(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172604
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】組成物、導電性膜、コンデンサ及び電池
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20231129BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20231129BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20231129BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20231129BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231129BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20231129BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20231129BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20231129BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231129BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20231129BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20231129BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20231129BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K5/13
C08L1/00
C08L79/00 A
C08L71/02
H01B1/20 A
H01B1/12 G
H01B5/14 Z
H01M4/66 A
H01G9/15
H01G9/028 G
H01G11/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084527
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 真吾
【テーマコード(参考)】
4J002
5E078
5G301
5G307
5H017
【Fターム(参考)】
4J002AB02X
4J002CH02X
4J002CM01W
4J002EJ026
4J002EV237
4J002FD337
4J002GQ02
4J002HA03
5E078AB02
5E078DA11
5G301DA28
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
5G307GA05
5G307GB02
5H017CC01
5H017DD06
5H017EE10
5H017HH01
5H017HH06
(57)【要約】
【課題】単なる増粘剤の添加による効果を超えた優れた粘度の向上を得ることができる組成物、導電性膜、コンデンサ及び電池を提供する。
【解決手段】(a)導電性高分子、
(b)フェノール化合物、
(c)増粘剤、及び
(d)溶剤、を含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性高分子、
(b)フェノール化合物、
(c)増粘剤、及び
(d)溶剤、を含む組成物。
【請求項2】
前記成分(a)が、置換又は無置換のポリアニリンにプロトン供与体がドープしたポリアニリン複合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロトン供与体が、下記式(I)で示されるプロトン供与体である請求項2に記載の組成物。
M(XARn)m (I)
(式(I)中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。
Xは、酸性基である。Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基である。
Rは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-COR1、-COOR1、-CO(COR1)、又は―CO(COOR1)で表される置換基である。
R1は、置換基を含んでもよい炭素数が4以上の炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、-(R2O)x-R3で表される基、又は-(OSiR3
2)x-OR3(R2はアルキレン基、R3はそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい炭化水素基であり、xは1以上の整数である)で表される基である。
nは2以上の整数である。
mはMの価数である。)
【請求項4】
前記成分(c)の含有量が、組成物全体100質量%に対して、0.1質量%以上である請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記成分(a)の含有量と、前記成分(c)の含有量と、の質量比率が、1:0.01~1:2である請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記成分(c)が、ポリエーテル系化合物、又はセルロース系化合物である請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
粘度が2~1000mPa・sである請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の組成物を用いてなる導電性膜。
【請求項9】
請求項8に記載の導電性膜を含むコンデンサ。
【請求項10】
請求項8に記載の導電性膜を含む電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、導電性膜、コンデンサ及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子は、コンデンサの固体電解質、電磁波吸収コート剤、帯電防止コート剤、電解めっき下地材、回路配線用途等の導電インク等として使用される。
導電性高分子の一種であるポリアニリンは,その電気的な特性に加え、安価なアニリンから比較的簡便に合成でき、かつ導電性を示す状態で酸素等に対して優れた安定性を示すという利点及び特性を有する。
【0003】
特許文献1に記載の方法によって簡便に、かつ高導電のポリアニリンを得ることが出来る。
導電性高分子は一般的に不溶不融であり、成型が困難である。近年、水分散型又は有機溶剤可溶型の導電性高分子が開発され、成型、加工がしやすくなり、塗布及び印刷等による導電性高分子膜を形成し、様々な機能性を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開第2012/102017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、単なる増粘剤の添加による効果を超えた優れた粘度の向上を得ることができる組成物、導電性膜、コンデンサ及び電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
塗布法、印刷法により適した粘度があり、通常、粘度を調整するためには導電性高分子の濃度や溶剤組成を変更する必要がある。この場合、導電性高分子濃度を増加すると粘度は高くなるが、材料としてはコストが高くなり、実用的ではなく、濃度を減少させると粘度は低くなるが、非常に薄い塗膜となり、耐久性が低く、高抵抗の膜となり、これも実用的ではない。
