(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172562
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】接着剤組成物、回路接続材料、及び接続体
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20231129BHJP
C09J 161/04 20060101ALI20231129BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231129BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20231129BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231129BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J161/04
C09J11/06
C09J9/02
C09J7/38
H01B1/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084465
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 裕也
(72)【発明者】
【氏名】工藤 直
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5G301
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA13
4J004AA14
4J004AB01
4J004AB05
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4J040NA19
5G301DA03
5G301DA05
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5G301DA10
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5G301DD03
5G301DD08
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】 貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性とを両立することができる接着剤組成物及び回路接続材料、並びに、高温高湿条件下であっても接着面に剥離が生じにくい接続体を提供すること。
【解決手段】 接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤、を含み、(a)熱可塑性樹脂として、(a-1)ポリウレタン樹脂と、(a-2)フェノキシ樹脂と、を含有し、(b)ラジカル重合性化合物として、(b-1)イソシアネート基がブロック剤によって保護された構造を有するラジカル重合性化合物と、(b-2)リン酸基を有するラジカル重合性化合物と、を含有し、(b-2)リン酸基を有するラジカル重合性化合物の含有量が、接着剤組成物の全量を基準として、1.6質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤、を含む接着剤組成物であって、
前記(a)熱可塑性樹脂として、(a-1)ポリウレタン樹脂と、(a-2)フェノキシ樹脂と、を含有し、
前記(b)ラジカル重合性化合物として、(b-1)イソシアネート基がブロック剤によって保護された構造を有するラジカル重合性化合物と、(b-2)リン酸基を有するラジカル重合性化合物と、を含有し、
前記(b-2)リン酸基を有するラジカル重合性化合物の含有量が、前記接着剤組成物の全量を基準として、1.6質量%以下である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記(a-1)ポリウレタン樹脂と前記(a-2)フェノキシ樹脂との質量比が、8:2~2:8である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記(a-1)ポリウレタン樹脂がエステルウレタン化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記(b-1)イソシアネート基がブロック剤によって保護された構造を有するラジカル重合性化合物が、ピラゾールブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物、を含む、回路接続材料。
【請求項6】
導電性粒子を更に含有する、請求項5に記載の回路接続材料。
【請求項7】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成され、前記第二の回路電極と前記第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材と、
前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に設けられ、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを電気的に接続する接続部材と、を備え、
前記接続部材が、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物を含む、接続体。
【請求項8】
前記第一の回路基板及び前記第二の回路基板のうちの少なくとも一方がガラス基板である、請求項7に記載の接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物、回路接続材料、及び接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子又は液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤組成物が回路接続材料として使用されている。この接着剤組成物には、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等の多様な特性が要求される。
【0003】
接着される被着体は、プリント配線板、ポリイミドフィルム等の有機材料、銅、アルミニウム等の金属、ITO、SiN、SiO2等の金属化合物のように、種々の材料から形成された多様な表面を有する。そのため、接着剤組成物は、各被着体に合わせて設計される。
【0004】
半導体素子又は液晶表示素子用の接着剤組成物として、高接着性且つ高信頼性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる接着剤組成物は、一般に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応するフェノール樹脂等の硬化剤、及びエポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する熱潜在性触媒を含有する。このうち、熱潜在性触媒は、硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子である。そのため、熱潜在性触媒として、室温での貯蔵安定性、及び加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられている。この接着剤組成物は、一般に170~250℃の温度で1~3時間加熱することにより硬化して所望の接着性を発揮する。
