あけ部材34と、押し込み部材35と、挟み込み機構36とを主に備える。
【0021】
アーム31は、用紙Pの厚み方向に延びる回動軸線L1周りに回動可能に後処理装置3のフレームに支持されている。そして、アーム31は、回動モータ37(図7参照)の駆動力が伝達されることによって、回動軸線L1周りに回動する。また、アーム31の一端には、ホルダ32が取り付けられている。さらに、アーム31の他端には、挟み込み機構36が取り付けられている。アーム31の一端及び他端は、回動軸線L1を挟んで反対側に配置されている。そして、回動軸線L1周りにアーム31が回動することによって、ホルダ32及び挟み込み機構36の一方が用紙Pの綴じ位置に対面する。
【0022】
ホルダ32は、用紙Pの厚み方向に延びる回動軸線L2周りに回動可能にアーム31の一端に支持されている。そして、ホルダ32は、回動モータ38(図7参照)の駆動力が伝達されることによって、アーム31に対して回動軸線L2周りに回動する。また、ホルダ32は、大穴あけ部材33、小穴あけ部材34、及び押し込み部材35を支持している。回動軸線L2周りにホルダ32が回動することによって、大穴あけ部材33、小穴あけ部材34、及び押し込み部材35のいずれかが用紙Pの綴じ位置に対面する。さらに、ホルダ32は、昇降モータ39(図7参照)の駆動力が伝達されることによって、大穴あけ部材33、小穴あけ部材34、及び押し込み部材35を用紙Pに接離させる向きに移動(昇降)する。
【0023】
図4は、大穴あけ部材33、小穴あけ部材34、及び押し込み部材35の動作を示す模式図である。本実施形態に係る大穴あけ部材33、小穴あけ部材34、及び押し込み部材35は、円筒形状の外形を呈する。大穴あけ部材33の直径は、小穴あけ部材34及び押し込み部材35の直径より大きい。小穴あけ部材34の直径は、大穴あけ部材33及び押し込み部材35の直径より小さい。押し込み部材35の直径は、大穴あけ部材33の直径より小さく、小穴あけ部材34の直径より大きい。
【0024】
図4(A)に示すように、大穴あけ部材33が綴じ位置に対面した状態でホルダ32を用紙Pに近接させることによって、大穴あけ部材33は、用紙Pを厚み方向に貫通して、用紙Pの綴じ位置に大穴をあける。また、図4(B)に示すように、小穴あけ部材34が綴じ位置に対面した状態でホルダ32を用紙Pに近接させることによって、小穴あけ部材34は、用紙Pを厚み方向に貫通して、用紙Pの綴じ位置に小穴をあける。小穴の直径は、大穴の直径より小さい。さらに、図4(C)及び図4(D)に示すように、押し込み部材35が綴じ位置に対面した状態で、小穴が形成された側から用紙束にホルダ32を近接させることによって、押し込み部材35は、用紙Pに形成された小穴の周縁部分を、他の用紙Pに形成された大穴に押し込む。
【0025】
挟み込み機構36は、綴じ位置において、用紙束を厚み方向の両側から挟み込んで、当該用紙束を圧着綴じする。挟み込み機構36は、用紙束を挟んで対面する凹部材36a及び凸部材36bを備える。そして、凹部材36a及び凸部材36bは、接離モータ40(図7参照)の駆動力が伝達されることによって、用紙束に接離する。
【0026】
図5は、挟み込み機構36の動作を示す模式図である。凹部材36aの用紙束に対面する面は、大穴を囲むように凹んでいる。また、凸部材36bの用紙束に対面する面には、大穴の直径より小さい突起が形成されている。そして、図5(B)に示すように、凹部材36a及び凸部材36bを近接させると、凸部材36bの突起が大穴に進入すると共に、凹部材36a及び凸部材36bで用紙束を挟み込む。これにより、用紙束が圧着綴じされる。
【0027】
また、図3(B)に示すように、圧着綴じ処理部25は、スライドモータ41(図7参照)の駆動力が伝達されることによって、主走査方向にスライド可能に構成されている。これにより、圧着綴じ処理部25は、主走査方向の任意の位置に設定された綴じ位置に、ホルダ32及び挟み込み機構36を対面させることができる。
【0028】
さらに、図2に示すように、後処理装置3は、加水処理部42を備える。加水処理部42は、内部トレイ22より搬送方向の上流側において、第一搬送路Ph1に対面して設けられている。加水処理部42は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pの綴じ位置に、液体(例えば、水)を塗布する。なお、加水処理部42の設置位置は、内部トレイ22より搬送方向の上流側であれば、図2の例に限定されない。
【0029】
図6は、加水処理部42の動作を示す模式図である。図6に示すように、加水処理部42は、給水タンク43と、加水部材44と、加水モータ45(図7参照)とを主に備える。給水タンク43には、用紙Pに塗布する液体が貯留されている。加水部材44は、チューブ46によって給水タンク43に接続されている。また、加水部材44は、チューブ46を通じて給水タンク43から供給された液体を吸収可能な材料(例えば、スポンジ)で形成されている。さらに、加水部材44は、加水モータ45の駆動力が伝達されることによって、第一搬送路Ph1上の用紙Pに接離する向きに移動する。そして、図6(B)に示すように、用紙Pの綴じ位置に加水部材44を押圧することによって、加水部材44が吸収した水が用紙Pに塗布(すなわち、加水)される。