また、粘度増加のために多量のバインダーを配合することもあるが、この場合得られる塗膜の導電性が著しく低下する。
本発明者らは、粘度を広範囲にコントロールし、かつ実用的な範囲で導電性を保った導電性膜を得ることができる組成物を見出し、発明に至った。
【0007】
本発明によれば、以下の組成物等が提供される。
1.(a)導電性高分子、
(b)フェノール化合物、
(c)増粘剤、及び
(d)溶剤、を含む組成物。
2.前記成分(a)が、置換又は無置換のポリアニリンにプロトン供与体がドープしたポリアニリン複合体である1に記載の組成物。
3.前記プロトン供与体が、下記式(I)で示されるプロトン供与体である2に記載の組成物。
M(XARn)m (I)
(式(I)中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。
Xは、酸性基である。Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基である。
Rは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-COR1、-COOR1、-CO(COR1)、又は―CO(COOR1)で表される置換基である。
R1は、置換基を含んでもよい炭素数が4以上の炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、-(R2O)x-R3で表される基、又は-(OSiR3
2)x-OR3(R2はアルキレン基、R3はそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい炭化水素基であり、xは1以上の整数である)で表される基である。
nは2以上の整数である。
mはMの価数である。)
4.前記成分(c)の含有量が、組成物全体100質量%に対して、0.1質量%以上である1~3のいずれかに記載の組成物。
5.前記成分(a)の含有量と、前記成分(c)の含有量と、の質量比率が、1:0.01~1:2である1~4のいずれかに記載の組成物。
6.前記成分(c)が、ポリエーテル系化合物、又はセルロース系化合物である1~5のいずれかに記載の組成物。
7.粘度が2~1000mPa・sである1~6のいずれかに記載の組成物。
8.1~7のいずれかに記載の組成物を用いてなる導電性膜。
9.8に記載の導電性膜を含むコンデンサ。
10.8に記載の導電性膜を含む電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単なる増粘剤の添加による効果を超えた優れた粘度の向上を得ることができる組成物、導電性膜、コンデンサ及び電池が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1で用いた、インジウム錫酸化物(ITO)電極が表面に形成されたガラス基板の上面を示す図である。
【
図2】実施例1で作製した、導電性膜を削ってITO電極の端子を表面に露出させたガラス基板の上面を示す図である。
【
図3】成分(b)及び成分(c)の相乗効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[組成物]
本発明の一態様に係る組成物は、
(a)導電性高分子(以下、「成分(a)」ともいう。)、
(b)フェノール化合物(以下、「成分(b)」ともいう。)、
(c)増粘剤(以下、「成分(c)」ともいう。)、及び
(d)溶剤(以下、「成分(d)」ともいう。)、を含む。
【0011】
これにより、単なる増粘剤の添加による効果を超えた優れた粘度の向上を得ることができる。
また、任意の効果として、得られる導電性膜の電導度(例えば、0.5S/cm以上)と、組成物の粘度とを両立することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る組成物の粘度は、塗工性の観点から、例えば1~500mPa・s、2~500mPa・s、3~400mPa・s、5~300mPa・s、1~1000mPa・s、2~1000mPa・s、3~700mPa・s、10~500mPa・s、又は16~200mPa・sである。
組成物の粘度は、音叉型振動式粘度計SV-1H(株式会社エー・アンド・デイ製)により測定する。
【0013】
以下、各成分について説明する。
【0014】
(成分(a):導電性高分子)
導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは置換基を有してもよいし有していなくてもよい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
導電性高分子としてはポリアニリンが好ましい。
ポリアニリンは、好ましくは重量平均分子量が10,000以上であり、より好ましくは20,000以上であり、さらに好ましくは30,000以上1,000,000以下であり、よりさらに好ましくは40,000以上1,000,000以下であり、特に好ましくは52,000以上1,000,000以下である。
【0016】
ポリアニリンの重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定する。
【0017】
ポリアニリンは置換基を有しても有さなくてもよいが、汎用性及び経済性の観点から、好ましくは無置換のポリアニリンである。
置換基を有する場合の置換基としては、例えばメチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐の炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基(-CF3基)等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0018】
また、導電性の観点から、置換又は無置換のポリアニリンにプロトン供与体がドープしたポリアニリン複合体であると好ましい。
プロトン供与体がポリアニリンにドープしていることは、紫外・可視・近赤外分光法やX線光電子分光法によって確認することができ、当該プロトン供与体は、ポリアニリンにキャリアを発生させるに十分な酸性を有していれば、特に化学構造上の制限なく使用できる。
当該ポリアニリン複合体を用いることにより、溶剤への溶解性が向上するため好ましい。
【0019】
プロトン供与体としては、例えばブレンステッド酸、又はそれらの塩が挙げられ、好ましくは有機酸、又はそれらの塩(例えばスルホン酸又はスルホン酸塩)であり、さらに好ましくは、溶解性の観点から、下記式(I)で示されるプロトン供与体である。
M(XARn)m (I)
(式(I)中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。
Xは、酸性基である。Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基である。
Rは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-COR1、-COOR1、-CO(COR1)、又は―CO(COOR1)で表される置換基ある。
R1は、置換基を含んでもよい炭素数が4以上の炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、-(R2O)x-R3で表される基、又は-(OSiR3
2)x-OR3(R2はアルキレン基、R3はそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい炭化水素基であり、xは1以上の整数である)で表される基である。
nは2以上の整数である。
mはMの価数である。)
【0020】
上記式(I)において、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。
