(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023172784
(43)【公開日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ミラブル型シリコーンゴムコンパウンド、ミラブル型シリコーンゴム組成物及びミラブル型シリコーンゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20231129BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231129BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20231129BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20231129BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231129BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/36
C08L83/06
C08K5/5415
C08L83/05
C08J3/20 B CFH
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084850
(22)【出願日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA60
4F070AC23
4F070AC46
4F070AC56
4F070AE01
4F070AE08
4F070AE16
4F070AE30
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4F070FA17
4F070FB07
4F070FC03
4J002CP043
4J002CP062
4J002CP121
4J002CP131
4J002CP141
4J002DJ016
4J002EX038
4J002EX047
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD027
4J002FD143
4J002FD148
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱処理が不要で従来と同等の性能を有するミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを提供する。
【解決手段】下記(A)~(D)成分を含むミラブル型シリコーンゴムコンパウンド。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有する平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン生ゴム:100質量部、
(B)BET吸着法による比表面積が50~450m
2/gの補強性シリカ:5~100質量部、
(C)下記一般式(1)で表される、両末端にヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサン:1.0~50.0質量部、及び
(R
1は独立して炭素数1~8の1価炭化水素基であり、mは1~50の整数である。)
(D)1013hPaにおける沸点が30~60℃である25℃で液体のアミン化合物:0.0001~0.1質量部。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)成分
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有する平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン生ゴム:100質量部、
(B)BET吸着法による比表面積が50~450m
2/gの補強性シリカ:5~100質量部、
(C)下記一般式(1)で表される、両末端にヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサン:1.0~50.0質量部、及び
【化1】
(式中、R
1は独立して炭素数1~8の1価炭化水素基であり、mは1~50の整数である。)
(D)1013hPaにおける沸点が30~60℃である25℃で液体のアミン化合物:0.0001~0.1質量部
を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴムコンパウンド。
【請求項2】
請求項1に記載のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを混練してなる混練物と(E)硬化剤を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記(E)成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせからなる、ヒドロシリル化反応の硬化剤であることを特徴とする請求項2に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記(E)成分が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項2に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを混練し、触媒である前記(D)成分の存在下で、前記(C)成分により前記(B)成分の表面処理を行いながら攪拌熱により前記(D)成分を除去した後に、(E)硬化剤を添加することを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラブル型シリコーンゴムコンパウンド、ミラブル型シリコーンゴム組成物及びミラブル型シリコーンゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムを製造するには、オルガノポリシロキサン中に補強性の充填剤を混練りする必要がある。その際、分散剤と呼ばれる表面処理剤を使用するが、充填剤として補強性シリカを分散する際は、シラノール基を有するオルガノシラン又はシロキサンを使用する。しかし、この方法でシリカを分散させる工程は時間がかかるため、この時間を短くすることが望まれている。
