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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172546
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20231129BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20231129BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G09F9/00 338
H01L33/00 K
G09F9/33
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084439
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】西野 光治
【テーマコード(参考)】
5C094
5F241
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA43
5C094BA25
5C094CA19
5C094DA13
5C094DB01
5C094FB12
5C094JA08
5F241AA46
5F241FF06
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】不良と判断された発光素子を効率よく除去することができる発光装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】発光装置の製造方法は、金を含む第1接合部を有する複数の第1発光素子を準備する第1準備工程と、金を含む複数の配線部を有する支持部材を準備する第2準備工程と、第1接合部と配線部とを接触させて第1接合条件で接合する第1接合工程と、第1発光素子に粘着性部材を接触させ、粘着性部材を支持部材から第1発光素子に向かう方向に移動させることにより、支持部材から第1発光素子が除去可能かどうかを評価する第1評価工程と、第1接合工程の後、第1発光素子の電気的特性を評価する第2評価工程と、第1評価工程において支持部材から第1発光素子が除去された場合に、第2評価工程において不良と判断された第1発光素子を支持部材から除去する工程とを備える。
【選択図】図5C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金を含む第1接合部を有する複数の第1発光素子を準備する第1準備工程と、
基板と、前記基板上に配置され、金を含む複数の配線部とを有する支持部材を準備する第2準備工程と、
前記第1接合部と前記配線部とを接触させて第1接合条件で接合する第1接合工程と、
少なくとも1つの前記第1発光素子に粘着性部材を接触させ、前記粘着性部材を前記支持部材から前記第1発光素子に向かう方向に移動させることにより、前記支持部材から少なくとも1つの前記第1発光素子が除去可能かどうかを評価する第1評価工程と、
前記第1接合工程の後、前記複数の第1発光素子の電気的特性を評価する第2評価工程と、
前記第1評価工程において前記支持部材から前記少なくとも1つの前記第1発光素子が除去された場合に、前記第2評価工程において不良と判断された前記第1発光素子を、前記支持部材から除去する工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2評価工程において不良と判断された前記第1発光素子を除去した位置、及び前記第1評価工程において前記少なくとも1つの前記第1発光素子を除去した位置に、金を含む第2接合部を有する第2発光素子を配置し、前記第2接合部と前記配線部とを接触させて接合する第2接合工程をさらに備える請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2接合工程の後、前記第1接合部及び前記配線部と、前記第2接合部及び前記配線部とを、第2接合条件で接合する第3接合工程をさらに備え、
前記第2接合条件の温度は前記第1接合条件の温度よりも高い、前記第2接合条件の荷重は前記第1接合条件の荷重よりも高い、又は、前記第2接合条件の温度は前記第1接合条件の温度よりも高く、且つ前記第2接合条件の荷重は前記第1接合条件の荷重よりも高い請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1接合工程の後、前記基板に前記複数の第1発光素子が配置された素子領域が形成され、
前記素子領域は、外周部と、平面視において前記外周部に囲まれ、前記外周部の内側に位置する内側部とを有し、
前記第1評価工程において、前記粘着性部材を前記内側部に位置する前記第1発光素子に接触させる、請求項1~3のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記素子領域に配置された前記複数の発光素子間の間隔は、30μm以下である請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