【0005】
他方で、(メタ)アクリレート誘導体と過酸化物とを含む、ラジカル硬化型接着剤が注目されている(例えば、特許文献2参照)。ラジカル硬化型接着剤は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化の点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-113480号公報
【特許文献2】国際公開第98/44067号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、市場からは液晶表示装置等のパネル品質の信頼性への要求レベルが高まってきている。回路接続材料として用いられるラジカル硬化型接着剤については、充分な貯蔵安定性を有し、過酷な高温高湿条件下であっても接続体の接続信頼性を維持できる特性が求められる。そこで、本発明者らは、接続体の接続信頼性の向上を図るために、ラジカル硬化型接着剤の接着強度を高めることについて検討したところ、以下の課題があることを見出した。
【0008】
高温高湿試験後の接続体について本発明者らが詳細な観察を行ったところ、実用上の貯蔵安定性を考慮した保存処理(例えば、40℃で3日間保管)を施した接着剤によって接続された接続体において、回路部材と接着剤の硬化物との間に剥離が生じている場合があることが判明した。剥離の発生は、接着強度と相関しない場合もあり、剥離が更に進行すると接続体の接続不良につながる可能性があることから、ラジカル硬化型接着剤にとって耐剥離性は重要な特性である。
【0009】
そこで、本開示は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性とを両立することができる接着剤組成物及び回路接続材料、並びに、高温高湿条件下であっても接着面に剥離が生じにくい接続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の要旨は下記の[1]~[8]である。
【0011】
[1] (a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤、を含む接着剤組成物であって、(a)熱可塑性樹脂として、(a-1)ポリウレタン樹脂と、(a-2)フェノキシ樹脂と、を含有し、(b)ラジカル重合性化合物として、(b-1)イソシアネート基がブロック剤によって保護された構造を有するラジカル重合性化合物と、(b-2)リン酸基を有するラジカル重合性化合物と、を含有し、(b-2)リン酸基を有するラジカル重合性化合物の含有量が、接着剤組成物の全量を基準として、1.6質量%以下である、接着剤組成物。
【0012】
[2] (a-1)ポリウレタン樹脂と(a-2)フェノキシ樹脂との質量比が、8:2~2:8である、上記[1]に記載の接着剤組成物。
【0013】
[3] (a-1)ポリウレタン樹脂がエステルウレタン化合物である、上記[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
【0014】
[4] (b-1)イソシアネート基がブロック剤によって保護された構造を有するラジカル重合性化合物が、ピラゾールブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物である、上記[1]~[3]にいずれかに記載の接着剤組成物。
【0015】
[5] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤組成物、を含む、回路接続材料。
【0016】
[6] 導電性粒子を更に含有する、上記[5]に記載の回路接続材料。
【0017】
[7] 第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成され、第二の回路電極と第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材と、第一の回路部材と第二の回路部材との間に設けられ、第一の回路部材と第二の回路部材とを電気的に接続する接続部材と、を備え、接続部材が、上記[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤組成物の硬化物を含む、接続体。
【0018】
[8] 第一の回路基板及び第二の回路基板のうちの少なくとも一方がガラス基板である、上記[7]に記載の接続体。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性とを両立することができる接着剤組成物及び回路接続材料、並びに、高温高湿条件下であっても接着面に剥離が生じにくい接続体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る接着剤組成物を含むフィルム状の回路接続材料の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】本実施形態に係る接着剤組成物の硬化物を含む接続部材を備える接続体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】本実施形態に係る回路接続材料により接続体を製造する一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0022】
以下、場合により図面を参照しつつ、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<接着剤組成物>
本実施形態に係る接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂(以下、「(a)成分」ともいう。)、(b)ラジカル重合性化合物(以下、「(b)成分」ともいう。)及び(c)ラジカル重合開始剤(以下、「(c)成分」ともいう。)を含有する。
【0024】
上記(a)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂が挙げられる。
【0025】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量の下限値は、5000以上であってもよく、10000以上であってもよく、25000以上であってもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5000以上であると、接着剤組成物の接着強度が向上する傾向がある。一方、熱可塑性樹脂の重量平均分子量の上限値は、400000以下であってもよく、200000以下であってもよく、150000以下であってもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が400000以下であれば、他の成分との良好な相溶性が得られやすい傾向があり、接着剤の流動性が得られやすい傾向がある。上記の観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5000~400000が好ましく、5000~200000がより好ましく、10000~150000が更に好ましく、25000~150000が特に好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量とは、以下の条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定したもののことをいう。
[GPC条件]
