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  • 特開-車両試験装置及び車両試験方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172537
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両試験装置及び車両試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01M17/007 A
G01M17/007 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084428
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】西田 拓也
(57)【要約】
【課題】車両の走行状態に応じて車両の姿勢を変更させながら車両試験を行う。
【解決手段】車両又はその一部である供試体の路上での走行を再現して試験する車両試験装置であって、供試体の車輪又は回転軸に対して走行抵抗を与えるダイナモメータと、ダイナモメータに対する供試体の位置を変更する位置変更機構と、供試体の走行状態に応じて、位置変更機構を制御して、供試体の姿勢を制御する姿勢制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両又はその一部である供試体の路上での走行を再現して試験する車両試験装置であって、
前記供試体の車輪又は回転軸に対して走行抵抗を与えるダイナモメータと、
前記ダイナモメータに対する前記供試体の位置を変更する位置変更機構と、
前記供試体の走行状態に応じて、前記位置変更機構を制御して、前記供試体の姿勢を制御する姿勢制御部とを備える、車両試験装置。
【請求項2】
前記位置変更機構は、前記ダイナモメータに対する前記供試体のボディの位置を変更する、請求項1に記載の車両試験装置。
【請求項3】
前記位置変更機構は、前記供試体のサスペンション又は車輪のたわみの範囲で、前記供試体のボディの位置を変更する、請求項1又は2に記載の車両試験装置。
【請求項4】
前記位置変更機構は、前記供試体の車輪又は回転軸の上下位置を変更することなく、前記供試体のボディの位置を変更する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両試験装置。
【請求項5】
前記位置変更機構は、前記ダイナモメータの位置を変更することなく、前記供試体のボディの位置を変更する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の車両試験装置。
【請求項6】
前記供試体の運転を行う自動運転ロボットをさらに備え、
前記姿勢制御部は、前記自動運転ロボットの運転と連動して、前記供試体の姿勢を制御する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両試験装置。
【請求項7】
前記姿勢制御部は、前記供試体の車速又は走行マップと連動して、前記供試体の姿勢を制御する、請求項1乃至6に記載の車両試験装置。
【請求項8】
前記姿勢制御部は、前記供試体の走行状態として、前記供試体の車速、前記供試体の走行に伴う風速又は路面の傾きに応じて、前記位置変更機構を制御して、前記供試体の姿勢を制御する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の車両試験装置。
【請求項9】
前記ダイナモメータとの位置関係が変化しない固定面をさらに備え、
前記位置変更機構は、前記固定面に対して、前記供試体を少なくとも1点以上で支持し、前記供試体をXYZ軸の少なくとも一方に傾ける、請求項1乃至8の何れか一項に記載の車両試験装置。
【請求項10】
前記位置変更機構は、前記供試体をジャッキアップポイントで支持し、前記供試体の走行に応じて、前記供試体をXYZ軸の少なくとも一方に沿って傾ける、請求項1乃至8の何れか一項に記載の車両試験装置。
【請求項11】
前記供試体のボディの上下方向の移動を抑える車両固定機構をさらに備える、請求項1乃至10に記載の車両試験装置。
【請求項12】
車両又はその一部である供試体の路上での走行を再現して試験する車両試験方法であって、
前記供試体の車輪又は回転軸に対してダイナモメータにより走行抵抗を与えるとともに、前記供試体の走行状態に応じて、前記ダイナモメータに対する前記供試体の姿勢を変更する、車両試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を試験する車両試験装置及び車両試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両試験装置としては、特許文献1に示すように、様々な路面を再現するために、個々の車輪に対応して設けられたローラを昇降機構により上下方向に移動させるものが考えられている。