平面視における前記第1発光素子の形状は、矩形状であり、
前記第1発光素子の一辺の長さは、30μm以上100μm以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1枚の配線基板に多数の半導体素子を搭載した発光装置が開示されている。このような発光装置においては、配線基板に搭載された半導体素子の中に不良品があった場合に、この不良品を除去し、良品と交換する工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-074005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、不良と判断された発光素子を効率よく除去することができる発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光装置の製造方法は、金を含む第1接合部を有する複数の第1発光素子を準備する第1準備工程と、基板と、前記基板上に配置され、金を含む複数の配線部とを有する支持部材を準備する第2準備工程と、前記第1接合部と前記配線部とを接触させて第1接合条件で接合する第1接合工程と、少なくとも1つの前記第1発光素子に粘着性部材を接触させ、前記粘着性部材を前記支持部材から前記第1発光素子に向かう方向に移動させることにより、前記支持部材から少なくとも1つの前記第1発光素子が除去可能かどうかを評価する第1評価工程と、前記第1接合工程の後、前記複数の第1発光素子の電気的特性を評価する第2評価工程と、前記第1評価工程において前記支持部材から前記少なくとも1つの前記第1発光素子が除去された場合に、前記第2評価工程において不良と判断された前記第1発光素子を、前記支持部材から除去する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、不良と判断された発光素子を効率よく除去することができる発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図2】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図3】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図4】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式平面図である。
図5A】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図5B】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図5C】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図6】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図7】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図8】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図9】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図10A】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
図10B】実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0009】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「上」(又は「下」)と表現する位置関係は、接している場合と、接していないが上方(又は下方)に位置している場合も含む。
【0010】
実施形態の発光装置の製造方法は、第1準備工程と第2準備工程とを備える。
【0011】
[第1準備工程]
第1準備工程においては、図1に示すように、複数の第1発光素子10を準備する。第1発光素子10は、第1面11と、第1面11の反対側に位置する第2面12とを有する。第1発光素子10は、第1発光素子10の第2面12に配置された第1接合部13を有する。
【0012】
第1発光素子10からの光は、主に第1面11から取り出される。第1発光素子10は、可視光、紫外光、及び赤外光のいずれかの光を発する。第1発光素子10は、例えば、青色光、緑色光を発する。
【0013】
第1接合部13は、金属材料からなる。第1接合部13は、金を含む。第1接合部13の少なくとも下面13aが金からなる。それぞれの第1発光素子10は、2つの第1接合部13を有する。2つの第1接合部13のうち、一方はアノード電極、他方はカソード電極として機能する。