【0003】
また、この分散工程に加えて、高温での熱処理工程も必須であり、熱処理工程では多くの電力を必要とする。工程時間が長くなる上に電力消費量も大きいため、環境への影響も問題となる。これを解決するために、上記分散剤に少量のシラザン化合物を、分散剤の縮合触媒として併用することも試みられている。しかしながら、この方法でも根本的な解決には至っていない。
【0004】
上記の問題点を解決するために、特許文献1では、分散剤と併用するシラザン化合物を増量することで、熱処理工程が不要となり、配合時間も短縮できるとしている。この方法だと、従来と同等の性能を有するミラブル型シリコーンゴムコンパウンドが得られるとしているが、工業的スケールでは、過剰に配合したシラザン化合物が完全に除去できない。それゆえに、付加硬化系シリコーンゴム組成物にこのシリコーンゴムコンパウンドを用いようとすると、ゴム硬化物の物性が安定しなかったり、表面に粘着感が出たりする。そのため、分散剤と補強性シリカ表面のシラノール基との縮合反応を促進するための簡便に除去可能な触媒が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱処理が不要で従来と同等の性能を有するミラブル型シリコーンゴムコンパウンド、及び該シリコーンゴムコンパウンドの混練物を含むシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
下記(A)~(D)成分
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有する平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン生ゴム:100質量部、
(B)BET吸着法による比表面積が50~450m
2/gの補強性シリカ:5~100質量部、
(C)下記一般式(1)で表される、両末端にヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサン:1.0~50.0質量部、及び
【化1】
(式中、R
1は独立して炭素数1~8の1価炭化水素基であり、mは1~50の整数である。)
(D)1013hPaにおける沸点が30~60℃である25℃で液体のアミン化合物:0.0001~0.1質量部
を含むものであるミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを提供する。
【0008】
このようなものであれば、補強性シリカの表面処理に熱処理が不要であるにも関わらず熱処理を行った従来と同等の性能を有するミラブル型シリコーンゴムコンパウンドとなる。
【0009】
また、本発明は上記のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを混練してなる混練物と(E)硬化剤を含むものであるミラブル型シリコーンゴム組成物を提供する。
【0010】
このようなものであれば、上記(A)成分と上記(E)成分を反応させて硬化物を与えることができる。
【0011】
前記(E)成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせからなる、ヒドロシリル化反応の硬化剤であることが好ましい。
【0012】
このようなものであれば、本発明のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドには付加硬化阻害となる不純物が少ないため好適である。
【0013】
前記(E)成分が、有機過酸化物であることが好ましい。
【0014】
有機過酸化物もまた、硬化剤として好適である。
【0015】
また、本発明は、上記のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを混練し、触媒である前記(D)成分の存在下で、前記(C)成分により前記(B)成分の表面処理を行いながら攪拌熱により前記(D)成分を除去した後に、(E)硬化剤を添加するミラブル型シリコーンゴム組成物の製造方法を提供する。
【0016】
このような製造方法であれば、上記(B)成分の上記(C)成分による表面処理を進行させつつ不要となった上記(D)成分を放出することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、充填剤の表面処理時に強制的な熱処理をせずとも、従来と同等の性能を有するミラブル型シリコーンゴムコンパウンド、及び該コンパウンドの混練物に硬化剤を配合して得られるシリコーンゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、オルガノポリシロキサンと補強性シリカを、両末端にシラノール基を有するオルガノシロキサンを用いて、シリコーンゴムコンパウンドを調製する際、特定のアミン化合物を微量配合することで、熱処理をせずとも、速やかにシリカを表面処理できることを見出した。それは、オルガノポリシロキサンとシリカとを混合する際に発生する攪拌熱により、速やかにシリカを表面処理できることによるからである。さらに、この表面処理反応の進行に従い、反応に供されない上記アミン化合物が、攪拌熱で系外に排出されるので、熱処理をせずとも、従来と同等の性能を有するミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを簡便に得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0019】
即ち、本発明は、
下記(A)~(D)成分