使用機器:日立L-6000 型〔株式会社日立製作所〕、カラム:ゲルパックGL-R420+ゲルパックGL-R430+ゲルパックGL-R440(計3本)〔日立化成株式会社製〕、溶離液:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流量:1.75ml/min、検出器:L-3300RI〔株式会社日立製作所〕
【0027】
熱可塑性樹脂として、応力緩和及び接着性向上を目的として、ゴム成分を用いることもできる。
【0028】
接着剤組成物における(a)成分の総含有量は、接着強度、接着剤組成物のフィルム形成性及び流動性の観点から、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、20~80質量部であってもよく、30~70質量部であってもよく、35~65質量部であってもよい。
【0029】
本実施形態に係る接着剤組成物は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(a)成分として、(a-1)ポリウレタン樹脂(以下、「(a-1)成分」ともいう。)と、(a-2)フェノキシ樹脂(以下、「(a-2)成分」ともいう。)と、を含有することができる。
【0030】
(a-1)成分としては、ウレタン基及びエステル基を有する有機化合物(以下、「エステルウレタン化合物」ともいう。)を用いることができる。エステルウレタン化合物は、ウレタン基及びエステル基をその主鎖中に有していてもよい。
【0031】
エステルウレタン化合物は、例えば、ポリエステルポリオールと、ジイソシアネートとの反応により、得られる。この反応により得られるエステルウレタン化合物は、一般に、ポリエステルウレタン樹脂と称される場合がある。
【0032】
ジイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの、芳香族、脂環族、または脂肪族のジイソシアネートが好適に用いられる。
【0033】
ポリエステルポリオールは、例えば、ジカルボン酸とジオールとの反応により、得られる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの芳香族や脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのようなグリコール類が好ましい。
【0034】
エステルウレタン化合物のガラス転移温度は、50℃以上であることが好ましい。エステルウレタン化合物は、ポリエステルポリオールやジイソシアネートの種類や、分子量等を適宜調整することにより、そのガラス転移温度を50℃以上とすることができる。
【0035】
エステルウレタン化合物は、アニオン性を有することが好ましい。これにより、接着強度が更に向上する。アニオン性を有するエステルウレタン化合物は、ポリエステルポリオールとジイソシアネートとの反応の際に、側鎖にスルホン酸基やカルボキシル基を有するジオールやジアミン類を共重合させることにより得られる。
【0036】
エステルウレタン化合物は、ベンゼン環等を含む芳香族基や、シクロヘキサン環等を含む環状脂肪族基を有することが好ましい。
【0037】
エステルウレタン化合物は、2種類以上混合して使用することができる。例えば、芳香族ポリエステルポリオールと脂肪族ジイソシアネートとの反応により得られるものと、脂肪族ポリエステルポリオールと芳香族ジイソシアネートとの反応により得られるものとを組み合わせることができる。
【0038】
エステルウレタン化合物は、フィルム状に成形する際のフィルム形成性、溶剤への溶解性及び相溶性の観点から、重量平均分子量が5000~100000であってもよく、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、重量平均分子量が5000~400000であってもよい。
【0039】
エステルウレタン化合物は、エポキシ基を有していてもよい。接着剤組成物がエポキシ基を有するエステルウレタン化合物と、エポキシ樹脂とを含む場合、エポキシ樹脂とエステルウレタン化合物との反応によって、回路接続材料の硬化物の弾性率や耐熱性を向上させることができる。
【0040】
(a-1)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
(a-2)成分であるフェノキシ樹脂は、重量平均分子量が10000以上であってもよく、10000~1000000であってもよい。
【0042】
フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度が-50℃以上であってもよく、0~250℃であってもよい。
【0043】
(a-2)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
(a-1)成分と(a-2)成分との質量比は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、8:2~2:8であってもよく、7:3~3:7であってもよく、6:4~4:6であってもよい。
【0045】
本実施形態に係る接着剤組成物は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(a-1)成分及び(a-2)成分を合計で、接着剤組成物全量を基準として、20~80質量%、20~70質量%又は20~60質量%含有してもよい。
【0046】
本実施形態に係る接着剤組成物における(a-1)成分の含有量は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、5~50質量部、5~40質量部又は5~30質量部であってもよい。
【0047】
本実施形態に係る接着剤組成物における(a-2)成分の含有量は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、5~50質量部、5~40質量部又は5~30質量部であってもよい。
【0048】
本実施形態に係る接着剤組成物は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(b)ラジカル重合性化合物として、(b-1)イソシアネート基がブロック剤によって保護された構造を有するラジカル重合性化合物(以下、「(b-1)成分」ともいう。)と、(b-2)リン酸基を有するラジカル重合性化合物(以下、「(b-2)成分」ともいう。)と、を含有することができる。
【0049】
(b-1)成分は、ラジカル重合性の不飽和基を有していてもよい。ラジカル重合性の不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。
【0050】
(b-1)成分は、イソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物のイソシアネート基をブロック剤によって化学的にブロックさせることで合成することができる。
【0051】
イソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物を製造する方法としては、特開2006-232797号公報に記載されるとおり、(メタ)アクリル酸とアミノアルコールのエステルの塩とホスゲンとを反応させる方法、イソプロペニルオキサゾリンとホスゲンとを反応させる方法、イソシアネート基を有する3-クロロプロピオン酸エステル誘導体を脱塩化水素させる方法等が挙げられる。
【0052】
イソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物の分子量は150以上1000未満であってもよい。
【0053】
イソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物において、分子中のイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基の数に特に制限はないが、各々独立に1~5個程度であることが実用的である。
【0054】
イソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
ブロック剤としては、例えば、ジメチルピラゾール、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、メチルエチルケトンオキシム及びカプロラクタムが挙げられる。ブロック剤の種類によってブロック剤が解離する温度を制御できることから、これらのブロック剤は、実用温度に合わせて、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
(b-1)成分は、例えば、上述したイソシアネート基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物を上記ブロック剤でブロックした化合物であってもよく、その具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルが挙げられる。
【0057】
(b-1)成分は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(メタ)アクリル酸2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル等のピラゾールブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよい。
【0058】
(b-1)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
(b-1)成分の含有量は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部を基準として、1~25質量部であってもよく、1~20質量部であってもよく、1~15質量部であってもよい。
【0060】
また、(b-1)成分の含有量は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(b)成分の総量100質量部を基準として、1~50質量部であってもよく、1~40質量部であってもよく、1~30質量部であってもよい。
【0061】
(b-2)成分としては、例えば、下記式(1)、(2)又は(3)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【化1】
式(1)中、R
5は水素原子又はメチル基を示し、R
6は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、w及びxはそれぞれ独立に1~8の整数を示す。なお、同一分子中の複数のR
5、R
6、w及びxは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0063】
【化2】
式(2)中、R
7は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、y及びzはそれぞれ独立に1~8の整数を示す。同一分子中の複数のR
7、y及びzは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0064】
【化3】
式(3)中、R
8は水素原子又はメチル基を示し、R
9は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、b及びcはそれぞれ独立に1~8の整数を示す。同一分子中の複数のR
8及びbは同一でも異なっていてもよい。
【0065】
リン酸基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2,2’-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO(エチレンオキサイド)変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート及びリン酸ビニルが挙げられる。
【0066】
(b-2)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
(b-2)成分の含有量は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、接着剤組成物(但し、導電粒子は含まない)の全量を基準として、1.6質量%以下であってもよく、0.4~1.6質量%であってもよく、0.5~1.6質量%であってもよく、1.0~1.6質量%であってもよい。
【0068】
また、(b-2)成分の含有量は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部を基準として、0.5~1.9質量部であってもよく、1.2~1.9質量部であってもよい。
【0069】
更に、(b-2)成分の含有量は、貯蔵安定性と、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度とを両立する観点から、(b)成分の総量100質量部を基準として、0.8~3.4質量部であってもよく、2.1~3.4質量部であってもよい。
【0070】
本実施形態に係る接着剤組成物は、上述した(b-1)成分及び(b-2)成分に加えて、(b)ラジカル重合性化合物として、ラジカル重合性の官能基を有する任意の他の化合物を含んでいてもよい。上記他の化合物は、例えば後述する化合物のモノマー及びオリゴマーのいずれであってもよいし、両者を併用したものであってもよい。
【0071】
上記他の化合物としては、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1種又は2種以上の多官能の(メタ)アクリレート化合物が好ましい。このような(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート及びイソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルの2つのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート並びにビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルの2つのグリシジル基にエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
また、接着剤組成物は、流動性の調節等を目的として、(b)ラジカル重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、複数のグリシジル基を有するエポキシ樹脂のグリシジル基の一つを(メタ)アクリル酸と反応させることで得られるグリシジル基含有(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
更に、接着剤組成物は、橋架け率の向上等を目的として、(b)ラジカル重合性化合物として、アリル基、マレイミド基、ビニル基等のラジカル重合性の官能基を有する化合物を含んでいてもよい。
【0074】