【0014】
複数の第1発光素子10は、移載部材51の第1面51aに接着されている。例えば、移載部材51の第1面51aに接着部材52が配置され、それぞれの第1発光素子10の第1面11が接着部材52に接着されている。移載部材51の材料として、例えば、サファイア、シリコン、またはガラスを用いることができる。接着部材52は、例えば、樹脂部材である。また、接着部材52を用いずに、移載部材51の接着性を有する第1面51aに直接第1発光素子10を接着してもよいし、移載部材51に第1発光素子10を吸着させてもよい。
【0015】
[第2準備工程]
第2準備工程においては、図1に示すように、支持部材40を準備する。支持部材40は、基板41と、基板41上に配置された複数の配線部42とを有する。
【0016】
基板41は、絶縁材料からなる。基板41の材料として、例えば、樹脂またはセラミックを用いることができる。
【0017】
例えば、配線部42は、第1配線部42aと第2配線部42bとを有する。第1配線部42aは、基板41の内部に位置する。第2配線部42bは、第1配線部42aに接して第1配線部42a上に位置し、第1配線部42aと電気的に接続されている。第2配線部42bの少なくとも上面42cが、基板41の第2面41aから露出している。配線部42は、金属材料からなる。配線部42は、金を含む。第2配線部42bの少なくとも上面42cが金からなる。
【0018】
[第1接合工程]
実施形態の発光装置の製造方法は、第1接合工程をさらに備える。
【0019】
第1接合工程においては、図2に示すように、移載部材51の第1面51aを、支持部材40の基板41の第2面41aに対向させ、第1接合部13と配線部42とを接触させて第1接合条件で接合する。第1接合条件において、移載部材51から支持部材40に向かう方向に荷重を加えて、第1接合部13の金からなる下面13aと、第2配線部42bの金からなる上面42cとを接触させる。第1接合条件において、さらに熱を加える。
【0020】
第1接合条件において、加熱温度は、例えば、80℃以上200℃以下が好ましい。第1接合条件において、加える荷重は、例えば、10MPa以上150MPa以下が好ましい。第1接合条件において、荷重を加える時間は、例えば、0.1秒以上10秒以下が好ましい。
【0021】
第1接合工程では、第1接合部13及び第2配線部42bは接合前の形状を概ね維持したまま、第1接合部13の下面13aと第2配線部42bの上面42cとを接合する。例えば、接合前の第2配線部42bの上面42cに凹部が形成されている場合は、第1接合部13と第2配線部42bの凹部との間に空隙が残留してもよい。第1接合部13と第2配線部42bとを第1接合条件で接合することにより、第1接合部13と第2配線部42bとは電気的に接続されるが、機械的な接合強度は後述する第2接合条件による接合強度よりも低い状態となる。以下、第1接合条件によって実現したこのような状態を、「仮接合状態」という。
【0022】
第1接合工程の後、移載部材51を第1発光素子10から離す。このとき、仮接合状態における接合強度が、接着部材52と第1発光素子10の第1面11との接合強度よりも高い状態とすることで、移載部材51を第1発光素子10から離しやすくすることできる。これにより、図3及び図4に示すように、支持部材40上に複数の第1発光素子10が、仮接合状態で配置された構造が得られる。
【0023】
第1接合工程の後、図4に示すように、基板41に複数の第1発光素子10が行列状に配置された素子領域100が形成される。図4において、素子領域100は、1点鎖線の内側の領域である。素子領域100に配置された複数の第1発光素子10間の間隔は、例えば、30μm以下である。例えば、平面視における第1発光素子10の形状は矩形状であり、第1発光素子10の一辺の長さは10μm以上100μm以下である。素子領域100に配置される第1発光素子10の数は、例えば、50個以上であり、50個以上10万個以下、好ましくは1万個以上5万個以下とすることできる。
【0024】
[第1評価工程]
実施形態の発光装置の製造方法は、第1接合工程の後、第1評価工程をさらに備える。
【0025】
第1評価工程においては、図5Aに示すように、粘着性部材62を第1発光素子10から支持部材40に向かう方向Aに移動させ、図5Bに示すように、少なくとも1つの第1発光素子10に粘着性部材62を接触させる。第1評価工程における評価対象となる少なくとも1つの第1発光素子10の第1面11に、粘着性部材62の粘着面62aを接触させる。第1発光素子10の第1面11は、粘着性部材62の粘着面62aに接着する。
【0026】