【0003】
しかしながら、上記の車両試験装置では、路面状態を擬似的に作ることができるものの、車両の走行状態に応じた車両の姿勢をローラ上で再現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-128069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上述した問題を解決すべくなされたものであり、車両の走行状態に応じて車両の姿勢を変更させながら車両試験を行うことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る車両試験装置は、車両又はその一部である供試体の路上での走行を再現して試験する車両試験装置であって、前記供試体の車輪又は回転軸に対して走行抵抗を与えるダイナモメータと、前記ダイナモメータに対する前記供試体の位置を変更する位置変更機構と、前記供試体の走行状態に応じて、前記位置変更機構を制御して、前記供試体の姿勢を制御する姿勢制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このような車両試験装置であれば、ダイナモメータに対する供試体の位置を変更する位置変更機構を有し、供試体の走行状態に応じて、位置変更機構を制御して、前記供試体の姿勢を制御するので、車両の走行状態に応じて車両の姿勢を変更させながら車両試験を行うことができる。その結果、台上で車両試験を行う際に実路走行時により近い状況を再現出来るようになる。また、本発明によれば、既設のシャシダイナモメータに対して位置変更機構を用いることにより、供試体の位置を変更することができるので、大掛かりな設備変更を不要にすることができる。
【0008】
位置変更機構の具体的な実施の態様としては、前記位置変更機構は、前記ダイナモメータに対する前記供試体のボディの位置を変更することが考えられる。
【0009】
供試体を車両試験装置上で模擬走行させつつ、供試体のボディの姿勢を変更させるためには、前記位置変更機構は、前記供試体のサスペンション又は車輪のたわみの範囲で、前記供試体のボディの位置を変更することが望ましい。
【0010】
位置変更機構の具体的な実施の態様としては、前記位置変更機構は、前記供試体の車輪又は回転軸の上下位置を変更することなく、前記供試体のボディの位置を変更することが望ましい。
【0011】
前記位置変更機構は、前記ダイナモメータの位置を変更することなく、前記供試体のボディの位置を変更することが望ましい。
【0012】
供試体の車両の運転を自動化するためには、本発明に車両試験装置は、前記供試体の運転を行う自動運転ロボットをさらに備えることが望ましい。
この構成において、前記姿勢制御部は、前記自動運転ロボットの運転と連動して、前記供試体の姿勢を制御することが望ましい。
【0013】
姿勢制御部の具体的な実施の態様としては、前記姿勢制御部は、前記供試体の車速又は走行マップと連動して、前記供試体の姿勢を制御することが望ましい。
【0014】
台上で車両試験を行う際に実路走行時により近い状況を再現するためには、前記姿勢制御部は、前記供試体の走行状態として、前記供試体の車速、前記供試体の走行に伴う風速又は路面の傾きに応じて、前記位置変更機構を制御して、前記供試体の姿勢を制御することが望ましい。
【0015】
本発明の車両試験装置は、前記ダイナモメータとの位置関係が変化しない固定面を備えた構成とすることができる。この構成において、前記位置変更機構の具体的な実施の態様としては、前記固定面に対して、前記供試体を少なくとも1点以上で支持し、前記供試体をXYZ軸の少なくとも一方に傾けるものであることが望ましい。
【0016】
その他の位置変更機構の具体的な実施の態様としては、前記供試体をジャッキアップポイントで支持し、前記供試体の走行に応じて、前記供試体をXYZ軸の少なくとも一方に沿って傾けるものであることが望ましい。
【0017】
供試体のボディをダイナモメータに対して固定して車両試験を行うためには、本発明の車両試験装置は、前記供試体のボディの上下方向の移動を抑える車両固定機構をさらに備えることが望ましい。
【0018】