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有する平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン生ゴム:100質量部、
(B)BET吸着法による比表面積が50~450m
2/gの補強性シリカ:5~100質量部、
(C)下記一般式(1)で表される、両末端にヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサン:1.0~50.0質量部、及び
【化2】
(式中、R
1は独立して炭素数1~8の1価炭化水素基であり、mは1~50の整数である。)
(D)1013hPaにおける沸点が30~60℃である25℃で液体のアミン化合物:0.0001~0.1質量部
を含むものであるミラブル型シリコーンゴムコンパウンドである。
【0020】
なお、本発明において、上記(A)~(D)成分を配合し、硬化剤を配合する前の混合物をシリコーンゴムコンパウンドと称し、このコンパウンドの混練物に硬化剤を配合したものをシリコーンゴム組成物と称する。
【0021】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0022】
[ミラブル型シリコーンゴムコンパウンド]
本発明のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドは、
下記(A)~(D)成分
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有する平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン生ゴム:100質量部、
(B)BET吸着法による比表面積が50~450m
2/gの補強性シリカ:5~100質量部、
(C)下記一般式(1)で表される、両末端にヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサン:1.0~50.0質量部、及び
【化3】
(式中、R
1は独立して炭素数1~8の1価炭化水素基であり、mは1~50の整数である。)
(D)1013hPaにおける沸点が30~60℃である25℃で液体のアミン化合物:0.0001~0.1質量部
を含むものである。
【0023】
また、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、上記ミラブル型シリコーンゴムコンパウンドの混練物に(E)硬化剤を含むものである。
【0024】
中でも、上記硬化剤成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせからなる、ヒドロシリル化反応の硬化剤であることが好ましい。
【0025】
-(A)成分-
本発明において、(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有する平均重合度が1,000~100,000のオルガノポリシロキサン生ゴムである。
【0026】
上記アルケニル基としては、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、炭素数2~6のアルケニル基がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。中でも、ビニル基が好ましい。
【0027】
上記アルケニル基以外の置換基としては、炭素数1~12、特に炭素数1~8の1価炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。なお、アルキル基の一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基を用いてもよい。中でも、メチル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0028】
また、上記(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、好ましくは2~50個、より好ましくは2~20個アルケニル基を有する。中でも、ビニル基を有するものが特に好ましい。この場合、オルガノポリシロキサンの全シロキサン単位中0.01~20モル%、特に0.02~10モル%がアルケニル基を有するシロキサン単位であることが好ましい。なお、このアルケニル基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0029】
また、オルガノポリシロキサンの全シロキサン単位中好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくはアルケニル基を有するシロキサン単位除く全てのシロキサン単位がジアルキルシロキシ基、特にはジメチルシロキシ基であることが望ましい。
【0030】
上記(A)成分であるオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、又は一部分岐構造を有する直鎖状であることが好ましい。具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位の繰り返し構造が、ジメチルシロキサン単位のみの繰り返しからなるもの、又はこの一部として、ジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルシロキサン単位等のジオルガノシロキサン単位を導入したもの等が好適である。
【0031】
また、分子鎖両末端は、例えば、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等から選ばれる基で封鎖されていることが好ましく、ビニルジメチルシロキシ基で封鎖されていることが特に好ましい。
【0032】