粘着性部材62は、例えば、樹脂部材であり、第1部材61の下面61aに固定されている。第1部材61は、例えば、金属材料からなる。第1部材61の下面61aの面積は、第1発光素子10の第1面11の面積よりも大きい。粘着性部材62の粘着面62aの面積は、第1部材61の下面61aの面積以下であり、第1発光素子10の第1面11の面積よりも大きい。例えば、評価対象の1つの第1発光素子10の第1面11に粘着面62aが接触した状態で、評価対象の第1発光素子10に隣り合う他の第1発光素子10に粘着性部材62が接触しないように、第1部材61の下面61aの面積及び粘着性部材62の粘着面62aの面積が設定される。
【0027】
第1評価工程において、少なくとも1つの第1発光素子10に粘着性部材62を接触させた後、図5Cに示すように、粘着性部材62を支持部材40から第1発光素子10に向かう方向Bに移動させることにより、支持部材40から少なくとも1つの第1発光素子10が除去可能かどうかを評価する。
【0028】
第1部材61を方向Bに移動させることで、第1部材61の下面61aに固定された粘着性部材62が方向Bに移動する。粘着性部材62の方向Bへの移動に伴い、第1面11が粘着性部材62の粘着面62aに接着された第1発光素子10に対しても支持部材40から離れようとする方向Bへの力(引張荷重)が加わる。このとき、第1発光素子10の第1接合部13が支持部材40の第2配線部42bから離れることで、第1接合部13と第2配線部42bとの仮接合強度が、後述する工程において不良と判断された第1発光素子10を支持部材40から除去可能である強度であることが確認でき、第1接合工程における仮接合強度は適切であると評価される。第1接合工程の後、第1発光素子10が支持部材40から除去できることを確認しておくことで、第1接合工程より後の工程が効率よく行えるので、不良と判断された第1発光素子10が発生した場合には不良品を効率よく交換することができる。第1評価工程において、第1発光素子10の第1接合部13が支持部材40の第2配線部42bから離れなかった場合は、評価NGとする。
【0029】
[第2評価工程]
実施形態の発光装置の製造方法は、第1接合工程の後、第2評価工程をさらに備える。
【0030】
第2評価工程においては、複数の第1発光素子10の電気的特性を評価する。図6に示すように、配線部42を介して複数の第1発光素子10に電力を供給し、第1発光素子10の電気的特性を評価する。評価する電気的特性は、例えば、第1発光素子10が発する光の輝度である。この第2評価工程により、支持部材40に仮接合状態で接合された複数の第1発光素子10を、良品と不良品とに分類する。例えば、基準値以上の輝度である第1発光素子10を良品とし、基準値よりも低い輝度である第1発光素子10を不良品とする。以下、不良と判断された第1発光素子10を第1発光素子10Aともいう。
【0031】
第2評価工程は、第1評価工程の後に行われる。または、第2評価工程は、第1評価工程の前に行われる。
【0032】
第2評価工程において、複数の第1発光素子10は、配線部42にそれぞれ電気的に接続されている状態であるため、配線部42を介して複数の第1発光素子10の電気的特性を同時に評価することができる。
【0033】
[不良と判断された第1発光素子を支持部材から除去する工程]
実施形態の発光装置の製造方法は、第1評価工程において支持部材40から少なくとも1つの第1発光素子10が除去された場合に、第2評価工程において不良と判断された第1発光素子10Aを支持部材40から除去する工程をさらに備える。
【0034】
図7に示すように、不良と判断された第1発光素子10Aの第1接合部13を支持部材40の第2配線部42bから離すことで、不良と判断された第1発光素子10Aを支持部材40から除去する。例えば、第1発光素子10Aにレーザ光を照射することにより、第1発光素子10Aを加熱する。これにより、第1発光素子10Aの第1接合部13と第2配線部42bとの界面に熱応力が加わり、第1発光素子10Aの第1接合部13が第2配線部42bから除去される。
【0035】
レーザ光の照射により第1発光素子10Aを支持部材40から除去することができる第1接合部13と第2配線部42bとの接合強度は、例えば、40MPa以下である。レーザ光の照射により第1発光素子10Aを確実に除去可能とするため、第1接合工程において、第1接合部13と第2配線部42bとの接合強度が、例えば、30MPa以下となるように設定することが好ましい。第1評価工程において、粘着性部材62と第1発光素子10との接着強度は、第1接合工程による第1接合部13と第2配線部42bとの接合強度よりも大きく、例えば、31MPa以上となるように設定される。
【0036】
第1発光素子10Aは、例えば、第1発光素子10Aを粘着性のある部材に接着させて除去してもよい。また、第1発光素子10Aは、吸引器で吸引して除去してもよい。
【0037】
[第2接合工程]
実施形態の発光装置の製造方法は、第2接合工程をさらに備える。
【0038】
第2接合工程においては、第2評価工程において不良と判断された第1発光素子10Aを除去した位置、及び第1評価工程において少なくとも1つの第1発光素子10を除去した位置に、図8に示すように第2発光素子20を配置する。