上記有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基等が挙げられる。上記無機遊離基としては、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、セシウム、アンモニウム等が挙げられる。
【0021】
Xは、酸性基であり、例えば-SO3
-、-PO3
2-、-PO4(OH)-、-OPO3
2-、-OPO2(OH)-、-COO-で表される基等が挙げられ、-SO3
-で表される基が好ましい。
【0022】
Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基である。
当該炭化水素基としては、例えば炭素数1~24(好ましくは1~8、より好ましくは1~4)の直鎖若しくは分岐状のアルキル基(例えば、エチレン基);アルケニル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、メンチル等の置換基を含んでいてもよいシクロアルキル基;ビシクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル等の縮合してもよいジシクロアルキル基若しくはポリシクロアルキル基;フェニル、トシル、チオフェニル、ピローリニル、ピリジニル、フラニル等の置換基を含んでいてもよい芳香環を含むアリール基;ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、インダニル、キノリニル、インドニル等の縮合していてもよいジアリール基若しくはポリアリール基;アルキルアリール基等であって、対応する(n+1)価の基が挙げられる。
【0023】
Rは、それぞれ独立して、-R1、-OR1、-COR1、-COOR1、-CO(COR1)、又は―CO(COOR1)で表される置換基ある。
R1は、置換基(例えば、炭素数1~4のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基))を含んでもよい炭素数が4以上(例えば、4~8、又は4~12)の炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、-(R2O)x-R3で表される基、又は-(OSiR3
2)x-OR3(R2はアルキレン基、R3はそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい炭化水素基であり、xは1以上の整数である)で表される基である。
R1の炭化水素基の例としては、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基等が挙げられる。
nは2以上(例えば、2~4、又は2~3)の整数である。
mはMの価数である。
【0024】
式(I)で示されるプロトン供与体は、好ましくは、ジアルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルナフタレンスルフォン酸、スルホフタル酸エステル、又は下記式(II)で表されるプロトン供与体(有機プロトン酸又はその塩)である。
M(XCR4(CR5
2COOR6)COOR7)p (II)
【0025】
上記式(II)において、M及びXは、式(I)と同様である。
pはMの価数である。
【0026】
R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基又はR8
3Si-で表される基(ここで、R8は、炭化水素基であり、3つのR8は同一又は異なっていてもよい)である。
R4及びR5の炭化水素基としては、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基;芳香環を含むアリール基;アルキルアリール基等が挙げられる。
R8の炭化水素基は、R4及びR5の炭化水素基と同様である。
【0027】
R6及びR7は、それぞれ独立して炭化水素基又は-(R9O)q-R10で表される基[ここで、R9は炭化水素基又はシリレン基であり、R10は水素原子、炭化水素基又はR11
3Si-で表される基(R11は、炭化水素基であり、3つのR11は同一又は異なっていてもよい)であり、qは1以上の整数である]である。
R6及びR7の炭化水素基としては、炭素数1~24、好ましくは炭素数4以上(例えば、4~10、又は4~14)の直鎖若しくは分岐状のアルキル基;芳香環を含むアリール基;アルキルアリール基等が挙げられる。
R6及びR7の炭化水素基の具体例としては、直鎖又は分岐状のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基(例えば、2-エチルヘキシル)、デシル基等が挙げられる。
【0028】
R9の炭化水素基としては、炭素数1~24の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基;芳香環を含むアリーレン基;アルキルアリーレン基;アリールアルキレン基等である。
また、R10及びR11の炭化水素基としては、R4及びR5の場合と同様である。qは、1~10の整数であることが好ましい。
【0029】
R
6及びR
7が-(R
9O)
q-R
10で表される基である場合の式(II)で表されるプロトン供与体の酸の具体例としては、下記式で表される酸が挙げられる。
【化1】
(式中、Xは、-SO
3で表される基等である。)
【0030】
上記式(II)で表されるプロトン供与体(有機プロトン酸又はその塩)は、好ましくは下記式(III)で示されるスルホコハク酸誘導体である。
M(O3SCH(CH2COOR12)COOR13)m (III)
上記式(III)において、M及びmは、上記式(I)と同様である。
【0031】
R12及びR13は、それぞれ独立して炭化水素基又は-(R14O)r-R15で表される基[ここで、R14は炭化水素基又はシリレン基であり、R15は水素原子、炭化水素基又はR16
3Si-で表される基(ここで、R16は炭化水素基であり、3つのR16は同一又は異なっていてもよい)であり、rは1以上の整数である]である。
【0032】
R12及びR13の炭化水素基は、R6及びR7の炭化水素基と同様である。
R14の炭化水素基は、R9の炭化水素基と同様である。また、R15及びR16の炭化水素基は、R4及びR5の炭化水素基と同様である。
rは、好ましくは1~10の整数である。
【0033】
R12及びR13が、-(R14O)r-R15で表される基である場合の式(III)で示されるスルホコハク酸誘導体の具体例は、R6及びR7が-(R9O)n-R10で表される基である場合の式(II)で表されるプロトン供与体と同様である。
R12及びR13の炭化水素基は、R6及びR7の炭化水素基と同様であり、ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、デシル基等が好ましい。
【0034】
ポリアニリンに対するプロトン供与体のドープ率は、好ましくは0.30以上0.65以下であり、より好ましくは0.32以上0.60以下であり、さらに好ましくは0.33以上0.57以下であり、特に好ましくは0.34以上0.55以下である。ドープ率が0.30以上であれば、ポリアニリン複合体の有機溶剤への溶解性が十分高い。
ドープ率は(ポリアニリンにドープしているプロトン供与体のモル数)/(ポリアニリンのモノマーユニットのモル数)で定義される。例えば無置換ポリアニリンとプロトン供与体を含むポリアニリン複合体のドープ率が0.5であることは、ポリアニリンのモノマーユニット分子2個に対し、プロトン供与体が1個ドープしていることを意味する。
ドープ率は、ポリアニリン複合体中のプロトン供与体とポリアニリンのモノマーユニットのモル数が測定できれば算出可能である。例えば、プロトン供与体が有機スルホン酸の場合、プロトン供与体由来の硫黄原子のモル数と、ポリアニリンのモノマーユニット由来の窒素原子のモル数を、有機元素分析法により定量し、これらの値の比を取ることでドープ率を算出できる。