上記(A)成分のオルガノポリシロキサンの例としては、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサン、メチルトリフルオロプロピルビニルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0033】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体等)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。
【0034】
なお、上記オルガノポリシロキサンの平均重合度は1,000~100,000であり、好ましくは2,000~50,000、より好ましくは2,500~30,000、特に好ましくは3,000~20,000である。また、このオルガノポリシロキサンの性状は、室温(25℃)において自己流動性のない、いわゆる生ゴム状(非液状)である。平均重合度が小さすぎるとコンパウンドとした際に、ロール粘着等の問題が生じ、ロール作業性が悪化する。なお、この重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる。
【0035】
上記(A)成分は、1種を単独で用いても、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種又は3種以上の混合物であってもよい。
【0036】
-(B)成分-
(B)成分の補強性シリカは、機械的強度の優れたシリコーンゴム組成物を得るために添加される充填剤であり、この目的のためには比表面積(BET吸着法)が50~450m2/gであることが必要であり、好ましくは100~450m2/g、より好ましくは100~300m2/gである。比表面積が50m2/g未満だと、硬化物の機械的強度が低くなってしまう。
【0037】
このような補強性シリカとしては、例えば、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられ、またこれらの表面をクロロシランやヘキサメチルジシラザン等で疎水化処理したものも好適に用いられる。このなかでも動的疲労特性に優れる煙霧質シリカが好ましい。
【0038】
上記(B)成分は1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記(B)成分の補強性シリカの配合量は、上記(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5~100質量部であり、10~50質量部であることが好ましい。上記(B)成分の配合量が少なすぎる場合には補強効果が得られず、多すぎる場合には加工性が悪くなり、また機械的強度が低下してしまい、動的疲労耐久性も悪化してしまう。
【0040】
-(C)成分-
本発明においては、(C)成分として、下記一般式(1)で表される、両末端にヒドロキシシリル基(シラノール基)を有するオルガノシロキサンを使用する。
【化4】
(式中、R
1は独立して炭素数1~8の1価炭化水素基であり、mは1~50の整数である。)
【0041】
ここで、R1は独立して炭素数1~8の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の炭素数1~8のアルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数2~8のアルケニル基、フェニル基、トリル基等の炭素数6~8のアリール基であることが好ましく、より好ましくはメチル基、ビニル基である。
【0042】
また、mは1~50、好ましくは2~20の整数である。
【0043】
上記(C)成分の使用量は、上記(A)成分100質量部に対して1.0~50.0質量部であり、好ましくは2.0~20.0質量部である。両末端シラノール基封鎖オルガノポリシロキサンの使用量が少なすぎると、可塑戻り(クリープハードニング)が大きくなり、多すぎるとコンパウンドの可塑度が低くなりすぎ、ロールミル等の混練手段においてロール粘着性が発生してロール作業性が悪化する。
【0044】
-(D)成分-
(D)成分は縮合反応用触媒である。上記(B)成分のシリカ表面に存在するヒドロキシシリル基(シラノール基)や(C)成分のヒドロキシシリル基(シラノール基)を相互に縮合反応させるためのものである。
【0045】
(D)成分の縮合反応用触媒は、1013hPaにおける沸点が30~60℃である25℃で液体のアミン化合物である。このような(D)成分の具体例としては、プロピルアミン(融点:-83℃、沸点:49℃)、イソプロピルアミン(融点:-101℃、沸点:33℃)、tert-ブチルアミン(融点:-72.65℃、沸点:46℃)などの低級アルキルアミン、ジエチルアミン(融点:-50℃、沸点:56℃)などの低級ジアルキルアミンなどが挙げられる。なお、上記記載の融点および沸点は、富士フィルム和光純薬株式会社が発行するSDSに記載の温度を表記している。
【0046】
なお、上記(D)成分の添加方法については特に制限をしないが、上記(C)成分に上記(D)成分を添加した後、速やかに上記(B)成分が添加された釜内へ添加することが好ましい。こうすることで、上記(B)成分のヒドロキシシリル基(シラノール基)と、上記(C)成分のヒドロキシシリル基(シラノール基)との縮合反応を効率的に進行させることができる。また、上記(D)成分を二本ロールやニーダー等で混練りしやすくするため、予め上記(D)成分をオルガノポリシロキサン等でペースト化したものを使用してもよい。
【0047】
(D)成分の添加量は、上記(A)成分100質量部に対して0.0001~0.1質量部であり、0.001~0.1質量部が好ましく、より好ましくは0.01~0.05質量部である。上記(D)成分の使用量が少なすぎると、補強性シリカの表面処理にかかる時間が長くなったり、表面処理の度合いが低くなってシリコーンゴムコンパウンドが得られなくなったりする可能性がある。逆に上記(D)成分の使用量が多すぎると得られるシリコーンゴムコンパウンドから上記(D)成分が除去できず、経時でシリコーンゴムコンパウンドの可塑度が上昇してしまったり、白金触媒を用いた付加硬化を用いてシリコーンゴムを得る際、得られるゴムの物性が安定しなかったり、硬化不足のためゴム表面にタック(粘着)が発現してしまったりする可能性がある。