また、接着剤組成物は、架橋密度と硬化収縮とのバランスをとり、接続抵抗をより低減させ、接続信頼性を向上させる観点から、(b)ラジカル重合性化合物として、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を導入した化合物を含んでいてもよい。この場合、上記化合物の重量平均分子量は、架橋密度と硬化収縮とのバランスに優れる観点から、3000以上であってよく、5000以上であってよく、1万以上であってよい。また、上記化合物の重量平均分子量は、他成分との相溶性に優れる観点から、100万以下であってよく、50万以下であってよく、25万以下であってよい。なお、上記化合物の重量平均分子量は、実施例に記載の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0075】
上記化合物は、ラジカル重合性を有する不飽和二重結合、又はラジカル重合性を有する不飽和二重結合とエポキシ樹脂とを有するエステルウレタン化合物であってもよい。この場合、回路接続材料の硬化物の弾性率や耐熱性を向上させることができる。
【0076】
上記他の化合物としては、(b-1)成分及び(b-2)成分と併用したときに、架橋密度と硬化収縮とのバランスをとり、接続抵抗をより低減させ、高温高湿条件下での耐剥離性及び接着強度を向上させる観点から、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基を有するエステルウレタン化合物であってもよい。この場合、回路接続材料の硬化物の弾性率や耐熱性を向上させることができる。
【0077】
(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、(b)成分の全質量を基準として、30~90質量%、又は30~80質量%であってよい。
【0078】
また、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、(b-1)成分及び(b-2)成分の総量100質量部に対して、50~90質量部、又は50~80質量部であってよい。
【0079】
接着剤組成物における(b)成分の総含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、20~80質量部であってもよく、30~70質量部であってもよく、35~65質量部であってもよい。
【0080】
(c)ラジカル重合開始剤は、過酸化物及びアゾ化合物等の化合物から任意に選択することができる。安定性、反応性及び相溶性の観点から、1分間半減期温度が90~175℃で、且つ分子量が180~1000の過酸化物が好ましい。「1分間半減期温度」とは、過酸化物の半減期が1分である温度をいう。「半減期」とは、所定の温度において化合物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間をいう。
【0081】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、3-メチルベンゾイルパーオキサイド、4-メチルベンゾイルパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート及びt-アミルパーオキシベンゾエートから選ばれる1以上の化合物である。
【0082】
ラジカル重合開始剤の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましく、2.5~10質量部であることがより好ましく、3~8質量部であることが更に好ましい。
【0083】
本実施形態に係る接着剤組成物は、シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤としては、下記式(4)で表される化合物を用いることができる。
【0084】
【化4】
式(4)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のアルコキシカルボニル基又はアリール基を示す。R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも1つはアルコキシ基である。R
4は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基、グリシジル基又はグリシドキシ基を示す。aは0~10の整数を示す。
【0085】
式(4)のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
シランカップリング剤の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよく、0.25~5質量部であってもよい。
【0087】
本実施形態に係る接着剤組成物は、充填材を含有することができる。充填材としては、絶縁性の有機又は無機微粒子が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ-アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等の金属酸化物微粒子の他、窒化物微粒子などが挙げられる。有機微粒子としては、例えば、シリコーン微粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン微粒子、アクリル-シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。これらの微粒子は、均一な構造を有していてもよいし、コア-シェル型構造を有していてもよい。
【0088】
充填材の含有量は、相対する電極間の電気的接続の維持と、接着剤組成物の流動性向上の観点から、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、5~30質量部であってもよく、7.5~20質量部であってもよい。
【0089】
更に、本実施形態の接着剤組成物は、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、重合禁止剤等のその他の添加剤を含有していてもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類、TEMPO(例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルフリーラジカル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルフリーラジカル)、ヒンダートアミン類が挙げられる。
【0090】
本実施形態に係る接着剤組成物は、常温(25℃)で液状である場合は、ペースト状接着剤として使用することができる。接着剤組成物が常温で固体である場合には、加熱して使用してもよいし、溶剤を加えることによりペースト化して使用してもよい。ペースト化のために使用する溶剤は、接着剤組成物(添加剤も含む。)との反応性を実質的に有さず、且つ接着剤組成物を充分に溶解可能なものであれば特に制限されない。
【0091】
本実施形態に係る接着剤組成物は、フィルム状に成形して、フィルム状接着剤として用いることもできる。フィルム状接着剤は、例えば、接着剤組成物に必要に応じて溶剤等を加えるなどして得られた溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性支持体上に塗布し、溶剤等を除去する方法により得ることができる。フィルム状接着剤は、取り扱い等の点から一層便利である。
【0092】
<回路接続材料>
本実施形態に係る回路接続材料は、上述した本実施形態に係る接着剤組成物を含む。
【0093】