【0030】
図7は、後処理装置3のハードウェア構成図である。図7に示すように、後処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0031】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0032】
後処理装置3は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3の動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0033】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、回動モータ37、38、昇降モータ39、接離モータ40、スライドモータ41、加水モータ45、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、回動モータ37、38、昇降モータ39、接離モータ40、スライドモータ41、加水モータ45を動作させる。なお、図7には端綴じ処理を実行する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0034】
操作パネル110は、ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。なお、報知部の具体例はディスプレイに限定されず、LEDランプやスピーカ等でもよい。
【0035】
図8は、ステープル処理のフローチャートである。ステープル処理は、内部トレイ22に支持されたN枚の用紙Pを圧着綴じする処理である。コントローラ100は、例えば、ステープル処理の実行指示(以下、「ステープル指示」と表記する。)を取得したことに応じて、図8に示すステープル処理を実行する。ステープル指示は、例えば、用紙束を構成する用紙Pの綴じ枚数Nと、綴じ位置の数及び主走査方向の位置とを含む。綴じ枚数N、綴じ位置の数及び主走査方向の位置は、例えば、操作パネル110を通じてユーザによって指定されてもよい。
【0036】
まず、コントローラ100は、スライドモータ41を駆動することによって、ステープル指示で指示された綴じ位置に対面し得る位置に、圧着綴じ処理部25をスライドさせる。また、コントローラ100は、回動モータ37、38を駆動することによって、ステープル指示で指示された綴じ位置に対面する位置に、大穴あけ部材33を移動させる(S801)。
【0037】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を回転させることによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pを内部トレイ22に収容する(S802)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に支持された用紙束の主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)。さらに、コントローラ100は、加水モータ45を駆動することによって、第一搬送路Ph1を搬送される用紙Pの綴じ位置に加水する。
【0038】
次に、コントローラ100は、図4(A)に示すように、昇降モータ39を駆動することによって、直前のステップS802で内部トレイ22に収容された用紙Pに大穴あけ部材33を貫通させて、綴じ位置に大穴を形成する(S803)。また、コントローラ100は、昇降モータ39を逆転駆動することによって、大穴あけ部材33を用紙Pより上方の位置まで上昇させる。
【0039】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に支持された用紙P(換言すれば、大穴を形成した用紙P)の枚数がM枚に達したか否かを判定する(S804)。そして、コントローラ100は、用紙Pの枚数がM枚に達するまで(S804:No)、ステップS802~S803の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラ100は、用紙束を構成するN枚の用紙Pのうち、下側(厚み方向の一端側)のM枚の用紙Pに大穴を形成する。換言すれば、コントローラ100は、用紙束を構成するN枚の用紙Pのうち、最初に内部トレイ22に収容されるM枚の用紙Pに大穴を形成する。
【0040】
なお、綴じ枚数Nは、2以上の整数である。また、大穴を形成する用紙Pの枚数Mは、綴じ枚数N未満の整数である。一例として、コントローラ100は、操作パネル110を通じてユーザが指定した綴じ枚数Nに応じて、小穴をあける用紙Pの枚数(N-M)を増減させてもよい。他の例として、小穴をあける用紙Pの枚数(N-M)は、予め定められた固定値(例えば、1枚)でもよい。