【0048】
本発明のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドは、上述した(A)~(D)成分の所定量を均一に混練可能な装置を用いて製造することが好ましい。均一に混練可能な装置についての制限は特にないが、上記(D)成分の反応性や反応終了後の除去を考えると、攪拌熱が発生しやすい装置の使用が好ましい。具体的にはニーダー、バンバリーミキサー、ロールミル等を使用し混練することでミラブル型シリコーンゴムコンパウンド得ることができるが、その中でも特にニーダーを用いて製造することが好ましい。
【0049】
上記(A)~(D)成分の混合時に、上記(C)成分である両末端ヒドロキシシリル基(シラノール基)封鎖オルガノシロキサンが、上記(B)成分である補強性シリカのウェッターとして作用する。そのウェッターの効果を高めるため、上記(D)成分である縮合反応用触媒の添加が有効である。この成分を添加することで上記(B)成分である補強性シリカのウェッターとしての作用が速やかに進行する。上記(B)成分の表面を有効的に処理するには、上記(C)成分の両末端がヒドロキシシリル基(シラノール基)であることが必須である。
【0050】
ここで、上記(A)~(D)成分の混合は、好ましい温度は0~120℃、より好ましくは30~100℃、更に好ましくは30~90℃の範囲が良い。また、上記(A)~(D)成分を混合する時間は、特に制限はしないが、製造上の効率を考えると、好ましくは1~300分間、より好ましくは10~120分間の条件とすることが望ましい。
【0051】
上記の方法により、上述した(A)~(D)成分を混合すると、撹拌熱が発生する。攪拌熱は、用いる上記(A)成分の重合度と、上記(B)成分の補強性シリカの添加量、上記(A)成分と上記(B)成分の添加比率により異なるが、ミラブル型シリコーンゴムコンパウンドに適するような組成、即ち従来のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドのような組成とすると、約30~120℃程度の攪拌熱が発生する。本発明に使用する上記(D)成分は、配合時は液体なので取扱性に優れている上に上記(B)成分と上記(C)成分の反応性に優れる。加えて、常圧である1013hPaにおける沸点が30~60℃であるため、配合時に発生した攪拌熱だけでミラブル型シリコーンゴムコンパウンドから上記(D)成分を除去できる。よって、昨今の脱炭素社会、CO2排出量低減と言った環境問題に寄与しながら、従来同様のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを市場に供給することができる。
【0052】
以上のようにして得られたミラブル型シリコーンゴムコンパウンドは、混練した後にこれに後述する(E)硬化剤を配合することにより、ミラブル型シリコーンゴム組成物を得ることができる。
【0053】
[ミラブル型シリコーンゴム組成物及び製造方法]
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、上記ミラブル型シリコーンゴムコンパウンドから混練により上記(D)成分が除去され、後述する(E)成分が加えられたものである。
【0054】
具体的には、上記のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを混練し、触媒である上記(D)成分の存在下で、上記(C)成分により上記(B)成分の表面処理を行いながら攪拌熱により上記(D)成分を除去した後に、(E)硬化剤を添加するミラブル型シリコーンゴム組成物の製造方法が提供される。
【0055】
-(E)成分-
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、上記ミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを混練してなる混練物と(E)硬化剤を含むものである。
【0056】
(E)硬化剤としては、上記(A)成分を硬化させ得るものであれば特に限定されるものではないが、一般的にゴム硬化剤として公知の(E1)付加反応(ヒドロシリル化反応)型硬化剤、即ちオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)とヒドロシリル化触媒との組み合わせからなる、ヒドロシリル化反応の硬化剤、又は(E2)有機過酸化物が好ましい。
【0057】
中でも、本発明のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドは、付加硬化阻害となる不純物をほとんど含まないため、付加反応型硬化剤の使用に好適である。
【0058】
上記(E1)付加反応型硬化剤の架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するものであることが好ましい。特に、下記一般式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【化5】
(式中、R
2は独立して、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、1分子中2個以上のR
2が水素原子である。なお、同じケイ素原子上に2個以上の水素原子が存在することはない。aは2≦a≦30の整数、bは0≦b≦300の整数、cは0≦c≦10の整数、及びdは0≦d≦30の整数である。なお、各シロキサン単位の結合はブロックであってもランダムであってもよい。)
【0059】