また、本発明に係る車両試験方法は、車両又はその一部である供試体の路上での走行を再現して試験する車両試験方法であって、前記供試体の車輪又は回転軸に対してダイナモメータにより走行抵抗を与えるとともに、前記供試体の走行状態に応じて、前記ダイナモメータに対する前記供試体の姿勢を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、車両の走行状態に応じて車両の姿勢を変更させながら車両試験を行うことができるので、台上で車両試験を行う際に実路走行時により近い状況を再現出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る車両試験装置の全体構成を模式的に示す図。
図2】本発明の一実施形態に係る車両試験装置の全体構成を模式的に示す図。
図3】本発明の一実施形態に係る車両試験装置の全体構成を模式的に示す図。
図4】本発明の一実施形態に係る車両試験装置の全体構成を模式的に示す図。
図5】本発明の一実施形態に係る車両試験装置の全体構成を模式的に示す図。
図6】本発明の一実施形態に係る車両試験装置を用いた想定される試験シーン例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る車両試験装置について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0022】
<装置構成>
本実施形態の車両試験装置は、車両又はその一部である供試体の路上での走行を再現して試験するものである。また、この車両試験装置は、供試体の性能を試験するために用いられるものであり、例えば、エンジンを有する車両、先進運転支援システム(ADAS)を有する車両(ADAS車両)、自動運転車両(AD車両)、燃料電池を有する車両(FC車両)、ハイブリッド車両(HV車両)、又は、電気自動車(EV車両)等又はそれらの一部を供試体とすることができる。なお、供試体とは、上記の車両又はその一部を示すものである。また、車両は、完成車両に限られるものではなく、未完成の車両も含む概念である。
【0023】
具体的に車両試験装置は、図1図5に示すように、供試体の運転を行う自動運転ロボットと、供試体の車輪又は回転軸に対して走行抵抗(負荷)を与えるダイナモメータ(Dyno)と、ダイナモメータに対する供試体の位置を変更する位置変更機構と、供試体の走行状態に応じて、位置変更機構を制御して、供試体の姿勢を制御する姿勢制御部とを備えている。
【0024】
自動運転ロボットは、アクセルペダル、クラッチペダル又はブレーキペダル等の踏み込み量の操作や、シフトレバーの切替等を自動で行えるように構成されたものである。この自動運転ロボットは、供試体の運転席に搭載されてアクセルペダル、ブレーキペダル、又はクラッチペダル等を操作するものであり、この自動運転ロボットに制御信号を与えることで、供試体を自動運転することができる。
【0025】
本実施形態のダイナモメータは、シャシダイナモメータを構成しており、例えば駆動輪等の車輪が載せられる回転ドラムや無端ベルトなどのシャシローラと、シャシローラに接続されてシャシローラを回転させる図示しないモータ(負荷装置)とを有し、このモータに制御信号を与えることで、前記駆動輪を駆動させたり、前記駆動輪に負荷を与えたりすることができるように構成されている。
【0026】
また、ダイナモメータは、車軸直結ダイナモメータを構成しており、例えば駆動輪等の車輪の車軸(回転軸)に接続されるモータ(負荷装置)を有し、このモータに制御信号を与えることで、前記車軸(回転軸)を駆動させたり、前記車軸(回転軸)に負荷を与えたりすることができるように構成されている。
【0027】
このダイナモメータは、少なくとも車両試験中は、ダイナモメータが設置される設置面(固定面)に対して、固定された状態である。
【0028】
位置変更機構は、設置面(固定面)に固定されたダイナモメータに対する供試体のボディの位置を変更するものである。
【0029】
具体的に位置変更機構は、供試体のサスペンション又は車輪のたわみの範囲で、供試体のボディの位置を変更する。これにより、位置変更機構は、供試体の車輪又は回転軸の上下位置を変更することなく、供試体のボディの位置を変更することになる。
【0030】
また、位置変更機構は、設置面(固定面)に固定されたダイナモメータの位置を変更することなく、供試体のボディの位置を変更できるように構成されている。
【0031】
位置変更機構の具体的な構成としては、図1図3に示すように、ダイナモメータとの位置関係が変化しない固定面に対して、供試体を少なくとも1点以上で支持し、供試体の走行に応じて、供試体をXYZ軸の少なくとも一方に傾けるものが考えられる。
【0032】