【0041】
次に、コントローラ100は、大穴を形成した用紙Pの枚数がM枚に達したことに応じて(S804:Yes)、回動モータ38を駆動することによって、ステープル指示で指示された綴じ位置に対面する位置に、小穴あけ部材34を移動させる(S805)。次に、コントローラ100は、綴じ位置に加水した用紙Pを内部トレイ22に収容してジョギングする(S806)。ステップS806の処理は、ステップS802と共通する。
【0042】
次に、コントローラ100は、図4(B)に示すように、昇降モータ39を駆動することによって、直前のステップS806で内部トレイ22に収容された用紙Pに小穴あけ部材34を貫通させて、綴じ位置に小穴を形成する(S807)。これにより、先に形成した大穴に連通する位置に、小穴が形成される。また、コントローラ100は、昇降モータ39を逆転駆動することによって、小穴あけ部材34を用紙Pより上方の位置まで上昇させる。
【0043】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に支持された用紙Pの枚数がN枚に達したか否かを判定する(S808)。そして、コントローラ100は、用紙Pの枚数がN枚に達するまで(S808:No)、ステップS806~S807の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラ100は、用紙束を構成するN枚の用紙Pのうち、上側(厚み方向の他端側)の(N-M)枚の用紙Pに小穴を形成する。換言すれば、コントローラ100は、用紙束を構成するN枚の用紙Pのうち、最後に内部トレイ22に収容される(N-M)枚の用紙Pに小穴を形成する。
【0044】
次に、コントローラ100は、用紙Pの枚数がN枚に達したことに応じて(S808:Yes)、図4(C)に示すように、回動モータ38を駆動することによって、ステープル指示で指示された綴じ位置に対面する位置に、押し込み部材35を移動させる。また、コントローラ100は、図4(D)に示すように、昇降モータ39を駆動することによって、小穴が形成された側から小穴及び大穴に押し込み部材35を進入させる(S809)。これにより、上側の(N-M)枚の用紙Pにあけた小穴の周縁部分が、下側のM枚の用紙Pにあけた大穴に押し込まれる。さらに、コントローラ100は、昇降モータ39を逆転駆動することによって、押し込み部材35を用紙Pより上方の位置まで上昇させる。
【0045】
次に、コントローラ100は、回動モータ37を駆動することによって、ステープル指示で指示された綴じ位置に対面する位置に、挟み込み機構36を移動させる。また、コントローラ100は、図5(B)に示すように、接離モータ40を駆動することによって、内部トレイ22に支持された用紙束を、凹部材36a及び凸部材36bで挟み込む(S810)。これにより、N枚の用紙Pが圧着綴じされる。また、コントローラ100は、接離モータ40を逆転駆動することによって、凹部材36a及び凸部材36bを離間させる。さらに、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束を排出トレイ26に排出する。
【0046】
なお、図8のステップS802~S804では、内部トレイ22に用紙Pが収容される度に1枚ずつ大穴を形成する例を説明したが、内部トレイ22にM枚の用紙Pが形成されたタイミングで、M枚の用紙Pに纏めて大穴を形成してもよい。また、図8のステップS806~S808では、内部トレイ22に用紙Pが収容される度に1枚ずつ小穴を形成する例を説明したが、内部トレイ22に(N-M)枚の用紙Pが形成されたタイミングで、(N-M)枚の用紙Pに纏めて小穴を形成してもよい。
【0047】
さらに、ステープル指示で指示された綴じ位置が2か所以上ある場合、コントローラ100は、ステップS803、S807、S809、S810の処理を、複数の綴じ位置それぞれに対して実施すればよい。すなわち、コントローラ100は、ステープル指示(典型的には、操作パネル110を通じたユーザの入力操作)に従って、綴じ位置の位置及び数を変更可能に構成されている。
【0048】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0049】
上記の実施形態によれば、周方向に連続する小穴の周縁部分を大穴に押し込むことによって、N枚の用紙束を圧着綴じする。これにより、異なる引き剥がし方向に対する綴じ強度の均一化を図ることができる。
【0050】
なお、上記の実施形態では、内部トレイ22に支持されたN枚の用紙Pのうち、下側のM枚に大穴を形成し、上側の(N-M)枚に小穴を形成する例を説明した。しかしながら、小穴及び大穴を形成する側は反対でもよい。すなわち、内部トレイ22に支持されたN枚の用紙Pのうち、上側のM枚に大穴を形成し、下側の(N-M)枚に小穴を形成してもよい。この場合、押し込み部材35は、用紙束の下側(すなわち、小穴が形成された側)から小穴の周縁部分を大穴に押し込めばよい。