ここで、R2は、独立して、水素原子、または炭素数1~8、好ましくは1~6のアルキル基、炭素数6~10、好ましくは6~8のアリール基、及び炭素数7~10、好ましくは7~9のアラルキル基から選ばれる基である。ただし、1分子中2個以上、好ましくは2~200個、より好ましくは2~130個のR2が水素原子である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基や、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。アラルキル基の例としては、ベンジル基、2-フェニルプロピル基等が挙げられる。なお、アルキル基の一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基を用いてもよい。また、aは2≦a≦30、好ましくは2≦a≦20の整数である。bは0≦b≦300、好ましくは3≦b≦200の整数である。cは0≦c≦10、好ましくは0≦c≦5の整数である。及びdは0≦d≦30、好ましくは0≦d≦20の整数である。
【0060】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2~300個、特に4~200個程度の25℃で液状のものが好適に用いられる。なお、ヒドロシリル基は分子鎖末端にあっても側鎖(分子鎖途中)にあっても、その両方にあってもよい。
【0061】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体等や、上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたものなどが挙げられる。また、このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的に下記構造式の化合物を例示することができる。
【0062】
【化6】
(式中、kは2~10の整数、s及びtはそれぞれ0~10の整数である。)
【0063】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、25℃における粘度が0.5~10,000mPa・sが好ましく、特に1~300mPa・sであることが好ましい。なお、粘度は、JIS K7117-1:1999記載の方法で回転粘度計により測定した値である。
【0064】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基に対するオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、ヒドロシリル基)のモル比(ヒドロシリル基/アルケニル基)が好ましくは0.5~10、より好ましくは0.8~6、更に好ましくは1~5となる量で配合することが望ましい。0.5以上だと架橋が十分になり、十分な機械的強度が得られる。また10以下であれば硬化後の物理特性が低下せず、特に耐熱性と耐圧縮永久歪性が劣化することがない。
【0065】
また、上記(E1)付加反応型硬化剤に用いられるヒドロシリル化触媒は、上記(A)成分中のアルケニル基と架橋剤としての上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のヒドロシリル基の付加反応を促進する触媒である。ヒドロシリル化触媒としては、ルテニウムや白金などの白金族金属系触媒が挙げられる。白金族金属系触媒には、それら白金族の金属単体とその化合物がある。これには従来、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、塩化白金酸とビニル基含有(ポリ)シロキサンとの錯体等、パラジウム触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒等が挙げられる。中でも、白金又は白金化合物が特に好ましい。
【0066】
ヒドロシリル化触媒の添加量は、付加反応を促進できる、いわゆる触媒量であればよく、通常、上記(A)成分の量に対して白金族金属の質量に換算して1ppm~1質量%の範囲で使用されるが、10~500ppmの範囲が好ましい。添加量が1ppm以上であれば、付加反応が十分促進され、硬化が十分となる。また、1質量%以下であれば、反応性に対する影響が添加量に見合うものとなり、経済的である。
【0067】
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、付加架橋制御剤を使用してもよい。具体的にはエチニルシクロヘキサノールやテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0068】
一方、上記(E2)有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-t-ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0069】
有機過酸化物の添加量は、上記(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1~15質量部、特に0.2~10質量部が好ましい。添加量が十分であれば架橋反応が十分に進行し、硬度低下やゴム強度不足、圧縮永久歪増大等の物性悪化を生じることがない。また上記の添加量を超えない場合には、経済的に好ましく、硬化剤の分解物が十分に少なく、圧縮永久歪増大等の物性悪化や得られたシートの変色を増大させることがない。
【0070】
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物には、上記成分以外に、カーボンブラック等の導電性付与剤、酸化鉄やハロゲン化合物のような難燃性付与剤、軟化剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を添加することができる。
【0071】
このようにして得られた本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、80~300℃、特に100~200℃で、5秒~1時間、特に30秒~30分間硬化させることにより、シリコーンゴム硬化物が得られる。
【実施例0072】