【0035】
ポリアニリン複合体は、好ましくは無置換ポリアニリンとプロトン供与体であるスルホン酸とを含み、下記式(5)を満たす。
0.32≦S5/N5≦0.60 (5)
(式中、S5はポリアニリン複合体に含まれる硫黄原子のモル数の合計であり、N5はポリアニリン複合体に含まれる窒素原子のモル数の合計である。上記窒素原子及び硫黄原子のモル数は、有機元素分析法により測定した値である。)
【0036】
成分(a)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
成分(a)の含有量は、組成物全体100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましく、2~5質量%が特に好ましい。
【0038】
上述の成分(a)を製造する方法は格別限定されないが、例えば、以下に説明する成分(a)の製造方法により製造することができる。
【0039】
例えば、上述のプロトン供与体、上述のポリアニリンに対応するアニリン、必要に応じて界面活性剤(例えば非イオン乳化剤)を水不混和性有機溶剤(例えば炭化水素系溶剤(好ましくはトルエン、キシレン)に溶解させ、そこに酸性水溶液(例えば、リン酸水溶液)を加え、水不混和性有機溶剤と水の2つの液相を有する反応液を撹拌し、重合開始剤(例えば過硫酸アンモニウム)を投入し、重合を行う。
重合後、静置により水不混和性有機溶剤相を分離することで、ポリアニリン複合体水不混和性有機溶剤溶液を得ることができる。
この溶液をエバポレーターに移し、揮発分を蒸発留去し、ポリアニリン複合体(プロトネーションされたポリアニリン)を得ることができる。
【0040】
(成分(b):フェノール性化合物)
本発明の一態様に係る組成物は、フェノール性化合物を用いることにより、得られる導電性膜の導電性を高めることができる。
フェノール性化合物は特に限定されず、ArOH(ここで、Arはアリール基又は置換アリール基である)で示される化合物である。具体的には、フェノール、o-,m-又はp-クレゾール、o-,m-又はp-エチルフェノール、o-,m-又はp-プロピルフェノール、o-,m-又はp-ブチルフェノール、o-,m-又はp-クロロフェノール、o-,m-又はp-tert-アミルフェノール、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフタレン等の置換フェノール類;カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール性化合物;及びフェノール樹脂、ポリフェノール、ポリ(ヒドロキシスチレン)等の高分子化合物等を例示することができる。
【0041】
また、下記式(3)で表されるフェノール性化合物を用いることができる。
【化2】
(式(3)中、n1は1~5(好ましくは1~3)の整数である。
R
21は、それぞれ炭素数1~10(好ましくは2~8、より好ましくは3~7)のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基である。)
【0042】
上記のR21について、以下に説明する。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-アミル等が挙げられる。
アルケニル基としては、上述したアルキル基の分子内に不飽和結合を有する置換基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
アルキルアリール基、及びアリールアルキル基としては、上述したアルキル基とアリール基を組み合わせて得られる置換基等が挙げられる。
これらの基のうち、R21としては、メチル又はエチル基が好ましい。
【0043】
また、下記式(3’)で表されるフェノール性化合物を用いることができる。
【化3】
(式(3’)中、R
22は炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基である。)
式(3’)におけるR
22の具体例は上記式(3)におけるR
21と同様である。
【0044】
成分(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
成分(b)の含有量は、組成物全体100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~45質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましく、20~40質量%が特に好ましい。
【0046】
成分(a)の含有量と、成分(b)の含有量と、の質量比率(「成分(a)の含有量」:「成分(b)の含有量」)は、導電性の観点から、1:1~1:20でもよく、1:3~1:15であることが好ましく、1:5~1:10がより好ましい。
【0047】
(成分(c):増粘剤)
成分(c)は、ポリエーテル系化合物、又はセルロース系化合物、であることが好ましい。
【0048】
ポリエーテル系化合物としては、ポリエチレンオキサイド(EO)-ポリプロピレンオキサイド(PO)共重合体(例えば、EP1550H(明成化学工業株式会社製))等が挙げられる。
【0049】
セルロース系化合物としては、例えば、セルロースエーテル(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピチルメチルセルロース等を例示できる。これらの中でも、増粘効果の高さ及び入手し易さの観点から、セルロースエーテルを好適に用いることができる。セルロースエーテルの中ではエチルセルロースを好適に用いることができる。
【0050】
また、セルロース系化合物としては、EC-N300(Ashland(アシュランド)社製)、N200(Ashland(アシュランド)社製)、Klucel G(Ashland(アシュランド)社製)等が挙げられる。
【0051】
成分(c)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
成分(c)の含有量は、組成物全体100質量%に対して、例えば0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、0.2~10質量%、0.3~10質量%、0.5~10質量%、1.5~5質量%、又は2~3質量%である。
【0053】
成分(a)の含有量と、成分(c)の含有量と、の質量比率(「成分(a)の含有量」:「成分(c)の含有量」)は、導電性の観点から、例えば、1:0.01~1:3、1:0.035~1:2、1:0.1~1:1.5、1:0.1~1:1、1:0.1~1:0.9、1:0.1~1:0.7、1:0.2~1:0.7、又は1:0.3~1:0.7である。
【0054】
(成分(d):溶剤)
本発明の一態様に係る組成物は、溶剤を含む。溶剤は、成分(a)を溶解するものであれば特に制限はないが、有機溶剤が好ましい。有機溶剤は、水溶性有機溶剤でもよいし、実質的に水に混和しない有機溶剤(水不混和性有機溶剤)でもよい。
【0055】
水溶性有機溶剤は、プロトン性極性溶剤でも非プロトン性極性溶剤でもよく、例えばイソプロピルアルコール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、ベンジルアルコール、アルコキシアルコール(例えば1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール)、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル等のエーテル類;Nメチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