【0051】
また、上記の実施形態によれば、N枚の用紙Pそれぞれの綴じ位置に加水することによって、用紙束の密着力が向上する。なお、用紙束を構成するN枚の用紙P全てに加水する必要はなく、N枚のうちの一部の用紙Pに加水してもよい。また、加水処理部42は省略されてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態によれば、操作パネル110を通じてユーザが指定した綴じ枚数Nに応じて、小穴をあける用紙Pの枚数(N-M)を増減させる(換言すれば、大穴をあける用紙Pの枚数Mを増減させる)。例えば、綴じ枚数Nが多いほど、小穴をあける用紙Pの枚数(N-M)を増やすことによって、圧着綴じしやすくなる。
【0053】
但し、大穴及び小穴を形成する用紙Pの配分を決定するパラメータは、綴じ枚数Nに限定されない。他の例として、コントローラ100は、操作パネル110を通じて入力された用紙Pの厚みに応じて、小穴をあける用紙Pの枚数(N-M)を増減させてもよい。より詳細には、コントローラ100は、用紙Pが薄いほど、小穴をあける用紙Pの枚数(N-M)を増やしてもよい。これにより、押し込み部材35によって押し込んだ際に、小穴の周縁部分に亀裂が生じるのを防止できる。
【0054】
また、上記の実施形態によれば、綴じ位置の位置及び数を任意に変更することができる。これにより、例えば、用紙束をバインダーに綴じるためのパンチ穴の位置を綴じ位置にすれば、用紙束を圧着綴じするための貫通孔(大穴及び小穴)を、用紙束をバインダーに綴じるためのパンチ穴としても利用することができる。その結果、圧着綴じした用紙束をバインダーに綴じることができる。
【0055】
図9は、小穴あけ部材34の先端形状のバリエーションを示す図である。図9(A)に示すように、小穴あけ部材34の先端を円形にすると、用紙Pには真円形状の小穴が形成される。一方、図9(B)に示すように、小穴あけ部材34に代えて、先端がX形状の切り込み部材47を備えることにより、用紙Pには互いに交差(直交)する方向に延びる複数の切り込みが形成される。なお、複数の切り込みそれぞれの長さは、大穴あけ部材33によって形成される大穴の直径より小さい。
【0056】
すなわち、コントローラ100は、図8のステップS805において、図9(B)に示すように、内部トレイ22に支持された用紙束の綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の用紙Pに、切り込み部材47を挿入する。これにより、(N-M)枚の用紙PそれぞれにX字状の切り込みが形成される。また、コントローラ100は、図8のステップS809において、ステップS805で(N-M)枚の用紙Pに形成した切り込みの部分を、M枚の用紙Pにあけた大穴に押し込む。
【0057】
[変形例1]
図10は、変形例1に係る小穴あけ部材34A及び押し込み部材35Aの形状及び動作を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例1は、小穴あけ部材34A及び押し込み部材35Aが一体化されている点で、上記の実施形態と相違する。
【0058】
図10(A)及び図10(B)に示すように、変形例1に係る押し込み部材35Aは、ホルダ32から内部トレイ22に支持された用紙Pに向けて突出する円筒形状の部分である。また、変形例1に係る小穴あけ部材34Aは、押し込み部材35Aの突出端から内部トレイ22に支持された用紙Pに向けて突出する円錐形状の部分である。すなわち、変形例1に係る小穴あけ部材34Aは、内部トレイ22に支持された用紙Pに向けて直径が連続的に減少する。このように、小穴あけ部材34A及び押し込み部材35Aを一体化することによって、コストダウンが可能になる。
【0059】
また、変形例1に係るコントローラ100は、図8のステップS807において、図10(C)に示すように、内部トレイ22に収容された用紙Pに円錐形状の小穴あけ部材34Aを貫通させて、綴じ位置に小穴を形成する。また、コントローラ100は、図8のステップS809において、図10(D)に示すように、小穴が形成された側から小穴及び大穴に押し込み部材35Aを進入させる。
【0060】
すなわち、変形例1では、昇降モータ39を駆動してホルダ32を下降させるだけで、ステップS807、S809の処理を連続的に実施できる。換言すれば、ステップS807、S809の間において、回動モータ38を駆動して押し込み部材35Aを綴じ位置に対面させる処理を省略することができる。これにより、ステープル処理のスループットを向上させることができる。
【0061】
[変形例2]
図11は、変形例2に係る押し込み部材35Bの形状及び動作を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例2は、円錐台形状の押し込み部材35Bを備える点で、上記の実施形態と相違する。
【0062】