以下、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、融点及び沸点は1013hPaにおけるものであり、平均重合度はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定したものであり、粘度はJIS K7117-1:1999記載の方法で回転粘度計により測定した値である。
【0073】
[実施例1]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部、イソプロピルアミン(融点:-101℃、沸点:33℃)0.01質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は27℃であったが、混練開始1時間後には64℃まで上昇した(サンプリング1)。その後、混練2時間後には75℃となった(サンプリング2)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング3)。
【0074】
[実施例2]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部、ジエチルアミン(融点:-50℃、沸点:56℃)0.01質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は24℃であったが、混練開始1時間後には67℃まで上昇した(サンプリング4)。その後、混練2時間後には78℃となった(サンプリング5)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング6)。
【0075】
[実施例3]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部、tert-ブチルアミン(融点:-72.65℃、沸点:46℃)0.01質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は20℃であったが、混練開始1時間後には63℃まで上昇した(サンプリング7)。その後、混練2時間後には75℃となった(サンプリング8)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング9)。
【0076】
[実施例4]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部、イソプロピルアミン(融点:-101℃、沸点:33℃)0.05質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は23℃であったが、混練開始1時間後には62℃まで上昇した(サンプリング10)。その後、混練2時間後には72℃となった(サンプリング11)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング12)。
【0077】
[実施例5]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部、イソプロピルアミン(融点:-101℃、沸点:33℃)0.10質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は22℃であったが、混練開始1時間後には64℃まで上昇した(サンプリング13)。その後、混練2時間後には78℃となった(サンプリング14)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング15)。
【0078】
[比較例1]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部、ヘキサメチルジシラザン(融点:-78℃、沸点:125℃)0.01質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は24℃であったが、混練開始1時間後には66℃まで上昇した(サンプリング16)。その後、混練2時間後には76℃となった(サンプリング17)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング18)。
【0079】
[比較例2]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部、イソプロピルアミン(融点:-101℃、沸点:33℃)0.30質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は18℃であったが、混練開始1時間後には60℃まで上昇した(サンプリング19)。その後、混練2時間後には73℃となった(サンプリング20)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング21)。
【0080】
[比較例3]
3Lのニーダー内に、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.025モル%からなり、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に平均12個有する平均重合度が6,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム100質量部、BET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)40質量部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサン6.0質量部を添加し、均一に混練りした。混練りする前の温度は19℃であったが、混練開始1時間後には73℃まで上昇した(サンプリング22)。その後、混練2時間後には88℃となった(サンプリング23)。その後、参考のためこのシリコーンゴムコンパウンドを160℃で2時間の熱処理を行うことで、上記2サンプルと物性差を確認した(サンプリング24)。