本実施形態に係る回路接続材料は、導電性粒子を更に含有していてもよい。導電性粒子を含有する回路接続材料は、異方導電性接着剤として特に好適に用いることができる。
【0094】
導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Pd、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子、カーボン粒子などが挙げられる。また、導電性粒子は、ガラス、セラミック、プラスチック等の非導電性材料からなる核体粒子と、該核体粒子を被覆する金属、金属粒子、カーボン等の導電層と、を有する複合粒子であってもよい。金属粒子は、銅粒子及び該銅粒子を被覆する銀層を有する粒子であってもよい。複合粒子の核体粒子は、好ましくはプラスチック粒子である。
【0095】
上記プラスチック粒子を核体粒子とする複合粒子は、加熱及び加圧によって変形する変形性を有するので、回路部材同士を接着する際に、該回路部材が有する回路電極と導電性粒子との接触面積を増加させることができる。そのため、これらの複合粒子を導電性粒子として含有する回路接続材料によれば、接続信頼性の点でより一層優れる接続体が得られる。
【0096】
上記導電性粒子と、その表面の少なくとも一部を被覆する絶縁層又は絶縁性粒子とを有する絶縁被覆導電性粒子を、回路接続材料が含有していてもよい。絶縁層は、ハイブリダイゼーション等の方法により設けることができる。絶縁層又は絶縁性粒子は、高分子樹脂等の絶縁性材料から形成される。このような絶縁被覆導電性粒子を用いることで、隣接する導電性粒子同士による短絡が生じにくくなる。
【0097】
導電性粒子の平均粒径は、良好な分散性及び導電性を得る観点から、1~18μmであることが好ましい。
【0098】
導電性粒子の含有量は、導電性の確保及び回路電極間の短絡を生じにくくする観点から、回路接続材料の全体積を基準として、0.1~30体積%であってもよく、0.1~10体積%であってもよく、0.5~7.5体積%であってもよい。導電性粒子の含有量(体積%)は、硬化前の接着剤組成物を構成する各成分と導電性粒子の23℃での体積に基づいて決定される。各成分及び導電性粒子の体積は、比重を利用して質量を体積に換算することで求めることができる。体積を測定しようとする成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらすことができる適当な溶媒(水、アルコール等)をメスシリンダー等に入れ、そこへ測定対象の成分を導入して増加した体積をその成分の体積として求めることもできる。
【0099】
回路接続材料は、常温(25℃)で液状である場合は、ペースト状の回路接続材料として使用することができる。接着剤組成物が常温で固体である場合には、加熱して使用してもよいし、溶剤を加えることによりペースト化して使用してもよい。ペースト化のために使用する溶剤は、接着剤組成物(添加剤も含む。)との反応性を実質的に有さず、且つ接着剤組成物を充分に溶解可能なものであれば特に制限されない。
【0100】
本実施形態に係る回路接続材料は、フィルム状に成形して、フィルム状の回路接続材料として用いることもできる。フィルム状の回路接続材料は、例えば、接着剤組成物と導電性粒子との混合物に必要に応じて溶剤等を加えるなどして得られた塗工液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性支持体上に塗布し、溶剤等を除去する方法により得ることができる。
【0101】
図1は、本実施形態に係る接着剤組成物を含むフィルム状の回路接続材料の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示す積層フィルム100は、支持体8と、支持体8上に剥離可能に積層されたフィルム状の回路接続材料40とを備える。回路接続材料40は、絶縁性接着剤層5と、絶縁性接着剤層5中に分散した導電性粒子7とから構成される。絶縁性接着剤層5は、上述の接着剤組成物から構成される。この回路接続材料によれば、取り扱いが容易であり、被着体へ容易に設置することができ、接続作業を容易に行うことができる。回路接続材料は、2種以上の層からなる多層構成を有していてもよい。フィルム状の回路接続材料が導電性粒子を含有する場合、フィルム状の回路接続材料を異方導電性フィルムとして好適に用いることができる。
【0102】
本実施形態に係る接着剤組成物又は回路接続材料によれば、通常、加熱及び加圧を併用して被着体同士を接着させることができる。加熱温度は、好ましくは100~250℃である。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1~10MPaであることが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5~120秒間の範囲で行うことが好ましい。本実施形態に係る接着剤組成物又は回路接続材料によれば、例えば、140℃、3MPa程度の条件にて、5秒間の短時間の加熱及び加圧でも被着体同士を充分に接着させることが可能である。
【0103】
本実施形態に係る接着剤組成物又は回路接続材料は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、本実施形態に係る接着剤組成物又は回路接続材料は、異方導電接着剤の他、銀ペースト、銀フィルム等の回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等の半導体素子接着材料として使用することができる。
【0104】
以下、本実施形態に係る回路接続材料を異方導電性フィルムとして使用して、回路基板及び回路基板の主面上に形成された回路電極を有する回路部材同士を被着体として接続し、接続体を製造する一例について説明する。
【0105】
図2は、本実施形態に係る接着剤組成物の硬化物からなる接続部材を備える接続体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示す接続体1は、対向配置された第一の回路部材20及び第二の回路部材30を備えている。第一の回路部材20と第二の回路部材30との間には、これらを接着及び接続する接続部材10が設けられている。
【0106】
第一の回路部材20は、第一の回路基板21と、第一の回路基板21の主面21a上に形成された第一の回路電極22とを備える。第一の回路基板21の主面21a上には、絶縁層が形成されていてもよい。
【0107】
第二の回路部材30は、第二の回路基板31と、第二の回路基板31の主面31a上に形成された第二の回路電極32とを備える。第二の回路基板31の主面31a上にも、絶縁層が形成されていてもよい。
【0108】
第一の回路部材20及び第二の回路部材30は、電気的接続を必要とする回路電極を有するものであれば特に制限はない。第一の回路基板21及び第二の回路基板31としては、例えば、半導体、ガラス、セラミック等の無機材料の基板、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機材料の基板、ガラス/エポキシ等の無機物と有機物とを含む基板が挙げられる。第一の回路基板21がガラス基板であり、第二の回路基板31がフレキシブル基板(好ましくは、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム)であってもよい。
【0109】