図11(A)及び図11(B)に示すように、変形例2に係る押し込み部材35Bは、ホルダ32から内部トレイ22に支持された用紙Pに向けて突出する円錐台形状の外形を呈する。また、押し込み部材35Bの直径は、突出端に向けて連続的に減少する。換言すれば、押し込み部材35Bの直径は、ホルダ32に近いほど増加する。
【0063】
また、変形例2に係るコントローラ100は、図8のステップS809において、図11(C)及び図11(D)に示すように、操作パネル110を通じて入力された用紙Pの厚みまたは綴じ枚数Nに基づいて、内部トレイ22に支持された用紙束に対する押し込み部材35Bの挿入量を増減させる。
【0064】
一例として、コントローラ100は、図11(C)に示すように、綴じ枚数Nが少ないほど押し込み部材35Bの挿入量を少なくする。また、コントローラ100は、図11(D)に示すように、綴じ枚数Nが多いほど押し込み部材35Bの挿入量を多くする。これにより、綴じ枚数Nに応じた適切な綴じ代を確保することができる。
【0065】
他の例として、コントローラ100は、用紙Pが薄いほど押し込み部材35Bの挿入量を少なくする。また、コントローラ100は、用紙Pが厚いほど押し込み部材35Bの挿入量を多くする。これにより、押し込み部材35を薄紙に深く挿入することによる亀裂を防止できると共に、用紙束の厚みに応じた適切な綴じ代を確保することができる。
【0066】
[変形例3]
図12は、変形例3に係る押し込み部材35Cの形状及び動作を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例3は、径方向に拡縮可能な押し込み部材35Cを備える点で、上記の実施形態と相違する。図12(A)及び図12(B)に示すように、変形例3に係る押し込み部材35Cは、円筒部48と、ブッシュガイド49とで構成される。
【0067】
円筒部48は、ホルダ32から内部トレイ22に支持されたPに向けて突出する円筒形状の外形を呈する。また、円筒部48は、複数のスリット50が形成されている。複数のスリット50は、円筒部48の中心から放射状に拡がり、且つ各々が突出方向に延びている。すなわち、円筒部48は、スリット50によって分割されている。なお、図12の例では、4つのスリット50をX字状に設けた例を説明したが、スリット50の数はこれに限定されない。
【0068】
ブッシュガイド49は、複数のスリット50の交点(すなわち、円筒部48の中心)において、円筒部48に対して軸方向に挿抜可能に構成されている。そして、図12(B)の左図及び図12(C)に示すように、ブッシュガイド49が挿入されていないときの円筒部48の直径は、大穴の直径より小さく設定されている。また、円筒部48は、ブッシュガイド49が挿入されることによって、径方向に拡径する(すなわち、スリット50の幅が拡がる)。
【0069】
変形例3に係るコントローラ100は、図8のステップS809において、図12(C)に示すように、ブッシュガイド49を抜去した状態の円筒部48を大穴に進入させる。これにより、小穴の周縁部分が大穴に向けて折り返される。次に、コントローラ100は、図12(D)に示すように、大穴に進入した円筒部48にブッシュガイド49を挿入して、円筒部48を径方向に拡径させる。これにより、折り返された小穴の周縁部分が大穴を画定する壁面に押し付けられる。変形例3によれば、円筒部48を挿入する際の摩擦による亀裂の発生を防止できる。
【0070】
また、上記に説明した制御方法は、例えば、プログラム等で実現してもよい。すなわち、制御方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて、コンピュータが実行する方法である。また、プログラムは、記憶装置、又は、記憶媒体等に書き込まれて配布、又は、電気通信回線等を通じて配布されてもよい。
【0071】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0072】
[本発明の態様]
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
【0073】
<1> シート状の媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された複数の前記媒体を支持可能なトレイと、
前記トレイに支持されたN(Nは2以上の整数)枚の前記媒体を、綴じ位置で加圧変形させて圧着綴じする圧着綴じ処理部とを備え、
前記圧着綴じ処理部は、
前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の一端側からM(M<N)枚の前記媒体に大穴をあける大穴あけ部材と、
前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の前記媒体を、厚み方向の一端側からM枚の前記媒体にあけた前記大穴に押し込む押し込み部材と、
前記トレイに支持されたN枚の前記媒体を、前記綴じ位置で厚み方向の両側から挟み込んで圧着綴じする挟み込み機構とを備えることを特徴とする媒体処理装置である。
【0074】