【0039】
第2発光素子20は、第1発光素子10と同じ構成を有する。第2発光素子20は、第1面21と、第1面21の反対側に位置する第2面22に配置された第2接合部23とを有する。第2発光素子20からの光は、主に第1面21から取り出される。第2発光素子20は、可視光または紫外光を発する。第2接合部23は、金属材料からなる。第2接合部23は、金を含む。第2接合部23の少なくとも下面23aが金からなる。第2発光素子20は、2つの第2接合部23を有する。2つの第2接合部23のうち、一方はアノード電極、他方はカソード電極として機能する。
【0040】
図8に示すように、第2発光素子20の第1面21を、第2部材71の粘着性を有する下面71aに接着させた状態で、第2部材71と共に第2発光素子20を支持部材40に向けて移動させ、第2発光素子20を支持部材40上に配置する。第2部材71は、例えば、樹脂部材である。第2評価工程において不良と判断された第1発光素子10Aを除去した位置、及び第1評価工程において粘着性部材62を用いて第1発光素子10を除去した位置において、第2発光素子20の第2接合部23と第2配線部42bとを接触させて接合する。第2接合工程における接合条件は、第1接合工程の第1接合条件と同じ条件に設定することができる。
【0041】
[第3接合工程]
実施形態の発光装置の製造方法は、第3接合工程をさらに備える。
【0042】
第3接合工程においては、第2接合工程の後、第1発光素子10の第1接合部13及び第2配線部42bと、第2発光素子20の第2接合部23及び第2配線部42bとを、第2接合条件で接合する。
【0043】
図9に示すように、第3部材81を用いて第1発光素子10及び第2発光素子20に対して支持部材40に向かう方向の荷重を加えつつ、加熱する。これにより、仮接合状態にある第1発光素子10の第1接合部13と第2配線部42bとを接合すると共に、第2接合工程で新たに配置された第2発光素子20の第2接合部23と第2配線部42bとを接合する。第3部材81として、第1接合工程で用いた移載部材51を再び用いてもよい。例えば、第1発光素子10の第1面11及び第2発光素子20の第1面21は、接着部材82を介して第3部材81の下面に接着される。
【0044】
第2接合条件の温度は、第1接合条件の温度よりも高い。または、第2接合条件の荷重は第1接合条件の荷重よりも高い。または、第2接合条件の温度は第1接合条件の温度よりも高く、且つ第2接合条件の荷重は第1接合条件の荷重よりも高い。また、第2接合条件における荷重を加える時間は、第1接合条件における荷重を加える時間よりも長い。
【0045】
第2接合条件において、加熱温度は、例えば、200℃以上300℃以下が好ましい。第2接合条件において、加える荷重は、例えば、40MPa以上200MPa以下が好ましい。第2接合条件において、荷重を加える時間は、例えば、1秒以上60秒以下が好ましい。
【0046】
第3接合工程により、第1発光素子10の第1接合部13と第2配線部42bとが仮接合状態よりも高い強度で接合されると共に、第2発光素子20の第2接合部23と第2配線部42bとが仮接合状態よりも高い強度で接合される。第3接合工程により、相互に接合された第1接合部13と第2配線部42b、及び第2接合部23と第2配線部42bは一体化し、界面の大部分が消滅する。また、界面に空隙が発生していた場合には、空隙の大部分が消滅する。第1接合部13と第2配線部42bは電気的に接続され、第2接合部23と第2配線部42bは電気的に接続される。第1接合部13と第2配線部42bとの機械的な接合強度、及び第2接合部23と第2配線部42bとの機械的な接合強度は、第1接合工程による仮接合状態よりも高くなる。第3接合工程によって実現したこのような状態を、「本接合状態」という。第3接合工程の後、第3部材81を、第1発光素子10及び第2発光素子20から離す。
【0047】
なお、図6に示す前述した第2評価工程において、不良と判断された第1発光素子10Aがない場合には、不良品の除去工程、及び不良品を除去した位置への第2発光素子20の配置工程は行われない。図8に示す第2接合工程においては、第1評価工程において粘着性部材62を用いて第1発光素子10を除去した位置にのみ第2発光素子20を配置する。
【0048】
図4に示すように、第1接合工程の後において複数の第1発光素子10が配置された基板41の素子領域100は、外周部101と内側部102とを有する。内側部102は、平面視において外周部101に囲まれ、外周部101の内側に位置する。図4において、内側部102は2点鎖線の内側の領域であり、外周部101は1点鎖線と2点鎖線との間の領域である。外周部102に配置された第1発光素子10は、素子領域100に配置された第1発光素子10のうち、素子領域100の最外周に位置する第1発光素子10を少なくとも1個を含む。外周部102に配置された第1発光素子10は、素子領域100に配置された第1発光素子10のうち、素子領域100の最外周と内側部102との間に位置する複数の第1発光素子10を含んでいてもよい。素子領域100において複数の第1発光素子10が並ぶ1つの方向において、外周部102に配置された第1発光素子10として素子領域100の最外周と内側部102との間に配置される第1発光素子10の数は、例えば、2個以上20個以下することができる。