水不混和性有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、IPソルベント1620等の炭化水素系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等の含ハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル、酪酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤;メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類溶剤;シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類溶剤等が挙げられる。また、炭化水素系溶剤として1種又は2種以上のイソパラフィンを含むイソパラフィン系溶剤を用いてもよい。
【0056】
これらのうち、成分(a)の溶解性に優れる点でトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、トリクロロエタン及び酢酸エチルが好ましい。
尚、成分(a)のうちポリアニリン複合体は、溶剤がイソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、ベンジルアルコール、アルコキシアルコール等のアルコール類であっても溶解することができる。アルコールは、トルエン等の芳香族に比べて環境負荷低減の観点から好ましい。
【0057】
溶剤として有機溶剤を用いる場合、水不混和性有機溶剤と水溶性有機溶剤を99~1:1~99(質量比)で混合した混合有機溶剤を用いることにより、保存時のゲル等の発生を防止でき、長期保存できることから好ましい。
上記混合有機溶剤の水不混和性有機溶剤として低極性有機溶剤が使用でき、低極性有機溶剤は、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶剤;クロロホルム等の含ハロゲン系溶剤;イソパラフィン系溶剤が好ましい。
混合有機溶剤の水溶性有機溶剤としては、高極性有機溶剤が使用でき、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル等のエーテル類が好ましい。
混合有機溶剤は水不混和性有機溶剤を1種又は2種以上含んでもよく、水溶性有機溶剤を1種又は2種以上含んでもよい。
【0058】
成分(d)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0059】
成分(d)の含有量は、組成物全体100質量%に対して、50~99質量%、55~99質量%、又は70~99質量%でもよい。
【0060】
成分(d)が3-メトキシ-3-メチルブタノール、エチレングリコール及びIPソルベント1620を含む場合、成分(b)がp-tert-アミルフェノールであり、成分(c)がEC-N300であることが好ましく、それに加えて、さらに「成分(a)の含有量」:「成分(b)の含有量」が1:3~1:10であることが好ましく、1:5~1:8が特に好ましい。また、「成分(a)の含有量」:「成分(c)の含有量」が1:0.02~1:2であることが好ましく、1:0.1~1:0.3が特に好ましい。
【0061】
成分(d)がトルエン及びイソプロピルアルコールを含む場合、成分(b)がm-クレゾールであり、成分(c)がEC-N300であることが好ましく、それに加えて、さらに「成分(a)の含有量」:「成分(b)の含有量」が1:3~1:10であることが好ましく、1:7~1:9が特に好ましい。また、「成分(a)の含有量」:「成分(c)の含有量」が1:0.02~1:5であることが好ましく、1:0.1~1:2が特に好ましい。
【0062】
(成分(e):酸性物質及び/又は酸性物質の塩)
本発明の一態様に係る組成物は、さらに、上述のプロトン供与体と異なる酸種を添加してよく、さらに、酸性物質及び酸性物質の塩からなる群から選択される1以上(以下、「成分(e)」ともいう。)を含んでもよい。当該成分は、通常、耐熱安定化剤として用い、導電性膜の耐熱性をさらに向上することができる。
【0063】
酸性物質は、有機化合物の酸である有機酸、無機化合物の酸である無機酸のいずれでもよく、好ましくは有機酸である。酸性物質としては、好ましくはスルホン酸基を1つ以上含む有機酸である。
【0064】
上記スルホン酸基を有する有機酸は、好ましくはスルホン酸基を1つ以上有する、環状、鎖状又は分岐のアルキルスルホン酸、置換又は無置換の芳香族スルホン酸、又はポリスルホン酸である。
上記アルキルスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸が挙げられる。ここで、アルキル基は好ましくは炭素数が1~18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
上記芳香族スルホン酸としては、炭素数6~20のものが挙げられ、例えば、ベンゼン環を有するスルホン酸、ナフタレン骨格を有するスルホン酸、アントラセン骨格を有するスルホン酸が挙げられる。また、上記芳香族スルホン酸としては、置換又は無置換のベンゼンスルホン酸、置換又は無置換のナフタレンスルホン酸及び置換又は無置換のアントラセンスルホン酸が挙げられる。
【0065】
置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~20のもの)、アルコキシ基(例えば炭素数1~20のもの)、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アシル基からなる群から選択される置換基であり、1以上置換していてもよい。
【0066】
具体的に、芳香族スルホン酸として、下記式(4)又は(5)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
(式(4)中、lは1以上であり、mは0以上5以下の整数であり、nは0以上5以下の整数である。m又はnの一方が0の場合、他方は1以上である。)
【化5】
(式(5)中、qは1以上であり、pは0以上7以下の整数であり、Rは、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、カルボキシ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基である。)
【0067】
式(4)のlは1~3が好ましい。式(4)のmは1~3が好ましい。式(4)のnは0~3が好ましい。
式(5)のqは1~3が好ましい。式(5)のpは0~3が好ましい。式(5)のRは炭素数1~20のアルキル基、カルボキシ基、水酸基が好ましい。
【0068】
芳香族スルホン酸としては、4-スルホフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-スルホサリチル酸、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシ-6-ナフタレンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、トルエンスルホン酸、p-キシレン-2-スルホン酸、4,4’-ビフェニルジスルホン酸、ジベンゾフラン-2-スルホン酸、フラビアン酸、(+)-10-カンファースルホン酸、モノイソプロピルナフタレンスルホン酸、1-ピレンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性向上の観点から、4-スルホフタル酸、5-スルホサリチル酸、5-スルホイソフタル酸、2-ナフタレンスルホン酸、ジベンゾフラン-2-スルホン酸、フラビアン酸、2-ヒドロキシ-6-ナフタレンスルホン酸及び1-ピレンスルホン酸が好ましい。
【0069】
酸性物質の塩としては、上記に挙げた化合物の塩が挙げられる。塩の対イオンとしては、ナトリウム、リチウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