接続される回路部材の具体例としては、液晶ディスプレイに用いられている、ITO(indium tin oxide)膜等の電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられる。これらは必要に応じて組み合わせて使用される。このように、本実施形態に係る回路接続材料によれば、プリント配線板及びポリイミドフィルム等の有機材料から形成された表面を有する部材の他、銅、アルミニウム等の金属、ITO、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ケイ素(SiO2)などの無機材料から形成された表面を有する部材のように、多種多様な表面状態を有する回路部材を接着するために用いることができる。
【0110】
例えば、一方の回路部材が、フィンガー電極、バスバー電極等の電極を有する太陽電池セルであり、他方の回路部材がタブ線であるとき、これらを接続して得られる接続体は、太陽電池セル、タブ線及びこれらを接着する接続部材(接着剤組成物の硬化物)を備える太陽電池モジュールである。
【0111】
接続部材10は、本実施形態に係る接着剤組成物の硬化物を含む。接続部材10は、絶縁層11及び絶縁層11中に分散した導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、対向する第一の回路電極22と第二の回路電極32との間のみならず、主面21a、31aの間にも配置されている。第一の回路電極22及び第二の回路電極32は、導電性粒子7を介して電気的に接続されているため、第一の回路電極22及び第二の回路電極32間の接続抵抗が充分に低減される。したがって、第一の回路電極22及び第二の回路電極32間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を充分に発揮することができる。接続部材が導電性粒子を含有していない場合には、第一の回路電極22と第二の回路電極32とが接触することで、電気的に接続される。
【0112】
接続部材10が本実施形態に係る接着剤組成物の硬化物によって形成されていることから、第一の回路部材20及び第二の回路部材30に対する接続部材10の接着強度は充分に高く、接続部材10は耐剥離性にも優れている。また、信頼性試験(高温高湿試験)後においても、剥離が発生しにくく、接着強度の低下及び接続抵抗の増大を充分に抑制することができる。
【0113】
接続体1は、例えば、回路電極を有し対向配置された一対の回路部材を、フィルム状の回路接続材料を間に挟んで配置する工程と、一対の回路部材及び回路接続材料を、回路接続材料の厚み方向に加圧しながら加熱して硬化することにより、一対の回路部材を接着剤組成物の硬化物を介して接着する工程(本接続工程)と、を備える方法により、製造することができる。
【0114】
図3は、本実施形態に係る回路接続材料により接続体を製造する一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
図3の(a)に示されるように、フィルム状の回路接続材料40が、第一の回路部材20の第一の回路電極22側の主面上に載せられる。フィルム状の回路接続材料40が上述の支持体上に設けられている場合、フィルム状の回路接続材料40が第一の回路部材20側に位置する向きで、フィルム状の回路接続材料及び支持体の積層体が回路部材に載せられる。フィルム状の回路接続材料40は、フィルム状であることから取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間にフィルム状の回路接続材料40を容易に介在させることができ、第一の回路部材20と第二の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
【0115】
フィルム状の回路接続材料40は、フィルム状に形成された上述の回路接続材料であり、導電性粒子7及び絶縁性接着剤層5を有する。回路接続材料は、導電性粒子を含有しない場合も、回路電極同士を直接接続させることにより、電気的に接続するための回路接続材料として使用できる。導電性粒子を含有しない回路接続材料は、NCF(Non-Conductive-FILM)又はNCP(Non-Conductive-Paste)と呼ばれることもある。回路接続材料が導電性粒子を有する場合、これを用いた回路接続材料は、ACF(Anisotropic Conductive FILM)又はACP(Anisotropic Conductive Paste)と呼ばれることもある。
【0116】
フィルム状の回路接続材料40の厚さは、10~50μmであることが好ましい。フィルム状の回路接続材料40の厚さが10μm以上であれば、第一の回路電極22及び第二の回路電極32間が、接着剤により充填されやすくなる傾向がある。フィルム状の回路接続材料の厚さが50μm以下であれば、第一の回路電極22及び第二の回路電極32間の接着剤組成物を充分に排除しきることができ、第一の回路電極22及び第二の回路電極32間の導通を容易に確保することができる。
【0117】
フィルム状の回路接続材料40の厚み方向に、
図3の(a)に示されるように圧力A、Bを加えることにより、フィルム状の回路接続材料40が第一の回路部材20に仮接続される(
図3の(b)を参照。)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。ただし、加熱温度はフィルム状の回路接続材料40中の接着剤組成物が硬化しない温度、すなわちラジカル重合開始剤がラジカルを急激に発生する温度よりも充分に低い温度に設定される。
【0118】
続いて、
図3の(c)に示されるように、第二の回路部材30を、第二の回路電極が第一の回路部材20側に位置する向きでフィルム状の回路接続材料40上に載せる。フィルム状の回路接続材料40が支持体上に設けられている場合は、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状の回路接続材料40上に載せる。
【0119】
その後、フィルム状の回路接続材料40を、その厚み方向に圧力A、Bを加えながら、加熱する。このときの加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを充分に発生する温度に設定される。これにより、ラジカル重合開始剤からラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。本接続により、
図2に示す接続体が得られる。フィルム状の回路接続材料40を加熱することにより、第一の回路電極22と第二の回路電極32との間の距離を充分に小さくした状態で絶縁性接着剤が硬化して絶縁層11を形成する。その結果、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが、絶縁層11を含む接続部材10を介して強固に接続される。
【0120】
本接続は、加熱温度が100~250℃、圧力が0.1~10MPa、加圧時間が0.5~120秒の条件で行われることが好ましい。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。本実施形態に係る回路接続材料によれば、140℃以下のような低温条件でも、充分な信頼性を有する接続体を得ることができる。本接続後、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【実施例0121】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0122】