【0049】
素子領域100に配置された複数の第1発光素子10のうち、内側部102に配置された第1発光素子10の仮接合強度は、外周部101に配置された第1発光素子10の仮接合強度よりも高くなる場合がある。したがって、第1評価工程において、粘着性部材62を内側部102に位置する第1発光素子10に接触させ、内側部102に位置する第1発光素子10が支持部材40から除去可能となれば、第2評価工程において不良と判断された第1発光素子10Aがどこに位置しても第1発光素子10Aの除去を容易に行うことができる。また、仮接合強度は、素子領域100の中心から外周に向かって低くなる場合がある。そのため、第1評価工程において、接着性部材62を接触させる第1発光素子10は、内側部102に位置する第1発光素子10のうち、素子領域102の中心領域に位置する第1発光素子10とすることが好ましい。これにより、仮接合強度がより高い第1発光素子10に対して第1評価工程を行うことができるため、第1発光素子10Aの除去をより容易に行うことができる。
【0050】
第1接合工程において、第1接合部13と第2配線部42bとを、例えば錫を含む接合材料を用いて接合する場合、不良と判断された第1発光素子10Aを除去した後、第2配線部42bの上面42cに接合材料の残渣が残ってしまう。また、第1接合工程において、第1接合部13と第2配線部42bとを、例えばめっきを形成することにより接合する場合においても、不良と判断された第1発光素子10Aを除去した後、第2配線部42bの上面42cにめっき材料の残渣が残ってしまう。接合材料またはめっき材料の残渣により、第2接合工程において第2発光素子20と第2配線部42bとの接合強度が低くなる可能性がある。錫を含む接合材料を用いた接合、またはめっきによる接合においては、一度接合させると接合後に接合材料やめっき材料を除去することが難しい。
【0051】
本実施形態においては、第1接合工程において、第1発光素子10の第1接合部13の金を含む部分と、第2配線部42bの金を含む部分とが直接接合される。そして、不良と判断された第1発光素子10Aを除去する工程において、第1接合部13の金を含む部分と第2配線部42bの金を含む部分との界面で結合が解除されるため、第2配線部42bの上面42cに残渣が残りづらい。そのため、第2接合工程において第2発光素子20を第2配線部42bに接合する際、第2発光素子20と第2配線部42bとの接合強度を高くすることができる。
【0052】
[第1評価工程の他の例]
第1評価工程の他の例において、図10Aに示す粘着性部材64を用いる。粘着性部材64は、例えば、樹脂部材である。粘着性部材64は、第1発光素子10の第1面11に対向する下面64bと、下面64bの反対側に位置する上面64aとを有する。上面64a及び下面64bは共に粘着性を有する。上面64a及び下面64bのそれぞれの面積は、複数の第1発光素子10が配置された基板41の素子領域100の面積よりも大きい。
【0053】
支持部材40は、基体90上に配置されている。粘着性部材64は、枠部材92を介して、支持部材40上に配置されている。粘着性部材64の平面視における形状は、例えば、円形である。枠部材92の平面視における形状は、例えば、環状である。粘着性部材64の外周部64cの下面64bが枠部材92上に配置されている。粘着性部材64の下面64bにおける外周部64cより内側の領域は、隙間を隔てて、第1発光素子10の第1面11に対向している。
【0054】
第1評価工程において、第4部材91を、粘着性部材64の上面64aの上方から第1発光素子10に向かう方向Aに移動させ、第4部材91の下面91aを粘着性部材64の上面64aに接触させる。第4部材91は、例えば、金属材料からなる。第4部材91の下面91aを粘着性部材64の上面64aに接触させた後、さらに第4部材91を方向Aに移動させる。これにより、粘着性部材64は第4部材91に押されて支持部材40側に撓み、粘着性部材64の下面64bが評価対象の少なくとも1つの第1発光素子10の第1面11に接触する。粘着性部材64の一部は、第4部材91の下面91aと第1発光素子10の第1面11との間に挟まれる。粘着性部材64が第4部材91と第1発光素子10との間に挟まれた部分において、第4部材91の下面91aは粘着性部材64の上面64aに接着し、第1発光素子10の第1面11は粘着性部材64の下面64bに接着している。
【0055】
粘着性部材64の上面64a及び第4部材91と、粘着性部材64の下面64b及び第1発光素子10の第1面11とがそれぞれ接着した状態で、図10Bに示すように、第4部材91を支持部材40から第1発光素子10に向かう方向Bに移動させる。これにより、支持部材40から第1発光素子10が除去可能かどうかを評価する。