成分(e)は水和物であってもよい。
【0070】
成分(e)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0071】
成分(e)を含む場合、成分(e)の含有量は、組成物全体100質量%に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.02~5質量%がより好ましく、0.05~3質量%がさらに好ましい。
【0072】
成分(e)を含む場合、成分(a)の含有量と、成分(e)の含有量と、の質量比率(「成分(a)の含有量」:「成分(e)の含有量」)は、耐熱性の観点から、1:0.01~1:1でもよく、1:0.05~1:0.5であることが好ましく、1:0.07~1:0.1がより好ましい。
【0073】
本発明の一態様に係る組成物は、本質的に、成分(a)、(b)、(c)及び(d)、並びに、任意に(e)からなる群から選択される1以上の成分からなってもよい。この場合、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでもよい。
本発明の一態様に係る組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上、又は100質量%が、
成分(a)~(d)、又は
成分(a)~(e)からなっていてもよい。
【0074】
[導電性膜]
本発明の一態様に係る導電性膜は、上述の組成物を用いてなる。
例えば、本発明の一態様に係る組成物を基体上に塗布し、乾燥することで導電性膜を形成することができる。当該組成物を、所望の形状を有するガラス、樹脂フィルム、シート、不織布等の基材上に塗布することで導電性積層体としてもよい。
当該導電性膜の厚さは、通常1mm以下、好ましくは10nm~50μmである。
【0075】
本発明の一態様に係る導電性膜の電導度は、導電材として効果の発揮の観点から、例えば、0.5S/cm以上であればよく、例えば1S/cm以上、4S/cm以上、5S/cm以上、9S/cm以上、10S/cm以上、20S/cm以上、100S/cm以上、又は200S/cm以上が挙げられ、また、例えば400S/cm以下、又は300S/cm以下が挙げられる。
導電性膜の電導度は、四端子法による抵抗率計「ロレスターGP」(三菱化学株式会社製)により抵抗値を求め、下記式より算出する。
電導度[S/cm]=電極間距離(=1cm)÷(抵抗値[Ω]×膜厚[cm]×膜幅[cm])
【0076】
組成物を塗布する方法としては、キャスト法、スプレー法、ディップコート法、ドクターブレード法、バーコード法、スピンコート法、エレクトロスピニング法、スクリーン印刷、グラビア印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0077】
また、上記の導電性膜(塗膜)を、上記成分(e)を含む溶液に浸漬し、乾燥する工程を設けてもよい。この場合の成分(e)としては、上記式(4)で表される化合物又はその塩が好ましい。
【0078】
浸漬する溶液は、溶剤を含んでもよい。
溶剤は、成分(e)が溶解すれば特に限定されず、水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0079】
溶剤として、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、1-エトキシ-2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、MIBK、メチルエチルケトン(MEK)、エチレングリコールモノtertブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0080】
浸漬する溶液中の成分(e)の含有量は、溶剤を除去し得られた組成物1質量部に対して、10~1200質量部が好ましく、30~700質量部がより好ましく、70~400質量部がさらに好ましい。
1200質量部を超えると、塗膜内に酸性物質が過剰となりポリアニリン主鎖の劣化を引き起こし、導電性が低下するおそれがある。
【0081】
また、成分(e)は、浸漬する溶液中、0.1重量%~10重量%が好ましく、0.3重量%~6重量%がより好ましく、0.7重量%~3.5重量%がさらに好ましい。
【0082】
浸漬方法は、ディップ等が挙げられる。
浸漬時間は1分間以上が好ましく、3分間以上200分間以下がより好ましい。浸漬温度は、5℃~50℃が好ましい。
浸漬後の乾燥は、オーブン、ホットプレート等により行うことが好ましい。
乾燥温度は、80~200℃が好ましく、100~170℃がより好ましい。
乾燥時間は、1~180分間が好ましく3~60分間がより好ましい。必要に応じて、減圧下で加熱してもよい。乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限されず、用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0083】
上述したように、成分(e)は上記の組成物中に加えてもよいし、組成物から得られた導電性膜に含ませてもよい。組成物中に成分(e)を加え、さらに当該組成物から得られた導電性膜に成分(e)を含ませてもよい。
即ち、本発明の一態様に係る導電性膜は、成膜前に加えられた成分(e)(以下、成分(e1)と称する場合がある)と、成膜後に加えられた成分(e)(以下、成分(e2)と称する場合がある)とを含む場合がある。成分(e1)と(e2)は同一でもよく、異なってもよい。異なる場合、例えば、成分(e1)は上記式(5)で表される化合物であり、成分(e2)は上記式(4)で表される化合物である。
【0084】
[コンデンサ]
本発明の一態様に係るコンデンサは、上述の導電性膜を含む。
例えば、本発明の一態様に係る組成物を用いてコンデンサを製造することができる。コンデンサとしては、具体的には、電解コンデンサ及び電気二重層コンデンサ等が挙げられ、電解コンデンサとしては、固体電解コンデンサが挙げられる。
固体電解コンデンサを製造する場合、例えば、固体電解コンデンサの陽極と誘電体を含む陽極体に本発明の組成物を塗布させ、乾燥することで当該陽極体上に導電性膜を形成する工程を含む。
【0085】
本発明の一態様に係るコンデンサは耐熱性及び耐湿性に優れるため、例えば車載用途や、通信基地局における回路基板等に用いた場合に極めて有用である。自動車等の車両は高温多湿の過酷な環境に置かれることがある。また、通信基地局はパワーアンプ等の電子機器により回路基板が高温になることがあるため、これらに用いるコンデンサには所定の耐熱性や耐湿性が要求されるところ、上記のコンデンサであれば当該要求を満足することができる。
【0086】
[電池]
本発明の一態様に係る電池は、上述の導電性膜を含む。
本発明の一態様に係る導電性膜は、電池材料として用いることができる。
【0087】
[導電性積層体、導電性物品]
本発明の一態様に係る組成物を、所望の形状を有するガラス、樹脂フィルム、シート、不織布等の基材に塗布し、溶剤を除去することによって、導電性膜を有する導電性積層体を製造することができる。当該導電性積層体を真空成形や圧空成形等の公知の方法により所望の形状に加工することにより、導電性物品を製造することができる。成形の観点からは、基材は樹脂フィルム、シート又は不織布が好ましい。
【0088】
組成物の基材への塗布方法としては、キャスト法、スプレー法、ディップコート法、ドクターブレード法、バーコート法、スピンコート法、エレクトロスピニング法、スクリーン印刷、グラビア印刷法等、公知の方法を用いることができる。上記塗布膜を乾燥する際、溶剤の種類によっては、塗布膜を加熱してもよい。例えば、空気気流下250℃以下、好ましくは50以上200℃以下の温度で加熱し、さらに、必要に応じて、減圧下に加熱する。加熱温度及び加熱時間は、特に制限されず、用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0089】