<2> 前記圧着綴じ処理部は、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の前記媒体に、前記大穴より直径が小さい小穴をあける小穴あけ部材を備え、
前記押し込み部材は、(N-M)枚の前記媒体にあけた前記小穴の周縁部分を、M枚の前記媒体にあけた前記大穴に押し込むことを特徴とする<1>に記載の媒体処理装置である。
【0075】
<3> 前記押し込み部材は、前記トレイに支持された前記媒体に向けて突出する円筒であり、
前記小穴あけ部材は、前記押し込み部材の突出端から前記トレイに支持された前記媒体に向けて直径が減少する円錐であることを特徴とする<2>に記載の媒体処理装置である。
【0076】
<4> 前記媒体の厚みまたは圧着綴じする前記媒体の綴じ枚数Nの入力を受け付ける操作部を備え、
前記圧着綴じ処理部は、前記操作部を通じて入力された前記媒体の厚みまたは前記綴じ枚数Nに基づいて、前記小穴をあける枚数(N-M)を増減させることを特徴とする前記<2>または<3>に記載の媒体処理装置である。
【0077】
<5> 前記圧着綴じ処理部は、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体の前記綴じ位置において、厚み方向の他端側から(N-M)枚の前記媒体に、前記大穴の直径より小さい切り込みを形成する切り込み部材を備え、
前記押し込み部材は、(N-M)枚の前記媒体の前記切り込みが形成された部分を、M枚の前記媒体にあけた前記大穴に押し込むことを特徴とする前記<1>から前記<4>のいずれかに記載の媒体処理装置である。
【0078】
<6> 前記押し込み部材は、
前記トレイに支持された前記媒体に向けて突出すると共に、中心から放射状に拡がり且つ各々が突出方向に延びる複数のスリットが形成された円筒部と、
複数の前記スリットの交点において、前記円筒部に挿抜されるブッシュガイドとを備え、
前記圧着綴じ処理部は、
前記ブッシュガイドを抜去した状態の前記円筒部を、厚み方向の他端側から前記大穴に進入させ、
前記大穴に進入した前記円筒部の複数の前記スリットの交点に前記ブッシュガイドを挿入して、前記円筒部を拡径させることを特徴とする前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
【0079】
<7> 前記媒体の厚みまたは圧着綴じする前記媒体の綴じ枚数Nの入力を受け付ける操作部を備え、
前記押し込み部材は、前記トレイに支持された前記媒体に向けて突出すると共に、突出端に向けて直径が減少する円錐台形状であって、
前記圧着綴じ処理部は、前記操作部を通じて入力された前記媒体の厚みまたは前記綴じ枚数Nに基づいて、前記トレイに支持されたN枚の前記媒体に対する前記押し込み部材の挿入量を増減させることを特徴とする前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
【0080】
<8> 前記トレイより前記搬送方向の上流側において、前記搬送部によって搬送される前記媒体の前記綴じ位置に加水する加水処理部を備えることを特徴とする前記<1>から前記<7>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
【0081】
<9> 前記圧着綴じ処理部は、前記トレイに支持された前記媒体上において、前記綴じ位置の位置及び数を変更可能に構成されていることを特徴とする前記<1>から前記<8>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
【0082】
<10> 前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を圧着綴じする前記<1>から前記<9>のいずれか1つに記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システムである。
【符号の説明】
【0083】
1 :画像形成システム
2 :画像形成装置
3 :後処理装置
10~19 :搬送ローラ対
20 :切替爪
21,26,30 :排出トレイ
22 :内部トレイ
23,27 :エンドフェンス
24L,24R :サイドフェンス
25 :圧着綴じ処理部
28 :綴じ処理部
29 :用紙折りブレード
31 :アーム
32 :ホルダ
33 :大穴あけ部材
34,34A :小穴あけ部材
35,35A,35B,35C :押し込み部材
36a :凹部材
36b :凸部材
37,38 :回動モータ
39 :昇降モータ
40 :接離モータ
41 :スライドモータ
42 :加水処理部
43 :給水タンク
44 :加水部材
45 :加水モータ
46 :チューブ
47 :切り込み部材
48 :円筒部
49 :ブッシュガイド
50 :スリット
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2014-114113号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12