【0081】
[試験]
上記実施例1~5の組成物及び比較例1~3の組成物として得られた各シリコーンゴムコンパウンドの混練物および各シリコーンゴムコンパウンドを使用してミラブル型シリコーンゴム組成物を調製した後、成型した試験用シートを用いて試験した結果を表1に示す。
【0082】
○可塑度測定
各条件にてサンプリングしたシリコーンゴムコンパウンドの混練物を三本ロールにて15回混練りし、その10分後(初期)にウィリアム可塑度を測定し、次いで40℃で1日後の可塑度をそれぞれ測定し、初期に対する40℃で1日後の経時変化を算出した。その算出結果(可塑度変化)が熱処理を行ったシリコーンゴムコンパウンドの混練物と比較して±50以内であるものを合格(従来品同等)、これに逸脱したものは不合格(従来品と異なる)と判定した。なお、比較した値は下記式で求めることができる。
(比較した値)=(熱処理した混練物の可塑度変化)-(本発明の混練物の可塑度変化)
【0083】
○物性特性測定
各条件にてサンプリングしたシリコーンゴムコンパウンドの混練物100質量部に対し、付加反応型硬化剤として、塩化白金酸-ジビニルジシロキサン錯体を白金原子質量換算で1質量%含有する白金触媒(信越化学工業(株)製)0.01質量部及び下記式
【化7】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製)0.85質量部を添加し、均一に混合して、ミラブル型シリコーンゴム組成物を調製した後、この組成物を120℃で10分間プレスキュアを行った試験用シートと、前述条件に更に、200℃で4時間のポストキュアを行った試験用シートを作製した。両条件にて作成した試験用シートについて密度、硬さ(デュロメーターA)、引張強さ、切断時伸び、反発弾性率、及び圧縮永久歪み(150℃/22時間、25%圧縮)を測定した。その数値が、熱処理を行ったシリコーンゴムコンパウンドの混練物を用いて作成した試験用シートの結果と比較して誤差±20%以内であるものを合格(従来品同等)、これに逸脱したものは不合格(従来品と異なる)と判定した。なお、比較した値は下記式で求めることができる。
(誤差)={(本発明の混練物を用いて得られた硬化物の物性の値)-(熱処理を行った混練物を用いて得られた硬化物の物性の値)}÷(熱処理を行った混練物を用いて得られた硬化物の物性の値)
【表1】
【0084】
[評価結果]
実施例1~5にて得られた各シリコーンゴムコンパウンドは、本発明の要件を満たすものであり、各シリコーンゴムコンパウンドの混練物の物性値、およびそれらを使用して作成したミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物の成型試験用シートの物性値は従来から行っている熱処理を用いて製造したシリコーンゴムコンパウンドを用いた場合とほぼ変わらない、すなわち従来品と同等の性能を示しているということが分かる。
【0085】
これに対し、比較例1においては、本発明で用いられるアミン化合物の代わりのヘキサメチルジシラザンの沸点が高いことから、同量配合とした場合、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が熱処理を用いて製造したシリコーンゴムコンパウンドと比較すると大きいことが分かる。その結果、シリコーンゴムコンパウンドの経時安定性が低下している。また、攪拌時間が1時間であった場合に、ポストキュア後の圧縮永久歪も大きくなっていた。
【0086】
比較例2においては本発明で示されるアミン化合物を使用しているが、配合量が逸脱している。そのため、攪拌熱だけではシリコーンゴムコンパウンド内からアミン化合物を除去することができず、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が熱処理を用いて製造したシリコーンゴムコンパウンドと比較すると非常に大きくなっている。このような場合、今回はこのシリコーンゴムコンパウンドを使用して作成したミラブル型シリコーンゴム組成物は成型試験用シートが硬化したが、アミン化合物が多く残存する場合、白金触媒がアミン化合物により失活し成型試験用シートが得られなくなる可能性があるため、配合量の逸脱は致命的な欠点になると言える。また、シリコーンゴムコンパウンドを熱処理しない場合にプレスキュア後の圧縮永久歪も大きくなっていた。また、攪拌時間が1時間であった場合に、切断時伸びが大きくなっていた。
【0087】
また、比較例3においては、縮合反応用触媒を用いずにシリコーンゴムコンパウンドを得ている。その場合も比較例1、2同様、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が熱処理を用いて製造したシリコーンゴムコンパウンドと比較すると大きくなっている。よって、この場合においてもシリコーンゴムコンパウンドの経時安定性が低下してしまうこととなる。また、攪拌時間が1時間であった場合に、ポストキュア後の切断時伸びが減少していた。
【0088】
上記の結果から、本発明の製造方法で得られたシリコーンゴムコンパウンドの混練物は、強制的な熱処理をせずとも、従来通りの経時安定性を示し、それを用いて作成したシリコーンゴム組成物の物性も従来同等の性能を示すことが分かった。これにより熱処理工程を省いても従来同等のシリコーンゴムコンパウンドの混練物が得られるため、省エネルギー化、脱炭素社会への貢献が達成できる。
本発明のミラブル型シリコーンゴムコンパウンドの製造方法、及び該コンパウンドの混練物に硬化剤を配合して得られるシリコーンゴム組成物の製造方法は、強制的な熱処理をせずとも、従来と同様な性状を有するミラブル型シリコーンゴムコンパウンドを簡便に得ることができる。そのため、昨今の省エネルギー化、脱炭素社会への貢献が達成できる。またこのシリコーンゴムコンパウンドを使用したシリコーンゴム組成物は、電気機器、自動車、建築、医療、食品分野など幅広い応用が期待できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。