尚、本発明の一態様に係る組成物を用いて、基材を有しない自己支持型成形体とすることもできる。
【実施例0090】
製造例1(ポリアニリン複合体の製造)
1,000mLセパラブルフラスコに「ネオコールSWC」(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、第一工業製薬株式会社製)32.4g、アニリン13.3g、「ソルボンT-20」(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル構造を有する非イオン乳化剤、東邦化学工業株式会社製)0.9gを入れ、トルエン320.4gにて溶解させた。そこに8.5質量%リン酸水溶液450gを加え、トルエンと水の2つの液相を有する反応液を撹拌し、反応液の内温を-3℃まで冷却した。反応液の内温が-3℃に到達した時点で、反応液を撹拌しながら、APS(過硫酸アンモニウム)39.3gを8.5質量%リン酸水溶液90.2gに溶解した溶液を、投入した。投入後、さらに溶液内温を-3℃に保ったまま24時間撹拌した。撹拌停止後、分液漏斗に内容物を移し、水相とトルエン相を静置分離した。分離後、トルエン相を8.5質量%リン酸水溶液180.3gで1回、イオン交換水328.0gで3回洗浄することにより、ポリアニリン複合体トルエン溶液を得た。
この溶液をエバポレーターに移し、60℃の湯浴で加温し、減圧することで揮発分を蒸発留去し、ポリアニリン複合体1(プロトネーションされたポリアニリン)を得た。ポリアニリン複合体1のポリアニリンの重量平均分子量は112,000であった。
【0091】
ポリアニリンの重量平均分子量は以下のようにして測定した。
NMP(N-メチル-2-ピロリドン)2000mlに対し、臭化リチウム1.65~1.85gを溶解し0.01M臭化リチウムのNMP溶液を調製した。この0.01M臭化リチウムのNMP溶液10mlに、14μLのトリエチルアミンを添加し、撹拌溶解させ、均一な溶液にした。さらに、製造例1で得たポリアニリン複合体トルエン溶液を50μL滴下し、撹拌混合後、0.45μmフィルターを通し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定用サンプルを調製した。
GPC測定用サンプルを用いて、GPC測定は、GPCカラム(昭和電工株式会社製「ShodexKF-806M」、2本連結)を用いて行い、以下の測定条件で行った。
溶媒:0.01MLiBr含有NMP
流量:0.70mL/分
カラム温度:60℃
注入量:100μL
UV検出波長:270nm
上記方法で得られた重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算値である。
【0092】
また、ポリアニリンに対するプロトン供与体(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)のドープ率は0.36であった。
【0093】
実施例1(組成物の調製)
3-メトキシ-3-メチルブタノール(MMB)30g、エチレングリコール(EG)10g、IPソルベント1620(IP1620、出光興産株式会社製)20g、p-tert-アミルフェノール(tAP)(成分(b))40gを均一になるまで撹拌混合し、混合溶剤Aを調製した。94.9gの混合溶剤Aに、5gのポリアニリン複合体1、及び0.1gのEC-N300(N300、エチルセルロース、下記構造の化合物、Ashland(アシュランド)社製)を溶解し、ポリアニリン複合体溶液1を得た。
2-ナフタレンスルホン酸(NSA)水和物1g(水和物は微量であるため、NSA1gとする)を3-メトキシ-3-メチルブタノール(MMB)9gに溶解し、均一な2-ナフタレンスルホン酸溶液1を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液1に、2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
表1において、成分(d)については、各成分(d)の合計量で示す(以下、同様である)。
【化6】
【0094】
(粘度の測定)
粘度測定を、液温23~24℃の範囲で、音叉型振動式粘度計SV-1H(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、得られた組成物について行った。
結果を表1に示す。
【0095】
(導電性膜の製造)
図1に示す、パターニングによりインジウム錫酸化物(ITO)電極2が表面に形成されたガラス基板1の上面に、上記の組成物を1ml塗布した。塗布は、大気雰囲気下でスピンコート法により行った。組成物を滴下した後のガラス基板1の回転時間は15秒間、ガラス基板1の回転速度は2000~2500rpmとした。その後、ガラス基板1を乾燥して導電性膜を形成した。80℃5分間乾燥した。
【0096】
(導電性膜の評価(電導度))
図2に示すように、得られた導電性膜5のうちITO電極の端子を覆う部分を大気雰囲気下で削り取り、ITO電極2の端子を表面に露出させた。表面に露出したITO電極2を用いて、四端子法による抵抗率計「ロレスターGP」(三菱化学株式会社製)により抵抗値を測定した。
また、走査型白色干渉顕微鏡VS1330(株式会社日立ハイテク製)を用いて、導電性膜の膜厚及び膜幅を測定した。上記測定値から、下記式により導電性膜の電導度を算出した。
電導度[S/cm]=電極間距離(=1cm)÷(抵抗値[Ω]×膜厚[cm]×膜幅[cm])
結果を表1に示す。
【0097】
実施例2
実施例1で調製した混合溶剤A 94.5gに、5gのポリアニリン複合体1、及び0.5gのN300を溶解し、ポリアニリン複合体溶液2を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液2に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表1に示す。
【0098】
実施例3
MMB 37.5g、EG 12.5g、tAP 25g、IP1620 25gを均一になるまで撹拌混合し、混合溶剤Bを調製した。この混合溶剤B 94.5gに、5gのポリアニリン複合体1、及び0.5gのN300を溶解し、ポリアニリン複合体溶液3を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液3に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表1に示す。
【0099】
比較例1
MMB 50g、EG 17g、IP1620 33gを撹拌混合し、混合溶剤Cを調製した。この混合溶剤Cは均一に溶解しなかった。この混合溶剤C 94.5gに、5gのポリアニリン複合体1、及び0.5gのN300を添加し、ポリアニリン複合体溶液4を得た。このポリアニリン複合体溶液4ではポリアニリン複合体1が溶解せず、不均一な溶液となった。
5gのポリアニリン複合体溶液4に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
この組成物はポリアニリン複合体1が溶解せず、不均一な組成物となったため、正確な粘度測定ができなかった。表1において、「‐」と示す(以下、同様である)。
また、実施例1と同様にスピンコート法により塗膜を作成したが、均一な塗膜が作製できず、抵抗値が測定上限以上であり、導電性のある塗膜が作製できなかった。表1において、「‐」と示す(以下、同様である)。
【0100】
比較例2
実施例1で調製した混合溶剤A 95gに、5gのポリアニリン複合体1を溶解し、ポリアニリン複合体溶液5を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液5に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表1に示す。