この位置変更機構は、図1図3に示すように、供試体のボディに接続される接続部材と、当該接続部材を固定面に対して上下方向又は回転方向に移動させる移動機構とを備えている。本実施形態の接続部材は、供試体のボディの少なくとも左右2箇所に移動機構との連結部が形成されている。また、移動機構は、接続部材の少なくとも左右2箇所の連結部それぞれに一端部が連結される連結部材と、当該連結部材の他端部を上下方向又は回転方向に移動させる駆動機構とを備えている。なお、連結部材は、接続部材の連結部において回転自在に連結されている。駆動機構は、例えば、モータ、油圧シリンダ、ボールねじ機構やラックランドピニオン機構等の直動機構などを用いることが考えられる。
【0033】
また、位置変更機構の別の具体的な構成としては、図4及び図5に示すように、供試体をジャッキアップポイントで支持し、供試体の走行に応じて、供試体をXYZ軸の少なくとも一方に沿って傾けるものが考えられる。
【0034】
この位置変更機構は、図4及び図5に示すように、例えば供試体のボディの下方に設置されて、供試体のボディのジャッキアップポイントを支持するものである。具体的に位置変更機構は、ジャッキアップポイントを支持して、供試体のボディを上下方向又は回転方向に移動させる駆動機構を備えている。駆動機構は、例えば、モータ、油圧シリンダ、ボールねじ機構、又はラックランドピニオン機構等の直動機構などを用いることが考えられる。
【0035】
X軸を供試体の進行方向とすると、上記の位置変更機構により、供試体のボディは、X軸、Y軸又はZ軸に対して傾けられ、更には、X軸周りのロール角、Y軸周りのピッチ角又はZ軸周りのヨー角が変更される。
【0036】
姿勢制御部は、自動運転ロボットの運転と連動して、供試体の姿勢を制御するものである。また、姿勢制御部は、供試体の車速又は走行マップと連動して、供試体の姿勢を制御してもよい。さらに、姿勢制御部は、供試体の走行状態として、供試体の車速、供試体の加減速、供試体の走行に伴う風速又は路面の傾きに応じて、位置変更機構を制御して、供試体の姿勢を制御してもよい。また、姿勢制御部は、自動運転ロボットの代わりに、人の運転又はAD/ADASの運転と連動して、供試体の姿勢を制御するものであってもよい。
【0037】
<車両試験方法>
次に、上記の車両試験装置を用いた車両試験方法について簡単に説明する。
本実施形態の車両試験方法は、供試体の車輪又は回転軸に対してダイナモメータにより走行抵抗を与えるとともに、供試体の走行状態に応じて、位置変更機構を制御することにより、ダイナモメータに対する供試体の姿勢を変更して行う。
【0038】
<本実施形態の効果>
本実施形態の車両試験装置によれば、ダイナモメータに対する供試体の位置を変更する位置変更機構を有し、供試体の走行状態に応じて、位置変更機構を制御して、前記供試体の姿勢を制御するので、車両の走行状態に応じて車両の姿勢を変更させながら車両試験を行うことができる。その結果、台上で車両試験を行う際に実路走行時により近い状況を再現出来るようになる。また、本発明によれば、既設のシャシダイナモメータに対して位置変更機構を用いることにより、供試体の位置を変更することができるので、大掛かりな設備変更を不要にすることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、台上において実路走行時に車両が取りうる姿勢を再現することができ、各車輪又は各車軸に実路走行を模擬した入力をすることができる。また、ADAS車両又はAD車両を供試体とした場合には、車両が実路走行で取りうる姿勢にすることができ、それら車両に搭載されたセンサによる認知に姿勢による影響を与えることができる。図6に想定される試験シーン例を示している。その結果、ADASシステムによる操作の制御設計を正しく行うことができる。さらに、外乱影響(タイヤ入力、ボディ入力)を含んだ車両試験を台上で行うことができる。
【0040】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態ではステアリング操作をしない構成を前提としていたが、ステアリング操作が可能な構成としても良い。この場合、ステアリングのラックギアと車輪とを遮断して、ステアリングの操作量が車輪に伝わらないようにすることが考えられる。また、ステアリングのラックギアに操舵反力を入力する操舵反力入力装置を接続しても良い。
【0041】
また、供試体のボディの上下方向の移動を抑える車両固定機構をさらに備える構成としても良い。この構成であれば、供試体のボディをダイナモメータに対して固定して車両試験を行うことができる。この車両固定機構は、位置変更機構により位置が変更された車両のボディをダイナモメータに対して固定することができる。
【0042】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6