<エステルウレタン化合物EU1の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサー、真空発生装置及び窒素ガス導入管が備え付けられたヒーター付きステンレス製オートクレーブに、イソフタル酸48質量部及びネオペンチルグリコール37質量部を投入し、更に、触媒としてのテトラブトキシチタネート0.02質量部を投入した。次いで、窒素気流下220℃まで昇温し、そのまま8時間攪拌した。その後、大気圧(760mmHg)まで減圧し、室温まで冷却した。これにより、白色の沈殿物を析出させた。次いで、白色の沈殿物を取り出し、水洗した後、真空乾燥することでポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールを十分に乾燥した後、MEK(メチルエチルケトン)に溶解し、攪拌機、滴下漏斗、還流冷却機及び窒素ガス導入管を取り付けた四つ口フラスコに投入した。また、触媒としてジブチル錫ラウレートをポリエステルポリオール100質量部に対して0.05質量部となる量投入し、ポリエステルポリオール100質量部に対して50質量部となる量の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートをMEKに溶解して滴下漏斗で投入し、80℃で4時間攪拌することで目的とするエステルウレタン化合物EU1を得た。
【0123】
<ウレタンアクリレート化合物UA1の合成>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を装着した2リットルの四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(アルドリッチ社製、数平均分子量Mn=2000)4000質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート238質量部と、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.49質量部と、スズ系触媒4.9質量部とを仕込んで反応液を調製した。70℃に加熱した反応液に対して、イソホロンジイソシアネート(IPDI)666質量部を3時間かけて均一に滴下し、反応させた。滴下完了後、15時間反応を継続し、電位差自動滴定装置(商品名AT-510、京都電子工業株式会社製)にてNCO含有量が0.2質量%となったことを確認した時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート化合物UA1を得た。GPCによる分析の結果、ウレタンアクリレート化合物UA1の重量平均分子量は8500(標準ポリスチレン換算値)であった。なお、GPCによる分析は、以下の表1に示す条件にて行った。
【0124】
【0125】
<導電性粒子の作製>
ポリスチレン粒子の表面に、厚さ0.2μmのニッケル層を形成し、更にこのニッケル層の外側に、厚さ0.04μmの金層を形成させた。こうして平均粒径4μmの導電性粒子を作製した。
【0126】
<回路接続材料の作製>
表2に示す原料を、表2に示す質量比で混合して接着剤組成物を得た。そこに上記導電性粒子を1.5体積%の割合で分散させて、フィルム状の回路接続材料を形成するための塗工液を得た。この塗工液を厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した。塗膜を70℃で10分間熱風乾燥して、厚み18μmのフィルム状の回路接続材料を形成させた。
【0127】
表2に示す各数値は、固形分の質量部を示す。また、表2に記載した各原料の具体的物質は、以下に示すとおりである。
・ポリウレタン樹脂:上述のとおり合成したエステルウレタン化合物EU1、
・フェノキシ樹脂:PKHC(ユニオンカーバイド社製、商品名:平均分子量45000)40gをメチルエチルケトン60gに溶解して調製した40質量%の溶液、
・ウレタンアクリレート化合物:上述のとおり合成したウレタンアクリレート化合物UA1、
・ラジカル重合性化合物A:メタクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、
・ラジカル重合性化合物B:メタクリル酸2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル、
・ラジカル重合性化合物C:単官能アクリレート化合物(商品名アリックスCHA、東亜合成株式会社製:シクロヘキシルアクリレート)、
・リン酸エステル:2-メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(商品名ライトエステルP-2M、共栄社化学株式会社製)、
・シランカップリング剤:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM-503、信越化学工業株式会社製)、
・過酸化物:ラウロイルパーオキサイド(商品名パーロイルL、日油株式会社製:分子量398.6)、
・無機微粒子:シリカ粒子(商品名R104、日本アエロジル株式会社製)10gをトルエン45g及び酢酸エチル45gの混合溶媒に分散させて調製した10質量%の分散液。
【0128】
<接続体の作製>
上記フィルム状の回路接続材料を用い、ライン幅75μm、ピッチ150μm及び厚さ18μmの銅回路を2200本有するフレキシブル回路板(FPC)と、ガラス基板及びガラス基板上に形成された厚さ0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を有するITO基板(厚さ1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを接続した。接続は、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用い、140℃、3MPaで5秒間の加熱及び加圧により行った。これにより、幅1.5mmにわたりFPCとITO基板とが回路接続材料の硬化物により接続された接続体を作製した。
【0129】
<接着強度の測定>
得られた接続体の接着強度を、JIS-Z0237に準じて90度剥離法で測定した。接着強度の測定装置として、テンシロンUTM-4(東洋ボールドウィン株式会社製、商品名、剥離強度50mm/min、25℃)を使用した。なお、接着強度は、85℃、85%RHの恒温恒湿槽中に250時間保持後の接続体について測定した。
【0130】
<耐剥離性の評価>
上記と同様にして作製した、85℃、85%RHの恒温恒湿槽中に250時間保持後の接続体について、ガラス基板側から、顕微鏡(株式会社ニコン製、ECLIPSE L200)を用いてガラス基板の電極部分と回路接続材料の硬化物との界面を観察し、剥離状態を5段階で評価した。回路接続材料の硬化物全体の面積のうち、ガラス基板から剥離している割合を求め、剥離部分の割合が全体の5%未満のものを「5」、剥離部分の割合が全体の5%以上10%未満のものを「4」、剥離部分の割合が全体の10%以上30%未満のものを「3」、剥離部分の割合が全体の30%以上50%未満のものを「2」、剥離部分の割合が全体の50%以上のものを「1」とした。
【0131】
<貯蔵安定性(保存処理後)の評価>
40℃で3日間処理した上記フィルム状の回路接続材料を用い、上記と同様の方法により接続体を作製し、接着強度の測定及び耐剥離性の評価を上記の方法により行った。
【0132】
1…接続体、5…絶縁性接着剤層、7…導電性粒子、8…支持体、10…接続部材、11…絶縁層、20…第一の回路部材、21…第一の回路基板、21a…主面、22…第一の回路電極、30…第二の回路部材、31…第二の回路基板、31a…主面、32…第二の回路電極、40…フィルム状の回路接続材料、100…積層フィルム。