【0101】
比較例3
比較例1で調製した混合溶剤C 95gに、5gのポリアニリン複合体1を添加し、ポリアニリン複合体溶液6を得た。この混合溶剤Cにはポリアニリン複合体1が溶解せず、不均一な溶液となった。
5gのポリアニリン複合体溶液6に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
この組成物はポリアニリン複合体1が溶解せず、不均一な組成物となったため、正確な粘度測定ができなかった。
また、実施例1と同様にスピンコート法により塗膜を作成したが、均一な塗膜が作製できず、抵抗値が測定上限以上であり、導電性のある塗膜が作製できなかった。
【0102】
比較例4
実施例3で調製した混合溶剤B 95gに、5gのポリアニリン複合体1を溶解し、ポリアニリン複合体溶液7を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液7に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表1に示す。
【0103】
実施例11~13、実施例21~22、実施例31~32、比較例11、比較例21及び比較例31
実施例11、21及び31について、表2~4に示す成分(c)を用いた以外は、実施例1と同様に、製造し、評価した。結果を表2~4に示す。
実施例12、22及び32について、表2~4に示す成分(c)を用いた以外は、実施例2と同様に、製造し、評価した。結果を表2~4に示す。
比較例11、21及び31について、表2~4に示す成分(c)を用いた以外は、比較例1と同様に、製造し、評価した。結果を表2~4に示す。
【0104】
実施例13
実施例1で調製した混合溶剤A 94gに、5gのポリアニリン複合体1、及び1.0gのN200を溶解し、ポリアニリン複合体溶液8を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液8に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.188g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表2に示す。
【0105】
(粘度比率の評価1)
実施例1~3、実施例11~13、実施例21~22、実施例31~32、比較例1~4、比較例11、比較例21及び比較例31において、それぞれの粘度の値を、比較例2の粘度の値で除算した値を、表1~4に示す。「-」は評価できなかったことを示す。
【0106】
実施例1で用いた以外の成分(c)を以下に示す。
N200:エチルセルロース、下記構造の化合物、Ashland(アシュランド)社製
【化7】
G:Klucel G、ヒドロキシプロピルセルロース、下記構造の化合物、Ashland(アシュランド)社製
【化8】
【0107】
EP1550H:エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、明成化学工業株式会社製
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
実施例41
実施例1で調製した混合溶剤A 92gに、7gのポリアニリン複合体1、及び1gのN300を溶解し、ポリアニリン複合体溶液9を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液9に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.263g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表5に示す。
【0113】
実施例42
実施例1で調製した混合溶剤A 91gに、7gのポリアニリン複合体1、及び2gのN300を溶解し、ポリアニリン複合体溶液10を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液10に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.263g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表5に示す。
【0114】
比較例41
実施例1で調製した混合溶剤A 93gに、7gのポリアニリン複合体1を溶解し、ポリアニリン複合体溶液11を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液11に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.263g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表5に示す。
【0115】
(粘度比率の評価2)
実施例41~42及び比較例41において、それぞれの粘度の値を、比較例41の粘度の値で除算した値を、表5に示す。
【0116】
【0117】
実施例51
実施例1で調製した混合溶剤A 89gに、10gのポリアニリン複合体1、及び1gのN300を溶解し、ポリアニリン複合体溶液12を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液12に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.376g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表6に示す。
【0118】
比較例51
実施例1で調製した混合溶剤A 90gに、10gのポリアニリン複合体1を溶解し、ポリアニリン複合体溶液13を得た。
5gのポリアニリン複合体溶液13に、実施例1で調製した2-ナフタレンスルホン酸溶液1を0.376g添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に、評価した。結果を表6に示す。
【0119】
(粘度比率の評価3)
実施例51及び比較例51において、それぞれの粘度の値を、比較例51の粘度の値で除算した値を、表6に示す。
【0120】
【0121】
実施例61(組成物の調製)
トルエン(Tol)95g、イソプロピルアルコール(IPA)5gを均一になるまで撹拌混合し、混合溶剤Dを調製した。7.25gの混合溶剤Dに、0.30gのポリアニリン複合体1及び0.03gのEC-N300(N300、エチルセルロース、下記構造の化合物、Ashland(アシュランド)社製)を溶解し、ポリアニリン複合体溶液14を得た。
上記のポリアニリン複合体溶液14に2.42gのm-クレゾールを添加し、30℃の水浴中で30分間撹拌し、合計10gの組成物を得た。
【0122】
得られた組成物について、実施例1と同様に、粘度の測定を行った。また、得られた導電性膜について、実施例1と同様に、電導度を求めた。結果を表7に示す。
【0123】
実施例62~69及び比較例61~65
表7及び8に示す配合量とした以外は、実施例61と同様に、製造し、評価した。結果を表7及び8に示す。
【0124】
(粘度比率の評価4)
実施例61~69及び比較例61~65において、それぞれの粘度の値を、比較例65の粘度の値で除算した値を、表7及び8に示す。
【0125】
図3に、実施例61~65及び比較例61~64を用いて、成分(b)及び成分(c)の相乗効果を示した図を示す。実施例61~65については、成分(b)を24.2質量%含む。一方、比較例61~64については、成分(b)を含まない。
縦軸を粘度とし、横軸を成分(c)の配合量とした。
成分(c)の配合量が少ない場合でも、成分(b)及び成分(c)の相乗効果による粘度の増加が示されたが(
図3中の両端が矢印の実線で示す)、成分(c)の配合量の増加に伴い、顕著に、成分(b)及び成分(c)の相乗効果による粘度の増加が示された(
図3中の両端が矢印の破線で示す)。
【0126】
【0127】