【0056】
第4部材91の方向Bへの移動に伴い、粘着性部材64及び第1発光素子10に対しても支持部材40から離れようとする方向Bへの力(引張荷重)が加わる。このとき、第1発光素子10の第1接合部13が支持部材40の第2配線部42bから離れることで、第1接合部13と第2配線部42bとの仮接合強度が、第2評価工程において不良と判断された第1発光素子10を支持部材40から除去可能である強度であることが確認できる。これにより、第1接合工程における仮接合強度は適切であると評価される。
【0057】
第1発光素子10において粘着性部材と接触する面(本実施形態では第1面11)の面積が小さいと、粘着性部材と第1発光素子10との必要な接着強度を確保しにくい。
【0058】
図10A及び図10Bに示す粘着性部材64における第1発光素子10に対向する下面64bの面積は、1つの第1発光素子10の第1面11の面積よりも大きい。そのため、第4部材91の下面91aの面積を、2以上の第1発光素子10の第1面11の合計面積よりも大きくすることで、粘着性部材64の下面64bを2以上の第1発光素子10の第1面11に同時に接触させて、2以上の第1発光素子10について支持部材40から除去可能であるかどうかを評価することができる。これにより、1つの第1発光素子10の粘着性部材に接触する面の面積が小さくても、粘着性部材64と第1発光素子10との必要な接着強度を確保できる。
【0059】
本発明の実施形態は、以下の発光装置の製造方法を含む。
【0060】
1.金を含む第1接合部を有する複数の第1発光素子を準備する第1準備工程と、
基板と、前記基板上に配置され、金を含む複数の配線部とを有する支持部材を準備する第2準備工程と、
前記第1接合部と前記配線部とを接触させて第1接合条件で接合する第1接合工程と、
少なくとも1つの前記第1発光素子に粘着性部材を接触させ、前記粘着性部材を前記支持部材から前記第1発光素子に向かう方向に移動させることにより、前記支持部材から少なくとも1つの前記第1発光素子が除去可能かどうかを評価する第1評価工程と、
前記第1接合工程の後、前記複数の第1発光素子の電気的特性を評価する第2評価工程と、
前記第1評価工程において前記支持部材から前記少なくとも1つの前記第1発光素子が除去された場合に、前記第2評価工程において不良と判断された前記第1発光素子を、前記支持部材から除去する工程と、
を備える発光装置の製造方法。
2.前記第2評価工程において不良と判断された前記第1発光素子を除去した位置、及び前記第1評価工程において前記少なくとも1つの前記第1発光素子を除去した位置に、金を含む第2接合部を有する第2発光素子を配置し、前記第2接合部と前記配線部とを接触させて接合する第2接合工程をさらに備える上記1に記載の発光素子の製造方法。
3.前記第2接合工程の後、前記第1接合部及び前記配線部と、前記第2接合部及び前記配線部とを、第2接合条件で接合する第3接合工程をさらに備え、
前記第2接合条件の温度は前記第1接合条件の温度よりも高い、前記第2接合条件の荷重は前記第1接合条件の荷重よりも高い、又は、前記第2接合条件の温度は前記第1接合条件の温度よりも高く、且つ前記第2接合条件の荷重は前記第1接合条件の荷重よりも高い上記2に記載の発光装置の製造方法。
4.前記第1接合工程の後、前記基板に前記複数の第1発光素子が配置された素子領域が形成され、
前記素子領域は、外周部と、平面視において前記外周部に囲まれ、前記外周部の内側に位置する内側部とを有し、
前記第1評価工程において、前記粘着性部材を前記内側部に位置する前記第1発光素子に接触させる、上記1~3のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
5.前記素子領域に配置された前記複数の発光素子間の間隔は、30μm以下である上記4に記載の発光装置の製造方法。
6.平面視における前記第1発光素子の形状は、矩形状であり、
前記第1発光素子の一辺の長さは、30μm以上100μm以下である上記1~5のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0061】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0062】
10…第1発光素子、10A…不良と判断された第1発光素子、11…第1面、12…第2面、13…第1接合部、20…第2発光素子、21…第1面、22…第2面、23…第2接合部、40…支持部材、41…基板、42…配線部、42a…第1配線部、42b…第2配線部、51…移載部材、61…第1部材、62…粘着性部材、64…粘着性部材、71…第2部材、81…第3部材、91…第4部材、100…素子領域、101…外周部、102…内側部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B